(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2本の補助フレームが共に前記スキャンガイド部に沿って移動可能であり、前記各補助フレームに少なくとも1個の前記回転体が設けられるとともに、前記回転体の合計が3個以上であることを特徴とする請求項2に記載の金属材料の撮像装置。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料内部の組織や偏析状況の観察方法としては、鋼材のサルファープリントに代表されるようなプリント法が知られている。また、サルファープリント以外の方法として、エッチプリント法と呼ばれ、腐食により生成した腐食孔にワセリンを塗布し、全体を研磨することにより発生した金属紛を付着させ、それをテープに写し取り、凝固組織や偏析を写し取る方法が開発されている。
金属材料の偏析状況について定量的に評価する方法としては、サルファープリントやエッチプリントを標準資料と見比べて評点付けする方法や、サルファープリントやエッチプリントを画像解析して定量評価する方法が行われている。標準資料と見比べる方法は官能検査のため個人差等によるばらつきが大きい。画像解析する場合はより定量的な評価が可能であるが、プリント品質に評価結果が大きく左右され、プリント品質のばらつきにより精度が低下することや、プリント作成後にスキャナー等で読取って電子データ化するという作業が必要となることが課題である。また、いずれの場合でも、プリント作業に関わる時間、労力、熟練を要するといった問題は解決されない。
【0003】
上記のようなサルファープリントやエッチプリントの問題点に鑑みて、例えば特許文献1や特許文献2には、金属材料の断面をエッチングし、カメラを用いて金属材料の断面から直接、観察データ(画像)を採取して偏析状況を観察、評価する方法が開示されている。特許文献1には、リニアセンサーカメラと照明を固定し、水平に設置したステージでサンプルを移動させるスキャン方法が開示されている。また、特許文献2には、被測定材の上方でカメラを移動させることにより走査する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラとしては通常ラインセンサカメラが用いられるが、ラインセンサカメラではオートフォーカス機能を搭載することが難しく、固定焦点となる。そのため、ラインセンサカメラと金属材料とを相対移動させて走査するときに、ラインセンサカメラと金属材料の被撮像面とは一定の距離で平行に保たれるようにする必要がある。
【0006】
図10に示すように、連続鋳造で製造された鋳片100を鋳造方向に直角に板状に切断して鋳片サンプル101を採取し、その鋳片サンプル101の片方の断面を被撮像面102とする場合を考える。この場合、鋳片サンプル101の被撮像面102を上向きにし、その上方でラインセンサカメラを水平方向に移動させることにより走査する。
【0007】
しかしながら、鋳片サンプル101は鋳片100からガスカットにより採取されるため、その断面には粗い凹凸が存在する。被撮像面102となる断面は、平面に機械加工した後で腐食液によりエッチングするので比較的平坦度の良い面となる。しかしながら、反対側の断面103は、ガスカットしたままとするのが通常である。そのため、断面103を床に載置すると、被撮像面102が水平でなく傾いてしまい、ラインセンサカメラと鋳片サンプル101の被撮像面102とが平行にならないことがある。鋳片サンプル101において両断面102、103を平行に加工することも考えられるが、その加工の手間や費用が膨大なものとなってしまうため、大量の鋳片100を評価する製鉄業では適用が困難である。
【0008】
また、鋳片サンプル101を採取するときの厚みtが一定でない、例えば前回採取した鋳片サンプル101の厚みと、今回採取した鋳片サンプル101の厚みとに差があることもありえる。このように鋳片サンプル101を採取するときの厚みtが一定でないと、ラインセンサカメラの高さ位置が固定されている場合、ラインセンサカメラと鋳片サンプル101の被撮像面102との距離もばらついてしまう。
【0009】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、撮像手段と金属材料の被撮像面とを一定の距離で平行に保って走査することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の金属材料の撮像装置は、金属材料を照明手段で照明して撮像手段で撮像する撮像装置であって、互いに平行な一対のスキャンガイド部を有するフレームと、前記スキャンガイド部に沿って移動可能で、前記フレームの上方で前記照明手段及び前記撮像手段を保持する保持フレームと、前記金属材料の被撮像面に載せたときに、前記被撮像面が前記撮像手段の合焦面に一致するように、前記フレームに設置された位置決め部材と、該撮像装置を支持するために前記フレームに設けられた昇降可能な支柱とを備え
