(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のベースユニットの各ベースユニットは、有線通信または無線通信によって、前記データネットワークと通信するように構成されている、請求項1に記載の分散センサシステム。
前記複数のベースユニット内の前記1つ以上のセンサモジュールの各々は、ユニバーサルコネクタを備え、各センサモジュールは、該ベースユニットに形成された適合するレセプタクルに取り外し可能に接続される、請求項1に記載の分散センサシステム。
各ベースユニットは、前記コントローラを備えるとともに複数の適合レセプタクルが形成されたプリント回路基板を有し、前記基板識別子によって、ベースユニットの前記プリント回路基板を識別する、請求項5に記載の分散センサシステム。
前記コントローラは、該ベースユニット内の少なくとも1つのセンサモジュールのための較正用データを保存するメモリをさらに有し、前記コントローラは、前記保存された較正用データを用いて、該ベースユニットにおいて前記生センサデータの較正を実施するようにさらに構成されている、請求項1に記載の分散センサシステム。
データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいて較正を実施する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、当該方法は、
前記分散センサシステム内のセンサのための、較正用データ・データベース内の較正用データであって、ベースユニット内のセンサを一意に識別するセンサ識別子と、前記分散センサシステム内で該ベースユニットを一意に識別する基板識別子と、に関連付けられているセンサの較正用データを、中央サーバに維持することと、
第1のベースユニット内の第1のセンサからの生センサデータを前記中央サーバで受信することと、
前記第1のセンサを識別する第1のセンサ識別子と、前記第1のベースユニットを識別する第1の基板識別子と、によって、前記生センサデータを前記中央サーバで識別することと、
前記第1のセンサ識別子と前記第1の基板識別子を用いて、前記第1のセンサのための較正用データを前記中央サーバで取得することと、
前記取得した較正用データを用いて、前記生センサデータを調整することと、
前記第1のセンサの較正されたセンサデータを前記中央サーバで生成することと、を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、数多くの方法で実施することが可能であり、それには、プロセス、装置、システム、組成物、コンピュータ可読記憶媒体上で実現されるコンピュータプログラムプロダクトとしての実施、および/または、プロセッサに結合されたメモリに記憶された命令および/もしくはそれにより提供される命令を実行するように構成されたプロセッサなど、プロセッサとしての実施が含まれる。本明細書では、このような実施形態、または本発明が取り得るその他の形態を、技術と呼ぶ場合がある。一般的に、開示されるプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変更することができる。特に明記しない限り、タスクを実行するように構成されたものとして記載されるプロセッサまたはメモリなどのコンポーネントは、所与の時間に一時的にそのタスクを実行するように構成された汎用コンポーネント、またはそのタスクを実行するように作製された専用コンポーネントとして実現することができる。本明細書で使用される場合の「プロセッサ」という用語は、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するように構成された1つまたは複数のデバイス、回路、および/または処理コアを指す。
【0012】
本発明の1つ以上の実施形態についての詳細な説明が、以下で、発明の原理を示す添付図面と共に提供される。本発明は、それらの実施形態に関連させて説明されるが、本発明は、いずれの実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、請求項によってのみ限定され、また、本発明は、多くの代替案、変形、および均等物を網羅するものである。発明についての完全な理解を与えるため、様々な具体的詳細が以下の説明において記載される。これらの詳細は、例示目的で提供されるものであり、本発明は、これら特定の詳細の一部またはすべてを省いて、請求項に基づき実施することができる。明確にする目的で、発明が不必要に不明瞭になることがないよう、本発明に関連する技術分野で周知の技術的事項については詳細に記載していない。
【0013】
図1は、環境内の空気質を測定するための分散センサシステムの一実施形態を示すシステム図である。
図1を参照して、「センサノード」または「ノード」とも呼ばれる空間的に分散されたベースユニット120のセットを備える分散センサシステム100は、環境からの測定値を取得するように構成されている。
図1では、センサノードA〜C(120A〜120C)を示している。システム100内のセンサノードは、局所空気質を監視するために、屋内のロケーションまたは屋外のロケーションまたはその両方に配置することができる。いくつかの実施形態において、あるロケーションの空気質を評価するために十分な数の測定値を取得するために、あるロケーションにセンサノードのセットが戦略的に配置される。例えば、一実施形態では、建物内で空気質を監視するために、職場または工場などの建物内に、センサノードのセットを空間的に分散させる。
【0014】
各ベースユニット120は、1つ以上のセンサモジュール(S#)と、トランシーバを内蔵したコントローラ(CTR)と、を有する。センサモジュールS#は、特定の空気質パラメータを検出するためのセンサを内蔵している。センサモジュールは、様々に異なる空気質パラメータを検出するための様々なタイプのセンサを有し得る。ある設備内に配置されるベースユニット120のセットは、同じセンサタイプのセンサモジュールで構成することができる。例えば、ノードA、B、Cはすべて、センサモジュールS1およびS2を有する。また、ベースユニット120のセットは、異なるセンサタイプのセンサモジュールで構成することもできる。例えば、ノードBおよびCは、センサモジュールS3を有するが、ノードAはこれを有していない。さらなる詳細は後述するように、本発明の分散センサシステムにおけるベースユニット120の顕著な特徴は、所望の環境パラメータを測定するために、所望の任意のタイプのセンサを組み込むことが許容されるように、ベースユニットを構成可能であるということである。
【0015】
ベースユニット120の各々は、データネットワーク110を介して中央サーバ102と通信するために、トランシーバを有する。ベースユニット120は、イーサネット(登録商標)などの有線通信、または無線周波数(RF)、WiFi、ZigBee、もしくは他の小電力近距離無線通信プロトコルなどの無線通信を採用することができる。コントローラCTRは、ベースユニットのセンシング機能および通信機能を制御する。
【0016】
