(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の最大出力電力値は、前記第一の最大出力電力値よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部は、前記誘導加熱動作モードと前記非接触給電動作モードとで、前記駆動部から前記電磁コイルに供給される前記高周波電流の周波数を切り替えることを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部は、前記誘導加熱動作モードと前記非接触給電動作モードとで、前記電磁コイルを含む磁場発生用励磁回路における共振回路の共振周波数を切り替えることを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱調理器。
前記駆動部は、フルブリッジ回路で構成されており、前記制御部は、前記誘導加熱動作モードではフルブリッジ回路構成で動作させ、前記非接触給電動作モードではハーフブリッジ回路構成で動作させるように、前記駆動部の回路構成を切り替えることを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部は、前記誘導加熱動作モード及び前記非接触給電動作モードにおける前記出力電力値を予め設定された出力電力値設定テーブルに基づいて調節することを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部は、前記誘導加熱動作モード及び前記非接触給電動作モードにおける前記出力電力値を予め設定された数式に基づいて調節することを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱調理器。
前記電磁コイルは、平面状に巻回された中央コイルと、前記中央コイルの周辺に配設された周辺コイルとにより構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記電磁コイルは、複数の個別コイルからなり、前記複数の個別コイル毎に駆動回路を備えていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部は、前記負荷が受電対象物であると判別した場合には、前記複数の個別コイルのうち、いずれか任意の前記個別コイルに高周波電流を供給するように前記駆動部を制御することを特徴とする請求項11に記載の誘導加熱調理器。
前記誘導加熱動作モードと、前記非接触給電動作モードとを切り替える操作スイッチを設けた切替操作部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記誘導加熱動作モードで動作しているか、前記非接触給電動作モードで動作しているかの動作モードを表示する動作モード表示部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記制御部と前記受電対象物との間に通信機能が設定されており、前記電磁コイルから電磁誘導により前記受電対象物に給電されると、前記受電対象物から前記制御部へ前記受電対象物が受電状態にあることを示す信号が送信されることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記受電対象物に、前記電磁コイルにより給電される受電コイルと共振コンデンサからなる共振回路とにより構成される受電回路が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
前記負荷が前記受電対象物であるかどうかを判別する処理手順、及び前記負荷が前記被加熱物であるかどうかを判別する処理手順を有し、前記受電対象物であるかどうかを判別する処理手順を先に実施することを特徴とする請求項18に記載の誘導加熱調理器の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成及び動作について
図1から
図15を参照して説明する。
図1は、誘導加熱調理器を概略的に示す全体斜視図である。図において、誘導加熱調理器1は、概略、主に板金で構成された筐体を具備する誘導加熱調理器本体2、その上側表面のほぼ全体を覆うガラス材などで形成されたトッププレート3、左右に配置された加熱部9,10、その後方に配置された別の加熱部11、及び調理用グリル4を備えている。加熱部9,10は、トッププレート3の下部に高周波磁場(磁界)発生コイル100(以下、電磁コイルと称する。)(
図3を参照。)が配置された誘導加熱部(IH加熱部)である。さらに、別の加熱部11は、加熱源にラジエントヒータを用いたものでもよく、ラジエントヒータの代わりに電磁コイルを用いたIH加熱部でもよい。ここで、電磁コイル100は、誘導加熱に適した材料、例えば、銅などが用いられたコイルである。
なお、本実施の形態では、
図1の左側に示す加熱部10を例に、IH加熱部について図示、説明するが、他の加熱部9、さらに後方の加熱部11がIH加熱部である場合には、これらも含め、本構成を採用するものであってもよい。
【0026】
本実施の形態では、加熱部の数は3口としているが、加熱部の数や配置は、これに限定されるものではなく、加熱部が1口、あるいは2口であってもよく、
図1に示す3口より多いものであってもよい。また、加熱部の配置は、横一列や逆三角形状に配置されたものであってもよい。さらに、本実施の形態では、調理用グリル4が、筐体2のほぼ中央に配置された、いわゆるセンターグリル構造を有する誘導加熱調理器1について例示的に説明しているが、これに限定されるものではなく、調理用グリル4が、いずれか一方の側面に偏ったもの、または調理用グリル4を具備しない誘導加熱調理器にも同様に適用することができる。
【0027】
本実施の形態における誘導加熱調理器1は、各加熱部9,10,11及び調理用グリル4を操作するために用いられる上面に設けられた操作部5、及び出力(火力)などを調節する調節ダイヤルからなる前面に設けられた操作部6a,6b、並びにこれらの制御状態や操作ガイドなどを表示するための表示部7a,7b,7cを有する液晶などの表示部7を備える。さらに、操作部5には、設定された出力の大きさを示すLEDなどの表示器からなる表示部を備えていてもよい。これらの操作部5や表示部7は、
図1に示した構成や数や配置に限定されず、利便性や機器の仕様に応じて、最適な構成を選択できるものである。
また、誘導加熱調理器1は、トッププレート3上の後背側に設けられた吸排気窓8a,8b,8cを有する。さらに、
図1では、詳細図示されていないが、誘導加熱調理器1には、加熱部9,10に高周波電流を供給する駆動部40が内蔵されている。なお、誘導加熱調理器1は、図に示す各構成要件の配置や数に限定されるものではない。
【0028】
本実施の形態に係る誘導加熱調理器1における電磁コイル100は、トッププレート3を介して、電磁コイル100の直上近傍に載置された負荷が被加熱物である場合には、誘導加熱コイルとして動作し、負荷が受電機器である場合には、給電コイルとして動作する。
以下、誘導加熱調理器1の動作について図を用いて説明する。
図2は、トッププレート3上の加熱部10の下部に配置された電磁コイル100の構成を示す平面図である。電磁コイル100は、線状導体を巻き回して形成された、いわゆる巻線からなるコイルが、同心円状に複数個配置されて構成されている。
図2(a)に示す電磁コイル100は、内側コイル群と外側コイル群とからなる、それぞれ個別に巻回構成された複数のコイル(以下、個別コイルと称する。)101〜104で構成されており、例えば、個別コイル101と個別コイル102は、内側コイル群(以下、中央コイルと称する。)、個別コイル103と個別コイル104は、外側コイル群(以下、周辺コイルと称する。)であり、中央コイルを構成する個別コイル101と個別コイル102、及び周辺コイルを構成する個別コイル103と個別コイル104は、それぞれ、直列に接続されていても、独立したコイルでもよい。
【0029】
図2(a)に示す電磁コイル100は、これを構成する各個別コイル101〜104の形状が円形で、互いに同心円上に配置された例を示したが、電磁コイル100の形状はこれに限定されず、例えば、
図2(b)に示すように、6つの個別コイル101,102,103,104,105,106で構成されていてもよく、周辺コイルとしての個別コイル103〜106は、複数に分割された小径コイルであり、中央コイルの周辺を取り囲むように配置されたコイルであってもよい。さらに、加熱部9,10および加熱部11に配設されたコイルの形態は、
図2(a),(b)に示す電磁コイル100を構成する複数の個別コイルの数に限定されず、
図2(c)〜(d)に示すような構成を有するコイルであってもよい。
【0030】
図2(a)の電磁コイル100は、個別コイル101と個別コイル102で中央コイルを、個別コイル103と個別コイル104で周辺コイルを構成した例として示すが、これらの組み合わせは
図2に限定されるものではなく、個別コイル101〜104は全て独立したコイルであっても、いずれかと互いに直列に接続されたコイルであってもよく、中央コイルと周辺コイルで構成されるものであればよい。
同様に、複数のコイルで構成された
図2(b),
図2(c),
図2(d)に示すコイルにおける、複数のコイル組み合わせは、任意に設定可能であるが、本実施の形態では、主に、中央コイルと周辺コイルの組み合わせからなるコイルについて説明する。
ここでは、電磁コイル100は、概ね、中央コイルで1,500W、周辺コイルで1,500Wの出力電力が得られるように構成されている。
【0031】
なお、
図2(a)および
図3において、電磁コイル100は、個別コイル101,102からなる中央コイルと、個別コイル103,104からなる周辺コイルで構成された複数のコイルから構成されたコイルであり、中央コイルおよび周辺コイルを構成するコイルの数は、
図2に示すものに限定されない。
ここで、
図2(a)〜(c)に示す、中央コイルを構成する個別コイル102の外形は、好適には、14cm程度までのいわゆる小鍋の加熱に適した大きさであり、また、
図2(a)に示す、周辺コイルを構成する個別コイル103の外形は、好適には、小鍋より大きく中程度の大きさの鍋で20cm前後の鍋を加熱するのに適した大きさであり、
図2(c)の個別コイル103や
図2(d)の個別コイル102と同程度の大きさである。さらに
図2(a)に示す外コイルを構成する個別コイル104の外形や、
図2(b)の個別コイル103〜106が形成する外コイルの外形は、好適には、それ以上のいわゆる大鍋を加熱するのに適した大きさである。
【0032】
図3は、
図1に示すトッププレート3上の加熱部10下部に配置された電磁コイル100の面Sにおける断面図と、これに接続される各部の構成を示したブロック図である。
図3では、
図2(a)で示した電磁コイル100の形態を用いて説明する。電磁コイル100は複数の個別コイル101〜104で構成されており、中央コイル101は、温度センサを取り付けるための20mm程度の間隙を設けて個別コイル102と直列に接続され、個別コイル102とは独立して10mm程度の間隙を設けて個別コイル103が設けられ、個別コイル103の外側には15mm程度の間隙を設け個別コイル104が直列に接続されており、個別コイル103と個別コイル104は、個別コイル102の周辺に外コイルとして配置されている。電磁コイル100は、その上面とトッププレート3とは、略3mm程度の間隙Gap1を保って配置されている。
なお、ここで示す各間隙寸法などの数字においても、本実施の形態の動作を限定するものではない。
【0033】
電磁コイル100には、駆動部40より高周波電流が供給される。駆動部40は、個別コイル101と個別コイル102が直列に接続された中央コイルを駆動する駆動回路40aと、個別コイル103と個別コイル104が直列に接続された周辺コイルを駆動する駆動回路40bを含み、駆動部40には、検知部60が接続されている。検知部60は、複数の駆動部毎に独立して接続された複数の検出回路60a,60bを有し、検出回路60a,60bが検出した電気特性により、トッププレート3上の負荷の有無や、トッププレート3を介して電磁コイル100上に載置された負荷の形状、大きさ、材質などを判別するための加熱部10の負荷の負荷特性を検知する。
加熱部10における電気特性とは、例えば、トッププレート3を介して電磁コイル100上に負荷が載置されたことによって変化する、駆動部40自体の電気特性や、駆動部40に接続された電磁コイル100や共振コンデンサ80などの電気特性などを示す。ここでいう電気特性の代表的なものとして、電圧、電流、周波数、抵抗値あるいは温度情報を電気信号に変換したものなどがある。
【0034】
制御部50は、検知部60によって検出された、中央コイルとしての個別コイル101,102と周辺コイルとしての個別コイル103,104のそれぞれの負荷の負荷特性の検出結果に基づき、ここでは図示されていない負荷判別手段により負荷を判別し、トッププレート3上に載置された負荷に適した条件で動作するように駆動部40を制御する。ここでいう負荷特性とは、例えば、負荷の電気特性から得られる負荷抵抗の周波数特性等、負荷の種別を判別することができる負荷の固有特性である。
【0035】
例えば、制御部50は、負荷の負荷特性を得るために、負荷の材質に適した駆動周波数を選定する、あるいは、誘導加熱調理器本体2に設けられた操作部5や操作部6を介して操作された内容(設定された値)に対応した大きさの高周波電流を電磁コイル100に供給するように駆動部40の駆動条件を変化させたり、表示部7の表示内容を変更したりする。あるいは、制御部50は、検知部60による加熱部10の負荷特性の検知結果に基づき、負荷判定手段により、トッププレート3上に負荷が存在しないと判定された場合には、駆動部40の駆動を停止させ、表示部7を介して負荷が載置されていないことを通知する。通知する手段としては、ここでは図示されていないが、例えば、表示部7への表示、あるいはブザーなどの音声手段を用いてもよい。
