(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2枚のフィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して、駆動ロールと従動ロールの一対のラミネートロール間を通過することにより圧着する多層積層フィルムの製造方法において、
前記少なくとも2枚のフィルムのなかの、少なくとも1枚は透明フィルムであり、
前記駆動ロールは、多重弾性ロールであり、
前記従動ロールは、多重弾性ロールであり、
前記各多重弾性ロールは、ロール芯部と、ロール芯部に順次に設けられたゴム硬度の異なる少なくとも2層の弾性層を有することを特徴とする多層積層フィルムの製造方法。
前記駆動ロールおよび従動ロールに用いる少なくとも一方の多重弾性ロールにおいて、当該多重弾性ロールにおける前記少なくとも2層の弾性層のゴム硬度は、ロール芯部の側の弾性層よりも外側の弾性層の方が高いことを特徴とする請求項1記載の多層積層フィルムの製造方法。
前記第1の透明フィルムおよび前記第2の透明フィルムのいずれか少なくとも一方が、透明フィルムの片面に透明導電層を有する透明導電性フィルムであることを特徴とする請求項3記載の多層積層フィルムの製造方法。
前記第3のフィルムが偏光フィルムであり、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムが偏光フィルム用の透明保護フィルムであり、偏光板を製造することを特徴とする請求項5記載の多層積層フィルムの製造方法。
前記駆動ロールと前記従動ロール間のラミネート圧力が0.05MPa以上5MPa以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層積層フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記多層積層フィルムの製造方法において、ラミネート時に発生するフィルム表面のキズとラミネート時に混入する気泡の両方を抑制することができる方法は知られていなかった。
【0008】
本発明は、少なくとも2枚のフィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して、駆動ロールと従動ロールの一対のラミネートロール間を通過することにより圧着する多層積層フィルムの製造方法であって、ラミネート時に発生するフィルム表面のキズとラミネート時に混入する気泡の両方を抑制することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の製造方法より前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、少なくとも2枚のフィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して、駆動ロールと従動ロールの一対のラミネートロール間を通過することにより圧着する多層積層フィルムの製造方法において、
前記少なくとも2枚のフィルムのなかの、少なくとも1枚は透明フィルムであり、
前記駆動ロールは、金属ロールまたは多重弾性ロールであり、
前記従動ロールは、多重弾性ロールであり、
前記各多重弾性ロールは、ロール芯部と、ロール芯部に順次に設けられたゴム硬度の異なる少なくとも2層の弾性層を有することを特徴とする多層積層フィルムの製造方法、に関する。
【0011】
前記多層積層フィルムの製造方法は、前記駆動ロールおよび従動ロールに用いる少なくとも一方の多重弾性ロールにおいて、当該多重弾性ロールにおける前記少なくとも2層の弾性層のゴム硬度は、ロール芯部の側の弾性層よりも外側の弾性層の方が高いことが好ましい。
【0012】
前記多層積層フィルムの製造方法は、前記少なくとも2枚のフィルムが、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムを有することができる。例えば、前記第1の透明フィルムおよび前記第2の透明フィルムの少なくとも一方が、透明フィルムの片面に透明導電層を有する透明導電性フィルムである場合に好適に適用される。
【0013】
また、前記第1の透明フィルムおよび前記第2の透明フィルムの間には、第3のフィルムを用いることができる。例えば、前記第3のフィルムとして偏光フィルムを用い、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて、偏光板を製造する方法に適用することができる。
【0014】
前記多層積層フィルムの製造方法において、前記駆動ロールと前記従動ロール間のラミネート圧力が0.05MPa以上5MPa以下であることが好ましい。
【0015】
前記多層積層フィルムの製造方法において、前記駆動ロールと前記従動ロールの回転速度の差が1%以下であることが好ましい。
【0016】
前記多層積層フィルムの製造方法において、前記金属ロールとしては、鉄ロールまたはステンレスロールが好適に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
