(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173709
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】天板の配線出入れ部カバー
(51)【国際特許分類】
A47B 13/00 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
A47B13/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-24805(P2013-24805)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-151075(P2014-151075A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】秋山 かおり
(72)【発明者】
【氏名】橋本 琢磨
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−229945(JP,A)
【文献】
特開平11−346834(JP,A)
【文献】
特開2001−061558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 1/00−41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝状又はスリット状の配線出入れ部が形成された机の天板の上面から凸出する断面外形を備えたカバー体であって、前記配線出入れ部を跨ぐことができる前後幅とその配線出入れ部の一部を覆うことができる長さのカバー体に形成したことを特徴とする天板の配線出入れ部カバー。
【請求項2】
カバー体の下面側に、前記配線出入れ部の前後の縁に当接する当接片を備えた係止具を設け、前記縁に沿ってカバー体を当該配線出入れ部の任意の位置に移動できるようにした請求項1に記載の配線出入れ部カバー。
【請求項3】
カバー体の下端部には、その下端部から連続して形成された略水平な翼状部を備えた請求項1又は2に記載の配線出入れ部カバー。
【請求項4】
カバー体の壁面に、コンセント等の電気接続具を有する接続ターミナルを設けた請求項1〜3のいずれかに記載の配線出入れ部カバー。
【請求項5】
翼状部は、浅い溝状乃至凹状の断面に形成した請求項1〜4のいずれかに記載の配線出入れ部カバー。
【請求項6】
カバー体と翼状部との外面を、織布,不織布などの柔軟なシート材や面状パッド材などの被覆材で覆った請求項1〜5のいずれかに記載の配線出入れ部カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板上に配線が引出したり、天板側から配線を天板下の配線ダクトに導入したりできるように、当該天板に溝やスリット、穴などによる配線出入れ部を備えた天板に当該配線出入れ部の上に載置して有用であり、また小型電子機器用スタンドとしても機能するようにした配線出入れ部カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対面式で着座する天板を有する机では、その中央部に溝乃至はスリット状、或は、長穴状などの配線出入れ部を形成し、当該出入れ部に開閉自在又は着脱自在の蓋やカバーを設けるようにした形態が知られている。なお、配線出入れ部の下には、通常、配線を通したり収容したりする配線ダクトが設けられている。
【0003】
上記の配線出入れ部の中で、対面式のフリーアドレス方式で着座する大型天板を備えた机では、フリーアドレス方式で多人数が各人が夫々にパソコン等の電子端末を机上で使用するのに便利なように、天板の長さ方向に貫通した溝状の配線出入れ部を採用するものが多い。
【0004】
天板の全長に亘り形成された溝状の配線出入れ部では、蓋やカバーが設けられず、溝の全長が、机上に露出したままとなるため、この点で体裁や見映えが良好でないという問題がある。
【0005】
一方、一定長の溝や長穴の長さと幅に合せた仕様で開閉式や着脱式のカバーや蓋を誂えて装着したタイプのものは、その製作手間やコストが無視できないのみならず、複雑な開閉構造や着脱構造によって経年変化や外力などの作用で壊れたり動作トラブルが生じることが問題である。
【0006】
また、従来の蓋やカバーにはコンセントなどを設けたものもあるが、その蓋やカバーは、適用する溝や長穴に合致した構造,形態であるため移動できず、コンセント等の位置が固定されてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−229945号公報
【特許文献2】特開2009−95360号公報
【特許文献3】特開2012−100688号公報
【特許文献4】特許第4427130号
【特許文献5】特許第4244183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明では、特に天板の全長に亘って設けられた溝やスリットによる配線出入れ部に対して、その一部をカバーするように隠すことができると共に、その隠す位置を自由に移動させることができるようにした配線出入れ部カバーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明配線出入れ部カバーの構成は、溝状又はスリット状の配線出入れ部が形成された机の天板の上面から凸出する断面外形を備えたカバー体であって、前記配線出入れ部を跨ぐことができる前後幅とその配線出入れ部の一部を覆うことができる長さのカバー体を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
