【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0023】
比較例1(Y
0.90La
0.10Ta
3O
9を含む遮熱コーティング用材料の製造)
フッ素樹脂製の反応器に収容した蒸留水900グラムに、純度99.99%以上のY(NO
3)
3・6H
2O粉末(関東化学社製)9グラム(0.023モル)と、純度99.99%以上のLa(NO
3)
3・6H
2O粉末(関東化学社製)1グラム(0.002モル)と、を入れて、室温(25℃)で1時間撹拌し、無色透明の水溶液を得た。次いで、この水溶液に、尿素90グラム(3モル)を投入し、室温(25℃)で1時間撹拌した。その後、得られた無色透明の水溶液に、純度99.9%以上のTa
2O
5粉末(レアメタリック社製)17グラム(0.038モル)を投入し、室温(25℃)で7時間撹拌し、懸濁液を得た。
次に、懸濁液を加熱して95℃とし、還流冷却しながら、攪拌下、反応(尿素加水分解反応)させた(反応時間:15時間)。その後、得られた反応液を、25℃、4,800rpmで30分間遠心分離し、下層のゲルを回収した。このゲルを、大量の蒸留水に投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、下層のゲルを回収した。そして、このゲルを、大量のイソプロピルアルコールに投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、沈殿物を回収した。
その後、沈殿物を、大気雰囲気中、120℃で24時間加熱し、乾燥粉末とした。次いで、この乾燥粉末をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力5MPa)に供し、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を、大気雰囲気中、1,400℃で1時間熱処理(仮焼)し、仮焼成形体を得た。得られた仮焼成形体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕した。
次いで、乾式粉砕物をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力25MPa)に供し、更に、冷間等方静水圧加圧(荷重2.5トン)を行って、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を大気雰囲気中、1,650℃で1時間熱処理した。得られた焼成体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕し、そのX線回折測定を行ったところ、焼成体は、実質的にY
0.90La
0.10Ta
3O
9からなる単斜晶系であることが分かった(
図2(A)参照)。また、焼成体を目視観察したところ、1,650℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは6.83g/cm
3であった。
上記のようにして得られた焼成体を、そのまま遮熱コーティング用材料とした。
【0024】
更に、上記焼成体を、レーザーフラッシュ法(JIS R1611に準拠)に供して、25℃、200℃、400℃、600℃、800℃及び1,000℃における熱伝導率を測定した。尚、固体の熱伝導率は、測定試料の気孔の影響を受けやすく、気孔を有すると、低めの値となることが知られている。そこで、緻密質の熱伝導率を得るために、下記式(10)に示される補正式(C. Wan, et al., Acta Mater., 58, 6166-6172 (2010))の利用が好ましいといわれている。
k’/k=1−4/3φ (10)
(k’:測定された熱伝導率、k:緻密質の熱伝導率、φ:気孔率)
上記の各温度における熱伝導率は、上記式(10)による、補正されたkとして、
図4に示した。
図4には、比較のために、M. R. Winter, et al., J. Am. Ceram. Soc., 90, 533-540 (2007)から引用した、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)のデータも掲載した。
【0025】
また、リガク社製熱機械分析装置「TMA8310」(型式名)を用い、大気中、昇温速度及び降温速度を毎分10℃として、25℃〜1,200℃の範囲において、焼成体の加熱及び冷却を行い、圧縮荷重法(荷重:98mN)により寸法変化を測定し、線膨張率を算出した。その結果を
図5に示す。また、上記温度範囲における線膨張係数は、9.61×10
−6/℃であった。
【0026】
実施例1(Y
0.80La
0.20Ta
3O
9を含む遮熱コーティング用材料の製造)
Y(NO
3)
3・6H
2O粉末、La(NO
3)
3・6H
2O粉末、尿素、及び、Ta
2O
5粉末の使用量を、それぞれ、8グラム(0.02モル)、2グラム(0.004モル)、90グラム(3モル)、及び、17グラム(0.038モル)とした以外は、比較例1と同様にして、焼成体を作製した。次いで、X線回折測定により、焼成体は、実質的にY
0.80La
0.20Ta
3O
9からなる正方晶系であることが分かった(
図2(B)参照)。また、焼成体を目視観察したところ、1,650℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは7.30g/cm
