(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む複合繊維を含み、前記複合繊維の第1成分によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されている不織布を含むフィルターであって、
前記複合繊維の少なくとも一部は、複合繊維の長さ方向に垂直な面で切断した横断面の断面形状(以下、単に断面形状とも称す)において、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面複合繊維であり、
前記異形断面複合繊維の少なくとも一部が、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、
前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成し、
前記異形断面複合繊維の横断面において、前記第2成分の断面形状が、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面であり、
前記第2成分の少なくとも一部が、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、
前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成し、
前記第1成分が前記第2成分の凸部の先端を被覆している、
フィルター。
前記異形断面複合繊維が、第1成分と第2成分とからなり、前記異形断面複合繊維の横断面において、前記第1成分が繊維表面の全部を占める鞘部を構成しており、前記第2成分が芯部を構成している、芯鞘型複合繊維である、請求項1または2に記載のフィルター。
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む複合繊維であって、複合繊維の長さ方向に垂直な面で切断した横断面の断面形状において、3個以上8個以下の凸部を有し、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成している、異形断面複合繊維を含む繊維ウェブを得ること、および
前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記異形断面複合繊維の前記第1成分によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させて、ろ材となる熱接着不織布を得ること
を含み、
前記異形断面複合繊維の横断面において、前記第2成分の断面形状が、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面であり、
前記第2成分の少なくとも一部が、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、
前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成し、
前記第1成分が前記第2成分の凸部の先端を被覆している、
フィルターの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフィルターは、熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む複合繊維であって、断面形状が3個以上8個以下の凸部を有し、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成している異形断面複合繊維を含む。そこでまず、この異形断面複合繊維の構成およびその作用効果を説明する。
【0014】
本発明のフィルターは、鋭角を形成している凹部が比較的小さい粒子を捕捉することができるのでろ精度が高い。また、凹部が鋭角を形成しているため、凹部が鈍角を形成している異形断面繊維と比較して、繊維表面積が大きくなり、その結果、不織布化工程などで加熱処理しても、繊維交点が小さく、繊維間空隙を保持できるので、ろ過寿命が長い。また、鋭角に形成された凹部には、他の繊維の凸部が入り込みにくいため、繊維が束状に接着されず、本発明のフィルターにおいては、すべての異形断面複合繊維がろ過精度及びろ過寿命に寄与する。
【0015】
[異形断面複合繊維]
異形断面複合繊維は、その全体の断面形状が異形であり、3個以上8個以下の凸部を有し、かつ繊維表面の少なくとも一部に凸部と凸部との間に形成された繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を有する。したがって、全体の断面形状が円形であるものは、ここでいう異形断面複合繊維ではない。凸部は、繊維の横断面において、繊維の中心から突出している部分を指す。凸部が3個以上存在することにより、断面形状の輪郭は全体として、凹凸の繰り返しを有するものとなる。凸部の数が3個未満であると、繊維の表面積が大きくならず、フィルターのろ過精度を十分に向上させることができない。また、凸部の数が8個を超える断面形状の複合繊維を得ることは難しい。凸部の数は好ましくは3個以上6個以下であり、より好ましくは3個または4個である。
【0016】
この異形断面複合繊維は、所定の容積内に密に収容されて互いに接触しても、繊維間に突出した凸部同士が接触することとなるので、繊維間に空隙が形成されやすい。即ち、この異形断面複合繊維は、熱接着処理に付された場合でも、2本以上の繊維が束状となって一本の太い繊維束を形成しにくく、繊維間の空隙が維持されやすい。また、繊維同士が密に接触しても、凸部と凸部の間に存在する凹部が空隙を与えやすい。これは、繊維断面において鋭角を形成した凹部には、他の繊維の凸部が入り込みにくく、したがって、凹部の空隙が埋められることが少ないためであると考えられる。また、これらの空隙は第1成分が熱処理により溶融または軟化しても維持されやすい。これらのことがフィルターのろ過寿命を長くすると考えられる。
【0017】
凸部を3以上有することにより、凸部と凸部との間には凹部が存在し、この凹部は溝のように、繊維表面において、繊維の長さ方向に沿って延びる。そのような凹部は異形断面複合繊維全体にわたって延びる必要はなく、少なくとも一部にあればよい。即ち、異形断面複合繊維は、一部において異形でなくてもよく、円形となっていてもよい。
【0018】
異形断面複合繊維は、例えば湾曲している2つの凸部に挟まれて形成された「く」の字形状の凹部を有する。少なくとも1つの凹部は、繊維の横断面において鋭角を形成する。また、凹部は、その底面が線状である急峻な谷状であることがより好ましい。ここで、凹部の角度は、
図10(a)に示すように、凹部の底面が線状であるときは、底面における凹部の両側面に対する接線がなす角度(α)を指す。凹部の角度は、
図10(b)に示すように、凹部の底面が線状でなく、二次元的な広がりを有する場合には、底面と、底面における凹部のいずれか一方の側面(正確には、側面に対する接線)とがなす角度をいう。この場合、底面における凹部の2つの側面と、底面とがなす角度が互いに異なる場合(β、β’)、より小さい角度(β)を凹部の角度とする。鋭角を形成する凹部の数は、1つの異形断面複合繊維において、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。最も好ましくは、全ての凹部が鋭角を形成している。
