特許第6173744号(P6173744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6173744急冷液の接線方向注入を備えた急冷装置を有する触媒反応器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173744
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】急冷液の接線方向注入を備えた急冷装置を有する触媒反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/04 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   B01J8/04 311Z
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-76508(P2013-76508)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-223862(P2013-223862A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】1201009
(32)【優先日】2012年4月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック オージエ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ボアイエ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル スヴェツィア
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−104588(JP,A)
【文献】 特開2004−337853(JP,A)
【文献】 特表2009−535197(JP,A)
【文献】 特表2002−532246(JP,A)
【文献】 特表平09−509611(JP,A)
【文献】 実開昭62−194432(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/128859(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324464(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0187086(US,A1)
【文献】 米国特許第03592612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/04
C10G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(1)を含む触媒反応器であり、該筐体(1)は、1〜10mの径を有する垂直円筒形状であって、固体触媒の少なくとも2つの床(2;11)を含み、該2つの床(2;11)は中間帯域によって分離され、該中間帯域はコレクタ板(6)を含み、該コレクタ板(6)は、コレクタ板(6)の下方に配置された急冷ボックス(7)と協働し、反応器は急冷流体を注入するためのノズル(5)を含む、該反応器において、ノズル(5)は、コレクタ板(6)の上方の中間帯域に位置する収集領域(4)内に配置されていること、注入ノズル(5)は、収集領域内に排出する単一のオリフィスを含むチューブからなり、オリフィスはチューブの端部に位置すること、筐体(1)の側壁内面と注入ノズル(5)のオリフィスとの間の最大距離は0〜40cmの範囲内であること、かつ、注入ノズル(5)の端部は、チューブ状部を含み、該チューブ状部は、急冷流体を収集領域(4)内に実質的に水平な方向に注入し、かつ、前記チューブ状部のレベルにおいて、筐体(1)の壁に対する接線方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成すように構成されていることを特徴とする触媒反応器。
【請求項2】
ノズル(5)は、筐体(1)の壁に排出し、水平方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成す方向に流体を注入することを特徴とする請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
注入ノズル(5)の端部は、ノズルのオリフィスのレベルにおいて筐体(1)の壁に対する接線方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度(θ)を成すストレートチューブ状部からなることを特徴とする請求項1または2に記載の反応器。
【請求項4】
ストレートチューブ状部は、水平方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成すことを特徴とする請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
