(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スライド手段から筆記芯がほとんど突出していない状態で筆記すると、筆記面にスライド手段が接して擦れることになるために、筆記しづらいという問題がある。そのため、一般的には、筆記時はスライド手段から筆記芯が突出している状態となっていることが多いと考えられる。
【0007】
このような使用実態を考慮すると、スライド手段から筆記芯が突出している状態で先端ノックをして、筆記芯の消耗分だけ減少した突出長さを補うようにすることができることが望まれる。また、使用者によって、スライド手段からの筆記芯の所望の突出長さが異なるから、先端ノックによって、自由に突出長さを変えられるようにすることが望まれる。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、スライド手段から筆記芯が突出している状態で先端ノックを行うことができ、スライド手段からの筆記芯の突出長さを使用者の好みに応じて設定することができるシャープペンシルを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために
、本発明
の一態様は、
先端部に先端開口を有する軸筒と、
軸筒内に摺動可能に配置され、筆記芯の前進は許容するが後退は阻止する筆記芯送り出し手段と、
軸筒内における筆記芯送り出し手段よりも先端側の位置に配置され、軸筒の先端開口から一部が出没するように軸筒に対して摺動可能であり、その内部を挿通する筆記芯に対して摩擦力を付与するスライド手段と、
軸筒内に設けられ、スライド手段が所定量以上の後退をしたときにスライド手段に係止してその前進を規制するスライド前進規制手段と、
筆記芯送り出し手段を常時前方へと付勢する第1付勢手段と、
スライド手段を常時前方へと付勢する第2付勢手段と、
筆記芯送り出し手段とスライド手段との間に設けられて、筆記芯送り出し手段の後退時にスライド手段を後方へ移動可能である介在手段と、
を備え、
筆記芯がスライド手段から突出している状態で、筆記芯をノックする先端ノックがなされると、筆記芯を通じて筆記芯送り出し手段が後退し、介在手段を介して筆記芯送り出し手段がスライド手段を所定量に後退させて、スライド前進規制手段がスライド手段に係止してその前進を規制することが可能であり、この状態で、先端ノックのノック力を解除すると、第1付勢手段によって、筆記芯送り出し手段が前進して、スライド手段に対して筆記芯の送り出しをすることができることを特徴とする。
【0010】
また、前記介在手段は、前記筆記芯送り出し手段の後退時に前記スライド手段を後方へ牽引することを特徴とする。
【0011】
また、前記介在手段は、その後端部が前記筆記芯送り出し手段に固着され、その先端部が前記スライド手段に対して所定の範囲で摺動可能であることを特徴とする。
【0012】
また、前記介在手段の先端部には、前記スライド手段の所定位置に対して前方から干渉する干渉部が設けられることを特徴とする。
【0013】
また、前記介在手段は、筆記芯が挿通可能な管状に形成され、前記スライド手段の少なくとも一部を挿通することを特徴とする。
【0014】
また、前記スライド手段は、前記軸筒の先端開口から出没可能な先端スライド部材と、前記先端スライド部材の後端に固定された後端スライド部材と、を含み、前記介在手段の先端部は、後端スライド部材を挿通して前記先端スライド部材と前記後端スライド部材とに囲まれた空間内に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、筆記芯がスライド手段から突出している状態で、筆記芯をノックする先端ノックを行うと、筆記芯を通じて筆記芯送り出し手段が後退し、このとき、介在手段を介して筆記芯送り出し手段がスライド手段を所定量に後退することができ、これによって、スライド前進規制手段がスライド手段に係止してその前進を規制することができる。よって、この状態で、先端ノックのノック力を解除すると、第1付勢手段によって、筆記芯送り出し手段が前進して、スライド手段に対して筆記芯を送り出すことができるようになる。また、筆記芯送り出し手段がスライド手段とスライド前進規制手段による規制を解除してスライド手段を前進させることで、第2付勢手段によって、スライド手段が筆記芯と共に前進して、軸筒から突出させることができる。