従来の多層積層フィルムの製造方法では、例えば、弾性ロールと金属ロールを組み合わせたラミネートロールが用いられていた。弾性ロール(従動ロール)についてはゴム硬度の最適化などが行われている。しかし、ラミネート時には、金属ロール(駆動ロール)の速度と弾性ロール(従動ロール)の材質の相違から、各ロールの回転速度が一致しないために、フィルム表面と各ロールとのマイクロスリップが起こり、そのために得られる多層積層フィルムの表面にキズが発生していた。
【0018】
上記本発明の多層積層フィルムの製造方法では、少なくとも2枚のフィルムのラミネートに、金属ロールまたは多重弾性ロールである駆動ロールと、多重弾性ロールである従動ロールの一対のラミネートロールを用いている。多重弾性ロールは、ゴム硬度の異なる少なくとも2層の弾性層がロール芯部に順次に設けられている。このように、本発明のラミネートロールは、金属ロールまたは多重弾性ロール(駆動ロール)と多重弾性ロール(従動ロール)の組み合わせにより、フィルム表面と各ロールとのマイクロスリップが生じにくく、得られる多層積層フィルム表面のキズの発生を抑制することができる。
【0019】
特に、多重弾性ロールにおける少なくとも2層の弾性層のゴム硬度をロール芯部の側よりも外側の弾性層の方が高くなるように設定した場合には、多重弾性ロールの最表面に高硬度の弾性層が配置される。この場合、金属ロール(駆動ロール)と多重弾性ロール(従動ロール)の組み合わせにおいては、金属ロール(駆動ロール)の最表面(金属)と多重弾性ロール(従動ロール)の最表面(高弾性層)はいずれも硬度が高く、各ロールの回転速度差を小さく抑えることができる。また、多重弾性ロール(駆動ロール)と多重弾性ロール(従動ロール)の組み合わせにおいても、両方の多重弾性ロールの最表面(高弾性層)がいずれも高硬度のため、各ロールの回転速度差を小さく抑えることができる。そのために、フィルム表面と各ロールとのマイクロスリップがより生じにくく、得られる多層積層フィルム表面のキズの発生をより抑制することができる。
【0020】
また、ラミネート時に混入する気泡を抑制するには、駆動ロールからの押し込み量を大きくして、一定値以上の線圧をかけることが有効であることがわかっている。しかし、従来の多層積層フィルムの製造方法に用いていたラミネートロールにおいて、一定値以上の線圧をかけると、マイクロスリップの発生が顕著になりフィルム表面のキズの発生が増大する。一方、フィルム表面のキズの発生を抑制するためラミネート時の押し込み量を小さく調整して線圧を低下させていくと、フィルム表面に発生するキズはなくなるが、気泡の混入が顕著になる。
【0021】
上記本発明のラミネートロールに用いる多重弾性ロール(従動ロール)は、ロール芯部とゴム硬度の異なる少なくとも2層の弾性層を有する。当該少なくとも2層の弾性層により、上記多重弾性ロール(従動ロール)は柔軟性または弾力性を有しており、金属ロールまたは多重弾性ロール(駆動ロール)による押圧接触面が弾性変形(凹む)して、接触面積(ニップ)を増やすことができる。特に、従動ロールとして用いる多重弾性ロールにおける少なくとも2層の弾性層のゴム硬度をロール芯部の側よりも外側の弾性層の方が高くなるように設定した場合には、接触面積(ニップ)を大幅に増やすことができる。そのため、本発明のラミネートロールによれば、線圧を低く設定した場合においても、駆動ロールからの押し込み量を確保することができ、ラミネート時に発生するフィルム表面のキズとラミネート時に混入する気泡の両方を抑制することができる。従動ロールとして、単層の弾性層を有する弾性ロールを用いる場合には、ニップによる線圧で、最表面が変形し潰れてしまうために、ロール全体の長さが変化し、マイクロスリップが発生し、フィルム表面にキズが入る。一方、従動ロールとして、外側に高硬度の弾性層を有する多重弾性ロールを用いる場合には、最表面が高硬度であるために、単層の弾性層を有する弾性ロールの様にニップによる線圧で最表面が変形し潰れることがなく、ロール全体の長さが変化しない。そのため、金属ロールまたは多重弾性ロール(駆動ロール)と多重弾性ロール(従動ロール)が回転を同期するためにマイクロスリップを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の多層積層フィルムの製造方法を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の多層積層フィルムの製造方法の一例を示すものであり、第1のフィルムA1と第2のフィルムA2が、駆動ロール(金属ロールまたは多重弾性ロール)R1と従動ロール(多重弾性ロール)R2の一対のラミネートロール間を通過することにより圧着して、多層積層フィルムLを形成している。
【0025】
図2は、本発明の他の多層積層フィルムの製造方法の一例を示すものであり、第3のフィルムBの両面に第1のフィルムA1と第2のフィルムA2が、駆動ロールR1と従動ロールR2の一対のラミネートロール間を通過することにより圧着して多層積層フィルムLを形成している。
【0026】
本発明では、少なくとも2枚のフィルムを、駆動ロールR1と従動ロールR2の一対のラミネートロールの間を通過することにより圧着させる。前記少なくとも2枚のフィルムのなかの、少なくとも1枚は透明フィルムであり、
図1、2では、少なくとも第1のフィルムA1および第2のフィルムA2のいずれか一方は透明フィルムである。
図1、2では、駆動ロールR1の側から第1のフィルムA1が、従動ロールR2の側からは第2のフィルムA2がそれぞれ搬送される。
