(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記メイン基板には、高電圧系の回路および電装部品が実装され、前記サブ基板には、低電圧系の回路および電装部品が実装されていることを特徴とする請求項1に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
前記メイン基板には、高電圧系のコイルおよびコンデンサを含むノイズ除去用のフィルタ回路と、半導体スイッチング素子を含むスイッチング回路およびその制御回路とが実装され、前記サブ基板には、低電圧系の通信回路とその構成部品が実装されていることを特徴とする請求項1または2に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
前記メイン基板は、矩形状とされ、前記インバータ収容部内の上方部に少なくとも4隅でボス部に固定設置されるとともに、その両側に実装されている前記フィルタ回路を構成する前記コイルおよびコンデンサと、前記スイッチング回路を構成する複数の前記半導体スイッチング素子によっても固定支持され、前記サブ基板は、前記メイン基板の下方部位であって、その両側に実装されている前記コイルおよびコンデンサと、複数の前記半導体スイッチング素子との間のスペースに前記3点で固定設置されていることを特徴とする請求項3に記載のインバータ一体型電動圧縮機。
前記サブ基板は、前記インバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された前記底部の稜線部に対して、末広がり形状に傾斜された傾斜辺が斜めに交差するように配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
前記サブ基板には、そのサブ基板上の回路と接続される通信ケーブルのコネクタが、前記インバータ収容部を貫通する前記通信ケーブルの固定部位から最短距離の位置で接続される構成とされていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のインバータ一体型電動圧縮機。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車等に搭載される空調装置の圧縮機には、インバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機が用いられている。このインバータ一体型電動圧縮機は、車両に搭載された電源ユニットから供給される高電圧の直流電力をインバータ装置で所要周波数の三相交流電力に変換し、それを電動モータに印加することにより駆動されるように構成されている。
【0003】
インバータ装置は、ノイズ除去用のフィルタ回路を構成するコイルやコンデンサ等の複数の高電圧系電装部品、電力を変換するスイッチング回路を構成するIGBT等の複数の半導体スイッチング素子、フィルタ回路およびスイッチング回路を含むインバータ回路やその制御回路が実装されている回路基板等々から構成され、電動圧縮機のハウジング外周に設けられたインバータ収容部に組み込まれることによって一体化されている。
【0004】
特許文献1には、ハウジング側の回路室内に、コンデンサやマイコンを実装した制御基板とIGBTを実装したインバータ基板、またはその2つの基板を一体化した基板を多数の柱状脚部を介して設置し、その脚部を経て発熱部品の発熱を放熱する構成としたものが開示され、特許文献2には、基板カバー側に弾性部材を介してスイッチング素子やコンデンサ、コイル等を実装した電力変換基板を設置し、その基板カバーをハウジング側のインバータ設置面に取付け、各電装部品と、設置面側の対向面および凹部との間に、ゲル材等の流動部材を配置し、隙間調整と放熱性を確保する構成としたものが開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、インバータ回路基板を、スイッチング素子を実装したパワー系基板と、制御回路を実装したCPU基板とに2分割し、樹脂製ケースを介して一体にモジュール化するとともに、スイッチング素子を熱硬化性樹脂層で封止し、その熱硬化性樹脂層とCPU基板との間にシリコン系の弾性接着材層を設け、耐振性を確保するようにしたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インバータ装置の回路基板は、インバータ収容部の大きさにより制約を受け、1枚に収容できない場合、複数枚に分割されるが、何れの場合も、車両の走行振動等に対して耐振性の確保が必要なため、四隅以外の部位を支持脚部で支持したり、防振用、絶縁用にインバータ収容部にゲル材を充填したり、樹脂封止したりしている。特許文献1には、基板の周辺部位だけでなく、中央部位も柱状脚部で支持したものが開示され、また、特許文献2には、電力変換基板をカバー側に弾性部材を介して設置し、ハウジング側の設置面との間にゲル状物質からなる流動部材を配置したものが開示されている。