【0019】
鋭角を形成している凹部内には、粒子が捕捉されやすい。そのため、少なくとも1つの凹部が鋭角を形成している異形断面複合繊維を使用することにより、ろ過精度が向上すると考えられる。また、凹部が鋭角を形成していると、凹部を挟む凸部は根元において細くなる形状となり、凸部が根元から分離(一部において割れている場合も含む)しやすくなる。その結果、分離した部分で微細な空隙が形成され、この空隙においても粒子が捕捉されて、ろ過精度が向上すると考えられる。また、この空隙は、閉塞されにくいため、ろ過寿命の向上にも寄与していると考えられる。
【0020】
凹部が形成する鋭角は、90°より小さい角度であってよく、好ましくは15°〜89°であり、より好ましくは20°〜85°であり、最も好ましくは30°〜80°である。凹部が形成する鋭角が15°以上であると、粒子が凹部に侵入し易く、捕捉されやすい。また、加熱処理などにより第1成分が溶融しても凹部を埋め潰すことがない。凹部が形成する鋭角が89°以下であると、繊維間空隙で捕捉しきれない比較的小さい粒子を凹部で捕捉することができる。また、捕捉した粒子を放出しにくい。鋭角は、凸部の数または凸部の形状によって、調節することができる。
【0021】
異形断面複合繊維は、その横断面において、第1成分が第2成分の外側に位置して第2成分の全体を被覆し、かつ第1成分の輪郭が第2成分の輪郭と略相似形であることが好ましい。即ち、第1成分が鞘成分であり、第2成分が芯成分であり、2つの成分の輪郭がともに3個以上8個以下の凸部を有し、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有する、芯鞘型複合繊維であることが好ましい。第2成分においては、凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成していることがより好ましい。なかでも、第1成分の凸部の数が第2成分の凸部の数と同一であることがとくに好ましい。そのような異形断面複合繊維は、熱接着処理後も繊維全体として異形断面を維持するので、繊維間空隙(特に、凹部によって形成される空隙)が不織布において保持されやすい。また、そのような異形断面複合繊維は、例えば、芯成分と鞘成分の容積比が同じである丸断面の複合繊維と比較して、熱接着成分である第1成分を肉厚のより小さい鞘成分として有する。鞘成分の肉厚が小さいと、繊維同士が熱接着したときに、繊維間の空隙が過度に塞がれないため、フィルターのろ過寿命の低下が抑制されるとともに異形断面複合繊維の凹部が第1成分によって埋められにくいため、凹部によって形成される溝が粒子を捕捉するので、ろ過精度も向上すると考えられる。
【0022】
あるいは、異形断面複合繊維は、第1成分と第2成分とからなり、異形断面複合繊維の横断面において、第2成分の断面形状が、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面であり、第2成分の少なくとも一部が、凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、第1成分が前記第2成分の凸部の先端を被覆しているものであってよい。すなわち、異形断面複合繊維は、第1成分と第2成分とからなり、第2成分が異形断面を有していて、繊維全体の断面形状を決定し、第1成分が第2成分の周囲全部を被覆せず一部のみを覆っているものであってよい。第2成分においては、凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成していることがより好ましい。第2成分の断面形状が異形である異形断面複合繊維においては、熱接着処理後も(即ち、第1成分が溶融して変形したとしても)、異形断面及び凹部の鋭角がより維持されやすい。よって、そのような異形断面複合繊維を使用すれば、鋭角を形成する凹部がもたらす効果をより顕著に得ることができる。
【0023】
異形断面複合繊維の断面形状の例を
図1〜
図4に示す。これらの図はいずれも第1成分と第2成分とからなる複合繊維の横断面を示している。
図1は、凸部を4つ有する4葉形の断面形状を有する。
図1の複合繊維100は、第1成分1が第2成分2の全体を被覆するいわゆる芯鞘型複合繊維であり、第1成分1の輪郭と第2成分2の輪郭は略相似形となっている。
図2は、凸部を8つ有する8葉形の断面形状を有する。
図2の複合繊維100は、第1成分1が第2成分2の全体を被覆するいわゆる芯鞘型複合繊維であり、第1成分の輪郭と第2成分の輪郭は略相似形となっている。
図3は、凸部を4つ有する4葉形の断面形状を有する。
図3の複合繊維100は、第1成分1が凸部の先端にのみ位置するものである。すなわち、
図3の複合繊維は、第2成分2が異形断面を有していて繊維の断面形状をほぼ決定し、第1成分1が第2成分2の凸部の一部を覆い、かつ第2成分が凸部を4つ有し、凸部と凸部との間の凹部が鋭角を形成している複合繊維である。
図4の複合繊維100は、凸部を4つ有する4葉形の断面形状(十字断面)を有する。
図4の複合繊維100は、第2成分2の断面が略円形であり、第2成分2の外周を覆う第1成分1が4つの凸部を構成しているものである。
【0024】
図示した断面形状は例示であり、異形断面複合繊維の断面形状は他の形状であってよい。例えば、
図4に示す複合繊維の変形例において、凸部は6つ又は8つ形成されていてもよく、凸部の数が3つであってもよい。あるいは、図示した複合繊維において、第3成分がさらに含まれていてよい。その場合、円形の繊維断面を有する第3成分が、第2成分の中心部に配置されていてよく、あるいは第2成分の輪郭と略相似形である輪郭を有する第3成分が第2成分の内部に配置されていてよい。
【0025】
あるいは、異形断面複合繊維は、その断面形状が全体として、3個以上8個以下の凸部を有する限りにおいて、第2成分が2個以上に分割した形態で存在することが好ましい。例えば、
図1に示す異形断面複合繊維において、第1成分が繊維断面の輪郭を規定する途切れのない膜を形成し、その膜で囲まれた空間に第2成分が配置されている場合には、第2成分の凸部(葉部)の一部が分離した形態で、存在していてよい。その場合、第2成分の分離した凸部と他の第2成分との間に空隙が形成されることとなる。そのような空隙には、熱接着処理のときに溶融または軟化した第1成分が入り込みやすくなることがある。第1成分がそのような狭い空隙に入り込むことによって、異形断面複合繊維間で形成される広い繊維間空隙(この広い繊維間空隙はろ過寿命に影響を及ぼすと考えられる)が第1成分によって過度に塞がれることが抑えられ、ろ過寿命に良い影響を与えることがある。
【0026】
