特許第6173789号(P6173789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6173789太陽電池用封止材組成物、太陽電池用封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173789
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】太陽電池用封止材組成物、太陽電池用封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20170724BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-129391(P2013-129391)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-5594(P2015-5594A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 達也
(72)【発明者】
【氏名】千田 洋毅
(72)【発明者】
【氏名】尾之内 久成
(72)【発明者】
【氏名】中西 貞裕
【審査官】 河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238719(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102559080(CN,A)
【文献】 特開2013−077705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048−31/049
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および分子内にフェノール骨格を有するヒンダードアミン系化合物を含む太陽電池用封止材組成物であって、
前記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、前記マトリックス樹脂100重量部に対し、前記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部、および、前記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部含み、
さらに有機蛍光化合物を含むことを特徴とする、太陽電池用封止材組成物。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系化合物がジブチルヒドロキシトルエン骨格を有する、請求項1に記載の太陽電池用封止材組成物。
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系化合物の分子量が400〜4000である、請求項1または2に記載の太陽電池用封止材組成物。
【請求項4】
前記ヒンダードアミン系化合物が2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル構造を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池用封止材組成物。
【請求項5】
さらに、分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池用封止材組成物。
【請求項6】
前記マトリックス樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする、請求項1〜のいずれかに記載の太陽電池用封止材組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の太陽電池用封止材組成物を用いて形成された太陽電池用封止材層。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の太陽電池用封止材組成物を用いて形成された太陽電池用封止材層を含む太陽電池モジュール。
【請求項9】
太陽電池セルが、結晶シリコン太陽電池である、請求項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用の封止材層組成物、太陽電池用封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽エネルギーの利用により、従来の化石燃料に対する有望な代替エネルギー源が提供され、したがって、太陽エネルギーを電気に変換することができるデバイスの開発、たとえば、光起電デバイス(これはまた、太陽電池として知られている)などの開発が近年では大きく注目されている。いくつかの異なるタイプの成熟した光起電デバイスが開発されており、これらには、例をいくつかあげると、シリコン系デバイス、III−VおよびII−VIのPN接合デバイス、銅−インジウム−ガリウム−セレン(CIGS)薄膜デバイス、有機増感剤デバイス、有機薄膜デバイス、ならびに、硫化カドミウム/テルル化カドミウム(CdS/CdTe)薄膜デバイスが含まれる。これらのデバイスに関してのより詳細が、文献などに見出され得る(たとえば、非特許文献1参照)。しかしながら、封止材を含むこれらのデバイスの耐久性や光安定性等は依然として改善の余地があり、この効率を改善するための技術を開発することが、多くの研究者にとっては進行中の課題である。
【0003】
既存の太陽電池用途の封止材層では、樹脂の酸化劣化や光劣化等を防ぐために種々の添加剤が含まれている。たとえば、酸化防止剤や光安定化剤を添加して、長期使用による樹脂や添加剤の劣化に起因する白濁や黄変等の変色を防ぐ方法が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、通常、太陽電池用の封止材層は、セル、ガラス、およびバックシートなどの部材からなる太陽電池モジュールの形状を保持する役割も担っており、十分な架橋性を有していることも求められている。しかしながら、上記方法における酸化防止剤や光安定化剤の多量の添加は、封止材層のマトリックス樹脂の架橋性を著しく低下させてしまい、封止材層としての特性が失われてしまう問題がある。一方、架橋性を維持するために有機過酸化物等の添加量を増量すると、架橋反応後に封止材層内に残留した有機過酸化物およびその分解物が別異のマトリックス樹脂劣化の原因となってしまう。
【0005】
また、酸化防止剤としてよく利用されるフェノール系酸化防止剤は、その酸化防止機構において変色してしまい、封止材層に多量に添加すると黄変の原因になりうることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−243682号公報