【0036】
また、負荷である鍋Pが、電磁コイル100の中心からずれて載置されている場合には、制御部50は、検知部60によって検出された負荷の負荷特性に基づき、鍋Pが載置されている面積が小さいと判別された電磁コイル100への高周波電流の供給を停止するように駆動部40を制御する。つまり、複数のコイルのうち、鍋Pが載置されているコイルのみを駆動するように駆動部40の各駆動回路を個別に制御することで、不要な電力消費を抑制し、効率よく誘導加熱動作を行う。
【0037】
なお、操作部5,6の操作状態の判別や、表示部7への表示内容の設定は、制御部50とは別途設けられたマイコンなどで行ってもよい。なお、ここでは、主に加熱部10について説明しているが、その他の加熱部9,11についても同様の内容を適用することができる。また、コイル形状についても、代表的に
図2(a)を用いて説明するが、複数のコイルで構成された
図2(b)や
図2(c)でも同様の効果が得られる。
【0038】
図4は、
図3に示した駆動部40、制御部50、検知部60、電磁コイル100のさらに詳細な構成を示す回路図である。
図4は、高周波磁界を発生する駆動部40の一例を含む回路図であり、
図4に示す電源部30は、商用電源31から供給される交流電源をダイオードブリッジ32で整流し、チョークコイル331と平滑コンデンサ332からなる平滑回路33で直流に変換し、駆動部40に電源を供給する。駆動部40は、制御部50の指令に基づき、電磁コイル100に高周波電流を供給する。例えば、鍋Pを加熱するため、操作部5や操作部6が操作され、鍋Pを加熱する出力が調節されると、制御部50は、設定された出力(火力)で鍋Pを加熱するために、駆動周波数や高周波電流の大きさを制御して、設定された出力に応じた高周波電流を電磁コイル100に供給するように駆動部40を制御する。
【0039】
駆動部40は、中央コイルを構成する個別コイル101及び個別コイル102に高周波電流を供給する駆動回路40aと、周辺コイルを構成する個別コイル103,104に高周波電流を供給する駆動回路40bで構成されている。
駆動回路40aは、2つの半導体スイッチング素子401a,401bが直列に接続された半導体スイッチング素子対401(以下、アーム401と称する。)と、2つの半導体スイッチング素子402a,402bが直列に接続された半導体スイッチング素子対402(以下、アーム402と称する。)を含み、アーム401とアーム402のそれぞれの中点間に中央コイル101,102と共振コンデンサ81が直列に接続されたフルブリッジ回路により構成されている。
【0040】
また、駆動回路40bは、2つの半導体スイッチング素子401a,401bが直列に接続された半導体スイッチング素子対401(以下、アーム401と称する。)と、2つの半導体スイッチング素子403a,403bが直列に接続された半導体スイッチング素子対403(以下、アーム403と称する。)を含み、アーム401とアーム403のそれぞれの中点間に周辺コイル103,104と共振コンデンサ83が直列に接続されたフルブリッジ回路により構成されている。
【0041】
駆動回路40a及び駆動回路40bのそれぞれには、駆動回路40a及び駆動回路40bの負荷の電気特性を検出する検出回路60a,60bを有し、検出回路60a,60bは、検知部60に接続されている。検知部60は、負荷の電気特性により、例えば、負荷抵抗の周波数特性である負荷特性を検知する。
制御部50は、検知部60によって検知された負荷特性に基づき、トッププレート3上の状態、例えば、負荷の有無や材質、あるいは位置ずれなどの状態を判断する。ここで、検知部60の検出回路60a、60bが検出する駆動部40の負荷の電気特性は、例えば、電源部30に流れる電流、個別コイル101〜104に流れる電流、共振コンデンサ81,83に印加される電圧、駆動部40の出力電圧などである。なお、トッププレート3上に載置された負荷の状態を検知する手段は、温度センサや光センサなどであってもよい。
【0042】
ところで、個別コイル101及び個別コイル102で構成される中央コイルのインダクタンスをLa、これに直列に接続された共振コンデンサ81のコンデンサ容量をCaとすると、インダクタンスLaとコンデンサ容量Caで構成される直列共振負荷の共振周波数f0aは、式(1)により求められる。
【数1】
また、個別コイル103及び個別コイル104で構成される周辺コイルのインダクタンスをLbとし、これに直列に接続された共振コンデンサ83のコンデンサ容量をCbとすると、LbとCbで構成される直列共振負荷の共振周波数f0bは、式(2)により求められる。
【数2】
例えば、アーム401とアーム402と個別コイル101,102、共振コンデンサ81で構成されるフルブリッジ回路(駆動回路40a)を駆動する駆動周波数fswaは、上記に示したインダクタンスLaとコンデンサ容量Caにより求められる共振周波数f0aよりも大きい周波数であることが望ましい。
【0043】
また、アーム401とアーム403と個別コイル103,104および共振コンデンサ83で構成されるフルブリッジ回路(駆動回路40b)を駆動する駆動周波数fswbは、上記に示したインダクタンスLbとコンデンサ容量Cbにより求められる共振周波数f0bよりも大きい周波数であることが望ましい。これは、駆動部40の各スイッチング素子の損失が増大し、損壊するのを防ぐためである。
なお、各アームを構成する各半導体スイッチング素子には、スイッチング時のノイズを軽減するように、適宜、スナバコンデンサを並列に接続してもよい。
【0044】
ここで、個別コイル101と個別コイル102からなる中央コイルと、個別コイル103と個別コイル104からなる周辺コイルのそれぞれのインダクタンスは、トッププレート上に負荷が載置されていない、いわゆる無負荷の状態での共振周波数f0aと共振周波数f0bがそれぞれ20kHz前後であり、また、共振周波数f0aと共振周波数f0bの差Δf0が3kHzより小さくなるように選定することが望ましい。
共振周波数f0aと共振周波数f0bを近い値に選定するのは、駆動回路40aと駆動回路40bを同一周波数fswcで駆動したとき、駆動周波数fswcと共振周波数f0aとの差と、駆動周波数fswcと共振周波数f0bとの差のうち、周波数差が大きい方のコイルに流れる高周波電流の大きさが小さくなり、その結果、中央コイルと周辺コイルの電流の大きさの違いによる加熱分布の不均一が生じてしまうのを抑制するためである。
【0045】
図5に、半導体スイッチング素子対401〜403を駆動する制御信号S1〜S6のタイミングチャートを示す。これらの制御信号S1〜S6は制御部50より出力される。
図4に示すように、半導体スイッチング素子対401を構成する半導体スイッチング素子401aおよび401bには、それぞれ制御信号S1および制御信号S2を制御部50から供給する信号回路が接続されており、制御信号S1および制御信号S2は、互いの位相関係が固定されており、それぞれ排他的にオン/オフ期間が存在する一対の相補信号である。
【0046】
図5において、制御信号S1を例に説明するが、H(高)レベルのときに半導体スイッチング素子401aがオンし、L(低)レベルのときにオフする。なお、一組の相補信号である制御信号S1,S2(または制御信号S3,S4、制御信号S5,S6)は、駆動信号波形に歪や遅れが生じた場合などに、半導体スイッチング素子対401(または半導体スイッチング素子対402,403)において、上下に直列に接続された半導体スイッチング素子401aおよび401bが、同時に導通する期間(同時オン)が存在しないように、休止期間(デッドタイムTda,Tdb)が設けられている。これは上下の半導体スイッチング素子が同時に導通された場合、半導体スイッチング素子に過大電流が流れてしまうため、この休止期間は、半導体スイッチング素子が破壊しないための保護措置である。ここで、各信号のオン期間は周期Tからデッドタイムを除いた時間の1/2の時間に等しい。すなわち、デッドタイムが“0”の場合は、周期Tの1/2のオン時間(デューティ50%)の信号である。
【0047】
同様に、半導体スイッチング素子対402を構成する半導体スイッチング素子402aおよび半導体スイッチング素子402bには、それぞれ制御信号S3および制御信号S4を制御部50から供給する信号回路が接続され、また、半導体スイッチング素子対403を構成する半導体スイッチング素子403aおよび半導体スイッチング素子403bには、それぞれ制御信号S5およびS6を制御部50から供給する信号回路が接続されており、制御信号S3と制御信号S4および制御信号S5と制御信号S6は、制御信号S1,制御信号S2と同様、それぞれデッドタイムTda,Tdbが設定された一対の相補信号である。
【0048】
個別コイル101および個別コイル102からなる中央コイルに供給される高周波電流の大きさは、制御信号S1と制御信号S3(制御信号S2と制御信号S4)の位相差θa(0<θa<2π)により決定される。位相差θaが大きいほど中央コイルに流れる高周波電流は大きくなる。一方、個別コイル103および個別コイル104からなる周辺コイルに供給される高周波電流の大きさは、制御信号S1と制御信号S5(制御信号S2と制御信号S6)の位相差θb(0<θb<2π)により決定される。
【0049】
そこで、制御部50は、操作部5,6を介して設定された出力が得られるように、位相差θaあるいはθbを調整する。
一方、制御部50は、中央コイルと周辺コイルに供給される高周波電流の周波数差による干渉音を回避するため、制御信号S1〜S6の周波数f(=1/T)を同一周波数に設定する。駆動信号S1〜S6の周波数fは、駆動部40の各半導体スイッチング素子を駆動する駆動周波数fswであり、電磁コイル100に供給される高周波電流の周波数に等しい。このときの駆動周波数fswは、検知部60で検知された負荷特性に基づき制御部50により決定される。
【0050】
検知部60は、トッププレート3上に負荷が載置されたときの駆動部40の電気特性を検出し、制御部50は、検知部60の検出結果に基づき、負荷の加熱に最適な高周波電流の周波数(=駆動周波数fsw)を決定する。駆動周波数fswは、検出結果、つまりトッププレート3上に載置された負荷の負荷特性に応じてあらかじめ設定された値でもよく、また、検知部60で検出された電気特性によって共振周波数f0を算出し、これを基準に決定してもよい。
【0051】
ここで、上記したように、制御部50が設定する駆動周波数fswは、駆動部40の電気特性により決定される。トッププレート3上に負荷が載置されると、負荷と個別コイル101〜104との結合により、それぞれのコイルのインダクタンスが変化する。負荷と各コイルが結合したときのインダクタンスの変化に伴い、個別コイル101および個別コイル102と共振コンデンサ81からなる直列共振負荷の共振周波数f0a、また、個別コイル103および個別コイル104と共振コンデンサ83からなる直列共振負荷の共振周波数f0bも変化する。つまり、
図4における駆動回路40aの共振周波数f0a、および駆動回路40bの共振周波数f0bは、負荷によって変化するため、制御部50は、この電気特性の違いから、トッププレート3上の鍋Pの材質を判別することができる。
【0052】
ところで、アーム401とアーム402と個別コイル101,102および共振コンデンサ81で構成されるフルブリッジ回路(駆動回路40a)を駆動する信号の周波数fswaは、上記に示したLaとCaから求められる共振周波数f0aより大きい周波数であることが望ましい。また、アーム401とアーム403と個別コイル103,104、共振コンデンサ83で構成されるフルブリッジ回路(駆動回路40b)を駆動する信号の周波数fswbは、上記に示したLbとCbから求められる共振周波数f0bより大きい周波数であることが望ましい。
【0053】
例えば、共振周波数f0と、駆動周波数fswの差Δfは、1kHz〜が望ましく、さらに、負荷の載置状態によって変化する電気特性に応じて、駆動部40の損失を低減する値に設定してもよい。
これは、共振周波数f0と駆動周波数fswが近接しf0>fswの関係になると、駆動部40の各スイッチング素子の損失の増大を招き、破壊に至る恐れがあるのを防ぐためである。さらに、中央コイルと周辺コイルを駆動する高周波電流の周波数差による干渉音を回避するため、制御信号S1〜S6の周波数f(=1/T)を同一周波数に設定するのが望ましい。
【0054】
そこで、制御部50は、検知部60を構成する検出回路60aおよび検出回路60bの検出結果から、駆動回路40a,40bのそれぞれの共振周波数f0aおよびf0bを算出し、さらに、共振周波数f0aとf0bの差が、あらかじめ設定された値より小さい場合に、f0aより大きく、かつf0bより大きい周波数fcを駆動周波数fswとし、制御信号S1〜S6の周波数fに設定する。
【0055】
あるいは、制御部50は、駆動回路40aの電気特性を検出する検出回路60aの検出結果、および駆動回路40bの電気特性を検出する検出回路60bの検出結果より得られたそれぞれの駆動回路の電気特性に基づき、電気特性毎にあらかじめ設定された駆動周波数fswの中から、検出された電気特性に適した周波数fcを選択するようにしてもよい。
【0056】
図6に、このときの駆動部40の構成を簡易的に示す。以下、例示的に、加熱部10について詳細説明するが、加熱部9や加熱部11にも同様の構成を適用してもよい。
図6において、半導体スイッチング素子401aと半導体スイッチング素子401bの直列体(アーム401)の中点には、共振コンデンサ81の一端が接続され、他の一端は個別コイル101を構成する巻線の巻き始めである個別コイル101の一端に接続されている。さらに、個別コイル101の他の一端は個別コイル102の巻き始めである一端に接続され、個別コイル102の他の一端は半導体スイッチング素子402aと半導体スイッチング素子402bの直列体(アーム402)の中点に接続されている。