もしくは、第2成分が2個以上に分割した他の例として、異形断面複合繊維は、異形断面複合繊維の長さ方向の一部において、第1成分及び第2成分の凸部(葉部)の一部が分離した細繊度部を形成した、見かけ上、フィブリル化した形態であってもよい。このような形態は、異形断面複合繊維の長さ方向の端部で形成されていることが好ましい。その場合、あたかも細繊度部が極細繊維のように機能して、端部の細繊度部の間に形成される空隙は、極細繊維間に形成されるような微細な空隙となる。そのような細繊度部を有する異形断面複合繊維を含むフィルターは、異形断面複合繊維間の空隙と、細繊度部間の微細な空隙とを有し、異形断面複合繊維間の空隙が比較的大きい粒子を捕捉し、細繊度部間の微細な空隙が比較的小さい粒子を捕捉するため、目詰まりし難く、種々の大きさの粒子を捕捉できるので、塵埃保持量が高く、ろ過精度とろ過寿命とが特に優れたフィルターとなる。
【0027】
異形断面複合繊維が、図示したように、第1成分と第2成分とからなる場合、その横方向の断面において、凸部先端から繊維の中心に直線を引いたとき、繊維中心から凸部先端までの長さをL
1とし、第2成分の凸部先端から繊維の中心に直線を引いたときの、繊維中心から第2成分の凸部先端までの長さをL
2としたとき、L
2/L
1は0.25以上であることが好ましい。L
1は、凸部の見かけの長さに相当し、L
2は、第2成分(高融点成分)の凸部の長さに相当する。L
2/L
1が大きいほど、第2成分の突出長さが大きく、凸部の先端付近まで第2成分が存在している。そのため、熱接着などの熱加工を施しても凸部が大きく変形することがなく、また、凸部の形状が失われにくい。したがって、そのような繊維を用いると、繊維間を熱接着するために熱加工を行っても、凸部形状が維持されやすい、すなわち異形断面複合繊維の表面積が大きい状態が維持されるため、構成繊維間の空隙が塞がれにくく、ろ過寿命に優れる。その結果、熱接着後の不織布、即ち、フィルターの機械的特性がより向上すると考えられる。
【0028】
また、L
2/L
1は、第1成分の肉厚を示す指標であり、これが小さいほど、第1成分の肉厚がより大きくなる。第1成分は溶融または軟化すると、表面張力的に安定な構造、即ち、繊維の外周がより円形に近づくように移動する傾向にある。熱接着処理時に第1成分がそのように移動すると、異形断面複合繊維の凹凸を均し、その結果、凹部が存在することによる効果が損なわれることがある。L
2/L
1が0.25以上であると、軟化または溶融した第1成分が凹凸を均す度合いを小さくして、凹部が維持されやすい。
【0029】
L
2/L
1は0.5以上であることがより好ましく、0.75以上であることが特に好ましく、0.8以上であることが最も好ましい。L
2/L
1の上限は特に限定されないが、溶融紡糸時の生産性、繊維断面形状の明瞭性、また異形断面複合繊維の熱接着性を考慮すると0.98以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。
【0030】
異形断面複合繊維の横方向の断面において、異形断面複合繊維の凸部先端と繊維の中心を結ぶ直線と、隣り合う凹部の底部同士を結ぶ線分との交点を求め、前記交点から凸部先端までの長さをL
3としたとき、L
3/L
1は0.25以上であることが好ましい。L
3は、異形断面複合繊維の凸部の真の長さに相当する。L
3/L
1が大きいほど、異形断面複合繊維の表面積が広くなるため、粒子捕捉性能が高くなる。L
3/L
1は0.4以上であることがより好ましく、0.45以上であることが特に好ましく、0.5以上であると最も好ましい。L
3/L
1の上限は特に限定されないが、溶融紡糸時の生産性、繊維断面形状の明瞭性を考慮すると0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が特に好ましく、0.75以下が最も好ましい。
【0031】
異形断面複合繊維の横方向の断面において、第2成分の凸部は、その幅方向の寸法(突出している方向と直交する方向)が一定でなく、第2成分の凸部の先端から根元までの間に幅方向の寸法が最大となるような形状を有していることが好ましい。即ち、第2成分の凸部はその先端と根元の両端で幅方向の寸法が小さくなるような形状(例えば、つぼみのような形状、マッシュルームのような形状)を有することが好ましい。第2成分の凸部がそのような形状を有していると、凸部先端に近づくにつれて凸部の幅が細くなる形状のものよりも繊維の断面形状が(最終的に不織布になった後にも)より明瞭なものに維持されやすい。そのため、熱加工後も、凸部と凸部との間の凹部が消滅しにくくなり、良好なろ過精度が確保される。また、第2成分の断面形状がそのような形状の凸部を有する異形断面複合繊維は、不織布化工程、熱処理工程、巻回工程などにより異形断面複合繊維に外力が加えられた際に、上述した第2成分が2個以上に分割した形態をとりやすく、フィルターの性能を向上させる。第2成分の断面形状がそのような形状の凸部を有する異形断面複合繊維の横方向の断面において、第2成分の凸部の幅が最大になる部分から、異形断面複合繊維の中心部までの距離をL
4としたとき、L
4/L
1は好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.25以上であり、特に好ましくは0.3以上であり、最も好ましくは0.4以上である。L
4/L
1の上限は特に限定されないが、溶融紡糸時の生産性、繊維断面形状の明瞭性、及び、得られる熱接着不織布のろ過精度を考慮すると0.8以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましく、0.6以下が最も好ましい。
【0032】
L
1、L
2、L
3およびL
4の求め方を説明する模式図を
図9(a)に示し、繊維の中心の求め方を説明する模式図を
図9(b)に示す。
図9(a)は、
図1に示す異形断面複合繊維である。異形断面複合繊維の横断面において、
図9(a)に示すように、繊維の凸部の寸法および形状が略同じであり、かつ断面形状が上下左右において対称である場合に、それぞれの凸部において、凸部の根元を結ぶ線分の中点と、凸部の先端とを結ぶ直線を引くと、当該直線は一点で交わるので、その交点を繊維の中心とする。それ以外の場合には、
図9(b)に示すように、それぞれの凸部において、凸部の根元を結ぶ線分の中点と、凸部の先端とを結ぶ直線を引いたときに、当該直線によって形成される三角形のうち、最も面積の大きい三角形に内接する円の中心を、繊維の中心Cとする。
【0033】
異形断面複合繊維は、
図1〜
図4に示すように、低融点の熱可塑性樹脂からなる第1成分と、高融点の熱可塑性樹脂からなる第2成分とから構成してよく、2つの成分で構成することが溶融紡糸の点からも好ましい。そこで、以下の説明においては、第1成分と第2成分とからなる異形断面複合繊維を主に説明する。但し、本発明のフィルターを構成する異形断面複合繊維は2成分から成るものに限定されず、3以上の成分で構成されてよい。異形断面複合繊維が3以上の成分からなる場合、以下の説明において、第1成分とあるのは、最も融点の低い熱可塑性樹脂からなる成分であって、熱処理により溶融または軟化して、熱接着成分として繊維同士を接合する成分を指し、第2成分とあるのは、熱接着成分以外の成分をまとめて指すものとする。
【0034】