【0008】
一方、中央支持脚部の設置やゲル材の充填は、基板の耐振性を確保できれば、本来不要なものであるが、特許文献1−3に示されるように、コイルやコンデンサ等を実装したフィルタ回路や半導体スイッチング素子を実装したスイッチング回路を一体化している回路基板は、基板が大きくなることから、耐振性を確保するには、中央支持脚部の数やゲル材の充填量が増やす必要があった。また、基板を複数枚に分割した場合、基板間の絶縁性の確保や各々の基板について耐振性を確保しなければならず、それがインバータ装置の大型化や重量の増加、コストアップの要因となっていた。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、インバータ部品の利用や基板形状、配置の工夫により基板の耐振性、絶縁性を確保するとともに、ゲル材や支持脚の数を減らし、インバータ装置のコンパクト化、低コスト化を図ったインバータ一体型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるインバータ一体型電動圧縮機は、ハウジングに設けられたインバータ収容部内に、インバータ回路基板を含むインバータ装置が一体に組み込まれているインバータ一体型電動圧縮機において、前記インバータ回路基板は、前記インバータ収容部内に収納される形状、大きさのメイン基板と、該メイン基板と電気的に接続されるそれより小型のサブ基板とに分割され、前記メイン基板は、少なくとも4隅でボス部に固定設置されるとともに、該基板に実装されている電装部品によっても固定支持され、前記サブ基板は、前端側から後端側にかけて末広がり形状とされ、前記メイン基板の下方部位であって、前記インバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前端側の1点と後端側の2点の3点でボス部に固定設置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、インバータ収容部内にインバータ装置が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機にあって、インバータ回路基板が、インバータ収容部内に収納される形状、大きさのメイン基板と、該メイン基板と電気的に接続されるそれより小型のサブ基板とに分割され、メイン基板が少なくとも4隅でボス部に固定設置されるとともに、該基板に実装されている電装部品によっても固定支持され、サブ基板が前端側から後端側にかけて末広がり形状とされ、メイン基板の下方部位であって、インバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前端側の1点と後端側の2点の3点でボス部に固定設置されているため、大きさが制約されるインバータ収容部に対して、インバータの回路基板をインバータ収容部に大きさに合わせてメイン基板とサブ基板に分割することにより収納可能とし、メイン基板をその4隅でボス部に固定設置する以外に、基板に実装されている電装部品によっても固定支持することにより耐振性を確保して設置する一方、サブ基板を末広がり形状とし、メイン基板の下方部位であってインバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前後の3点で固定設置することによって耐振性を確保し、固定箇所を減らして設置することができる。従って、2枚の基板を含むインバータ装置をインバータ収容部に纏まりよく収納して設置し、コンパクト化を図ることができるとともに、メイン基板およびサブ基板の耐振性を高め、ゲル材の充填等を不要とし、ネジによる固定箇所を極力少なくする等によりコスト低減を図ることができる。
【0012】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記メイン基板には、高電圧系の回路および電装部品が実装され、前記サブ基板には、低電圧系の回路および電装部品が実装されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、メイン基板に高電圧系の回路および電装部品が実装され、サブ基板に低電圧系の回路および電装部品が実装されているため、低電圧系のサブ基板を高電圧が印加されるメイン基板に対して分離、絶縁して設置することができる。従って、高電圧系のメイン基板から低電圧系のサブ基板への電磁ノイズの伝播を抑制し、ノイズ干渉による制御の信頼性の低下を防止することができる。