【0057】
また、
図6において、半導体スイッチング素子401aと半導体スイッチング素子401bの直列体(アーム401)の中点には、共振コンデンサ83の一端が接続され、他の一端は個別コイル103を構成する巻線の巻き始めである個別コイル103の一端に接続されている。さらに個別コイル103の他の一端は個別コイル104の巻き始めである一端に接続され、個別コイル104の別の一端は、半導体スイッチング素子403aと半導体スイッチング素子403bの直列体(アーム403)の中点に接続されている。
図6において、個別コイル101〜104に符記されている黒い「点」は、コイルの巻線の巻き始めを表している。
図6に示すIaは、互いに直列に接続された個別コイル101,102、共振コンデンサ81に流れる高周波電流であり、Ibは、互いに直列に接続された個別コイル103,104、共振コンデンサ83に流れる高周波電流を示している。
【0058】
図6に示すように、高周波電流Iaは、アーム401とアーム402からなるフルブリッジ回路(駆動回路40a)に流れ、一方、高周波電流Ibは、アーム401とアーム403で構成されるフルブリッジ回路(駆動回路40b)を流れる。このとき、アーム401には、高周波電流Iaと高周波電流Ibの両方が共通して流れる。このように、アーム401を共通のアームとして、アーム402とアーム403に高周波電流が同時に流れる。
なお、
図6では、高周波電流IaおよびIbの流れる経路は、半導体スイッチング素子401aから半導体スイッチング素子402bに流れる経路、および半導体スイッチング素子401aから半導体スイッチング素子403bに流れる経路についてのみ示しているが、別の周期において、半導体スイッチング素子401bと半導体スイッチング素子402a、半導体スイッチング素子401bと半導体スイッチング素子403a間の経路にも流れることはいうまでも無い。また、共振コンデンサ81と個別コイル101、個別コイル102および共振コンデンサ83と個別コイル103、個別コイル104の接続の並びは
図6に限定されるものではない。
【0059】
以下、
図7に従い、トッププレート3を介して加熱部10の電磁コイル100上に載置された負荷が被加熱物であると判別された場合について説明する。
図7は、電磁コイル100上に被加熱物である鍋Pが載置された様子を示している。
図7において、個別コイル101,102は、共振コンデンサ81と直列に接続され、駆動部40に接続されている。同様に、個別コイル103,104は、共振コンデンサ83、さらにスイッチ21と直列に接続され、駆動部40に接続されている。
なお、スイッチ21は、誘導加熱調理器1の動作を説明するために便宜上記載したものであり、実際には、スイッチ21は構成要素には含まれない。
【0060】
トッププレート3を介して電磁コイル100上に負荷が載置されると、制御部50は、負荷を検知するため、駆動部40に対して検知用の駆動条件で電磁コイル100に高周波電流を供給して、例えば、電流センサ61により個別コイル101,102に流れる高周波電流を検出し、電流センサ62により個別コイル103,104に流れる高周波電流を検出する。また、電流センサ63により電源入力の電流を検出する。各電流センサの情報を元に、検知部60で検出されたこれらの検出値と、あらかじめ設定された所定の判定値とを比較し、負荷判別手段によりトッププレート3上に載置された負荷が被加熱物である鍋Pであることを判別すると、駆動部40は、制御部50の指令に基づき、誘導加熱コイルとしての電磁コイル100に高周波電流を供給し、鍋Pを誘導加熱する。この状態を誘導加熱動作モードとする。
【0061】
例えば、鍋Pを加熱するため、操作部5や操作部6が操作されて、鍋Pを加熱するために出力が調節されると、制御部50は、設定された出力に応じた高周波電力が得られるように、駆動信号S1〜S6を制御し、電磁コイル100に高周波電流を供給するように駆動部40を制御する。このとき、電磁コイル100は、誘導加熱コイルとして動作され、電磁コイル100が発生する高周波磁界によって鍋Pは所定の出力で加熱される。
【0062】
ところで、200Vの商用電源を電源とする誘導加熱調理器を例にとって説明すると、200V対応の誘導加熱調理器では、一般的に要求される一つの加熱源(加熱部)の最大出力電力値は3,000W程度である。ただし、複数の加熱源(グリル等含む)を有する誘導加熱調理器では、複数の加熱源が同時に動作した場合の最大出力電力値は、例えば、5,800W以下に制限される。
従って、制御部50は、誘導加熱動作モードに移行すると、駆動部40の最大出力電力値MP1が3,000W程度となるように、出力電力値の調節範囲や駆動周波数fswなどの駆動条件が設定される。なお、複数の加熱源が同時に動作した場合の最大出力電力値は、これに限定されるものではない。
【0063】
ここで、トッププレート3上に載置された鍋Pが、個別コイル104と同程度の径を持つような鍋、例えば、鍋底径240mm程度の大鍋である場合、鍋Pが最大出力電力値の3,000Wで加熱するように操作されると、制御部50は、個別コイル101〜104の全てに高周波電流を供給するように駆動部40を制御する。このとき、
図7において、スイッチ21は閉回路を構成している。実際は、
図5に示したように、駆動部40には、制御部50によって、全ての制御信号S1〜S6が供給される。この状態では、全ての個別コイル101〜104に高周波電流が供給されているため、スイッチ21が閉回路を構成しているのと等価な状態である。
【0064】
ところで、例えば、電磁コイル100の中央コイルと周辺コイルが、それぞれ1,500W程度の出力電力が可能な仕様で構成された場合に、中央コイルと周辺コイル(個別コイル101〜104)が駆動されることで、最大3,000Wの出力電力が可能となる。
図8は、誘導加熱動作モード及び非接触給電動作モードにおける調節値と出力電力値の関係を示す図である。ここで、横軸は調節値α、縦軸は電磁コイル100で得られる出力電力値Pを表す。出力操作部としての操作部5,6での操作により出力調節を行うと、これに対応して横軸の調節値αが変化する。制御部50は、調節値αに応じて駆動部40を制御し、高周波電流Iの大きさを変化させる。これにより、出力電力値Pが増減する。
図8において、誘導加熱動作モードにおける調節値αが、最大のα1となる場合に出力電力値Pが最大のMP1となり、これを第一の最大出力電力値MP1とする。
【0065】
誘導加熱動作モードにおける最大出力電力値MP1は、3,000W程度が一般的である。したがって、制御部50は駆動部40に対して、最大3,000Wの出力が得られるように、
図5に示した駆動信号Sの位相差θを変化させる。
図8において、最大出力電力値MP1が得られる調節値をα1とする。このように、制御部50が調節値αを変化させることで、低出力から高出力まで広範囲に精度よく出力電力を変化させることができ、良好な調理性能が得られる。
さらに、
図8に示すように、出力電力の増減に応じて表示部7の状態、たとえば出力電力の調節値を表すLEDの点灯状態が変化し、最大出力電力値MP1でLEDが全灯状態となる。調節値の表示は、例えば数値であってもよく、状態の変化や設定値などを認知できる手段であればよい。
【0066】
図9は、表示部7の一例であるLEDの点灯状態を示した説明図である。操作部5,6が操作されると、その調節値αに応じてLEDの点灯状態が変化する。
図9(a)は、誘導加熱動作モードの第一の最大出力電力値MP1による最大出力時におけるLEDの点灯状態を示したものであり、ここでは、
図9(a)は、LEDの全灯状態を表している。また、
図9(c)は、調節値αに対するLEDの点灯状態の変化の様子を示したものである。加熱停止中は出力が“0”であることを示すように全LEDは消灯状態となり、調節値αを1段階上げるごとに、LEDは一つずつ点灯数が増加する様子を表している。これにより、調理時の出力電力の設定状態を知ることができるので、調理の工程に応じて最適な出力電力の調節が可能となる。
このように、誘導加熱動作モードでは、調節値αが最大値α1であるとき、駆動部40は第一の最大出力電力値MP1を出力する。出力操作部としての操作部5,6による出力電力の調節によって低出力電力値から最大出力電力値(約3,000W)まで広範囲にわたる出力電力が得られ、さらに出力電力の設定状態を表示部7によって確認しながら調理をすることができるので、使い勝手の良い調理器が得られる。
【0067】
次に、負荷として受電機器が載置された場合の動作について説明する。
図10は、非接触給電動作モードにおける誘導加熱調理器のブロック構成を示す回路図である。
図10は、
図7と同じ構成ではあるが、負荷として受電機器Aが載置されている非接触給電動作モードである点が異なる。
図11は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードにおける等価回路を示す回路図である。また、
図12(a)は、受電機器Aの構成例を示した図であり、受電機器筐体501と受電回路AXとにより構成され、受電コイル502、電源回路503、抵抗体や回転体などの負荷回路504などからなる。この構成で実現できる受電機器の一例として、加熱機能を有したミキサーなどがある。
図12(b)は、トッププレート3上の加熱部10に受電機器Aが載置された場合の、誘導加熱調理器本体2の面Sにおける加熱部10の断面図と、これに接続される各部の構成を示した図である。
図12(b)における電磁コイル100の断面図は、
図2(a)で示した電磁コイル100の形態の断面図である。
【0068】
図10では、トッププレート3を介して電磁コイル100上に負荷が載置されると、駆動部40の電気特性に基づいて検知部60により負荷特性を検知し、その検知結果に基づいて制御部50に設けられた負荷判別手段により負荷を判別するため、検知用の駆動条件で電磁コイル100に高周波電流を供給して、例えば、検出手段である電流センサ61により個別コイル101,102に流れる高周波電流を検出し、電流センサ62により個別コイル103,104に流れる高周波電流を検出する。また、電流センサ63により電源入力の電流を検出する。各電流センサの情報を元に、検知部60で検知されたこれらの負荷特性と、あらかじめ設定した所定の判定値とを比較し、負荷判別手段によりトッププレート3上に載置された負荷が、受電機器Aであることが判別されると、駆動部40は、制御部50の指令に基づき、給電コイルとしての電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXに高周波電流を供給し、受電機器Aに給電する。この状態を非接触給電動作モードとする。
【0069】
図12において、検出回路60a,60bの電流センサ61,62及び検出回路60a,60bの電圧センサ(ただし、
図12では、検出回路及び電圧センサは図示されていない。)により、トッププレート3を介して個別コイル101〜104からなる電磁コイル100上に載置された負荷の電気特性が、それぞれ検出され、これらの電気特性から検知された負荷特性が検知部60から出力され、制御部50に設けられた負荷判別手段により負荷が受電機器Aであると判別されると、制御部50は、電磁コイル100が給電コイルとして動作するように駆動部40の駆動条件を制御する。
負荷判別手段の一例としては、駆動部40の出力電圧や高周波電流等の電気特性を取得し、これにより得られた負荷特性と、予め設定されている判別値と比較し判断する。例えば、駆動部40の負荷のインピーダンスや共振周波数の関係などを用いてもよい。また、入力電流や出力電流の関係を用い、予め設定された閾値と比較することで判別してもよい。
そして、負荷を検知する手段の一例として、電磁コイル100の両端に印加される駆動電圧V及び電磁コイル100に流れる駆動電流Iから被加熱物の電気特性を検知するものであれば、既知の任意の回路構成であってもよく、例えば、特開2012−054179号公報に開示された負荷検知部と同様の回路構成が想定される。
【0070】
負荷の種別を判別するためには、負荷毎に予め取得された電気特性により、負荷抵抗の周波数特性における判別用特性曲線Tを作成する。
図13に示すように、判別用特性曲線Tとは、例えば、横軸に周波数f、縦軸に負荷抵抗Rを取ったものである。この周波数fと負荷抵抗Rによる判別用特性曲線Tの作成過程は、別途示す回路の駆動電圧と駆動電流から算出して得られるものである。判定用特性曲線Tが、負荷判別の際の判別のよりどころ(判別値の設定内容に相当)となる。電気特性を検出し、受電機器であるか、被加熱物であるか、非加熱対象物であるかを判別する場合は、これらがトッププレート3上に載置されたときの電気特性の結果と、判別用特性曲線Tとを比較し、判別用特性曲線Tのある領域内にあるか否かをもって負荷の種別を判別する。この判別用特性曲線Tを負荷判別の閾値としている。なお、
図13では、例示的に、判別用特性曲線Tの形状を曲線で示しているが、直線状でも折れ線状でも、負荷判別が可能な形状であればよい。
【0071】
ここで、トッププレート3上に載置された負荷が、受電機器Aからなる受電対象物であるか、鍋Pなどの被加熱物であるか負荷を判別する方法について、負荷判別手順の一例を以下に示す。
磁場を発生する電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXを駆動部40から見たときの負荷抵抗R及びインピーダンスZは、電磁コイル100による磁場に受電機器Aが載置される(結合する)ことで変化する。また、鍋Pなどの被加熱物が載置される(結合する)ことでも変化する。
【0072】
