特許第6173797号(P6173797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173797
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】熱交換器、及び給湯器
(51)【国際特許分類】
   F28D 1/047 20060101AFI20170724BHJP
   F28F 9/013 20060101ALI20170724BHJP
   F24H 1/16 20060101ALI20170724BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20170724BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   F28D1/047 A
   F28F9/013 F
   F24H1/16 B
   F24H9/00 A
   F28D1/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-137870(P2013-137870)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-10797(P2015-10797A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森山 正隆
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−032369(JP,A)
【文献】 特許第4963126(JP,B2)
【文献】 特開2010−091137(JP,A)
【文献】 特開2011−007353(JP,A)
【文献】 特開2008−151473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/047
F24H 1/16
F24H 9/00
F28D 1/06
F28F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成しており、当該内部空間を挟んで両側にある箇所のうち、一方の箇所には前記内部空間へ燃焼排気を導入する導入口が形成され、他方の箇所には前記内部空間から燃焼排気を排出する排出口が形成されたケーシングと、
前記ケーシングの内部空間に配設された伝熱管によって構成され、前記ケーシングの内部空間において前記導入口側から前記排出口側へと流れる燃焼排気の熱を、前記伝熱管の内部を流れる被加熱流体へと伝達する伝熱部と
を備え、
前記伝熱部は、前記ケーシングの内部空間において前記導入口側から前記排出口側へと流れる前記燃焼排気の流通方向について、前記燃焼排気の流通方向上流側となる位置に配設された上流側伝熱部と、前記燃焼排気の流通方向下流側となる位置に配設された下流側伝熱部とを有し、
前記上流側伝熱部は、上下方向について前記下流側伝熱部よりも高い位置に設けられた第一部分を有するとともに、前記下流側伝熱部は、前記第一部分よりも低い位置に設けられた第二部分を有し、
前記ケーシングは、前記上流側伝熱部から前記下流側伝熱部にわたる範囲の上方を覆う天井部を有し、
前記天井部には、下側に凹む凹部が設けられ、
前記凹部の下面には、前記第一部分の上方となる位置に設けられた第一領域と、当該第一領域から連続して前記第一部分の上方から前記第二部分の上方に至る範囲に設けられた第二領域と、当該第二領域から連続して前記第二部分の上方となる位置に設けられた第三領域が形成され、
前記凹部の下面を構成する部分が前記第三領域において前記第一領域よりも下側に凹む形状とされることにより、前記第一領域は、前記第三領域よりも高い位置に形成されるとともに、前記第二領域には、前記第一領域側から前記第三領域側に向かって下り勾配となる傾斜が付与されて、当該傾斜に沿って燃焼排気を斜め下方へ案内する構造とされている
熱交換器。
【請求項2】
前記第二部分には、前記燃焼排気の流通方向に間隔を空けて複数の前記伝熱管が配列され、当該複数の前記伝熱管のうち、前記燃焼排気の流通方向上流側に配置された一以上の前記伝熱管は前記第二領域の下方に配置され、当該第二領域の下方に配置された一以上の前記伝熱管よりも前記燃焼排気の流通方向下流側に配置された一以上の前記伝熱管は、前記第三領域の下方に配置されている
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記天井部は、四辺形の金属板に対して当該金属板の四辺よりも下側に凹む前記凹部を形成してなる部品によって構成され、
少なくとも前記第二領域及び前記第三領域は、前記凹部の下面によって構成されている