【0016】
こうして、筆記芯がスライド手段から突出している状態で、先端ノックすることにより、筆記芯をスライド手段に対して確実に突出させることができるようになる。
【0017】
これによって、筆記芯がスライド手段から突出している状態で、筆記中に、簡単に筆記芯を送り出すことができるようになる。また、先端ノックを適宜回数行うことで、使用者の好みに従って、筆記芯のスライド手段からの突出長さを調整することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1において、10は本発明の実施形態に係るシャープペンシルの軸筒であり、軸筒10は、
図2及び
図3に示すように、外筒12と、外筒12の先端部に固定された継手筒14と、継手筒14を介して外筒12の先端側に配設されて先端部に先端開口16aを有する先筒16とから構成される。継手筒14は、外筒12に対して螺着されると共に、先筒16に対して螺着される。これら外筒12、継手筒14及び先筒16のうちの少なくとも2つは、一部品で構成してもよく、外筒12、継手筒14及び先筒16の少なくとも1つは、複数部品で構成してもよい。また、外筒12、継手筒14及び先筒16は互いに着脱可能に構成することができる。
【0021】
継手筒14には、
図4に示すように、上下に一対の摺動溝14a、14aが形成されている。各摺動溝14aは、継手筒14の軸方向に平行に延びているが、その中央部において周方向にオフセットされた屈曲部14bを有しており、この中央部の屈曲部14bによって、軸方向において前後に分離した前側の前摺動溝部14cと後側の後摺動溝部14dとが形成される。
【0022】
軸筒10内には、大まかに、筆記芯を収納可能となった筆記芯収納手段20と、筆記芯収納手段20の先端に連結され筆記芯の送り出しを行う筆記芯送り出し手段30と、筆記芯送り出し手段30よりも先端側の位置に配置されたスライド手段50と、筆記芯収納手段20と筆記芯送り出し手段30との間に介挿される第1付勢手段60と、筆記芯送り出し手段30とスライド手段50との間に介挿される第2付勢手段62と、スライド前進規制手段70と、介在手段72と、が配置される。以下、各手段、部材について詳細に説明する。
【0023】
・筆記芯収納手段20
筆記芯収納手段20は、複数の筆記芯を収納可能とする収納筒22と、収納筒22の先端に一体に連結されて、筆記芯送り出し手段30内に配設されるストッパ24と、を備える。ストッパ24は、継手筒14の後摺動溝14dに摺動可能に嵌合する突起24aを有しており、これによって、筆記芯収納手段20は、軸筒10内において、軸筒10に対して摺動可能に且つ回転不能に配設される。
【0024】
収納筒22の後端部には、消しゴム26及び消しゴムカバー28が取り付けられており、軸筒10の後端から突出している。
【0025】
・筆記芯送り出し手段30
筆記芯送り出し手段30は、
図5に示すように、送り出し機構32と、送り出し機構32の先端に連結されたスライド収納筒36と、スライド収納筒36内に設けられた突出し部材38と、送り出し筒320の後方に配設された尾栓筒40と、を備える。
【0026】
さらに送り出し機構32は、送り出し筒320と、複数のチャック要素340を組み合わせることによって構成されるチャック342と、チャック342の頭部に保持されたボール344と、送り出し筒320の内部に固定されてボール344が摺接するテーパ面を有するチャックリング346と、チャック342を送り出し筒320内で後方に付勢するチャックスプリング348と、を備える。
【0027】
送り出し筒320は、その外側面に継手筒14の前摺動溝14cに摺動可能に嵌合する突起320aを有しており、これによって、軸筒10内において、軸筒10に対して摺動可能に且つ回転不能に配設される。また、