【非特許文献1】Linら、「High Photoelectric Conversion Efficiency of Metal Phthalocyanine/Fullerene Heterojunction Photovoltaic Device」(International Journal of Molecular Sciences、第12巻、476頁、2011年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に照らし、モジュールラミネート時に十分に架橋硬化可能であって、長期間紫外線に曝されても劣化が抑制された太陽電池用封止材層を形成可能な太陽電池用組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、モジュールラミネート時に十分に架橋硬化可能であって、長期間紫外線に曝されても劣化が抑制された太陽電池用封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す太陽電池用封止材組成物、太陽電池用封止材層、および、それを用いた太陽電池モジュールにより上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の太陽電池用封止材組成物は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および分子内にフェノール骨格を有するヒンダードアミン系化合物を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の太陽電池用封止材組成物を用いることにより、モジュールラミネート時に十分に架橋硬化可能であって、長期間紫外線に曝されても劣化が抑制された太陽電池用封止材層を容易に形成できる。上記作用効果の発現について、下記記載のメカニズムによるものであると推測しているが、下記メカニズムを経由することが必須であると特定するものではない。まず、上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体は低分子量のためマトリックス樹脂内で拡散しやすく効果的に封止材層内で酸化劣化を抑制しているものと推測しているが、低分子量であるためにブリードアウトしてしまう懸念がある。一方、上記ヒンダードアミン系化合物はより分子量が大きく、ブリードアウトの懸念が低減され、長期間の機能発現が維持しやすくなったものと推測される。本発明の太陽電池用封止材組成物は、上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および上記ヒンダードアミン系化合物を含むことにより、架橋阻害することなく長期にわたって酸化劣化を防止でき、かつ、光劣化を抑制できることが可能となる。
【0012】
なお、本発明におけるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)とは、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを意味する。ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体とは、上記ジブチルヒドロキシトルエンを化学的に修飾した化合物を意味する。
【0013】
また、本発明におけるヒンダードアミンとは、一般に、光照射等により系中に発生したラジカルを直接補足して、自らの立体障害構造や共役(共鳴)構造によるラジカル種の安定化により、ラジカルが連鎖反応していく過程を止める(抑制する)性質を有するアミン化合物を意味する。
【0014】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記ヒンダードアミン系化合物がジブチルヒドロキシトルエン骨格を有することが好ましい。上記ヒンダードアミン系化合物を用いることにより、ヒンダードアミン系化合物自体にもさらに酸化防止剤としての機能も付与することができる。その結果、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、より効果的に長期にわたって酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果の発現が可能となる。
【0015】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記ヒンダードアミン系化合物が2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル構造を有することが好ましい。上記構造を含むことにより、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、より確実に長期にわたって酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果の発現しやすくなる。
【0016】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記ヒンダードアミン系化合物の分子量が400〜4000であることが好ましい。上記ヒンダードアミン系化合物を用いることにより、ヒンダードアミン系化合物自体がブリードアウトしてしまうことをより効果的に抑制できる。その結果、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、より確実に長期にわたって酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果の発現が可能となる。
【0017】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、さらに、分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましい。上記ヒンダードアミン系化合物をさらに併用することにより、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、長期にわたって上記の酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果が発現しやすくなる場合がある。
【0018】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、上記マトリックス樹脂100重量部に対し、上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部含むことが好ましい。上記配合量とすることにより、マトリックス樹脂の架橋阻害を、より効果的に抑制できる。その結果、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、より確実に架橋阻害することなく長期にわたって酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果の発現が可能となる。
【0019】
なお、上記主成分とするとは、上記マトリックス樹脂が複数の樹脂の混合物である場合、重量比で50重量%以上含む場合をいうものとする。上記重量比は、70重量%以上であることがより好ましく、90重量%であることがさらに好ましい。
【0020】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、さらに紫外線吸収化合物を含むことが好ましい。上記紫外線吸収化合物を用いることにより、さらなる紫外線劣化の抑制や波長変換機能を付与等が可能となり、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層をより多機能にすることができる。
