特許第6173323号(P6173323)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173323
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】積層板および表面保護板
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170724BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170724BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20170724BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170724BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20170724BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   B32B27/00 C
   B32B27/18 A
   B32B27/26
   B32B27/40
   C09J175/04
   C09J175/06
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-534327(P2014-534327)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2013073203
(87)【国際公開番号】WO2014038472
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-193903(P2012-193903)
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】福井 伸良
(72)【発明者】
【氏名】根岸 聡史
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−243675(JP,A)
【文献】 特開2008−105225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C09J1/00−5/10
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の樹脂フィルムが接着層を介して積層されている積層板であって、接着層の少なくとも一層が、ポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物とを含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量が、樹脂成分100重量部に対して、55重量部以下であることを特徴とする積層板。
【請求項2】
請求項1に記載の積層板であって、
前記接着層は水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を、樹脂成分100重量部に対して、5重量部以上、50重量部以下含むことを特徴とする積層板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の積層板であって、
前記水酸基含有ベンゾフェノン系化合物は、水酸基数が2以上であることを特徴とする積層板。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一項に記載の積層板であって、
前記ポリオール系樹脂が、ポリオール系エステル樹脂であることを特徴とする積層板。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一項に記載の積層板であって、
水酸基含有ベンゾフェノン系化合物が、積層体の1m2当たりに0.006g以上含まれることを特徴とする積層板。
【請求項6】
請求項1ないし4いずれか一項に記載の積層板であって、
当該積層板の表面に、ハードコート層、反射防止層、低反射層、着色層、印刷インク接着層、および粘着層から選ばれる1以上の機能層を有することを特徴とする積層板。
【請求項7】
2枚以上の樹脂フィルムが接着層を介して積層されている表面保護板であって、接着層の少なくとも一層が、ポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物とを含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物が、樹脂成分100重量部に対して、55重量部以下であることを特徴とする表面保護板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚以上の樹脂フィルムが接着層を介して積層されている積層板に関し、特に、紫外線遮蔽効果があり、2枚の樹脂フィルムを強固に接着させた積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
PCモニター、テレビ、携帯電話などの電子機器の表示部には、アクリル板やポリカーボネート板といった樹脂板やガラス板などからなる表面保護板が設置されている。表面保護板は、表示部の内側にある部材や部品を外側の衝撃から保護することが本来の機能であるが、さらに、薄く、軽いこと、また表面保護板を切削加工して製造する際の加工性が良好であることも求められており、このような要請に対し、2枚以上のプラスチックフィルムを硬化型樹脂からなる接着層で貼り合わせた積層板を用いることも提案されている(特許文献1)。
【0003】
表面保護板の素材が樹脂の場合、それ自体を太陽光などからの紫外線から保護する役割も要求される。樹脂板を紫外線から保護する手法として、紫外線吸収剤や金属酸化物を含有するフィルムを貼着したり(特許文献2)、紫外線吸収剤等を含む層を設けることが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−126134号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2009−263474号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで表面保護板には、本来の機能に加え、高機能化が求められており、機能を付与する層(機能層)が設けられる場合がある。求められる機能は、具体的には、飛散防止性、耐傷性、耐汚れ性などの機能や、内側となる面について、印刷インクなどに対する印字適性や、他の部材などと貼りあわせる際の接着性、反射防止や低反射などの機能である。これらの機能は、例えばハードコート層などの特定の機能層を、表面保護板表面に積層することにより達成される。
