(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173604
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】電気化学式ガスセンサ用の液体電解質
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
G01N27/416 311G
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-541839(P2016-541839)
(86)(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公表番号】特表2016-530537(P2016-530537A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2014002362
(87)【国際公開番号】WO2015032480
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】102013014995.9
(32)【優先日】2013年9月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503432043
【氏名又は名称】ドレーガー セイフティー アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト アウフ アクチエン
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ナウバー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ズィック
(72)【発明者】
【氏名】グレゴア シュタイナー
(72)【発明者】
【氏名】マリー−イザベル マッタン−フリューヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】リゴベアト フジャン
(72)【発明者】
【氏名】ザブリナ ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】フランク メット
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ヘングステンベルク
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−243594(JP,A)
【文献】
特開平02−195248(JP,A)
【文献】
特開平02−195247(JP,A)
【文献】
特開2007−240437(JP,A)
【文献】
特表2012−510612(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0249382(US,A1)
【文献】
XIAOBO Jl et al.,Determination of Ammonia Based on the Electrochemical Oxidation of N,N'-Diphenyl-1,4-phenylenediamine in Propylene Carbonate,ANALYTICAL SCIENCES,2007年,Vol.23,P.1317-1320
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学式ガスセンサ用の液体電解質であって、
該電解質が、少なくとも1種の溶剤、電導度塩及び有機メディエータを含有し、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、該有機メディエータが、酸化の際にキノイド系又はナフタレン系を形成するポリヒドロキシ化合物であり、その際に、該有機メディエータが、置換o−ジヒドロキシベンゼン、置換p−ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、置換ジヒドロキシナフタレン、アントラヒドロキノン、置換アントラヒドロキノンを含む群から選択されていることを特徴とする、液体電解質。
【請求項2】
該電解質が、緩衝剤を含有し、その際に、該緩衝剤が、
式I R1−(CR2R3)n−SO3H
[式中、n=1、2、3、4又は5である]に相当する化合物であり、ここで、全てのR2及びR3は互いに独立して、H、NH及びOHから選択されており、かつR1は、ピペラジニル、置換ピペラジニル、N−モルホリノ、シクロアルキル、トリス(ヒドロキシアルキル)アルキルを含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の電解質。
【請求項3】
該緩衝剤が、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸又は3−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸であることを特徴とする、請求項2記載の電解質。
【請求項4】
該電解質が、更なる成分として、蒸気圧を低下させる成分を含有し、その際に、該更なる成分が、アルキレングリコール又はポリアルキレングリコールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項5】
該溶剤が、水及びアルキレンカーボネート又はそれらの混合物を含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項6】
該電導度塩のアニオンが、ハロゲニド、カーボナート、スルホナート、ホスファート及び/又はホスホナートを含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項7】