【0021】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記マトリックス樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とすることが好ましい。上記マトリックス樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とすることにより、より確実に光透過性や耐久性に優れた太陽電池用封止材層とすることができる。
【0022】
一方、本発明の太陽電池用封止材層は、上記太陽電池用封止材組成物を用いて形成されたことを特徴とする。上記組成物を用いて形成されることにより、モジュールラミネート時に十分に架橋硬化可能であって、長期間紫外線に曝されても劣化が抑制された太陽電池用封止材層となる。
【0023】
他方、本発明の太陽電池モジュールは、上記太陽電池用封止材組成物を用いて形成された太陽電池用封止材層を含むことを特徴とする。上記太陽電池モジュールは、上記太陽電池用封止材層を有するため、モジュールラミネート時に十分に架橋硬化可能であって、長期間紫外線に曝されても劣化が抑制された太陽電池モジュールとなる。
【0024】
また、本発明の太陽電池モジュールにおいて、上記太陽電池セルが、結晶シリコン太陽電池であることが好ましい。上記太陽電池モジュールは、上記太陽電池セルを積層する太陽電池モジュールに用いることでより効果的に光電変換効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の太陽電池用封止材層を用いた太陽電池モジュールの例を示す。
図2】本発明の太陽電池用封止材層を用いた太陽電池モジュールの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(太陽電池用封止材組成物)
本発明の太陽電池用封止材組成物は、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および分子内にフェノール骨格を有するヒンダードアミン系化合物を含むことを特徴とする。上記太陽電池用封止材組成物は、光学的に透明なマトリックス樹脂中に、少なくともジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および分子内にフェノール骨格を有するヒンダードアミン系化合物を分散させること等により形成することができる。本発明の太陽電池用封止材組成物は、上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体および上記ヒンダードアミン系化合物を含むことにより、モジュールラミネートの時点においても架橋性樹脂が十分な架橋性を有し、長期間紫外線に曝されても紫外線吸収化合物のUVカット性が維持され、かつマトリックス樹脂等の変色が起こりにくい太陽電池用封止材層を形成することができる。
【0028】
本発明におけるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体として、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)のほか、上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の一部または複数個所を化学的に修飾した化合物をあげることができる。上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体として、たとえば、ジブチルヒドロキシトルエンのナトリウム塩、カリウム塩などの中和塩、ベンゼン環上またはアルキル基の一部置換した誘導体などをあげることができる。なかでも、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を用いることが好ましい。
【0029】
上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)の分子量は220であるが、上記ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)誘導体を用いる場合には、上記誘導体の分子量が220〜500であることが好ましく、220〜400であることがより好ましく、220〜300であることがさらに好ましい。なお、分子量測定は、MSスペクトルによるものとする。
【0030】
本発明における分子内にフェノール骨格を有するヒンダードアミン系化合物として、分子内にフェノール骨格を有し、かつ、光照射等により系中に発生したラジカルを直接補足して、自らの立体障害構造と共役によるラジカル種の安定化により、ラジカルが連鎖反応していく過程を止める(抑制する)性質を有するアミン化合物が用いられる。また、上記ヒンダードアミン系化合物は、紫外線波長(300〜400nm)において実質的に吸収極大を示さないことが好ましい。
【0031】
上記ヒンダードアミン系化合物が、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル構造を有することが好ましい。また、たとえば、フェノール骨格のヒドロキシル基の隣接部分(o−位等)に他の分子が接近しにくく(立体障害に)なるようにt−ブチル基等のようなかさ高い置換基を有するアミン系化合物などをあげることができる。
【0032】
上記ヒンダードアミン系化合物として、たとえば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(分子量:685)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニロキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニロキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(分子量:722)などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0033】
上記ヒンダードアミン系化合物として、市販品を適宜用いることができる。上記ヒンダードアミン系化合物として、たとえば、Tinuvin144(分子量:685、BASF社製)などをあげることができ、いずれも分子内にフェノール骨格を有している。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
また、上記太陽電池用封止材組成物において、上記ヒンダードアミン系化合物の分子量が400〜4000であることが好ましく、500〜2000であることがより好ましく、600〜1000であることがさらに好ましい。400より小さい分子量であると、上記ヒンダードアミン系化合物自体がブリードアウトしてしまいやすい。一方、4000以上の分子量であると、マトリックス樹脂との相溶性等の問題が生じてしまう場合がある。なお、分子量測定は、MSスペクトルによるものとする。
【0035】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、上記マトリックス樹脂100重量部に対し、上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部であることが好ましく、0.01〜0.15重量部であることがより好ましく、0.02〜0.1重量部であることがさらに好ましい。上記範囲で配合することにより、主に酸化防止剤としての機能を好適に得ることができる。
【0036】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、上記マトリックス樹脂100重量部に対し、上記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部であることが好ましく、0.005〜0.1重量部であることがより好ましく、0.01〜0.05重量部であることがさらに好ましい。上記範囲で配合することにより、主に光安定化剤としての機能を好適に得ることができる。
【0037】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、上記マトリックス樹脂100重量部に対し、上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部含むことが好ましい。また、上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.005〜0.1重量部含むこととすることができ、上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.001〜0.2重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.01〜0.05重量部含むこととすることができる。また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.01〜0.15重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部含むこととすることができ、また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.01〜0.15重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.005〜0.1重量部含むこととすることができ、また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.01〜0.15重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.01〜0.05重量部含むこととすることができる。また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.02〜0.1重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部含むこととすることができ、また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.02〜0.1重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.005〜0.1重量部含むこととすることができ、また上記ジブチルヒドロキシトルエン誘導体を0.02〜0.1重量部、および、上記ヒンダードアミン系化合物を0.01〜0.05重量部含むこととすることができる。上記配合量とすることにより、マトリックス樹脂の架橋を阻害することをより効果的に抑制できる。その結果、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、より確実に架橋阻害することなく長期にわたって酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果の発現が可能となる。上記作用効果は、各成分を単独で添加した場合と比べて、単なる総和的効果にとどまらず、相乗効果まで得られるものである。
【0038】
また、上記太陽電池用封止材組成物において、さらに、分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物を含むことが好ましい。上記ヒンダードアミン系化合物をさらに併用することにより、上記組成物により形成される太陽電池用封止材層は、長期にわたって上記の酸化劣化防止効果および光劣化抑制効果が発現しやすくなる場合がある。
【0039】
上記分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物として、市販品を適宜用いることができる。上記分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物として、たとえば、ビス−(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin123、BASF社製、分子量737)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート(LA−52、ADEKA社製、分子量847)、テトラキス(2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート(LA−57、ADEKA社製、分子量791)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシリックアシッド テトラメチルエステル 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエタノール(LA−63P、ADEKA社製、分子量約2000)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシリックアシッド テトラメチルエステル 2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエタノール(LA−68、ADEKA社製、分子量約1900)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(LA−72、ADEKA社製、分子量509)、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(LA−77Y、ADEKA社製、分子量481)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(LA−77G、ADEKA社製、分子量481)、ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート(LA−81、ADEKA社製、分子量681)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−82、ADEKA社製、分子量239)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(LA−87、ADEKA社製、分子量225)、SONGLIGHT1190(SONGWON社製、分子量2286)、SONGLIGHT1230(SONGWON社製、分子量737)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(SONGLIGHT2920、SONGWON社製、分子量509)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(SONGLIGHT7700、SONGWON社製、分子量481)、ポリ(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール−オルト−1,4−ブタンジオイック