図1、
図2に示す、駆動ロールR1と従動ロールR2のニップ点pでは、駆動ロールR1の側からの押し込みによって、従動ロールR2は弾性変形することができる。
【0027】
前記駆動ロールR1として用いられる、金属ロールの材料としては、例えば、鉄、ステンレス、チタン、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。金属ロールの材料としては、費用対効果および耐食性の点から、鉄ロールまたはステンレスロールが好適である。
【0028】
前記駆動ロールR1または従動ロールR2として用いられる、多重弾性ロールは、ロール芯部と、ロール芯部に順次に設けられたゴム硬度の異なる少なくとも2層の弾性層を有する。
図3は、弾性層2(第1弾性層2A、第2弾性層2Bを例示)が2層の場合の多重弾性ロールの断面図であり、ロール芯部1と、ロール芯部1の側から設けられた、第1弾性層2A、第2弾性層2Bを有する。なお、
図3では、弾性層2が2層の場合が例示されているが、弾性層2は、3層以上、4層以上とすることもできる。
【0029】
前記多重弾性ロールにおける、ロール芯部1の材料には、前記例示の金属や樹脂等が用いられ、筒状又は棒状のものが通常用いられる。また、前記少なくとも2層の弾性層2は、例えば、シリコンゴム等のゴム材料または樹脂等の弾性材料により形成される。
【0030】
前記多重弾性ロールにおける、前記少なくとも2層の弾性層2は異なるゴム硬度を有するが、弾性層2に係るゴム硬度は20〜95の範囲から選択するのが好ましい。また、前記少なくとも2層の弾性層2は隣接する各弾性層2のゴム硬度差が10以上になるように設計することが好ましい。前記ゴム硬度差は15以上であるのが好ましく、さらには20以上であるのが好ましい、一方、ゴム硬度差が大きくなりすぎるとゴムとゴムの間の接着性が弱くなり、長期間の使用に耐えられないため前記ゴム硬度差は70以下に設計することが好ましく、さらには60以下であるのが好ましい。なお、前記少なくとも2層の弾性層2のゴム硬度、ゴム硬度差は、少なくとも2枚のフィルム、接着剤層または粘着剤層の種類や厚さに応じて選択することができる。前記ゴム硬度はJIS K−6253(Aタイプ)に基づいて測定した。
【0031】
また、前記多重弾性ロールにおける、前記少なくとも2層の弾性層2のゴム硬度は、ロール芯部1の側よりも外側の方が高くなるように設計することが好ましい。即ち、弾性層2の最外層は高硬度であることが好ましい。弾性層2の最外層のゴム硬度は、例えば、60〜95であるのが好ましく、さらには70〜95であるのが好ましく、さらには80〜95であるのが好ましい。
【0032】
また、
図3のように弾性層2が2層の場合には、前記ゴム硬度差を満足するように設計し、かつ、第1弾性層2Aのゴム硬度を30〜70、第2弾性層(最外層)2Bのゴム硬度を60〜95(好ましくは70〜95)に、それぞれ設計するのが好ましい。さらには、前記第1弾性層2Aのゴム硬度を40〜65、第2弾性層(最外層)2Bのゴム硬度を80〜95に、それぞれ設計するのが好ましい。
【0033】
また、前記多重弾性ロールにおける、前記少なくとも2層の弾性層2の各層の厚さは特に制限されないが、弾性層2の最外層において高硬度を確保することが好ましく、一方、ロール芯部1の側の弾性層2は柔軟性または弾力性を有することが望まれるため、弾性層2の最外層の厚みは、ロール芯部1の側(内側)の弾性層2の厚みよりも相対的に薄くなるように設計(具体的には、最外層:内側=1:1.2〜1:10)することが好ましい。弾性層2の最外層の厚みは、例えば、0.5〜10mm程度であるのが好ましく、さらには、1〜5mmであるのが好ましい。
【0034】
また、
図3のように弾性層2が2層の場合には、第1弾性層2Aの厚みは1〜30mm、第2弾性層(最外層)2Bの厚みを0.5〜10mmに、それぞれ設計するのが好ましい。さらには、前記第1弾性層2Aの厚みは2〜10mm、第2弾性層(最外層)2Bの厚みを1〜5mmに、それぞれ設計するのが好ましい。
【0035】
本発明における、駆動ロール(金属ロールまたは多重弾性ロール)R1と従動ロールR2(多重弾性ロール)の組み合わせは、
i)駆動ロール(金属ロール)R1と従動ロールR2(多重弾性ロール)、
ii)駆動ロール(多重弾性ロール)R1と従動ロールR2(多重弾性ロール)、である。上記ii)の組み合わせにおいて用いる、各多重弾性ロールの各弾性層の設計は同じでもよく、異なっていてもよいが、均等なラミネートにより気泡をなくし、かつよりマイクロスリップを少なくする点からは同じ設計の弾性層を有する多重弾性ロールを用いるのが好ましい。
【0036】
なお、
図1の場合には、駆動ロールR1と従動ロールR2の一対のラミネートロール間では、第1のフィルムA1および第2のフィルムA2を接着剤層または粘着剤層(図示せず)を介して貼り合わせる。また、
図2の場合には、第3のフィルムBの両面において第1のフィルムA1と第2のフィルムA2を接着剤層または粘着剤層(図示せず)を介して貼り合わせる。前記接着剤層または粘着剤層は、第1のフィルムA1または第2のフィルムA2に設けていてもよく、両者の側に設けられていれてもよい。第3のフィルムBを用いる場合には、第3のフィルムBの片面または両面に接着剤層または粘着剤層を設けることができる。なお、接着剤層または粘着剤層は、濃度や粘度を調整した接着剤(溶液)または粘着剤(溶液)とともに、駆動ロールR1と従動ロールR2の一対のロール間を通すことにより圧着することもできる。また接着剤層および粘着剤層は、固形状態での貼り合わせを行うこともできる。
