(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分が、カプリル硫酸、カプリル硫酸塩、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸、及びミリスチル硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載される歯磨剤組成物。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤には、通常、洗浄力を高め、更に口腔内での起泡によって使用者に心地よい使用感や清掃感を与える目的で発泡剤を配合することが一般的となっている。発泡剤としては、口腔内への安全性を満たし、高い発泡性を発揮することができ、且つ比較的安価であるという理由で、ラウリル硫酸塩等のアルキル硫酸塩が伝統的に使用されている。
【0003】
歯磨剤組成物の使用感や清掃感は、口内での起泡性と相関することから、消費者は歯磨剤組成物を用いた場合の口内での泡立ちを重視して商品を選択する傾向にある。従って、消費者の嗜好を満足させるために、起泡性や泡の持続性が高められた様々な歯磨剤組成物が開発されており、例えば、ラウリル硫酸塩と、キサンタンガム、アルギン酸塩等の増粘剤とを組合せた、より高い起泡性や泡の持続性を実現させる技術が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。また、口内での豊かな泡立ちは、歯牙や舌に付着した口腔内の汚れを除去し、齲歯の予防や口臭を低減する目的においても有用とされている。しかし、高い洗浄効果を期待してラウリル硫酸塩を高濃度で配合すると、起泡力が高すぎて口内で過剰に発泡するために、却って不快感を生じ、口を漱いだ後も泡が後残りして使用感が低下するという問題があった。
【0004】
一方、歯磨剤組成物に添加される一般的な成分の1つとしてシリカが挙げられる。シリカは研磨作用やきめ細かい気泡を生じる作用を有しており、通常、歯磨剤組成物の刷掃感や清掃感の向上を目的として配合される。しかし、シリカがラウリル硫酸塩の起泡性を抑制する作用を有していることについては知られていない。
【0005】
以上のような背景から、アルキル硫酸塩を従来よりも高い濃度で含有し、高い洗浄力を発揮しながらも、起泡性が抑制されて口内で過剰な発泡が低減されることによって、優れた使用感や清掃感が得られる歯磨剤組成物が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルキル硫酸及び/又はその塩を高濃度で含有しながらも、起泡性が抑制されて口内で適度な泡立ちが得られる歯磨剤組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、歯磨剤として適度な泡立ち量に調整できる成分を探索した結果、アルキル硫酸及び/又はその塩を高濃度(2.5重量%以上)で含有する場合に、モノテルペンを組合せることによって、高い洗浄効果を保持しながら、アルキル硫酸及び/又はその塩に起因する過剰な泡立ちを抑制することができ、優れた使用感を有する歯磨剤組成物が得られることを見出した。また、本発明者らは、このような歯磨剤組成物に更にシリカを配合することによって、より一層起泡が抑制されて歯磨剤組成物の使用感を向上させ得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0009】
項1.(A)炭素数8〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸及び/又はその塩、及び
(B)モノテルペン、
を含み、且つ前記(A)成分の含有量が2.5重量%以上である、歯磨剤組成物。
項2.前記(A)成分が、カプリル硫酸、カプリル硫酸塩、ラウリル硫酸、ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸、及びミリスチル硫酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載される歯磨剤組成物。
項3.前記(B)成分が、メントールである、項1又は2に記載される歯磨剤組成物。
項4.前記(A)成分100重量部に対して、(B)成分を10〜200重量部含む、項1〜3のいずれかに記載される歯磨剤組成物。
項5.更に(C)成分としてシリカを含有する項1〜4のいずれかに記載される歯磨剤組成物。
項6.前記(A)成分100重量部に対して、(C)成分を100〜1000重量部含む、項1〜5のいずれかに記載される歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯磨剤組成物は、2.5重量%以上という比較的高い濃度でアルキル硫酸及び/又はその塩を含有することによって、高い洗浄力を発揮することができ、その一方で、口内において適度な泡立ちとなるように前記アルキル硫酸等の起泡性が抑制されている。従って、本発明の歯磨剤組成物によれば、口内で過剰に発泡して不快感を生じることがなく、優れた使用感と高い洗浄効果を同時に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.歯磨剤組成物