図6に示すように、送り出し筒320の後部には、後端から延設されたスリット320bが形成されており、このスリット320bを前記ストッパ24の突起24aが摺動可能に挿通している。スリット320bの中央部は、スリット幅の狭くなった幅狭部320cとなっており、この幅狭部320cにおいては、ストッパ24の突起24aとの摩擦抵抗が大きくなっている。
【0028】
複数のチャック要素340を組み合わせることにより、チャック342は筆記芯が挿通する芯挿通孔342aを画成すると共にその軸方向中央部において外径方向に環状に突出する環状突起342bを形成する。また、
図7に示すように、各チャック要素340が軸方向略中央部を中心としてシーソー運動をすることができるように、軸方向両端部において各要素間に隙間を形成するようになっている。このシーソー運動によって、複数のチャック要素340の内周面の前部に形成される締付部340aが径方向中心方向に互いに接近して、筆記芯を締め付けることが可能であると共に、複数のチャック要素340の締付部340aが径方向放射方向に互いに離反して、筆記芯を解放することが可能となっている。
【0029】
ボール344は、チャック要素340の前部に形成された孔340bにその一部が嵌め込まれている。また、このボール344が摺接するチャックリング346は、送り出し筒320の内部に形成された仕切り段部320dよりも前側において固定されて、後方に向かうに従って漸次縮径されたテーパ面を有している。
【0030】
このボール344とチャックリング346のテーパ面との協働により、チャック342がチャックスプリング348によって後方に付勢されている状態においては、ボール344がチャック要素340を押し付けるので、各チャック要素340の締付部340aが互いに接近して筆記芯を締め付けることができる。また、チャック342がチャックスプリング348の付勢力に抗して前進したときには、ボール344によるチャック要素340への押し付けが緩和されるために、各チャック要素340の締付部340aは互いに離反して筆記芯を解放することができる。
【0031】
以上の送り出し機構32の構成により、送り出し機構32は単独で、筆記芯が後方からチャック342の芯挿通孔342a内に挿入されたとき、または、チャック342の芯挿通孔342aを挿通する筆記芯が前進しようとしたときに、チャック342が前進するので、筆記芯がチャック342の前進を許容する一方で、筆記芯が前方からチャック342の芯挿通孔342a内に挿入されたとき、または、チャック342の芯挿通孔342aを挿通する筆記芯が後退しようとしたときには、筆記芯のチャック342に対する後退を阻止する、ワンウェイ構造となっている。
【0032】
スライド収納筒36は後述のスライド手段50の一部を収納するためのものであり、その前部は、
図8に示すように、径方向に変位可能となった複数の受け片36aから構成され、その内周面には凸部36bが形成され、凸部36bの後方部分はテーパ面36cとなっている。突出し部材38は、スライド収納筒36の内部において、スライド収納筒36に対して所定摺動範囲で摺動可能に配設されており、前記テーパ面36cと係り合うことが可能となっている。このスライド収納筒36の突出し部材38との協働により、突出し部材38がスライド収納筒36に対して前進すると、テーパ面36cに当接してスライド収納筒36の受け片36aを外径方向へと押し広げるために、収納させたスライド手段50を脱出させることが可能となっている。また、通常状態においては、突出し部材38は、第2付勢手段62によって所定摺動範囲の最後方位置に位置している。
【0033】
尾栓筒40は、送り出し筒320の後方に位置し、第1付勢手段60によって送り出し筒320の後端に当接する方向に常時付勢されている。これによって、送り出し筒320のスリット320bの後端は尾栓筒40によって閉塞される。組立てにおいては、前記筆記芯収納手段20のストッパ24の突起24aを送り出し筒320のスリット320b内に挿入した後、尾栓筒40によって閉塞することができる。
