(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示処理部は、前記関心領域内における前記画像データを、前記第2の医用画像データのスライス位置又は時相に合わせて切換表示させる表示処理を行うように構成される請求項1記載の医用画像処理装置。
前記表示処理部は、前記関心領域内における画像データを、異なるコントラストとなる撮影条件で収集された第2の医用画像データに重畳表示させる表示処理を行うように構成される請求項7記載の医用画像処理装置。
前記表示処理部は、前記関心領域内における前記画像データを、前記第2の医用画像データの前記関心領域に対応する前記領域から所定の範囲内に重畳表示させる表示処理を行うように構成される請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
前記表示処理部は、前記関心領域内における前記画像データを、入力装置の操作によって指定された前記第2の医用画像データの位置に重畳表示させる表示処理を行うように構成される請求項1乃至9のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
前記表示処理部は、前記関心領域内における前記画像データの空間分解能に応じて前記関心領域内における前記画像データの拡大処理又は縮小処理を実行するように構成される請求項1乃至11のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
前記表示処理部は、前記複数のシリーズのうちの更に第3のシリーズに属する少なくとも1フレームの第3の医用画像データの対応する関心領域内における画像データを、前記第2の医用画像データの対応する領域と異なり、かつ前記第1の医用画像データの前記関心領域内における前記画像データとも異なる位置に重畳表示させる表示処理を行うように構成される請求項1乃至12のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
複数のスライス位置及び複数の時相の少なくとも一方に対応する複数フレームの医用画像データでそれぞれ構成される複数のシリーズを磁気共鳴イメージングによって収集するイメージングシステムと、
前記複数のシリーズのうちの第1のシリーズに属する少なくとも1フレームの第1の医用画像データの関心領域内における画像データを、前記複数のシリーズのうちの第2のシリーズに属する少なくとも1フレームの第2の医用画像データの前記関心領域に対応する領域と異なる領域に重畳表示させる表示処理を行う表示処理部と、
を備え、
前記表示処理部は、入力装置から入力されることで行われる前記第1の医用画像データの前記第1のシリーズ中のスライス方向又は時相方向に対する切換指示に応答して、前記関心領域内における前記画像データの切換頻度とは異なる切換頻度で、前記異なる領域に前記第1の医用画像データの関心領域内における画像データを重畳表示させた第2の医用画像データを前記第2のシリーズ中でスライス方向又は時相方向に切換表示させる磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態に係る医用画像処理装置、磁気共鳴イメージング装置及び医用画像処理プログラムについて添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る医用画像処理装置を含むシステム全体の構成図である。
【0010】
医用画像処理装置1は、ネットワーク2を介してMRI装置3、X線CT (computed tomography)装置4及び陽電子放出コンピュータ断層(PET: positron emission computed tomography)装置5等の画像診断装置6並びに医用画像サーバ7と接続される。
【0011】
医用画像処理装置1は、ワークステーション等の大規模なコンピュータに医用画像処理プログラムを読み込ませて構築することができる。但し、医用画像処理装置1を構成するために回路を用いてもよい。また、医用画像処理装置1を画像診断装置6に内蔵してもよい。その場合には、画像診断装置6を構成するコンピュータに医用画像処理プログラムがインストールされる。
【0012】
医用画像サーバ7は、医用画像保管通信システム(PACS: picture archiving and communication system)等の医用画像データを保存するための記憶装置である。尚、医用画像サーバ7にも簡易な画像処理機能及び画像ビューワとしての機能を備えることができる。従って、医用画像サーバ7に医用画像処理装置1としての機能を設けるようにしてもよい。
【0013】
画像診断装置6は、被検体の医用画像データを収集するための装置である。MRI装置3の場合には、被検体のMRイメージングを行うことによってMR画像データを収集するためのイメージングシステム3Aが備えられる。MRイメージングでは、静磁場下において高周波(RF: radio frequency)磁場及び傾斜磁場が被検体に印加されることによってMR信号が収集される。そして、MR信号に対する画像再構成処理によってMR画像データが生成される。