【0014】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記メイン基板には、高電圧系のコイルおよびコンデンサを含むノイズ除去用のフィルタ回路と、半導体スイッチング素子を含むスイッチング回路およびその制御回路とが実装され、前記サブ基板には、低電圧系の通信回路とその構成部品が実装されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、メイン基板に高電圧系のコイルおよびコンデンサを含むノイズ除去用のフィルタ回路と、半導体スイッチング素子を含むスイッチング回路およびその制御回路とが実装され、サブ基板に低電圧系の通信回路とその構成部品が実装されているため、高電圧系のコイルやコンデンサあるいは半導体スイッチング素子等で構成される回路が実装されているメイン基板と、低電圧系の通信回路が実装されているサブ基板とを分離して設置することにより、両者間のノイズ干渉を抑制することができる。従って、ノイズ干渉による通信エラー等を低減し、制御の信頼性を向上することができる。
【0016】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上記のインバータ一体型電動圧縮機において、前記メイン基板は、矩形状とされ、前記インバータ収容部内の上方部に少なくとも4隅でボス部に固定設置されるとともに、その両側に実装されている前記フィルタ回路を構成する前記コイルおよびコンデンサと、前記スイッチング回路を構成する複数の前記半導体スイッチング素子によっても固定支持され、前記サブ基板は、前記メイン基板の下方部位であって、その両側に実装されている前記コイルおよびコンデンサと、複数の前記半導体スイッチング素子との間のスペースに前記3点で固定設置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、メイン基板が、矩形状とされ、インバータ収容部内の上方部に少なくとも4隅でボス部に固定設置されるとともに、その両側に実装されているフィルタ回路を構成するコイルおよびコンデンサと、スイッチング回路を構成する複数の半導体スイッチング素子によっても固定支持され、サブ基板が、メイン基板の下方部位であって、該メイン基板の両側に実装されているコイルおよびコンデンサと、複数の半導体スイッチング素子との間のスペースに3点で固定設置されているため、矩形状のメイン基板を4隅のボス部以外に、その両側に実装されているフィルタ回路用のコイルおよびコンデンサと、スイッチング回路用の複数の半導体スイッチング素子によっても固定支持し、同時にメイン基板の下方部位であって、その両側に実装されているコイルおよびコンデンサと、複数の半導体スイッチング素子との間のスペースを利用して、小型のサブ基板を3点で固定設置することができる。従って、メイン基板をその実装部品で固定支持し、固定点を増やすことで耐振性を確保することができるとともに、その電装部品間のスペースを利用してサブ基板を配置することで、インバータ装置およびその基板をインバータ収容部内に纏まりよく収納して設置し、小型コンパクト化を図ることができる。
【0018】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記サブ基板は、前記インバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された前記底部の稜線部に対して、末広がり形状に傾斜された傾斜辺が斜めに交差するように配置されていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、サブ基板が、インバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の稜線部に対して、末広がり形状に傾斜された傾斜辺が斜めに交差するように配置されているため、サブ基板をインバータ収容部の底部と接触しない位置であって極力底部に近い低位位置に設置し、上方に設置されているメイン基板との間の距離を可及的に大きくして設置することができる。従って、2枚の基板を狭いスペース内に十分な絶縁距離を確保して設置することができ、コンパクト化を維持しつつ、ノイズ干渉を抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明のインバータ一体型電動圧縮機は、上述のいずれかのインバータ一体型電動圧縮機において、前記サブ基板には、そのサブ基板上の回路と接続される通信ケーブルのコネクタが、前記インバータ収容部を貫通する前記通信ケーブルの固定部位から最短距離の位置で接続される構成とされていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、サブ基板に、そのサブ基板上の回路と接続される通信ケーブルのコネクタが、インバータ収容部を貫通する通信ケーブルの固定部位から最短距離の位置で接続される構成とされているため、サブ基板を前後3点の固定点以外に、その通信回路に接続される通信ケーブルがインバータ収容部を貫通するグロメット等による固定部位でも固定支持することができる。