【0034】
・スライド手段50
スライド手段50は、
図9に示すように、軸筒10の先筒16の先端開口16aから一部が出没可能となった先端スライド筒52と、先端スライド筒52の後端に固定される後端スライド筒54と、摩擦付与部材であるパッキン56と、を備える。
【0035】
先端スライド筒52は、その先端部に筆記芯の外径よりも僅かに大きい内径を持つ芯挿通孔52aを有しており、その外周面に軸筒10の先筒16の内段部16bと当接する段部52bを有している。
【0036】
後端スライド筒54は、その先端部に筆記芯の外径よりも僅かに大きい内径を持つ芯挿通孔54aを有している。但し、芯挿通孔54aの内径は、芯挿通孔52aの内径よりも大きくなっている。また、後端スライド筒54の後部は、径方向に変位可能となった複数の係合片54bから構成され、少なくとも2つの係合片54bには、その外周面に係合突起54cが形成される。また、各係合片54bの外周面には凹部54dが形成され、該凹部54dは、スライド収納筒36の凸部36bと合致する形状となっている。
【0037】
先端スライド筒52の芯挿通孔52aに連通する後部内部と、後端スライド筒54の先端面とによって囲まれた部分には、筆記芯の外径よりも十分に大きい内径を持った作動空間58が画成されており、パッキン56は、芯挿通孔52aに隣接するように作動空間58の前端に配置され、挿通する筆記芯に摩擦力を付与する。この摩擦力は、チャックスプリング348の付勢力よりも強くなるように設定される。
【0038】
・第1付勢手段60
第1付勢手段60は、コイルバネとして構成され、筆記芯送り出し手段30の尾栓筒40と、筆記芯収納手段20の収納筒22との間に介挿されて、常時両者を離反する方向に付勢する。従って、筆記芯収納手段20は、そのストッパ24の突起24aが継手筒14の後摺動溝部14dの後端に当接する位置を最後方位置として後方に付勢された状態で軸筒10内に配置される。また、筆記芯送り出し手段30は、その尾栓筒40が継手筒14の後端に当接する位置を最前方位置として前方に付勢された状態で軸筒10内に配置される。
【0039】
・第2付勢手段62
第2付勢手段62は、コイルバネとして構成され、筆記芯送り出し手段30の突出し部材38と、スライド手段50の後端スライド筒54との間に介挿されて、常時両者を離反する方向に付勢する。従って、スライド手段50は、その先端スライド筒52の段部52bが軸筒10の先筒16の内段部16bに当接する位置を最前方位置として前方に付勢された状態で軸筒10内に配置される。
【0040】
また、第2付勢手段62の付勢力は第1付勢手段60の付勢力よりも弱く設定されており、これによって、筆記芯送り出し手段30は、突出し部材38がスライド収納筒36に対して最後方位置に位置として後方に付勢され、且つ、スライド収納筒36を介して送り出し筒320が尾栓筒40に当接するように付勢されるようにして、軸筒10内に配置される。
【0041】
また、第2付勢手段62の付勢力はチャックスプリング348の付勢力よりも強く、且つ、パッキン56の芯への摩擦力よりも弱く設定される。
【0042】
・スライド前進規制手段70
スライド前進規制手段70としてのスライド受け部は、外筒12の内周面に嵌着されており、軸筒10に対して固定される。スライド受け部70には、その内径方向に突出する環状の係合突起70aが形成されており、係合突起70aは、スライド手段50の後端スライド筒54の係合突起54cと係合可能となっている。係合突起70aの形状は、後方に向かうに従って漸次高さが高くなる傾斜形状となっている一方で、その後端部は軸方向に対して直交する直壁形状となっている。このため、後端スライド筒54が後退して、係合突起54cと係合突起70aが係り合ったときに、後端スライド筒54の係合片54bが漸次内径方向に変位することで、係合突起54cが係合突起70aを通過することが可能である一方で、一旦、通過すると、係合突起70aが係合突起54cに係止するために、後端スライド筒54の前進は規制されるようになっている。
【0043】