中央サーバ102は、データ処理装置104と、較正用データ・データベース106と、センサデータ・データベース108と、を備える。中央サーバ102は、ベースユニット120からデータネットワーク110を介して受信した生センサデータを、センサデータ・データベース108に保存する。データ処理装置104は、較正用データベース106に保存されている較正用データを用いて生センサデータを処理することで、較正されたセンサデータを生成するように構成されており、そしてこれを用いて、センサノード120が配置されている設備における空気質を評価することができる。較正済みセンサデータは、同じくセンサデータ・データベース108に保存することができる。較正済みセンサデータならびに生センサデータは、1つ以上のアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を介してアクセス可能とすることができ、これにより、ユーザは、分散センサシステム100で取得された空気質測定値を監視することが可能となる。
【0017】
本発明の分散センサシステムの別の顕著な特徴は、各センサモジュールによって、生センサデータが、保存および処理のために中央サーバに供給されるということである。本明細書において、生センサデータとは、そのセンサデータを生成した特定のセンサの性能特性に基づいて修正または較正されていないセンサデータを指す。多くのセンサは、時間に関して、ある程度非線形の特性を有し、センサは、経時的な非線形性または性能ドリフトの較正が必要である。典型的には、センサは、ある環境内でセンサが使用されている時間の経過とともにドリフトするゲインまたオフセットを有し得る。従来のセンサは、多くの場合、毎年など、定期的に較正されて、ゲイン補正値およびオフセット補正値のようなセンサの較正用データは、そのセンサ自体で保存されており、センサによってセンサデータが生成されているときに、その較正用データを用いてセンサデータが修正される。従来のセンサでは、センサの特性が、次の較正更新の前に、時間の経過とともにドリフトすると、較正用データは、そのセンサ用として、もはや正確ではない場合がある。しかしながら、センサは、その不正確な較正用データを、センサデータの較正または修正のために使用し続けることになる。従って、従来のセンサは、結果的に、較正誤差が取り込まれたセンサデータを生成してしまうことがあり、センサデータは修復不能に破損される。本発明の実施形態では、分散センサシステム100は、集中バックエンド較正方法を実施し、この場合、ベースユニット120は、修正されていない生センサデータを中央サーバ102に通知する。生センサデータの較正は、中央サーバ102で実行されて、これにより、中央サーバで保存している較正用データを用いて、較正されたセンサデータを生成する。生センサデータを利用できることによって、中央サーバは、更新または補正された較正用データを用いて、較正されたセンサデータを生成することが可能となり、これによって、センサ測定値の正確さを確保することができる。さらに重要なことは、あるセンサの較正用データが不正確であることが後に判明して、新たな較正用データが生成された場合に、中央サーバは、そのセンサの生センサデータを取り出して、更新された較正用データを用いて生センサデータを再度較正することにより、較正されたセンサデータを再生成することができるということである。このようにして、使用された較正用データが不正確であることが判明した場合に、過去のセンサデータを補正することができる。従来のセンサでは、較正はセンサで実施されたものであり、生センサデータは一般的に利用できないため、過去のセンサデータの補正は不可能である。本発明の分散センサシステムにおける集中バックエンド較正方法について、さらに詳細に後述する。
【0018】
図1では、較正用データとセンサデータは、2つのデータベースに保存されるものとして示している。この2つのデータベースは、2つの物理データベースまたは2つの論理データベースとすることができる。2つのデータベースの厳密な構成は、本発明の実施に重要ではない。較正用データおよびセンサデータの保存は、1つの物理データストレージまたは複数の物理データストレージにおいて実施される。
【0019】
図2は、本発明の実施形態におけるベースユニットをむき出しにした斜視図を示している。
図2を参照して、ベースユニット120またはセンサノード120は、ハウジング130内に封入されており、このハウジングは、その上に形成された通気孔136を有して、これにより、その中に収容されたセンサに達するように、ハウジング内への空気の拡散または空気の流れを可能としている。多くの実施形態では、ベースユニット120は、ハウジング130によって完全に包まれている。本例では、ベースユニットの内部構成を示すために、ハウジング130の上部を省いている。ベースユニット120は、コントローラ180がその上に形成されたプリント回路基板132を有する。コントローラ180は、プリント回路基板132に形成された1つ以上の集積回路を有し得る。例えば、コントローラ180は、ベースユニットの動作をサポートするためのプロセッサ集積回路およびメモリ集積回路を有することができる。コントローラ180は、さらに、該ベースユニットがデータネットワークと通信することを可能とするために、トランシーバ回路を有することもできる。コントローラ180は、データネットワークとの有線通信または無線通信を提供するように構成することができる。有線通信をサポートするために、ベースユニット120は、有線接続によってデータネットワークに接続するためのUSBポート137およびイーサネットポート138などのデータポートを有することができる。また、USBポート137は、さらなる詳細は後述するように、較正の目的などで、2つ以上のベースユニットを相互にデイジーチェーン接続するために用いることもできる。無線通信をサポートするために、ベースユニット120は、アンテナ(図示せず)を備えることができる。
【0020】
本発明の実施形態では、ベースユニット120は、その中に1つ以上のセンサモジュール140が組み込まれている。各センサモジュール140は、所与の空気質パラメータを検出するための、特定のセンサタイプのセンサを有する。各センサモジュール140は、出力信号としてデジタル測定データを供給する。各センサモジュール140は、プリント回路基板132に形成された適合するレセプタクル134に接続されるユニバーサルコネクタを備えている。プリント回路基板132は、1つ以上のセンサモジュール140を受容するための適合するレセプタクル134のセットを有する。本実施形態では、ユニバーサルコネクタは、USBコネクタである。このように構成された場合、ベースユニット120は、所望のセンサタイプのセンサモジュールを有するように構成することが可能である。構成可能なベースユニット120は、同じセンサタイプのセンサモジュールまたは異なるセンサタイプのセンサモジュールで構成することができる。また、ユニバーサルコネクタを備えるセンサモジュール140は、ベースユニットに取り外し可能に接続され、これにより、センサモジュールを取り外して置き換えることによって、ベースユニットを容易に再構成することができる。例えば、不具合が検出された場合に、センサモジュールを新たなセンサモジュールで置き換えることができ、または、関心のある別の空気質パラメータを監視するために、あるセンサタイプのセンサモジュールを別のセンサタイプのセンサモジュールで置き換えることができる。
【0021】
適合レセプタクル134の各々は、プリント回路基板132に形成されたデータバスに接続されており、これはコントローラ180に接続している。適合レセプタクルに接続されたセンサモジュール140は、データバスを介してコントローラ180と通信する。ベースユニットに組み込まれたセンサモジュールの数およびタイプに関わりなく、コントローラ180は、センサモジュールの各々からデータネットワークへ、そして中央サーバへの、測定データの転送を制御および調整する。
【0022】