従って、サブ基板を前後の3点の固定点以外でも支持することができ、サブ基板に対する耐振信頼性を一層向上することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、大きさが制約されるインバータ収容部に対して、インバータの回路基板をインバータ収容部に大きさに合わせてメイン基板とサブ基板に分割することにより収納可能とし、メイン基板をその4隅でボス部に固定設置する以外に、基板に実装されている電装部品によっても固定支持することにより耐振性を確保して設置する一方、サブ基板を末広がり形状とし、メイン基板の下方部位であってインバータ収容部の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前後の3点で固定設置することにより耐振性を確保し、固定箇所を減らして設置することができるため、2枚の基板を含むインバータ装置をインバータ収容部に纏まりよく収納して設置し、コンパクト化を図ることができるとともに、メイン基板およびサブ基板の耐振性を高め、ゲル材の充填等を不要とし、ネジによる固定箇所を極力少なくする等によりコスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、
図1ないし
図6を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態の係るインバータ一体型電動圧縮機の主要部の斜視図が示され、
図2には、そのa−a縦断面相当図、
図3には、インバータ収容部に設置されるインバータ装置の分解斜視図、
図4には、インバータ収容部におけるサブ基板の設置部の平面図、
図5には、インバータ収容部を密閉する蓋体の裏面側斜視図、
図6には、電源ケーブル単体の斜視図が示されている。
インバータ一体型電動圧縮機1は、外殻を構成する円筒状とされたハウジング2を備えている。ハウジング2は、電動モータ(図示省略)を内蔵するアルミダイカスト製のモータハウジング3と、圧縮機構(図示省略)を内蔵するアルミダイカスト製の圧縮機ハウジング(図示省略)とを一体に結合することにより構成されるものである。
【0025】
インバータ一体型電動圧縮機1は、ハウジング2内に内蔵されている電動モータと圧縮機構とが回転軸を介して連結されており、電動モータが後述するインバータ装置7を介して回転駆動されることにより圧縮機構が駆動され、モータハウジング3の後端側面に設けられている吸入ポート4を介してその内部に吸込まれた低圧の冷媒ガスを、電動モータの周囲を経て吸込み、圧縮機構で高圧に圧縮して圧縮機ハウジング内に吐出した後、外部に送出する構成とされている。
【0026】
モータハウジング3には、内周面側に軸線方向に沿って冷媒を流通させるための複数の冷媒流通路5が形成され、その外周部には、電動圧縮機1の据え付け用脚部6が複数箇所に設けられている。また、ハウジング2(モータハウジング3側)の外周部には、インバータ装置7を一体的に組み込むためのインバータ収容部8が一体に成形されている。このインバータ収容部8は、平面視が矩形形状とされており、底部がモータハウジング3の外周壁に沿う形状で、中央部に冷媒流通路5に対応した凸状の稜線部9Aが形成されるとともに、その両側部にハウジング外周壁に沿う凹部9Bが形成され、周囲にフランジ部10が立ち上げられた構成とされている。
【0027】
このモータハウジング3には、圧縮機ハウジングが結合される前端側から後端側に向って抜き勾配が設けられており、また、内周側に設けられている冷媒流通路5が、吸入ポート4側から圧縮機構側に向って断面積が大きくされていることから、インバータ収容部8内の底面に形成される稜線部9A等も前方から後方に向って下向きに傾斜された構成とされている。
【0028】
インバータ収容部8は、インバータ装置7が組み込まれた後、
図5に示す蓋体11がフランジ部10に取り付けられることにより密閉される構成とされている。この蓋体11の内面側には、高電圧ケーブル(電源側ケーブル)12が設けられている。高電圧ケーブル12は、
図6に示すように、一端側にコネクタ13が設けられ、他端側に電源側のケーブルと接続されるコネクタ端子14が設けられたものであり、一端のコネクタ13が、後述するメイン基板23上に設けられるP−N端子29と対応する位置において、蓋体11の内面にネジ15で固定設置され、他端のコネクタ端子14が、端子部分を蓋体11の外表面側に突出させた状態で外面側から複数のネジ16で固定設置される構成とされている。
【0029】