磁場を発生する電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXの負荷抵抗Rは、鍋Pなどの被加熱物の有無または載置状態(鍋Pに鎖交する交流磁場)に依存して変動する。すなわち、負荷抵抗Rは、鍋Pが載置されていないときの加熱用電磁コイル100自体の線抵抗RCに、鍋Pを載置したことによる鍋Pの見かけ上の負荷抵抗RLを加えたものに相当する(R=RC+RL)ものであり、その負荷抵抗Rは、上記磁場発生用励磁回路EXへの電気的入力の周波数に応じて変化する。
【0073】
但し、受電機器Aからなる受電対象物と鍋Pなどの被加熱物とでは、その変化特性が異なるものであって、その特性の差異を利用して受電機器Aの判別を行うものである。
受電機器Aの判別は、駆動部40に係る電気特性、すなわち、駆動部40により高周波電流が供給され駆動される電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXにおける駆動部40の電気特性などが検知部60により検出され、電気特性によって得られた負荷特性の結果により制御部50に設けられた負荷判別手段によって実行される。
電気特性としては、上述した磁場発生用励磁回路EXにおける周波数と負荷抵抗に関する特性の他、磁場発生用励磁回路EXにおける入力電流と出力電流とに関する特性などを用いることができる。但し、それらの特性は受電機器Aが載置された場合と、鍋Pなどの被加熱物が載置された場合とでは大きく異なり、これを検知部60による検知結果に基づき制御部50に設けられた負荷判別手段によって判別する。
【0074】
まず、制御部50は、駆動部40のスイッチング素子を駆動する周波数を例えば10kHz〜100kHzの範囲で任意のステップで可変しながら、検知部60によって電気特性を取得し、例えば、横軸に周波数、縦軸に負荷抵抗の前述した判別用特性曲線Tと比較する。受電機器Aが受電コイルとコンデンサを有する共振回路で構成される場合、抵抗値が極大点を持つ
図13の特性曲線Aに示すような共振特性カーブを描く。一方、鍋Pなどの被加熱物は、周波数が高くなるにつれて抵抗値が緩慢に上昇するので、受電機器Aとは異なる特性曲線Pで示す特性カーブを描く。そこで、検知部60は受電機器Aと鍋Pなどの被加熱物を区別し、ついで、鍋Pなどの被加熱物の負荷特性を求め、判別用特性曲線Tと比較しながら材質などを判別する。制御部50は、これら結果に基づき駆動部40を制御する。
図13に示すように、鍋Pなどの被加熱物に関する特性曲線Pに沿って判別値(負荷判定閾値)の判別用特性曲線Tが設定されており、検知部60の検出回路60a,60bにより検出された電気特性を取得し、負荷特性を生成する。制御部50は、検知部60からの負荷特性によりこの判別用特性曲線Tに基づいて負荷の特性が曲線Tの上方における領域に含まれる場合において、負荷を受電対象物である受電機器Aとして判別し、検知するものである。
【0075】
特許文献1でも示されているように、被加熱物である鍋Pなどの負荷と比較して、一般的に、非接触で給電されて動作する受電機器Aは、数百W程度の低い電力しか必要としない。つまり、誘導加熱動作モードでの最大出力電力値MP1(例えば、3,000W)と比較して、受電機器Aが必要とする最大電力は、低い出力電力値でよい。さらに、規制により給電装置が非接触で供給できる最大出力電力値MP2は1,500Wに制限される可能性がある。つまり、受電機器に供給される最大出力電力値MP2は、最大でも誘導加熱動作モードにおける最大出力電力値MP1の約半分程度でよいことになる。
そこで、制御部50は、負荷が受電機器Aであると判別された場合には、駆動部40から出力される最大電力値が1,500W以下となるように、
図10に示すスイッチ21を開回路とし、周辺コイル(個別コイル103,104)を駆動部40から切り離し、中央コイル(個別コイル101,102)のみに切り替えるように制御する。
【0076】
この切り替え動作について、
図10、
図11、
図13、
図14、
図15を用いて説明する。なお、スイッチ21は、本実施の形態の誘導加熱調理器1の動作を説明するために便宜上記載されたものであり、実際には、スイッチ21は構成要素には含まれていない。
トッププレート3を介して電磁コイル100上に負荷が載置されると、駆動部40と制御部50により負荷を検知するため、検知用の駆動条件(例えば、高周波電流の周波数や電流の大きさなどの設定条件)で電磁コイル100に高周波電流を供給して、例えば、電流センサ61により個別コイル101,102に流れる高周波電流Iを検出し、電流センサ62により個別コイル103,104に流れる高周波電流Iを検出する。また、電流センサ63により電源入力の電流を検出する。このとき、例えば、
図13に示すように、制御部50が、高周波電流Iの周波数fを連続的に変化させると、被加熱物である鍋Pと比較して、検知部60で検知される抵抗成分にピークが見られるので、制御部50は、鍋負荷とは電気特性の変化が異なることを利用して、検知部60で検知されたこれらの負荷特性と、予め設定された所定の判別値とを比較し、負荷判別手段によりトッププレート3上に載置された負荷が、受電機器Aであることを判別する(非接触給電動作モード)。
【0077】
電磁コイル100上に受電機器Aが載置された非接触給電動作モードでは、電磁コイル100が給電(送電)コイルとなり、受電機器Aに搭載されたコイルが受電コイル502となる。
図11(a)に示すように、誘導加熱動作モードでは、磁場発生用励磁回路EXを構成するNターンの電磁コイル100と1ターンの鍋からなるトランスで表すことができるが、
図11(b)に示すように、非接触給電動作モードでは、磁場発生用励磁回路EXを構成する給電側の電磁コイル100の巻き数N1(一次巻線)と、受電機器に内蔵される受電コイル502の巻き数N2(二次巻線)とによる巻き数比N1:N2のトランスモデルで表すことができる。
ここで、電磁コイル100に流れる高周波電流をI1、受電コイル502に流れる高周波電流をI2とすると、I2の大きさは、I1×(N1/N2)となる(理想トランスモデルとして仮定した場合。)。
【0078】
つまり、制御部50は、個別コイル101,102に流れる高周波電流Iの大きさを制御することにより、受電コイル502に鎖交する高周波磁界を変化させ、受電コイル502に流れる高周波電流Iの大きさ、つまり、受電機器Aへの給電電力を制御することができる。ここでの給電電力とは、受電機器Aに供給される電力をいう。供給電力の大きさは、上述したように、受電コイル502に鎖交する高周波磁界の大きさ、つまり、一次コイルである電磁コイル100に流れる高周波電流の大きさを変化させることにより制御される。
【0079】
一方、給電側の電磁コイル100の動作が停止されると、受電コイル502に高周波磁界が供給されず受電機器Aへの給電は停止される。つまり、誘導加熱調理器本体2における操作により、受電機器Aの電力調節やオン/オフを行うことができるので、給電電力を精度よく調節することができる。なお、受電機器Aが細かい電力調整を必要としない場合には、制御部50は、調節値αを段階的に変化させる(つまり、調節値αをステップ状に変化させる。)ことで、例えば、強・中・弱などの簡単な調節ステップも実現することができる。このように、誘導加熱調理器本体2での操作によって、受電機器Aへの給電やオン/オフすることができるので、使い勝手のよい給電装置を実現することができる。
【0080】
ところで、前述したように、受電機器Aが必要とする最大出力電力値MPは、誘導加熱動作モードと比較して低くてもよいため、制御部50は、駆動部40の最大出力電力値を抑制するために、駆動部40の詳細ブロック図を示す
図6において、周辺コイルである個別コイル103,104を駆動回路40bから切り離し、中央コイルである個別コイル101,102のみに切り替える。つまり、
図10の誘導加熱調理器1の回路において、スイッチ21は、開回路の状態である。
【0081】
この状態における、非接触給電動作モードにおける駆動部の構成の詳細を
図14の回路図に示す。これは、
図6に示す駆動部40の回路構成の一部を抽出表示したものである。実際は、
図15の制御信号のタイミングチャートに示すように、制御部50によって、
図14に示す駆動部40に供給される制御信号S4,S5の信号レベルが、L(低)レベルに固定される。これによって、
図14に示すアーム403の半導体スイッチング素子403a,403bが駆動されず、駆動回路40bの動作が停止されるため、周辺コイルである個別コイル103,104には、高周波電流は流れない。この結果、アーム402とアーム401だけが駆動され、アーム402とアーム401の中点間に接続された中央コイルである個別コイル101,102のみに高周波電流Iaが供給されることになる。つまり、
図10の誘導加熱調理器1の回路において、スイッチ21により開回路が形成されているのと等価な状態となる。
この結果、高周波電流Iaは、電磁コイル100のうち中央コイルである個別コイル101,102にしか流れないため、誘導加熱動作モードにおける最大出力電力値MP1とは異なる。つまり、非接触給電動作モードでは、最大出力電力値は、第二の最大出力電力値MP2に設定される。
【0082】
この様子を再び
図8に戻って示す。
図8は、横軸に調節値αと、縦軸に電磁コイル100で得られる出力電力値Pとの関係を示したグラフである。出力操作部としての操作部5,6が操作されて調節されると、これに対応して、横軸の調節値αが変化する。制御部50は、調節値αに応じて駆動部40を制御し、個別コイル101,102に流れる高周波電流Iの大きさを調整する。これにより、出力電力値Pが増減する。負荷が受電機器Aの場合には、出力電力値Pは、給電電力に相当する。
図8において、調節値αが最大のα1となる場合に、非接触給電動作モードの最大出力電力値をMP2で表し、これを第二の最大出力電力値とする。
【0083】
非接触給電動作モードでは、外コイルである個別コイル103,104に高周波電流が供給されないため、内コイルである個別コイル101,102の最大出力電力値MP2は、約1,500Wに制限される。
図8では、調節値αが最大のα1となる場合には、最大出力電力値MP2は、最大出力電力値MP1の約1/2程度の出力となる。
また、
図9に示すように、出力電力値Pの増減に応じて、表示部7の状態、例えば、LEDの点灯状態が変化し、最大出力電力値MP2で全体の半分のLEDが点灯状態となる。調節値の表示は、例えば、数値であってもよく、状態の変化や設定値などを認知できる手段であればよい。
【0084】
再び、
図9に戻って、非接触給電動作モードにおけるLEDの点灯状態について示す。操作部5,6が操作されると、選択された調節値αに応じてLEDの点灯状態が変化する。
図9(b)は、非接触給電動作モードの最大出力電力値MP2におけるLEDの点灯状態を示したものであり、
図9(b)では、LEDの点灯数は全体の半分であることを表している。また、
図9(d)は、調節値αに対するLEDの点灯状態の変化の様子を示したものである。LEDが全て消灯している状態は、受電機器Aに電力が供給されてないことを示している。
図8において、第二の最大出力電力値MP2におけるLEDインジケータの点灯状態を示す図では、誘導加熱動作モードの最大出力電力値MP1の半分である状態を示した。
【0085】
しかしながら、誘導加熱動作モードと、非接触給電動作モードでは、最大出力電力値(最大調節値α1)におけるLEDの点灯数が異なるため、動作モードの違いを認識することができる。
そこで、操作部5,6で調節値αが1段階上げられる毎に、制御部50は、LEDの点灯数が2つずつ増加するように制御する。この様子を
図9(d)に示す。このように、出力操作部としての操作部5,6及び表示部7を制御することで、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで、操作の範囲や表示内容が異なることがないので混乱を避けることができ、使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供することができる。
【0086】
なお、ここでは、内コイルである個別コイル101,102のみを駆動させるようにしたが、受電機器Aの受電コイル502の大きさに応じて、受電コイル502の外径が大きい場合には、制御部50は、駆動部40を制御して、内コイルである個別コイル101,102の駆動を停止させ、外コイルである個別コイル103,104側を駆動させるようにしてもよい。つまり、受電コイル502の外径とコイル径の近い方の個別コイルを給電コイルとすることで、より効率よく給電することができる。
あるいは、受電機器Aの受電コイル502が小さい場合でも、大きな給電コイルとしての電磁コイル100で給電してもよい。このように構成することによって、受電コイルと給電コイルの位置関係がずれても、効率よく給電することができる。
【0087】
受電機器Aの構成等については、次の(a)項および(b)項に示すような形態がある。(a)受電側である受電機器Aと、誘導調理器本体2に搭載された送電側である駆動部40との間で通信が可能な通信機能を相互に有している構成が考えられる。
これによって、給電コイルとしての電磁コイル100により受電機器Aからなる受電対象物に給電されると、受電対象物から制御部50へ受電対象物が受電状態にあることを示す信号を送信することができる。この場合には、より正確な判別が可能となる効果が得られるが、受電側が通信するための最初の電源を送電側である駆動部40から供給し、受電側から送電側に識別信号を発信する(あるいは、送電側から受電機器Aへ問い合わせる。)必要があること、通信による判別データをあらかじめ受電機器Aごとに取得して記憶させておき、通信時に照合する必要があることなどの煩雑さがある。仮に、不特定多数の受電機器メーカが供給する受電機器Aとの通信に対応するには、メーカ間で共通の通信規格を設けることが望ましい。
【0088】
(b)受電機器Aの受電コイル502を含む受電回路AXにおいて、受電コイル502と共振コンデンサからなる共振回路が構成されている。