・介在手段72
介在手段72は、筆記芯送り出し手段30とスライド手段50との間に設けられる。介在手段72は、具体的には
図10に示すように、筆記芯が挿通可能となった管状の部材からなり、その後端部が筆記芯送り出し手段30の突出し部材38に固着され、その先端部がスライド手段50の後端スライド筒54の芯挿通孔54a内を摺動可能に挿通して、スライド手段50の作動空間58内に挿入されており、介在手段72の先端には外径方向に突出した干渉突起72aが形成される。干渉突起72aは、作動空間58内を移動することができるものの、後端スライド筒54の芯挿通孔54aを挿通することはできず、後端スライド筒54の先端面に前方から干渉可能となっている。
【0044】
但し、介在手段72としてはこれ以外の任意の構成とすることができる。そして、筆記芯送り出し手段30が後方へと移動されたときに、これに伴い介在手段72が後退し、干渉突起72aは後端スライド筒54の先端面に干渉して、後端スライド筒54を後方へと牽引していくので、スライド手段50が筆記芯送り出し手段30と共に後退することができるようになっている。一方、筆記芯送り出し手段30が前方へと移動されたときに、干渉突起72aは作動空間58内を移動することができるため、筆記芯送り出し手段30は、スライド手段50に対して相対的に前進することができるようになっている。
【0045】
次に、以上のように構成されるシャープペンシル10の芯送り等の動作について説明する。
【0046】
・収納状態
図11は、シャープペンシルの収納状態を表しており、この状態においては、スライド手段50が完全に軸筒10内に退没しており、スライド手段50の後端スライド筒54の後部が、筆記芯送り出し手段30のスライド収納筒36内に挿入されて、後端スライド筒54の凹部54dがスライド収納筒36の凸部36bに嵌合している。従って、筆記芯送り出し手段30とスライド手段50は一体的に連結されている。
【0047】
このように、スライド手段50及び筆記芯共に軸筒10内に退没しているために、不用意なノックによる筆記芯の送り出しが防止されている。
【0048】
この状態において、手段及び部材間のクリアランス等を以下のように表記する。
【0049】
第1付勢手段60のストローク代:S1
筆記芯収納手段20のストッパ24の先端面と筆記芯送り出し手段30のチャック342の環状突起342bとの間のクリアランス:S2
筆記芯収納手段20のストッパ24の突起24aと筆記芯送り出し手段30の送り出し筒320のスリット320bの先端面との間のクリアランス:S3
筆記芯送り出し手段30の送り出し筒320の突起320aと軸筒10の継手筒14の前摺動溝14cの後端面との間のクリアランス:S4
筆記芯送り出し手段30のチャック342の先端面と突出し部材38の後端面との間のクリアランス:S5
スライド収納筒36の先端面とスライド前進規制手段70の係合突起70aの後端面との間のクリアランス:S6
ここで、S2<S3である。また、S3−S2>S5である。
【0050】
・収納解除
図11に示す収納状態から筆記芯収納手段20の後端部をノックすると、軸筒10に対して筆記芯収納手段20が前進する。このとき、ストッパ24の突起24aと送り出し筒320のスリット320bの幅狭部320cとの摩擦力によって、筆記芯送り出し手段30が筆記芯収納手段20と一体的に前進し、且つ、筆記芯送り出し手段に一体的に連結されたスライド手段50も、一緒に前進する。
【0051】
クリアランスS6分、前進すると、筆記芯送り出し手段30のスライド収納筒36がスライド前進規制手段70に当接して、前進が規制される。
【0052】
すると、