この高電圧ケーブル12は、電源側ケーブルの一部をなすものであり、電源側ケーブルを介して車両に搭載されている電源ユニットに接続され、その一端に設けられているコネクタ13が、インバータ装置7のメイン基板23上に設けられているP−N端子29に接続されることにより、電源ユニットから給電される高電圧の直流電力をインバータ装置7に入力するためのものである。
【0030】
インバータ装置7は、公知の如く、車両に搭載されている電源ユニットから給電される高電圧の直流電力を、上位制御装置からの指令に基づいて所要周波数の三相交流電力に変換して電動モータに印加し、電動モータを回転駆動するものである。このインバータ装置7は、
図1ないし
図4に示されるように、ハウジング2の外周に設けられているインバータ収容部8に対して一体に組み込まれるようになっている。
【0031】
インバータ装置7は、公知のノイズ除去用のフィルタ回路17を構成するケース入りのコイル18およびコンデンサ19等の複数の高電圧系電装部品(以下、単に電装部品と称することもある。)と、直流電力を三相交流電力に変換する公知のスイッチング回路20を構成するIGBT等の発熱性パワートランジスタからなる複数(6個)の半導体スイッチング素子21と、フィルタ回路17およびスイッチング回路20を含むインバータ回路およびそれを制御するマイコン等を含む制御回路22が実装されている矩形状のメイン基板23と、上位制御装置と通信ケーブル24を介して接続される通信回路25が実装された小型のサブ基板26等とから構成されている。
【0032】
インバータ装置7は、公知のものでよいが、ここでは、メイン基板23として、フィルタ回路17を構成するコイル18およびコンデンサ19等の電装部品を、そのリード端子18A,19Aを半田付けすることによって実装し、また、スイッチング回路20を構成するIGBT等の発熱性パワートランジスタからなる複数(6個)の半導体スイッチング素子21を、そのリード端子21A(リード端子21Aは、IGBTが1個当たり3本有することから、合計18本となる。)を半田付けすることによって実装したものが用いられている。
【0033】
つまり、メイン基板23は、フィルタ回路17を構成するコイル18およびコンデンサ19のリード端子18A,19A、並びにスイッチング回路20を構成する複数の半導体スイッチング素子21のリード端子21Aを、それぞれメイン基板23のスルーホールに貫通し、それを基板上のパターンに半田付けして実装することにより、メイン基板23上にフィルタ回路17およびスイッチング回路20を設けたものとされている。このメイン基板23は、矩形状でインバータ収容部8内に収納される大きさとされ、その4隅がインバータ収容部8の四隅に設けられているボス部27にネジ28を介して締め付け固定されるようになっている。
【0034】
フィルタ回路17を構成する高電圧系電装部品の1つであるコンデンサ19は、ケースに収容された構成とされており、
図2および
図3に示されるように、外形が角型形状(直方体形状)とされ、上面がフラットな平面形とされたものである。同様に、円筒状に巻かれたコイル18は、上面がフラットな平面形とされた半円筒形状のケースに収容された構成とされている。そして、これらのコイル18およびコンデンサ19は、矩形状とされたメイン基板23の一辺に沿って並設されるように実装されている。
【0035】
さらに、メイン基板23に実装されたコイル18およびコンデンサ19は、インバータ収容部8内でその底面を構成する円筒状ハウジング2の外周壁の軸線方向に沿う一側部の凹部9Bとされた底面上に接着剤を介して固定設置されることにより、各々のフラットな上面でメイン基板23の下面を支え、メイン基板23にかかる応力や振動を支持可能な構成とされている。また、コイル18およびコンデンサ19で下面が支持されたメイン基板23のコンデンサ19で支持されている部位の上面側に、高電圧ケーブル12のコネクタ13が接続されることにより、電源からの直流電力をインバータ装置7に入力するP−N端子29が上方に向けて立設された構成とされている。
【0036】
また、複数(6個)の半導体スイッチング素子21は、
図3に示されるように、インバータ収容部8内において、その底面を構成する円筒状ハウジング2の外周壁の軸線方向に沿う他側部の凹部9B上に立設されている放熱ブロック30に固定設置されている。放熱ブロック30は、熱伝導性材であるアルミ合金製の所定長さを有する直方体形状のブロック体であり、その左右両側の鉛直な側面に半導体スイッチング素子21が3個ずつ各3本のリード端子21Aを鉛直上方に向けてネジ止め固定されることにより、立体的に設置されている。この放熱ブロック30は、半導体スイッチング素子21での発熱をハウジング2側に放熱し、半導体スイッチング素子21を冷却する機能を担っている。
【0037】
上記の如く設置された複数の半導体スイッチング素子21の合計18本のリード端子21Aは、