図3は、本発明の実施形態におけるベースユニットの機能ブロック図を示している。
図3を参照して、ベースユニット120(または「センサノード」)は、1つ以上のセンサモジュール140と通信するコントローラ180を有し、これは、ベースユニットの動作を制御するように構成されている。本例では、ベースユニットは、3つのセンサモジュール140−1〜140−3を有する。各センサモジュール140は、データバス152を介してコントローラ180にデジタル測定データを供給する。一実施形態では、データバス152は、シリアルデータバスである。
【0023】
コントローラ180は、プロセッサ184と、メモリ186と、トランシーバのセット182と、を有する。コントローラ180は、各センサモジュールと通信して、センサモジュールからのデジタル測定データの受信およびデータネットワークへの転送を調整する。本実施形態では、コントローラ180は、有線通信と無線通信の両方を提供するために、トランシーバのセット182を有する。このようにして、ベースユニット120が設備に配置されているときに、ベースユニットは、その設備で使用可能であり得る種々の通信プロトコルのいずれか1つを用いて、データネットワークと通信することができる。本実施形態では、コントローラ180は、イーサネット(登録商標)、WiFi、Bluetooth(登録商標)、ワイヤレスメッシュネットワーキングをサポートするトランシーバを有する。他の実施形態では、コントローラ180は、ZigBee(登録商標)もしくは他の小電力近距離無線通信プロトコルなど、他の有線通信プロトコルまたは無線通信プロトコルをサポートすることができる。
【0024】
センサモジュール140は、所与の空気質パラメータを測定するための、特定のセンサタイプのセンサ142を有する。例えば、センサ142は、一酸化炭素(CO)センサ、オゾン(O
3)センサ、二酸化硫黄(SO
2)センサ、または二酸化炭素(CO
2)センサなど、空気中の汚染物質を測定するためのセンサとすることができる。また、センサ142は、空気中の粒子状物質を測定するためのセンサとすることもできる。センサ142は、典型的には、アナログ出力信号として電流値または電圧値を提供する。アナログ出力信号は、アナログ出力信号を増幅および調整するアナログフロントエンド回路144に接続される。増幅されたアナログ出力信号は、次に、アナログ・デジタル変換器(ADC)146に供給されて、デジタルセンサ出力信号にデジタル化される。デジタルセンサ出力信号は、マイクロコントローラ148に供給されて、これがインタフェース150とやりとりすることにより、デジタルセンサ出力信号はデータバス152上に伝送される。本実施形態では、マイクロコントローラ148は、デジタルセンサ出力信号を、データバス152上に伝送されるシリアルデータストリームとしてフォーマッティングする。
図2におけるセンサモジュール140の構成は、例示的なものにすぎず、限定するものではない。センサモジュール140の厳密な構成は、センサモジュールがデジタルセンサ出力信号をコントローラ180へのデータバス上に供給するものでさえあれば、本発明の実施に重要ではない。他の実施形態では、センサ142は、直接、デジタルセンサ出力信号を提供することができる。その場合、センサモジュール140は、アナログフロントエンド回路またはADCを備える必要はない。
【0025】
このように構成されて、センサモジュール140−1〜140−3の各々は、指定の空気質パラメータをセンサ142で測定する。各センサモジュール140−1〜140−3は、デジタルセンサ出力信号をコントローラ180に供給する。ベースユニット120内のコントローラ180は、1つ以上のセンサモジュール140−1〜140−3からのデジタルセンサ出力信号を受信する。コントローラ180は、中央サーバへの転送を待つデジタルセンサ出力信号をメモリ186に保存することができる。コントローラ180は、トランシーバ182でサポートされている通信プロトコルのうちの1つによってデータネットワークに接続する。コントローラ180は、生センサデータとしてのデジタルセンサ出力信号を、さらなる処理のために中央サーバに転送するように動作する。なお、コントローラ180では、デジタルセンサ出力信号を修正または較正することはなく、センサ142に関連した較正用データはベースユニットに保存されていないことに注目しておくと有益である。
【0026】
図1から
図3を参照して、分散センサシステム100では、いくつかのセンサノード120を設備内に配置することができる。センサノードの各々は、取得した測定値の生センサデータを中央サーバに供給する。分散センサシステム100は、集中バックエンド較正方式を実現することで、中央サーバにおいて生センサデータの較正を実行し、これにより、各センサノードが較正用データを保存して測定データを較正する負担を軽減する。また、集中バックエンド較正方式には、後に補正または更新された較正用データを用いて生センサデータを較正することができることで、センサデータの完全性が向上するという利点もある。
【0027】
本発明の実施形態では、設備内に配置された全てのセンサのための較正用データを、中央サーバ102でデータベース106に保存する。それらのセンサの較正用データは、メーカによって作成されたものであり得る。製造現場でのセンサの最終試験において、例えばゲイン補正値とオフセット補正値である較正用データのセットを、センサに提供することができる。また、センサを、配置する前または配置する際に試験することで、そのセンサの較正用データのセットを取得することもできる。本発明の実施形態では、センサの較正用データのセットは、センサ識別子(センサID)と基板識別子(基板ID)によって識別されて、これにより、較正用データの各セットは、あるセンサノードの特定のプリント回路基板に接続された特定のセンサに一意に関連付けられる。また、センサノード内の各センサによって提供される生センサデータは、同様に識別されて、これにより、生センサデータの各セットは、あるセンサノードの特定のプリント回路基板上の特定のセンサに一意に関連付けられる。例えば、コントローラ180は、デジタルセンサ出力信号が中央サーバに送信される前に、各センサモジュールのデジタルセンサ出力信号に、基板IDおよびセンサIDを追加する。このようにして、生センサデータが中央サーバに伝送されると、その生センサデータを、基板識別子とセンサ識別子によって、関連する較正用データと容易に対にすることができる。
【0028】
図2に示すように、センサノード120は、コントローラ180がその上に形成されたプリント回路基板132を有する。基板IDを用いて、ベースユニット内のプリント回路基板132およびその上に形成されたコントローラ180を一意に識別する。すなわち、基板IDは、ベースユニットまたはセンサノードを一意に特定する。一実施形態では、基板IDは、そのプリント回路基板に割り当てられたMACアドレスである。センサIDは、センサモジュール140またはセンサモジュール140内のセンサを一意に特定する。一実施形態では、センサIDは、センサモジュール140内のセンサのシリアル番号である。このように、基板IDとセンサIDを用いることにより、センサノード120に組み込まれたセンサの較正用データおよび生センサデータを、一意に識別することができる。基板IDとセンサIDの組み合わせによって、その特定の基板IDを有する特定のセンサノードに組み込まれた特定のセンサを識別する。さらに重要なことは、センサモジュール140は、あるセンサノードから取り外して、他のセンサノードに組み込むことができるということである。このとき、そのセンサモジュールの生センサデータは、センサIDは同じままであるものの、新たな基板IDに関連付けられる。基板IDとセンサIDの両方を用いて、センサデータ(生センサデータまたは較正用データ)を識別することにより、そのセンサがどのセンサノードに組み込まれているかに関わりなく、センサのセンサデータのトレーサビリティが維持される。