該電導度塩が、カチオンとして金属イオン、オニウムイオン又は金属イオンとオニウムイオンとの混合物を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項8】
該金属イオンが、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンから選択されていることを特徴とする、請求項7記載の電解質。
【請求項9】
該オニウムイオンが、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、グアニジニウムカチオン及びヘテロ環式カチオンから選択されていることを特徴とする、請求項7又は8記載の電解質。
【請求項10】
該有機メディエータが、置換1,2−又は1,4−ジヒドロキシベンゼン、置換ヒドロキノン、置換ナフトヒドロキノン、置換アントラヒドロキノンを含む群から選択されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項11】
置換アントラキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼン及び/又は置換1,4−ヒドロキノンの置換基が、スルホニル、t−ブチル、ヒドロキシ、アルキル、アリールを含む群から選択されていることを特徴とする、請求項10記載の電解質。
【請求項12】
該電解質が、溶剤としてプロピレンカーボネート及び/又はエチレンカーボネートの混合物を含有し、電導度塩としてLiCl、KCl、テトラブチルアンモニウムトルエンスルホナート及び/又は1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファート又はこれらの成分のうち2種以上の混合物を含有し、かつ有機メディエータとしてt−ブチル−ヒドロキノン及び/又はアントラキノン−2−スルホナートを含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項13】
該有機メディエータが、10-2モル/l以下の濃度で、該電解質中に含まれていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項14】
該有機メディエータが、10-6モル/l以上の濃度で、該電解質中に含まれていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の電解質。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の電解質の製造方法であって、以下の工程:
a.溶剤を反応容器中に装入する工程
b.緩衝剤を添加する工程
c.有機メディエータを添加する工程
d.混合物を撹拌しながら、150℃に約15分間加熱する工程
e.全ての固体が溶解するまで、更に熱供給せずに約1時間撹拌する工程
f.室温に冷却する工程
g.電導度塩を添加する工程
を含む、電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学式ガスセンサ用の液体電解質、特にNH
3又は含NH
3ガス混合物を検出するための電気化学式ガスセンサ用の液体電解質に関する。
【0002】
限られた期間にわたって気体アンモニア(NH
3)の濃度が検出可能である、電気化学式ガスセンサは、一般に知られている。そのようなセンサは、通常、化学工業から、冷却設備の監視を経て、農場までの、多種多様な技術分野において使用される。これらは、特に、可燃性で、吸入の際に有毒で、腐食性のアンモニアガスの臨界濃度を適時に認識し、かつ相応する危険を警告するために利用される。
【0003】
そのような電気化学式センサの本質的な構成要素のうちの1つが、該センサ中で使用される電解質である。該電解質は、その際に、少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードと導電接触している。検出されうるガスが、該電気化学式センサ中に入ってくると、典型的には、該ガスと該電解質と該電極材料との間で、反応が行われ、この反応は、該センサのアノードとカソードとの間で測定可能な電流の流れをもたらす。
【0004】
そして、欧州特許第0 395 927号明細書には、可溶性電解質で充填された電解質室中に収容されている少なくとも1つの測定極及び対極を有し、気体又は液体の測定試料中のアンモニア又はヒドラジンの測定用の電気化学式測定セルが記載されており、該室は、透過膜により測定試料に対して閉じられている。
【0005】
欧州特許第0 556 558号明細書も、アンモニア、アミン、ヒドラジン及びヒドラジン誘導体の測定用の電気化学式測定セルを提供する。ここでは、該電解質溶液中の支持電解質(Leitelektrolyten)として吸湿性のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用することが提案される。このことは、該電解質の乾燥を防止し、このようにして、該センサのできるだけ長期間の使用適性を可能にする。
【0006】
そのように構成された電気化学式センサでのアンモニア(NH
3)の検出は、該センサ中へ流入するアンモニアガスと、該センサの電極と、該電解質との間の電気化学反応により、行われる。この反応の過程で、入ってくるアンモニアガスが該測定極上で酸化される。その際に生じるアンモニウムイオンは、引き続き、該対極上で、再び脱プロトン化される。しかし、これに関連して、例えば、この反応の副生物として更なる窒素化合物が形成されるかもしれず、該化合物が該電極表面の閉塞(被毒)をまねくかもしれないことが問題となりうることが判明している。
【0007】
これらから出発して、本発明の課題は、技術水準のこれらの欠点及び他の欠点を克服することである。
【0008】
解決手段として、本発明は、請求項1に相当する液体電解質を提供する。態様は、従属請求項の対象である。
【0009】
電気化学式ガスセンサ用の、特にNH
3又は含NH