図1に示されるように、メイン基板23のコイル18およびコンデンサ19で支えられている一辺と対向する他辺側に沿って設けられているスルーホール23Aを貫通して上方に突出され、該部で半田付けされることによりメイン基板23に実装される構成とされている。これによって、メイン基板23の上記一辺と対向する他辺側を、複数の半導体スイッチング素子21の多数のリード端子21Aを介して下方から支持可能な構成とされている。なお、この放熱ブロック30は、インバータ収容部8内の凹部9B上にネジ止め固定されているが、モータハウジング3側に一体成形した構成としてもよい。
【0038】
さらに、インバータ収容部8の底面の中央部後方には、
図4に示されるように、凸状の稜線部9Aと接触しないように、通信ケーブル24が接続される通信回路25が実装されたサブ基板26が3箇所のボス部31にネジ32を介して固定設置されている。このサブ基板26は、メイン基板23に比較してかなり小さい小型の基板とされており、耐振性を考慮して前端側から後端側にかけて末広がり形状とされた略三角形状の基板とされ、その前端の1点と後端の2点の3箇所で上記の如く固定設置されている。
【0039】
また、サブ基板26は、上記の如くインバータ収容部8の左右両側に配置されているフィルタ回路17用のコイル18およびコンデンサ19と、スイッチング回路20用の複数の半導体スイッチング素子21との間のスペースに配設され、メイン基板23の下方部位にあって、両基板23,26間の距離を可及的に大きくできるように、インバータ収容部8の底面の中央部後方位置に、前方から後方に向って下向きに傾斜された稜線部9Aに対して、末広がり形状に傾斜された傾斜辺26Aが斜めに交差するように配置されている。
【0040】
このサブ基板26と、その上方に配置されているメイン基板23とは、基板間接続端子33(
図3を参照)を介して互いに電気的、機械的に接続可能とされている。従って、この基板間接続端子33によっても、メイン基板23の一部を下方から支持できる構成とされている。また、サブ基板26には、通信ケーブル24がコネクタ34を介して接続可能とされており、そのコネクタ34のサブ基板26側の接続部は、サブ基板26の後端辺に沿って設けられている。
【0041】
一方、通信ケーブル24は、インバータ収容部8のフランジ部10に設けられている切欠き部10Aにシール用のグロメット35を設置し、該グロメット35を介してインバータ収容部8内に貫通されている。そして、通信ケーブル24は、グロメット35による固定部位から最短距離の位置でコネクタ34を介してサブ基板26と接続され、サブ基板26の一端を通信ケーブル24で固定支持できる構成とされている。
【0042】
さらに、インバータ装置7のスイッチング回路20を経て直流電力から三相交流電力に変換された電力は、メイン基板23側からUVWバスバー36を介してガラス密封端子37に出力されるようになっている。ガラス密封端子37は、インバータ収容部8内の前方部位にモータハウジング3を貫通するように設けられた端子設置穴3A(
図3参照)に設置され、UVWバスバー36からの三相交流電力をモータハウジング3内の電動モータに対して印加するものである。このガラス密封端子37にメイン基板23上に設置されたUVWバスバー36が連結されており、これによってもメイン基板23の一辺が固定支持されるようになっている。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態では、インバータ装置7の回路基板が、高電圧系のコイル18およびコンデンサ19を含むフィルタ回路17、IGBT等の複数の半導体スイッチング素子21を含むスイッチング回路20およびマイコン等を含む制御回路22等が実装されたメイン基板23と、低電圧系の通信回路25が実装されたサブ基板26とに2分割された構成とされ、両基板23,26が一定の距離を保って、上下に分離、絶縁された状態で設置されることにより、ノイズ干渉が抑制されるようになっている。
【0044】
また、矩形状とされた比較的大きいメイン基板23が、インバータ収容部8内に少なくとも4隅でボス部27にネジ28介して固定されることにより収容設置される一方、前端側から後端側にかけて末広がりの略三角形状とされたサブ基板26が、メイン基板23の下方部位であって、メイン基板23の両側に実装されているコイル18およびコンデンサ19と複数の半導体スイッチング素子21との間のスペースで、インバータ収容部8の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側に、前端側の1点と後端側の2点の3点でボス部31にネジ32を介して固定されることにより収容設置され、インバータ装置7が納まりよくコンパクトに収容設置される構成とされている。
【0045】