アシッド)(Uvinul5062H、BASF社製、分子量3100−4000)、Uvinul5050H(BASF社製、分子量3000−4000)、N,N’−ビスホルミル−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ヘキサメチレンジアミン(Uvinul4050H、BASF社製、分子量450)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Uvinul4077H、BASF社製、分子量481)などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、上記太陽電池用封止材組成物のマトリックス樹脂がエチレン系共重合体を主成分とし、上記マトリックス樹脂100重量部に対し、上記分子内にフェノール骨格を有さないヒンダードアミン系化合物を0.001〜0.3重量部であることが好ましく、0.005〜0.1重量部であることがより好ましく、0.01〜0.05重量部であることがさらに好ましい。上記範囲で配合することにより、主に光安定化剤としての機能をより好適に得やすくなる場合がある。
【0041】
上記太陽電池用封止材組成物として、光学的に透明なマトリックス樹脂を用いることが好ましい。上記マトリックス樹脂として、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリエチレンテトラフルオロエチレンなどのポリオレフィン類、ポリイミド、非晶質ポリカーボネート、シロキサンゾル−ゲル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などをあげることができる。これらのマトリックス樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
上記ポリ(メタ)アクリレートとして、ポリアクリレートおよびポリメタクリレートを含み、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル樹脂などをあげることができる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどをあげることができる。ポリビニルアセテートとしては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVBなどをあげることができる。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂の構成モノマーとして、たとえば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジルなどをあげることができる。さらには、上記アルキル基が水酸基、エポキシ基、ハロゲン基などで置換された(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸エステルにおいて、エステル部位のアルキル基の炭素数が1〜20であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましい。
【0045】
上記(メタ)アクリル酸エステル樹脂として、(メタ)アクリル酸エステルのほかに、これらと共重合可能な不飽和モノマーを用いて共重合体としてもよい。
【0046】
上記不飽和モノマーとして、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和有機酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。これらの不飽和モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸エステルにおいて、なかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびその官能基置換した(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどを用いることが好ましく、耐久性や汎用性の観点からは、メタクリル酸メチルがより好ましい例としてあげることができる。
【0048】
上記(メタ)アクリル酸エステルと上記不飽和モノマーの共重合体として、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などをあげることができる。なかでも、耐湿性や汎用性、コスト面の観点からは、エチレン系共重合体が好ましく、なかでもエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましく、また耐久性と表面硬度の点からは、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体と(メタ)アクリル酸エステルとの併用が、上記各観点から好ましい。
【0049】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体として、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、酢酸ビニル単量体単位の含有率が20〜40重量部であることが好ましく、25〜35重量部であることがより好ましく、上記含有率の場合には希土類錯体などのマトリックス樹脂中への均一分散性の観点から好ましい。
【0050】
光学的に透明なマトリックス樹脂として上記エチレン−酢酸ビニル共重合体を用いる場合には、市販品を適宜使用することができる。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体の市販品として、たとえば、ウルトラセン(東ソー株式会社製)、エバフレックス(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、サンテックEVA(旭化成ケミカルズ社製)、UBE EVAコポリマー(宇部丸善ポリエチレン社製)、エバテート(住友化学社製)、ノバテックEVA(日本ポリエチレン社製)などをあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
上記マトリックス樹脂において、架橋性モノマーを加えて、架橋構造を有する樹脂としてもよい。
【0052】
上記架橋性モノマーとして、たとえば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(たとえば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等)、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(たとえば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等)、多価カルボン酸(たとえば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(たとえば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(たとえば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル)、ウレタン(メタ)アクリレート(たとえば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等)、などをあげることができる。これらの架橋性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、上記架橋性モノマーにおいて、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが好ましいものとしてあげられる。
