特許第6173677号(P6173677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173677
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】産業用ロボットの原点位置復帰方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   B25J9/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-247112(P2012-247112)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-34107(P2014-34107A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】61/681,261
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 洋和
(72)【発明者】
【氏名】田辺 智樹
【審査官】 佐々木 一浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−299777(JP,A)
【文献】 特開2008−221428(JP,A)
【文献】 特開昭62−282303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットを原点位置へ復帰させる産業用ロボットの原点位置復帰方法であって、
現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している前記産業用ロボットの仮の現在位置の座標を、前記産業用ロボットの状態に基づいて設定する仮現在位置設定工程と、
前記仮現在位置設定工程後に、前記産業用ロボットを所定位置まで動作させる動作工程と、
前記動作工程後に、前記原点位置へ前記産業用ロボットを自動で復帰させる復帰動作工程とを備え
前記産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、回動可能に連結される複数のアーム部を有しその先端側に前記ハンドが回動可能に連結されるアームと、複数の前記アーム部を回動させるための複数のアーム用モータと、前記ハンドを回動させるためのハンド用モータとを備え、
前記産業用ロボットには、前記産業用ロボットに動作位置を教示するための可搬式の教示操作端末が接続され、
前記仮現在位置設定工程では、オペレータが目視で確認して決めた前記アームに対する前記ハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を前記教示操作端末に入力して、前記ハンドの前記回動中心の仮の現在位置の座標を設定し、
前記動作工程では、前記復帰動作工程における前記産業用ロボットの復帰動作時に前記搬送対象物が収容される収容部と前記ハンドおよび前記搬送対象物とが干渉しない位置まで前記産業用ロボットを動作させることを特徴とする産業用ロボットの原点位置復帰方法。
【請求項2】
前記ハンドは、前記ハンドの回動の軸方向となる上下方向から見たときに、直線的に移動して前記収容部への前記搬送対象物の搬入および前記収容部からの前記搬送対象物の搬出を行い、
前記動作工程では、上下方向から見たときに、前記搬送対象物の搬入時および搬出時の前記ハンドの移動方向に前記ハンドが移動するように、前記産業用ロボットに直線補間動作をさせることを特徴とする請求項記載の産業用ロボットの原点位置復帰方法。
【請求項3】
前記仮現在位置設定工程では、前記ハンドの回動の軸方向となる上下方向に直交する平面において規定される円筒座標系の座標および直交座標系の座標のいずれの座標でも上下方向から見たときの前記ハンドの前記回動中心の仮の現在位置の座標を設定可能となっており、前記円筒座標系の座標または前記直交座標系の座標のいずれかの座標によって上下方向から見たときの前記ハンドの前記回動中心の仮の現在位置の座標が設定されることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボットの原点位置復帰方法。
【請求項4】
前記産業用ロボットは、前記動作工程で前記産業用ロボットを動作させるための操作部材を備え、
前記動作工程では、前記産業用ロボットのオペレータが前記操作部材を操作している間は前記産業用ロボットが動作するとともに、前記オペレータが前記操作部材の操作を停止すると前記産業用ロボットが停止するジョグ操作によって前記産業用ロボットを動作させることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の産業用ロボットの原点位置復帰方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットを原点位置へ復帰させる産業用ロボットの原点位置復帰方法に関する
【背景技術】
【0002】
従来、制御プログラムによって一連の動作を行う産業用ロボットを非常停止位置から原点位置へ復帰させる原点位置復帰方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の原点位置復帰方法では、ロボットコントローラに記録された非常停止時の産業用ロボットの現在位置の座標(現在の状態)と、エンコーダでの検出結果に基づいて取得される非常停止時の産業用ロボットの実際の現在位置の座標とに基づいて、産業用ロボットに所定の動作を行わせて、産業用ロボットを原点位置へ復帰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1に記載の原点位置復帰方法では、自身の現在位置の座標(現在の状態)を把握している産業用ロボットを非常停止位置から原点位置へ復帰させることが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の原点位置復帰方法では、何らかの原因で現在位置の座標がわからなくなった状態で非常停止している産業用ロボットを原点位置へ復帰させることはできない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットを簡易な方法で原点位置へ復帰させることが可能な産業用ロボットの原点位置復帰方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットの原点位置復帰方法は、産業用ロボットを原点位置へ復帰させる産業用ロボットの原点位置復帰方法であって、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットの仮の現在位置の座標を、産業用ロボットの状態に基づいて設定する仮現在位置設定工程と、仮現在位置設定工程後に、産業用ロボットを所定位置まで動作させる動作工程と、動作工程後に、原点位置へ産業用ロボットを自動で復帰させる復帰動作工程とを備え、産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、回動可能に連結される複数のアーム部を有しその先端側にハンドが回動可能に連結されるアームと、複数のアーム部を回動させるための複数のアーム用モータと、ハンドを回動させるためのハンド用モータとを備え、産業用ロボットには、産業用ロボットに動作位置を教示するための可搬式の教示操作端末が接続され、仮現在位置設定工程では、オペレータが目視で確認して決めたアームに対するハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を教示操作端末に入力して、ハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定し、動作工程では、復帰動作工程における産業用ロボットの復帰動作時に搬送対象物が収容される収容部とハンドおよび搬送対象物とが干渉しない位置まで産業用ロボットを動作させることを特徴とする。
【0007】
本発明の産業用ロボットの原点位置復帰方法では、仮現在位置設定工程において、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットの仮の現在位置の座標を設定しているため、設定された仮の現在位置の座標に基づいて、動作工程で、産業用ロボットに適切な動作を行わせることが可能になる。また、本発明では、動作工程において、復帰動作工程における産業用ロボットの復帰動作時に搬送対象物が収容される収容部とハンドおよび搬送対象物とが干渉しない位置まで産業用ロボットを動作させているため、復帰動作工程において、原点位置へ産業用ロボットを安全に自動復帰させることが可能になる。このように、本発明の原点位置復帰方法によれば、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットをオペレータの手動操作といった煩雑な方法で原点位置へ復帰させる場合と比較して、簡易かつ安全に産業用ロボットを原点位置へ復帰させることが可能になる。
【0008】
また、本発明では、産業用ロボットは、搬送対象物が搭載されるハンドと、回動可能に連結される複数のアーム部を有しその先端側にハンドが回動可能に連結されるアームと、複数のアーム部を回動させるための複数のアーム用モータと、ハンドを回動させるためのハンド用モータとを備え、仮現在位置設定工程では、アームに対するハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定し、動作工程では、復帰動作工程における産業用ロボットの復帰動作時に搬送対象物が収容される収容部とハンドおよび搬送対象物とが干渉しない位置まで産業用ロボットを動作させている
【0009】
本発明では、産業用ロボットが複数のアーム用モータとハンド用モータとを備えているため、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットをオペレータの手動操作で原点位置へ復帰させると、その操作が非常に煩雑になるが、本発明では、容易に産業用ロボットを原点位置に復帰させることが可能になる。また、本発明では、仮現在位置設定工程でハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定しているため、動作工程において、ハンドおよび搬送対象物と収容部とが干渉しないように、産業用ロボットを動作させることが可能になる
【0010】
また、本発明では、産業用ロボットには、産業用ロボットに動作位置を教示するための可搬式の教示操作端末が接続され、仮現在位置設定工程では、オペレータが目視で確認して決めたハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を教示操作端末に入力して、ハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定しているそのため、ハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を容易に設定することが可能になる。
【0011】
本発明において、ハンドは、ハンドの回動の軸方向となる上下方向から見たときに、直線的に移動して収容部への搬送対象物の搬入および収容部からの搬送対象物の搬出を行い、動作工程では、上下方向から見たときに、搬送対象物の搬入時および搬出時のハンドの移動方向にハンドが移動するように、産業用ロボットに直線補間動作をさせることが好ましい。このように構成すると、動作工程において、ハンドおよび搬送対象物と収容部とが干渉しないように、産業用ロボットを動作させることが可能になる。
【0012】
本発明において、仮現在位置設定工程では、ハンドの回動の軸方向となる上下方向に直交する平面において規定される円筒座標系の座標および直交座標系の座標のいずれの座標でも上下方向から見たときのハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定可能となっており、円筒座標系の座標または直交座標系の座標のいずれかの座標によって上下方向から見たときのハンドの回動中心の仮の現在位置の座標が設定されることが好ましい。このように構成すると、動作工程において産業用ロボットを動作させやすい座標系の座標で、上下方向から見たときのハンドの回動中心の仮の現在位置の座標を設定することができる。
【0013】
本発明において、産業用ロボットは、動作工程で産業用ロボットを動作させるための操作部材を備え、動作工程では、産業用ロボットのオペレータが操作部材を操作している間は産業用ロボットが動作するとともに、オペレータが操作部材の操作を停止すると産業用ロボットが停止するジョグ操作によって産業用ロボットを動作させることが好ましい。このように構成すると、仮現在位置設定工程で設定された産業用ロボットの仮の現在位置の座標と、停止している産業用ロボットの実際の現在位置の座標とのずれ量が大きくて、動作工程でそのまま産業用ロボットの動作を継続すると、たとえば、収容部とハンドとが干渉するような場合であっても、ジョグ操作を行いながら、仮の現在位置の座標を再設定し直すことで、動作工程における収容部とハンドとの干渉を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の産業用ロボットの原点位置復帰方法によれば、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止している産業用ロボットを簡易な方法で原点位置へ復帰させることが可能になる