、前記位置決め部材は、前記スキャンガイド部に沿って移動可能で、前記金属材料の前記被撮像面に載せた後に、前記被撮像面から退避可能である
ことを特徴とする。例えば前記位置決め部材は、前記一対のスキャンガイド部間に架設され、少なくともそのうちの1本が前記スキャンガイド部に沿って移動可能な2本の補助フレームと、前記金属材料の前記被撮像面に載せた後、前記被撮像面から退避可能となるように前記移動可能な補助フレームの下方に設けられた回転体とにより構成されてもよい。さらに、前記2本の補助フレームが共に前記スキャンガイド部に沿って移動可能であり、前記各補助フレームに少なくとも1個の前記回転体が設けられるとともに、前記回転体の合計が3個以上であるようにしてもよい。
また、本発明の金属材料の撮像装置の他の特徴とするところは、前記支柱は3本以上設けられている点にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮像手段と金属材料の被撮像面とを一定の距離で平行に保って走査することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態でも、
図10に示すように、鋳片100を鋳造方向に直角に板状に切断して鋳片サンプル101を採取し、その鋳片サンプル101の片方の断面102を被撮像面とする。
この鋳片サンプル101の被撮像面102をラインセンサカメラで撮像し、その撮像画像を用いて偏析状況を観察、評価するが、その前処理として、鋳片サンプル101の被撮像面102を研磨し、腐食液によりエッチングする。
そして、前処理を施した鋳片サンプル101を、
図1に示すように、被撮像面102が上向きとなるように床51に載置する。鋳片サンプル101は扁平な略矩形状であり、Tが鋳片100の板厚方向、Hが鋳片100の板幅方向となる。なお、本願において「床に載置」とは、床51に直接載置するだけでなく、
図1に示すように床51上の輪木等の台座52に載置する(床51に間接的に載置する)ことも含む意味である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成を示す図であり、(a)が正面図、(b)が平面図である。
撮像装置1は、フレーム2を備える。フレーム2は、鋳片サンプル101よりも大きな矩形状を呈し、互いに平行な一対のスキャンガイド部2a、2bを有する。なお、フレーム2は、互いに平行な一対のスキャンガイド部2a、2bを有するものであれば、その形状等は限定されるものではない。
【0015】
一対のスキャンガイド部2a、2b間には門型の保持フレーム3が架設されており、この保持フレーム3がスキャンガイド部2a、2bに沿って移動可能となっている。保持フレーム3は、フレーム2の上方で撮像手段であるラインセンサカメラ4、及び照明手段である線状照明5をそれぞれ所定の角度で保持する。なお、ここでは一対のスキャンガイド部2a、2bを跨ぐ門型の保持フレーム3を示したが、いずれか一方のスキャンガイド部2a又は2bに移動可能に設けられ、ラインセンサカメラ4及び線状照明5を片持ちする保持フレームでもかまわない。
【0016】
また、一対のスキャンガイド部2a、2b間には2本の補助フレーム6が架設されており、これら2本の補助フレーム6がスキャンガイド部2a、2bに沿って個別に移動可能となっている。
図1では、補助フレーム6とスキャンガイド部2a、2bとの連係構造の図示を省略するが、その具体例は
図2を参照して後述する。
各補助フレーム6の下方には、左右一対の回転体7(車輪或いはボール)が設けられている。スキャンガイド部2a、2bに対する全回転体7の高さ位置は揃えられており、回転体7の最下部がちょうどラインセンサカメラ4が合焦する面(以下、合焦面と称する)の高さ位置となるように設定されている。
本実施形態では、これら補助フレーム6及び回転体7が本発明でいう位置決め具として機能する。
【0017】
図2に示すように、補助フレーム6の一方の端部は、一方のスキャンガイド部2bにいわゆるリニアガイド構造で連係する。具体的には、一方のスキャンガイド部2bの補助フレーム6と向き合う内側面にガイドレール8が設けられており、補助フレーム6のスキャンガイド部2bに向き合う一方の端部にはガイドレール8の上下面を覆うガイド9が設けられている。