本発明の歯磨剤組成物は、(A)炭素数8〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸及び/又はその塩、及び(B)モノテルペンを含み、且つ、前記(A)成分の含有量が2.5重量%以上であることを特徴とする。以下、本発明の歯磨剤組成物について詳述する。
【0012】
(A)成分
本発明において、(A)成分であるアルキル硫酸を構成するアルキル基の炭素数については、通常8〜20であり、好ましくは10〜16、更に好ましくは12〜14が挙げられる。また、アルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状が挙げられる。アルキル基として具体的には、オクチル基、カプリル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミトイル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0013】
また、(A)成分としてアルキル硫酸塩を使用することもできる。アルキル硫酸塩を使用する場合には、アルキル硫酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられ、より具体的には、アルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸カリウム、アルキル硫酸マグネシウム、アルキル硫酸カルシウム等が例示される。本発明の(A)成分として好ましくはアルカリ金属塩が挙げられ、より具体的にはアルキル硫酸ナトリウムが例示される。
【0014】
更に、アルキル硫酸塩の中でも、好ましくはラウリル硫酸塩及びミリスチル硫酸塩が挙げられ、より好ましくはラウリル硫酸塩、さらに好ましくはラウリル硫酸アルカリ金属塩が挙げられる。本発明においては、ラウリル硫酸ナトリウムが好適な化合物として挙げられる。ラウリル硫酸ナトリウムについては、例えば、第一工業製薬株式会社、東邦化学工業株式会社、花王株式会社等から商業的に入手可能である。また、本発明において、アルキル硫酸及び/又はその塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明の歯磨剤組成物中の(A)成分の含有量は、組成物の総量に対して2.5重量%以上であり、好ましくは2.5〜3.5重量%が挙げられる。このような範囲で(A)成分を含有する歯磨剤組成物は、優れた洗浄効果を発揮することができる。通常、歯磨剤組成物中に2.5重量%以上ものアルキル硫酸及び/又はその塩を配合すると、口内で過剰に起泡するため、却って使用感が低下するが、本発明においては、下記の(B)成分や(C)成分と共に所定量の(A)成分を配合することによって、高い洗浄効果と優れた使用感を両立し得るものである。
【0016】
(B)成分:モノテルペン
テルペンとは、イソプレノイド又はテルペノイドとも称され、通常、イソプレン単位(炭素数5)が複数個結合した化合物である。モノテルペンは、2個のイソプレン単位を含む構造を有している。
【0017】
本発明の(B)成分として、具体的には、リモネン、メントン、ピネン、メントール、ゲラニオール、リナロール、チモール、ボルネオール、ペリルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、カンフル、シネオール、アネトール等が例示され、好ましくはメントールが挙げられる。また、モノテルペンが光学異性体を有する場合、d体、l体、dl体のいずれを用いることもできる。メントールについては、例えば、東洋薄荷工業株式会社、長岡実業株式会社等から商業的に入手可能である。
【0018】
また、(B)成分としてモノテルペンを含む精油を使用することもできる。モノテルペンを含む精油としては、特に制限されないが、例えば、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油、ハッカ白油、ベルガモット油、シソ油、ユーカリ油、レモン油、ローズ油、ローズウッド油等が挙げられる。
【0019】
本発明において、モノテルペンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
また、本発明の歯磨剤組成物中の(B)成分の配合割合としては、前記(A)成分であるアルキル硫酸及び/又はその塩100重量部に対して10〜200重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜200重量部、更に好ましくは50〜200重量部が挙げられる。このような配合割合でモノテルペンを配合することにより、過剰な起泡を抑制することができ、一層使用感に優れた歯磨剤組成物を得ることができる。