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットが有機ELディスプレイの製造システムに組み込まれた状態を示す平面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図3図2に示す産業用ロボットの内部構造を側面から説明するための断面図である。
図4図2に示す産業用ロボットの教示操作端末の正面図である。
図5図1に示すプロセスチャンバーから基板を搬出して他のプロセスチャンバーへ搬入する際の産業用ロボットの動きを説明するための図である。
図6図1に示すプロセスチャンバーへ基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを説明するための図である。
図7図1に示すプロセスチャンバーへ基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを説明するための図である。
図8図1に示すプロセスチャンバーへ基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを説明するための図である。
図9図1に示すプロセスチャンバーへ基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを説明するための図である。
図10図2に示す産業用ロボットが現在位置の座標がわからなくなった状態で非常停止したときの原点位置への復帰過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1が有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれた状態を示す平面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図3は、図2に示す産業用ロボット1の内部構造を側面から説明するための断面図である。図4は、図2に示す産業用ロボット1の教示操作端末19の正面図である。
【0020】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための水平多関節ロボットである。このロボット1は、比較的大型の基板2の搬送に適したロボットである。ロボット1は、図1に示すように、有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれて使用される。
【0021】
製造システム3は、中心に配置されるトランスファーチャンバー4(以下、「チャンバー4」とする。)と、チャンバー4を囲むように配置される複数のプロセスチャンバー5〜10(以下、「チャンバー5〜10」とする。)とを備えている。チャンバー4およびチャンバー5〜10の内部は、真空になっている。チャンバー4の内部には、ロボット1の一部が配置されている。ロボット1を構成する後述のフォーク部21がチャンバー5〜10内に入り込むことで、ロボット1は、チャンバー5〜10間で基板2を搬送する。すなわち、ロボット1は、真空中で基板2を搬送する。チャンバー5〜10には、各種の装置等が配置されており、ロボット1で搬送された基板2が収容される。また、チャンバー5〜10では、基板2に対して各種の処理が行われる。本形態のチャンバー5〜10は、搬送対象物である基板2が収容される収容部である。製造システム3のより具体的な構成については後述する。
【0022】
図2図3に示すように、ロボット1は、基板2が搭載されるハンド13と、ハンド13がその先端側に回動可能に連結されるアーム14と、アーム14の基端側が回動可能に連結される本体部15と、本体部15を昇降させる昇降機構16とを備えている。本体部15および昇降機構16は、略有底円筒状のケース体17の中に収容されている。ケース体17の上端には、円板状に形成されたフランジ18が固定されている。フランジ18には、本体部15の上端側部分が配置される貫通孔が形成されている。また、ロボット1には、図示を省略するロボットコントローラを介して、ロボット1に動作位置を教示するための可搬式の教示操作端末(ティーチングペンダント)19(図4参照)が接続されている。なお、図1図2(A)等では、本体部15、昇降機構16およびケース体17等の図示を省略している。
【0023】
ハンド13およびアーム14は、本体部15の上側に配置されている。また、ハンド13およびアーム14は、フランジ18の上側に配置されている。上述のように、ロボット1の一部は、チャンバー4の内部に配置されている。具体的には、ロボット1の、フランジ18の下端面よりも上側の部分がチャンバー4の内部に配置されている。すなわち、ロボット1の、フランジ18の下端面よりも上側の部分は、真空領域VRの中に配置されている。一方、ロボット1の、フランジ18の下端面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0024】
ハンド13は、アーム14に連結される基部20と、基板2が搭載される4本のフォーク部21とを備えている。フォーク部21は、直線状に形成されている。4本のフォーク部21のうちの2本のフォーク部21は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。この2本のフォーク部21は、基部20から水平方向の一方側へ突出するように基部20に固定されている。残りの2本のフォーク部21は、基部20から水平方向の一方側へ突出する2本のフォーク部21の反対側に向かって基部20から突出するように基部20に固定されている。
【0025】
アーム14は、第1アーム部23と第2アーム部24との2つのアーム部によって構成されている。第1アーム部23および第2アーム部24は、中空状に形成されている。第1アーム部23の基端側は、本体部15に回動可能に連結されている。第1アーム部23の先端側には、第2アーム部24の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部24の先端側には、ハンド13が回動可能に連結されている。アーム14と本体部15との連結部(すなわち、第1アーム部23と本体部15との連結部)は、関節部25となっている。第1アーム部23と第2アーム部24との連結部は、関節部26となっている。アーム14とハンド13との連結部(すなわち、第2アーム部24とハンド13との連結部)は、関節部27となっている。第1アーム部23に対する第2アーム部24の回動中心と本体部15に対する第1アーム部23の回動中心との距離は、第1アーム部23に対する第2アーム部24の回動中心と第2アーム部24に対するハンド13の回動中心との距離と等しくなっている。