図3に示すように、ガイドレール8の上下面に形成された溝10と、ガイド9の上下面の内側との間にボール11が介在し、補助フレーム6を滑らかに移動させることができる。
また、補助フレーム6のスキャンガイド部2aに向き合う他方の端部には、スキャンガイド部2aを上下に挟み込むように配置された車輪12が設けられており、補助フレーム6を滑らかに移動させることができる。
なお、補助フレーム6のスキャンガイド部2aに向き合う他方の端部もスキャンガイド部2bに向き合う一方の端部と同様にリニアガイド構造で連係させるようにしてもよいが、その場合、高い寸法精度が要求され、スキャンガイド部2a、2bにゆがみ等が発生すると補助フレーム6が動きにくくなる。そこで、
図2の例では、補助フレーム6のスキャンガイド部2aに向き合う他方の端部を車輪12を用いてスキャンガイド部2aに連係させることにより、スキャンガイド部2a、2bのゆがみ等を吸収できるようにしている。
【0018】
上述した保持フレーム3と補助フレーム6とは、互いに干渉することなくスキャンガイド部2a、2bに沿って移動可能となっている。
【0019】
図1に説明を戻して、フレーム2の四隅には、撮像装置1を支持するための支柱13が昇降可能に設けられている。各支柱13は、フレーム2の四隅に設けられた、ブロック状の支持部14によって支持される。
図4に示すように、支持部14には、上下に貫通する挿通穴15と、挿通穴15を開放するスリット状の開口部16とが形成されている。挿通穴15に支柱13を挿通させるが、挿通穴15の内径は支柱13の外径よりわずかに大きく、支柱13を昇降させることができる。また、開口部16を横切るようにボルト状の連結部材17が設けられるとともに、この連結部材17を回転させるハンドル18が設けられている。ハンドル18を緩めた状態では支柱13を昇降させることができるが、ハンドル18を締め付けると、連結部材17を介して支持部14を弾性変形させて開口部16の幅を狭くして、すなわち挿通穴15の内径を小さくして、支柱13を固定することができる。
【0020】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る撮像装置1の設置の仕方を説明する。
図5(a)に示すように、支柱13を上昇させた状態で固定し、人手により撮像装置1を持ち上げて、鋳片サンプル101の被撮像面102上に回転体7を載せる。このとき、スキャンガイド部2a、2bが床51に載置された鋳片サンプル101の長手辺に略平行になるようにする。上述したように、回転体7の最下部がちょうどラインセンサカメラ4の合焦面Pの高さ位置となっていることから、
図5(a)に示す状態では、鋳片サンプル101の被撮像面102が合焦面Pに一致した状態となる。例えば鋳片サンプル101の被撮像面102が水平でなく傾いていたとしても、それに合わせるように撮像装置1の全体が傾くことになり、ラインセンサカメラ4と鋳片サンプル101の被撮像面102とが一定の距離で平行に保たれて、被撮像面102が合焦面に一致した状態となるよう位置決めされる。
【0021】
次に、
図5(b)に示すように、支柱13を下降させて床51に当接させた状態で固定し、撮像装置1を支持する。これにより、撮像装置1が自ら立った状態となるので、撮像装置1から手を離すことができる。
【0022】
次に、
図5(c)に示すように、補助フレーム6をスキャンガイド部2a、2bに沿って移動させて、補助フレーム6及び回転体7を鋳片サンプル101の被撮像面102上から退避させる。このように鋳片サンプル101の被撮像面102上で回転体7を転がすので、被撮像面102を疵付けないように回転体7を樹脂製等とするのが好ましい。
【0023】
その後、
図5(d)に示すように、保持フレーム3をスキャンガイド部2a、2bに沿って移動させながら、ラインセンサカメラ4及び線状照明5を用いて鋳片サンプル101の被撮像面102を1ラインずつ撮像することにより、被撮像面102の画像を取得する。上述した位置決めによりラインセンサカメラ4と鋳片サンプル101の被撮像面102とを一定の距離で平行に保って走査することができるので、ここで取得される被撮像面102の撮像画像は焦点の合った撮像画像となる。また、補助フレーム6及び回転体7を鋳片サンプル101の被撮像面102上から退避させているので、補助フレーム6及び回転体7が写り込むことなく、被撮像面102の全面を撮像することができる。
【0024】
以上のように、鋳片サンプル101の被撮像面102が水平でなく傾いていたり、鋳片サンプル101を採取するときの厚みtが一定でなかったりするときでも、ラインセンサカメラ4と鋳片サンプル101の被撮像面102とを一定の距離で平行に保って走査することができる。