【0053】
上記架橋性モノマーを含むマトリックス樹脂を用いる場合、たとえば、上記架橋モノマーに熱重合開始剤または光重合開始剤を加えて、加熱または光照射によって重合・架橋させ架橋構造を形成することができる。
【0054】
上記熱重合開始剤として、公知の過酸化物を適宜用いることができる。上記熱可塑性樹脂重合開始剤としては、たとえば、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンズエート、ベンゾイルパーオキサイドなどをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
上記熱重合開始剤の配合量は、たとえば、上記マトリックス樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部用いることができる。
【0056】
上記光重合開始剤としては、紫外線または可視光線により遊離ラジカルを生成する公知の光開始剤を適宜用いることができる。上記光重合開始剤として、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(チバ・ジャパン・ケミカルズ社製、イルガキュア651)、ベンジルジエチルケタールなどのベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどのキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(チバ・ジャパン・ケミカルズ社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1173)などをあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0057】
また、上記光重合開始剤として、たとえば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせなどをあげることができる。また、たとえば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンのように、適宜公知の添加剤を用いてもよい。
【0058】
上記光重合開始剤の配合量は、たとえば、上記マトリックス樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部用いることができる。
【0059】
上記マトリックス樹脂の屈折率として、たとえば、1.4〜1.7の範囲、1.45〜1.65の範囲、または、1.45〜1.55の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリマーマトリックス材の屈折率が1.5である。
【0060】
また、本発明の太陽電池用封止材組成物において、さらに紫外線吸収化合物を含むことが好ましい。上記紫外線吸収化合物として、上記太陽電池用封止材層の架橋性、UVカット性、および変色防止機能を損なわない限り、紫外線劣化の抑制を抑制する紫外線吸収化合物のほか、波長変換機能を付与しうる紫外線吸収化合物等を用いることができる。
【0061】
上記紫外線吸収化合物として、公知のものを適宜用いることができる。上記紫外線吸収化合物として、たとえば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸系、シアノアクリレート系などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収化合物としては、たとえば、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5,5’−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメトキシ−5,5’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(2−ヒドロキシエチル)−5,5’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノンなどをあげることができる。
【0063】
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収化合物としては、たとえば、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(ヒドロキシメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−t−オクチル−5’−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール等、あるいは2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス〔6−(5−ブロモ−2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(4−ヒドロキシブチル)フェノール〕、3,3−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}プロパン、2,2−{2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕}ブタン、2,2’−オキシビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルフィド、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホキシド、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕スルホン、2,2’−ビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾリ−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール〕アミンなどをあげることができる。
【0064】
上記トリアジン系紫外線吸収化合物としては、たとえば、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブチル)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチルフェニル)−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロピル)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−s−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどをあげることができる。