【0026】
第1アーム部23は、本体部15から水平方向の一方側へ伸びるように、本体部15に取り付けられている。第1アーム部23には、第1アーム部23が伸びる方向と反対側へ本体部15から伸びるカウンターウエイト28が取り付けられている。第2アーム部24は、第1アーム部23よりも上側に配置されている。また、ハンド13は、第2アーム部24よりも上側に配置されている。
【0027】
中空状に形成される第1アーム部23の内部空間45には、第1アーム部23に対して第2アーム部24を回動させるためのアーム用モータとしてのモータ46と、第2アーム部24に対してハンド13を回動させるためのハンド用モータとしてのモータ47とが配置されている。関節部26は、モータ46の回転を減速して第2アーム部24に伝達する減速機48と、モータ47の回転を減速してハンド13に伝達する減速機49とを備えている。また、関節部26は、中空回転軸50と、中空回転軸50の外周側に、かつ、中空回転軸50と同軸上に配置される中空回転軸51とを備えている。
【0028】
減速機48の入力側には、プーリおよびベルトを介してモータ46が連結されている。減速機48の出力側には、中空回転軸51の下端が固定されている。中空回転軸51の上端は、第2アーム部24の基端側の下面に固定されている。減速機48のケース体は、略円筒状に形成される保持部材に固定されている。この保持部材は、第1アーム部23に固定されるとともに、中空回転軸51の外周側に配置されている。モータ46が回転すると、モータ46の動力が第2アーム部24の基端側に伝達されて、第2アーム部24が回動する。
【0029】
減速機49の入力側には、プーリおよびベルトを介してモータ47が連結されている。減速機49の出力側には、中空回転軸50の下端が固定されている。中空回転軸50の上端には、プーリ60が固定されている。プーリ60は、中空状に形成される第2アーム部24の基端側の内部に配置されている。第2アーム部24の先端側の内部には、プーリ61が配置されている。プーリ61は、第2アーム部24の先端側に回動可能に保持されている。プーリ61の上端面には、ハンド13の基部20の下面が固定されている。プーリ60とプーリ61には、ベルト62が架け渡されている。減速機49のケース体は、略円筒状に形成される保持部材に固定されている。この保持部材は、第1アーム部23に固定されている。モータ47が回転すると、モータ47の動力がハンド13の基部20に伝達されて、ハンド13が回動する。
【0030】
第1アーム部23の内部空間45は、密閉されており、内部空間45の圧力は、大気圧となっている。関節部26には、内部空間45から真空領域VRへの空気の流入を防ぐ磁性流体シール65、66が配置されている。上述のように、モータ46、47は、内部空間45に配置されている。また、減速機48、49は、第1アーム部23の先端側において、内部空間45に配置されている。なお、本形態では、第2アーム部24の内部空間は真空となっている。
【0031】
本体部15には、本体部15に対して第1アーム部23を回動させるためのアーム用モータとしてのモータ31が取り付けられている。また、本体部15は、第1アーム部23の基端側が固定される中空回転軸32と、モータ31の回転を減速して第1アーム部23に伝達する減速機33と、減速機33のケース体を保持するとともに中空回転軸32を回動可能に保持する略円筒状の保持部材34とを備えている。
【0032】
減速機33の入力側には、プーリおよびベルトを介してモータ31が連結されている。減速機33の出力側には、中空回転軸32の下端が固定されている。中空回転軸32の上端には、第1アーム部23の基端側の下面が固定されている。中空回転軸32は、保持部材34の内周側に配置されており、中空回転軸32の外周面と保持部材34の内周面との間には軸受が配置されている。モータ31が回転すると、モータ31の動力が第1アーム部23の基端側に伝達されて、第1アーム部23が回動する。
【0033】
関節部25には、真空領域VRへの空気の流入を防ぐ磁性流体シール35が配置されている。また、関節部25は、真空領域VRへの空気の流入を防ぐためのベローズ36が配置されている。具体的には、磁性流体シール35の外周側であって、かつ、保持部材34の外周側にベローズ36が配置されている。ベローズ36の下端は、保持部材34に固定され、ベローズ36の上端は、フランジ18に固定されている。昇降機構16を構成する後述のモータ40が回転して本体部15が昇降すると、ベローズ36が伸縮する。
【0034】
昇降機構16は、上下方向を軸方向として配置されるネジ部材38と、ネジ部材38に係合するナット部材39と、ネジ部材38を回転させるモータ40とを備えている。ネジ部材38は、ケース体17の底面側に回転可能に取り付けられている。モータ40は、ケース体17の底面側に取り付けられている。ネジ部材38は、プーリおよびベルトを介してモータ40に連結されている。ナット部材39は、所定のブラケットを介して本体部15に取り付けられている。本形態では、モータ40が回転すると、ネジ部材38が回転して、本体部15がナット部材39と一緒に昇降する。なお、昇降機構16は、本体部15を上下方向へ案内するためのガイド軸と、このガイド軸に係合して上下方向へスライドするガイドブロックとを備えている。
【0035】
教示操作端末19は、各種の情報等が表示されるディスプレイ70と、各種の操作を行うための操作ボタン71とを備えている。本形態の教示操作端末19では、オペレータが操作ボタン71を押している間はロボット1が動作するとともに、オペレータが操作ボタン71を押すのをやめると(すなわち、操作ボタン71の操作を停止すると)ロボット1が停止するジョグ操作が可能となっている。
【0036】
(製造システムの構成)
上述のように、製造システム3は、チャンバー4を囲むように配置される複数のチャンバー5〜10を備えている。本形態の製造システム3では、チャンバー4を囲むように6個のチャンバー5〜10が配置されている。以下では、図1において、互いに直交する3つの方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とする。ロボット1は、その上下方向がZ方向と一致するように配置されている。したがって、以下では、Z方向を上下方向とする。また、以下では、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側とする。