【0006】
しかし、上述したように、表面保護板を紫外線から保護するために紫外線吸収剤等を含む樹脂層を表面保護板の表面に設けた場合、ハードコート層などの機能層を表面保護板の表面に設けることが妨げられる場合がある。特にハードコート層の多くは紫外線などにより硬化する電離放射線硬化型樹脂から構成されているため、構成成分中に紫外線吸収性能をもたせると、紫外線吸収性能を調節し難かったり、ハードコート性能が落ちやすい。そのため、ハードコート層と紫外線吸収層とを兼用することは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、表面に適宜機能層を設けることのでき且つ紫外線吸収性能を有する積層板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の積層板は、紫外線吸収層を兼ねた接着層を介して2枚以上の樹脂フィルムを接着したものである。ここで接着層中に紫外線吸収性能をもたせた場合、接着成分と紫外線吸収剤との組み合わせや比率によって、接着性が低下したり、紫外線吸収剤のブリードなどにより透明性が低下してしまい、表面保護板等の用途における適性が損なわれる可能性がある。
【0009】
本発明者らは、特定の紫外線吸収剤と、特定の樹脂成分との組み合わせにすることにより、十分な紫外線吸収性能を付与することができ且つ接着層と樹脂フィルムとの接着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の積層体は、2枚以上の樹脂フィルムが接着層を介して積層されている積層板であって、接着層の少なくとも一層が、ポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量が、樹脂成分100重量部に対して、55重量部以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着層が紫外線吸収層を兼ねることにより、適宜表面に機能層を設けることができる積層板とすることができる。また、特定の紫外線吸収剤と、特定の樹脂成分との組み合わせにすることにより、接着層と樹脂フィルムとの接着性を向上させた積層板とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層板は、2枚以上の樹脂フィルムが接着層を介して積層されている積層板であって、接着層の少なくとも一層が、ポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物が、樹脂成分100重量部に対して、55重量部以下であることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の積層板に用いられる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルムや、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどからなる各種の透明なプラスチックフィルムを使用することができる。
【0014】
また、2枚以上の樹脂フィルムは、それぞれ同種の樹脂フィルムでもよく、異種の樹脂フィルムでもよい。異種の樹脂フィルムを用いる場合には、少なくとも1枚、二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレートフィルムを最表面に配置すると、飛散防止性能が備わりやすく良い。また、両側に同一のフィルムを配置すると反りを防止しやすい。なお、プラスチックフィルムの表面には、コロナ放電処理や、下引き易接着処理などの易接着処理を施してもよい。
【0015】
各樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、一枚の厚みが10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、上限としては、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。10μm以上とすることにより、積層板製造時のシワ・破断などを抑制しやすい。300μm以下とすることにより、積層板を切削加工等する際の加工性が良好となる。
【0016】
積層する樹脂フィルムの枚数は、目標とする積層体の厚みや構成する樹脂フィルムの厚みによって異なるが、加工性や付与すべき機能層の種類等に応じて選択する。例えば500μm程度の積層体を目標とした場合、百数十μm程度の樹脂フィルムを使用して製造するよりも数十μm程度の樹脂フィルムの積層体として製造するほうが、接着層の数を多くすることができ、各層で異なる機能付加をすることができるため、高機能化をしやすい。また、樹脂フィルムの積層枚数が少ない場合には、積層板の表裏及び接着層での機能を付加しやすく、製造工程を単純化することで安価になりやすい。また工程数が少なくなるため、工程間エラーの影響が少なくなるという利点もある。
【0017】
接着層は、接着層の少なくとも一層が、ポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含むものである。
【0018】
樹脂成分を構成するポリオール系樹脂としては、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシポリオール樹脂などを用いることができる。樹脂フィルムとして、ポリエステル系フィルムを用いた場合には、接着性に優れるため、ポリエステルポリオール樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
ポリオール系樹脂の水酸基価は、20以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、8以下であり、特に、7〜4であることが望ましい。水酸基価をこの範囲とすることにより、後述するイソシアネート硬化剤との反応に寄与させることができ、凝集力の向上を図りやすい。
【0020】
ポリオール系樹脂のガラス転移温度は、20℃以下、より好ましくは10℃以下であり、さらに好ましくは、5℃以下である。20℃以下とすることでタック性を発現しやすく、貼り合せしやすい。また、−20℃以上とすることにより、製造後の強度を得やすくなる。
【0021】