さらに、メイン基板23は、4隅がボス部27にネジ28で締め付け固定されるだけでなく、その一辺がインバータ装置7のフィルタ回路17を構成する複数の高電圧系電装部品であるコイル18およびコンデンサ19によっても下方から支持されるとともに、対向する他辺がインバータ装置7のスイッチング回路20を構成するIGBT等の複数の半導体スイッチング素子21の多数のリード端子21Aによって下方から支持されるように構成されている。
【0046】
また、上記以外にも、メイン基板23の中央側領域が、メイン基板23とその下方に配置されているサブ基板26との間を電気的、機械的に接続する基板間接続端子33により下方から支持されるとともに、他の一辺がガラス密封端子37とUVWバスバー36との接続によって固定支持されるようにしている。このため、車両の走行振動等によってメイン基板23に加わる加振力、コネクタ13をP−N端子29に差し込む際にメイン基板23に加わる押し込み力等の応力を、上記のように多数の支持点、固定点で受けることによって分散、緩和できるようにし、耐振性の向上を図っている。
【0047】
一方、サブ基板26は、耐振性能を高めながら固定箇所を減少できるように、末広がり形状とされた略三角形状の基板とされる一方、インバータ収容部8の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側の可及的の低位のスペースに、底部の稜線部9Aと接触しないように、末広がり形状に傾斜された傾斜辺26Aを斜めに交差させて、前端側の1点と後端側の2点の3点でボス部31にネジ32を介して固定設置されており、これによって、メイン基板23との間の絶縁距離を確保するとともに、耐振性を確保し、かつ固定箇所を3箇所に減少できるようにしている。
【0048】
また、サブ基板26は、その基板上の通信回路25と接続される通信ケーブル24のコネクタ34が、インバータ収容部8を貫通する通信ケーブル24のグロメット35による固定部位から最短距離の位置で、通信回路25に接続される構成とされており、これによって、サブ基板26を前後3点の固定点以外に、その通信回路25に接続される通信ケーブル24がインバータ収容部8を貫通する固定部位でも固定支持できるようにし、サブ基板26に対する耐振信頼性の向上を図っている。
【0049】
斯くして、本実施形態によれば、インバータ収容部8内にインバータ装置7が一体に組み込まれたインバータ一体型電動圧縮機1にあって、インバータ装置7の回路基板がインバータ収容部8内に収納される形状、大きさのメイン基板23と、該メイン基板23に電気的と接続されるそれより小さい小型のサブ基板26とに分割され、メイン基板23が少なくとも4隅でボス部27にネジ28を介して固定設置されるとともに、該基板23に実装されているコイル18、コンデンサ19および複数の半導体スイッチング素子21等の電装部品によっても固定支持され、サブ基板26が前端側から後端側にかけて末広がり形状とされ、メイン基板23の下方部位であって、インバータ収容部8の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前端側の1点と後端側の2点の3点でボス部31にネジ32を介して固定設置されている。
【0050】
このように、大きさが制約されるインバータ収容部8に対して、インバータ装置7の回路基板を、インバータ収容部8に大きさに合わせてメイン基板23とサブ基板26に分割することにより収納可能とし、メイン基板23をその4隅でボス部27に固定設置する以外に、メイン基板23に実装されているコイル18、コンデンサ19および複数の半導体スイッチング素子21等の電装部品によっても固定支持することにより耐振性を確保する一方、サブ基板26を末広がり形状とし、メイン基板23の下方部位であってインバータ収容部8の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の後方側のスペースに、前後の3点でボス部32に固定設置することにより耐振性を確保し、固定箇所を減らして設置することができる。
【0051】
このため、2枚のメイン基板23およびサブ基板26を含むインバータ装置7をインバータ収容部8に纏まりよく収納して設置し、インバータ装置7、ひいてはインバータ一体型電動圧縮機1のコンパクト化を図ることができるとともに、メイン基板23およびサブ基板26の耐振性を高め、ゲル材の充填等を不要とし、また、ネジによる固定箇所を極力少なくする等によりコスト低減を図ることができる。
【0052】