【0037】
前記駆動ロールR1と従動ロールR2の各ロール径、貼り合わせるときのフィルムの搬送速度等は適宜に調整され、また接着剤層または粘着剤層の厚さは適宜調整することができる。
【0038】
前記各ロールの直径としては、直径が小さいほど、各フィルムと接触する面積が小さくなるため、相対的にフィルム面に加えられる圧力が高くなる。そのため、各ロールの直径としては、300mm以下のものを用いることが好ましく、さらには250mm以下のものを用いることがより好ましい。ただし、この直径が小さくなりすぎると、ロールの耐久性が弱くなるために、十分な力を加えられなくなるため、50mm以上のロールを用いることが好ましく、100mm以上のロールを用いることがより好ましい。
【0039】
また、貼り合わせるときの搬送速度は、特に制限されるものではなく、通常、2m/分〜50m/分程度で調整するのが好ましい。
【0040】
また、貼り合わせるときのラミネートロール間のラミネート圧力は、特に制限されず適宜設定される。ラミネート圧力はフィルム表面のキズとラミネート時に混入する気泡を抑制する観点、生産性の点から、0.05MPa以上5MPa以下程度であるのが好ましく、0.1MPa以上4MPa以下がより好ましく、さらには0.5MPa以上3MPa以下が好ましい。ラミネート圧力が0.05MPaより小さいと十分な押圧ができないためフィルム間に気泡が発生する。またラミネート圧力が5MPaより大きいとフィルム表面のキズの発生しやすくなる。ラミネート圧力の測定は、富士フイルム社製の感圧紙「プレスケール」を用いて、当該感圧紙の色変化をコンピュータ画像処理により二値化し、その発色面積と濃度について、作製された圧力標準線の近似式から求められる。
【0041】
<フィルム>
本発明では、少なくとも2枚のフィルムを用いる。フィルムの厚みは特に制限されないが、例えば、1〜300μmであり、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。フィルムは、通常、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。
【0042】
<透明フィルム>
本発明では、少なくとも2枚のフィルムを用いるが、少なくとも1枚は透明フィルムを用いる。透明フィルムとしては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。当該プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリシクロオレフィン、ポリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン等が挙げられる。
【0043】
前記透明フィルムの厚みは特に制限されないが、例えば、15〜300μmであり、15〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。また、少なくとも2枚のフィルムが、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムを有する場合、第1の透明フィルムと第2の透明フィルムの厚みは、同じであってもよく、異なっていてもよい、例えば、薄型フィルムとする場合には、一方のフィルムの厚みを15〜75μm、さらには20〜75μm、さらには23〜50μmの範囲に設置することができる。
【0044】
前記透明フィルムには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、プラズマ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施すことができる。また、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。また、前記透明フィルムには、接着剤層または粘着剤層による貼り合わせ面に易接着剤層を設けることができる。
【0045】
<透明導電性フィルム>
本発明の製造方法は各種の多層積層フィルムの製造に適用できるが、例えば、少なくとも2枚のフィルムとして、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムを有する場合、前記第1の透明フィルムおよび前記第2の透明フィルムの少なくとも一方として、前記透明フィルムの片面に透明導電層を有する透明導電性フィルムを用いて、透明導電積層体を製造することができる。当該透明導電性フィルムは、透明導電層の側がロール側になるよう配置される。また、第1透明フィルムまたは第2の透明フィルムのいずれか一方として透明導電性フィルムを用いる場合には、マイクロスリップを効果的に生じさせない観点から、金属ロール(駆動ロール)の側に透明導電性フィルムを適用するのが好ましい。
【0046】
<透明導電層>