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱部には、上下方向に間隔を空けて複数の前記伝熱管が配列されており、
上下方向で隣り合う位置にある前記伝熱管の間には、両伝熱管の間隔が過剰に狭まるのを抑制するスペーサーが配設され、
前記スペーサーには、上下方向に貫通する一以上の貫通孔が形成されている
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱部において、前記上流側伝熱部及び前記下流側伝熱部それぞれを構成する前記伝熱管は、前記燃焼排気の流通方向及び上下方向の双方に対して交差する方向に延在しており、当該延在方向の両端のうち、一端側には前記上流側伝熱部側の前記伝熱管と前記下流側伝熱部側の前記伝熱管を連通させる伝熱管によって構成される第一連通部が設けられる一方、他端側には前記上流側伝熱部側の前記伝熱管と前記下流側伝熱部側の前記伝熱管を連通させる伝熱管によって構成される第二連通部が設けられることにより、前記上流側伝熱部から前記第一連通部、前記下流側伝熱部、及び前記第二連通部を経て前記上流側伝熱部へと戻る一周分の管路が複数周分にわたって螺旋状に繰り返される螺旋状管路が構成されており、
前記第一連通部及び前記第二連通部それぞれを構成する複数の前記伝熱管を上下両側から挟む位置には、複数の前記伝熱管間の間隔が過剰に拡がるのを抑制する抑え部が配設され、
前記抑え部には、上下方向に貫通する一以上の貫通孔が形成されている
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記ケーシングの内部空間のうち、水平方向については前記下流側伝熱部と前記排出口との間となる位置、かつ上下方向については前記排出口よりも低い位置には、前記下流側伝熱部から前記排出口へと流れる前記燃焼排気が通過する通気口が設けられている
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の熱交換器を備える給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、及び給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並列に配列された複数の伝熱管が螺旋状に巻回された構造とされた伝熱部を備える熱交換器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の熱交換器の場合、複数の伝熱管は、上下方向に延びる仮想的な軸線を中心にして、その軸線の周囲で各伝熱管が同軸の螺旋を描く形状とされている。
【0003】
このような螺旋状伝熱管は、ケーシング内に収納され、ケーシング内を流通する燃焼排気と伝熱管内を流れる被加熱流体との間で熱交換が行われる。ケーシング内における燃焼排気の流通方向は、複数の伝熱管のなす螺旋の中心となる仮想的な軸線に交差する方向とされる。そのため、各伝熱管は、一端から他端に至る途中で、燃焼排気の流通経路の上流側となる領域(以下、上流側領域ともいう。)と、同流通経路の下流側となる領域(以下、下流側領域ともいう。)とを、複数回にわたって交互に横切る構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−43281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような螺旋状伝熱管において、上流側領域を横切る部分(以下、上流側伝熱部ともいう。)と下流側領域を横切る部分(以下、下流側伝熱部ともいう。)とでは、伝熱管の高さ位置が螺旋の半ピッチに相当する分だけ上下方向にずれることになる。
【0006】
そのため、このような螺旋状伝熱管を一般的な直方体状のケーシングに収納した場合、上流側伝熱部又は下流側伝熱部のいずれか一方の上方には、伝熱管が存在しない空間が形成されることになる。このような空間内では、燃焼排気が伝熱管に接触しないまま通過することになるので、燃焼排気の熱が十分に奪われないまま、その燃焼排気がケーシング外へと排出されてしまうおそれがある。
【0007】
特に、高温の燃焼排気は上昇方向へ流動する傾向が強いので、上述のような空間が下流側伝熱部の上方に形成されている場合、上流側伝熱部の上部付近を通過した燃焼排気は、伝熱管の存在しない空間に流れ込みやすくなり、熱効率が低下する要因になる。
【0008】