この構成によれば、駆動部40から電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXに供給される高周波電流の周波数を、例えば、10kHzから100kHzの範囲で変化させながら検知部60により電気的特性を取得すると、磁場発生用励磁回路EXにおける負荷抵抗Rは、受電機器Aの受電回路AXの共振回路の共振点で最大値を持つことになり、受電機器Aからなる受電対象物についての判別動作を一層正確に行うことができる。
【0089】
実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下に、まとめる。
(1)全体構成
図1及び
図3に示すように、誘導加熱調理器1は、誘導加熱調理器本体2に設けられ負荷が載置されるトッププレート3と、電磁誘導により負荷としての鍋Pなどの被加熱物への加熱作用を行い、あるいは、負荷としての受電機器Aなどの受電対象物への給電作用を行う磁場をトッププレート3上に発生させるための電磁コイル100と、電磁コイル100に高周波電流を供給する駆動部40と、駆動部40を制御する制御部50と、を備えている。
また、駆動部40に係る電気特性によりトッププレート3に載置された負荷の電気特性を検出する検知部60を備えている。
ここで、駆動部40に係る電気特性とは、駆動部40自体や、駆動部40に接続された電磁コイル100および共振コンデンサ80などにおける電圧,電流,周波数,抵抗値あるいは温度などである。具体的には、例えば、駆動部40における出力電圧V及び出力電流Iならびに電磁コイル100および共振コンデンサ80を含む磁場発生用励磁回路EXにおける負荷抵抗Rなどが挙げられる。
制御部50は、検知部60による検知結果により負荷が被加熱物であるか受電対象物であるか負荷の種別を判別する負荷判別手段を有する。
制御部50は、検知部60による検知結果により負荷の種別を判別し、負荷が被加熱物であると判別された場合には、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1を有する第一の範囲(0〜MP1)に設定するとともに電磁コイル100を誘導加熱コイルとして誘導加熱動作モードで動作させる。
負荷が受電対象物であると判別された場合には、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1よりも小さい第二の最大出力電力値MP2を有する第一の範囲(0〜MP1)よりも狭い第二の範囲(0〜MP2)に設定するとともに、電磁コイル100を給電コイルとして電磁誘導により受電対象物に給電する非接触給電動作モードで動作するように制御する。
ここで、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとでは、駆動部40を制御するための制御部50における設定範囲や設定方法を変更させる必要はない。出力操作部としての操作部5,6により駆動部40からの出力調整を行うにあたっては、いずれの動作モード状態でも同じ操作部5,6により同じ手順で出力調整を遂行することができ、操作態様も変わらないので、操作性が損なわれることはない。
【0090】
これにより、対象とする負荷が電磁誘導によって加熱される被加熱物であるか、電磁誘導によって給電される受電対象物であるかにより、対象とする負荷に応じて、適切な電力量を効率よく供給できることが可能となる。
その際、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで最大出力電力値を切り替えることで、各動作モードにおいて最適な電力範囲で動作するようにしたので、無駄な電力の発生を防止し、効率よく運転できるとともに、非接触給電動作モードでは過剰な電力の供給を抑制することができる。
これは、非接触給電動作モードでは、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1よりも小さい第二の最大出力電力値MP2を有する第二の範囲(0〜MP2)に設定することで達成できることによるものであって、誘導加熱動作モードであるか非接触給電動作モードであるかに応じて設定範囲や設定方法などを変更させる必要はなく、操作性が保たれるため、利便性が損なわれることはない。
また、負荷が、被加熱物であるか受電対象物であるかの制御部50による判別は、検知部60により検知される駆動部40に係る電気特性に基づいて行われるので、検知結果に応じた駆動部40の制御は、簡潔な制御構成により容易に行うことができる。
【0091】
(2)出力電力の調整
駆動部40の出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)における出力電力の調整は、誘導加熱調理器本体2に設けられた出力操作部としての操作部5,6での操作により行う。
これにより、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードの、いずれの動作モードにおいても、誘導加熱調理器本体2での操作により鍋Pなどの被加熱物の加熱電力や受電機器Aなどの受電対象物への供給電力が調節されるように構成されているので、誘導加熱調理器本体2側での操作だけで出力電力の調節が可能となり、動作の開始や停止も誘導加熱調理器本体2側で行うことができるので、使い勝手が向上する。
【0092】
(3)電磁コイルの構成
図3(a)に示すように、電磁コイル100は、平面状に巻回された個別コイルとしての中央コイル101,102と、中央コイルの周辺に配設された一つ以上の個別コイルとしての周辺コイル103,104とからなる誘導加熱コイルと、で構成されている。
これにより、電磁コイル100を複数の個別コイルで構成することにより、負荷の状態に応じて、任意の個別コイルを選択的に動作させることが可能となり、誘導加熱動作モードにおいては、個別コイルの切り替え運転等で、鍋の形状に合わせた効率動作や、加熱エリアを切り替えることで調理性能の向上が期待できる。また、非接触給電動作モードにおいては、不要な個別コイルの動作を停止することで、効率が向上すると共に、過剰な電力の供給を抑制し安全に動作させることが可能となる。
【0093】
(4)個別駆動回路の構成
図3及び
図4に示すように、駆動部40により駆動される電磁コイル100は、複数の個別コイルからなり、複数の個別コイル毎に駆動回路を有している。
これにより、複数の個別コイルにそれぞれ駆動回路を設けることで、負荷の状態に応じて必要な個別コイルを動作させることが可能となり、誘導加熱動作モードにおいては、個別コイルの切り替え運転等で、鍋の形状に合わせた効率動作や、加熱エリアを切り替えることで調理性能の向上が期待できる。また、非接触給電動作モードにおいては、不要な個別コイルの動作を停止することで、効率が向上するとともに、過剰な電力の供給を抑制し、安全に動作させることが可能となる。
【0094】
(5)動作モードによる最大出力電力値の切り替え
図8に示すように、制御部50は、電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードでの最大出力電力値MP2は、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードでの最大出力電力値MP1よりも小さくなるように駆動部40を制御する。
これにより、誘導加熱動作モードで必要とされる最大出力電力値MP1(例:〜3kW)に比較して、非接触給電動作モードで必要とされる最大出力電力値MP2は小さい(例:〜1.5kW)ので、最大出力電力値MP1,MP2を制御することで、不要な電力の消費を抑え、効率よく動作させることができるとともに、給電時に過剰な電力の供給を抑制し、安全に動作させることが可能となる。
【0095】
(6)個別コイルの切り替え
制御部50は、負荷が受電対象物であり非接触給電動作モードであることを検出した場合には、電磁コイル100を構成する複数の個別コイルのうち、いずれか任意の個別コイルに高周波電流Iを供給し、最大出力電力値MP2を誘導加熱動作モードでの最大出力電力値MP1よりも小さくするように駆動部40を制御する。
これにより、誘導加熱動作モードで必要とされる最大出力電力値MP1(例:〜3kW)に比較して、非接触給電動作モードで必要とされる最大出力電力値MP2は小さい(例:〜1.5kW)ので、最大出力電力値MP1,MP2を制御することで、不要な電力の消費を抑え、効率よく動作させることができるとともに、給電時に過剰な電力の供給を抑制し安全に動作させることが可能となる。
また、特に、切り替え用の部品や回路を追加する必要なく、駆動する個別コイルを選択的に切り替えるように制御するので、簡易な構成で個別コイルの切り替えによる電力抑制を実現することができる。
【0096】
(7)高周波電流の周波数の変更
図17に示すように、駆動部40を制御する制御部50は、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードと、電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードとで、駆動部40から電磁コイルに供給する高周波電流の周波数を切り替える。すなわち、非接触給電動作モードにおける動作周波数は、誘導加熱動作モードの動作周波数の範囲における最大値より大きい(高い)。
これにより、高周波電流の周波数を切り替えることで、最大出力電力値MP1,MP2を調整できるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、複雑な制御を必要とせず容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更できる。
【0097】
(8)高周波電流の共振周波数の切り替え
図18及び
図19に示すように、制御部50は、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードと、電磁コイルにより発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードとで、電磁コイル100を含む磁場発生用励磁回路EXにおける共振回路の共振周波数を切り替える。
これにより、共振コンデンサの値を切り替え、共振回路の周波数を変更することで、最大出力電力値MP1,MP2を調整できるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、複雑な制御を必要とせず、容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更することができる。
【0098】
(9)駆動回路構成の切り替え
図20及び
図21に示すように、制御部50は、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードではフルブリッジ回路構成で動作し、電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードではハーフブリッジ回路構成で動作するように、駆動部40の回路構成を切り替える。
これにより、駆動信号を制御し、駆動部40の回路構成を切り替えることで、最大出力電力値MP1,MP2を調整することができるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、複雑な制御を必要とせず容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更することができる。
【0099】
(10)動作モードの切り替え
被加熱物が磁場に配置された場合の負荷特性を示す負荷抵抗の周波数特性が、制御部50自体に予め判別用特性として設定され、制御部50は、受電対象物が磁場に配置された場合の負荷特性を示す負荷抵抗の周波数特性である判別用特性と比較することで、受電対象物が配置されているかどうかを判別する。
これにより、トッププレート3上に載置された負荷を誘導加熱調理器本体2側で検知することで、誘導加熱動作モードとするか非接触給電動作モードとするかを迅速かつ確実に判別できる。さらに、動作モードに合わせて表示や操作の設定が変更されるので、切り替え操作等を必要とせず、使い勝手が向上する。
【0100】
(11)通信機能付き受電対象物
駆動部40を制御する制御部50と受電機器Aなどの受電対象物とに通信機能が設定され、電磁コイル100による電磁誘導により受電対象物に給電されると、受電対象物から制御部50へ受電対象物が受電状態にあることを示す信号が送信される。
これにより、受電機器Aなどの受電対象物が、トッププレート3上に載置された場合に受電状態にあることが確認でき、受電対象物の判別をより一層正確に行うことができる。
【0101】
(12)共振回路を有する受電対象物
受電機器Aなどの受電対象物には、電磁コイル100による電磁誘導により給電される受電コイル502と共振コンデンサからなる共振回路を構成する受電回路AXが設けられている。
【0102】
このように、実施の形態1に係る誘導加熱調理器によれば、誘導加熱動作モードでは、鍋の大きさ、形状、位置ずれに対応して、複数の個別コイルに選択的に高周波電流を供給することができるので、高効率な加熱を可能とすると共に、非接触給電動作モードでは、受電機器が必要とする最大出力電力値に合わせて、必要な電力を供給することができる個別コイルだけを駆動させるようにしているので、受電機器に対する過大な電力の供給を抑制することができ、効率的な給電を可能にしている。さらに、誘導加熱調理器本体から受電機器の電力制御を行うことが可能であるので、使い勝手を向上させることができる。また、受電機器が載置されていない個別コイルからの不要な磁束の漏れを抑制することができる。また、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとにおいて、操作部による出力調節範囲や表示部による表示内容が同じになるように設定されているので、使い勝手を向上させることができる。
【0103】
実施の形態2.