【0021】
(C)成分:シリカ
本発明の歯磨剤組成物は、上記(A)及び(B)成分に加え、(C)成分としてシリカを含有してもよい。本発明の歯磨剤組成物において、シリカを配合することによって、更に(A)成分による過剰な起泡を抑制することができ、より一層優れた使用感を実現することができる。
【0022】
シリカとは、二酸化ケイ素又は二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。本発明の(C)成分として、具体的には、沈降性シリカ、火成性シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、チタン結合性シリカ等が挙げられる。本発明においては、これらのいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においてシリカは、その製造方法や、微量成分の種類等に制限なく使用することができる。シリカの製造方法としては、例えば湿式法、沈降法、ゲル法等が挙げられる。
【0023】
また、(C)成分として使用されるシリカの平均粒子径についても、特に限定されず、通常歯磨剤組成物中に配合されるシリカの一次粒子の大きさに基づいて公知のものから適宜選択すればよいが、例えば、一次粒子の平均粒子径が4〜12μm、好ましくは7〜10μmのものが挙げられる。ここで、平均粒子径は、レーザー解析散乱法により測定された平均の値を指す。シリカについては、例えば、DSL.ジャパン株式会社、富士シリシア化学株式会社等から商業的に入手可能である。
【0024】
本発明の歯磨剤組成物中の(C)成分の配合割合としては、例えば、前記(A)成分100重量部に対して、100〜1000重量部、好ましくは100〜800重量部、更に好ましくは165〜670重量部が挙げられる。このような範囲でシリカを配合することにより、更に使用感に優れた歯磨剤組成物とすることができる。
【0025】
好ましい態様
本発明の歯磨剤組成物の剤型は特に限定されず、粉末状、液状、ゲル状等の公知の剤型から適宜選択することができる。また、液状の剤型については、原液のまま使用するタイプであってもよく、濃縮タイプであって使用時に希釈して用いるタイプであってもよい。本発明の歯磨剤組成物の剤型としてより具体的には、例えば、粉歯磨剤、練歯磨剤、ジェル歯磨剤、液体歯磨剤等が挙げられる。特に、練歯磨剤及びジェル歯磨剤においては、起泡性と洗浄効果感の相関が強く、過剰な起泡が抑制された場合、その差異を敏感に実感することができるため、練歯磨剤及びジェル歯磨剤は本発明における好適な剤型として挙げられる。
【0026】
上記各成分を含む本発明の歯磨剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、歯磨剤組成物に通常配合され得る各種、研磨剤、発泡剤、香料、甘味剤、増粘剤、pH調整剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤等の添加剤、薬理活性成分、溶剤等を添加し、従来公知の手法に従って所望の剤型に調製することができる。
【0027】
研磨剤としては、歯磨剤組成物に一般的に使用される種々の研磨剤を配合することができ、特に限定されないが、例えば、第一リン酸カルシウム、第ニリン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、不溶性メタリン酸ナトリウム、第三リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト等が挙げられる。
【0028】
発泡剤としては、本発明の(A)成分であるアルキル硫酸及び/又はその塩以外のアニオン界面活性剤や、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を配合することができる。より具体的には、アニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が挙げられる。本発明の歯磨剤組成物中の(A)成分以外の界面活性剤の配合量は、組成物の総量に対して2.5重量%以下、好ましくは2重量%以下であることが望ましい。
【0029】
増粘剤としては、例えばキサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0030】
香料としては、上記(B)成分以外の香料成分、精油等を使用することができ、例えば、l−カルボン、シンナミックアルデヒド、オレンジオイル、メチルサリシレート、オイゲノール、メンチルアセテート、スピラントール、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分;ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油が挙げられる。また、例えば、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーを用いることもできる。