なお、このような問題は、伝熱管が螺旋状に形成されている場合に限らず、上流側伝熱部よりも下流側伝熱部が低い位置にあって、下流側伝熱部の上方に空間が存在している場合には、同様に発生し得る問題でもある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、燃焼排気の流通方向上流側の伝熱管よりも低い位置に、流通方向下流側の伝熱管が存在する場合でも、その下流側において効率良く熱交換可能な熱交換器と、そのような熱交換器を備えた給湯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の熱交換器は、内部空間を形成しており、当該内部空間を挟んで両側にある箇所のうち、一方の箇所には前記内部空間へ燃焼排気を導入する導入口が形成され、他方の箇所には前記内部空間から燃焼排気を排出する排出口が形成されたケーシングと、前記ケーシングの内部空間に配設された伝熱管によって構成され、前記ケーシングの内部空間において前記導入口側から前記排出口側へと流れる燃焼排気の熱を、前記伝熱管の内部を流れる被加熱流体へと伝達する伝熱部とを備え、前記伝熱部は、前記ケーシングの内部空間において前記導入口側から前記排出口側へと流れる前記燃焼排気の流通方向について、前記燃焼排気の流通方向上流側となる位置に配設された上流側伝熱部と、前記燃焼排気の流通方向下流側となる位置に配設された下流側伝熱部とを有し、前記上流側伝熱部は、上下方向について前記下流側伝熱部よりも高い位置に設けられた第一部分を有するとともに、前記下流側伝熱部は、前記第一部分よりも低い位置に設けられた第二部分を有し、前記ケーシングは、前記上流側伝熱部から前記下流側伝熱部にわたる範囲の上方を覆う天井部を有し、前記天井部の下面には、前記第一部分の上方となる位置に設けられた第一領域と、当該第一領域から連続して前記第一部分の上方から前記第二部分の上方に至る範囲に設けられた第二領域と、当該第二領域から連続して前記第二部分の上方となる位置に設けられた第三領域が形成され、前記第一領域は、前記第三領域よりも高い位置に形成されるとともに、前記第二領域には、前記第一領域側から前記第三領域側に向かって下り勾配となる傾斜が付与されて、当該傾斜に沿って燃焼排気を斜め下方へ案内する構造とされている。
【0011】
このように構成された熱交換器によれば、天井部において第三領域は第一領域よりも低い位置に設けられている。そのため、下流側伝熱部の有する第二部分が上流側伝熱部の有する第一部分より低い位置に設けられているにもかかわらず、第一部分及び第二部分の上方に形成される空間の容量を削減することができ、燃焼排気と伝熱管の接触効率を高めることができる。しかも、上流側伝熱部の上部付近を通過した高温の燃焼排気は、上昇方向へ流動する傾向があるにもかかわらず、天井部が有する第二領域に沿って斜め下方へと流れることで、下流側伝熱部に到達する。そのため、上流側伝熱部の上部付近を通過した燃焼排気が更に上昇する方向へ流動するものに比べ、燃焼排気と伝熱管の接触効率を高めることができる。したがって、燃焼排気と伝熱管の接触効率は極めて高くなり、燃焼排気が伝熱管に接触することなくケーシング外へ素通りしてしまうのを抑制できるので、熱効率を高めることができる。
【0012】
本発明の熱交換器において、前記第二部分には、前記燃焼排気の流通方向に間隔を空けて複数の前記伝熱管が配列され、当該複数の前記伝熱管のうち、前記燃焼排気の流通方向上流側に配置された一以上の前記伝熱管は前記第二領域の下方に配置され、当該第二領域の下方に配置された一以上の前記伝熱管よりも前記燃焼排気の流通方向下流側に配置された一以上の前記伝熱管は、前記第三領域の下方に配置されていることが好ましい。
【0013】
このように構成された熱交換器によれば、下流側伝熱部の第二部分に配設された複数の伝熱管のうち、一以上の伝熱管は第二領域の下方に配設されるとともに、更に燃焼排気の流通方向下流側にある一以上の伝熱管は第三領域の下方に配設されている。そのため、第二領域に沿って斜め下方へと流動する燃焼排気は、下流側伝熱部の第二部分に含まれる伝熱管に向かって流れるので、下流側伝熱部における熱効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の熱交換器において、前記天井部は、四辺形の金属板に対して当該金属板の四辺よりも下側に凹む凹部を形成してなる部品によって構成され、少なくとも前記第二領域及び前記第三領域は、前記凹部の下面によって構成されていることが好ましい。
【0015】
このように構成された熱交換器によれば、四辺形の金属板に対して上述のような凹部を形成することにより、所期の第二領域及び第三領域を設けてあるので、このような凹部であれば金属板に対する絞り加工で形成することができる。したがって、別体の複数部品を接合するような構造に比べ、部品点数を削減することができ、また、接合箇所から燃焼排気が漏出するといった問題も未然に防ぐことができる。
【0016】
本発明の熱交換器において、前記伝熱部には、上下方向に間隔を空けて複数の前記伝熱管が配列されており、上下方向で隣り合う位置にある前記伝熱管の間には、両伝熱管の間隔が過剰に狭まるのを抑制するスペーサーが配設され、前記スペーサーには、上下方向に貫通する一以上の貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0017】