また、メイン基板23に高電圧系のフィルタ回路17、スイッチング回路20、制御回路22およびそれらの回路を構成するコイル18、コンデンサ19、半導体スイッチング素子21等の電装部品が実装され、サブ基板26に低電圧系の通信回路25およびその電装部品等が実装されているため、低電圧系のサブ基板26を高電圧が印加されるメイン基板23に対して分離、絶縁して設置することができる。従って、高電圧系のメイン基板23から低電圧系のサブ基板26への電磁ノイズの伝播を抑制し、ノイズ干渉による制御の信頼性低下を防止することができる。
【0053】
また、メイン基板23に高電圧系のコイル18、コンデンサ19等の電装部品を含むノイズ除去用のフィルタ回路17と、半導体スイッチング素子21等の電装部品を含むスイッチング回路20およびその制御回路22とが実装され、サブ基板26に低電圧系の通信回路25とその回路を構成する電装部品が実装されているため、高電圧系のコイル18やコンデンサ19あるいは半導体スイッチング素子21等で構成される回路20,21が実装されているメイン基板23と、低電圧系の通信回路25が実装されているサブ基板26とを分離、絶縁して設置し、両者間のノイズ干渉を抑制することができる。
【0054】
これによって、高電圧系のメイン基板23から低電圧系のサブ基板26への電磁ノイズの伝播を抑制し、ノイズ干渉による制御の信頼性の低下、通信エラー等を防止することにより、制御の信頼性を向上することができる。
【0055】
また、本実施形態では、メイン基板23が、矩形状とされ、インバータ収容部8内の上方部に少なくとも4隅でボス部27にネジ止め固定されるとともに、その両側に実装されているフィルタ回路17を構成するコイル18およびコンデンサ19と、スイッチング回路20を構成する複数の半導体スイッチング素子21によっても固定支持され、サブ基板26が、メイン基板23の下方部位であって、メイン基板23の両側に実装されているコイル18およびコンデンサ19と、複数の半導体スイッチング素子21との間のスペースに3点でボス部31にネジ止め固定されている。
【0056】
このため、矩形状のメイン基板23を4隅のボス部27以外に、その両側に実装されているフィルタ回路17用のコイル18およびコンデンサ19と、スイッチング回路20用の複数の半導体スイッチング素子21によっても固定支持し、同時にメイン基板23の下方部位であって、その両側に実装されているコイル18およびコンデンサ19と、複数の半導体スイッチング素子21との間のスペースを利用して、小型のサブ基板26を3点でボス部31に固定設置することができる。従って、メイン基板23をその実装部品で固定支持し、固定点を増やすことで耐振性を確保することができるとともに、その電装部品間のスペースを利用してサブ基板26を配置することで、インバータ装置7およびその基板23,26をインバータ収容部8内に纏まりよく収納して設置し、小型コンパクト化を図ることができる。
【0057】
さらに、サブ基板26は、インバータ収容部8の前方から後方に向って下向きに傾斜された底部の稜線部9Aに対して、末広がり形状に傾斜された傾斜辺26Aが斜めに交差するように配置されている。このため、サブ基板26をインバータ収容部8の底部と接触しない位置であって極力底部に近い低位位置に設置し、上方に設置されているメイン基板23との間の距離を可及的に大きくして設置することができる。従って、両基板23,26を狭いスペース内に十分な絶縁距離を確保して設置することができ、コンパクト化を維持しつつ、ノイズ干渉を抑制することができる。
【0058】
また、上記サブ基板26に、そのサブ基板26上の通信回路25と接続される通信ケーブル24のコネクタ34が、インバータ収容部8を貫通する通信ケーブル24の固定部位から最短距離の位置で接続される構成とされているため、サブ基板26を前後3点の固定点以外に、その通信回路25に接続される通信ケーブル24がインバータ収容部8を貫通するグロメット35等による固定部位でも固定支持することができ、これによって、サブ基板26を前後の3点の固定点以外でも支持することができ、サブ基板26に対する耐振信頼性を一層向上することができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、メイン基板23の上面に設置されるP−N端子24をコンデンサ19の上部位置に設置した構成としているが、コイル18の上部位置に設置した構成としてもよい。また、複数の半導体スイッチング素子21を設置する放熱ブロック30を直方体形状としているが、複数の半導体スイッチング素子21を固定設置する側面が鉛直面であれば、必ずしも直方体である必要はない。
【0060】
さらに、メイン基板23やサブ基板26は、上記実施形態で挙げた支持点、固定点以外の支持点、固定点で支持、固定されていてもよいことはもちろんである。また、インバータ装置7への直流電力の給電方式は、上記実施形態のものに限定されるものでなく、如何なる方式、構成のものであってもよい。また、サブ基板26の末広がり形状は、三角形状のほか、前端側の幅が狭くされている台形状であってもよい。