異形断面複合繊維の機械的特性は熱処理に付された後も繊維形状を維持する第2成分に依存する。また、第1成分は異形断面複合繊維が熱処理に付されると、溶融または軟化して、構成繊維間を熱接着させる。第1成分の熱接着により、繊維同士が接合してフィルターとしての一体性が確保される。即ち、第1成分は繊維間の熱接着に起因するフィルターの機械的特性の向上に寄与している。尤も、前述したように、繊維同士の過度の熱接着は繊維間空隙を塞いで、ろ過寿命を低下させることがある。したがって、異形断面複合繊維において、第2成分と第1成分の容積比(複合比もしくは
図1、
図2および
図4に示すような芯鞘型複合繊維の場合には芯鞘比とも称す)は特に限定されないものの、異形断面複合繊維そのものの機械的特性と、フィルターの機械的特性と、フィルターのろ過精度と、フィルターのろ過寿命を考慮して、選択することが好ましい。具体的には、異形断面複合繊維の複合比(第2成分/第1成分)は、容積比で30/70〜70/30であることが好ましく、35/65〜65/35であることがより好ましい。複合比が30/70〜70/30であることによって、ろ過精度およびろ過寿命のバランスがよく、かつ繊維の脱落が少ないフィルターを得ることが容易となる。
【0035】
複合比(第2成分/第1成分)が30/70〜50/50であると、繊維同士の接着力が高い不織布を得ることができ、耐圧性に優れたフィルターを得ることができる。したがって、例えば、デプスフィルターの場合には、比較的高い流水圧の流体を通過させても、フィルターの形状が変形したり、フィルター側面が破断したりすることがない。ただし、第1成分の容積比が70%を超える場合、溶融または軟化した第1成分が、表面張力的に安定な構造、即ち、繊維の外周がより円形に近づくように移動する傾向にある。熱接着処理時に第1成分がそのように移動すると、異形断面複合繊維の凹凸を均し、その結果、凹部が存在することによる効果が損なわれることがある。
【0036】
複合比(第2成分/第1成分)が50/50〜70/30であると、第2成分の融点が第1成分よりも高いことに起因して、繊維が加熱時にへたりにくく、嵩の高い不織布を得ることができる。このような不織布を用いると、熱接着処理しても異形断面複合繊維の凹凸形状が維持されやすいため、繊維表面積が大きくなり、かつ繊維間空隙が大きくなることに起因して、濾過寿命の長いフィルターを得ることができる。ただし、第2成分の容積比が70%を超えると、フィルターの構成繊維間が十分に熱接着されないことがある。その結果、フィルターの機械的特性が低下する、あるいは繊維の脱落が生じるといった不都合が生じることがある。
【0037】
前記異形断面複合繊維は、熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む。第1成分は、低融点成分ということもでき、熱接着成分として機能する。第2成分は、高融点成分ともいうことができ、熱接着処理後の不織布において繊維形態を保持して、不織布の機械的特性を確保する。第2成分の紡糸後の融点は、第1成分の紡糸後の融点よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことが好ましく、25℃以上高いことがより好ましい。第1成分および第2成分の融点は、DSCにより得た融解熱量曲線から求めることができる。融解熱量曲線においては、二以上のピークが出現することがある。その場合には、最大のピークを示す温度を、融解ピーク温度、即ち融点とする。一般に、紡糸前の熱可塑性樹脂の融点の関係は、紡糸後の熱可塑性樹脂の融点の関係とほぼ同じである。即ち、第2成分の紡糸前の融点が、第1成分のそれよりも高い場合に、一般には、第2成分の紡糸後の融点は、第1成分のそれよりも高い。したがって、第1成分および第2成分を構成する熱可塑性樹脂は、紡糸前の融点を考慮して選択すればよい。
【0038】
前記異形断面複合繊維に使用する熱可塑性樹脂は、前記の通り、第2成分の紡糸後の融点が第1成分の紡糸後の融点よりも高いものである限りにおいて特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなど、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合される各種ポリエチレン系樹脂、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなどの各種ポリプロピレン系樹脂、各種ポリメチルペンテン系樹脂、各種ポリブテン-1系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂などの各種ポリオレフィン系樹脂;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックである。異形断面複合繊維は、これらの樹脂から選択される1または2以上の樹脂を含む第1成分と、これらの樹脂から選択される1または2以上の樹脂を含む第2成分とからなる。
【0039】
フィルターには高い耐薬品性が求められることがあり、その場合には、異形断面複合繊維の第1成分および第2成分はそれぞれ、ポリオレフィン系樹脂から選択した樹脂で構成されることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂として、各種α−オレフィンの単独重合体や共重合体、三元共重合体(ターポリマーとも称す)を挙げることができる。具体的なポリオレフィン系樹脂の例として、ポリ(4−メチルペンテン−1)、および4−メチルペンテン−1と他のオレフィンとの共重合体等のポリメチルペンテン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリプロピレン、およびメタロセン触媒で重合したポリプロピレンを含む)、ポリエチレン系樹脂(高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含み、チーグラ・ナッタ触媒で重合したポリエチレンのほか、メタロセン触媒で重合したポリエチレンも含む)、ポリブテン−1、エチレン−プロピレン共重合樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂が挙げられる。
【0040】