同じく樹脂成分を構成するイソシアネート系硬化剤は、原料のイソシアネートによりトリレンジイソシアネート系、ジフェニルメタンジイソシアネート系、キシリレンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系、ヘキサメチレンジイソシアネート系などがあり、特に、無黄変性、耐候性の観点からキシリレンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系、ヘキサメチレンジイソシアネート系のものを用いることが好ましい。
【0022】
イソシアネート系硬化剤は、上記したポリオール系樹脂と架橋反応(ウレタン結合の形成)することにより、硬化剤としての役割を果たすようになるものである。イソシアネート系硬化剤は、ポリオール系樹脂に対して、1/2当量〜3当量とすることが好ましく、特に、1当量〜3当量であることが好ましい。
【0023】
水酸基含有ベンゾフェノン系化合物は、ベンゾフェノンのベンゼン環に、1以上の水酸基が結合したものである。ベンゾフェノン系化合物は、紫外線吸収剤として機能する物質であるが、特に水酸基が結合したベンゾフェノン化合物を用いることにより、紫外線吸収剤としての機能に加えて、上述した接着剤の樹脂成分と組み合わせた時に樹脂フィルムとの接着性を向上することができる。
【0024】
水酸基含有ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノンなどのヒドロキシベンゾフェノン系化合物、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2、4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシベンゾフェノン系化合物、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4’−トリヒドロキシベンゾフェノンなどのトリヒドロキシベンゾフェノン系化合物、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン系化合物を用いることができる。また、上記ベンゾフェノン系化合物は、他の基が付加されているものを含むものであり、例えば、メチル基やオクチル基、エチルアミド基などが付加されていても良い。
【0025】
これら化合物のうち、水酸基数が多いほど好ましい。具体的には、水酸基の数は、2以上が好ましく、より好ましくは、3以上、さらに好ましくは、4以上である。分子中の水酸基数が多くなるほど、樹脂成分との相溶性や接着層に対する溶解性が良好になる。
【0026】
このような水酸基含有ベンゾフェノン系化合物は、樹脂成分中のイソシアネート系硬化剤と反応し、樹脂フィルムとの接着性が向上しているのではないかと考えられる。
【0027】
また、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物は、一部はイソシアネート系硬化剤と反応し、未反応の化合物も樹脂成分との相溶性も保ちやすいことなどから、接着層からのブリードアウトを抑制することができる。そのため、紫外線吸収率を高くするために、水酸基含有ベンゾフェノン化合物の添加割合を増やしたとしても、ブリードアウトに起因する接着性および透明性の低下を防ぐことができる。
【0028】
水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量は、樹脂成分に100重量部に対して55重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、50重量部以下、さらに好ましくは、40重量部以下、特に好ましくは、20重量部以下である。55重量部以下とすることにより、樹脂成分による良好な接着性を維持することができる。また、ベンゾフェノン系化合物が塗膜中からブリードアウトし、塗膜が白化することを防止することができる。含有量の下限としては、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物が少量でも含まれていれば、含まれない場合に比べて接着性が向上するが、確実な接着性の向上効果と紫外線吸収性を得るために、1重量部以上が好ましく、5重量部以上がより好ましく、10重量部以上がさらに好ましい。
【0029】
また積層体の色味の変化を極力少なくし、高い透明性を維持するために、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物は、積層体の1m2当たりに0.006g以上、より好ましくは、0.012g、さらに0.018g以上とすることが好ましい。
【0030】
接着層には、上記成分のほか、他の樹脂成分や、表面改質剤、レベリング剤、酸化防止剤、色相調整剤などの添加剤を添加してもよい。
【0031】
ただし、樹脂成分中にポリオール系樹脂とイソシアネート系硬化剤の合計が占める割合が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。これにより上記ベンゾフェノン系化合物とともに用いた場合の接着性向上の効果を維持することができる。
【0032】
接着層の厚みは1〜50μmであることが好ましい。接着層の下限として、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、上限として、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。接着層の厚みを1μm以上とすることにより接着力が得られる。特に5μm以上にすることにより、万一夾雑物が混入した場合にもエア噛みの領域を少なくすることができる。また接着層の厚みを50μm以下とすることにより、硬化までの接着層の流動影響抑制や凝集破壊を防止することができる。また、接着層の乾燥時の対流による凹凸の発生を抑制することができる。
【0033】
本発明の積層板の物理的性質は、上述した積層板を構成する樹脂フィルムや接着層の材料や含有量によっても決まるものであり、これらを調整することによって調整することができるが、好ましい性質は次のとおりである。
【0034】
まず紫外線吸収性能は、一例として、385nmよりも短い波長における透過率が、10%以下、さらに、5%以下であることが樹脂フィルム及び他の部材の劣化防止の観点から好ましい。
【0035】