3ガス混合物の検出に適している電気化学式ガスセンサ用の、液体電解質の場合に、本発明は、該電解質が、少なくとも1種の溶剤、電導度塩(Leitsalz)及び/又は有機メディエータを含有し、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であることを提供する。
【0010】
特に、貴金属又はカーボンナノチューブ製の電極が使用される電気化学式ガスセンサのために、そのような電解質は、そのようなセンサの連続通気耐性(Dauerbegasungsfestigkeit)を改善するために、大いに有利に使用することができる。特に、前記のような被毒のリスクは、このようにして明らかに最小限にすることができる。
【0011】
その際に、該電解質が緩衝剤を含有し、その際に、該緩衝剤が、好ましくは、
式I R
1−(CR
2R
3)
n−SO
3H
[式中、n=1、2、3、4又は5、好ましくはn=2又はn=3である]に相当する化合物であり、ここで、全てのR
2及びR
3が互いに独立して、H、NH及びOHから選択されており、かつR
1が、ピペラジニル、置換ピペラジニル、N−モルホリノ、シクロアルキル、トリス−(ヒドロキシアルキル)アルキルを含む群から選択されている場合が特に有利である。例えば、R
2及びR
3は互いに独立して、H、NH及びOHから選択されていてよく、その際にn=2であり、かつR
1は、ピペラジニル、置換ピペラジニル、N−モルホリノ、シクロアルキル、トリス−(ヒドロキシアルキル)アルキルを含む群から選択されている。例えば、R
2及びR
3が互いに独立して、H、NH及びOHから選択されており、その際にn=2であり、かつR
1が、N−モルホリノ及びトリス−(ヒドロキシアルキル)アルキルを含む群から選択されていることも考えられる。例えば、その際に、n=2又はn=3であり、その際に、全てのR
2及びR
3が互いに独立して、H、NH及びOHから選択されており、かつR
1が、[4−(2−ヒドロキシエチル)−1]−ピペラジニル、(N−モルホリノ)、N−シクロヘキシル、トリス−(ヒドロキシメチル)メチルから選択されている場合が極めて特に有利である。極めて特に好ましくは、該緩衝剤は、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸又は3−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸である。そして、例えば、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、かつ該電解質がそのうえ、緩衝剤、特に3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸又は3−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸から選択されている緩衝剤を含有することが可能である。
【0012】
該電解質が、ある程度の時間の後に乾燥することを―例えば該センサが連続操作において使用される場合に―防止するために、そのうえ、該電解質が、更なる成分として、その蒸気圧を低下させる成分を含有する場合が有利である。その際に、更なる成分は、好ましくはアルキレングリコール又はポリアルキレングリコールであってよく、特に好ましくはプロピレングリコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物である。そして、例えば、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩は、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、かつ該電解質がそのうえ、少なくとも1種のアルキレングリコール、特に、プロピレングリコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物から選択されているアルキレングリコールを含有することが可能である。
【0013】
更に、該溶剤が、水及びアルキレンカーボネート又はそれらの混合物を含む群から選択されている、好ましくは水、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート又はそれらの混合物を含む群から選択されている場合が好都合である。例えば、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、かつ該溶剤が水であることが可能である。選択的に、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、かつ該溶剤が、アルキレンカーボネート、特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物であることも考えられる。その際に、特に、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、該電解質がそのうえ、緩衝剤、特に、3−(N−モルホリノ)−プロパンスルホン酸又は3−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸から選択されている緩衝剤を含有し、かつ該溶剤が、アルキレンカーボネート、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物であることも考えられる。そのうえ、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩が、イオン液体、無機塩、有機塩又はそれらの混合物であり、該電解質がそのうえ、少なくとも1種のアルキレングリコール、特にプロピレングリコール、エチレングリコール又はプロピレングリコールとエチレングリコールとの混合物から選択されているアルキレングリコールを含有し、かつ溶剤が、アルキレンカーボネート、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物であることが可能である。