【0014】
MRI装置3等の画像診断装置6において収集された医用画像データは、医用画像サーバ7に転送して保存することができる。画像診断装置6においてマルチスライス撮像が行われた場合には、複数フレーム分のマルチスライス画像データが医用画像データとして取得される。1回の撮像により収集された複数のスライスに対応する医用画像データは、1つのシリーズに属する複数フレームの画像データとして分類される。
【0015】
従って、異なる日時に複数回に亘って同一の被検体の同一の部位について検査が行われた場合には、複数のシリーズに属する同一の撮像部位におけるマルチスライス画像データのセット又はシングルスライス画像データが医用画像データとして取得されることになる。
【0016】
また、マルチスライス画像データ又はシングルスライス画像データが動画としてダイナミック撮影された場合にも、複数の時相に対応する複数フレームの画像データが1つのシリーズに属する複数フレームの医用画像データとして分類される。つまり、1つのシリーズは、複数のスライス位置及び複数の時相の少なくとも一方に対応する複数フレームの医用画像データで構成される。
【0017】
例えば、MRI装置3であれば、イメージングシステム3Aにより互いに異なるタイミングでMRイメージングが実行されることにより、被検体から同一とみなせる位置に対応する複数フレームのMR画像データが医用画像データとして収集される。
【0018】
より具体的には、イメージングシステム3Aにより、複数のスライス位置及び複数の時相の少なくとも一方に対応する複数フレームの医用画像データでそれぞれ構成される複数のシリーズがMRイメージングによって収集される。
【0019】
そして、同一の被検体の同一とみなせる位置に対応する医用画像データを医用画像サーバ7に転送して保存することによって、被検体の術前及び術後の経過観察等のための比較読影を行うことが可能となる。
【0020】
また、術前及び術後の医用画像データに限らず、異なるコントラストとなる撮影条件で収集された医用画像データを比較読影の対象とすることもできる。具体例として、MRI装置3によって異なる撮像条件で撮影された縦緩和(T1: longitudinal relaxation)強調画像データと横緩和(T2:transverse relaxation)強調画像データ等のMR画像データが挙げられる。
【0021】
また、同一の被検体に限らず、異なる被検体の対応する位置の医用画像データを比較読影の対象とすることもできる。更に、同一のモダリティで撮影された医用画像データに限らず、異なるモダリティで撮影された医用画像データを比較読影の対象とすることもできる。
【0022】
医用画像処理装置1では、医用画像サーバ7等の医用システムから必要な医用画像データを取り込んで、同一の被検体の同一とみなせる位置に対応する医用画像データの比較読影を行うことができる。そのために、医用画像処理装置1は、入力装置8、表示装置9、画像取得部10及び表示処理部11を備えている。コンピュータに医用画像処理プログラムを読み込ませて医用画像処理装置1を構築する場合には、記憶装置に保存された医用画像処理プログラムがコンピュータの演算装置12を画像取得部10及び表示処理部11として機能させることとなる。
【0023】
また、医用画像処理装置1には、医用画像データに対して様々な画像処理を実行する機能を設けることができる。換言すれば、様々な画像処理を実行する機能を備えた医用画像処理装置1に、比較読影用の機能を設けることができる。
【0024】
画像取得部10は、互いに異なるタイミングで同一又は異なる被検体から収集された同一とみなせる位置に対応する比較読影用の複数フレームの医用画像データを医用画像サーバ7や画像診断装置6等の任意の医用システムから取得する機能を有する。すなわち、画像取得部10は、複数のスライス位置及び複数の時相の少なくとも一方に対応する複数フレームの医用画像データでそれぞれ構成される複数のシリーズを取得する機能を有している。
【0025】
尚、医用画像処理装置1が画像診断装置6に内蔵される場合には、画像取得部10が同一又は他の画像診断装置6のイメージングシステム3A,4A,5Aから医用画像データを取得するように構成される。また、画像取得部10が互いに異なる複数のモダリティで収集された複数フレームの医用画像データを取得するようにしてもよい。
【0026】
表示処理部11は、画像取得部10において取得された複数フレームの医用画像データの少なくとも1フレームの医用画像データのROI内における医用画像データを他のフレームの医用画像データと同時に表示させる表示処理を行う機能と、表示処理後の医用画像データを表示装置9に表示させる機能を有する。ROI内における医用画像データを他のフレームの医用画像データと同時に表示させる方法としては、他のフレームの医用画像データの対応する位置に重畳表示させる方法の他、他のフレームの医用画像データの対応する位置の近傍等の任意の位置に並列表示させる方法が挙げられる。