前述のとおり、第1成分および第2成分はともに、ポリオレフィン系樹脂(前記したもののほか、公知となっているポリオレフィン系樹脂を含む)を使用して構成することが好ましい。異形断面複合繊維の生産性や単繊維強度といった機械的特性を考慮すると、前記異形断面複合繊維を構成するポリオレフィン系樹脂の組み合わせとしては、第2成分/第1成分が、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/ポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合樹脂/エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、で表されるポリオレフィン系樹脂である組み合わせが好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂/エチレン−プロピレン共重合樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリエチレン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂/ポリプロピレン系樹脂の組み合わせが特に好ましく、ポリプロピレン系樹脂/ポリエチレン系樹脂が最も好ましい。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンのホモポリマー、プロピレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びプロピレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられる。共重合体および混合物の場合には、樹脂成分中にプロピレンを85モル%以上含んでいるものをポリプロピレン系樹脂と称す。前記ポリプロピレン系樹脂の物性は特に限定されない。ポリプロピレン系樹脂が溶融紡糸可能であれば、そのQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)や融点、メルトフローレートは特に限定されない。
【0042】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンのホモポリマー、エチレンと炭素数2〜20のα−オレフィンの1種または2種との共重合体、及びエチレンのホモポリマーと他の熱可塑性樹脂との混合物などが挙げられる。共重合体および混合物の場合、樹脂成分中にエチレンを85モル%以上含んでいるものをポリエチレン系樹脂と称す。前記ポリエチレン系樹脂の物性は特に限定されない。ポリエチレン系樹脂が溶融紡糸可能であれば、そのQ値(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)や融点、メルトフローレートは特に限定されない。
【0043】
前記異形断面複合繊維の繊度は特に限定されないが、繊度が0.1dtex以上100dtex以下であることが好ましい。異形断面複合繊維の繊度が前記範囲を満たすことで、ろ過精度とろ過寿命のバランスが良好なフィルターが得られるためである。また、繊度が0.1dtexより小さいと、凹部の容積が粒子よりも小さくなり、粒子を捕捉できないことがある。繊度が100dtexより大きいと、凹部の容積が粒子に対して大きく、捕捉した粒子を保持できずに放出してしまうことがある。異形断面複合繊維の繊度は0.3dtex以上70tex以下であることがより好ましく、0.5dtex以上30dtex以下であることが特に好ましく、1dtex以上8dtex以下であることが最も好ましい。
【0044】
前記異形断面複合繊維の繊維長は特に限定されないが、3mm以上200mm以下であってよい。例えば、カード機を用いて繊維ウェブを作製する方法で不織布を製造する場合、繊維長は10mm以上150mm以下であることが好ましい。繊維長が10mm以上であると、繊維の脱落が発生しにくい。繊維長が150mm以下であると、カード機によって繊維ウェブを形成することが容易である。異形断面複合繊維の繊維長は15mm以上120mm以下であることがより好ましく、20mm以上100mm以下であることが特に好ましい。
【0045】
前記異形断面複合繊維は、以下の方法で製造することができる。まず複数成分の異なる熱可塑性樹脂、好ましくは2成分のポリオレフィン系樹脂を用意し、公知の溶融紡糸機で、異形断面を与える所定の複合ノズルを用いて溶融紡糸する。このとき異形断面複合繊維の繊維断面形状を考慮し、それぞれの樹脂の溶融粘度を、押出機のせん断力や紡糸温度などを調整することによって調整することが好ましい。溶融させた熱可塑性樹脂から紡糸フィラメント(未延伸糸)を得る。紡糸フィラメントの繊度は2dtex以上10dtex以下が好ましい。
【0046】
次いで、紡糸フィラメントは、必要に応じて延伸される。紡糸フィラメントは、延伸温度80℃以上160℃以下、延伸倍率1.5倍以上8倍以下の条件で延伸される。延伸方法は特に限定されない。高温の熱水などの高温の液体で加熱しながら延伸を行う湿式延伸、高温の気体中又は高温の金属ロールなどで加熱しながら延伸を行う乾式延伸、100℃以上の水蒸気を常圧にて若しくは加圧状態にして繊維を加熱しながら延伸を行う水蒸気延伸などの公知の延伸処理を行うこともできる。得られた延伸フィラメントには、必要に応じて繊維処理剤が付与され、必要があれば捲縮付与処理が施される。その後、所定の繊維長に切断して異形断面複合繊維として用いられる。
【0047】
[その他の繊維]
フィルターを構成する不織布は、前記所定の異形断面複合繊維を含み、当該異形断面複合繊維の第1成分によって繊維同士の少なくとも一部が熱接着されている限りにおいて、他の繊維を含んでよい(以下、前記所定の異形断面複合繊維以外の他の繊維を便宜的に混合繊維とも称す)を含んでいてもよい。前記混合繊維はその種類が特に限定されず、ラミー(苧麻)、リネン(亜麻)、ケナフ(洋麻)、アバカ(マニラ麻)、ヘネケン(サイザル麻)、ジュート(黄麻)、ヘンプ(大麻)、ヤシ、パーム、コウゾ、ミツマタ、バガス等の天然繊維やビスコースレーヨン、テンセル(登録商標)、リヨセル(登録商標)、キュプラなどの半合成繊維(再生繊維ともいう)であってもよい。混合繊維は、合成樹脂からなる繊維であることが好ましい。
【0048】
混合繊維に使用できる合成樹脂からなる繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどの公知のポリエステルからなる単一繊維、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどの公知のポリエチレン系樹脂からなる単一繊維、通常のチーグラ・ナッタ触媒やメタロセン触媒を使用して重合されるアイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックなど公知のポリプロピレン系樹脂からなる単一繊維、若しくはこれらのポリオレフィンのモノマー同士の共重合樹脂、又はこれらのポリオレフィンを重合する際にメタロセン触媒(カミンスキー触媒ともいう)を使用したポリオレフィンなど公知のポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維、ナイロン6、ナイロン66,ナイロン11、ナイロン12などの公知のポリアミドからなる単一繊維、アクリルニトリルからなる(ポリ)アクリルの単一繊維、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチックの単一繊維、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エンジニアリング・プラスチックの単一繊維、または異なる種類の樹脂同士、もしくは同一の種類の異なるポリマー成分からなる樹脂(例えばポリエチレンテレフタレートとポリトリメチレンテレフタレート)同士を複合した複合繊維が挙げられる。
【0049】
