【課題を解決するための手段】
【0020】
それ故、本発明は、ポリオールの、3〜20個の炭素原子を有する線状又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸による反応によってポリオールエステルを製造する方法であって、触媒として周期表の第4族から第14族までの少なくとも一種の元素を含有するルイス酸の存在下に、かつ、吸着剤の存在下において、形成される水を除去しながら出発化合物の化合物を反応させ、そして引き続いて得られた粗製エステルを、
pH値1〜6.5を有する酸性の活性炭である更なる吸着剤の添加によって後処理することを特徴とする、該方法に関する。
【0021】
出発化合物のポリオールと脂肪族モノカルボン酸との間の反応は、投入材料に依存して、約120〜180℃の範囲内で適用され、そして、引き続いて、様々に設計された方法で終了するまで行うことができる。
【0022】
本発明の方法の構成によれば、反応水の除去を簡単にするために、最初に、室温から最大で280℃にまで、好ましくは、250℃にまで加熱し、そして、一定に保持された温度において、圧力を標準圧から徐々に低下させる。圧力段階の選択は、一段階、二段階又は多段階のいずれか、並びにそれぞれの段階に対して調節すべき圧力に、広範囲にわたって変化させ、かつ、それぞれの条件に適合させることができる。例えば、圧力の第一の段階において、標準圧力から最初に600hPaまでに低下させそして引き続いて、反応を、300hPaの圧力で最後まで行うことができる。この圧力の情報は、合目的的に適合されるガイド値である。
【0023】
該圧力の多様性の他にも同様に、温度もまた、エステル化反応の間に室温から一段階、二段階又は多段階で変化させることができ、その結果、一定に調節された圧力において、温度は段階的に高められ、通常、最大で280℃の温度までに高められる。温度を段階的に最大で280℃に加熱することが合目的的であることが実証されているが、圧力もまた段階的に低下させる。例えば、エステル化反応は、第一の段階において、室温から開始して、190℃までの温度において行うことができる。同様に、水の排除を加速させるために、低下した圧力を600hPaまでにする。190℃の温度に達した後、圧力は、再度、300hPaまでに低下させ、そして、エステル化反応を250℃までの温度において終了するまで行う。この温度及び圧力の仕様はガイド値であり、適した方法が保持される。それぞれの段階に調節すべき温度条件及び圧力条件、段階の数並びに、時間単位当たりのそれぞれの温度加熱速度又は圧力低下速度は、広い範囲にわたって変更することができ、そして出発化合物及び反応生成物の物理的特性に応じて適合させることができ、その際、第一の段階の温度条件及び圧力条件は、標準圧力及び室温から調節される。第二の段階における温度を高め、そして第二の段階において圧力を低下させることが特に好都合であることが判明した。
【0024】
調節すべき圧力の下限は、物理的特性、例えば、沸点及び蒸気圧、出発化合物並びに形成される反応生成物に依存しており、そして、装置の設備によってもまた決定される。標準圧に基づいて、この限界値の内側で、段階的に低下させた圧力で段階的に操作することができる。温度の上限は通常280℃であり、色に有害な分解生成物の形成を回避するために保持される。温度段階の下限は、反応速度によって決定され、これは、エステル化反応を合理的な時間内に完了させるのに十分高くなくてはならない。この限界値内において、段階的に上昇する温度によって徐々に操作することができる。
【0025】
それぞれの反応条件、例えば、温度、反応時間、適用する圧力又は使用される触媒は、十分な反応速度で、背景において着色する成分の形成を促し、かつ、ポリオールエーテルの分解反応を可能な限り回避するために、それぞれのポリオールエステルに適合させるべきである。特に、エーテルジオール、例えば、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールをベースとするポリオールエーテルの場合、反応条件、例えば、温度、反応時間及び触媒の種類及びその量が、それぞれのポリオールエステルに対して合目的的に調節されない場合に、エーテル骨格の強化された分解が適用できる。
【0026】
エステル化は、化学量論量のポリオール及び脂肪族モノカルボン酸によってなすことができる。しかしながら、好ましくは、ポリオールを、一般には低沸点成分であり、かつ、その後の粗製エステルの再処理時に、簡単な方法で蒸留によって分離できるモノカルボン酸試薬によって行うことができる。脂肪族モノカルボン酸は、ポリオールのエステル化するヒドロキシ基1モル当たり10〜50%濃度モル、好ましくは20〜40%濃度モルの過剰で使用される。