【0031】
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームK、ステビオサイド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0032】
湿潤剤としては、例えば、ソルビット、グリセリン、濃グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0033】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。本発明の歯磨剤組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば歯磨剤組成物10gを25℃25mLの水に溶解させた場合のpHの範囲として、pH4〜9が挙げられる。本発明の歯磨剤組成物のpHは、必要に応じて前記pH調整剤を使用して当該範囲に調整され得る。
【0034】
着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0035】
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0036】
薬理活性成分としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤;トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム塩等の抗炎症剤;アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム等の酵素;塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤などが挙げられ、これらを薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
【0037】
溶剤としては、例えば、エタノールやイソプロピルアルコール等を使用することができる。
【0038】
本発明の歯磨剤組成物中の任意成分の含有量としては、配合される各成分の量、担体、添加剤の種類等に応じて適宜設定され得るが、総量として1〜80重量%が挙げられる。
【0039】
また、本発明の歯磨剤組成物は、薬理学的に許容される従来公知の担体を含んでいてもよい。このような担体としては、例えば水(イオン交換水、蒸留水、精製水等)、生理食塩水等の水性担体や、高級脂肪酸、植物油、動物油、シリコーン油類、金属石鹸等の油性担体が挙げられる。本発明において、これらの担体の含有量は、歯磨剤組成物において上記(A)及び(B)成分と、その他の任意成分以外の残部に相当するように調整される。
【0040】
本発明の歯磨剤組成物の適用量は特に限定されないが、例えば、練歯磨剤の場合であれば0.2〜1gが挙げられ、液体歯磨剤の場合であれば5〜20mLが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例等を示し、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
[起泡力の評価]
(i)発泡量
下表1〜6に示される歯磨剤組成物を室温(約25℃)で調製した。まず(A)成分を精製水(約25℃)に溶解させ、この混合液に、(B)成分をヒマシ油に乳化させた混合液、濃グリセリンにキサンタンガムを拡散させた混合液、(C)シリカを順次混ぜ合わせた。得られた歯磨剤組成物10gに対して精製水(約25℃)60gを加えよく懸濁し、試料溶液とした。試料溶液60mLをメスシリンダーにとり、ホモジェナイザー(System POLYTRON PT−K)の攪拌翼を液面から約3分の2の位置に設置した。室温(約25℃)において回転速度約1500rpmで30秒間回転させた後、攪拌翼が停止して泡沫が安定したとき(約5秒後)に、泡部分の最上部のメスシリンダーの目盛り(mL)を測定した。下記数式1〜3に従って、発泡量、発泡減少量(mL)、発泡減少率(%)を算出した。なお、数式中「コントロールの発泡量」は、各実施例に対応する比較例1〜3の発泡量を指す。
【0043】
<数式1>
発泡量(mL)=泡部分の最上部の目盛−液部分(60mL)
<数式2>
発泡減少量(mL)=発泡量−コントロールの発泡量
<数式3>
発泡減少率(%)=発泡減少量/コントロールの発泡量×100
【0044】
(ii)官能評価
歯磨剤組成物0.5gをパネラーが口に含み、歯ブラシを用いてブラッシングを1分間行い、口内での泡立ち感について評価した。評価は以下の基準に従って行った。
× 口内での泡立ちが過剰で不快感を生じる。
○ 泡立ちの低減効果を十分に感じられ、適度な泡立ちとなっている。
【0045】
[洗浄力の評価]