ノズル(5)は、収集領域(4)において測定される5〜50cmの範囲内の長さを有するチューブを形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の反応器。
【請求項6】
ノズル(5)は、筐体から30cm未満の距離、かつコレクタ板(6)から20cm未満の距離に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の反応器。
【請求項7】
急冷ボックス(7)の下方に配置された、気体および液体のための分配器板(9)を含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の反応器。
【請求項8】
急冷ボックス(7)と分配器板(9)との間に配置された有孔板(8)を含む、請求項7に記載の反応器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の反応器を配備する方法であって、少なくとも70体積%の液体を含む流体が、前記ノズル(5)を介して注入されることを特徴とする方法。
【請求項10】
流体は、前記ノズル(5)を介して、1〜15m/sの範囲内の速度で注入される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の反応器を得る方法であって、旧来のノズルを注入ノズル(5)と置き換えることによって既存の反応器が改良され、該注入ノズル(5)の端部は、チューブ状部を含み、該チューブ状部は、流体を収集領域に実質的に水平な方向に注入しかつ該チューブ状部において筐体の壁に対する接線方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成すように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素供給原料の水素化処理操作において用いられる、固定床タイプの触媒反応器の分野に関する。本発明は、急冷流の反応器への注入のためのシステムを記載する。
【0002】
触媒反応器は、特に石油および石油化学産業において、水素化処理によって炭化水素流出物を処理するために用いられている。そのような反応は、水素化、水素化脱硫、水素化脱窒、水素化分解、または水素化脱芳香族の反応において、炭素含有化合物を水素と反応させる。
【0003】
触媒反応器は、一般的に、円筒形状の筐体からなり、この筐体は、1つ以上の触媒床、すなわち、固体の床を有し、このような触媒床は、例えば、押出物または球状の形状を有し、水素化処理反応を触媒するように佐用する。反応器は、塔頂で、炭化水素流出物と水素とからなる反応流体を供給される。
【0004】
精製および石油化学加工処理において行われる水素化処理反応が発熱性の性質を有するため、固体触媒の体積をいくつかの床に分割すること、および、反応媒体を冷却しかつ反応器に反応物質を供給するために冷温流体を注入することが必要である。注入される流体は、その用途に応じて、液体、一般に炭化水素留分、あるいは気体、例えば水素であってよい。冷温流体は、急冷ボックスと称される装置において反応器に導入される。急冷ボックスの技術は、主に、上方の床からの高温流体を、注入された冷温流体と混合することを目的とする。一旦流体が混合されたら、それらは、分配装置によって反応器の断面(section)上に再分配された後に、分配板の下方に位置する触媒床中に浸透する。
【0005】
特許文献1〜2には、高温流体を収集し、冷温流体を、注入ストレートパイプを介して、コレクタ板の真上に位置する収集領域内に注入し、流体を急冷ボックス内へと通過させて、分配板の真上で流体を排出することに基づく、急冷装置の例が提供されている。
【0006】
特許文献3〜6には、混合を促進するために回転流が発生させられる急冷ボックスが記載されている。回転流は、収集された流体が急冷装置に入る方法によってしばしば条件付けられる。
【0007】
特許文献7および8には、急冷ボックスに通過する上流で、コレクタ板上に流体の回転流を引き起こすことが提案されている。これらの例において、回転流は、コレクタ板の特定の幾何学的形状によって、例えば、急冷ボックスに戻る前にコレクタ板上で流れを回転させるように配置されたらせん形状の要素よって生じる。しかし、らせん中に差込み工具またはバッフルを配置すれば、反応器中で容量が大きくなりかつ嵩高くなることが分かった。
【0008】
特許文献9には、コレクタ板上で回転流が発生させられる急冷装置が提示されている。流れは、複数の出口導管を含む円環体の形態の円形注入パイプによって冷温流体を注入することにより発生させられる。冷温流体の噴流は、反応器の軸に対して外方に向けられ、これにより回転流が誘発される。しかし、注入パイプは嵩高く、反応器内に設置して保守することは機械的に困難である。
【0009】