【0027】
ROI内における医用画像データを他のフレームの医用画像データの対応する位置に重畳表示させる場合には、被検体に固定された人体座標系における医用画像データの座標情報が必要となる。そこで、表示処理部11は、医用画像データに付帯情報として付帯する人体座標系における座標情報或いは医用画像データに関連付けられた人体座標系における座標情報を参照し、必要な座標変換処理、ROIに対応する領域の抽出処理及び画像データの合成処理を行うように構成される。
【0028】
医用画像データからの抽出領域及び医用画像データへの合成領域となるROIは、画像診断装置6や画像サーバ等の任意の医用システムにおいて事前に所望のフレームの医用画像データに対して設定しておくことができる。また、入力装置8の操作によって医用画像処理装置1において事後的に所望のフレームの医用画像データにROIを設定することもできる。設定されるROIに対してはアノテーション(注釈)を付与することもできる。
【0029】
被検体からマルチスライス画像データを収集する検査が繰返し行われた場合には、互いに異なる複数のシリーズ及び互いに異なる複数のスライス位置にそれぞれ対応する複数フレームの医用画像データが画像取得部10において取得される。この場合、各シリーズは検査の日時に対応しており、複数のシリーズ間において複数のスライス位置が互いに同一とみなせる。
【0030】
一方、同一のシングルスライス又はマルチスライスについてダイナミック撮影が繰返し行われた場合には、互いに異なる複数のシリーズ及び互いに異なる複数の時相にそれぞれ対応する複数フレームの医用画像データが画像取得部10において取得される。この場合にも、各シリーズは検査の日時に対応しており、複数のシリーズ間において単一又は複数のスライス位置が互いに同一とみなせる。
【0031】
複数のシリーズに属する医用画像データが収集されている場合には、複数のシリーズのうちの少なくとも1つのシリーズに属する少なくとも1フレームの医用画像データのROI内における医用画像データを、他のシリーズに属する医用画像データと同時に表示させる表示処理を行うことができる。つまり、互いに異なるシリーズに属する医用画像データ間において、ROI外における医用画像データを共通にすることができる。
【0032】
更に、各シリーズにおいてマルチスライス画像データが収集されている場合には、少なくとも1つのシリーズに属する複数のスライス位置に対応する複数フレームの医用画像データの各ROI内における医用画像データを、それぞれ他のシリーズに属する複数のスライス位置に対応する複数フレームの医用画像データの対応する各位置にそれぞれ重畳表示させる表示処理を行うことができる。つまり、互いに異なるシリーズに属するマルチスライス画像データ間において、スライス位置毎に設定されたROI外における医用画像データを共通にすることができる。
【0033】
図2は、
図1に示す表示処理部11において実行される表示処理の第1の例を説明する図である。
【0034】
図2において横軸方向はシリーズ軸方向を示し、時間軸に相当する。
図2は、基準となる1つのシリーズ(series1)を除く複数のシリーズ(series2, series3, series4, ..., seriesm)に属する複数のスライス位置(slice1, slice2, slice3, ..., slicen)に対応する複数フレームの医用画像データの各ROI内における医用画像データ(ROI11, ..., ROImn)を、それぞれ基準となるシリーズ(series1)に属する複数のスライス位置(slice1, slice2, slice3, ..., slicen)に対応する複数フレームの医用画像データ(I11, I12, I13, ..., I1n)の対応する各位置にそれぞれ重畳表示させる表示処理を行う場合の例を示している。換言すれば、ROI外における医用画像データとして基準となるある1つのシリーズ(series1)に属する医用画像データ(I11, I12, I13, ..., I1n)が用いられている。
【0035】
基準となる医用画像データは、例えば術前における医用画像データや術後における医用画像データのように、任意のタイミングで収集された医用画像データとすることができる。従って、
図2に示すように時間的に最も早い時期に収集されたマルチスライス画像データを基準となる医用画像データとする場合に限らず、最も新しい時期に収集されたマルチスライス画像データなど、任意のタイミングで収集されたマルチスライス画像データを共通に用いられる基準となる医用画像データにすることができる。
【0036】
ROI内の医用画像データとROI外の医用画像データとを合成して得られる複数フレームの医用画像データは、表示装置9に並列表示させる他、切換表示させることができる。複数フレームの医用画像データの切換表示を行う場合には、ページをめくる作業のように、予め指定した所定の順序で切換表示させることができる。予め指定した所定の順序で医用画像データを切換表示させる機能は、browse機能とも呼ばれる。
