【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1を
図1乃至
図9に基づいて説明する。
まず、
図1及び
図2に基づいてソフトバックアップピン11の構成を説明する。
【0024】
ソフトバックアップピン11は、下部側のホルダ部12と、該ホルダ部12に交換可能に保持される上部側のソフトピン部13とから構成されている。ソフトピン部13は、ウレタン、ゴム等の軟質弾性材料で弾性変形可能に形成され、その下部には、円柱形状を保持する円筒状のサポート金具14が装着、固定されている。
【0025】
一方、ホルダ部12は、ホルダ本体15とプラグ部16とからなる2ピース構造であり、プラグ部16の上部側に円筒状の嵌合部17が上向きに形成され、この嵌合部17にソフトピン部13のサポート金具14の部分が着脱可能に嵌合されている。プラグ部16には、ねじ孔18(
図1参照)が嵌合部17内に貫通するように形成され、このねじ孔18に固定ねじ19を締め込んで、該固定ねじ19の先端をソフトピン部13のサポート金具14に圧接させることで、ソフトピン部13をプラグ部16に固定するようにしている。ここで、ソフトピン部13をプラグ部16に固定する理由は、ソフトピン部13の上端部が回路基板35に粘着してソフトピン部13がプラグ部16から抜けることを防止するためである。プラグ部16の下部側には、突起部20が下向きに形成され、この突起部20がホルダ本体15の上部側に形成された嵌合穴(図示せず)に着脱可能に嵌合されるようになっている。
【0026】
ソフトピン部13が半田等で汚れたり、傷んだりした場合には、固定ねじ19を緩めてプラグ部16の嵌合部17からソフトピン部13を取り外し可能な状態にして、ソフトピン部13のみを交換すれば良い。
【0027】
一方、ソフトバックアップピン11のホルダ本体15は、
図3及び
図4に示すハードバックアップピン25のホルダ本体15としても使用される。ハードバックアップピン25は、ハードピン部26とホルダ本体15とから構成されている。ハードピン部26は、金属、プラスチック等の硬質材料で形成され、その下部側には、突起部27が下向きに形成され、この突起部27がホルダ本体15の上部側に形成された嵌合穴(図示せず)に着脱可能に嵌合されるようになっている。ハードピン部26の上端面には、画像処理で認識可能な円形の認識マーク30が設けられている。ソフトピン部13とハードピン部26は、それぞれ、交換時に形状や材質の異なる複数種類のピン部の中から選択できるようにしても良い。
【0028】
ホルダ本体15の下部側には、後述するバックアッププレート40上に該ホルダ本体15を磁力により保持する磁石28が設けられている。
【0029】
更に、ソフトバックアップピン11のホルダ部12のうちのソフトピン部13の外周囲にはみ出した部分である円筒状の嵌合部17の上端面には、後述する画像処理で該ソフトピン部13と区別して認識可能な円環状の背景部29が設けられ、この円環状の背景部29がソフトバックアップピン11の認識マークとしても機能する。このソフトバックアップピン11の認識マークである円環状の背景部29の形状がハードバックアップピン25の認識マーク30の形状と異なるため、画像処理でマーク形状を認識することで、ソフトバックアップピン11とハードバックアップピン25とを判別できるようになっている。
【0030】
次に、
図5及び
図6を用いて部品実装機の部品実装ステーション32の構成を説明する。部品実装ステーション32は、コンベア33,34で搬入されてきた回路基板35に部品実装機の実装ヘッド(図示せず)で部品を実装する場所である。コンベア33,34は、回路基板35の左右両辺部を載せて搬送するように該回路基板35の搬送方向と平行に配置され、右側のコンベア33を保持するレール37は、位置が固定された基準レールであり、左側のコンベア34を保持するレール38は、回路基板35の幅に応じてその幅方向に移動する可動レールとなっている。
【0031】
部品実装ステーション32には、ソフトバックアップピン11又はハードバックアップピン25を載せるバックアッププレート40が水平に設けられている。このバックアッププレート40は、鉄等の磁性材料で形成され、各バックアップピン11,25がそのホルダ本体15の磁石28によりバックアッププレート40上に吸着保持されるようになっている。
図6に示すように、バックアッププレート40は、昇降機構41によって昇降するように構成され、下降動作時の下限位置が
図6(a)に示す基板アンクランプ位置となり、上昇動作時の上限位置が
図6(b)に示す基板クランプ位置となる。
【0032】
図6(a)に示すように、バックアッププレート40が基板アンクランプ位置に下降した状態では、バックアッププレート40上の各バックアップピン11,25の上端がコンベア33,34上の回路基板35の下面よりも低い位置にあり、且つ、コンベア33,34上の回路基板35の下面に先付け部品42が実装されている場合は、バックアッププレート40上のソフトバックアップピン11の上端が該回路基板35の下面の先付け部品42の下端よりも低くなるように設定されている。