前記透明導電層の構成材料としては、特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物、または酸化インジウム−酸化亜鉛複合酸化物などが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。また、前記第1の透明導電層の構成材料としては、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、フッ素亜鉛酸化物、フッ素インジウム酸化物、アンチモンスズ酸化物、フッ素スズ酸化物、リンスズ酸化物等を用いることができる。その他、前記第1の透明導電層の構成材料としては、ポリチオフェンなどの導電性高分子、カーボンナノチューブなどを使用することができる。
【0047】
前記透明導電層の厚みは特に制限されないが、その表面抵抗を1×10
3Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚さ10nm以上とするのが好ましい。前記厚みは、10〜300nmであることがより好ましく、15〜100nmであることがさらに好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。
【0048】
透明導電層の形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、コーティング法等による透明導電層の形成方法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0049】
<アンダーコート層>
前記透明導電性フィルムは、第1、第2の透明フィルムに、アンダーコート層を介して透明導電層を設けることができる。アンダーコート層は、1層または複数層設けることができる。アンダーコート層は、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。
【0050】
アンダーコート層の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記第1の透明フィルムからのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。なお、アンダーコート層を2層以上設ける場合、各層の厚さは、5〜250nm程度であり、好ましくは10〜250nmである。
【0051】
<偏光板>
また、本発明の多層積層フィルムの製造方法は、例えば、少なくとも2枚のフィルムとして、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムを有する場合、第3のフィルムとして偏光フィルムを用い、第1および第2の透明フィルムとして偏光フィルム用の透明保護フィルムを用いて、偏光板を製造する方法において用いることができる。一方、少なくとも2枚のフィルムとして、透明フィルム(透明保護フィルム)と偏光フィルムを用いて、偏光フィルムの片側にのみ透明保護フィルムが存在する偏光板を製造する方法においても用いることができる。
【0052】
偏光フィルムは、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光フィルムが好適である。これら偏光フィルムの厚さは特に制限されないが、一般的に、5〜80μm程度である。偏光フィルムの厚さは、好ましくは15〜35μmである。偏光フィルムの厚みの厚みが薄すぎると、透明保護フィルムと貼り合わせる際に、ダメージを受けやすくなる。一方、偏光フィルムの厚みが厚すぎると、乾燥効率が悪くなる傾向があり、生産性の点で好ましくない。
【0053】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光フィルムは、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0054】
また、偏光フィルムとしては、例えば、乾式延伸法や、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリマーフィルムに二色性物質を練りこみ、製膜、延伸したようなものでも良いし、一軸方向に配向した液晶をホストとして、そこに二色性染料をゲストにしたようなOタイプのもの(米国特許5,523,863号、特表平3−503322号公報)、二色性のライオトロピック液晶等を用いたEタイプのもの(米国特許6,049,428号)が挙げられる。
【0055】
前記偏光フィルムには、さらに少なくとも1層の各種光学機能層を積層した光学フィルムとして用いることができる。この光学機能層としては、例えば、ハードコート処理層や反射防止処理層、スティッキング防止処理層や、拡散層またはアンチグレア処理層等の表面処理層や、視角補償や光学補償等を目的とした配向液晶層があげられる。
【0056】
<接着剤層または粘着剤層>
前記接着剤層または粘着剤層は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型の各種形態のものが用いられる。上記のように多層積層フィルムとして、透明導電性積層体または偏光板を製造する場合には、透明硬化型接着剤層を好適である。
【0057】
<透明硬化型接着剤層>
透明硬化型接着剤層に形成には、例えば、ラジカル硬化型接着剤が好適に用いられる。ラジカル硬化型接着剤としては、電子線硬化型、紫外線硬化型等の活性エネルギー線硬化型の接着剤を例示できる。特に短時間で硬化可能な、活性エネルギー線硬化型が好ましく、さらには低エネルギーで硬化可能な紫外線硬化型接着剤が好ましい。