【0029】
図4は、本発明の実施形態における較正用データテーブルの構成を示している。較正用データテーブルは、中央サーバ102で較正用データベース106に保存することができる。
図4を参照して、較正用データテーブル200は、較正用データの複数のエントリを含み、各エントリは、センサIDと基板IDによって識別される。所与のセンサIDと所与の基板IDの各エントリに、そのセンサの較正用データ値のセットが格納される。一部の実施形態では、各エントリには、さらに、その較正用データが有効であるとみなされる日付範囲または時間範囲を示す有効日付範囲および較正タイムスタンプが関連付けられる。例えば、分散センサシステム100は、いくつかのセンサの較正を週に一度実行することができる。その場合、そのセンサの較正用データは、有効日付範囲(開始日および終了日)が定められて、較正が行われた日付がタイムスタンプに記録される。何らかの理由で、一週間が経過して、再較正が行われなかった場合には、中央サーバは、そのセンサの較正用データの有効期限が切れていることを、テーブル200内の有効日付範囲から知ることになる。
【0030】
本発明の実施形態では、センサの較正用データ値は、1つ以上の較正項目を含み、それには、ゲイン補正値、オフセット補正値、勾配補正値、非線形スケーリング値、が含まれるが、ただしこれらに限定されない。較正項目には、さらに、リーク電流補正値、温度補償係数、およびADC設定を含むことができる。一部の適用例において、較正用データテーブルは、ゲイン補正とオフセット補正のような較正項目の所与のセットを含むように作成することができ、センサ測定値の正確さを向上させるための新たな較正項目が後に発見される。例えば、センサ測定値の正確さを向上させるために、ADCゲインのための補正項目を導入することができる。その場合、その新たな較正項目を含むように、較正用データテーブル200を更新することができる。中央サーバは、センサデータ・データベース108に保存されている生センサデータ、および較正用データ・データベース106に保存されている関係する各センサ用の更新された較正用データを用いて、較正されたセンサデータを再生成することが可能である。このように、集中バックエンド較正方式によって、正確な過去のセンサデータの分析が可能となる。
【0031】
図4の較正用データテーブル200は、例示的なものにすぎない。他の実施形態では、較正用データテーブルは、各センサIDに関連付けられた追加データを格納することができる。例えば、較正用データテーブルは、センサタイプまたは他の参照情報を特定するデータを含むことができる。較正用データテーブルは、さらに、そのセンサIDとその基板IDの較正用データは、生センサデータの較正に使用されるべきかどうかを示す有効インジケータを含むことができる。較正用データテーブルの別の実施形態を、
図8に示している。
【0032】
図5は、本発明の実施形態における集中バックエンド較正方法を示すフローチャートである。
図5を参照して、集中バックエンド較正方法250は、設備内の1つ以上のセンサノードから受信した生センサデータから、較正されたセンサデータを生成するために、分散センサシステム100の中央サーバ102において実施することができる。処理252で、方法250は、システム100の各センサノード内の各センサのため較正用データを維持する。一実施形態では、較正用データは、較正用データ・データベース106に保存されて、較正用データは、較正用データテーブルに維持される。較正用データの各エントリは、センサIDと基板IDによって識別される。処理254で、中央サーバ102は、1つ以上のセンサノードからデータネットワークを介して、デジタルセンサ出力信号の形式の生センサデータを受信する。処理256で、中央サーバ102のデータ処理装置104は、生センサデータのそれぞれに関連付けられたセンサIDと基板IDによって、生センサデータを識別する。方法250は、その生センサデータをセンサデータ・データベース108に保存することができる。
【0033】
処理258で、データ処理装置104は、特定されたセンサIDと基板IDに基づいて、そのセンサIDとその基板IDに関連付けられた較正用データ値を取り出す。次に処理260で、データ処理装置104は、そのセンサIDとその基板IDについて取り出した較正用データ値を用いて、生センサデータを調整または修正または較正する。このようにして、方法250は、較正されたセンサデータを生成する(処理262)。較正済みセンサデータは、センサデータ・データベース108に保存することができる。
【0034】
図5の方法250は、1つ以上のセンサノードから受信した生センサデータについて、較正されたセンサデータを生成するためのバックエンド較正方法を記述している。また、方法250は、過去のセンサデータの分析を実行するために適用することもできる。すなわち、1つ以上のセンサの較正用データ値が更新された場合などに、センサデータ・データベースに保存されている生センサデータに対して方法250を適用することで、較正されたセンサデータを再計算することが可能である。その場合、方法250は、センサノードから生センサデータを受信する代わりに、センサデータ・データベースに保存されている、あるセンサIDと基板IDの生センサデータを取得する。そして、その取得された生センサデータを、センサIDと基板IDによって、較正用データ・データベースに保存されている較正用データ値と対にすることができる。データ処理装置104は、取得した生センサデータと、更新された較正用データ値から、更新された較正済みセンサデータを生成する。
【0035】
本発明の分散センサシステムでは、センサ測定値の正確さは、各センサの較正用データの正確さに大きく依存する。センサ性能は、時間の経過とともにドリフトする傾向があるので、ある時点で取得された較正用データは、時間の経過とともに不正確になることがあり、較正されたセンサデータに誤差が取り込まれる。このため、多くの場合、センサの較正用データ値を更新するために、センサの再較正を定期的に実行することが必要となる。本発明の実施形態では、分散センサシステムは、中央サーバ内の較正用データの正確さを確保するための、設備内のベースユニット内のセンサの再較正を容易とするために、1つ以上のセンサ較正方法を実施する。
【0036】
一実施形態では、分散センサシステムは、「ゴールデン」センサまたは基準センサを用いて、現場でのゴールデンセンサ較正方法を実施する。本明細書において、「ゴールデンセンサ」または「基準センサ」とは、これに照らして、同じタイプの他のセンサを試験または比較することが可能な、既知の実証された性能特性を有するセンサを指す。
図2を再び参照して、ベースユニット120は、現場でのゴールデンセンサ較正を容易とするために用いることができるデータポート137を有する。本発明の実施形態では、そのベースユニット内のセンサモジュールのうちの1つと同じセンサタイプのゴールデンセンサを収容したセンサモジュールが、データポート137に接続される。場合によっては、ゴールデンセンサが被試験モジュールと同じ環境条件に順応できるように、ある程度の期間、ゴールデンセンサは被試験モジュールの近くに配置されなければならない。