特許文献10には、急冷ボックスの下流において回転流が発生させられる急冷装置が記載されている。急冷ボックスからの出口は、回転流を発生させるために、有孔板の上方に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5837208号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/041426号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0039547号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2824495号明細書
【特許文献5】米国特許第6180068号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0037759号明細書
【特許文献7】米国特許第5403560号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2010/0303685号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0234434号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2011/0123410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、反応器の周囲における流体注入パイプをコレクタ板のレベルに配置して、その板上に回転流を発生させることによって、急冷流体と高温流体との混合を向上させることである。本発明は、注入パイプ、場合によっては折り曲げられたものを用いて、反応器の筐体に近接するコレクタ板の上方に排出し、かつ、噴流を生じさせ、その噴流の方向は、反応器の筐体に対して実質的に接線方向であり、これにより、簡易かつ効率的な方法でコレクタ板上に流体の回転運動を生じさせることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、筐体を含む触媒反応器であって、この筐体は、固体触媒の少なくとも2つの床を含み、この少なくとも2つの床は中間帯域によって分離され、この中間帯域はコレクタ板を含み、このコレクタ板は、コレクタ板の下方に配置された急冷ボックスと協働する、触媒反応器を記載する。反応器は、急冷流体を注入するためのノズルを含み、ノズルは、コレクタ板の上方の中間帯域内に位置する収集領域内に配置されている。注入ノズルは、収集領域内に排出する単一のオリフィスの含むチューブからなり、オリフィスは、チューブの端部に位置している。注入ノズルを反応器の周囲に位置させるために、筐体と注入ノズルとの間の最大距離は0〜40cmの範囲内である。注入ノズルの端部は、チューブ状部を含み、このチューブ状部は、急冷流体を収集領域内に実質的に水平な方向に注入し、かつ、前記チューブ状部のレベルにおいて筐体の壁に対する接線の方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成すように構成される。
【0013】
ノズルは、水平方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成す方向に流体を注入するように、筐体の壁において排出してよい。
【0014】
注入ノズルの端部は、ノズルのオリフィスのレベルにおいて、筐体の壁に対する接線方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成す、ストレートチューブ状部からなってよい。
【0015】
ストレートチューブ状部は、水平方向に対して−10〜+10°の範囲内の角度を成してよい。
【0016】
ノズルは、5〜50cmの範囲内の長さ(収集領域内で測定される)を有するチューブを形成してよい。
【0017】
ノズルは、筐体から40cm未満の距離、および、コレクタ板から20cm未満の距離に配置されてよい。
【0018】
反応器は、急冷ボックスの下方に配置された気体および液体のための分配器板を含んでよい。
【0019】
反応器は、急冷ボックスと分配器板との間に配置された有孔板を含んでよい。
【0020】
本発明はまた、本発明による反応器の使用であって、少なくとも70体積%の液体を含む流体が、前記ノズルを介して注入され得る、反応器の使用を記載する。加えて、流体は、前記ノズルを介して1〜15m/sの範囲内の速度で注入され得る。
【0021】
本発明はまた、本発明による反応器を得るための方法であって、旧来のノズルを、端部にチューブ状部を含む注入ノズルに置き換えることによって、既存の反応器が改善され、この端部のチューブ状部は、流体を収集領域に実質的に水平な方向に注入し、かつ、前記チューブ状部において筐体の壁に対する接線の方向に対して−10〜+10°の範囲の角度を成すように構成される、方法を記載する。
【0022】
下記の例において例証されることになるように、本発明の装置は、混合物について優れた性能を得るために用いられ得る。
【0023】