図16は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器における負荷検知の処理手順を示すフローチャートである。実施の形態2では、誘導加熱調理器本体の加熱部のいずれか、または全てにおいて負荷が載置された場合に、負荷の種別を判別して最大出力電力値の切替えを行うものである。
トッププレート3上の加熱部10に負荷が載置され、加熱部10で加熱動作もしくは給電動作が開始されると、検知部60の検出回路60a,60bにより載置された負荷の電気特性が検出され、検知部60により、電気特性により負荷特性が検知される。制御部50は、負荷が受電機器Aであるか、被加熱物である鍋Pか、非加熱物(小物など)であるか、あるいは、負荷の有無を検知し、駆動部40の最大出力電力値MPの切替えを行う(
図7、
図8及び
図10を参照。)。
【0104】
次に、
図16の負荷検知処理手順を示すフローチャートに従い、負荷検知の動作について説明する。
まず、加熱部10に負荷が載置され、操作部5,6によって誘導加熱調理器本体2の動作が開始されると、検知部60は、負荷が載置された電磁コイル100に係る電気特性(駆動回路の電気特性)の検出を開始する(ステップS11)。制御部50は、加熱には不十分であるが、検知に十分な大きさの高周波電流Iが出力されるように駆動信号の位相θを制御すると共に、例えば、20〜100kHzの周波数範囲において、ある一定時間内で高周波電流Iの周波数(駆動周波数fsw)を掃引させながら駆動部40を制御する(ステップS12)。このときの電気特性の変化の様子から、制御部50は、制御部50に設けられた受電対象物を判別検知する負荷判別手段によって負荷が受電機器Aからなる受電対象物であるかどうかを判別する(ステップS13)。なお、このステップS13における判別時点では、検知部60における判別用特性曲線Tに対する閾値は、受電対象物検知用に設定されている。
【0105】
ステップS13において、負荷が、受電機器Aであると判別されると、制御部50は、駆動部40の最大出力値を第二の最大出力電力値MP2に設定し(ステップS14)、操作部6の操作に応じて負荷である受電機器Aに給電を開始する(ステップS15)。
一方、ステップS13で負荷が受電機器Aではないと判別されると、制御部50は、検知に十分な大きさの高周波電流Iが出力されるように駆動信号の位相θを制御すると共に、駆動周波数fswを鍋検知用周波数に設定し、駆動部40を制御する(ステップS16)。
このときの電気特性により加熱対象であるかどうかを判別し(ステップS17)、被加熱物ではない(加熱対象外)と判別された場合には、制御部50は駆動部40の動作を停止させる(ステップS20)。
【0106】
次いで、ステップS17において、検知部60によって負荷が被加熱物であると判別されると、制御部50は、最大出力値を第一の最大出力電力値MP1に設定し(ステップS18)、操作部6の操作に応じて負荷への加熱を開始する(ステップS19)。このステップS17における判別時点では、検知部60における判別用特性曲線Tに対する閾値は被加熱物検知用に設定されている。
なお、制御部50は、判別結果に応じて、誘導加熱動作モードであるか、非接触給電動作モードであるかが分かるように、表示部7に表示させるように制御してもよい。
【0107】
実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下に、まとめる。
実施の形態2における誘導加熱調理器1の制御方法では、まず、磁場を発生させるための電磁コイル100を駆動する駆動部40の電気特性を検出回路60a,60bで検出し、その電気特性(電流、電圧、周波数)に基づいて、検知部60は、磁場に配置された負荷の負荷特性(負荷抵抗の周波数特性)を検知する。さらに、制御部50の負荷判別手段により負荷特性に基づいて負荷が被加熱物であるか受電対象物であるかが判別される。
負荷が被加熱物であると判別された場合には、制御部50は、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1を有する第一の範囲(0〜MP1)に設定すると共に電磁コイル100を誘導加熱コイルとして、被加熱物を加熱するように制御する。
受電対象物であると判別された場合には、制御部50は、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1よりも小さい第二の最大出力電力値MP2を有する第二の範囲(0〜MP2)に設定されると共に電磁コイル100を給電コイルとして、電磁誘導により受電対象物に給電するように制御する。
これにより、誘導加熱調理器1において、トッププレート3に載置された負荷の種別が自動的に判別され、通常は誘導加熱コイルとして用いられる電磁コイル100を用いて、負荷に応じて通常の誘導加熱調理ができると共に、非接触で電力を供給する非接触給電装置としても動作させるようにしたので、利便性を向上させることができる。
【0108】
負荷検知処理手順を示すフローチャートでは、受電対象物であるかどうかを判別する工程と、被加熱物であるかどうかを判別する工程を有し、受電機器であることを判別する工程を先に実施する。
これにより、受電機器を先行して確実に判別することができ、誤って誘導加熱動作モードに移行しないようにすることができる。
【0109】
このように、実施の形態2に係る誘導加熱調理器によれば、被加熱物であるか受電機器であるかどうかを最初に判別することで、受電機器を確実に判別して、誤って加熱動作に移行しないようにすることができると共に、最大出力電力値をより確実に抑制することによって、受電機器への過大な電力の供給を防止することができる。
【0110】
実施の形態3.
実施の形態3は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで最大出力電力値の切り替えを行う実施の形態である。実施の形態3に係る誘導加熱調理器の駆動周波数の変更による最大出力電力値の切り替えについて、
図17の駆動部を含む共振回路を示す回路図及び周波数と高周波電流(出力電力)の関係を示す図を主に参照して説明する。
図17(a)は、駆動部40を含む共振回路の簡易回路図である。また、
図17(b)は、周波数fと、それに対して得られる高周波電流Iの関係を示したものである。
図17(a)において、コンデンサCは、
図7における共振コンデンサ81,83、リアクタンスLは、電磁コイル100に相当する。また、
図17(a)には、図示されていないが、
図7同様、駆動部40、制御部50及び検知部60を備えている。
【0111】
図7に示すように、トッププレート3を介して、負荷が電磁コイル100上に載置されると、検知部60は、載置された負荷の負荷特性を検知し、負荷判別手段によって負荷が鍋Pなどの被加熱物であると判別されると、制御部50は、
図17(a)に簡単に示すように、負荷と結合したコイルL(電磁コイル100)と共振コンデンサCとからなる共振負荷の電気特性より得られた共振周波数f0に対して、Δf1だけ高い周波数を駆動信号の周波数fsw1として設定し、駆動部40を駆動する。この時、負荷抵抗Rと共振回路に流れる高周波電流Iとの関係より、
図17(b)に示すように、共振周波数f0のときに高周波電流Iが最大となり、最大出力電力値MP1が得られる。
【0112】
一方、
図10に示すように、トッププレート3を介して、負荷が電磁コイル100上に載置され、載置された負荷が受電機器Aであることを検知部60が検知すると、制御部50は、同様に、
図17(a)に簡単に示すように、負荷と結合したコイルL(電磁コイル100)と共振コンデンサCからなる共振負荷の電気特性より得られた共振周波数f0に対して、Δf2だけ高い周波数を駆動信号の周波数fsw2に設定する。Δf2は、あらかじめ設定した値であってもよく、Δf1のn倍に設定してもよい。この時、Δf1<Δf2である。つまり、
図17(b)に示すように、制御部50は、駆動部40に対し、最大出力電力値がMP2<MP1、概ね、最大出力電力値MP2が最大出力電力値MP1の約1/2程度となるような高周波電流I2が得られる周波数fsw2を駆動信号の周波数として設定する。
これにより、非接触給電動作モードにおいて、駆動部40に設定する駆動信号の周波数fswを制御する、つまり、駆動部40の動作特性の範囲を周波数により制御することで、簡単に最大出力電力値MPを抑制することができるので、受電機器Aへの過剰な電力供給を抑制して、給電動作を効率よく行う事ができると共に、切り替え回路等の追加の構成要素を必要せず、安価に構成できる。
【0113】
実施の形態3に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下に、まとめる。
前述した実施の形態1または実施の形態2の構成において、駆動部40を制御する制御部50は、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードと電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードとで、駆動部40に供給する高周波電流Iの周波数を切り替える。
これにより、駆動周波数fswを変更することで、最大出力電力値MP1,MP2を調整することができるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで、複雑な制御を必要とせず容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更することができる。
【0114】
このように、実施の形態3に係る誘導加熱調理器によれば、実施の形態1または実施の形態2の構成において、制御部は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、駆動部に供給する駆動信号の周波数を切り替えることで、すなわち、非接触給電動作モードでの動作周波数は、誘導加熱動作モードでの動作周波数の範囲の最大値より大きく(高く)することにより、高周波電流の周波数の範囲を切り替え、最大出力電力値の範囲を調整することができるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードにおける出力範囲を、複雑な制御を必要とせず容易に変更することができる。
【0115】
実施の形態4.
実施の形態4は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードの最大出力電力値の切り替えを行う他の実施の形態である。実施の形態4に係る誘導加熱調理器の共振コンデンサの切り替えによる最大出力電力値の抑制について、
図18及び
図19に基づいて説明する。
【0116】
検知部60は、トッププレート3を介して、個別コイル101と個別コイル102上に載置された負荷の電気特性を検出し、負荷判別手段によって負荷が受電機器Aであると判別されると、制御部50は、共振コンデンサ81と並列に接続されたスイッチ21を閉じる。スイッチ21を閉じると、共振コンデンサ81に共振コンデンサ82が並列に接続されて、共振コンデンサの容量が増加する。ここで、共振コンデンサ81の容量をC81、共振コンデンサ82の容量をC82、C81とC82の合成容量をC81’とすると、C81<C81’である。その結果、スイッチ21が開放された場合に比較して、駆動部40に接続された個別コイル101,102と受電機器Aと共振コンデンサ81,82からなる共振負荷の共振周波数f0’は下がる。この様子を式(3)及び式(4)に示す。
【0118】
ただし、C81<C81’より、f0>f0’である。
ここで、式(1)及び式(2)におけるLは、負荷である受電機器Aとコイル100が結合された状態でのインダクタンスである。
【0119】
図19(a)は、駆動部40を含む共振回路を示す回路図である。
図19(b)は、駆動周波数fswと高周波電流Iの関係を示すグラフである。
スイッチ21が閉じられた状態では、回路の共振周波数が下がるので(f0’)、駆動周波数fswで駆動部40を動作させると、高周波電流Iは、スイッチ21が開放された場合より小さい出力となる。つまり、制御部50は、負荷が受電機器Aである場合に、スイッチ21を切り替えて、C83を追加することで、コイルLと直列に接続された共振コンデンサCの容量を大きくし、共振周波数f0を駆動周波数fswに対して低くすることで、得られる最大出力電力値MPを抑制するように制御する。
なお、負荷がトッププレート3を介して個別コイル103,104上に載置された場合には、共振コンデンサ83にスイッチ22と直列に接続された共振コンデンサ84を並列に接続して、スイッチ22を閉にし、コンデンサ容量を増加させて共振周波数f0を下げることによっても同様の効果が得られる。
なお、ここでは、
図2(a)に示す複数コイルからなる電磁コイル100のうち、個別コイル101〜104について例示的に示したが、他の構成のコイルにおいても実現することができる。
【0120】
実施の形態4に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下に、まとめる。
前述した実施の形態1から実施の形態3までのいずれかの構成において、制御部50からなる制御手段は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、共振回路の共振コンデンサを切り替える。
共振コンデンサCの値を切り替え、共振回路の共振周波数f0を変更することで、最大出力電力値MP1,MP2を調整できるため、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、複雑な制御を必要とせず、容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更することができる。
【0121】
このように、実施の形態4に係る誘導加熱調理器によれば、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードに対応して、制御部が駆動部の共振負荷の共振周波数を制御することにより、簡単に最大電力値を抑制することができるので、共振コンデンサを切り替えることで共振周波数を制御して、受電機器に過大な電力が供給されることを抑制し、不要な電力が給電されないように制御することで、給電動作を効率よく行うことができる。
【0122】
実施の形態5.