【0037】
例えば、表示処理部11が、入力装置8から入力された表示対象となる画像の切換指示に応答して、スライス方向に医用画像データを切換表示させる表示処理を行うようにすることができる。或いは、表示処理部11が、入力装置8から入力された表示対象となる画像の切換指示に応答して、シリーズ方向に医用画像データを切換表示させる表示処理を行うようにすることもできる。すなわち、スライス方向又はシリーズ方向にページをめくるように複数フレームの合成画像データを切換表示させることができる。
【0038】
スライス方向に医用画像データを切換表示させる場合には、表示対象となるシリーズが特定された状態で、スライス位置毎のROI内外の複数フレームの合成画像データが順次切換表示される。このため、ある検査時点における空間的な撮像部位の観察が可能となる。
【0039】
一方、シリーズ方向に医用画像データを切換表示させる場合には、表示対象となるスライス位置が特定された状態で、シリーズ毎のROI内外の複数フレームの合成画像データが順次切換表示される。このため、あるスライス位置におけるROI内の経過観察を行うことが可能となる。
【0040】
図2には、単一のROIが設定される例を示したが、複数のROIが設定された医用画像データに対しても同様な表示処理を行うことができる。また、比較読影の対象となる医用画像データが複数の時相に対応する画像データである場合には、スライス方向ではなく時相方向に医用画像データを並列表示又は切換表示させることができる。
【0041】
図3は、
図1に示す表示処理部11において実行される表示処理の第2の例を説明する図である。
【0042】
図3において横軸は、シリーズ軸方向及び時間軸方向を示す。
図3に示すように、少なくとも1フレームの医用画像データの複数のROI(R111, ..., Rmn3)内における医用画像データを他のフレームの医用画像データと同時に表示させる表示処理を行うことができる。
図3は、
図2に示す例と同様に、複数のシリーズ(series1, series2, series3, ..., seriesm)間でスライス位置(slice1, slice2, slice3, ..., slicen)毎に各ROI(R111, ..., Rmn3)外の医用画像データ(I11, I12, I13, ..., I1n)を共通にした例を示している。
【0043】
但し、複数のROIが存在する場合には、一部のROI内における医用画像データについても複数のシリーズ間で共通にすることができる。この場合、表示装置9に複数フレームの医用画像データをシリーズ方向に切換表示させると、複数のROI内における医用画像データの表示頻度が複数のROI毎に変わることとなる。従って、表示処理部11では、ROI毎に更新頻度を変えてシリーズ方向に医用画像データを切換表示させる表示処理が実行されることとなる。
【0044】
例えば、
図3に例示されるように、病変部位として着目される部分からの距離に応じた複数のROI(R111, ..., Rmn3)を設定することができる。そして、着目される部分からの距離がより長いROI内の医用画像データを、より多くのシリーズ(series1, series2, series3, ..., seriesm)間で共通にすることができる。これにより、着目部位に近い部分程、頻繁に医用画像データが更新される時系列の医用画像群を表示装置9に切換表示させることが可能となる。
【0045】
尚、ROI外の背景領域についても、シリーズ間の医用画像データにおいて共通にすることができる。これは、単一のROIが設定されている場合においても同様である。この場合には、ROI外よりもROI内の方が頻繁に更新される時系列の医用画像群を表示装置9に切換表示させることが可能となる。
【0046】
また、
図2に示す第1の例と同様に、第2の例においても、比較読影の対象となる医用画像データが複数の時相に対応する画像データである場合には、スライス方向ではなく時相方向に医用画像データを並列表示又は切換表示させることができる。
【0047】
図4は、
図1に示す表示処理部11において実行される表示処理の第3の例を説明する図である。
【0048】
図4は、i番目のシリーズ(seriesi)のj番目のスライス位置(slicej)における画像に設定されたROI(ROIij)内の画像を、基準となる画像と同時に表示させる場合の例を示す。1番目のシリーズ(series1)を基準とする場合には、1番目のシリーズ(series1)のj番目のスライス位置(slicej)に対応する画像I1jが表示される。
【0049】