このように構成された熱交換器によれば、上下方向で隣り合う位置にある伝熱管の間隔を、スペーサーによって適正に維持することができる。しかも、スペーサーには上述のような貫通孔が形成されているので、その貫通孔を介して燃焼排気が上下方向へ流通する。したがって、スペーサーによって燃焼排気の流通が規制されてしまうのを抑制することができる。
【0018】
本発明の熱交換器は、前記伝熱部において、前記上流側伝熱部及び前記下流側伝熱部それぞれを構成する前記伝熱管は、前記燃焼排気の流通方向及び上下方向の双方に対して交差する方向に延在しており、当該延在方向の両端のうち、一端側には前記上流側伝熱部側の前記伝熱管と前記下流側伝熱部側の前記伝熱管を連通させる伝熱管によって構成される第一連通部が設けられる一方、他端側には前記上流側伝熱部側の前記伝熱管と前記下流側伝熱部側の前記伝熱管を連通させる伝熱管によって構成される第二連通部が設けられることにより、前記上流側伝熱部から前記第一連通部、前記下流側伝熱部、及び前記第二連通部を経て前記上流側伝熱部へと戻る一周分の管路が複数周分にわたって螺旋状に繰り返される螺旋状管路が構成されており、前記第一連通部及び前記第二連通部それぞれを構成する複数の前記伝熱管を上下両側から挟む位置には、複数の前記伝熱管間の間隔が過剰に拡がるのを抑制する抑え部が配設され、前記抑え部には、上下方向に貫通する一以上の貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0019】
このように構成された熱交換器によれば、上述のような抑え部によって、複数の伝熱管が上下両側から挟まれているので、複数の伝熱管間の間隔を適正に維持することができる。しかも、抑え部には上述のような貫通孔が形成されているので、その貫通孔を介して燃焼排気が上下方向へ流通する。したがって、抑え部によって燃焼排気の流通が規制されてしまうのを抑制することができる。
【0020】
本発明の熱交換器において、前記ケーシングの内部空間のうち、水平方向については前記下流側伝熱部と前記排出口との間となる位置、かつ上下方向については前記排出口よりも低い位置には、前記下流側伝熱部から前記排出口へと流れる前記燃焼排気が通過する通気口が設けられていることが好ましい。
【0021】
このように構成された熱交換器によれば、上流側伝熱部及び下流側伝熱部を通過した燃焼排気は、排出口よりも低い位置にある通気口を通ってから排出口へと流れる。そのため、ケーシング内における通気口よりも高い領域では、上昇傾向にある燃焼排気が流れ込むことにより、高温の燃焼排気がある程度長時間にわたって滞留する。したがって、このような通気口を経由することなく、より上方にある排出口に向かって燃焼排気が真っ直ぐに流れてしまうものに比べ、燃焼排気と伝熱管とをより長時間にわたって接触させることができ、熱効率を向上させることができる。
【0022】
本発明の給湯器は、上述した熱交換器のいずれかを備えるものである。
このように構成された給湯器によれば、本発明の熱交換器を備えているので、本発明の熱交換器について述べた通りの作用、効果を奏し、熱効率の高い給湯器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】給湯器の一部を破断して内部構造を示した正面図。
図2】(a)は副熱交換器を右前上方から見た斜視図、(b)は副熱交換器を示す平面図。
図3】(a)は副熱交換器内部における伝熱部の配設位置を示す斜視図、(b)は副熱交換器内部における伝熱部の配設位置を示す平面図。
図4】(a)は伝熱部を左前上方から見た斜視図、(b)は伝熱部の平面図、(c)は伝熱部の正面図。
図5】(a)は抑え部の斜視図、(b)は抑え部の左側面図、(c)は抑え部の平面図、(d)は抑え部の正面図。
図6図4(c)にA−A線で示した切断面における断面図。
図7】(a)は図3(a)及び図3(b)にB−B線で示した切断面における副熱交換器上部の断面図、(b)は図3(a)及び図3(b)にC−C線で示した切断面における副熱交換器上部の断面図、(c)は図3(a)及び図3(b)にD−D線で示した切断面における副熱交換器上部の断面図、(d)は図3(a)及び図3(b)にE−E線で示した切断面における副熱交換器上部の断面図。
図8】副熱交換器の内部における燃焼排気の流動方向を概念的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、具体的な例を挙げて説明する。