【0037】
このようにゴールデンセンサを接続して、ゴールデンセンサでセンサ測定データを取得し、これは、ゴールデンセンサのセンサIDおよびベースユニット120の基板IDと共に、コントローラ180の動作によって中央サーバに送信される。中央サーバは、ゴールデンセンサからのゴールデンまたは基準センサ測定値として受信した生センサデータを、センサIDによって識別し、さらに、ゴールデンセンサが接続されたベースユニットを、基板IDによって識別する。このとき、中央サーバは、さらに、ベースユニット内の被試験センサの試験センサ測定値としての生センサデータも受信し、これは、被試験センサのセンサIDと基板IDによって識別される。ゴールデンセンサは、被試験センサの付近に配置されているので、ゴールデンセンサと被試験センサにより生成されるセンサ測定値は、ほぼ同じでなければならない。中央サーバは、このように、ゴールデンセンサ測定値と試験センサ測定値を受信して、センサ測定値の正確さを向上させるために被試験センサに適用されるべき補正係数を導出することができる。更新された較正用データ値は、センサIDと基板IDによって識別されるように、その被試験センサのための較正用データテーブルに保存される。
【0038】
現場でのゴールデンセンサ較正方法を用いる場合には、ゴールデンセンサモジュールを供給して、そのゴールデンセンサモジュールをデータポート137に接続することにより、ベースユニット内の各センサモジュールは、順に較正される。ベースユニットが複数のセンサモジュールを含む場合には、1つずつの較正方法は、実現が難しくなることがある。本発明の別の実施形態では、分散センサシステムは、「ゴールデン」ベースユニットまたは基準ベースユニットを用いて、現場でのゴールデンベースユニット較正方法を実施する。本明細書において、「ゴールデンベースユニット」または「基準ベースユニット」とは、これに照らして、同じセンサモジュールまたはセンサモジュールのサブセットを有する他のベースユニットを試験または比較することが可能な、既知の実証された性能特性を有するセンサモジュールの所与のセットを含むベースユニットを指す。ゴールデンベースユニットを使用するときには、ゴールデンベースユニットは、被試験ベースユニットの付近に配置される。場合によっては、ゴールデンベースユニットが被試験ベースユニットと同じ環境条件に順応できるように、ある程度の期間、ゴールデンベースユニットは被試験ベースユニットの近くに配置されなければならない。
【0039】
このようにゴールデンベースユニットを配置して、ゴールデンベースユニットでセンサ測定データを取得し、これは、搭載されたセンサモジュールの各々のセンサIDおよびゴールデンベースユニットの基板IDと共に、コントローラ180の動作によって中央サーバに送信される。中央サーバは、ゴールデンベースユニットからのゴールデンまたは基準センサ測定値として受信した生センサデータを、センサモジュールのセンサIDとゴールデンベースユニットの基板IDによって識別する。このとき、中央サーバは、さらに、被試験ベースユニットのセンサモジュールからの試験センサ測定値としての生センサデータも受信し、これは、センサIDと被試験ベースユニットの基板IDによって識別される。ゴールデンベースユニットは、被試験ベースユニットの付近に配置されているので、ゴールデンベースユニットと被試験ベースユニットにより生成されるセンサ測定値は、ほぼ同じでなければならない。中央サーバは、このように、ゴールデンベースユニットのゴールデンセンサ測定値と被試験ベースユニットの試験センサ測定値を受信して、センサ測定値の正確さを向上させるために被試験ベースユニット内のセンサに適用されるべき補正係数を導出することができる。更新された較正用データ値は、センサIDと基板IDによって識別されるように、その被試験ベースユニットのセンサモジュールのための較正用データテーブルに保存される。
【0040】
現場でのゴールデンベースユニット較正方法は、ベースユニット内のセンサモジュールをすべて一括して較正するために適用される。一部の実施形態では、複数のベースユニットが互いに近接して配置されている場合に、同じゴールデンベースユニットを用いて、そのゴールデンベースユニットから所定の距離内に設置されたベースユニット群を較正することができる。一部の実施形態では、各ベースユニットは、GPS測位装置を備え、中央サーバは、各ベースユニットのGPS測位データを用いて、ゴールデンベースユニットに近接しているベースユニット群を特定する。
【0041】
図6は、本発明の実施形態における現場での較正方法を示すフローチャートである。現場での較正方法は、上述のようなゴールデンセンサまたはゴールデンベースユニットを用いて実施することができる。
図6を参照して、現場での較正方法270は、処理272で、中央サーバが、ゴールデンセンサからのものであると識別されるセンサ測定値を受信したときに開始し、このときのゴールデンセンサは、被試験ベースユニットに接続されたゴールデンセンサモジュールまたはゴールデンベースユニット内のゴールデンセンサであり得る。処理274で、中央サーバは、それらのセンサ測定値を、センサIDと基板IDによって、ゴールデンセンサ測定値として識別する。ゴールデンセンサによる較正の場合には、センサIDは、ゴールデンセンサを特定している一方、基板IDは、ゴールデンセンサが接続されたベースユニットを特定している。ゴールデンベースユニットによる較正の場合には、センサIDと基板IDは、ゴールデンベースユニットを特定している。
【0042】
処理276で、中央サーバは、被試験センサからの試験センサ測定値を受信する。ゴールデンセンサによる較正の場合には、センサIDは、被試験センサを特定している一方、基板IDは、ゴールデンセンサが接続されたベースユニットを特定している。ゴールデンベースユニットによる較正の場合には、センサIDと基板IDは、被試験ベースユニット内のセンサモジュールを特定している。被試験ベースユニットは、ゴールデンベースユニットに物理的に近接して配置されている1つ以上のベースユニットであり得る。処理278で、方法270は、ゴールデンセンサ測定値と被試験センサからの試験センサ測定値から、較正用データ値を評価する。処理280で、方法270は、被試験センサのための更新された較正用データ値を、較正用データテーブルに保存する。
【0043】
一実施形態では、多点較正が実施される。すなわち、多重ゴールデンセンサ測定値と、被試験センサの多重試験センサ測定値を、いくつかの異なる環境条件下で取得し、例えば日中と夜間に、業務時間中または業務時間外に、取得する。多重センサ測定値から得られた較正用データ値によって、通常、より良好な結果が得られる。
【0044】
別の実施形態では、1点較正が高頻度で実施される。すなわち、較正用データは、1つの環境条件下で取得されたゴールデンセンサ測定値から計算されるが、ただし方法270は、定期的に高頻度で繰り返される。較正用データを頻繁に更新することによって、やはり較正用データの正確さは向上する。
【0045】
本発明の実施形態では、ゴールデンベースユニットと被試験ベースユニットは、デイジーチェーンまたはマスタ・スレーブ構成で接続される。このようにして、被試験ベースユニットからのセンサデータが、ゴールデンセンサデータと自動的に関連付けられることで、中央サーバは、較正中のセンサと、較正に使用されるゴールデンセンサデータを、容易に識別することができる。ゴールデンベースユニットが、マスタ・スレーブ構成で、被試験ベースユニットと接続される場合は、ゴールデンセンサ測定値は、被試験ベースユニットを介して中央サーバに伝送される。被試験ベースユニットのコントローラは、その基板ID(「試験基板ID」)を、ゴールデンベースユニットのセンサID/基板IDに追加し、これによって、中央サーバは、ゴールデンセンサ測定値を、その被試験ベースユニットを介して供給されたものとして識別することができる。このようにして、同じ試験基板IDで、続いて受信されるセンサ測定値はいずれも、それらのセンサ測定値が、その被試験ベースユニットからのものとして識別される。