更に、本発明の注入パイプは、従来技術の解決策と比較して、特に、文献US 2004/0234434(特許文献9)に記載された装置と比較して、嵩高さが低減させられている。従って、板上での注入パイプの機械的組立は簡単であり、コストはほどほどである。加えて、コレクタ板の上方の収集領域の高さは、結果として低減させられ得る。結論として、同一の内部体積の反応器について、本発明を実施することは、固体触媒の体積が増大させられ得ることを意味する。
【0024】
更に、本発明は、既存の設備において配備されてよい。特に、本発明は、注入ストレートパイプ急冷装置に置き換えて、その急冷性能を向上させるために、有利に用いられ得る。加えて、固体触媒の床を支持するスクリーンの位置を改変することによって、収集領域を低減させて、従って、反応を行う際に用いられ得る体積を増大させることが可能である。
【0025】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を参照しながらなされる以下の説明から、より良く理解されることとなり、かつ明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明による反応器における急冷装置を例証する。
図2図2は、本発明による反応器における急冷装置を例証する。
図2A図2Aは、本発明による反応器における急冷装置を例証する。
図2B図2Bは、本発明による反応器における急冷装置を例証する。
図3図3は、従来技術による急冷装置を示す。
図4図4は、従来技術による急冷装置を示す。
図5図5は、本発明の急冷装置と従来技術による2つの急冷装置の性能グラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、水素化処理反応が行われる反応器の一部を表す。反応器は、筐体(1)からなり、筐体(1)は、固体触媒の少なくとも1つの床(2)を含む。筐体(1)は、その両端において閉じられた円筒の形状であってよい。一般に、円筒の軸は、垂直方向に配向させられている。例として、円筒は、1〜10メートルの範囲内の径および3〜20メートルの範囲内の高さを有してよい。反応器の上部は、気体および液体からなる反応流体、例えば、液体の炭化水素の供給原料および気体の水素を供給される。反応流体は、筐体(1)内を下降垂直方向に、特に重力下に流れる。言い換えれば、気体および液体は、反応器の頭部から底部へと並流として流れる。反応物質の間の反応は、固体触媒によって触媒される。この固体触媒は、押出物またはビーズの形態であってよく、2つのスクリーンの間に配置されて、一般に、筐体の内部体積の水平断面全体にわたって延びる床を形成する。反応が発熱性であるため、固体触媒の体積は、複数の床へと分割される。図1において、固体触媒の2つの床(2)および(11)が示されている。
【0028】
固体触媒の床(2)は、グレーディング(grading)として通常知られる、不活性固体粒子の層(3)上に配置される。層(3)は、スクリーンによって支持されている。空領域(4)が、層(3)を支持するスクリーンとコレクタ板(6)との間に位置する。床(2)中を流れる気体および液体は、以降において収集領域として知られることとなる空領域(4)に排出される。コレクタ板(6)は、回収領域(4)に入来する液体および気体を収集するために用いられ得る。従って、コレクタ板は、回収領域(4)中を移動する液体および気体によって遭遇される、第1の機械的手段を構成する。例として、コレクタ板は、筐体(1)の内部断面を覆う水平ディスクである。
【0029】
本発明によると、注入ノズルとしても知られる注入パイプ(5)は、反応器の外側からの冷温流体を、回収領域(4)内へと導入するために用いられ得る。パイプ(5)は、収集領域(4)に開口するチューブの一部からなる。好ましくは、チューブは、領域(4)内に単一の出口オリフィスを含み、このオリフィスは、チューブの端部のレベルに位置している。
【0030】
図2は、図1の反応器の断面AA’における図を表す。パイプ(5)を形成するチューブの形状および場合による寸法は、パイプからの出口における流体の噴流の方向が、実質的に水平な方向であり、かつ、筐体(1)の壁に対して実質的に接線の方向であるように選択される。図2Aおよび図2Bは、本発明によるパイプ(5)の2つの形態を表す。例として、図2Aを参照すると、パイプの端部は、チューブの形状であり、例えば、ストレートチューブ、すなわち、直線方向に延びるチューブである。例として、パイプは、円形断面を有する円筒の形態、あるいは、円錐台形の形態であってよい。例として、パイプ(5)の端部は、径Dを有する円形断面を有する円筒であってよい。あるいは、図2Bを参照すると、パイプ(5)は、軸が湾曲したチューブの形態であってよい。例として、パイプ(5)は、径Dを有する円形断面を有するチューブであって、チューブの軸(16)が、水平面において筐体(1)によって記載された円と同心である円弧を形成している、チューブである。
【0031】