【0025】
以下、本発明を適用することによる効果を説明するために、
図6に示すように、ラインセンサカメラ4と鋳片サンプル101の被撮像面102との距離が変化したときに、撮像画像がどのようになるかを示す。
ここでは、被写界深度が±4mmとなる撮像系において、合焦面からのずれを0mmとした場合の撮像画像(
図7(a))、−3mmとした場合の撮像画像(
図7(b))、−8mmとした場合の撮像画像(
図7(c))を示す。なお、
図7に示す撮像画像のサイズは、横28.5mm×縦7.8mmである。
図7(b)に示すように、合焦面からのずれが−3mmであれば、撮像画像に大きな乱れはない。しかしながら、
図7(c)に示すように、合焦面からのずれが−8mmになると、撮像画像の画質が大きく低下し、偏析部の形状もぼやけたものとなって、目視で判定するのが困難になってしまう。
【0026】
また、
図8に示すように、ラインセンサカメラ4と鋳片サンプル101の被撮像面102とが平行からずれたときに、撮像画像がどのようになるかを示す。
ここでは、被写界深度が±4mmとなる撮像系において、合焦面からの傾きを0度とした場合の撮像画像(
図9(a))、3度とした場合の撮像画像(
図9(b))、4.5度とした場合の撮像画像(
図9(c))を示す。なお、
図9に示す撮像画像のサイズは、横33.1mm×縦7.7mmである。
図9(b)に示すように、合焦面からの傾きが3度であれば、撮像画像に大きな乱れはない。しかしながら、
図9(c)に示すように、合焦面からの傾きが4.5度(
図1に示すT方向のサイズが250mmの場合、高さに換算すると20mm程度の差となる)になると、母材部の輝度が低下して、偏析部との差が小さくなると同時に、偏析部内部や周囲の輝度が明るくなる場合が発生する。このような撮像画像に同じ処理を適用した場合には、傾きの有無により偏析部の大きさを異なって認識してしまうことになる。
【0027】
本発明を適用した撮像装置を用いることにより、
図7(a)、
図9(a)に示すように、焦点の合った撮像画像を取得することができるので、正確に偏析状況を観察、評価することができる。
【0028】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
例えば上記実施形態では、4本の支柱13を設けた例を説明したが、3本以上設けられていればよい。
【0029】
また、上記実施形態では、2本の補助フレーム6にそれぞれ2個の回転体7を設けた例を説明したが、3点支持できればよいので、例えばいずれか一方の補助フレーム6に2個の回転体7を、他方の補助フレーム6に1個の回転体7を設けるような形態でもかまわない。すなわち、各補助フレーム6に少なくとも1個の回転体7が設けられるとともに、回転体7の合計が3個以上であればよい。
【0030】
また、上記実施形態では、2本の補助フレーム6が共にスキャンガイド部2a、2bに沿って移動可能であり、被撮像面102から退避可能にした例を説明したが、いずれか一方の補助フレーム6は移動しない形態でもかまわない。例えば鋳片サンプルの
図1に示すH方向の半分だけを撮像するような場合、撮像する側の補助フレーム6は移動可能とし、撮像しない側の補助フレーム6は固定としてもよい。
さらに、2本の補助フレームの両方ともに、移動しない形態でもかまわない。例えば、鋳片サンプルの
図1に示すH方向の両端部は撮像する必要がない場合、2本の補助フレーム6を当該両端部に載せれば、撮像する際に移動する必要はない。移動をする必要がない場合は、各補助フレーム6には回転体を設ける必要はなく、各補助フレーム6を直接鋳片サンプル上に載せればよい。
【0031】
また、上記実施形態では、2本の細長い補助フレーム6を用いた例を説明したが、それに比べて面積の大きな1つの補助フレームを用い、この補助フレームに3個(或いはそれ以上)の回転体を複数点支持できるよう配設してもよい。
図5(a)に示す状態では、人手により撮像装置1が支持されるので、撮像装置1が3個の回転体により自ら立っている必要はない。換言すれば、3個の回転体は、3点支持により鋳片サンプル101の被撮像面102が合焦面Pに一致した状態となるよう位置決めさえできればよい。
さらに、鋳片サンプルの
図1に示すH方向の両端部は撮像する必要がない場合に、この補助フレームを、当該H方向の両端部に載せれば、撮像する際に移動する必要はない。移動をする必要がない場合は、補助フレーム6には回転体を設ける必要はなく、補助フレーム6を直接鋳片サンプル上に載せればよい。