以下に説明するのは、潜熱回収型の給湯器及びその給湯器が備える副熱交換器において、本発明の構成を採用した事例である。なお、以下の説明では、図中に併記した前後左右上下の各方向を利用して給湯器ないし副熱交換器の構造を説明する。ただし、これらの各方向は、給湯器の各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するために便宜的に規定した方向にすぎず、給湯器ないし副熱交換器のどちら側を前側と見なすかは任意である。
【0025】
図1に例示する給湯器1は、上部に潜熱回収用の副熱交換器3を備えている。給湯器1内で燃料(ガス)を燃焼させることによって発生させた高温の燃焼排気は、先に主熱交換器に通されてから、続いて副熱交換器3へと通される。これにより、主熱交換器では、燃焼排気から主に顕熱が回収され、副熱交換器3では、燃焼排気から主に潜熱が回収される。
【0026】
この副熱交換器3は、金属製のケーシング5を備える。ケーシング5の右側面には、第一接手部7Aと第二接手部7Bが設けられている。第一接手部7Aには入水管9Aが接続され、第二接手部7Bには出水管9Bが接続されている。第一接手部7Aは、図2(a)に示すように、ケーシング5の右側面上において、第二接手部7Bよりも下方、かつ第二接手部7Bよりも前方となる位置に設けられている。
【0027】
ケーシング5の後面側(背面側)には、図2(b)に示すように、燃焼排気をケーシング5の内部へと導入するための導入口11が形成されている。一方、ケーシング5の前面側(正面側)には、燃焼排気をケーシング5の内部から外部へと排出するための排出口13が形成されている。なお、この排出口13を覆う位置には、図1に示すように、排気フード15が取り付けられている。
【0028】
導入口11側からケーシング5の内部へ導入される燃焼排気は、ケーシング5の内部空間を導入口11側から排出口13側へと流れる。すなわち、ケーシング5の内部において、燃焼排気の流通方向は、副熱交換器3の背面側から正面側へ向かう方向となっている。
【0029】
ケーシング5の内部空間には、図3(a)及び図3(b)に示すように、伝熱部17が収容されている。伝熱部17は、複数(本実施形態では10本)の伝熱管19を備えている。これらの伝熱管19は、図4(a)、図4(b)、及び図4(c)に示すように、上下方向に延びる仮想的な軸線を中心にして、その軸線の周囲で各伝熱管19が同軸の螺旋を描く形状とされている。
【0030】
より詳しく説明すると、各伝熱管19は、燃焼排気の流通方向上流側において右上から左下へと延びる後側部分19Aと、燃焼排気の流通方向下流側において左上から右下へと延びる前側部分19Bとを有する。また、これら後側部分19A及び前側部分19Bの左端間を連通させる左側部分19Cと、これら後側部分19A及び前側部分19Bの右端間を連通させる右側部分19Dとを有する。
【0031】
これらは、各伝熱管19の下端側から、前側部分19B,左側部分19C,後側部分19A,右側部分19D,前側部分19B,左側部分19C,後側部分19A,右側部分19D,前側部分19B,左側部分19C,後側部分19Aの順に連設されている。これにより、各伝熱管19の下端から、図4(b)に示す平面図においては時計回りとなる方向に旋回しつつ上端に至る螺旋状の管路が形成されている。各伝熱管19の下端は第一接手部7Aに連通し、各伝熱管19の上端は第二接手部7Bに連通している。
【0032】
各伝熱管19が有する複数の後側部分19Aは、前側部分19Bよりも燃焼排気の流通方向上流側に配置された状態にある。以下、これら複数の後側部分19Aによって構成されている部分のことを上流側伝熱部17Aと称する。また、各伝熱管19が有する複数の前側部分19Bは、後側部分19Aよりも燃焼排気の流通方向下流側に配置された状態にある。以下、これら複数の前側部分19Bによって構成されている部分のことを下流側伝熱部17Bと称する。さらに、各伝熱管19が有する複数の左側部分19Cによって構成されている部分のことを第一連通部17Cと称し、各伝熱管19が有する複数の右側部分19Dによって構成されている部分のことを第二連通部17Dと称する。これら上流側伝熱部17A、下流側伝熱部17B、第一連通部17C、及び第二連通部17Dは、概ね図4(b)中に二点鎖線で示したような範囲にある。
【0033】
これら複数の伝熱管19は、同軸螺旋状に形成されているので、上流側伝熱部17Aを構成する後側部分19Aと下流側伝熱部17Bを構成する前側部分19Bとでは、螺旋の1/2ピッチ分に相当する距離だけ高さ位置にずれがある。そのため、上流側伝熱部17Aは、上下方向について下流側伝熱部17Bよりも高い位置に設けられた第一部分21を有するとともに、下流側伝熱部17Bは、第一部分21よりも低い位置に設けられた第二部分22を有する。すなわち、伝熱部17の上面側において、上流側伝熱部17Aの一部は、下流側伝熱部17Bよりも高い位置にあり、第一部分21の前側、かつ第二部分22の上側となる位置は、伝熱管19が配置されていない領域になっている。第一部分21は、概ね図4(c)中に二点鎖線で示したような範囲にあり、当該範囲よりも下方となる範囲に第二部分22がある。