【0027】
形成された反応水は、エステル化反応の過程で、過剰のモノカルボン酸と共に反応容器から留去され、そして、下流の相分離器中へ誘導され、そこでモノカルボン酸及び水は、それらの溶解特性に応じて分離される。反応容器と相分離器との間には、同様に、1〜25個、好ましくは2〜10個、特に好ましくは3〜6個の論理的なプレートを有する分留塔を設置することができ、該塔において、塔の頂部を介して水に富んだ留分を相分離器中へ誘導し、そしてモノカルボン酸に富んだ留分を塔の底部を介して反応容器中へ還流させる。
【0028】
場合によっては、使用したモノカルボン酸が水と共に、反応条件下において共沸分もまた形成され、そして、添加溶剤としての反応水を除去することができる。水の攻撃から、反応過程を追跡することができる。遊離した水はプロセスから除去される一方で、モノカルボン酸は、相分離器から再び反応容器へ還流される。更なる有機溶媒、例えば、共沸混合物の形成を目的として採用されるヘキサン、1−ヘキセン、シクロヘキセン、トルエン、キシレン又はキシレン異性体混合物の添加は制限されないが、いくつかの例外的な場合に限定される。共沸混合物は、エステル化反応の開始時にすでに添加されているか又はより高温に達した後に添加することができる。理論的に推測される水の量が発生しているか又は例えば、DIN 53240に準拠して測定された水酸価が、所定値を下回っている場合、反応を終了し、その場合反応投入物は冷却することができる。
【0029】
ポリールのモノカルボン酸によるエステル化のための触媒として、元素の周期表の第4族から第14族までの少なくとも一種の元素を含有するルイス酸が使用され、これは固体形態又は液体形態で使用することができる。本発明の意味において、ルイス酸とは、一般に、そのような元素又は化合物の通常の定義であると理解され、これは、例えば、Roempp’s Chemie−Lexikon, 8. Auflage, Franck’sche Verlagshandlung 1983, Band 3, H−L(非特許文献5)において説明されるような電子のギャップを有する。エステル化反応における触媒として使用できるルイス酸として特に好ましいものとしては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、亜鉛、ホウ素、アルミニウム又はスズが挙げられ、これらは、微細に分割された形態か又は好ましくは化合物の形態で使用される元素である。適した化合物は、例えば、酸化スズ(II)、酸化スズ(IV)、カルボン酸スズ(II)、例えば、スズ(II)−2−エチレンヘキサノエート、シュウ酸スズ(II)、酢酸スズ(II)又は酢酸スズ(IV)、スズ(IV)アルコラート、例えば、テトラ(メチル)スタナート、テトラ(エチル)スタナート、テトラ(プロピル)スタナート、テトラ(イソプロピル)スタナート又はテトラ(イソブチル)スタナート、又は有機スズ化合物、例えば、ブチルスズマレエート又はジブチルスズラウレートである。適したチタン化合物としては、アルコラート、例えば、テトラ(メチル)オルトチタナート、テトラ(エチル)オルトチタナート、テトラ(プロピル)オルトチタナート、テトラ(イソプロピル)オルトチタナート、テトラ(ブチル)オルトチタナート、テトラ(イソブチル)オルトチタナート、テトラ(ペンチル)オルトチタナート又はテトラ(2−エチルヘキシル)オルトチタナート;アセチレート、例えば、ヒドロキシチタンアセチレート、ヒドロキシチタンブチラート又はヒドロキシチタンペンタノエート;カルボキシレート、例えば、チタン(IV)−アセテート、チタン(IV)−プロピオナート、チタン(IV)−ブチラート、チタン(IV)−ペンタノエート又はチタン(IV)−2−エチルヘキサノエート;又はキレート、例えば、テトラエチレングリコールチタナート又はテトラプロピレングリコールチタナートが挙げられる。適当なジルコニウム化合物又はハフニウム化合物も良好に使用でき、例えば、テトラ(メチル)オルトジルコナート、テトラ(エチル)オルトジルコナート、テトラ(プロピル)オルトジルコナート、テトラ(イソプロピル)オルトジルコナート、テトラ(ブチル)オルトジルコナート、テトラ(イソブチル)オルトジルコナート、テトラ(ペンチル)オルトジルコナート又はテトラ(2−エチルヘキシル)オルトジルコナートである。
【0030】
同様に、ホウ酸並びにホウ酸エステル、例えば、ホウ酸トリメチルエステル、ホウ酸トリエチルエステル、ホウ酸トリプロピルエステル、ホウ酸トリイソプロピルエステル、ホウ酸トリブチルエステル又はホウ酸トリイソブチルエステルが適している。
【0031】