【0014】
好ましくは、該電導度塩のアニオンは、ハロゲニド、カーボナート、スルホナート、ホスファート及び/又はホスホナートを含む群から選択されており、好ましくは、アニオンは、アルキル−スルホナート、アルケニル−スルホナート、アリール−スルホナート、アルキル−ホスファート、アルケニル−ホスファート、アリール−ホスファート、置換アルキル−スルホナート、置換アルケニル−スルホナート、置換アリール−スルホナート、置換アルキル−ホスファート、置換アルケニル−ホスファート、置換アリール−ホスファート、ハロゲン化ホスファート、ハロゲン化スルホナート、ハロゲン化アルキル−スルホナート、ハロゲン化アルケニル−スルホナート、ハロゲン化アリール−スルホナート、ハロゲン化アルキル−ホスファート、ハロゲン化アルケニル−ホスファート、ハロゲン化アリール−ホスファートを含む群から選択されており、特に好ましくは、アニオンは、フルオロホスファート、アルキルフルオロホスファート、アリールスルホナートを含む群から、極めて特に好ましくはペルフルオロアルキルフルオロホスファート、トルエンスルホナートを含む群から選択されている。
【0015】
その際に、該電導度塩が、カチオンとして、金属イオン、オニウムイオン又は金属イオンとオニウムイオンとの混合物を有する場合が有利である。例えば、該金属イオンは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンから、好ましくはLi、K及び/又はNaから、選択されていてよい。好都合であるのは、該オニウムイオンが、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、グアニジニウムカチオン及びヘテロ環式カチオンから選択されており、好ましくはアルキル−アンモニウムカチオン及びヘテロ環式カチオンから選択されており、特に好ましくはアルキル−アンモニウム、イミダゾリウム及び/又は置換イミダゾリウムイオンから選択されており、その際に、該置換イミダゾリウムイオンは、好ましくは、
【化1】
に相当する構造を有し、ここで、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、互いに独立して、−H、炭素原子1〜20個を有する直鎖状又は分岐状のアルキル、炭素原子2〜20個及び1個以上の二重結合を有する直鎖状又は分岐状のアルケニル、炭素原子2〜20個及び1個以上の三重結合を有する直鎖状又は分岐状のアルキニル、炭素原子1〜6個を有するアルキル基で置換されていてよい、炭素原子3〜7個を有する飽和、部分不飽和又は完全不飽和のシクロアルキル、飽和、部分不飽和又は完全不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C
1〜C
6−アルキル又はアリール−C
1〜C
6−アルキルから選択されていてよく、その際に、特に好ましくはR
2、R
4及びR
5がHであり、かつR
1及びR
3がそれぞれ互いに独立して、炭素原子1〜20個を有する直鎖状又は分岐状のアルキルである場合である。
【0016】
例えば、特に、電導度塩として、テトラブチルアンモニウムトルエンスルホナート又は1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファートが使用されることが考えられる。選択的に、該電導度塩が、例えばLiCl、KCl又はLiClとKClとの混合物であることも考えられる。そして、該電解質が、溶剤、電導度塩及び/又は有機メディエータの混合物であり、その際に、該電導度塩は、LiCl、KCl、アルキルアンモニウム−トルエンスルホナート及びペルフルオロアルキルフルオロホスファート−アニオンを有するイオン液体から選択されている場合が特に有利である。
【0017】
更に、該有機メディエータが、酸化の際にキノイド系又はナフタレン系を形成するポリヒドロキシ化合物である場合が好都合である。例えば、該有機メディエータは、o−ジヒドロキシベンゼン、p−ジヒドロキシベンゼン、置換o−ジヒドロキシベンゼン及び置換p−ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、置換ジヒドロキシナフタレン、アントラヒドロキノン、置換アントラヒドロキノン、好ましくは1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ナフトヒドロキノン、置換1,2−又は1,4−ジヒドロキシベンゼン、置換ヒドロキノン、置換ナフトヒドロキノン、特に好ましくは置換アントラヒドロキノン、置換ヒドロキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼンを含む群から選択されていてよい。その際に、置換アントラキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼン及び/又は置換1,4−ヒドロキノンの置換基が、スルホニル、t−ブチル、ヒドロキシ、アルキル、アリール、好ましくはスルホン酸及び/又はt−ブチルを含む群から選択されている場合が特に好都合である。
【0018】
いずれにせよ、該電解質が、溶剤として、プロピレンカーボネート及び/又はエチレンカーボネートの混合物を有し、電導度塩として、LiCl、KCl、テトラブチルアンモニウムトルエンスルホナート及び/又は1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファート又はこれらの成分のうち2種以上の混合物を有し、かつ有機メディエータとして、t−ブチル−ヒドロキノン及び/又は置換アントラキノン、好ましくはアントラキノン−2−スルホナートを有する場合が特に好都合である。
【0019】
該有機メディエータの濃度は、その際に、10
-6モル/及び10
-2ml/lであってよい。そして、該有機メディエータは、10