本発明配線出入れ部カバーにおいて、カバー体の断面外形は、台形状,矩形状,略椀状,山形状など、天板の上面から凸出する形状であればよい。このカバー体には、下面に配線出入れ部の縁に当る当接片を備えた係止具を設け、配線出入れ部の縁に沿って移動可能にして配線出入れ部の任意の位置をカバーすることができる。また、カバー体の下端部には略水平な翼状部を設けることができる。この翼状部はカバー体の一方又は両方の下端部から一体に形成できる。
【0011】
前記カバー体において、壁面には、コンセント等の電気接続具を有する接続ターミナルを設けることができる。この接続ターミナルを壁面の両面又は片面のいずれに設けるか、並びに、一面に複数個の電気接続具を設けるか否かは、適宜選択すればよい。カバーに接続ターミナルが設けられていると、接続タップなどが配線ダクト内に位置しないから、端末機器の接続手間が簡便になる。
【0012】
前記カバー体において、壁面に連続して設けられている翼状部は、断面を浅い溝状乃至略凹状に形成することができる。また、翼状部の裏面には滑り止めシート材を設けることがある。翼状部を浅い溝状など断面略凹状に形成すると、その凹状部の上方に連続した壁面との作用で、充電時などの携帯電話機などの小型端末を立てかけて待機させることができるから、そのような端末が机上で邪魔にならない。
【0013】
本発明配線出入れ部カバーは、そのカバー体と翼状部との外面を、織布や不織布等の柔軟なシート材や面状パッド材、或は、パット材に積層した不織布などの被覆材で覆うことができる。このようにすると前記カバー体と翼状部を形成している金属材や合成樹脂材が持つ硬質で冷たい感触などの材質感を柔らげる効果が得られる。被覆材の採用の際に、そのカラーを選択すれば、見映えの上でも好ましくできる。
【0014】
また、上記構成において係止具は、対向する当接片の間隔を可変にしたものを設けることができる。さらには、間隔可変に代えて当接片の間隔が異なる複数個の係止具を、カバー本体部の下面に取替え可能に設ける構成としてもよい。間隔可変の当接片では、対向当接片をバネを用いて常に最大離間幅となる側に付勢した構成にすると、バネの作用で対向当接片は幅の異なる配線出入れ部であっても、常にその出入れ部の縁に密着できることになる。係止具に上記構成を採ると、幅(前後方向の幅)が異なる配線出入れ部に同じ本発明カバーを適用することができるので、配線出入れ部カバーとしての汎用性が高まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による配線出入れ部カバーは、溝状又はスリット状の配線出入れ部が形成された机の天板の上面から凸出する断面外形を備えたカバー体であって、前記配線出入れ部を跨ぐことができる前後幅とその配線出入れ部の一部を覆うことができる長さのカバー体によって形成したから、天板中央に貫通して設けられた長い溝状の配線出入れ部を体裁が良好になるようにカバーすることができる。
【0016】
また、配線出入れ部を跨いで置くタイプであるから、設置,移動,撤去のいずれにおいても何らかの工具や段取りを全く必要としない。この点で従来の特定の配線出入れ部に合せて形成されて装着される蓋やカバーに比べ、きわめて合理的かつ省力的に取扱うことができる。
【0017】
さらに、この配線出入れ部カバーのカバー体は、断面形状がシンプルゆえに金属板や合成樹脂板などの板材の曲げ加工、或は、押出し等の成型加工により容易に作製可能であるから、従来の配線出入れ部の蓋やカバーに比べ至って簡単な手間,工程により容易に作製することができる。また、このカバー体は、その表面をフェルト等のクッション材を不織布や布地、或は、柔軟合成樹脂シート等の柔軟なシート材で被覆して、配線出入れ部カバーの質感を軟らかい感触に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】本発明配線出入れ部カバーの別例の側端部の拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施形態の例について、図を参照して説明する。
図1において、Aは机の天板の一部、Bは該天板Aの長手方向に沿って形成した溝状の配線出入れ部である。
【0020】
配線出入れ部Bは、図示しないが、机の様式(例えばシングル天板机、対向ダブル天板机など)によって、天板の奥行き方向(前後方向)の一側に沿って設けられたり、天板の奥行き方向の中央部に設けられるが、
図1の出入れ部Bは後者の例で天板の長さ方向全長に亘り設けられたものの一部として示されている。なお、配線出入れ部Bは、図示した溝状のほか、横長穴状のものもあるが、本発明配線出入れ部カバーは適用可能である。
【0021】
図1において、Cは溝状をなす配線出入れ部Bを跨ぐようにして当該出入れ部Bの長さ方向の一部に、そこを跨ぐようにしてその出入れ部Bに配設された本発明配線出入れ部カバーの一例である。
図1〜
図4に示した例では、本発明配線出入れ部カバーC(以下、単に本発明カバーCという)の一例は、断面外形(
図4参照)が大略台形状の本体部1と、該本体部1の両方の下端部から連続して一体に形成された断面が浅い略凹状をなす2つの翼状部2,3とからなるカバー体を主体に形成されている。本発明では、翼状部が一つのカバー体もある。これはシングル天板机の配線出入れ部のカバーとして好適に用いられる。前記カバー体における本体部1の断面外形としては、上記の台形状のほかに、矩形状,略椀状,山形状など、天板Aの上面から凸出する外形のものであってもよい。これらの外形の本体部1にも翼状部2,3を形成することができる。