同様に、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、カルボン酸アルミニウム、例えば、酢酸アルミニウム又はステアリン酸アルミニウム、又はアルミニウムアルコラート、例えば、トリブチル酸アルミニウム、トリ−sec−ブチル酸アルミニウム、トリ−tert−ブチル酸アルミニウム又はトリ−イソプロピル酸アルミニウムが適している。
【0032】
酸化亜鉛、硫酸亜鉛及びカルボン酸亜鉛、例えば、酢酸亜鉛二水和物又はステアリン酸亜鉛、及び酢酸鉄(II)又は酸化水酸化鉄(III)も触媒として使用できる。
【0033】
触媒は、開始時にできるだけ早く反応混合物に添加するか、又はそれに続いて高められた温度で安全な測定を観察しながら転化するとともに、例えば、反応水の分離が開始されたときに添加できる。触媒はその際に、一部又は部分的に添加できる。エステル化反応の終わりに、触媒の残量を添加することが特に推奨される。
【0034】
添加すべきエステル化触媒の量は、過剰に添加された出発化合物に基づいて、合目的的には、ポリオールに基づいて、1×10
−5〜20モル%、好ましくは、0.01〜5モル%、特に、0.01〜2モル%である。より多量の触媒の場合、ポリオールの分裂反応が見込まれる。
【0035】
好ましくは、エーテルジオール、例えば、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールをベースとしてポリオールエステルを製造する際、反応終了時に高濃度の触媒を投入する時、及び遊離した水酸基の最後の残基の転化の段階において、エーテル鎖の分裂が高まるおそれがあるため、この場合、反応温度又は適用した圧力を適合させるべきである。選択した触媒濃度が高い程、一般には、より低い反応温度又は適用した圧力を選択すべきで最適化した温度プロフィル及び圧力プロフィルにしたがって操作すべきである。触媒濃度が低すぎると、エステル化速度が低下して、合理的な反応時間では、許容可能な反応が観察されない。
【0036】
エステル化触媒の添加は、液体形態又は固体形態で行うことができる。固体の触媒、例えば、酸化スズ(II)、酸化亜鉛又は酸化水酸化鉄(III)は、エステル化反応の終了後に、更なる再処理中に分離される。エステル化触媒が液体の化合物として添加される場合、例えば、テトラ(イソプロピル)オルトチタナート又はテトラ(ブチル)オルトチタナートの場合、エステル化反応の終了後に反応混合物中に依然として溶解して存在するため、これらの化合物を、再処理方法の間に転化生成物に転化し、これらは、エステル化反応中に使用する吸着剤によって、かつ、後処理の間に添加された
酸性の活性炭によって分離する。
【0037】
エステル化は、吸着剤の存在下に行われる。その際に、通常、化学的な実践上、研究室においても工業プラントにおいても使用される、多孔質で、表面積の大きい固体材料が使用される。そのような材料の例は、表面積に富んだポリケイ酸、例えば、ケイ酸シリカゲル(Silicagele)(シリカキセロゲル)、シリカゲル(Kieselgel)、珪藻土、表面積に富んだ酸化アルミニウム及び酸化アルミニウム水和物、鉱物材料、例えば、粘土又は炭酸塩、又は活性炭などである。特に、活性炭が実証されている。一般に、吸着剤は、反応溶液中において微細に懸濁し、これは強い撹拌又は不活性ガスの導入によって撹拌される。それによって、液相と吸着剤との間の密な接触が達成される。吸着剤の量は広く自由であるため、個々の要求に応じて調整される。液体の出発物質100重量部に基づいて、0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部の吸着剤が投入される。
【0038】
冒頭に記載したポリオールエステルのための品質基準に起因して、反応水を除去しながらのエステル化段階時、及び粗製エステルの再処理時に、方法工程は、非常に顕著なプロセスの特徴を有し、それ故、この方法工程の調整は、最終生成物の感覚的及び視覚的な特徴並びに触媒の残留含有量に考慮すべき程度の影響を及ぼす。特に、最適化されたプロセスの実施によって、エーテルジオール、例えば、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールをベースとし、高純度並びに低減された色数及び高い色安定性を有するポリオールエステルが得られる。出発物質、すなわち、多価アルコール及び脂肪族モノカルボン酸の構造は、ポリールエステルで可塑化されるプラスチック材料の機械特性及び熱的特性に応じて適合され、そして、滑剤の加水分解及び酸化安定性に影響を及ぼす。
【0039】