実施の形態5は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードの最大出力電力値の切り替えを行う他の実施態様である。実施の形態5の駆動部の回路構成の切り替えについて、
図20及び
図21を参照して説明する。
図20(a)は、概略の誘導加熱調理器1の駆動部40の一部を示す回路ブロックの概略図である。
図20(a)では、スイッチング素子対401,402、共振コンデンサ80、電磁コイル100で構成されるフルブリッジ回路を示している。フルブリッジ回路は、
図20(b)に示す二対の相補信号a,a’,b,b’による駆動信号で駆動され、電磁コイル100に高周波電流Iを供給する。駆動信号の周波数は、20〜100kHzの範囲内で、検知部60により検出された電気特性に応じて、制御部50が最適な周波数を設定する。例えば、電磁コイル100がトッププレート上に載置された負荷と結合された場合の駆動部40の共振周波数f0に対し、数kHz分だけ高い値Δfを加えた周波数を駆動周波数fswとして設定する。
【0123】
ここでは、代表的に、加熱部10に配設された電磁コイル100を例に説明する。なお、説明を容易にするために、電磁コイル100は、単一のコイルで表示されている。電磁コイル100に供給される高周波電流Iの大きさは、他の実施態様で説明したように駆動信号a,b(a’,b’)の信号間の位相差θにより調整することができる。フルブリッジ回路の動作については良く知られているので、ここでは説明を省略する。
駆動部40を構成する半導体スイッチング素子対401,402には、
図20(a)では図示されていないが、商用電源31、ダイオードブリッジ32、平滑回路33を介して電源電圧Vが供給される。フルブリッジ回路が動作すると、共振コンデンサ80と電磁コイル100に両端には、位相差θの大きさに応じた期間Tθに、電源電圧|V|が駆動周波数fswの一周期ごとに印加される(
図20(d))。一方、共振コンデンサ80と電磁コイル100と、トッププレート3上に載置された負荷との合成抵抗からなる駆動回路のインピーダンスZに流れる高周波電流をIとする。負荷Rは、電磁コイル100の抵抗成分と負荷との合成抵抗である。駆動回路に流れる電流Iは、式(5)のωL−(1/ωc)が“0”、すなわち|Z|=Rとなった時に最大となり、このとき最大出力電力値MPが得られる。
【0125】
トッププレート3上に載置された負荷が、検知部60と制御部50の負荷判別手段によって、鍋Pなどの被加熱物であると判別された場合、誘導加熱調理器1は、誘導加熱動作モードに移行し、制御部50は、駆動部40をフルブリッジ回路構成で動作させ、
図20では図示されていない操作部5,6により設定された出力電力値Pが得られるように、駆動信号a,b(a’,b’)の位相差θを制御し、電磁コイル100に供給する高周波電流Iを制御する。
【0126】
一方、トッププレート3上に載置された負荷が、検知部60と制御部50の負荷判別手段によって、受電機器Aであると判別された場合には、制御部50は、駆動信号a,a’,b,b’を
図20(c)に示すタイミングで、駆動部40に出力する。
図20(c)に示すように、駆動信号bは、常時L(低)レベルの、駆動信号b’は、常時H(高)レベルの信号である。したがって、
図21(a)に示すように、半導体スイッチング素子対402のうち、上側の半導体スイッチング素子402aに供給される駆動信号bは常時L(低)レベルであるため、半導体スイッチング素子402aは駆動されない。また、下側の半導体スイッチング素子402bに供給される駆動信号b’は常時H(高)レベルであるため、半導体スイッチング素子402bは常時オン状態となる。その結果、駆動部40を構成する半導体スイッチング素子対401,402は、
図21(b)に示す回路構成となる。つまり、負荷が受電機器Aであると判別されると、誘導加熱調理器1は、非接触給電動作モードに移行し、制御部50は、駆動部40がハーフブリッジ回路構成となるように制御する。
【0127】
駆動部40を構成する半導体スイッチング素子対401,402には、
図20では図示されていない交流電源31、ダイオードブリッジ32、平滑回路33を介して電源電圧Vが供給される。ハーフブリッジ回路が動作すると、共振コンデンサ80と電磁コイル100の両端には、パルス幅Twの大きさに応じた期間Twに、電源電圧Vが駆動周波数fswの一周期ごとに印加される(
図20(e))。その結果、電磁コイル100に流れる高周波電流I2の大きさは、フルブリッジ回路構成である誘導加熱動作モードの1/2となり、得られる最大出力電力値MPも1/2となる。
つまり、負荷が大きな電力を必要としない受電機器Aである場合、制御部50が駆動部40に出力する駆動信号を制御し、駆動部40の回路構成を切り替えることで、最大出力電力値MPを抑えることができる。
ここでは、
図20、
図21に示す簡易的な図面での回路構成の変更について説明したが、
図6に示す実際の駆動回路に適用される場合には、半導体スイッチング素子対401を共有し、ハーフブリッジが2回路含まれた構成となる。
【0128】
実施の形態5に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下にまとめて説明する。
本実施の形態に係る誘導加熱調理器1は、実施の形態1から実施の形態4までのいずれかの構成において、制御部50は、誘導加熱動作モードでは、フルブリッジ回路構成で動作され、非接触給電動作モードでは、ハーフブリッジ回路構成で動作されるように、駆動部40の回路構成を切り替える。
これにより、回路構成を切り替えることで、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードで、複雑な制御を必要とせず、最大出力電力値MP1,MP2を調整できるため、動作モードに対応して、容易に出力範囲(第一の範囲:0〜MP1、または、第二の範囲:0〜MP2)を変更することができる。
【0129】
このように、実施の形態5に係る誘導加熱調理器によれば、誘導加熱動作モードにおいては、鍋の大きさ、形状、位置ずれなどの状況に応じて、複数の個別コイルに選択的に高周波電流が供給されるように動作されるので、高効率な加熱を実現することができる。また、非接触給電動作モードにおいては、駆動部を制御することにより簡単に最大出力電力値を抑制でき、受電機器が必要とする最大電力に合わせて、必要な電力を供給できるコイルだけを駆動するように動作されるので、効率よく給電することができると共に、切替回路等追加の構成要素を必要せず、安価に構成することができる。さらに、受電機器が載置されていないコイルからの不要な磁束の漏れを抑制することができる。また、誘導加熱調理器本体から受電機器の電力制御が可能となるように構成されているので、使い勝手が向上する。
【0130】
実施の形態6.
図22は、実施の形態6における操作部の構成例を示す図である。実施の形態6は、スイッチ操作により、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードの最大出力電力値の切り替えを行う他の実施態様である。
図22に示すように、本実施の形態においては、操作スイッチにより非接触給電動作モードが任意に選択できるように構成されたものであり、誘導加熱調理器本体2の操作部5に誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードのいずれかを選択する操作スイッチとして動作モード切替スイッチ511が設けられている。操作スイッチにより非接触給電動作モードが選択されると、制御部50は、駆動部40の最大出力電力値MPを第二の最大出力電力値MP2に切り替えるように駆動部40を制御する。
【0131】
以下、
図22を参照して本実施の形態における動作モードの切り替えについて説明する。
図22(a)に示す操作部5は、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードのいずれかが選択され、動作を開始する動作モード切替スイッチ511と、給電電力値または出力電力値の大きさを調節するダウンスイッチ512、アップスイッチ513の操作スイッチを備えている。さらに、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードのいずれかで動作している場合に、動作を停止させるための停止スイッチ514の操作スイッチを備えている。なお、操作スイッチの種類や配置は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0132】
動作モード切替スイッチ511には、誘導加熱動作モードを表す図柄(ピクト)と、非接触給電動作モードを表す図柄が表記されている。制御部50は、動作モード切替スイッチ511が一回押されたことを検出すると、誘導加熱動作モードが選択されたと判断し、誘導加熱動作モードに移行する。検知部60は、トッププレート3上に載置された負荷の電気特性を検出し、電気特性に基づき負荷特性を検知する。制御部50は、負荷判別手段により加熱可能な負荷(鍋P)であると判別すると、駆動部40の最大出力電力値MPを第一の最大出力電力値MP1に設定し、設定された調節値αに応じた加熱の出力電力値Pが得られるように、負荷の材質や形状に合わせた駆動条件で駆動部40を制御し、加熱動作を行う。負荷が載置されていない場合や受電機器Aである場合等、加熱に適さない負荷であると判別された場合には、制御部50は、加熱動作に移行しないように駆動部40を制御し、加熱動作を停止させる。
【0133】
一方、制御部50は、動作モード切替スイッチ511が続けて2回押されたことを検出すると、非接触給電動作モードが選択されたと判断し、非接触給電動作モードに移行する。
図4における検出回路60a,60bによりトッププレート3上に載置された負荷の電気特性が検出され、検知部60が、電気特性に基づき負荷特性を検知すると、制御部50は、負荷判別手段により負荷特性から電力が供給可能な受電機器Aであると判別すると、駆動部40の最大出力電力値を第二の最大出力電力値MP2に設定し、調節値αに応じた給電電力を受電機器Aに供給するように駆動部40を制御する。負荷が載置されていない場合や、受電機器Aではない負荷である、あるいは被加熱物であることが検知された場合には、制御部50は、給電動作に移行しないように駆動部40を制御し、給電動作を停止させる。
動作モード切替スイッチ511を複数回押下された場合には、最初の1回目から、順番に誘導加熱動作モード→非接触給電動作モード→誘導加熱動作モード→・・・と、押下される毎に動作モードが切り替わる。動作を停止させる場合は、停止スイッチ514を押下することで、いずれかの動作モードで動作している動作が停止される、または動作モードの選択がキャンセルされる。なお、ボタンの押下回数は、一例であって、押下時間の長さの違いで識別するようにしてもよい。
【0134】
操作部5に動作モード切替スイッチ511を設けて切替操作部が構成され、動作モードの選択が任意に行えるようにされているので、使い勝手を向上させることができる。
図22(a)の例では、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードを切り替える動作モード切替スイッチ511が一つにまとめられているとともに、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで、異なる図柄がボタンの表面に表示され、停止スイッチ514が独立して設けられていることで、操作スイッチの数を増やすことなく、機能毎に操作スイッチが配置されているので操作内容が分かり易く利便性が向上する。
また、動作モードの選択が可能になり、制御部50による負荷の判別時間を削減することができる。さらに、仮に、判別が困難な負荷が載置された場合においても、適切に動作モードを選択することで、適正な動作を行うことができる。
【0135】
図22(b)に示す操作部5は、動作モード切替スイッチが独立して設けられている例である。つまり、誘導加熱動作モードスイッチ511aと、非接触給電動作モードスイッチ511bがそれぞれ備えられており、それぞれの操作スイッチは、動作の開始と停止を兼ねている。例えば、非接触給電動作モードスイッチ511bが1回押下されると、制御部50は、非接触給電動作モードスイッチが押されたことを検出し、非接触給電動作モードに移行する。移行後の動作については、上述した場合と同様であるため、ここでは、詳細を省略する。非接触給電動作モードスイッチ511bは、停止スイッチも兼ねているため、給電動作中に、再度、非接触給電動作モードスイッチ511bが押下されると、制御部50は、給電動作を停止するように駆動部40を制御する。
【0136】
同様に、誘導加熱動作モードスイッチ511aが押下されると、制御部50は、誘導加熱動作モードスイッチが押されたことを検出し、誘導加熱動作モードに移行する。移行後の動作については上述した場合と同様であるため、ここでは、詳細を省略する。誘導加熱動作モードスイッチ511aは、停止スイッチも兼ねているため、加熱動作中に、再度、誘導加熱動作モードスイッチ511aが押下されると、制御部50は、加熱動作を停止するように駆動部40を制御する。
【0137】
図22(c)に示す操作部5は、さらに、
図22(b)に示す操作部5に停止スイッチ514が設けられると共に、動作モード切替スイッチ511と停止スイッチ514を分離させた例である。各操作スイッチが押下された場合の動作については、上述した場合と同様であるため、詳細を省略する。
また、選択された動作モードを識別することができるように、動作モード切替スイッチ511が押下されると、ここでは、図示しないが、選択された操作スイッチを光らせるようにしてもよい。例えば、操作スイッチそのものを光らせる、操作スイッチの周囲を光らせる、あるいは、動作モードが選択される対象の加熱部の近傍でトッププレート3上のいずれかに、視認し易い場所に、例えば、LEDランプなどの表示器を設けて、動作モードにより色分けして点灯させてもよい。
【0138】
さらに、表示部7には、誘導加熱動作モードであるか、非接触給電動作モードであるかが分かるように、動作モードを表示させるような機能を持たせて、表示部7で動作モード表示部を構成するようにしてもよい。もし、鍋がトッププレート3上に載置された場合、誤って非接触給電動作モードスイッチが押下されても、非接触給電動作モードを示す表示があれば、操作が誤っていることを気付かせることができる。
なお、上記では、操作スイッチの操作を制御部50が検知するような記述としたが、別に設けたマイコンなどが操作状態を判別し、制御部50に操作に応じた指令を出し、これに基づき制御部50が、駆動部40を制御するように構成されていてもよい。操作部5に動作モードを切り替える動作モード切替スイッチを設けることにより、利便性を向上させることができる。
【0139】
また、上記では、複数ある加熱部のうち一つの加熱部に対する操作部5の操作について例示的に説明したが、各加熱部に対応させて、それぞれの操作部5に設けてもよく、複数の加熱部9,10,11を任意の動作モードで動作させることができるように構成されていてもよい。例えば、加熱部10で誘導加熱動作モードによる調理を行い、同時に加熱部11を非接触給電動作モードで動作させて、非接触で電力を受電して動作するブレンダーなどでソース作りを同時に行うことで、より使い勝手が向上する。
【0140】
実施の形態6に係る誘導加熱調理器の構成及び作用効果を以下にまとめて説明する。
本実施の形態に係る誘導加熱調理器1は、実施の形態1から実施の形態5までのいずれかの構成において、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードと、電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードとを切り替える操作スイッチが設けられた操作部5からなる切替操作部を備えている。
これにより、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとを任意に選択することができるので、利便性が向上する。
【0141】
本実施の形態に係る誘導加熱調理器1は、実施の形態1から実施の形態5までのいずれかの構成において、制御状態や操作ガイドを含む表示対象を表示させると共に、電磁コイル100により被加熱物を加熱する誘導加熱動作モードで動作しているか、電磁コイル100により発生される磁場による電磁誘導によって受電対象物に給電する非接触給電動作モードで動作しているか、いずれの動作モードで動作しているかを表示する動作モード表示部を有する表示部7を備えている。
これにより、動作モードの状態を視認することができるので、利便性が向上する。
【0142】
このように、実施の形態5に係る誘導加熱調理器によれば、動作モードを選択するための専用の操作スイッチが設けられていることで、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとが切り替えられるようにされているので、利便性を向上させることができる。
【0143】
実施の形態7.