【0046】
図7は、本発明の実施形態におけるデイジーチェーン方式の現場での較正方法を示すフローチャートである。
図7を参照して、デイジーチェーン方式の現場での較正方法300は、処理302で、中央サーバが、被試験ベースユニットを介して伝送されたゴールデンベースユニットからのものであると識別されるセンサ測定値を受信したときに開始する。処理304で、中央サーバは、それらのセンサ測定値を、ゴールデンベースユニットのセンサIDと基板IDによって、ゴールデンセンサ測定値として識別する。中央サーバは、さらに、ゴールデンセンサ測定値に追加された基板IDによって、被試験ベースユニットを識別する。被試験ベースユニットの基板IDは、「試験基板ID」と呼ばれる。
【0047】
処理306で、中央サーバは、被試験ベースユニットからのセンサ測定値を、試験センサ測定値として受信する。処理308で、方法300は、ゴールデンセンサ測定値と被試験ベースユニットからの試験センサ測定値から、較正用データ値を評価する。処理310で、方法300は、被試験ベースユニット内のセンサモジュールのための更新された較正用データ値を、較正用データテーブルに保存する。ゴールデンセンサ測定値が中央サーバに伝送されるように被試験ベースユニットを介して送られる際に、ゴールデンセンサ測定値と被試験ベースユニットのセンサ測定値が自動的に相互に関連付けられることで、被試験ベースユニットのための較正用データを容易に更新することができる。
【0048】
本発明の他の態様によれば、分散センサシステムは、基準センサまたは基準ベースユニットを用いることなく、ベースユニット内のセンサの較正を実施することができる。一実施形態では、分散センサシステムは、同じセンサタイプの近隣センサ群のネットワーク効果によって、クラウドソーシングによる較正を実施する。この分散センサシステムでは、通常、設備内にベースユニットのアレイが配置され、一群のそれらのベースユニットは、同様の環境条件を測定するのに十分に相互に近接している。同じようなセンサ測定値が期待される近隣ベースユニット群の性能を利用して、そのベースユニット群内のセンサを較正することができる。一実施形態では、同じようなセンサ測定値が期待される近隣ベースユニットは、ある較正グループに属するものとして指定される。中央サーバは、その較正グループのベースユニットのうちで、所与のセンサのセンサ測定値を比較する。その較正グループからのセンサ測定値の分析に基づいて、中央サーバは、それらのベースユニットの一部におけるセンサのための較正用データ値を補正する必要があり得ると判断することができる。その場合、中央サーバは、ベースユニットのそれらのセンサのための較正用データ値を更新して、更新された較正用データを、較正用データ・データベースに保存することができる。
【0049】
本発明の別の一態様によれば、分散センサシステムは、ベースユニット内のセンサの較正を、その同じベースユニットで収集された周囲条件に関連したセンサデータを用いて実施する。一実施形態では、ベースユニットは、温度センサおよび/または湿度センサを有する。空気質パラメータを測定するための多くのセンサは、温度依存性および/または湿度依存性を有する。本発明の実施形態では、中央サーバは、ベースユニットで記録された温度データおよび/または湿度データを収集し、その温度データおよび/または湿度データを用いて、その同じベースユニット内の空気質センサにより生成されるセンサ測定値を較正する。このようにして、そのベースユニットのセンサ測定値から、温度依存性および/または湿度依存性を排除することができ、センサ測定値を、より正確にすることができる。
【0050】
本発明のさらに別の一態様では、分散センサシステムは、ベースユニット内のセンサの較正を、センサの交差感度に基づいて実施する。一部の空気質センサは、対象汚染物質以外の汚染物質に反応する可能性のある交差感度を有する。このように、2つの異なる対象汚染物質用に設計された2つのセンサタイプが、空気中の同じ汚染物質にある程度反応することがある。例えば、オゾンセンサと一酸化窒素センサは、ある程度のセンサ交差感度を有する。その場合、オゾンセンサと一酸化窒素センサを備えたベースユニットでは、両センサからのセンサ測定値は、交差感度によって、ある程度互いに相関することになる。すなわち、オゾンセンサからのセンサ測定値が増加した検出レベルを示した場合には、一酸化窒素センサも、検出レベルに同様の増加を示すことになる。本発明の実施形態では、中央サーバは、既知の交差感度を用いて、センサからのセンサ測定値を分析することにより、センサ性能を監視および較正する。一実施形態では、中央サーバは、第1のセンサタイプの第1のセンサ群からのセンサ測定値と、第1のセンサタイプとのセンサ交差感度を有する第2のセンサタイプの第2のセンサ群からのセンサ測定値と、を受信する。中央サーバは、第1と第2のセンサ群のセンサ測定値に基づいて、較正用データの補正を生成する。
【0051】
また、本発明の実施形態では、中央サーバは、第1のセンサタイプの第1のセンサ群からのセンサ測定値と、第1のセンサタイプとのセンサ交差感度を有する第2のセンサタイプの第2のセンサ群からのセンサ測定値と、を受信する。中央サーバは、センサ測定値とセンサ交差感度特性に基づいて、いくつかの異なるガスの種別構成、すなわち個々のガスの濃度を特定する。一実施形態では、既知の交差感度に基づいてセンサ測定値を分析することによって、所与のガスの濃度を特定することができる。
【0052】
本発明のさらに別の一態様では、分散センサシステムは、既知の環境条件に基づいて、センサの較正を実施する。具体的には、中央サーバは、ある期間にわたって同じ環境条件下で取得されたセンサからのセンサ測定値を分析することにより、センサの較正を実施する。例えば、ベースユニットは、オフィスに設置されており、そのオフィスは、深夜と明け方の間の時間帯は、使用されていない。中央サーバは、ある期間(例えば、6ヶ月)にわたって、同じ時刻(例えば、午前2時)に、センサからのセンサ測定値を収集することができる。中央サーバは、ある期間にわたって同じ環境条件下でセンサから取得されたセンサ測定値を分析することで、傾向を特定する。中央サーバは、傾向分析に基づいて、センサの較正用データの補正を決定する。
【0053】
一部の実施形態では、ベースユニットは、その中に組み込まれたセンサモジュールのためのセンサ較正用データを、そのベースユニットのローカルメモリに保存する。
図3を参照して、ベースユニット120は、センサモジュール140−1〜140−3のための較正用データを、コントローラ180のメモリ186に保存することができる。コントローラは、それでも、生センサデータを中央サーバに送信するように動作する。しかしながら、本発明の実施形態では、コントローラ180で、生センサデータのローカル較正を実施して、ローカルに較正されたセンサデータを生成する。ローカルに較正されたセンサデータは、メモリ186に保存することができる。
【0054】