【0033】
一方、
図6(b)に示すように、バックアッププレート40が基板クランプ位置に上昇した状態では、バックアッププレート40上の各バックアップピン11,25の上端がコンベア33,34上の回路基板35の下面に当接して該回路基板35を下方から支えて該回路基板35の曲りを防止する。バックアッププレート40が基板クランプ位置に上昇する際に、コンベア33,34の内側に位置するクランプ部材43が上昇して、各レール37,38の上端内側に設けられたフランジ部37a,38aとクランプ部材43との間に回路基板35の左右両辺部を挟み込んでクランプするようになっている。
【0034】
図5及び
図6に示すように、バックアッププレート40の側縁部のうちの基準レール37の内側近傍には、切欠部40aが形成され、該切欠部40aの縁部に複数本のバックアップピン11,25を収納するストッカー44が取付具45(
図6参照)を介して取り付けられている。ストッカー44は、基準レール37の内側に沿って複数本のバックアップピン11,25を一列に並べて載置できるように形成されている。ストッカー44の上面には、複数本のバックアップピン11,12のホルダ部13を1個ずつ嵌合して収納する複数の収納凹部46(
図6参照)が一列に形成され、各収納凹部46に収納したバックアップピン11,25がバックアッププレート40の切欠部40aから上方に露出するようになっている。
【0035】
本実施例1では、基準レール37の内側近傍の2箇所にストッカー44が設けられ、一方のストッカー44にソフトバックアップピン11が収納され、他方のストッカー44にハードバックアップピン25が収納される。尚、ハードバックアップピン25のみを使用する片面実装基板の生産では、2箇所のストッカー44にハードバックアップピン25のみを収納し、ソフトバックアップピン11のみを使用する両面実装基板の生産では、2箇所のストッカー44にソフトバックアップピン11のみを収納するようにすれば良い。
【0036】
次に、部品実装機の実装ヘッドに保持されたチャック(図示せず)を用いて、バックアッププレート40上のバックアップピン11又は25を載せ替える動作を説明する。
【0037】
実装ヘッドの移動動作とチャックの開閉動作は、部品実装機の制御装置51(
図9参照)によって制御される。バックアッププレート40上の各バックアップピン11又は25を載せ替える動作は、バックアッププレート40の上方に回路基板35が存在しない状態で行われる。この際、バックアッププレート40を基板クランプ位置へ上昇させても良いし、上昇させずに基板アンクランプ位置で各バックアップピン11又は25を載せ替える動作を行うようにしても良い。
【0038】
バックアッププレート40上のバックアップピン11又は25を取り外してストッカー44に収納する場合は、バックアッププレート40上の取り外しの対象となるバックアップピン11又は25の上方へ実装ヘッドを実装ヘッド移動装置52(
図9参照)によって移動させて、当該バックアップピン11又は25のホルダ本体15を当該実装ヘッドのチャックで掴んで、当該バックアップピン11又は25をバックアッププレート40から引き剥がした後、当該バックアップピン11又は25をストッカー44の空いている収納凹部46の上方へ移動させて、当該収納凹部46内に収納する。
【0039】
尚、バックアッププレート40上に載せたバックアップピン11又は25の位置を、当該バックアッププレート40上の別の位置に移し替える場合は、移し替えの対象となるバックアップピン11又は25のホルダ本体15をチャックで掴んで、当該バックアップピン11又は25をバックアッププレート40から引き剥がした後、当該バックアップピン11又は25をバックアッププレート40の目標とする載せ替え位置の上方へ移動させて、当該バックアップピン11又は25を下降してバックアッププレート40上に載せる。これにより、バックアップピン11又は25は、そのホルダ本体15の磁石28の磁力によりバックアッププレート40上の目標とする載せ替え位置に吸着保持される。
【0040】
一方、ストッカー44に収納したバックアップピン11又は25をバックアッププレート40上の目標とするピン載置位置に載せる場合は、ストッカー44に収納した複数本のバックアップピン11又は25の中から、バックアッププレート40上に載せるバックアップピン11又は25を選択して、当該バックアップピン11又は25のホルダ本体15をチャックで掴んでストッカー44から引き上げた後、当該バックアップピン11又は25をバックアッププレート40の目標とするピン載置位置の上方へ移動させて、当該バックアップピン11又は25を下降してバックアッププレート40上に載せる。これにより、バックアップピン11又は25は、そのホルダ本体15の磁石28の磁力によりバックアッププレート40上の目標とするピン載置位置に吸着保持される。
【0041】
部品実装機には、実装ヘッドの吸着ノズルに吸着した部品をその下面側から撮像する部品撮像用のカメラ53(
図9参照)と、回路基板35の基準位置マーク(図示せず)を撮像するマーク撮像用のカメラ54(