【0058】
紫外線硬化型接着剤としては、大きくラジカル重合硬化型接着剤とカチオン重合型接着剤に区分出来る。その他、ラジカル重合硬化型接着剤は熱硬化型接着剤として用いることができる。
【0059】
ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。これら硬化性成分は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。またこれら硬化性成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。
【0060】
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、t−ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、2,2−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1−20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0061】
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2−イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5−ノルボルネン−2−イル−メチル(メタ)アクリレート、3−メチル−2−ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメチル−ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)等が挙げられる。
【0062】
また、前記以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N−エトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー等が挙げられる。また、アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマー等が挙げられる。
【0063】
また、前記ラジカル重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性二重結合を複数個有する化合物を例示することができ、当該化合物は、架橋成分として接着剤成分に混合することもできる。かかる架橋成分になる硬化性成分としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、アロニックスM−220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製)、SR−531(Sartomer社製)、CD−536(Sartomer社製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0064】
ラジカル重合硬化型接着剤は、前記硬化性成分を含むが、前記成分に加えて、硬化のタイプに応じて、ラジカル重合開始剤を添加する。前記接着剤を電子線硬化型で用いる場合には、前記接着剤にはラジカル重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型、熱硬化型で用いる場合には、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤の使用量は硬化性成分100重量部あたり、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは、0.5〜3重量部である。また、ラジカル重合硬化型接着剤には、必要に応じて、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や感度を上がる光増感剤を添加することもできる。光増感剤の使用量は硬化性成分100重量部あたり、通常0.001〜10重量部程度、好ましくは、0.01〜3重量部である。
【0065】
カチオン重合硬化型接着剤の硬化性成分としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物が挙げられる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物等が例として挙げられる。
【0066】
また、透明硬化型接着剤層を形成には、水系の硬化型接着剤として、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、水溶液の塗布乾燥層などとして形成しうるが、その水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒も配合することができる。
【0067】