パイプ(5)は、冷温流体を、筐体(1)の壁に対して実質的に接線の方向に向けるように寸法がとられている。ここで図2Aおよび図2Bを参照すると、パイプ(5)の端部は、直線(14)において延びるチューブ部によって形成されている。パイプ(5)からの出口オリフィスのレベルにおける筐体(1)の壁に対する接線の方向は、直線(15)によって表される。例として、本発明によると、パイプから得られる流体の噴流の方向は、出口において、筐体(1)の壁の内表面に対して実質的に接線の方向であり、すなわち、噴流の方向は、パイプ(5)からの出口において筐体(1)の内表面に対する接線に対して、すなわち、直線(15)に対して、−10〜+10°の範囲内、好ましくは、−5〜+5°の範囲内の角度θを成す。
【0032】
加えて、パイプ(5)は、冷温流体を、実質的に水平な方向に向けるように寸法がとられている。例として、パイプから得られる流体の噴流の方向、すなわち、出口においてパイプの端部を形成するチューブが延びる方向は、実質的に水平であってよい。例として、噴流の方向は、水平方向に対して、−10〜+10°の範囲、好ましくは−5〜+5°の範囲の角度を成す。
【0033】
パイプは、筐体(1)の壁に近接しかつコレクタ板(6)に近接して位置している。例として、筐体(1)の壁とパイプとの間の最大距離は0〜40cmの範囲内、好ましくは0〜30cmの範囲内である。例として、コレクタ板の表面とパイプとの間の最大距離は、0〜10cmの範囲内である。好ましくは、収集領域(4)内のパイプ(5)の長さは低減させられ、例えば5〜50cmの範囲内、好ましくは5〜20cmの範囲内である。従って、ノズルの端部に位置するオリフィスは、筐体(1)から40cm未満、好ましくは30cm未満の距離で排出してよい。加えて、オリフィスは、コレクタ板から10cm未満の距離で排出してよい。
【0034】
パイプ(5)の形状の単純性、および、反応器サイズに対するパイプ(5)の低減した寸法は、本発明による注入システムが、通常、設備の改良と称される、リモデリングの関連において用いられ得ることを意味する。実際、既存の反応器、例えば、文献US 7 314 602またはUS 2004/0234434(特許文献9)に記載されたような反応器内のパイプに置き換えて、パイプ(5)を取り付けることは可能である。
【0035】
ここで図1を参照すると、コレクタ板(6)は、板(6)上に集められた液体および気体を混合する役割を果たす急冷ボックス(7)と連通している。ボックス(7)は、種々の幾何学的形状を有してよい。ここで図2を参照すると、急冷ボックスは、板(6)を通じて収集領域(4)と連通する2つの入口オリフィス(12)を含む。従って、板(6)上で回収された流体は、オリフィス(12)を介して急冷ボックス(7)へと流れる。気体流体および液体流体は、種々の異なる内部構成を有してよいボックス(7)中で混合される。例として、混合ボックス(7)は、文献FR 2 824 495(特許文献4)の教示に従って製造されてよい。加えて、急冷ボックス(7)は、ボックス(7)の下方に位置するスペースと連通する2つの出口オリフィス(13)を含む。例として、オリフィスは、入口オリフィス(12)に対して互い違いに、ボックス(7)の底部上に位置している。
【0036】
冷温流体を、パイプ(5)を介して板(6)上に、水平および接線方向に注入することは、板(6)上で回転流が発生させられ得ることを意味する。筐体(1)に近接するパイプの位置およびオリフィス(12)の中心位置のために、回転流は、プレート(6)の外部から内部へと向けて、らせん形状をたどる。この回転流により、床(2)から得られる高温流体とパイプ(5)を介して注入される冷温流体の混合、およびこれら2つの流体の温度の均一化が効果的に向上させられる。好ましくは、少なくとも70体積%、さらには少なくとも80体積%の液体を含む流体が注入されて、注入された液体の慣性が、板(6)上で流体の、より良好な回転運動を引き起こす。加えて、回転運動を提供するために、冷温流体は、パイプ(5)を介して好ましくは1〜15m/sの範囲内のスピードで注入されてよい。例として、形状および寸法は、流体を収集領域(4)内に1〜15m/sの範囲内の速度で注入するために冷温流体が利用可能な圧力に応じて適合させられてよい。
【0037】
ここで図1を参照すると、急冷ボックス(7)の下方に分配板(9)がある。文献US 6 093 373には、分配器板の例が記載されている。板(9)は、ボックス(7)から得られた流体を触媒の床(11)上に分配するために用いられ得る。板(9)は、分配要素、例えばトレイライザ(tray riser)を備えており、これにより、気体および液体が、反応器断面(section)の表面全体にわたり分配される。前分配器板(8)が、場合により、板(9)とボックス(7)との間に配置されてよく、これにより、ボックス(7)を出る流体の噴流が破断されて、分配器板(9)の機能を妨げないようにされる。例として、板(8)は、有孔板からなる。床(2)中の流体流の均一性を向上させるために、通常グレーディングとして知られている不活性固体粒子の層(10)が、床(11)の上方に配置されてよい。