反応終了後に生じる反応混合物は、過剰のモノカルボン酸で作用させる本発明の方法の好ましい実施形態に準拠する限り、所望の反応生成物としてのポリオールエステル、場合によっては、未転化の出発物質の他に、特に、過剰の脂肪族モノカルボン酸が生じる。通常、低下させた圧力の適用下で目的に応じて、未転化の、及び過剰に存在する出発化合物を最初に留去する。
【0040】
引き続いて、粗製エステルに、
酸性の活性炭を添加し、該添加剤は、例えば、強い撹拌又は不活性ガスの導入によって、例えば、処理すべき粗製エステル中に微細に懸濁される。処理すべき粗製エステル100重量部に基づいて、一般に、0.05〜2.5重量部、好ましくは、0.1〜0.75重量部の
酸性の活性炭が添加される。一般に、粗製エステルに添加される
酸性の活性炭の量は、エステル化反応の間に使用される吸着剤の量に比較して明らかに少なく、そして通常、エステル化反応の間に添加される量の50%までである。粗製エステルの
酸性の活性炭による処理は、一般に、室温〜
140℃の温度、好ましくは、60〜
120℃の温度で、かつ、一般に、0.5〜4時間、好ましくは、0.5〜2時間の期間にわたって行われる。本発明の方法のさらなる実施形態においては、該
酸性の活性炭は、エステル化反応の終了後ではあるが、過剰に存在する出発化合物、通常はモノカルボン酸の分離前又は分離の間に添加される。この変化の場合、過剰な出発化合物の主要量の分離時に該
酸性の活性炭はすでに存在している。この場合、粗製エステルの該
酸性の活性炭による後処理は、過剰に存在する出発化合物の分離時に実施される条件下において行われる。
【0041】
驚くことに、該
酸性の活性炭による後処理によって、粗製生成物中のルイス酸触媒の残留含有量が著しく低減できることが評価された。ルイス酸触媒の残留含有量が低減されればされる程、
活性炭はますます酸性になるか又は
活性炭のpH値はますます低くなる。
活性炭のpH値とは、本発明の意味において、100mlの脱イオン化された水中へ、95℃において1時間かけて
酸性の活性炭5gを懸濁することによって得られる水性の抽出物のpH値である。引き続いて、pH値は25℃で測定される。
酸性の活性炭として強酸の
活性炭を使用する場合、水性の抽出物は5.5未満のpH値を有し、粗製生成物中のルイス酸触媒の含有量を大きく低減させることができ、このことは、国際公開第2011/042116 A1号パンフレット(特許文献4)中に提案されている熱加水分解なしで済ますことができる。時間を要する熱加水分解によってエステル化装置が占有されるため、装置の出力及びエステル化法の効率を改善することができる。この結果は予測されていなかった。というのも、酸性のルイス酸触媒の吸着並びにその分解生成物は、むしろアルカリ性の反応性吸着剤で行うべきだからである。
【0042】
より酸性が低くかつその水性抽出物が5.5〜6.5のpH値を有する酸性の
活性炭が使用される場合、熱加水分解は、該
酸性の活性炭の存在下に行うことが薦められるが、これは、塩基性の吸着剤が添加される場合の熱加水分解に比較して著しく短時間である。国際公開第2011/042116 A1号パンフレット(特許文献4)による従来技術の場合、熱加水分解の期間は30分〜5時間であることが教示されているが、穏やかな酸性の
活性炭の存在下における任意の熱加水分解の継続時間は、30分までの期間に短縮することができる。通常の90〜120分という熱加水分解を45分にすでに短時間化されたことにより、エステル化方法の効率が高められる。しかしながら、穏やかな酸性の
活性炭を使用する場合でも、ルイス酸触媒の残留含有量を許容可能な基準まで抑えるために熱加水分解は必ずしも要求されない。
【0043】
更なる吸着剤としてそのような吸着剤が使用される場合、その水性の抽出物は6.5超のpH値を示し、その更なる吸着剤の存在下における熱加水分解が強く推奨され、一般に、30分〜2時間の期間にわたり行われる。任意に行われる熱加水分解が長くなればなる程、後処理において添加される更なる吸着剤はますます塩基性となり、したがって、その水性抽出物のpH値はますます高くなると一般に言える。
【0044】
粗製エステルの後処理のために添加される
酸性の活性炭は、多孔質で表面積の大きい固体の
活性炭であり、例えば、活性化されている。
活性炭は、例えば、水蒸気を用いて活性することができ、そして、それらは、
活性炭の酸性特性に影響を及ぼす
。1〜6.5、好ましくは2〜5.5のpH値を
有する活性炭が使用され
、例えば、市場から入手可能な、Norit社のType CA1又はSX 1G、又はChemviron Carbon社のDCL 330である。上述の酸性の
活性炭の混合物も同様に使用することができる。
【0045】