前記混合繊維が合成樹脂からなる複合繊維である場合、その複合状態は特に限定されない。例えば、複合繊維は、芯鞘型複合繊維、偏心芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維、柑橘類の房状の樹脂成分が交互に配置されている分割型複合繊維や海島型複合繊維であってもよい。フィルターには薬品に対する耐久性が求められることがあるので、前記混合繊維としてはポリオレフィン系樹脂からなる単一繊維や、ポリオレフィン系樹脂からなる複合繊維が好ましい。
【0050】
合成繊維の断面は丸断面でなくてよく、前記所定の異形断面複合繊維とは異なる異形断面を有してよい。例えば、前記所定の異形断面複合繊維と同じ第1成分および第2成分からなる複合繊維であって、凸部を9個以上有する、および/または凸部−凸部間の凹部が鈍角を形成している異形断面を有する複合繊維が、混合繊維としてフィルターに含まれていてよい。
【0051】
前記混合繊維は、その断面形状、素材(例えば、合成樹脂の種類、数)、あるいは複数の樹脂成分からなる複合繊維である場合は、合成樹脂の組み合わせや構成樹脂の複合形態が特に限定されないことは前記の通りである。また、混合繊維の繊度、繊維長、断面形状、および混合繊維が複合繊維である場合の複合比も、特に限定されるものではない。しかし、前記混合繊維が、異形断面複合繊維の好ましい繊度の範囲や好ましい繊維長の範囲と大きく異なると、カード機によってウェブを作製する際に生産性が低下することがあるだけでなく、本発明の効果が損なわれることがある。そのため、前記混合繊維の繊度も0.1dtex以上100dtex以下であることが好ましく、0.3dtex以上70dtex以下であることがより好ましい。また、カード機によりウェブを作製して不織布を製造する場合、前記混合繊維の繊維長は、10mm以上150mm以下であることが好ましく、15mm以上120mm以下であることがより好ましく、20mm以上100mm以下であることが特に好ましい。
【0052】
フィルターのろ材となる不織布は、前記異形断面複合繊維のみから構成してよく、または前記異形断面複合繊維と、前記混合繊維とから構成してよい。以下に、ろ材となる不織布について説明する。
【0053】
[不織布(ろ材)]
フィルターは、第1成分と第2成分とからなる複合繊維の第1成分によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されている不織布であって、複合繊維の少なくとも一部が前記異形断面複合繊維である不織布をろ材として含む。不織布は、前記異形断面複合繊維を好ましくは30質量%以上含む。前記異形断面複合繊維をこの割合で含むフィルターは、高いろ過精度と長いろ過寿命を実現しやすい。不織布は、前記異形断面複合繊維を、より好ましくは50質量%以上含み、特に好ましくは70質量%以上含み、最も好ましくは異形断面複合繊維のみからなる。
【0054】
不織布の種類は特に限定されず、長繊維からなるスパンボンド不織布、またはメルトブロー法により得られるメルトブローン不織布であってよい。あるいは、不織布は、短繊維から、湿式抄紙法、カード機を用いてパラレルウェブ、セミランダムウェブ、ランダムウェブ、クロスウェブもしくはクリスクロスウェブを作製するカード法、またはエアレイ法によりウェブを作製し、さらにウェブを熱接着処理(熱加工)により一体化させることにより得られるものであってよい。熱接着処理は、異形断面複合繊維の第1成分および場合により含まれる他の複合繊維(混合繊維)の第1成分(低融点成分)を熱により溶融または軟化させて、繊維同士を第1成分により熱接着させるために実施する。
【0055】
熱接着処理は、例えば、熱風処理機(エアスルー式熱加工機を含む)、赤外線式熱処理機等、または熱ロール加工機等を用いて実施してよい。なかでも、熱接着処理は、不織布の厚さ方向に熱風を通過させて行うことが好ましい。例えば、熱風を不織布の一方の面側に吹き出し、不織布の他方の面側から熱風を吸引することで、不織布の厚さ方向に熱風を通過させることができる。かかる工程を採用すると、不織布の厚さ方向において、均一に繊維間が接着された不織布を得ることができる。熱接着処理は、第1成分の溶融または軟化により、繊維間の空隙が過度に塞がれることのないように実施することが好ましい。したがって、熱接着処理は、第1成分の紡糸後の融点よりも0℃〜50℃程度高い温度で実施することが好ましい。また、熱接着処理は、熱接着点の面積が広くならないように実施することが好ましい。
【0056】
ウェブの一体化は、熱接着処理に加えて、ニードルパンチおよび/または高圧水流処理から選択される1または複数の方法により実施してよい。例えば、熱接着処理の前に、ウェブをニードルパンチおよび/または高圧水流処理に付してよい。
【0057】
不織布の目付は、フィルターの形態に応じて適宜選択される。例えば、フィルターが筒状フィルター(デプスフィルター)として提供される場合、目付が10g/m
2〜100g/m
2である不織布を巻回することが好ましい。目付が10g/m
2以上であると、不織布の引張強度が高いため、取り扱いやすく、例えば、管状芯材の周囲に巻回するときに、切断され難い。また、不織布の目付が100g/m
2以下であると、不織布の厚み方向において構成繊維間が均一に熱接着された構成をとりやすく、また、一定容積の筒状フィルターを得ようとする場合に、不織布の巻回数をより多くすることができ、フィルターの耐圧強度のバラツキを抑えることができる。その結果、不織布の質量当たりの表面ろ過面積が大きくなり、より優れたろ過精度を得ることができる。筒状フィルターを構成する不織布の目付はより好ましくは12g/m
2〜70g/m
2であり、最も好ましくは20g/m
2〜40g/m
2である。
【0058】
不織布をひだ折加工して筒状体に収容し、プリーツフィルターを製造する場合、不織布の目付は好ましくは10g/m
2〜200g/m
2である。不織布の目付が10g/m
2以上であると、取り扱いやすく、ひだ折加工中に切断され難い。また、不織布の目付が200g/m
2以下であると、一定容積のプリーツフィルターを得ようとする場合に、ひだ折の回数をより多くすることができ、ろ過寿命が長いフィルターとなる。プリーツフィルターを構成する不織布の目付はより好ましくは15g/m
2〜100g/m
2であり、最も好ましくは20g/m
2〜60g/m
2である。
【0059】
不織布が巻回されず、あるいはひだ折加工されることなく、シートの形態でフィルターとして使用される場合の目付は、その用途によって選択される。例えば不織布がエアーフィルターとして提供される場合、不織布の目付は例えば、10g/m
2〜200g/m
2としてよい。また、リキッドフィルターのシートとして提供されるときは、10g/m
2〜1000g/m
2としてよい。
【0060】
いずれの形態のフィルターにおいても、前記所定の異形断面複合繊維を含む不織布は2以上積層された状態で用いられてよい。例えば、筒状フィルターにおいては、2以上の不織布を積層した積層体を巻回してよく、プリーツフィルターにおいては、2以上の不織布を積層した積層体がひだ折加工されていてよく、シート状のフィルターは2以上の不織布が積層されて構成されてよい。積層された不織布は、一部において又は全体にわたって、一体化されていてよく、あるいは一体化されていなくてもよい。一体化は第1成分の熱接着によってなされていてよく、あるいは、縫合、繊維同士の交絡、または接着剤によりなされていてもよい。