【0037】
チャンバー4は、上下方向から見たときの形状が略八角形状となるように形成されている。チャンバー5〜10は、上下方向から見たときの形状が略長方形状となるように形成されており、その側面が、Y方向とZ方向とから構成されるYZ平面またはZ方向とX方向とから構成されるZX平面と平行になるように配置されている。
【0038】
チャンバー5は、チャンバー4の左端に繋がるように配置され、チャンバー6は、チャンバー4の右端に繋がるように配置されている。また、チャンバー7およびチャンバー8は、チャンバー4の後端に繋がるように配置されている。チャンバー7とチャンバー8とは、左右方向で隣接している。本形態では、チャンバー7が左側に配置され、チャンバー8が右側に配置されている。さらに、チャンバー9およびチャンバー10は、チャンバー4の前端に繋がるように配置されている。チャンバー9とチャンバー10とは、左右方向で隣接している。本形態では、チャンバー9が左側に配置され、チャンバー10が右側に配置されている。
【0039】
チャンバー5、6は、上下方向から見たときに、本体部15に対する第1アーム部23の回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線がチャンバー5、6の前後方向の中心位置を通過するように配置されている。チャンバー7、8は、回動中心C1を通過する前後方向に平行な仮想線がチャンバー7、8間の左右方向の中心位置を通過するように配置されている。すなわち、左右方向におけるチャンバー7、8の中心位置は、回動中心C1に対してオフセットしている。同様に、チャンバー9、10は、回動中心C1を通過する前後方向に平行な仮想線がチャンバー9、10間の左右方向の中心位置を通過するように配置されている。すなわち、左右方向におけるチャンバー9、10の中心位置は、回動中心C1に対してオフセットしている。また、左右方向において、チャンバー7とチャンバー9とが同じ位置に配置され、チャンバー8とチャンバー10とが同じ位置に配置されている。
【0040】
(産業用ロボットの概略動作)
図5は、図1に示すプロセスチャンバー5から基板2を搬出してプロセスチャンバー6へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを説明するための図である。図6は、図1に示すプロセスチャンバー7へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを説明するための図である。図7は、図1に示すプロセスチャンバー9へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを説明するための図である。図8は、図1に示すプロセスチャンバー8へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを説明するための図である。図9は、図1に示すプロセスチャンバー10へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを説明するための図である。
【0041】
ロボット1は、モータ31、40、46、47を駆動させて、チャンバー5〜10間で基板2を搬送する。たとえば、図5に示すように、ロボット1は、チャンバー5から基板2を搬出してチャンバー6へ基板2を搬入する。すなわち、ロボット1は、図5(A)に示すように、フォーク部21が左右方向と平行になっている状態で、アーム14を伸ばしてチャンバー5内で基板2を搭載した後、図5(B)に示すように、第1アーム部23と第2アーム部24とが上下方向で重なるまでアーム14を縮めてチャンバー5から基板2を搬出する。その後、ロボット1は、ハンド13を180°回動させてから、アーム14を伸ばして、図5(C)に示すように、チャンバー6へ基板2を搬入する。チャンバー5から基板2を搬出してチャンバー6へ基板2を搬入するときには、上下方向から見ると、第2アーム部24に対するハンド13の回動中心C2は、回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。すなわち、チャンバー5から基板2を搬出するとき、および、チャンバー6へ基板2を搬入するときには、上下方向から見ると、ハンド13は、右方向へ直線的に移動する。
【0042】
また、たとえば、ロボット1は、チャンバー5から搬出された基板2をチャンバー7へ搬入する(図6参照)。このときには、ロボット1は、まず、図6(A)に示すように、アーム14を縮めた状態から、モータ31、46、47を駆動させて、図6(B)に示すように、フォーク部21が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド13の後端側に配置されるように、かつ、左右方向において、回動中心C2と左右方向におけるチャンバー7の中心とが略一致するように、ハンド13、第1アーム部23および第2アーム部24を回動させる。その後、ロボット1は、アーム14を伸ばして、図6(C)に示すように、チャンバー7へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、回動中心C2は、左右方向におけるチャンバー7の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0043】
同様に、ロボット1は、たとえば、チャンバー5から搬出された基板2をチャンバー9へ搬入する(図7参照)。このときには、ロボット1は、まず、図7(A)に示すように、アーム14を縮めた状態から、モータ31、46、47を駆動させて、図7(B)に示すように、フォーク部21が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド13の前端側に配置されるように、かつ、左右方向において、回動中心C2と左右方向におけるチャンバー9の中心とが略一致するように、ハンド13、第1アーム部23および第2アーム部24を回動させる。その後、ロボット1は、アーム14を伸ばして、図7(C)に示すように、チャンバー9へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、回動中心C2は、左右方向におけるチャンバー9の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0044】