そして、i番目のシリーズ(seriesi)のj番目のスライス位置(slicej)における画像に設定されたROI(ROIij)内の画像を、カーソルの近傍等のカーソルの位置に応じた位置に表示させることができる。すなわち、合成対象となるROI(ROIij)内の画像データを、意図的に合成先となる画像データ上の対応する位置と異なる位置に合成することができる。この場合、カーソルの位置を適切な位置にすれば、1番目のシリーズ(series1)のj番目のスライス位置(slicej)に対応する画像I1j上に、画像I1jに対して設定された点線枠で示されるROI(ROI1j)内の画像及びi番目のシリーズ(seriesi)のj番目のスライス位置(slicej)における画像に設定されたROI(ROIij)内の画像の双方が表示されることとなる。
【0050】
このため、ユーザは、異なるシリーズに属し、スライス位置が同一とみなせるROI内の画像を同一の画像上で比較することが可能となる。この場合、2フレームの画像を並列表示させて比較読影する場合に比べて、比較対象となる部分間の距離が短くなる。従って、視線の移動距離が短くなり、比較読影を容易にすることができる。
【0051】
図4に示すように、複数のシリーズのうちの第1のシリーズに属する少なくとも1フレームの第1の医用画像データのROI内における画像データを、他のシリーズに属する少なくとも1フレームの第2の医用画像データの、ROIに対応する領域と異なる領域に重畳表示させる表示処理を行うことができる。
【0052】
尚、
図4に示す例では、ROI内における画像データを、入力装置8の操作によって指定された第2の医用画像データの位置に重畳表示させる表示処理が実行されているが、ROI内における画像データを第2の医用画像データの、ROIに対応する領域から所定の範囲内に重畳表示させる表示処理を行うこともできる。この場合、ROI内における画像データを、自動的に第2の医用画像データの近傍等に重畳表示させることができる。
【0053】
第1の医用画像データのROI内における画像データを、第2の医用画像データの、ROIに対応する領域と異なる領域に重畳表示させる場合においても、第2の医用画像データを並列表示又は切換表示させることができる。例えば、表示処理部11が、入力装置8から入力された表示対象となる画像の切換指示に応答して第2の医用画像データをスライス方向又は時相方向に切換表示させる表示処理を行うようにすることができる。
【0054】
その場合、ROI内における画像データを、第2の医用画像データのスライス位置又は時相に合わせて切換表示させることができる。更に、ROI内における画像データの切換頻度を第2の医用画像データの切換頻度と変えることもできる。
【0055】
図5は、
図1に示す表示処理部11において実行される表示処理の第4の例を説明する図である。
【0056】
図5は、1番目に相当する同一のシリーズ(series1)に属する異なるスライス位置(..., slicej-1, slicej, slicej+1, ...)の第2の医用画像データをスライス方向に並列表示させた例を示す。尚、同様に、同一のシリーズに属する異なる時相の第2の医用画像データを時相方向に並列表示させることもできる。
【0057】
図5に示すように、i番目に相当する第1のシリーズと異なる他のシリーズに属する複数フレームの第2の医用画像データをスライス方向又は時相方向に並べて表示させることができる。その場合、複数フレームの第2の医用画像データのスライス位置又は時相に対応するスライス位置又は時相の複数フレームの第1の医用画像データのROI内における複数の画像データ(..., (ROIi, j-1), (ROIi, j), (ROIi, j+1), ...)を、それぞれ対応する複数フレームの第2の医用画像データの、ROIに対応する各領域(..., (ROI1, j-1), (ROI1, j), (ROI1, j+1), ...)と異なる各領域に重畳表示させることができる。つまり、第2の医用画像データのスライス位置又は時相に、第1の医用画像データのROI内における画像データのスライス位置及び時相を対応させることができる。
【0058】
また、上述したように、
図5に示すような複数の合成画像データを並列表示させる代わりに切換表示させることもできる。
【0059】
図6は、
図1に示す表示処理部11において実行される表示処理の第5の例を説明する図である。
【0060】
ROI内の画像データの重畳表示の対象となる第2の医用画像データにおいてROIの位置を対応させない場合には、ROI内の複数の画像データを第2の医用画像データに重畳表示させることが可能となる。
【0061】
そこで、
図6に示すように、複数のシリーズのうちの第1のシリーズに属する少なくとも1フレームの第1の医用画像データのROI内における画像データに加えて、更に第3のシリーズに属する少なくとも1フレームの第3の医用画像データの対応するROI内における画像データを、第2の医用画像データの対応する領域と異り、かつ第1の医用画像データのROI内における画像データとも異なる位置に重畳表示させることができる。
【0062】
図6に示す例では、1番目のシリーズに属するスライスjの第2の医用画像データI1jの領域ROI1, jと異なる位置に、第1の医用画像データのROI内における画像データROI2,jが重畳表示されている。更に、第1の医用画像データのROIに対応する第3の医用画像データのROI内における画像データROI3,jが、第2の医用画像データI1jの領域ROI1, j及び第1の医用画像データのROI内における画像データROI2,jの表示領域の双方と異なる位置に重畳表示されている。