【0065】
上記サリチル酸系紫外線吸収化合物としては、たとえば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどをあげることができる。
【0066】
上記シアノアクリレート系紫外線吸収化合物としては、たとえば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートなどをあげることができる。
【0067】
また、上記紫外線吸収化合物に波長変換機能を有するものを用いる場合、上記紫外線吸収化合物として、たとえば、波長域350〜400nmの光を、400nmを超える波長域の光よりも多く吸収する蛍光化合物をあげることができる。上記蛍光化合物として、有機蛍光化合物、および、無機蛍光化合物などをあげることができる。
【0068】
上記有機蛍光化合物として、公知の有機色素化合物(有機蛍光染料など)を用いることができる。上記有機蛍光化合物として、たとえば、ナフタルイミド、ペリレン、アントラキンノン、クマリン、ベンゾクマリン、キサンテン、フェノキサジン、ベンゾ[a]フェノキサジン、ベンゾ[b]フェノキサジン、ベンゾ[c]フェノキサジン、ナフタルイミド、ナフトラクタム、アズラクトン、メチン、オキサジン、チアジン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ベンゾキサンテン、チオーエピンドリン、ラクタムイミド、ジフェニルマレイミド、アセトアセトアミド、イミダゾチアジン、ベンズアントロン、ペリレンモノイミド、フタルイミド、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾオキサゾール、ピリミジン、ピラジン、トリアゾール、ジベンゾフラン、トリアジン、および、ハルビツール酸誘導体などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
上記無機蛍光化合物として、たとえば、発光中心としてユーロピウムやサマリウムを有する錯体化合物などをあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
上記蛍光化合物の吸光度として、たとえば、0.1〜6であることが好ましく、0.5〜4であることがより好ましく、0.8〜3であることがさらに好ましい。
【0071】
また、上記紫外線吸収化合物は、200〜400nm、特に280〜380nmの範囲内に最大吸収波長を有するものが好ましい。上記紫外線吸収化合物を用いることにより、照射光に含まれる紫外線のうち、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン系共重合体の光劣化を招く恐れのある紫外線をより効果的に吸収できる。なお、上記紫外線吸収化合物の最大吸収波長は、公知の手法を用いて市販の紫外線測定装置等を用いて測定することができる。
【0072】
上記紫外線吸収化合物のうち、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体の光劣化の防止の観点からはベンゾフェノン系紫外線吸収化合物を用いるのが好ましく、一分子中にヒドロキシル基を2個以下含むベンゾフェノン系紫外線吸収化合物を用いるのが特に好ましい。上記紫外線吸収化合物として、たとえば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノンなどをあげることができる。上記化合物は、320〜350nmの範囲内に最大吸収波長を有し、エチレン−酢酸ビニル共重合体の光劣化をより効果的に抑制することができる。
【0073】
上記紫外線吸収化合物の含有量は、上記マトリックス樹脂100質量部に対して0.001〜1重量部含有することが好ましく、0.01〜0.8重量部であることがより好ましく、0.02〜0.5重量部であることがさらに好ましい。
【0074】
上記太陽電池用封止材組成物は、上記マトリックス樹脂に上記各成分(化合物)が混合・分散されている。上記太陽電池用封止材組成物において、所望の性能を損なわない範囲で、適宜公知の添加剤を含むことができる。上記添加剤として、たとえば、熱可塑性ポリマー、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、有機過酸化物、充填剤、可塑剤、シランカップリング剤、受酸剤、クレイ等があげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0075】
(太陽電池用封止材層)
一方、本発明の太陽電池用封止材層は、上記太陽電池用封止材組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
【0076】
上記太陽電池用封止材層を製造するには、公知の方法に準じて行えばよい。たとえば、上記の太陽電池用封止材組成物(またはその各材料)を加熱混練、スーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル、プラストミル等を用いて公知の方法で混合した組成物を、通常の押出成形、カレンダ成形(カレンダリング)、真空熱加圧等により成形してシート状物を得る方法により適宜製造することができる。また、PETフィルム等の上に上記層を形成した後、表面保護層に転写する方法により製造することができる。また、ホットメルトアプリケーターにより、混練溶融と塗布を同時に行う方法を用いることができる。
【0077】
より具体的には、たとえば、上記マトリックス樹脂、ジブチルヒドロキシトルエン誘導体および上記ヒンダードアミン系化合物等を含む上記太陽電池用封止材組成物を、表面保護層またはセパレーターなどにそのまま塗布・形成してもよし、上記材料を他の材料と混合組成物として塗布・形成してもよい。
【0078】
上記太陽電池用封止材組成物として塗布する場合、上記マトリックス樹脂は、加工性を考慮して、融点が50〜120℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。また、たとえば、上記太陽電池用封止材組成物の融点が50〜120℃の場合、上記組成物の混練溶融および塗布温度は、上記融点に30〜100℃加えた温度で行うことが好ましい。
【0079】
また、いくつかの実施形態において、太陽電池用封止材層が下記の工程によって薄膜構造体に製造される:(i)ポリマー(マトリックス樹脂)粉末が所定の比率で溶媒(たとえば、テトラクロロエチレン(TCE)、シクロペンタノン、ジオキサンなど)に溶解されたポリマー溶液を調製する工程、(ii)ポリマー混合物を含有する発光色素(蛍光化合物)を、ポリマー溶液を所定の重量比で発光色素と混合して、色素含有ポリマー溶液を得ることによって調製する工程、(iii)色素/ポリマー薄膜を、色素含有ポリマー溶液をガラス基板の上に直接に流し込み、その後、基板を2時間で室温から最高で100℃まで熱処理し、残留溶媒を130℃での一晩のさらなる真空加熱によって完全に除くことによって形成する工程、および、(iv)使用前に、色素/ポリマー薄膜を水の中で剥がし、その後、自立型ポリマーフィルムを完全に乾燥する工程;(v)フィルムの厚さを、色素/ポリマー溶液の濃度および蒸発速度を変化させることによって制御することができる。