図9参照)とが設けられている。マーク撮像用のカメラ54は、実装ヘッド移動装置52(
図9参照)によって実装ヘッドと一体的に移動し、バックアッププレート40上のソフトバックアップピン11とその外周囲の背景部29を含む領域を上方から撮像するカメラとしても用いられる。
【0042】
尚、バックアッププレート40上にハードバックアップピン25が載置されている場合は、カメラ54でハードバックアップピン25を撮像して、その撮像画像からハードバックアップピン25の上端の認識マーク30を認識する。また、ソフトバックアップピン11とハードバックアップピン25とでは、認識マーク(背景部)29,30の形状が異なるため、撮像画像から認識マーク29,30の形状を認識することで、ソフトバックアップピン11とハードバックアップピン25との判別が可能である。
【0043】
図9に示すように、部品実装機の制御装置51には、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置55と、LCD、EL、CRT等の表示装置56等が接続されている。更に、制御装置51には、部品撮像用のカメラ53やマーク撮像用のカメラ54で撮像した画像を処理する画像処理ユニット57(画像処理手段)が内蔵されている。制御装置51は、バックアッププレート40上のソフトバックアップピン11の状態を確認する際に、
図1に示すように、実装ヘッド移動装置52によってカメラ54をバックアッププレート40上のソフトバックアップピン11の上方へ移動させて、ソフトバックアップピン11のソフトピン部13とその外周囲の背景部29をカメラ54の視野に収めて該カメラ54で撮像し、該カメラ54の撮像画像を画像処理ユニット57で処理してソフトバックアップピン11のソフトピン部13の外周囲の背景部29を認識することで、該背景部29の内周縁を該ソフトバックアップピン11のソフトピン部13の外周縁として認識する。
【0044】
この際、ソフトバックアップピン11のソフトピン部13に曲り等の変形が無く、ソフトピン部13が真っ直ぐに立っている場合(つまり正常なソフトバックアップピン11の場合)は、
図8(a)に示すように、カメラ54で撮像した画像には、背景部29の内周縁が完全な円となって写る。
【0045】
これに対して、
図7に示すように、ソフトバックアップピン11のソフトピン部13に曲り等の変形が発生している場合は、ソフトピン部13の上端の位置がずれるため、
図8(b)に示すように、カメラ54で撮像した背景部29の画像は、ソフトピン部13の上端が背景部29にはみ出して、背景部29の内周縁の形状が完全な円と認識できず、背景部29の内周縁の形状が部分的に変形した画像となる。この関係を利用して、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理で認識した背景部29の内周縁の形状に変形した部分が存在するか否か(完全な円と認識できないか否か)を判定し、認識した背景部29の内周縁の形状に変形した部分が存在した場合(完全な円と認識できない場合)には、ソフトバックアップピン11の曲り等の変形が生じていると判定する。この場合は、制御装置51は、ソフトピン部13の異常を作業者に表示や音声で警告すると共に、画像処理ユニット57の画像処理結果に基づいて背景部29の外周縁(外周円)を認識して、当該背景部29の内周側のソフトピン部13の位置を認識して、当該ソフトピン部13を自動交換する。これにより、曲り等の変形が生じたソフトバックアップピン11を別のソフトバックアップピンと自動交換することが可能となり、部品実装機を停止させることなく生産を継続できる。一方、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理で認識した背景部29の内周縁の形状に変形した部分が存在しないと判定すれば、曲り等の変形が無い正常なソフトバックアップピン11と判定する。
【0046】
また、ソフトバックアップピン11の上端に半田が付着していると、カメラ54で撮像した画像には、半田の付着部分が光って写る。そこで、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理で認識した円環状の背景部29の内側のソフトバックアップピン11の存在領域に光って写った部分(又は暗く写った部分)が存在するか否かを判定し、円環状の背景部29の内側のソフトバックアップピン11の存在領域に光って写った部分(又は暗く写った部分)が存在すれば、その部分を半田等の付着部分と判定し、光って写った部分(又は暗く写った部分)が存在しなければ、ソフトバックアップピン11に半田等の異物が付着していないと判定する。尚、半田を観察する際に、カメラ54のライティングパターンを回路基板35の基準位置マークの撮像時と変更しても良い。
【0047】