また積層体の色調を維持するという観点からは、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を添加した積層板と添加しない積層板の色差は少ないことが好ましく、具体的には、JIS K5600−4−6における△E*abで好ましくは6.5以下、よりに好ましくは3.2以下となるようにする。また透明性を確保するという観点からは、JIS K7361−1:1997における全光線透過率を、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上とし、JIS K7136:2000におけるヘーズを、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%とする。
【0036】
本発明の積層板では、接着層に含まれる水酸基含有ベンゾフェノン系化合物が、接着層の樹脂成分との相溶性を保ちやすいため、全光線透過率やヘーズの値を上述の範囲とすることができる。
【0037】
本発明の積層板は、上述した性質を備えることにより、タッチパネルセンサや液晶モジュールのカバーパネルとして好適に使用することができ、タッチパネルセンサや液晶モジュールの部材劣化を軽減し、着色を少なくすることができる。
【0038】
本発明の積層板は、接着層を構成する成分と必要に応じて加えられる溶剤を含む塗布液を、積層すべき樹脂フィルムの表面に塗工し、他の樹脂フィルムを重ね、接着層を硬化させることにより製造することができる。3枚以上の樹脂フィルムを積層する場合には、接着層用塗布液の塗工と接着層の硬化を順次行ってもよいし、2枚以上の樹脂フィルムにそれぞれ接着層用塗布液を塗工し、所定枚数を積層後に接着層を硬化させてもよい。接着層の硬化は、接着層用塗布液を加熱乾燥する際の熱で行ってもよいし、別途熱環境下で静置して行ってもよい。
【0039】
こうして得られる本発明の積層板は、積層板と同じ厚みの樹脂フィルム単層よりも強度が高く、また接着層の接着性が強いため、加工時や使用時に樹脂フィルムが接着層から剥がれることがない。
【0040】
本発明の積層板は、電子機器の表示部用の表面保護板として好適に用いることができるが、樹脂板やガラス板の一般的な用途にも用いることが可能である。また必要に応じて、一方の面又は両面に、ハードコート層、反射防止層、低反射層、着色層、印刷インク接着層、他部材へ貼り付けるための粘着層などの機能層を適宜設けることができる。積層板の両面に機能層を設ける場合、同じ機能を有する機能層であってもよく、異なる機能を有する機能層を設けることも可能である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0042】
[実施例1]
188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)の一方の面に、下記接着層塗料を塗布・乾燥させて、厚み10μmの接着層を形成した後、当該接着層上に、188μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)を貼りあわせて、実施例1の積層板を作製した。
【0043】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 3.80重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.64重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 0.76重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 12.48重量部
【0044】
[実施例2]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2の積層板を作製した。
【0045】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 4.30重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.71重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 0.25重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 12.16重量部
【0046】
[実施例3]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例3の積層板を作製した。
【0047】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 3.15重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.53重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 1.52重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 12.96重量部
【0048】
[実施例4]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例4の積層板を作製した。
【0049】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 4.10重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.68重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 0.51重量部
(Uvinul3000:BASFジャパン社、固形分100%、水酸基の数 2個)
・希釈溶媒 12.32重量部
【0050】
[実施例5]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、実施例5の積層板を作製した。
【0051】
<接着層塗料>
・ポリオール系アクリル樹脂 11.32重量部
(オリバインBPS5296:トーヨーケム社、固形分35%)
・イソシアネート系硬化剤 0.06重量部
(オリバインBXX4773:トーヨーケム社、固形分35%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 2.14重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 10.10重量部
【0052】
[比較例1]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層板を作製した。