任意の熱加水分解は、一般に、標準圧力で行われるが、利便的に、400hPaまでのわずかに低い圧力の使用は排除されない。熱加水分解は、一般に、100〜250℃、好ましくは150〜220℃、特に、170〜200℃の温度で、そしてまた、製造されるポリオールそれぞれの物理的特性にしたがって行われる。
【0046】
粗製エステルを熱加水分解の温度に必要な温度に加熱するために、任意の熱加水分解のプロセス工程の際に、作用温度を達成するまでの加熱時間の間、合目的的に可能な限り穏やかに加熱する。
【0047】
穏やかな熱加水分解によって、分解反応、特に、エーテルジオール、例えば、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコールをベースとしてポリオールエステルを製造する際のエーテル鎖の望ましくない分解を抑制することができる。
【0048】
ポリオールエステルの中和価をさらに低減するために、場合によっては、熱加水分解後に、固体のアルカリ性反応物質、例えば、塩基性の二酸化ケイ素、塩基性の酸化アルミニウム、又は炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、又は固体形態の水酸化ナトリウム並びに塩基性の反応性鉱物の添加を行う。
【0049】
引き続いて、慣習的に、40〜120℃の温度で粗生成物はろ過されて、後処理の間に添加される
酸性の活性炭並びに、エステル化の間に添加される吸着剤、触媒の分解生成物及び、場合によって添加された固体のアルカリ性反応物質を分離する。ろ過は、通常のろ過助剤、例えば、セルロース、シリカゲル、珪藻土又は木粉によって行うことができる。
【0050】
その後、例えば、生成物を高められた温度で生成物に不活性ガスを通すことにより、ポリオールエステルを乾燥させる。また、高められた温度で同時に低圧にし、場合によっては、及び生成物に不活性ガスを誘導することもできる。不活性ガスの作用を用いることなく、高められた温度又は低下させた圧力のみで処理することもできる。それぞれの乾燥条件、例えば、温度、圧力及び期間は、簡単な予備実験によって決定することができる。一般に、80〜250℃、好ましくは100〜180℃の範囲内の温度、及び0.2〜500hPa、好ましくは1〜200hPa、特に好ましくは1〜20hPaの圧力で処理は行われる。乾燥により、出発化合物の残滓、例えば、モノカルボン酸、及び水が除去される。それに続いて、乾燥したポリオールエステルは、ろ過によって最後の固形物質を分離する。ろ過は、慣用のろ過装置において、標準温度又は120℃までの温度で、場合によっては、慣用のろ過助剤の存在下で行われる。
【0051】
ろ過の完了後、淡色のポリオールエステルが得られ、これは、残りの特性、例えば、水分含有量、残留酸含有量、触媒成分の残存含有量及びモノエステルの残存含有量も満たす。
【0052】
本発明の方法のための出発材料として使用される多価アルコール又はポリオールは、次の一般式(I)を満たす。
R(OH)
n (I)
【0053】
式中、Rは、2〜20個、好ましくは2〜10個の炭素原子を有する脂肪族又は環状脂肪族の炭化水素残基であり、nは2〜8、好ましくは、2、3、4、5又は6の整数を意味する。
【0054】
ポリオールとして、同様に、次の一般式(II)で表される化合物が適している。
H−(−O−[−CR
1R
2−]
m−)
o−OH (II)
【0055】
式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、水素、1〜5個の炭素原子を有するアルキル残基、好ましくは、メチル、エチル又はプロピルか、又は1〜5個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル残基、好ましくはヒドロキシメチル残基を意味し、mは、1〜10、好ましくは1から8、そして特に好ましくは1、2、3又は4の整数を意味し、oは、2〜15、好ましくは2〜8、そして特に好ましくは2、3、4又は5の整数を意味する。
【0056】
本発明の方法に従って、淡色のポリオールエステルに転化できるポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチロールブタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール又はジーペンタエリスリトール又は3(4),8(9)−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカンである。
【0057】