【0063】
このように、ROI内の複数の画像データを第2の医用画像データに重畳表示させれば、狭い範囲で視線を移動させるだけで、3つ以上の画像の比較読影を行うことが可能となる。もちろん、スライス方向軸を時相軸に変えてもよい。
【0064】
尚、合成対象となるROI内の画像を、空間分解能に応じた最適なサイズで表示させることができる。従って、空間分解能が高い場合には、合成対象となるROI内の画像を拡大表示させることもできる。すなわち、合成対象となるROI内の画像が極端に粗く表示されないように、表示処理部11がROI内における画像データの空間分解能に応じて合成対象となるROI内の画像データの拡大処理又は縮小処理を実行することができる。
【0065】
上述したように、複数のシリーズに属する医用画像データは、同種のモダリティのみならず、異種のモダリティで収集してもよい。従って、表示処理部11では、第1の医用画像データのROI内における画像データを、同種又は異種のモダリティで収集された第2の医用画像データに重畳表示させる表示処理が実行される。
【0066】
第1の医用画像データのROI内における画像データを、同種のモダリティで収集された第2の医用画像データに重畳表示させる場合には、ROI内における画像データを、異なる時期に収集された第2の医用画像データ又は異なるコントラストとなる撮影条件で収集された第2の医用画像データに重畳表示させる表示処理を行うことができる。
【0067】
一方、異種のモダリティで複数のシリーズに属する医用画像データが収集された場合には、画像取得部10において、互いに異なる複数のモダリティで収集された複数フレームの医用画像データが取得される。
【0068】
そして、表示処理部11は、複数のモダリティのうちの少なくとも1つのモダリティで収集された少なくとも1フレームの医用画像データのROI内における医用画像データを、他のモダリティで収集された医用画像データと同時に表示させる表示処理を行うように構成される。例えば、MRI装置3、X線CT装置4及びPET装置5のいずれかで収集された医用画像データのROI内における医用画像データを、他の画像診断装置6で収集された医用画像データと同時に表示させる表示処理を行うことができる。
【0069】
また、比較読影の対象となる医用画像データは、断層画像データに限らず他の三次元 (3D: three dimensional) 画像データとすることもできる。尚、3D画像データとは、ここではボリューム画像データ又はマルチスライス画像データ等の空間的な画像データを元データとして表示用に生成される二次元(2D: two dimensional)画像データを指す。
【0070】
3D画像データの具体例としては、ボリューム・レンダリング(VR: volume rendering)画像データ、サーフェス・レンダリング(SR: surface rendering)画像データ、断面変換(MPR: multi-planar reconstruction)画像データ、最大値投影(MIP: Maximum Intensity Projection)画像データ等の画像データが挙げられる。
【0071】
但し、3D画像データの種類によっては、画像データに座標情報が付帯されない場合がある。その場合には、表示処理部11が3D画像データの生成に用いられたボリューム画像データ等の元データを参照することによって表示対象となる3D画像データの座標情報を取得することができる。或いは、表示処理部11が、従来、座標情報が付帯されない3D画像データに空間的な座標情報を付帯又は関連付けるようにすることもできる。その場合には、表示処理部11が3D画像データに付帯される情報又は3D画像データに関連付けられた情報を参照することによって3D画像データの人体座標系における座標情報を取得することができる。
【0072】
また、上述したように、第1の医用画像データのROI内における画像データを、同一の被検体の第2の医用画像データに重畳表示させる表示処理に限らず、第1の医用画像データのROI内における画像データを、異なる被検体の第2の医用画像データに重畳表示させる表示処理を行うこともできる。つまり、リファレンス用の医用画像データを用いた比較読影用の表示処理を行うことができる。
【0073】
次に医用画像処理装置1の動作および作用について説明する。
【0074】
図7は、
図1に示す医用画像処理装置1において比較読影用の医用画像を表示させる際の流れを示すフローチャートである。
【0075】
ここでは、被検体の術前にマルチスライス収集された第1の医用画像データと術後にマルチスライス収集された第2の医用画像データとを比較読影用に表示させる場合を例に説明する。
【0076】