また、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理によりソフトバックアップピン11への半田等の付着物又はソフトバックアップピン11の変形が認識されたときに、それを表示装置56(警告手段)の表示や音声で作業者に警告する。このようにすれば、ソフトバックアップピン11への半田等の付着物又はソフトバックアップピン11の変形が認識されたときに、作業者にソフトバックアップピン11を取り替えるように促すことができる。ソフトバックアップピン11の取り替えは、ソフトバックアップピン11全体を取り替えても良いし、或は、固定ねじ19を緩めてプラグ部16の嵌合部17からソフトピン部13を取り外して、ソフトピン部13のみを交換するようにしても良い。
【0048】
また、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理によりソフトバックアップピン11への半田等の付着物又はソフトバックアップピン11の変形が認識されたときに、そのソフトバックアップピン11を前述したソフトバックアップピン11の自動交換動作により自動交換するようにしても良い。
【0049】
また、制御装置51は、画像処理ユニット57の画像処理によりソフトバックアップピン11の変形が認識されず、背景部29の内周縁の形状が完全な円形に認識された場合は、認識した背景部29の内周縁の中心位置のXY座標をソフトバックアップピン11の中心位置のXY座標として計測し、ソフトバックアップピン11の中心位置のXY座標が生産ジョブで指定されたピン位置のXY座標と許容誤差の範囲内で合致するか否かで、ソフトバックアップピン11が指定されたピン位置に配置されているか否かを判定する。その結果、ソフトバックアップピン11が指定された位置に配置されていないと判定されれば、前述したソフトバックアップピン11の自動移し替え動作により当該ソフトバックアップピン11を指定されたピン位置に写し替える。この後、再度、当該ソフトバックアップピン11の位置を画像処理により認識して、当該ソフトバックアップピン11が指定されたピン位置に移し替えられたことを確認する。これにより、生産ジョブに合わせてソフトバックアップピン11を自動的にバックアッププレート40上に配置することができる。
【0050】
以上説明した本実施例1によれば、バックアッププレート40上のソフトバックアップピン11とその外周囲の背景部29を部品実装機のカメラ54で撮像し、該カメラ54の撮像画像を画像処理ユニット57によって処理してソフトバックアップピン11の外周囲の円環状の背景部29を認識することで、該背景部29の内周縁を該ソフトバックアップピン11の外周縁として認識するようにしたので、ソフトバックアップピン11の上端部を画像処理で正確に認識することが困難であるという事情があっても、ソフトバックアップピン11の外周囲に画像処理で認識可能な背景部29を設けることで、画像処理で認識した背景部29の内周縁をソフトバックアップピン11の外周縁として認識することができ、ソフトバックアップピン11の外周縁の形状を精度良く認識できる。これにより、ソフトバックアップピン11の位置を精度良く検出でき、ソフトバックアップピン11の自動配置が可能となると共に、ソフトバックアップピン11への半田等の付着物やソフトバックアップピン11の曲り等の変形を画像認識することができ、ソフトバックアップピン11への半田等の付着物やソフトバックアップピン11の曲り等の変形が認識されたときに、速やかに当該ソフトバックアップピン11(ソフトバックアップピン11全体又はソフトピン部13のみ)を取り替えることができる。
【0051】
尚、ソフトバックアップピン11の連結構造や形状は、上記実施例1のものに限定されず、例えば、ソフトピン部13とホルダ部12との連結をねじ止めから係合方式に変更したり、或は、ホルダ部12を2ピース構造から1ピース構造に変更しても良い等、ソフトバックアップピン11の連結構造や形状を種々変更しても良いことは言うまでもない。
【0052】
尚、ソフトバックアップピン11の背景部29の形状は、円環状に限定されず、背景部29の内周縁の形状が円形であれば良く、背景部29の外周縁の形状は、円形でなくても良く、例えば、背景部29の内周縁(内周縁)と中心が一致する正四角形等の正多角形や、それ以外の形状であっても良い。背景部29の外周縁の形状が円形や正多角形であれば、背景部29の外周縁の中心位置が背景部29の内周側に位置するソフトバックアップピン11の中心位置と一致するため、ソフトバックアップピン11のソフトピン部13の上端が背景部29にはみ出して、背景部29の内周縁の形状が完全な円と認識できない場合(ソフトバックアップピン11が変形していると判定された場合)に、背景部29の外周縁を認識して該ソフトバックアップピン11の位置を確認することができる。
【0053】
また、ハードバックアップピン25の上端の認識マーク30の形状も円形に限定されず、他の形状に変更しても良いことは言うまでもない。
【0054】
その他、本発明は、上記実施例1に限定されず、ストッカー44の位置を変更したり、ストッカー44に収納したソフトバックアップピン11の位置を画像処理で認識するようにしても良く、また、ストッカー44が無い構成の部品実装機にも本発明を適用して実施できる。