本発明の他の態様では、データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいてセンサを較正する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、該方法は、第1のベースユニット内の基準センサからの基準センサ測定値を受信することと、第1のベースユニット内の基準センサを一意に識別するセンサ識別子と、第1のベースユニットを一意に識別する基板識別子によって、基準センサ測定値を識別することと、第1の被試験センサからの試験センサ測定値を受信することと、基準センサ測定値と試験センサ測定値を用いて、第1の被試験センサのための較正用データ値を評価することと、第1の被試験センサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0055】
一部の実施形態では、第1の被試験センサは、第1のベースユニット内に設けられており、基準センサは、第1のベースユニットのデータポートに接続されるものであり、そして本方法は、さらに、第1の被試験センサを一意に識別するセンサ識別子と、第1のベースユニットを一意に識別する基板識別子によって、試験センサ測定値を識別することを含む。
【0056】
一部の実施形態では、第1のベースユニットは、基準ベースユニットを構成し、第1の被試験センサは、第2のベースユニット内に形成されて、基準ベースユニットは、第2のベースユニットの付近に配置されており、そして本方法は、さらに、第1の被試験センサを一意に識別するセンサ識別子と、第2のベースユニットを一意に識別する基板識別子によって、試験センサ測定値を識別することを含む。
【0057】
一部の実施形態では、第1のベースユニットは、基準ベースユニットを構成し、第1の被試験センサは、第2のベースユニット内に形成されており、そして本方法は、さらに、基準ベースユニットを、マスタ・スレーブ構成で、第2のベースユニットに接続することと、第2のベースユニットを介して基準センサ測定値を伝送することと、を含む。
【0058】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、第1のベースユニット内の基準センサを一意に識別するセンサ識別子と、基準ベースユニットを一意に識別する基板識別子と、第2のベースユニットを一意に識別する試験基板識別子によって、基準センサ測定値を識別することと、第1の被試験センサを一意に識別するセンサ識別子と、第2のベースユニットを一意に識別する基板識別子によって、試験センサ測定値を識別することと、第2のベースユニットの基板識別子を用いて、基準センサ測定値と第1の被試験センサからのセンサ測定値を関連付けることと、を含む。
【0059】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、複数の環境条件で取得された基準センサからの基準センサ測定値を受信することと、その複数の環境条件で取得された第1の被試験センサからの試験センサ測定値を受信することと、その複数の環境条件で取得された基準センサ測定値と試験センサ測定値を用いて、第1の被試験センサのための較正用データ値を評価することと、を含む。
【0060】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、基準ベースユニットから所定の距離内に配置された複数のベースユニット内の複数の被試験センサからの試験センサ測定値を受信することと、基準センサ測定値と被試験センサの各々の試験センサ測定値を用いて、その複数の被試験センサのための較正用データ値を評価することと、その複数の被試験センサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0061】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、被試験センサを有するベースユニットが基準ベースユニットから所定の距離内にあることを、そのベースユニットと基準ベースユニットからの測位データを用いて確認することを含む。
【0062】
本発明の他の態様では、データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいてセンサを較正する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、該方法は、ある較正グループに属する近隣ベースユニット内の同じセンサタイプのセンサからセンサ測定値を受信することと、その較正グループ内のセンサのセンサ測定値を分析することと、その較正グループから受信したセンサ測定値を用いて、その較正グループ内の1つ以上のセンサのための較正用データ値を評価することと、その1つ以上のセンサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0063】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、その較正グループ内の近隣ベースユニットを、それらのベースユニット内の同じセンサタイプのセンサが同じようなセンサ測定値を生成することが期待される場合に、関連付けることを含む。
【0064】
本発明の他の態様では、データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいてセンサを較正する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、該方法は、第1のベースユニット内の第1のセンサからの空気質に関連したセンサ測定値を受信することと、第1のベースユニットからの周囲条件に関連したセンサ測定値を受信することと、周囲条件に関連したセンサ測定値を用いて、第1のセンサのための較正用データ値を評価することと、第1のセンサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0065】
一部の実施形態では、第1のベースユニットからの周囲条件に関連したセンサ測定値を受信することは、第1のベースユニットからの温度に関連したセンサ測定値を受信することを含む。
【0066】
一部の実施形態では、第1のベースユニットからの周囲条件に関連したセンサ測定値を受信することは、第1のベースユニットからの湿度に関連したセンサ測定値を受信することを含む。
【0067】
本発明の他の態様では、データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいてセンサを較正する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、該方法は、ベースユニット内の第1のセンサを、そのベースユニット内のセンサ交差感度を有する第2のセンサと関連付けることと、第1のセンサと第2のセンサからのセンサ測定値を受信することと、第1のセンサと第2のセンサからのセンサ測定値を分析することと、第1と第2のセンサからのセンサ測定値に基づいて、第1と第2のセンサのための較正用データ値を評価することと、第1と第2のセンサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0068】
一部の実施形態では、本方法は、さらに、第1と第2のセンサからのセンサ測定値と、センサ交差感度特性に基づいて、第1のセンサによって測定されたガスの濃度を特定することを含む。
【0069】