-2モル/l以下、好ましくは10
-3モル/l以下、特に好ましくは5×10
-4モル/l以下、極めて特に好ましくは2×10
-4モル/l以下、極めて特に好ましくは10
-4モル/l以下の濃度で、該電解質中に含まれていてよい。該有機メディエータが、10
-6モル/l以上、好ましくは10
-5モル/l以上、特に好ましくは5×10
-5モル/l以上、極めて特に好ましくは8×10
-5モル/l以上、極めて特に好ましくは10
-4モル/l以上の濃度で、該電解質中に含まれていることも可能である。特に、該有機メディエータが、10
-5モル/l〜10
-3モル/l、好ましくは5×10
-5モル/l〜5×10
-4モル/l、特に好ましくは8×10
-5モル/l〜2×10
-4モル/l、極めて特に好ましくは10
-4モル/lの濃度で存在していることも可能である。
【0020】
本発明による電解質は、特に好ましくは、次の工程:
a.該溶剤を反応容器中に装入する工程
b.該緩衝剤を添加する工程
c.該有機メディエータを添加する工程
d.該混合物を撹拌しながら、150℃に約15分間加熱する工程
e.全ての固体が溶解するまで、更に熱を供給せずに約1時間撹拌する工程
f.室温に冷却する工程
g.該電導度塩を添加する工程
を含む方法により、得ることができる。
【0021】
更なる詳細及び細部は、以下に記載される図及び実施例から明らかになる。その際に、図は以下のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】アンモニアの検出に使用可能である、本発明による電解質を有する電気化学式ガスセンサの構成を示す略示図。
【
図2】本発明による電解質を有する電気化学式ガスセンサにおけるNH
3の検出反応の経過を示す略示図。
【実施例】
【0023】
図1において、電解質リザーバ30を有するハウジング20を有する電気化学式ガスセンサ10がわかる。ハウジング20中に、ガス入口21及びガス出口22が形成されている。ハウジング20の内部に、作用極51が、ガス入口21を経てハウジング20へ流入するガスと接触するように配置されている。作用極51は、ガラス繊維膜55により捕集極(Abfangelektrode)52から隔てられている。捕集極52はその側でガラス繊維膜55を用いて、電解質リザーバ30から隔てられている。電解質リザーバ30の内部に、更に、対極53及び参照極54が配置されている。
【0024】
電解質リザーバ30中に、本発明による電解質40が存在している。その際に、ガラス繊維膜55は、該電解質にしみ込ませることができる。このようにして、電解質40は、作用極51並びに捕集極52に到達することができるので、そこでそれぞれ、
図2に示されたスキーム相当する、流入するNH
3と、作用極51もしくは捕集極52の材料と、電解質40との間での化学反応が行われることができる。
【0025】
その際に、ガスセンサ10中へ流入するNH
3は、作用極51の表面上で、該電解質と反応する。好ましくは、作用極51は、その際に、例えば、カーボンナノチューブコーティングを有するPTFE膜からなる。対極53は、好ましくは、貴金属からなる。電解質40は、この例において、溶剤としてプロピレンカーボネート及び/又はエチレンカーボネート、電導度塩として1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファート及び有機メディエータとしてt−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンからなる組成物である。該電解質は、更に好ましくは、緩衝剤、すなわち3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸を含有する。
図2において識別できるように、該t−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンは、作用極51上で、t−ブチル−キノンに酸化される。その際に放出されたプロトンは、ガスセンサ10中へ流入するNH
3と反応して、アンモニウムイオンになる。アンモニウムイオンは、対極53に到達し、そこで、前もって形成されたt−ブチル−キノンの1,2−ジヒドロキシベンゼンへの逆反応が行われる。その際に、該アンモニウムイオンから、そしてまたNH
3が放出され、これはガス出口22を経て逃出することができる。この反応経過の過程で、使用される緩衝剤が、作用極51と対極53との間で電解質リザーバ30中に存在する電解質のpH値を安定化させる。
【0026】
本発明による電解質を製造する実施例:
反応容器中に、溶剤としてポリカーボネートを装入する。該ポリカーボネートに、0.4質量%の緩衝剤、好ましくは3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸を添加する。次の工程において、6.9質量%の該有機メディエータ、好ましくはt−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンを添加する。該混合物を撹拌しながら、15分以内で加熱し、その際に150℃の最大温度は超えない。引き続き、該混合物を、全ての固体が溶解するまで、更に熱供給せずに1時間更に撹拌した。得られた溶液は、澄明で僅かに黄味を帯びた色を有する。
【0027】
こうして得られた溶液は、室温に冷却されるまで放置される。その後、2.7質量%の該電導度塩、好ましくはHmim−FAP(3−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファート)を添加し、該混合物を短く、約1分間、かき混ぜる。
【符号の説明】
【0028】
10 ガスセンサ、 20 ハウジング、 21 ガス入口、 22 ガス出口、 30 電解質リザーバ、 40 電解質、 51 作用極、 52 捕集極、 53 対極、 54 参照極、 55 ガラス繊維膜