さらなるポリオールとしては、エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコール及びそのオリゴマー、特に、エーテルジオールジ−、トリ−及びテトラエチレングリコール又はジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はテトラプロピレングリコールが考慮される。エチレングリコール及びプロピレングリコールは、産業的に製造される化学物質である。それらを製造するための基本物質はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドであり、圧力下における水の加熱によってそれらから1,2−エチレングリコール及び1,2−プロピレングリコールが得られる。ジエチレングリコールは、エチレングリコールからエトキシル化によって得られる。トリエチレングリコールは、テトラエチレングリコールのように、エチレングリコールを製造するためのエチレンオキシドの加水分解の際の副生成物として生成する。二つの化合物は、エチレングリコールのエチレンオキシドとの反応によっても合成することができる。ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール及びより高級なプロポキシル化生成物は、プロピレンオキシドの1,2−プロピレングリコールへの多重付加から入手できる。
【0058】
本発明のプロセスに従って淡色のポリオールエステルを得るために、1分子中に3〜20個の炭素原子を有する線状又は分岐状の、脂肪族モノカルボン酸が使用される。多くの場合において飽和された酸が好ましいが、可塑剤又滑剤のそれぞれの使用分野に依存して、エステル合成の反応成分として、不飽和のカルボン酸も使用できる。ポリオールエステルの構成成分としてのモノカルボン酸の例として、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、n−ヘキサン酸、2−エチル酪酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、イソノナン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、2−メチルウンデカン酸、イソウンデカンカルボン酸、トリシクロデカンカルボン酸及びイソトリデカンカルボン酸が挙げられる。特に実証されているのは、モノエチレングリコール又はオリゴマーのエチレングリコール、並びに1,2−プロピレングリコール又はオリゴマーのプロピレングリコールの、C
4−〜C
13−モノカルボン酸又はC
5−〜C
10−モノカルボン酸によるポリオールエステルの製造、並びに1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール又は3(4),8(9)−ジヒドロキシメチル−トリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカンをベースとするポリオールエステルを製造するための新規な方法である。
【0059】
エチレングリコールのポリオールエステル並びにそれのオリゴマーは、通常の高重合性熱可塑性物質の全てのための可塑剤として非常に優れて適している。特に有用なのは、多層型ガラス又は積層型ガラスを製造するための中間層として、グリコールエステルと混合されたポリビニルブチラールへの添加剤として使用される場合である。これらは同様に、コーティング剤として広範囲の用途が見出される、プラスチックの水性分散物における合体剤又は膜形成助剤として使用できる。本発明の製造方法によれば、優れたカラー特性を有し、その他の品質に関する要求、例えば、弱い臭気、低い酸価及び触媒不純物の低い含有量などを満たすポリオールエステルを簡単な方法で製造できる。本発明の方法は、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3G8エステル)、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(4G7エステル)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチラート(3G6エステル)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート(3G7エステル)又はテトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(4G8エステル)の製造に特に適している。
【0060】
本発明の方法は、化学技術のための典型的な反応装置において、連続式に又はバッチ式に行うことができる。撹拌式タンクのカスケードタンクシステム又は反応管としても知られている撹拌式タンクが有効であると実証されている場合、バッチ式で反応を遂行することが好ましい。
【0061】
以下の例において、本発明の方法をより詳細に説明する。