【0022】
上記カバー体において、2つの翼状部2,3における対向する内面端の距離(長さ)wは、通常、配線出入れ部Bの有する前後幅が40mm〜120mm程度であるため、本発明カバーCにおける前記距離wは、最少40mm〜最大120mm程度の大きさに形成すればよい。また、上記カバー体における本体部1の高さは、前記翼状部2,3がなす距離wの幅に対応して50mm程度が好ましい。この高さは、後で説明する本体部1の傾斜面1b,1cに凭れさせる携帯電話機等の端末の高さに対しても適当と考えられる。
【0023】
本発明において、カバー体を形成する本体部1と翼状部2,3は、次の構成を備えたものである。即ち、本体部1は、その上面1aが断面台形状の上辺状のフラットに形成されていて小物等を載せることができ、上面に連続して形成された2つの傾斜面1b,1cが、端末を凭れさせる支持面と、後述するコンセント等の接続ターミナル等を取付ける接続ターミナルの設置部として形成されている。
【0024】
また、翼状部2,3は、それぞれの手前側の辺が小さい高さで立上げられた小立壁2a,3aに形成されており、この翼状部2,3が形成する前記傾斜面1b,1cの下部と小立壁2a,3a、並びに、これらの面と壁に挟まれた底壁2b,3bによって形成される浅い凹部が、前記傾斜面1b,1cに立てかける端末の滑り止め支持部やメモリや筆記具などの載置部として機能するように形成されている。
【0025】
上記本体部1には、
図1〜
図4に示す実施例では前記翼状部2,3との境界部近傍に側断面の下半側が大略π状をなす係止具4が設けられている。
係止具4は、本発明カバーCを配線出入れ部Bを形成する溝の対向する縁e1,e2に、当該係止具4がそのベース部4aに垂下して備えた対向する当接片4b,4cが当接することにより、当該出入れ部Bに配置した本発明カバーCをその位置に保持するものである。
【0026】
図示した係止具4は、一例として、
図2〜4に例示するように、板材によって形成した平面略H状をなすベース部4aと、該ベース部4aの中心部材を挟む部位から下向きに垂設した対向する舌片状の当接片4b,4cとから形成されており、当接片4b,4cの外面が、配線出入れ部Bの対向した縁e1,e2に、両当接片4b,4cのバネ性を介して当接することにより、この出入れ部Bにマウント(跨設)した本発明カバーCの位置を保持する。なお、平面略H状のベース部4aは、その左右両側部を立上げて本体部1aの断面内形(略台形状)に合致する外形を有する立壁部41aを備えている。
【0027】
前記係止具4は、対向する2つの当接片4b,4cの距離(長さ)を、配線出入れ部Bの異なる幅(前後幅)に合せたものを、幾つか用意すれば、異なる幅の配線出入れ部Bに適用することができる。
【0028】
また、2つの当接片4b,4cの距離を可変にするため、例えば、ベース部4aに対して、当該辺4b,4cをスライド可能に垂下立設すると共に、この当接片4b,4cのスライド幅を常に拡開する側に保持するバネ(図示せず)を立設した当接片4b,4cをベース部4aの間に設けることもできる。この構成にすると、一つの係止具4で幅の異なる配線出入れ部Bに本発明カバーCを用いることができて便利である。
【0029】
係止具4は、
図5に要部を例示したように構成することもできる。すなわち、本体部1の両側端に、その開口端部を閉塞するため上,下に水平な支持壁41c,41dを有する側断面略コ状の立壁部41bを設け、このコ状立壁部41bの下位の支持壁41dに、側面から見て倒立した断面略L状の当接片4dを、その水平辺4fにおいて、ビス止め4gなどの固定手段により止着したものにより、係止具4とするのである。
【0030】
係止具4を、側面コ状の立壁部41bと、倒立した略L状の当接片4dに分離した構成にすると、当接片4dの前後幅(溝の幅に対応)を取替えて変更することにより、溝幅の異なる配線出入れ部Bに対応することができる。
【0031】
図3において、5は本発明カバーCの翼状部2,3の裏面に設けた滑り止め用のウレタンシートなどによるパッチ状をなす滑り止め材である。滑り止め材5は必須の部材ではなく、係止具4の位置保持作用を補完ないし補助するものである。
【0032】
6は、本発明カバーCにおいて、本体部1の傾斜面1b,1cに設けた接続ターミナルで、例えば携帯端末などの充電コンセント6aや電源コンセント6bなどの接続器が設けられている。各ターミナル6の電源線は、図示しないが配線出入れ部Bの下方に配置されている配線ダクト内などに収容されている。接続ターミナル6は、翼状部2,3が本体部1の一方の傾斜面1b又は1cにしか設けられない場合は、翼状部が設けられた側の傾斜面に設けられる。
【0033】
本発明は以上の通りであるから、溝状や長穴状など様々な形態の配線出入れ部に対し、当該出入れ部を上から跨ぐように配置することにより、配線出入れ部のカバーとして機能するから、特に、天板の長さ方向に貫通して形成された溝状の配線出入れ部の一部を体裁よくカバーすることができ、また、様々な配線出入れ部に対しても設置,移動,撤去に特別な工具や段取りを要することなく、それらを容易かつ迅速に実行することができる。しかも、本発明配線出入れ部は、その構造や形態は至ってシンプルであるから容易かつ低価格で作製提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
A 机の天板
B 溝状の配線出入れ部
C 本発明カバー
1 本体部
2,3 翼状部
4 係止具
5 滑り止め材
6 接続ターミナル