本発明の他の態様では、データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいてセンサを較正する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、該方法は、ある期間にわたって既知の環境条件下で、第1のベースユニット内の第1のセンサからの複数のセンサ測定値を受信することと、その複数のセンサ測定値を、傾向を特定するために分析することと、その傾向分析に基づいて、第1のセンサのための較正用データ値を評価することと、第1のセンサのための更新された較正用データ値を保存することと、を含む。
【0070】
上記の実施形態は、明確な理解を目的として、ある程度詳細に記載しているが、本発明は、提示した詳細に限定されるものではない。本発明を実施する多くの代替の方法がある。開示された実施形態は、例示であって、限定するものではない。
本発明は例えば以下の適用例としても実施可能である。
[適用例1]分散センサシステムであって、
データネットワークと通信する空間的に分散された複数のベースユニットであって、各ベースユニットは、コントローラと1つ以上のセンサモジュールとを有し、各センサモジュールは、空気質パラメータを測定するように構成されたセンサを有し、各ベースユニットの前記コントローラは、前記センサモジュールの各々に関連付けられた生センサデータを、前記データネットワークを介して送信するように構成されており、センサモジュールの前記生センサデータは、ベースユニット内のセンサモジュールのセンサを一意に識別するセンサ識別子と、当該分散センサシステム内で該ベースユニットを一意に識別する基板識別子と、によって識別される、複数のベースユニットと、
前記データネットワークと通信する中央サーバであって、該中央サーバは、データ処理装置と1つ以上のデータベースとを有し、前記複数のベースユニットから生センサデータを受信して、その生センサデータをデータベースに保存するように構成された中央サーバと、
を備える分散センサシステム。
[適用例2]前記複数のベースユニットの各ベースユニットは、有線通信または無線通信によって、前記データネットワークと通信するように構成されている、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例3]前記複数のベースユニットのうちの第1のベースユニットと第2のベースユニットは、同じセンサタイプのセンサを有する、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例4]前記複数のベースユニットのうちの第1のベースユニットと第2のベースユニットは、異なるセンサタイプのセンサを有する、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例5]前記複数のベースユニット内の前記1つ以上のセンサモジュールの各々は、ユニバーサルコネクタを備え、各センサモジュールは、該ベースユニットに形成された適合するレセプタクルに取り外し可能に接続される、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例6]各ベースユニットは、前記コントローラを備えるとともに複数の適合レセプタクルが形成されたプリント回路基板を有し、前記基板識別子によって、ベースユニットの前記プリント回路基板を識別する、適用例5に記載の分散センサシステム。
[適用例7]前記コントローラは、有線通信または無線通信をサポートするトランシーバを有する、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例8]前記中央サーバは、較正用データ・データベースとセンサデータ・データベースとを有し、前記センサデータ・データベースは、前記生センサデータを保存し、このとき、前記生センサデータの各エントリは、センサ識別子と基板識別子に関連付けられており、前記較正用データ・データベースは、前記ベースユニットの前記センサモジュールのセンサのための較正用データを保存し、このとき、較正用データの各エントリは、センサ識別子と基板識別子に関連付けられている、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例9]前記中央サーバは、前記生センサデータから、該生センサデータと同じセンサ識別子と基板識別子を有する較正用データを用いて、センサの較正されたセンサデータを生成する、適用例8に記載の分散センサシステム。
[適用例10]前記中央サーバは、前記較正用データ・データベース内のセンサの前記較正用データを更新し、前記中央サーバは、前記センサデータ・データベースに保存されている前記生センサデータと、該生センサデータと同じセンサ識別子と基板識別子を有する前記更新された較正用データと、を用いて、前記較正されたセンサデータを再生成する、適用例9に記載の分散センサシステム。
[適用例11]前記コントローラは、該ベースユニット内の少なくとも1つのセンサモジュールのための較正用データを保存するメモリをさらに有し、前記コントローラは、前記保存された較正用データを用いて、該ベースユニットにおいて前記生センサデータの較正を実施するようにさらに構成されている、適用例1に記載の分散センサシステム。
[適用例12]データネットワークを介して中央サーバと通信する空間的に分散された複数のベースユニットを備える分散センサシステムにおいて較正を実施する方法であって、各ベースユニットは、空気質パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを有し、当該方法は、
前記分散センサシステム内のセンサのための較正用データであって、ベースユニット内のセンサを一意に識別するセンサ識別子と、前記分散センサシステム内で該ベースユニットを一意に識別する基板識別子と、に関連付けられているセンサの較正用データを、データベースに維持することと、
第1のベースユニット内の第1のセンサからの生センサデータを受信することと、
前記第1のセンサを識別する第1のセンサ識別子と、前記第1のベースユニットを識別する第1の基板識別子と、によって、前記生センサデータを識別することと、
前記第1のセンサ識別子と前記第1の基板識別子を用いて、前記第1のセンサのための較正用データを取得することと、
前記取得した較正用データを用いて、前記生センサデータを調整することと、
前記第1のセンサの較正されたセンサデータを生成することと、を含む方法。
[適用例13]前記第1のセンサの前記生センサデータをデータベースに保存することと、
前記第1のセンサ識別子と前記第1の基板識別子によって識別される前記第1のセンサのための前記較正用データを更新することと、
前記第1のセンサ識別子と前記第1の基板識別子を用いて、前記第1のセンサの前記生センサデータを前記データベースから取得することと、
前記更新された較正用データを用いて、前記生センサデータを調整することと、
前記第1のセンサの更新された較正済みセンサデータを生成することと、をさらに含む、適用例12に記載の方法。
[適用例14]前記較正用データは、ゲイン補正値、またはオフセット補正値、または勾配補正値、または非線形スケーリング値を含む、適用例12に記載の方法。
[適用例15]前記分散センサシステム内のセンサのための較正用データをデータベースに維持することは、
各センサのための較正用データに、有効日付範囲を関連付けることを含む、適用例12に記載の方法。
[適用例16]前記分散センサシステム内のセンサのための較正用データをデータベースに維持することは、
各センサのための較正用データに、有効インジケータを関連付けることを含む、適用例12に記載の方法。