歯磨剤組成物5gを15gの精製水に溶解し、200mL容のビーカー内において、市販の歯ブラシを用いて泡立たせた。JIS K3362に基いて擬似汚垢を作成し、擬似汚垢をスライドガラスに付着させた。擬似汚垢が付着したスライドガラスを、前記歯磨剤組成物で作成した泡に5分間浸した後、水で、約10秒間すすぎ、泡を洗い流した。残った擬似汚垢の重量から、洗浄力を評価した。下記数式4に従って、洗浄力を算出し、50%以上汚れが残っているものを×、50%未満のものを○とした。
【0046】
<数式4>
洗浄力(%)=洗浄前後の擬似汚垢の付着量の差(g)/洗浄前の擬似汚垢の付着量(g)×100
【0047】
結果を下表1〜6に示す。
なお、本試験に用いた原料は以下のとおりである。
ラウリル硫酸ナトリウム(モノゲンY―500):第一工業製薬株式会社
l−メントール:長岡実業株式会社
シリカ(サイロピュア35):富士シリシア化学株式会社
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示されるように、ラウリル硫酸塩が2重量%の場合は、起泡力は良好であるものの、洗浄力が不十分であった(参考例1)。また、結果より、ラウリル硫酸ナトリウムを2重量%含む歯磨剤組成物では、口内に含んだ際に不快感を生じるほどの過剰な泡立ちが起こらなかった。更に、ラウリル硫酸ナトリウムに加えてメントールを配合した場合(参考例2〜4)であっても、泡立ちを低減させる効果は得られなかった。
【0050】
【表2】
【0051】
ラウリル硫酸ナトリウムを2.5重量%以上含む歯磨剤は、洗浄力には優れているものの、不快感を生じるほどの泡立ちが現れた。特に、ラウリル硫酸ナトリウムを3重量%(比較例2)〜3.5重量%(比較例3)含有する場合に、過剰な起泡による不快感が顕著であった。
【0052】
【表3】
【0053】
ラウリル硫酸ナトリウムを2.5重量%含む歯磨剤組成物(比較例1)は、過剰に発泡して口内に不快感を生じるのに対し、ラウリル硫酸ナトリウムとメントールとを含有する歯磨剤組成物(実施例1〜4)は、表3に示されるように、ラウリル硫酸ナトリウムの優れた洗浄効果を保持しながらも泡立ちが適度に低減され、良好な泡立ちを示し、優れた使用感が得られた。
【0054】
【表4】
【0055】
表4に示されるように、不快感を生じるほどの過剰な泡立ちを呈する量(3重量%)のラウリル硫酸ナトリウムを含む歯磨剤組成物(比較例2)に、メントールを組合せて配合することにより、満足のいく洗浄力を保持しながら、発泡量の減少が実現された(実施例5〜11)。また、実施例5〜11の歯磨剤組成物について起泡力の官能評価を行ったところ、発泡量が減少し、比較例2に比べて泡立ちによる不快感が解消された。また、ラウリル硫酸ナトリウム100重量部に対するメントールの配合割合が27〜167重量部である場合には、発泡量の減少率が20%以上となり(実施例6〜11)、特に、ラウリル硫酸ナトリウム100重量部に対するメントールの配合割合が67〜167重量部である場合には、発泡量の減少率が約30%となり、より一層優れた起泡力の抑制が実現された(実施例9〜11)。
【0056】
【表5】
【0057】
表5に示されるように、更に多量(3.5重量%)のラウリル硫酸ナトリウム含有する歯磨剤組成物(比較例3)においても、メントールを組合せて配合することにより、適度な発泡と洗浄力を有する歯磨剤組成物が得られた(実施例12〜16)。また、実施例12〜16の歯磨剤組成物の起泡力について官能評価を行ったところ、発泡量が低減され、比較例3に比べて泡立ちによる不快感が解消された。特に、ラウリル硫酸ナトリウム100重量部に対するメントールの配合割合が33〜67重量部である場合には、発泡量の減少率が30%以上となり、更に優れた起泡力の抑制が実現された(実施例14〜16)。特に、メントールの配合割合が33重量部以上である場合、発泡量の減少率が40%以上となり、起泡力の抑制効果が顕著であることが示された(実施例14及び15)。
【0058】
【表6】
【0059】
表6より、過剰な泡立ちを生じる量(3重量%)のラウリル硫酸ナトリウムを含む歯磨剤組成物(比較例2)であっても、メントールに加えて、更にシリカを含有する歯磨剤組成物(実施例17〜19)は、シリカを含まないもの(実施例8)と比較すると、より一層顕著に起泡力の抑制作用を有することが示された。
【0060】
下記表7に歯磨剤の処方例を示す。これらの歯磨剤の調製は、(A)成分、水、ソルビット液を混合し、この混合液に、別途混合しておいた(B)成分及びメチルパラベンをPOE(80)硬化ヒマシ油に乳化させた混合液、濃グリセリンにキサンタンガム及び塩化セチルピリジニウムを拡散させた混合液、サッカリンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、フッ化ナトリウム、(C)成分を順次加えて混ぜ合わせることにより行った。
【表7】
【0061】
以上のいずれの処方の歯磨剤組成物も、高い洗浄効果を保持しながら、ラウリル硫酸ナトリウムに起因する過剰な泡立ちを抑制することができ、優れた使用感が得られた。また、シリカを配合することによって、より一層起泡が抑制されて歯磨剤組成物の使用感を向上させることができていた。