まずステップS1において、被検体の術前において病変部を含む着目領域についてのイメージングが実行される。例えば、MRI装置3のイメージングシステム3Aによって被検体からMR信号が収集され、被検体のマルチスライスMR画像データが第1の医用画像データとして生成される。生成された第1の医用画像データは、ネットワーク2を介して医用画像サーバ7に転送することができる。
【0077】
このため、第1の医用画像データは、医用画像サーバ7において第1のシリーズに属するマルチスライス画像データとして管理及び保管される。一方、医師等のユーザは、被検体に対して手術を施すことができる。
【0078】
次に、ステップS2において、被検体の術後における病変部を含む着目領域についてのイメージングが実行される。すなわち、第1の医用画像データと同様な流れで第2の医用画像データがMRI装置3等の画像診断装置6において収集される。これにより、例えば、第2の医用画像データとして第2のシリーズに属するマルチスライス画像データが医用画像サーバ7において管理及び保管される。
【0079】
次に、ステップS3において、第1のシリーズに属するマルチスライス画像データ又は第2のシリーズに属するマルチスライス画像データにROIが設定される。ROIは、任意の医用システムを利用して設定することができる。
【0080】
そこで、例えば、第1の医用画像データ及び第2の医用画像データが医用画像サーバ7から医用画像処理装置1に取り込まれる。すなわち、入力装置8から入力された画像検索指示に従って医用画像処理装置1の画像取得部10が医用画像サーバ7からネットワーク2を介して第1の医用画像データ及び第2の医用画像データを取得する。画像取得部10により取得された第1の医用画像データ及び第2の医用画像データは、表示処理部11に与えられる。
【0081】
次に、入力装置8からROIの設定情報が入力され、表示処理部11は、第1の医用画像データ又は第2の医用画像データにROIを設定する。ROIは、スライス位置及び時相ごとに設定することができる。また、単一のフレームのスライス画像データ上に複数のROIを設定することもできる。
【0082】
次に、ステップS4において、必要に応じてユーザは、ROIが設定されたマルチスライス画像データをスライス方向に切換表示させる。すなわち、入力装置8からbrowse方向の指定情報が医用画像処理装置1の表示処理部11に入力される。そして、表示処理部11は、表示装置9にROIが設定された術前又は術後におけるマルチスライス画像データを順次切換表示させる。これにより、ユーザは、術前又は術後における病変部位を含む空間的な領域を観察することができる。
【0083】
次に、ステップS5において、ユーザは、ROIが設定されたマルチスライス画像データのROI内の画像データを、ROIが設定されていない側の他方のマルチスライス画像データに合成してbrowse表示を行う。すなわち、例えば入力装置8から合成対象となるマルチスライス画像データの選択情報及びbrowse方向の指定情報が医用画像処理装置1の表示処理部11に入力される。そして、表示処理部11は、ROIが設定された術前又は術後におけるマルチスライス画像データのROI内における画像データの抽出処理をスライス位置毎に順次行う。続いて、抽出したスライス位置毎のROI内の画像データを順次対応する他方のマルチスライス画像データに合成する。
【0084】
そして、表示処理部11は、合成されたマルチスライス画像データを順次切換表示させる。この結果、医用画像処理装置1の表示装置9には、ROIの外部における画像が第1及び第2のシリーズ間で固定された状態でROIの内部における画像のみが更新されて表示される。これにより、ユーザは、術前及び術後の双方における病変部位を含む空間的な領域を観察することができる。
【0085】
尚、抽出されたROI内の医用画像データと、合成先となった医用画像データとを関連付ける情報を作成し、ROI内の医用画像データ及び合成先の医用画像データの少なくとも一方に付帯させることができる。このリンク情報の作成処理も、表示処理部11において行うことができる。これにより、比較読影用に医用画像データを再度表示させる際に、合成された状態の医用画像データを速やかに復元することが可能となる。また、リンク情報を医用画像データに付帯させて転送すれば、他の医用画像処理装置においても合成された状態の医用画像データを再現することができる。
【0086】
つまり以上のような医用画像処理装置1は、ROI外の医用画像データを異なるシリーズ間で共通にすることによって比較読影の際に取り扱われる医用画像データのデータサイズを低減できるようにしたものである。
【0087】
このため、医用画像処理装置1によれば、画像全体のBrowseのみならず、ROIの設定によってマークされた領域のみをBrowseすることができる。また、ROI内の画像を他の画像の対応する位置と異なる位置に合成表示することによって、異なる時期に撮像された複数の画像を同時に観察することが可能となる
【0088】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。