図12に示すように、筆記芯収納手段20だけが前進するようになり、クリアランスS2分移動すると、ストッパ24の先端面がチャック342の環状突起342bに当接するので、チャック342が送り出し筒320に対して前進する。チャック342が移動するときに、筆記芯は、スライド手段50に対して前進する。そして、クリアランスS5分チャック342が移動すると、チャック342が突出し部材38をスライド収納筒36に対して前進させて、スライド収納筒36の受け片36aを外径方向へと押し広げるために、後端スライド筒54の凹部54dとスライド収納筒36の凸部36bとの係合が外れ、さらに、突出し部材38が第2スライド筒54を前進させるため、後端スライド筒54の係合突起54cは、スライド前進規制手段70の係合突起70aを通過する。すると、スライド手段50は第2付勢手段62によってその先端スライド筒52の段部52bが先筒16の内段部16bに当接するまで前進して、先端スライド筒52の先端が軸筒10の先筒16の先端開口16aから突出することができる。
【0053】
筆記芯収納手段20が収納状態からクリアランスS6+S3分前進すると、
図12に示すように、ストッパ24の突起24aが送り出し筒320のスリット320bの先端面に当接するので、それ以上の後端ノックは不可能となり、ノック力を緩めると、第1付勢手段60及びチャックスプリング348の付勢力により、
図3に示す状態となる。このとき筆記芯は、クリアランスS5分、スライド手段50に突出した状態であるため、筆記を行うことができるようになる。このとき介在手段72の干渉突起72aは、スライド手段50の後端スライド筒54の先端面に近接した位置にあるとよい。
【0054】
筆記中に過大な筆圧が作用した場合には、その過大筆圧を、筆記芯から筆記芯送り出し手段30を介して第1付勢手段60が吸収することができる。
【0055】
尚、
図3に示す状態でのスライド手段50の後端スライド筒54の係合突起54cと、スライド前進規制手段70の係合突起70aとの間のクリアランスをS7とする。ここで、S7<S4<S3である。また、スライド手段50の後端スライド筒54の後端面と筆記芯送り出し手段30のスライド収納筒36の先端面とのクリアランスをS8とする。
【0056】
・後端ノック時
通常のシャープペンシルのように、
図3に示す状態から、後端ノックを行い、第1付勢手段60の付勢力に抗して軸筒10に対して筆記芯収納手段20を前進させると、ストッパ24の突起24aと、送り出し筒320のスリット320bの幅狭部320cとの摩擦力によって、筆記芯送り出し手段30及び筆記芯が全体的に前進する。クリアランスS8分、前進すると、スライド収納筒36がスライド手段50の後端スライド筒54の後端面に当接し、スライド収納筒36と一体の送り出し筒320の前進が規制される。その後、筆記芯収納手段20だけが前進するようになり、クリアランスS2分移動すると、ストッパ24の先端面がチャック342の環状突起342bに当接するので、チャック342が送り出し筒320に対して前進されて、筆記芯への締付が解除され、ノック力が解除された後、筆記芯送り出し手段30は後退して元の状態に戻る。しかしながら、筆記芯は、スライド手段50のパッキン56の摩擦力により後退せずに、その位置でとどまる。この結果として、筆記芯送り出し手段30がスライド手段50に対して相対移動したクリアランスS8分、筆記芯の送り出しが行われる。
【0057】
・先端ノック時
図3に示すように筆記芯がスライド手段50から突出した状態で筆記を行っているときに、筆記芯の送り出しを行いたい場合には、筆記芯を筆記面に対してノックすることで、先端ノックを行う。
【0058】
これによって、筆記芯は後退するが、送り出し機構32は、筆記芯のチャック342に対する後方への移動を規制しているために、筆記芯送り出し手段30が第1付勢手段60の付勢力に抗して全体的に筆記芯と共に後退する。すると、介在手段72も後退し、介在手段72の干渉突起72aがスライド手段50の後端スライド筒54の先端面に前方から干渉するために、スライド手段50も介在手段72によって牽引されて後退する。
【0059】
図13に示すように、先端ノックにより、筆記芯をクリアランスS7以上、後退させると、スライド手段50の後端スライド筒54の係合突起54cが、スライド前進規制手段70の係合突起70aを通過する。そして、ノック力を解除すると、第1付勢手段60の付勢力により、