前記水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤などを用いることが好ましく、ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。またポリビニルアルコール系樹脂としては、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が耐久性を向上させる点からより好ましい。また、ポリビニルアルコール系樹脂に配合できる架橋剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物が好ましく使用できる。例えば、ホウ酸やホウ砂、カルボン酸化合物、アルキルジアミン類;イソシアネート類;エポキシ類;モノアルデヒド類;ジアルデヒド類;アミノ−ホルムアルデヒド樹脂;さらに二価金属、または三価金属の塩およびその酸化物が挙げられる。
【0068】
前記硬化型接着剤層を形成する接着剤は、必要であれば適宜添加剤を含むものであっても良い。添加剤の例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシドで代表される接着促進剤、透明フィルムとの濡れ性を向上させる添加剤、アクリロキシ基化合物や炭化水素系(天然、合成樹脂)などに代表され、機械的強度や加工性などを向上させる添加剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤(金属化合物フィラー以外)、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等の安定剤等が挙げられる。
【0069】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0070】
また、前記透明硬化型接着剤層の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5μm、さらに好ましくは0.3〜4μmである。
【0071】
前記粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0072】
上記のように、上記ラミネートロールにより、第1の透明フィルムおよび第2の透明フィルムを、接着剤層または粘着剤層を介して圧着して貼り合わせ後には、適宜に、硬化処理、乾燥工程がされる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準である。
【0074】
実施例1
<透明導電性フィルム:第1の透明フィルム>
酸化インジウム97%、酸化スズ3%のインジウムスズ酸化物の焼結体ターゲットを備えたスパッタ装置を用いて、ポリエンレンテレフタレートフィルムの片面にインジウムスズ酸化物(ITO)層を形成した。ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは25μmであり、インジウムスズ酸化物層の厚さは22nmであった。
【0075】
<活性エネルギー線硬化型接着剤の調製>
ヒドロキシエチルアクリルアミド30部、メチルアクリレート30部、アロニックスM−220(東亞合成社製)40部、IRGACURE907(チバ・ジャパン社製)1.5部を混合して50℃で1時間撹拌し活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
【0076】
<透明導電性積層体の製造>
次に、上記透明導電性フィルムのITO層を形成していない面に、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物をMCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、厚み1μmになるように塗布した。次いで、前記活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2の透明フィルム)を貼り合わせた。その後、第2の透明フィルム側から、高圧水銀ランプの紫外線(波長365nm)を照射して、接着剤を硬化させて、第1の透明フィルムの片面に透明導電層を有する透明導電性積層体を得た。膜厚は膜厚計(Peacock社製デジタルダイアルゲージDG-205)を用いて測定した。紫外線の積算光量600mJ/cm
2とした。
【0077】
<ラミネートロール>
上記の貼り合わせに際しては、下記の駆動ロールと従動ロールを組み合わせた一対のラミネートロール用いた。
駆動ロール:直径200mmのSUS製のロール。
従動ロール:第1弾性層(厚み5mm,ゴム硬度65のシリコンゴム)および第2弾性層(最表面層;厚み3mm,ゴム硬度90のタイタンゴム)の2層の弾性層を有する直径200mmの多重弾性ロール((株)加貫ロール製作所製)。
図1に示す態様で、駆動ロールの側から第1の透明フィルム(透明導電性フィルム)を、従動ロールの側から第2の透明フィルムを搬送した。ライン速度は、いずれも15m/minとして、ラミネート圧は1.5MPaとした。
【0078】
実施例2〜7
実施例1の<ラミネートロール>において、駆動ロールの種類、ラミネート圧、ライン速度を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層体を製造した。なお、実施例6、7は駆動ロールおよび従動ロールとして、いずれも同じ多重弾性ロールを用いた例である。
【0079】
比較例1〜3