【0061】
いずれの形態のフィルターを構成する場合においても、不織布中の異形断面複合繊維は、異形断面複合繊維の凸部が繊維の少なくとも一部において分割し、分割した凸部が細繊度部を形成していることが好ましい。細繊度部は、不織布(ひいてはフィルター)の質量を増加させることなく、見掛けの構成繊維本数を増大させ、繊維の表面積をさらに増大させる。その結果、ろ過精度がより向上する。また、この細繊度部は一本の繊維として存在せず、異形断面複合繊維から枝分かれした状態で存在することが好ましい。細繊度部が太い繊維から枝分かれした状態で存在すると、細繊度部が脱落せず、また、フィルターの圧縮強度が低下しない。あるいは、細繊度部は、第1成分と第2成分とを有する複合形態で存在していることが好ましい。細繊度部が複合形態であると、細繊度部が完全に異形断面複合繊維から分割して1本の繊維となっても(すなわち、細繊度繊維となっても)、第1成分によって他の繊維に熱接着されるため、脱落が生じにくいからである。
【0062】
[筒状フィルター]
以下に、本発明の一実施形態として、不織布であるろ材を芯材の周囲に巻回した筒状フィルターの構成および製造方法を説明する。
一般に、筒状フィルターは、流体が通過する孔を有する管状芯材の周囲にろ材である不織織布が巻回されてなる構成を有する。芯材は、プラスチック製の孔あき筒状体であってよく、あるいは、熱接着性繊維を含む繊維ウェブを加熱しながら芯棒に巻き取ることにより、または当該繊維ウェブを円筒状容器に充填して加熱することにより得られた繊維成形体であってよい。いずれの芯材も、その外周側から内周側、または内周側から外周側に向かって流れる流体の通過を実質的に妨げないものであり、例えば、50cc/cm
2/秒以上、好ましくは80cc/cm
2/秒以上の通気度を有する。
【0063】
あるいは、筒状フィルターは芯材を有していなくてよい。フィルターとして使用し得る限りにおいて、例えば、ろ材である不織布を直接芯棒に巻回し、芯棒を抜き取る方法で製造する方法で製造された筒状フィルターも本発明の一実施形態に含まれる。その場合、芯棒に近い側の不織布が、製造中に加わる圧力および熱等により硬くなって芯材のように、形状を維持する機能等を奏することもある。
【0064】
筒状フィルターは、芯材の周囲にろ材である不織布を所定数巻回させて構成する。不織布の巻回数の上限は、特に制限はなく、最終的に得ようとする筒状フィルターの寸法、芯材の寸法、および不織布の厚さ等によって決定される。例えば、外径が50mm〜100mmであるカートリッジフィルターを得る場合には、上限は100周程度である。
【0065】
巻回作業は、熱を加えながら実施してよい。例えば、予め作製した不織布ではなく繊維ウェブを準備し、複合繊維の第1成分が熱接着する温度で加熱しながら芯材または芯棒の周囲に巻回して、巻回と同時に、又は巻回直前に不織布を作製してよい。
【0066】
筒状フィルターは、前記異形断面複合繊維を含む熱接着不織布が少なくとも1周巻回されている限りにおいて、前記異形断面複合繊維を含まない他の不織布を含んでよい。例えば、芯材に前記異形断面複合繊維を含む熱接着不織布を所定回数巻回した後、他の不織布を所定回数巻回させて筒状フィルターを構成してよく、あるいは他の不織布を芯材に所定回数巻回した後、前記異形断面複合繊維を含む熱接着不織布を所定回数巻回してよい。筒状フィルターは、前記異形断面複合繊維を含む熱接着不織布のみが巻回されてなるものであってよいことはいうまでもない。あるいは、前記異形断面複合繊維を含む熱接着不織布と、他の不織布またはネット状物とを積層し、積層したものを芯材に巻回して筒状フィルターを製造してよい。
【0067】
このようにして、不織布を巻回して筒状体を得た後、必要に応じて筒状体の端面を熱処理して筒状フィルターを得ることができる。また、筒状フィルターは、不織布を巻回して得た筒状体のさらに外側に流体が通過する孔を有する筒状体のカバーを取り付けた構成のものであってもよい。
【0068】
筒状フィルターの寸法は用途に応じて適宜選択され、所望の寸法が得られるように、芯材、不織布の厚さ、および不織布の巻回数等が選択される。例えば、筒状フィルターは、内径が25mm〜35mm程度、外径が35mm〜50mm程度、長さが200mm〜3000mm程度である芯材に、不織布を巻回して、外径が40mm〜80mm程度となるようにしてよい。また、得られた筒状フィルターは所望の長さ(例えば、20mm〜1100mm)にカットしてよい。あるいは、前記のとおり、筒状フィルターは芯材を有さず、巻回された不織布のみで構成されてよく、その場合、筒状フィルターは例えば、内径が20mm〜40mm程度、外径が40mm〜80mm程度の寸法を有してよい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0070】
(異形断面複合繊維の準備)
第2成分がポリプロピレン(融点165℃)、第1成分が高密度ポリエチレン(融点125℃)からなり、第2成分と第1成分が、
図1に示す断面形状になるように配置された4葉異形断面の芯鞘型複合繊維を用意した(繊度2.2dtex、繊維長51mm)。この繊維は、溶融紡糸の際の複合比(容積比)を60/40(第2/第1)として製造した。また、紡糸した繊維は、表面温度が110℃の金属熱ロールを用いて、乾式延伸に付した(延伸倍率3倍)。
この異形断面複合繊維において、L
1は12μm、L
2は10μm、L
3は8.6μm、L
4は5.3μm、L
2/L
1は0.86、L
3/L
1は0.72、L
4/L
1は0.44であった。
【0071】
(円形断面複合繊維1の準備)
第2成分がポリプロピレン(融点165℃)、第1成分が高密度ポリエチレン(融点125℃)からなり、第2成分と第1成分が、同心でともに円形断面となるように配置された芯鞘型複合繊維を用意した(繊度2.2dtex、繊維長51mm)。この繊維は、溶融紡糸の際の複合比(容積比)を60/40(第2/第1)として製造した。また、紡糸した繊維は、表面温度が110℃の金属熱ロールを用いて、乾式延伸に付した(延伸倍率3倍)。
【0072】
(円形断面複合繊維2の準備)
第2成分がポリプロピレン(融点165℃)、第1成分が高密度ポリエチレン(融点125℃)からなり、第2成分と第1成分が、同心でともに円形断面となるように配置された芯鞘型複合繊維を用意した(繊度2.2dtex、繊維長51mm)。この繊維は、溶融紡糸の際の複合比(容積比)を50/50(第2/第1)として製造した。また、紡糸した繊維は、表面温度が110℃の金属熱ロールを用いて、乾式延伸に付した(延伸倍率3倍)。
【0073】
(筒状フィルターの製造)
(実施例1)
異形断面複合繊維をパラレルカード機で開繊して、目付25g/m
2のウェブを作製し、このウェブに熱風貫通式熱処理機で熱処理を施し、繊維同士を第1成分で熱接着させた。ついで、熱接着したウェブ(熱接着不織布)を、第1成分が溶融または軟化している間に、鉄芯の周囲に、外径が65mmになるまで巻回させて、巻き終わりにおいて端部を軽く熱接着させて、筒状フィルターを得た。
【0074】
(比較例1、2)