また、ロボット1は、たとえば、チャンバー5から搬出された基板2をチャンバー8へ搬入する(図8参照)。このときには、ロボット1は、まず、図8(A)に示すように、アーム14を縮めた状態から、モータ31、46、47を駆動させて、図8(B)に示すように、フォーク部21が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド13の後端側に配置されるように、かつ、左右方向において、回動中心C2と左右方向におけるチャンバー8の中心とが略一致するように、ハンド13、第1アーム部23および第2アーム部24を回動させる。その後、ロボット1は、アーム14を伸ばして、図8(C)に示すように、チャンバー8へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、回動中心C2は、左右方向におけるチャンバー8の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0045】
さらに、ロボット1は、たとえば、チャンバー5から搬出された基板2をチャンバー10へ搬入する(図9参照)。このときには、ロボット1は、まず、図9(A)に示すように、アーム14を縮めた状態から、モータ31、46、47を駆動させて、図9(B)に示すように、フォーク部21が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド13の前端側に配置されるように、かつ、左右方向において、回動中心C2と左右方向におけるチャンバー10の中心とが略一致するように、ハンド13、第1アーム部23および第2アーム部24を回動させる。その後、ロボット1は、アーム14を伸ばして、図9(C)に示すように、チャンバー10へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、回動中心C2は、左右方向におけるチャンバー10の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0046】
基板2の搬出時および搬入時には、ハンド13および第1アーム部23は、本体部15に対する第1アーム部23の回動角度と、第2アーム部24に対するハンド13の回動角度が等しく、かつ、本体部15に対する第1アーム部23の回動方向と、第2アーム部24に対するハンド13の回動方向とが逆方向となるように回動する。すなわち、モータ31、47は、本体部15に対する第1アーム部23の回動角度と、第2アーム部24に対するハンド13の回動角度が等しく、かつ、本体部15に対する第1アーム部23の回動方向と、第2アーム部24に対するハンド13の回動方向とが逆方向となるように回転する。そのため、基板2の搬出時および搬入時におけるハンド13の向きが一定に保たれる。すなわち、チャンバー5、6に対する基板2の搬出時および搬入時には、フォーク部21が左右方向と平行になるようにハンド13の向きが保たれ、チャンバー7〜10に対する基板2の搬出時および搬入時には、フォーク部21が前後方向と平行になるようにハンド13の向きが保たれる。
【0047】
(非常停止した産業用ロボットの原点位置復帰方法)
図10は、図2に示す産業用ロボット1が現在位置の座標がわからなくなった状態で非常停止したときの原点位置への復帰過程を説明するための図である。
【0048】
何らかの原因で、ロボット1が非常停止した場合であって、ロボット1が自身の現在位置の座標(現在の状態)がわからなくなった状態で停止している場合には、以下のようにして、ロボット1を原点位置(基準状態)へ復帰させる。なお、本形態では、チャンバー5、6に対する基板2の搬出時あるいは搬入時にロボット1が非常停止するときには、フォーク部21が左右方向と平行になった状態で、かつ、上下方向から見たときに、回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線上に回動中心C2が配置された状態でロボット1が停止するように、モータ31、46、47が制御される。また、チャンバー7、9に対する基板2の搬入時あるいは搬出時にロボット1が非常停止するときには、フォーク部21が前後方向と平行になった状態で、かつ、上下方向から見たときに、左右方向におけるチャンバー7、9の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上に回動中心C2が配置された状態でロボット1が停止するように、モータ31、46、47が制御される。さらに、チャンバー8、10に対する基板2の搬入時あるいは搬出時にロボット1が非常停止するときには、フォーク部21が前後方向と平行になった状態で、かつ、上下方向から見たときに、左右方向におけるチャンバー8、10の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上に回動中心C2が配置された状態でロボット1が停止するように、モータ31、46、47が制御される。
【0049】
ロボット1が自身の現在位置の座標がわからなくなった状態で非常停止している場合に、ロボット1を原点位置へ復帰させるときには、まず、ロボット1の仮の現在位置の座標を、ロボット1の状態に基づいて設定する(仮現在位置設定工程)。仮現在位置設定工程では、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定する。具体的には、ロボット1を原点位置へ復帰させるオペレータが目視で確認して決めた回動中心C2の仮の現在位置の座標を教示操作端末19に入力して、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定する。すなわち、仮現在位置設定工程では、教示操作端末19を用いて回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定する。本形態の教示操作端末19は、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定するための仮現在位置設定手段である。
【0050】
また、仮現在位置設定工程では、上下方向に直交する平面において規定される円筒座標系の座標、あるいは、上下方向に直交する平面において規定される直交座標系の座標のいずれの座標によっても上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定可能となっており、いずれかの座標によって、上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定される。たとえば、回動中心C1を原点として円筒座標系が規定されており、回動中心C1から回動中心C2までの距離と、回動中心C1と回動中心C2とを結ぶ線と回動中心C1を通過する所定の基準線とのなす角度とに基づいて、上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定される。また、たとえば、回動中心C1を原点として、かつ、直交座標系を構成する一方の座標軸が左右方向と平行になり、他方の座標軸が前後方向と平行になるように直交座標系が規定されており、左右方向における回動中心C1と回動中心C2との距離と、前後方向における回動中心C1と回動中心C2との距離とに基づいて、上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定される。