実施の形態7では、操作部において調節値が選択された場合に、誘導加熱動作モード及び非接触給電動作モードでのそれぞれの調節値(設定レベル)に対応して、出力電力値が予め決められた出力電力値設定テーブルを用いて、誘導加熱調理器の出力電力値の調節を行うことができる実施態様を示すものである。
図23から
図31は、実施の形態7に係る誘導加熱調理器1の実施例1から3における動作を説明するための図であり、以下に、各実施例の動作の詳細について説明する。
ここで、実施の形態7における誘導加熱調理器1の構成は、実施の形態1の
図3及び
図4に記載のものを用いることができるので、構成要素の説明は省略する。なお、他の実施の形態の構成に対しても適用することが可能である。
【0144】
一般的に、誘導加熱調理器を用いて調理する際、調理内容に応じて、調理に適した出力電力値(火力)に調節しながら調理が行われる。本実施の形態は、調理を行う際に、調理内容に応じて所望の出力電力値を得るために、操作部5、あるいは操作部6を用いて出力電力値Pの大きさに調節するために、誘導加熱動作モード及び非接触給電動作モードにおいて、調節値α(設定レベル)の調節範囲を変更することなく、誘導加熱調理器1の制御部50が、調節値αに対する出力電力値Pの大きさを各動作モードに応じた異なる値に設定する方法に関するものである。つまり、操作部5、あるいは操作部6を用いて調節できる調節値α(設定レベル)の調節可能な範囲は、各動作モードにおいて同一であって、同じ調節値αに対する出力電力値Pの大きさが各動作モードで異なるように、制御部50は駆動部40を制御する。
【0145】
ところで、誘導加熱調理器1の加熱部9〜10のそれぞれの出力電力値Pの大きさは、駆動部40から電磁コイル100に供給される高周波電流Iの大きさを変えることにより変更される。すなわち、制御部50は、所望の大きさの出力電力値Pが得られるように駆動部40を制御して、電磁コイル100に供給される高周波電流Iの大きさを変更する。
【0146】
[実施例1]
図23に示す調節値αと出力電力値Pとの関係を表わす出力電力値設定テーブル、及び
図24に示す調節値αと出力電力値Pとの関係を表わすグラフを参照して、実施の形態7における実施例1の動作について説明する。
図23は、調節範囲である10段階の調節値α(設定レベル)と出力電力値Pとの関係を示すデータテーブルである。また、
図24は、
図23のデータテーブルをより理解しやすくするため、
図23の調節値α(設定レベル)と出力電力値Pとの関係を、横軸を調節値α、縦軸を出力電力値Pとするグラフで表わしたものである。ここでは、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで、異なる出力電力値Pが設定されている。このデータテーブルは、制御部50のメモリ等に予め記憶されていてもよく、あるいは、プログラムの中にデータテーブルとして記述されていてもよい。
【0147】
次に、これらの図を参照して、
図1に示されている操作部6において調節値α(設定レベル)を選択することにより、出力電力値Pの大きさを調節する例について説明する。調節範囲は、例えば、
図23では、誘導加熱調理器1に設けられた表示部7に1〜10の数値で設定レベルが段階表示されている。操作部6において10段階のいずれかの設定レベルが選択操作されることで、その調節値α(設定レベル)に応じた所望の出力電力値Pを得ることができる。この時、制御部50は、設定された調節値α(設定レベル)に対応した出力電力値Pが得られるように駆動部40を制御して、電磁コイル100に供給される高周波電流Iの大きさを調節する。
【0148】
ところで、操作部6が操作されて出力電力値Pが調節される場合に、操作部6で調節可能な範囲(調節範囲)において、最大調節値α1における出力電力値Pのうち最大出力電力値をMPとし、誘導加熱動作モードで動作させる場合の最大出力電力値MP1、非接触給電動作モードで動作させる場合の最大出力電力値MP2を含む出力電力値Pは、動作モード毎に、予め誘導加熱調理器1の制御部50によって設定されている。なお、これらの最大出力電力値MPの大小関係は、MP1>MP2である。
すなわち、操作部6が操作されて出力電力値Pが調節される場合に、調節可能な範囲において、設定された調節値α(設定レベル)に対応する出力電力値Pの大きさは、各動作モードで異なる出力電力値Pが得られるように設定されている。
【0149】
操作部6で設定された調節値αに対する出力電力値P(火力)は、例えば、予め誘導加熱調理器1の内部のメモリ等に記憶されており、誘導加熱動作モードで動作している場合には、操作部6が操作されて調節値α(設定レベル)の“8”が選択されると、制御部50は、動作モードが誘導加熱動作モードであると判別し、
図23に示されるデータテーブルで与えられた値に基づいて、出力電力値2,000Wが得られる高周波電流Iが、電磁コイル100に供給されるように駆動部40を制御する。一方、非接触給電動作モードで動作している場合には、操作部6が操作されて調節値α(設定レベル)の“8”が選択されると、制御部50は、動作モードが非接触給電モードであると判別し、
図23に示されるデータテーブルで与えられた値に基づき、出力電力値1,000Wが得られる高周波電流Iが、電磁コイル100に供給されるように駆動部40を制御する。なお、
図23で示された各数値は、一例を示すものであり、これらに限定されるものではない。
【0150】
図23及び
図24では、出力電力値Pが、調節値αに対して直線的に変化するように設定された例を示したが、
図25及び
図26は、動作モード毎に出力電力値Pが階段状に変化するように設定された例である。ここで、
図25及び
図26は、出力電力値Pが、3段階の設定レベルで設定されている例を示すデータテーブルとそれをグラフ化した図である。この例においても、同一の調節範囲(調節値α)において、各動作モードで異なる最大出力電力値MPが得られるように設定されている。
【0151】
このように、出力電力値(火力)の調節値に対して、動作モード毎に異なる値が設定されていることで、動作モードを意識することなく、同じ調節範囲で出力電力値の調節動作ができるようにしたので、動作モード毎に操作方法を変える必要が無く、利便性を向上させることができる。また、非接触給電動作モードにおいて、調節範囲において最大出力電力値に設定された場合でも、過大な電力が受電機器に供給されるのを抑制することができる。
【0152】
[実施例2]
図27に示す調節値αと出力電力値Pとの関係を表わす出力電力値設定テーブル、及び
図28に示す調節値αと出力電力値Pとの関係を表わすグラフを参照して、実施の形態7における実施例2の動作について説明する。
図27は、調節範囲である10段階の調節値α(設定レベル)と比率kaによる出力電力設定値の関係を示すデータテーブルである。また、
図28は、
図27のデータテーブルをより理解しやすくするため、
図27の調節値α(設定レベル)と比率kaによる出力電力設定値との関係を、横軸を調節値α、縦軸を出力電力値Pとするグラフで表わしたものである。ここで、誘導加熱動作モードと非接触給電動作モードとで、異なる出力電力値Pが設定されている。このデータテーブルは、制御部50のメモリ等にあらかじめ記憶されていてもよく、あるいは、プログラムの中にデータテーブルとして記述されていてもよい。
【0153】
実施例2では、各動作モードにおける調節値α(設定レベル)に対する出力電力値P(火力)の大きさは、実施例1の
図23で示すような出力電力値Pを数値で表わしたものではなく、例えば、
図27の出力電力値設定テーブルに示すように、非接触給電動作モードにおける出力電力値P(火力)は、誘導加熱動作モードにおける各調節値αに対応して予め設定された出力電力値Pの大きさに対する一定の比率ka(0<ka<1)を乗じた値で出力されるようにしたものである。
【0154】
例えば、誘導加熱動作モードにおける調節範囲の最大調節値α1に対応する最大出力電力値MP1を3,000Wとした場合、
図27では、調節範囲全体にわたって、非接触給電動作モードの場合の出力電力値Pが、誘導加熱動作モードの場合の出力電力値Pに対して、0.5倍の比率(ka=0.5)で出力されるように設定された出力電力値設定テーブルの例を示している。
図27の出力電力値設定テーブルを用いて得られる各動作モードにおける各調節値αに対する出力電力値Pの大きさを
図28のグラフに示すように、この例では、非接触給電動作モードの最大出力電力値MP2は、誘導加熱動作モードの最大出力電力値MP1に対し、1/2倍(0.5倍)の大きさの出力電力となる。つまり、非接触給電動作モードの最大調節値α1における最大出力電力値MP2は、MP1×ka(0<ka<1)で与えられるので、3,000W×0.5倍から1,500Wとなる。
【0155】
なお、非接触給電動作モードにおける最大出力電力値MP2は、制度上1,500W以下に規制される可能性があるため、MP2は、1,500W以下にする必要があり、仮に、誘導加熱動作モードの最大出力電力値が3,000Wを超える場合には、最大出力電力値における比率kaは、MP2=ka×MP1<1,500Wとなるように設定しておく必要がある。
ここでは、誘導加熱動作モードでの出力電力値Pを基準とする比率kaとしたが、逆に、非接触給電動作モードでの出力電力値Pを基準とする比率kb(kb>1)を用いてもよい。
【0156】
また、この比率kaは、
図27の出力電力値設定テーブルに示すように、誘導加熱動作モードに対する数値データで与えられていてもよく、あるいは、
図29の出力電力値設定テーブルに示すように、比率kcを調節値α毎に変更してもよい。
図30は、
図29の調節値α(設定レベル)と出力電力設定値Pとの関係を、横軸を調節値α、縦軸を出力電力値Pとするグラフで表わしたものである。出力電力値Pは、調節値αに対して階段上に変更される。
【0157】
[実施例3]
図31に示す調節値αと出力電力値Pとの関係を表すグラフを参照して、実施の形態7における実施例3の動作について説明する。
実施の形態7の実施例3では、制御部50が予め設定された数式に基づいて、調節値αに応じて出力電力値P(火力)を変化させるものである。このとき、誘導加熱動作モードおよび非接触給電動作モードのいずれも、数式に基づいて出力電力値Pを決定してもよく、あるいはいずれかのモードで、数式に基づいて出力電力値Pを決定してもよい。
【0158】
例えば、調節範囲において、出力電力値Pが正の傾きをもつ一次直線で表せるように、予め数式を設定しておく。例として、
図31(a)に示すように、いずれの動作モードにおいても、調節範囲における調節値αに対して、出力電力値P(火力)が一次式で与えられる場合について説明する。
誘導加熱動作モードにおいて、調節値をαm、その時に得られる出力電力値をPmとすると、Pmは、式(6)で与えられる。
【数6】
ここで、誘導加熱動作モードにおける調節値αmに対する出力電力値P1と、調節範囲における最大出力電力値MP1との関係は、0≦Pm≦MP1となる。
一方、非接触給電動作モードにおいて、調節値をαn、その時に得られる出力電力値をPnとすると、Pnは、式(7)で与えられる。
【数7】
ここで、非接触給電動作モードにおける調節値αnに対する出力電力値Pnと、調節範囲における最大出力電力値MP2との関係は、同様に、0≦Pn≦MP2となる。
ところで、各動作モードにおける調節値αと出力電力値Pとの関係は、
図31(a)のグラフで示されているように、MP1>MP2であり、各調節値αに対して所望の出力電力値Pが得られるようにa,b,c,dの値を予め設定することで、同一の調節値αに対して異なる出力電力値Pを得ることができる。例えば、MP1>MP2とすると、a>c(b≧d)となるように設定すればよい。
図31(a)では、b=d=0の例を示している。
【0159】
上述したように、数式の傾き(aあるいはc)を変えることで、設定された調節値αに対する出力電力値P(火力)を変えることができる。このように、制御部50は、複数の数式を使い分け、数式に応じて、出力電力値Pを決定し、決定された出力電力値Pが得られる高周波電流Iが電磁コイル100に供給されるように駆動部40の出力を制御する。その結果、誘導加熱調理器1は、誘導加熱動作モードにおいて、駆動部40の出力範囲を第一の最大出力電力値MP1を有する第一の範囲に設定することができると共に、非接触給電動作モードにおいて、駆動部40の出力範囲を第二の最大出力電力値MP2を有する第二の範囲に設定することができる。すなわち、誘導加熱調理器1は、各動作モードにおいて、予め設定された数式に基づいて制御部50が駆動部40を制御することで、操作部6による調節範囲における同一の調節値αに対し、異なる出力電力値Pを得ることができる。
【0160】
なお、
図31(a)では、各動作モードにおける調節値αに対する出力電力値Pが一次式で得られる例について説明したが、これに限定されず、調節値αに対して出力電力値Pが任意の傾きの変化量で得られる数式に設定してもよい。
また、
図23〜
図31において、誘導加熱動作モードの調節範囲に対する出力電力値Pの変化は、便宜上、一次式で得られる直線で表現されているが、これに限定されず、
図31(b)〜
図31(d)に示すように、調節値αに対する出力電力値Pの変化の仕方は、調理の利便性に応じて、任意に設定されていてもよい。
図31(a)の非接触給電動作モードでは、調節値αの増加とともに出力電力値Pが直線的に増加するように設定されているのに対して、
図31(b)の非接触給電動作モードでは、調節値αの増加とともに出力電力値Pが直線的に低下するように設定されている。
図31(c)の非接触給電動作モードでは、調節値αの増加とともに出力電力値Pが非線形的に漸増するように設定されている。また、
図31(d)の非接触給電動作モードでは、調節値αの増加とともに出力電力値Pが
図31(c)とは異なる非線形的に漸増するように設定されている。
【0161】
このように、実施の形態7に係る誘導加熱調理器によれば、動作モード毎に、同じ調節値に対して異なる出力電力値が得られるように設定されているので、動作モードを意識することなく、同じ調節範囲で調節することができるので、動作モード毎に操作方法を変更する必要が無く、利便性を向上することができる。また、非接触給電動作モードにおいて、調節範囲が最大出力電力値に設定された場合においても、過大な電力が受電機器に供給されるのを抑制することができる。
【0162】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0163】
また、図中、同一符号は、同一または相当部分を示す。