3であった。
その後、比較例1と同様にして、熱伝導率及び線膨張率を求めた。その結果を
図4及び
図6に示す。また、25℃〜1,200℃の範囲における線膨張係数は、8.43×10
−6/℃であった。
【0027】
実施例2(Y
0.70La
0.30Ta
3O
9を含む遮熱コーティング用材料の製造)
Y(NO
3)
3・6H
2O粉末、La(NO
3)
3・6H
2O粉末、尿素、及び、Ta
2O
5粉末の使用量を、それぞれ、7グラム(0.018モル)、3グラム(0.007モル)、90グラム(3モル)、及び、17グラム(0.038モル)とした以外は、比較例1と同様にして、焼成体を作製した。次いで、X線回折測定により、焼成体は、実質的にY
0.70La
0.30Ta
3O
9からなる正方晶系であることが分かった(
図2(C)参照)。また、焼成体を目視観察したところ、1,650℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは7.37g/cm
3であった。
その後、比較例1と同様にして、熱伝導率及び線膨張率を求めた。その結果を
図4及び
図7に示す。また、25℃〜1,200℃の範囲における線膨張係数は、7.86×10
−6/℃であった。
【0028】
実施例3(Y
1.08Ta
2.76Zr
0.24O
9を含む遮熱コーティング用材料の製造)
フッ素樹脂製の反応器に収容した蒸留水900グラムに、純度99.99%以上のY(NO
3)
3・6H
2O粉末(関東化学社製)10グラム(0.025モル)と、純度99.95%以上のZrCl
2O・8H
2O粉末(関東化学社製)3グラム(0.007モル)と、を入れて、室温(25℃)で1時間撹拌し、無色透明の水溶液を得た。次いで、この水溶液に、尿素90グラム(3モル)を投入し、室温(25℃)で1時間撹拌した。その後、得られた無色透明の水溶液に、純度99.9%以上のTa
2O
5粉末(レアメタリック社製)12グラム(0.026モル)を投入し、室温(25℃)で7時間撹拌し、懸濁液を得た。
次に、懸濁液を加熱して95℃とし、還流冷却しながら、攪拌下、反応(尿素加水分解反応)させた(反応時間:15時間)。その後、得られた反応液を、25℃、4,800rpmで30分間遠心分離し、下層のゲルを回収した。このゲルを、大量の蒸留水に投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、下層のゲルを回収した。そして、このゲルを、大量のイソプロピルアルコールに投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、沈殿物を回収した。
その後、沈殿物を、大気雰囲気中、120℃で24時間加熱し、乾燥粉末とした。次いで、この乾燥粉末をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力5MPa)に供し、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を、大気雰囲気中、1,400℃で1時間熱処理(仮焼)し、仮焼成形体を得た。得られた仮焼成形体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕した。
次いで、乾式粉砕物をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力25MPa)に供し、更に、冷間等方静水圧加圧(荷重2.5トン)を行って、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を大気雰囲気中、1,650℃で1時間熱処理した。得られた焼成体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕し、そのX線回折測定を行ったところ、焼成体は、実質的にY
1.08Ta
2.76Zr
0.24O
9からなる正方晶系であることが分かった(
図3参照)。また、焼成体を目視観察したところ、1,650℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは7.25g/cm
3であった。
上記のようにして得られた焼成体を、そのまま遮熱コーティング用材料とした。
その後、比較例1と同様にして、熱伝導率及び線膨張率を求めた。その結果を
図4及び
図8に示す。また、25℃〜1,200℃の範囲における線膨張係数は、8.87×10
−6/℃であった。
【0029】
図4〜
図8から明らかなように、比較例1は、本発明に係る一般式(1)及び(2)で表される化合物を含む遮熱コーティング材料を用いた実施例1〜3と同様に、25℃〜1,200℃の範囲において、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の熱伝導率よりも低く、遮熱性に優れることが分かる。しかしながら、比較例1に係る遮熱コーティング材料では、斜方晶系−正方晶系の相変態が確認された(
図5)のに対し、実施例1〜3に係る遮熱コーティング材料では、相変態が確認されなかった(
図6〜
図8)。即ち、実施例1〜3に係る遮熱コーティング材料は、25℃〜1,200℃の範囲において、体積変化に伴う変形、破断等が抑制されて耐久性に優れた皮膜等の形成に好適であることが分かる。