実施例1の<ラミネートロール>において、従動ロールとして、直径200mmのゴムロール(厚み3mm,ゴム硬度80のシリコンゴムが1層)を用い、ラミネート圧、ライン速度を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電性積層体を製造した。
【0080】
実施例8
<偏光子:第3のフィルム>
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に60秒間浸漬して膨潤させた。次いで、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3.5倍まで延伸した。その後、65℃の4重量%のホウ酸水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。延伸後、70℃のオーブンで3分間乾燥を行い、厚さ26μmの偏光子を得た。偏光子の水分率は13.5重量%であった。
【0081】
<透明保護フィルム:第1および第2の透明フィルム>
ラクトン化ポリメチルメタクリレートフィルム(ラクトン化率20%,厚み30μm)を用いた。
【0082】
<偏光板の作成>
上記2枚の透明保護フィルム上に、実施例1と同様の上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を、マイクログラビアコーター(グラビアロール:#700,回転速度175%/ライン速)を用いて、厚さ1μmになるように塗工した接着剤付き透明保護フィルムを得た。次いで、
図2に示す態様で、上記偏光子の両面より、前記接着剤付き透明保護フィルムを実施例1と同様のラミネートロールを用いて同様条件で貼り合わせた。貼り合わせた透明保護フィルム側(両側)から、紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ,照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm
2、積算照射量800/mJ/cm
2(波長380〜440nm)を照射して、接着剤を硬化させて、偏光子の両側に透明保護フィルムを有する偏光板を得た。ライン速度は15m/min、紫外線の積算光量800mJ/cm
2とした。なお、紫外線の照度は、Solatell社製Sola−Checkシステムを使用して測定した。
【0083】
実施例9〜14
実施例6の<ラミネートロール>において、駆動ロールの種類、ラミネート圧、ライン速度を表2に示すように変えたこと以外は実施例8と同様にして、偏光板を製造した。なお、実施例13、14は駆動ロールおよび従動ロールとして、いずれも同じ多重弾性ロールを用いた例である。
【0084】
比較例4〜6
実施例1の<ラミネートロール>において、従動ロールとして、直径200mmのゴムロール(厚み3mm,ゴム硬度80のシリコンゴムが1層)を用い、ラミネート圧、ライン速度を表2に示すように変えたこと以外は実施例8と同様にして、偏光板を製造した。
【0085】
上記透明導電性積層体について以下の評価を行った。結果を表1に示す。また、偏光板について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0086】
<駆動ロールと従動ロールの回転速度の差>
駆動ロールと従動ロールの回転速度の差(%)は、オムロン(株)製ロータリーエンコーダインクリメンタル形E6A2−Cでの測定値により算出した。前記回転速度の差は1%以下であることが好ましく、さらには0.5%以下、さらには0.3%以下であるのが好ましい。
【0087】
<キズ>
得られた透明導電性積層体または偏光板に、暗室内でLEDライトを照射して、透過および反射によって観察されたキズを下記の基準により目視で評価した。
○:キズなし
△:最大長1mm未満のキズが1m
2中に5個以下。
×:最大長1mm以上のキズが1m
2中に5個を超える。
【0088】
<気泡>
得られた透明導電性積層体または偏光板を顕微鏡(10倍)で観察された気泡を下記の基準により評価した。
○:気泡なし。
△:最大長30μm未満の気泡が25cm
2中に5個以下。
×:最大長30μm未満の気泡が25cm
2中に5個を超える。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
実施例では、駆動ロール(金属ロールまたは多重弾性ロール)と従動ロール(多重弾性ロール)を組み合わせた一対のラミネートロール間を用いているため、駆動ロールと従動ロールの回転速度の差を小さく制御することができ、また、ラミネート圧が比較的に小さくても、キズおよび気泡を抑制して透明導電性積層体および偏光板を製造することができる。また、実施例4、7は実施例2に比べて、実施例11、14は実施例9に比べて、ライン速度がアップしてもキズおよび気泡を抑制して透明導電性積層体を効率よく製造することができる。一方、比較例1乃至3、比較例4乃至6では、従来の駆動ロール(金属ロール)と従動ロール(弾性ロールであるゴムロール)を組み合わせた一対のラミネートロール間を用いているため、駆動ロールと従動ロールの回転速度の差を小さく制御することができていない。そのため、比較例1乃至3、比較例4乃至6では、ラミネート圧が比較的に小さくても、キズが生じている。また、比較例2、3、比較例5、6では、比較例1、比較例4に比べてライン速度がアップしているため、回転速度の差も大きくなり、気泡が悪化する傾向がある。