図14に示すように、筆記芯送り出し手段30は前進するが、スライド手段50の後端スライド筒54の係合突起54cがスライド前進規制手段70の係合突起70aに係止するために、スライド手段50の前進は規制される。このとき、介在手段72は、スライド手段50の後端スライド筒54に対して摺動し、その干渉突起72aは、作動空間58を移動する。
【0060】
第1付勢手段60の付勢力により、筆記芯送り出し手段30がスライド手段50に対してクリアランスS8分だけ前方に移動すると、そのスライド収納筒36がスライド手段50の後端スライド筒54の後端面に当接して、スライド手段50を前方へ押し出すので、係合突起54cと係合突起70aとの係止が解除され、第2付勢手段62による付勢力によって、スライド手段50は、先端スライド筒52の段部52bが先筒16の内段部16bに当接するまで前進して動作が終了する。パッキン56の摩擦力により筆記芯もスライド50と共に前進する。この結果として、
図15に示すように、筆記芯送り出し手段30がスライド手段50に対して相対移動したクリアランスS8分、筆記芯の送り出しが行われることとなり、筆記芯の消耗分を補うことができる。
【0061】
このように、使用により筆記芯が消耗したときに、筆記芯を筆記面に対して押し付けて、先端ノックを行うことができるので、スライド手段50を筆記面に接させることなく、筆記芯の送り出しを行うことができる。
【0062】
従って、スライド手段50を筆記面から離すことができるために、快適な筆記を行うことができる。また、先端ノックを適宜数行うことによって、使用者の好みに応じた筆記芯の突出長さとすることができる。
【0063】
但し、スライド手段50と筆記芯とが面一になった状態で、先端ノックを行っても、同様に筆記芯を送り出すことができる。即ち、スライド手段50を筆記芯と共に先端ノックすると、スライド手段50、筆記芯、及び筆記芯送り出し手段30が後方に移動し、スライド手段50の後端スライド筒54の係合突起54cが、スライド前進規制手段70の係合突起70aを通過し、スライド手段50はスライド前進規制手段70によって前進が規制される。そして、ノック力を解除すると、第1付勢手段60の付勢力により、筆記芯送り出し手段30がスライド手段50に対してクリアランスS8分だけ前進し、その後に、スライド手段50が筆記芯送り出し手段30によって押し出されて、元に戻ることができるので、結果として、クリアランスS8分、筆記芯を送り出すことができる。
【0064】
・筆記中断時
図3に示す状態から筆記を続けていき、筆記芯が先端スライド筒52の先端と面一になり、筆記面に先端スライド筒52の先端が当たるようになると、先端スライド筒52は、
図16に示すように、第2付勢手段62を圧縮させつつ、第2付勢手段62の付勢力に抗して後退することができる。この状態で筆記を中断するべく筆記面からシャープペンシルを離すと、第2付勢手段62の付勢力により、スライド手段50が前進されるが、このときに、第2付勢手段62の付勢力及びスライド手段50のパッキン56による摩擦力は、チャックスプリング348の付勢力よりも強いため、筆記芯が送り出し機構32から送り出される。
【0065】
こうして、スライド手段50は、先端スライド筒52の段部52bが先筒16の内段部16bに当接するまで前方に移動し、筆記芯はスライド手段50と共に送り出される。
【0066】
以上のように様々な形態で芯を送り出すことができて、使用者の好みに合わせた芯の送り出しが可能となる。
【0067】
尚、筆記が終了して
図11の収納状態に戻すときには、通常のシャープペンシルと同様に、後端ノックを行いつつ、筆記先端を筆記面に押圧して先端ノックも行うことで、
図11の状態とすることができる。このとき
図12のような状態を経ることで、突き出し部材38がスライド受け筒36の受け片36aを外径方向へ押し広げて、後端スライド筒54をスライド受け筒36の中に受け入れて、その凹部54とスライド受け筒36の凸部36bとの嵌合を行うことができる。また、チャック342が筆記芯の締付を解除するので、筆記芯とスライド部材50とが軸筒10内へと退没することができる。