【0051】
本形態では、回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線がその前後方向の中心位置を通過するように配置されているチャンバー5、6に対する基板2の搬出時あるいは搬入時にロボット1が非常停止した場合には、円筒座標系の座標で上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定される。一方、左右方向において、回動中心C1に対してオフセットしているチャンバー7〜10に対する基板2の搬出時あるいは搬入時にロボット1が非常停止した場合には、直交座標系の座標で上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定される。
【0052】
なお、仮現在位置設定工程において、上下方向から見たときの回動中心C2の仮の現在位置の座標に加え、第2アーム部24に対するハンド13の回動角度の仮の現在位置の座標と、回動中心C2の高さの仮の現在位置の座標とが設定されても良い。これらの設定も、オペレータが目視で確認して決めた仮の現在位置の座標を教示操作端末19に入力することで行われる。また、本形態では、たとえば、ハンド13とチャンバー5〜10とに所定のマークが設けられるとともに、上下方向から見たときに、ハンド13のマークとチャンバー5〜10のマークとが一致するときの回動中心C2の座標が予め規定されており、オペレータが目視で回動中心C2の仮の現在位置の座標を決定する際には、ハンド13のマークとチャンバー5〜10のマークとの位置関係から回動中心C2の仮の現在位置の座標を決定する。あるいは、たとえば、前後左右における回動中心C2の可動範囲端に回動中心C2があるときの回動中心C2の座標が予め規定されており、オペレータが目視で回動中心C2の仮の現在位置の座標を決定する際には、回動中心C2の可動範囲端を基準にして回動中心C2の仮の現在位置の座標を決定する。
【0053】
仮現在位置設定工程で回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定すると、ロボット1を所定位置まで動作させる(動作工程)。動作工程では、後述の復帰動作工程におけるロボット1の復帰動作時にハンド13や基板2とチャンバー5〜10とが干渉しない位置までロボット1を動作させる。たとえば、図10(A)に示すように、ハンド13の左端側がチャンバー5の内部に入っている状態で、ロボット1が非常停止した場合には、動作工程で、図10(B)に示すように、ハンド13の全体がチャンバー5の外側まで移動するように、アーム14を縮める。また、たとえば、図6(C)、図7(C)、図8(C)、図9(C)に示すように、ハンド13の後端側または前端側がチャンバー7〜10の内部に入っている状態で、ロボット1が非常停止した場合には、動作工程で、図6(B)、図7(B)、図8(B)、図9(B)に示すように、ハンド13の全体がチャンバー7〜10の外側まで移動するように、アーム14を縮める。
【0054】
このときには、チャンバー5〜10に対する基板2の搬入時および搬出時のハンド13の移動方向にハンド13が移動するように、ロボット1に直線補間動作をさせる。すなわち、このときには、チャンバー5〜10に対する基板2の搬入時および搬出時の回動中心C2の移動方向に回動中心C2が移動するように、ロボット1に直線補間動作をさせる。また、動作工程では、教示操作端末19の操作ボタン71を用いたジョグ操作によってロボット1を動作させる。本形態の操作ボタン71は、動作工程でロボット1を動作させるための操作部材である。
【0055】
動作工程でロボット1を動作させた後には、原点位置へロボット1を自動で復帰させる(復帰動作工程)。この復帰動作工程では、公知の方法でロボット1の原点位置へ自動で復帰させる。
【0056】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、仮現在位置設定工程において、現在位置の座標がわからなくなった状態で非常停止しているロボット1の回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定しており、ロボット1は、回動中心C2の仮の現在位置の座標を把握することができる。そのため、本形態では、設定された回動中心C2の仮の現在位置の座標に基づいて、動作工程で、第1アーム部23、第2アーム部24およびハンド13を連動させながらロボット1に適切な動作を行わせることができる。すなわち、動作工程において、チャンバー5〜10に対する基板2の搬入時および搬出時のハンド13の移動方向にハンド13が移動するように、ロボット1に直線補間動作をさせることができ、動作工程におけるハンド13および基板2とチャンバー5〜10との干渉を防止することが可能になる。また、本形態では、動作工程において、ロボット1の復帰動作時にハンド13や基板2とチャンバー5〜10とが干渉しない位置までロボット1を動作させているため、復帰動作工程において、原点位置へロボット1を安全に復帰させることが可能になる。
【0057】
このように、本形態では、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止しているロボット1をオペレータの手動操作といった煩雑な方法で原点位置へ復帰させる場合と比較して、簡易かつ安全にロボット1を原点位置へ復帰させることが可能になる。特に本形態では、モータ31が第1アーム部23を回動させ、モータ46が第2アーム部24を回動させ、モータ47がハンド13を回動させているため、現在位置の座標がわからなくなった状態で停止しているロボット1をオペレータの手動操作で原点位置へ復帰させる場合には、その操作が非常に煩雑になるが、本形態では、容易にロボット1を原点位置に復帰させることが可能になる。なお、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定しなくても、教示操作端末19を使って、第1アーム部23、第2アーム部24およびハンド13を個別に少しずつ回動させながら、ロボット1を原点位置へ復帰させることも可能であるが、この場合であっても、その操作は煩雑になる。