【0038】
以下に示される例は、本発明に従って急冷流体を反応器に注入することの性能を従来技術と比較するために役立つ。
【0039】
本発明の提案されたシステムの効率を、図3に記載されたストレートパイプの装置の効率および図4に記載された円形パイプの装置の効率と比較した。
【0040】
図3は、文献US 7 314 602に開示されたものと類似するストレートパイプの急冷装置を示す。図1中の参照符号と同一の図3中の参照符号は、同一の要素を示す。図3を参照すると、注入パイプ(5A)は、冷温流体をコレクタ板(6)の種々の部分に分配する有孔ストレートチューブである。
【0041】
図4は、円形注入パイプ(5B)を有する急冷装置を表しており、文献US2004/0234434に開示されたものと類似している。
【0042】
図2図3、および図4による3つの相異なる急冷構成の間の混合性能を比較するために、冷温実物大模型を用いた。
【0043】
実物大模型は、垂直に位置させられた真っすぐな円筒からなっており、この円筒は、0.48mの径の断面を有していた。実物大模型は、高さ1mの触媒床を含んでいた。コレクタ板(6)の上方で流体の収集が行われた空領域(4)は、高さが20cmであった。
【0044】
円筒は、塔頂で、水および空気の混合物を1バールおよび50℃で供給された。試験は、上方の床への入口における種々の気体表面速度(gas surface velocity:gsv)および液体表面速度(liquid surface velocity:lsv)で行われた。
【0045】
冷温急冷流体は、液体(水)または気体(空気)のいずれかであった。それを、上方の床に入る同一相の流量の半分に等しい流量で注入した。上方の床に入る液体表面速度(lsv)が1cm/s未満である場合、急冷流体は気体状であった。上方の床に入る液体表面速度(lsv)が1cm/s超である場合、急冷流体は液体であった。3つの構成について、0.002m/s、0.005m/sおよび0.008m/sで実施される試験を、気体(空気)の注入により行い、0.015m/sおよび0.02m/sで実施される試験を、液体(水)の注入により行った。
【0046】
研究された3つの構成において、同一の急冷ボックスを用いた−急冷流体注入パイプの形状のみが各構成毎に異なっていた。
【0047】
3つの構成について、急冷ボックスは、図1および図2に模式的に示されたボックス(7)と同一であった。オリフィス(12)および(13)は、3cmの径を有する円形であった。
【0048】
本発明の構成に相当する図1および図2Aによる構成1において、注入パイプは、2cmに等しい径Dを有するベントチューブであり、塔の壁およびコレクタ板に固着していた。パイプ(5)の端部は、真っすぐな円筒であり、その軸は、実物大模型の円筒状仕切りに対して純粋な接線方向に向けられていた。
【0049】
本発明に合致しない、図3の構成2において、パイプ(5A)は、内径3cmの真っすぐな円筒であり、6個の1cm径の穴を含んでいた。
【0050】
本発明に合致しない、図4の構成3において、パイプ(5B)は、円筒であり、径20cmの円環体を形成しており、3cmの内径を有していた。円環体は、1cm径の7個の出口穴を備えており、接線方向に対して45°に向けられていた。
【0051】
各試験構成について、下方の床への入口におよびグレーディング層中に6個の熱電対が配置された。これらの熱電対によって測定される最大温度差によって、ΔTで示される残留温度差を求め、構成を比較するために用いた。
【0052】
結果を図5に示す。図5は、ΔT(℃)に応じたlsv(m/s)の変化を示す。液体表面速度(lsv)に応じた結果が示されているのは、それらは、気体表面速度(gsv)に対してより敏感ではないことが判明したからである。ばつ印(×)は構成1についての結果を示し、丸印(○)は構成3についての結果を示し、三角印(▲)は構成2についての結果を表す。
【0053】
図5に与えられた結果に関していくつかの重要な事実が留意されてもよい:
・ 最良の性能は、本発明による構成1のベントチューブ注入パイプにより得られた;
・ 構成1のベントパイプにより得られた性能は、気体急冷流体を用いるより、液体急冷流体(lsv>1cm/s)を用いる方が良好であった。このことは、冷温気体の慣性よりも高い、冷温液体の慣性に関連し、これは、液体が、コレクタ板上でより容易に回転するようになされ得ることを意味する;
・ 構成3の円環状パイプにより得られた性能は、本発明による構成1のベントチューブパイプにより、気体急冷流体を用いて得られた結果に近似しており、液体急冷流体ではわずかにより不良であった。
【0054】
結論として、本発明による構成1は、構成2および3の場合よりも良好な結果を提供しており、同時に、本発明による構成1は、より軽量で、より組立が簡単、および、かさがより低かった。従って、本発明による装置の利点は、非常に高い。
図1
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5