【0053】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 2.30重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.38重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 2.53重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 13.59重量部
【0054】
[比較例2]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例2の積層板を作製した。
【0055】
<接着層塗料>
・アクリル樹脂 8.70重量部
(アクリディックA-195:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート系硬化剤 0.72重量部
(タケネートD-110N:三井化学社、固形分75%)
・水酸基含有ベンゾフェノン系化合物 0.69重量部
(Uvinul3050:BASFジャパン社、固形分100%、分子中の水酸基の数 4個)
・希釈溶媒 8.44重量部
【0056】
[比較例3]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例3の積層板を作製した。
【0057】
<接着層塗料>
・ポリオール系ポリエステル樹脂 4.50重量部
(バイロン500:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系硬化剤 0.75重量部
(タケネートD-160N:三井化学社、固形分75%)
・希釈溶媒 12.00重量部
【0058】
[比較例4]
実施例1の接着層塗料を下記の接着層塗料に変えた以外は実施例1と同様にして、比較例4の積層板を作製した。
【0059】
<接着層塗料>
・ポリオール系アクリル樹脂 11.32重量部
(オリバインBPS5296:トーヨーケム社、固形分35%)
・イソシアネート系硬化剤 0.06重量部
(オリバインBXX4773:トーヨーケム社、固形分35%)
・希釈溶媒 10.10重量部
【0060】
[T型剥離強度]
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた積層板を、T型剥離試験と同様に、左右に、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。基材破壊を起こしたものを「◎」、基材破壊は起こさないが、剥離に要した力が10N/25mm幅以上であったものを「○」、剥離に要した力が10N/25mm幅未満であったものを「×」とした。
【0061】
[全光線透過率・ヘーズ]
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた積層板について、ヘーズメーター(NDH2000:日本電色工業社)を用いて、JIS K7361−1:1997における全光線透過率、JIS K7136:2000におけるヘーズを測定した。結果を表1に示す。
【0062】
[紫外線透過率]
実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた積層板について、分光光度計(SolidSpec-3700:島津製作所社)を用いて、波長385nm、390nmの光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
[色差]
色差は、JIS K5600−4−6に準拠し、CIE1976(L)色空間における2色間の幾何学的な距離(△E*ab)を算出したものであり、実施例1〜4は比較例3との色差、実施例5は比較例4との色差を算出した。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例1〜実施例4の積層板は、接着層が、ポリオール系エステル樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量が、樹脂成分100重量部に対して、55重量部以下である。これら実施例の積層板は、同様にポリオール系エステル樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含むが、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含まない比較例3と比べて、接着層と樹脂フィルムとの接着性が向上したものであった。
【0066】
特に水酸基数が4のベンゾフェノン系化合物を用いた実施例1〜実施例3の積層板は、接着性と紫外線吸収性のいずれについても優れた結果が得られた。中でも、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量が、樹脂成分100重量部に対して、10重量部以上20重量部以下の実施例1の積層板は、接着性、紫外線吸収性、全光線透過率、ヘーズ、色差のすべてにおいて優れた結果が得られた。
【0067】
実施例5の積層板は、接着層が、ポリオール系アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含む樹脂成分と、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含み、水酸基含有ベンゾフェノン系化合物の含有量が、樹脂成分100重量部に対して、50重量部以下である。実施例5の積層板は、ポリエステル系樹脂を用いた実施例1〜実施例4の積層板に比べると、接着性は劣るが、実施例5と同様にポリオール系アクリル樹脂とイソシアネート系硬化剤とを含むが水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を含まない比較例4と比べると、接着層と樹脂フィルムとの接着性が向上したことがわかる。
【0068】
一方、比較例1の積層板は、接着層に水酸基含有ベンゾフェノン系化合物を多量に含むため、接着層中の接着成分の割合が低下してしまい、実施例1〜5と比べて、接着性に劣り、樹脂フィルムが剥離してしまうものとなった。
【0069】
比較例2の積層板は、接着層の樹脂成分として、アクリル系樹脂を用いたものである。接着層に、ポリオール成分が含まれないため、実施例1〜5と比べて、接着性に劣り、樹脂フィルムが剥離してしまうものとのなった。
【0070】
また、比較例1、比較例2の積層板は、接着層と樹脂フィルムとの接着力がなく、接着層と樹脂フィルムとの間で、ところどころで空気が入っていたため、全光線透過率やヘーズが、実施例のものと比べ劣るものとなった。