【0058】
本形態では、仮現在位置設定工程において、オペレータが目視で確認して決めた回動中心C2の仮の現在位置の座標を教示操作端末19に入力して、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定している。そのため、本形態では、回動中心C2の仮の現在位置の座標を容易に設定することが可能になる。
【0059】
本形態では、仮現在位置設定工程において、円筒座標系の座標あるいは直交座標系の座標のいずれの座標によっても回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定可能となっており、いずれかの座標によって、回動中心C2の仮の現在位置の座標が設定されている。そのため、本形態では、動作工程においてロボット1を動作させやすい座標系の座標で、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定することができる。すなわち、上述のように、回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線がその前後方向の中心位置を通過するように配置されているチャンバー5、6に対する基板2の搬出時あるいは搬入時にロボット1が非常停止した場合には、円筒座標系の座標で回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定することができ、左右方向において、回動中心C1に対してオフセットしているチャンバー7〜10に対する基板2の搬出時あるいは搬入時にロボット1が非常停止した場合には、直交座標系の座標で回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定することができる。
【0060】
本形態では、動作工程において、教示操作端末19の操作ボタン71を用いたジョグ操作によってロボット1を動作させている。そのため、本形態では、仮現在位置設定工程において設定された回動中心C2の仮の現在位置の座標と、停止しているロボット1の回動中心C2の実際の現在位置の座標とのずれ量が大きくて、動作工程でそのままロボット1の動作を継続すると、ハンド13や基板2とチャンバー5〜10とが干渉するような場合であっても、ジョグ操作を行いながら、仮の現在位置の座標を再設定し直すことで、動作工程におけるハンド13や基板2とチャンバー5〜10との干渉を防止することが可能になる。
【0061】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0062】
上述した形態では、仮現在位置設定工程において、回動中心C2の仮の現在位置の座標を教示操作端末19に入力して、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定している。この他にもたとえば、ロボット1を操作するための操作盤に回動中心C2の仮の現在位置の座標を入力して、回動中心C2の仮の現在位置の座標を設定しても良い。この場合の操作盤は、たとえば、オペレータが配置されるロボット1の操作室内に設置されている。
【0063】
上述した形態では、動作工程において、教示操作端末19の操作ボタン71を用いたジョグ操作によってロボット1を動作させている。この他にもたとえば、動作工程において、ロボット1の操作盤に設けられた操作ボタン等を用いたジョグ操作によってロボット1を動作させても良い。また、上述した形態では、動作工程において、ジョグ操作によってロボット1を動作させているが、動作工程において、ロボット1を連続で動作させる自動操作によってロボット1を動作させても良い。
【0064】
上述した形態では、教示操作端末19は、操作ボタン71を備えている。この他にもたとえば、教示操作端末19は、操作ボタン71に代えて操作レバーを備えていても良い。この場合には、たとえば、動作工程において、教示操作端末19の操作レバーを用いたジョグ操作によってロボット1を動作させる。この場合の操作レバーは、動作工程でロボット1を動作させるための操作部材である。
【0065】
上述した形態では、アーム14は、第1アーム部23と第2アーム部24との2個のアーム部によって構成されている。この他にたとえば、アーム14は、3個以上のアーム部によって構成されても良い。この場合には、たとえば、3個以上のアーム部のそれぞれを回動させるためのアーム部と同数のモータが設けられる。また、この場合には、複数のアーム部を回動させるためのモータの数はアーム部の数より少なくても良い。
【0066】
上述した形態では、アーム14の先端側に1個のハンド13が連結されている。この他にもたとえば、アーム14の先端側に2個のハンドが連結されても良い。この場合には、2個のハンドのそれぞれを回動させるための2個のモータが設けられても良いし、2個のハンドを一緒に回動させる1個のモータが設けられても良い。また、アーム14の先端側に3個以上のハンドが連結されても良い。
【0067】
上述した形態では、ロボット1の一部は、真空中に配置されている。この他にもたとえば、ロボット1の全体が真空中に配置されても良いし、ロボット1の全体が大気中に配置されても良い。また、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は有機ELディスプレイ用の基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であっても良いし、半導体ウエハ等であっても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、水平多関節ロボットであるが、本発明の構成が適用される産業用ロボットは、複数のアーム部からなるアームを有する溶接ロボット等の垂直多関節ロボットであっても良い。また、上述した形態では、アーム14の先端側にハンド13が回動可能に連結されているが、アーム14の先端側にエンドエフェクタ等のハンド13以外の構成が連結されても良い。
【符号の説明】
【0068】
1 ロボット(産業用ロボット)
2 基板(ガラス基板、搬送対象物)
5〜10 チャンバー(プロセスチャンバー、収容部)
13 ハンド
14 アーム
19 教示操作端末(仮現在位置設定手段)
23 第1アーム部(アーム部)
24 第2アーム部(アーム部)
31 モータ(アーム用モータ)
46 モータ(アーム用モータ)
47 モータ(ハンド用モータ)
71 操作ボタン(操作部材)
C2 回動中心(アームに対するハンドの回動中心)
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10