【0080】
上記太陽電池用封止材層の厚みは、20〜2000μmであることが好ましく、50〜1000μmであることがより好ましく、100〜800μmであることがさらに好ましい。20μmよりも薄くなると、封止材機能が発現しにくくなってしまう。一方、2000μmより厚くなると、太陽電池モジュールの厚みが大きくなり、コスト的にも不利益である。
【0081】
上記太陽電池用封止材層は、通常、太陽電池セルの封止に用いられるが、必要に応じて、インターコネクタ材、電極なども適宜封止するように積層される。上記太陽電池用封止材層の上記機能を損なわない限り、各層間などの適宜必要に応じて他の層を介在してもよい。
【0082】
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュール1は、表面保護層10、上記太陽電池用封止材層20および太陽電池セル30を含むことを特徴とする。一例として図1、2に簡易な模式図を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。また、太陽電池セルの背面側にさらに封止材層40、バックシート50を適宜備えることもできる。また、これらの各層間に、上記太陽電池用封止材層の上記機能を損なわない限り、接着材層、粘着剤層などの他の層を適宜介在してもよい。また、上記背面用の封止材層として、適宜、本発明の太陽電池用封止材層を用いてもよい。
【0083】
上記太陽電池セルとして、たとえば、硫化カドミウム/テルル化カドミウム太陽電池、銅インジウムガリウム二セレン化物太陽電池、非晶質シリコン太陽電池、微結晶シリコン太陽電池または結晶シリコン太陽電池を用いることができる。上記太陽電池セルとして、結晶シリコン太陽電池であることが好ましい。
【0084】
上記太陽電池モジュールの製造において、上記太陽電池用封止材層を上記太陽電池セル等に転写してもよく、直接上記太陽電池セル上に塗布形成してもよい。また、上記太陽電池用封止材層と他の層を同時に形成してもよい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0086】
(表中の化合物)
実施例・比較例では、以下の化合物を用いた。
・マトリックス樹脂:スミテートKA−30、エチレンビニルアセテート樹脂(住友化学社製)
・有機化合物A:4,7−ビス(4−イソブチルオキシフェニル)−2−イソブチル−2H−ベンゾトリアゾール
・過酸化物:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート(日油社製、パーブチルE)
・架橋助剤:トリアリルイソシアネート(日本化成社製、TAIC)
・BHT:ジブチルヒドロキシトルエン(東京化成社製)
・Tinuvin 144:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(BASF社製、分子量685)
・Tinuvin 770DF:ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(BASF社製、分子量481)
・KBM503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
【0087】
(樹脂シートの作製)
実施例・比較例において、各化合物を表1の配合に基づき、各封止材層(封止シートおよび裏面用封止シート)を下記方法により製造した。
【0088】
各実施例・比較例において、EVA樹脂(スミテートKA−30)を100重量部と各化合物をはかりとり、ドライブレンドした後に単軸押出機を用いて溶融混練し、エチレン共重合体組成物のペレットを得た。上記ペレットからプレス成形機を用いて封止材層樹脂シート (厚さ:約400μm)を作製した。
【0089】
(ゲル分率の測定)
得られた封止材層樹脂シート(厚さ:400μm)の両面にPET系離型フィルムを貼り付けた試料を、ガラスおよびバックシートに挟み、80℃、100kNの条件でプレスし、150℃の条件で乾燥オーブンに20分間保管した。その後、Wg切り取り精秤し、キシレン100ccに浸漬した(110℃、24時間)。その後、ろ過残渣の乾燥後(80℃、6時間)の重量Wgを精秤し、(W/W)×100として計算される値をゲル分率(重量%)とした。評価基準は以下のように行った。
・ゲル分率の平均値(測定個数2個)値が80%以上であった場合:○
・ゲル分率の平均値(測定個数2個)値が80%未満であった場合:×
【0090】
(初期黄変評価)
得られた封止材層樹脂シート(厚さ:400μm)を、ガラスおよびバックシートに挟んだ状態で、80℃、100kNの条件で貼り合わせ、150℃の条件で乾燥オーブンに20分間保管した。その後、UV照射器(パナソニック電工制御社製、UJ35)およびレンズ(パナソニック電工制御社製、ANUJ6426)を用い、1W/cmのUV光(365nm)を所定の時間(180分)照射した。UV光照射前後のサンプルの反射スペクトルをMCPD(大塚電子社製)によって測定した。得られた反射スペクトル情報から、黄変度(YI:Yellow Index、ASTM D 1925)を算出し、黄変評価を実施した。評価基準は以下のように行った。
・端部の4点の測定値の平均値が7.5未満であった場合:○
・端部の4点の測定値の平均値が7.5以上10未満であった場合:△
・端部の4点の測定値の平均値が10以上であった場合:×
【0091】
(光安定性試験)
得られた封止材層樹脂シート(厚さ:400μm)を、ガラスおよびPET離型フィルムに挟んだ状態で、80℃、100kNの条件で貼り合わせ、150℃の条件で乾燥オーブンに20分間保管した。その後、離型フィルムを剥がし、UV照射器(パナソニック電工制御社製、UJ35)およびレンズ(パナソニック電工制御社製、ANUJ6426)を用い、1W/cmのUV光(365nm)をシート両側から所定の時間(120分)照射した。光照射前後のサンプルの吸収スペクトルを分光光度計(日本分光社製、V560)によって測定した。得られたスペクトル情報から、有機物の吸光度変化を評価した。評価基準は以下のように行った。
・紫外線照射した後の吸光度変化が−0.8以上であった場合:○
・紫外線照射した後の吸光度変化が−0.9以上−0.8未満であった場合:△
・紫外線照射した後の吸光度変化が−0.9未満であった場合:×
【0092】
下記表1に、得られた封止材層樹脂シートを用いたときの各測定結果を示す。
【表1】
【0093】
測定の結果、比較例において、ジブチルヒドロキシトルエンまたはTinuvin 144のいずれか一方のみしか添加しなかった場合、および、ジブチルヒドロキシトルエンまたはTinuvin 144のいずれも含まなかった場合、紫外線照射による黄変が起きやすく、有機物の光安定性も低いことが分かった。一方、本願実施例においては、ジブチルヒドロキシトルエンまたはTinuvin 144を併用していることから、最も黄変が起こりにくく、光安定性も高くなった。上記作用効果は、各成分を単独で添加した場合と比べて、単なる総和的効果にとどまらず、相乗効果まで得られるものであった。
【符号の説明】
【0094】
1 太陽電池モジュール
10 表面保護層
20 太陽電池用封止材層
30 太陽電池セル
40 裏面用封止材層
50 バックシート
図1
図2