円形断面複合繊維1、2をそれぞれ用いたことを除いては、実施例1で採用した手順と同じ手順に従って、筒状フィルターを得た。
【0075】
実施例1、比較例1および2の筒状フィルターについて、通水圧損、通気圧損、初期遮断精度、およびろ過寿命をそれぞれ測定した。結果を、
図5〜
図8に示す。測定方法は次のとおりである。
【0076】
[通水圧損]
筒状フィルターに水を通水量0リットル/分〜40リットル/分の範囲で変化させながら通水した際の筒状フィルターの入口と出口の圧力差(圧損(MPa))を測定し、通水量に対する圧損の変化を
図5に示した。
【0077】
[通気圧損]
筒状フィルターに空気を通気量0リットル/分〜1000リットル/分の範囲で変化させながら通気した際の筒状フィルターの入口と出口の圧力差(圧損(MPa))を測定し、通気量に対する圧損の変化を
図6に示した。
【0078】
[初期遮断精度]
JIS Z 8901に準ずる試験用粉体(JIS8種)を水に分散させて濃度50ppmの試験用懸濁液を作製し、試験用懸濁液に含まれる粉体(ダスト)の粒子径別の個数(M)と、筒状フィルターを用いて試験用懸濁液を流量20リットル/分でろ過し、ろ過開始後1分の濾液に含まれるダストの粒子径別の個数(N)とを粒度分布測定機(商品名:マルチサイザーIII型、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて測定した。各粒子径別に下記式に基づいて捕集効率を算出し、
図7に示した。
捕集効率(%)=[(M−N)/M]×100
【0079】
[ろ過寿命]
JIS Z8901に準ずる試験用ダスト(JIS8種)を水に分散させて、濃度50ppmの試験用懸濁液を作成した。次に試験用懸濁液を均一に攪拌しながら筒状フィルターの外周側から内周側中空部へ向かって、40リットル/分の流量で通過させ、この流量を維持するための通液圧力を測定し、
図8に示した。
【0080】
実施例1のフィルターは、比較例1および2のフィルターと比較して、高い通水圧損および通気圧損を示した。これは、実施例1において異形断面複合繊維を使用したために、繊維の表面積の総和が、比較例1および2におけるそれより大きいことによると考えられる。このことは、初期遮断精度を比較することによっても確認される。実施例1の初期遮断精度は、比較例1および2のそれよりも高かった。これは、異形断面複合繊維の表面積が大きいこと、凸部と凸部の間の凹部に粒子が良好に捕捉されること、および凸部の分離により生じた空隙に粒子が良好に捕捉されることによると考えられる。
【0081】
通水圧損および通気圧損が高いにもかかわらず、実施例1のフィルターは、比較例1および2のフィルターよりも高いろ過精度と長いろ過寿命を示した。これは、実施例1のフィルターにおいては、繊維の異形断面形状に起因して、繊維表面積が大きく、凸部と凸部とが接してできる空隙、凹部に由来する空隙等、繊維間空隙が多数形成されており、かつそれらの空隙が熱接着成分である第1成分によって塞がれていないことによると考えられる。実施例1で使用した異形断面複合繊維においては、第1成分が肉厚の薄い鞘成分を形成しているため、繊維同士の交差点における熱接着点の面積が小さく、繊維間空隙を塞ぎにくいと考えられる。
【0082】
比較例1で使用した複合繊維は、第1成分と第2成分の容積比は、実施例1で使用した異形断面複合繊維のそれと同じであるが、断面が円形であるために、第1成分の肉厚が比較的大きく、繊維同士の交差点における熱接着点の面積が大きいと考えられる。そのため、繊維間空隙が塞がれて、ろ過寿命が実施例1のそれよりも短くなっていると考えられる。比較例2は、第1成分の割合が実施例1および比較例1のそれよりも大きい複合繊維を使用して作製したものであるが、通気圧損、通水圧損、初期遮断精度およびろ過寿命はいずれも比較例1のそれらと大差なかった。このことから、複合比(容積比)を50/50(第2/第1)にした異形断面複合繊維を使用して実施例1と同様にして作製した筒状フィルターは、通気圧損、通水圧損、初期遮断精度およびろ過寿命において、実施例1とは大差がないと推察される。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む複合繊維を含み、前記複合繊維の第1成分によって構成繊維間の少なくとも一部が熱接着されている不織布を含むフィルターであって、
前記複合繊維の少なくとも一部は、複合繊維の長さ方向に垂直な面で切断した横断面の断面形状(以下、単に断面形状とも称す)において、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面複合繊維であり、
前記異形断面複合繊維の少なくとも一部が、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、
前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成している、
フィルター。
(態様2)
前記異形断面複合繊維において、少なくとも1つの凸部の少なくとも一部が分離して、細繊度部または細繊度繊維が形成されている、態様1に記載のフィルター。
(態様3)
前記異形断面複合繊維が、第1成分と第2成分とからなり、前記異形断面複合繊維の横断面において、前記第1成分が繊維表面の全部を占める鞘部を構成しており、前記第2成分が芯部を構成している、芯鞘型複合繊維である、態様1または2に記載のフィルター。
(態様4)
前記芯鞘型複合繊維の断面形状において、第1成分の輪郭と第2成分の輪郭とが略相似形である、態様3に記載のフィルター。
(態様5)
前記異形断面複合繊維が、第1成分と第2成分とからなり、
前記異形断面複合繊維の横断面において、前記第2成分の断面形状が、3個以上8個以下の凸部を有する異形断面であり、
前記第2成分の少なくとも一部が、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、
前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成しており、
前記第1成分が前記第2成分の凸部の先端を被覆している、
態様1または2に記載のフィルター。
(態様6)
前記不織布が芯材の周囲に巻回されて筒状のろ過層が形成されている、態様1〜5のいずれか1項に記載のフィルター。
(態様7)
前記不織布がひだ折加工されて、筒状体に収容されている、態様1〜5のいずれか1項に記載のフィルター。
(態様8)
熱可塑性樹脂からなる第1成分と、第1成分の紡糸後の融点よりも高い紡糸後の融点を有する熱可塑性樹脂からなる第2成分とを含む複合繊維であって、複合繊維の長さ方向に垂直な面で切断した横断面の断面形状において、3個以上8個以下の凸部を有し、その繊維表面の少なくとも一部に、前記凸部と凸部との間に形成された、繊維の長さ方向に沿って延びる凹部を1または複数有し、前記凹部のうち少なくとも1つが、繊維の横断面において鋭角を形成している、異形断面複合繊維を含む繊維ウェブを得ること、および
前記繊維ウェブに熱処理を施し、少なくとも前記異形断面複合繊維の前記第1成分によって繊維ウェブを構成する繊維同士を熱接着させて、ろ材となる熱接着不織布を得ること
を含む、フィルターの製造方法。