【0034】
第一連通部17Cにおいて、複数の左側部分19Cを上下両側から挟む位置には、抑え部23Aが配設されている。また、第二連通部17Dにおいて、複数の右側部分19Dを上下両側から挟む位置には、抑え部23Bが配設されている。
【0035】
抑え部23Aは、図5(a)〜図5(d)に示すように、平面視略U字状に形成されて伝熱管19の側方を三方から取り囲む側壁24と、側壁24の上下両端それぞれから水平に延出されて伝熱管19を上下から挟み込む主抑え板25及び副抑え板26とを有する。側壁24には、水平方向に貫通する側面視円形の貫通孔27と、同じく水平方向に貫通する側面視四角形の開口28が形成され、主抑え板25には、上下方向に貫通する平面視円形の貫通孔29が形成されている。なお、抑え部23Bは、高さ方向寸法が抑え部23Aより小さいものの、平面視した形状や貫通孔27,29及び開口28を有する点は抑え部23Aと同様であり、機能的にも抑え部23Aと同等なものである。
【0036】
これら抑え部23A,23Bは、主抑え板25及び及び副抑え板26によって、複数の伝熱管19を上下両側から挟み込むことにより、複数の伝熱管19間の間隔が上下方向へ過剰に拡がるのを抑制する。また、平面視略U字状の側壁24によって、複数の伝熱管19を左右両側から挟み込むことにより、複数の伝熱管19間が前後方向へずれることを抑制する。
【0037】
さらに、第一連通部17C及び第二連通部17Dにおいて、上下方向で隣り合う位置にある伝熱管19の間には、図6に示すように、スペーサー31が配設されている。このスペーサー31は、上下方向について隣り合う位置にある伝熱管19,19の間に介装されており、両伝熱管19,19の間隔が過剰に狭まるのを抑制している。
【0038】
スペーサー31には、螺旋の径方向について隣り合う位置にある伝熱管19,19の間となる位置に対応づけて上側に突出する複数の凸部32が設けられている。これらの凸部32は、螺旋の径方向について隣り合う位置にある伝熱管19,19の間に入り込んでおり、これにより、両伝熱管19,19間の間隔が過剰に狭まるのを抑制している。スペーサー31が有する複数の凸部32の中心位置には、上下方向に貫通する貫通孔33が形成されている。
【0039】
ケーシング5の上面部5Aは、図2(a)及び図2(b)に示すように、四辺形(長方形)の金属板に対し当該金属板の四辺よりも下側に凹む凹部35を形成した構造とされている。この上面部5Aは、図7(a)〜図7(d)に示すように、上流側伝熱部17Aから下流側伝熱部17Bにわたる範囲の上方を覆う天井部37を構成している。
【0040】
天井部37の下面において、図2(b)中に太い破線で示した位置には、第一領域41、第二領域42、及び第三領域43が形成されている。これらの領域のうち、第一領域41は、第一部分21の上方となる位置に設けられている。また、第二領域42は、第一領域41から連続して第二部分22の上方に至る範囲に設けられている。また、第三領域43は、第二領域42から連続して第二部分22の上方となる位置に設けられている。
【0041】
第一領域41は、図7(a)〜図7(d)に示すように、第三領域43よりも高い位置に形成されている。また、第一領域41には、右から左へ向かって下り勾配となる傾斜が付与され、一方、第三領域43には、左から右へ向かって下り勾配となる傾斜が付与されている。これにより、第一領域41及び第三領域43は、双方とも伝熱管19の左右方向の傾きに沿って傾斜し、伝熱管19と天井部37との間に過大な空隙が生じるのを抑制している。したがって、下流側伝熱部17Bの有する第二部分22が上流側伝熱部17Aの有する第一部分21より低い位置に設けられているにもかかわらず、第一部分21及び第二部分22の上方に形成される空間の容量を削減することができ、燃焼排気と伝熱管19の接触効率を高めることができる。
【0042】
また、第二領域42には、第一領域41側から第三領域43側に向かって下り勾配となる傾斜が付与されている。第一領域41及び第三領域43には上述のような傾きが付与されているので、第一領域41と第三領域43の高さ位置には右側になるほど大きな高低差がある。この高低差に応じて、第二領域42における傾斜面の傾斜方向の長さも右側ほど長くなっている。また、この第二領域42のなす傾斜面の下端側は、第二部分22を構成する伝熱管19の上方に達している。
【0043】
ケーシング5の内部空間のうち、水平方向については下流側伝熱部17Bと排出口13との間となる位置、かつ上下方向については排出口13よりも低い位置には、図8に示すように、下流側伝熱部17Bから排出口13へと流れる燃焼排気が通過する通気口45が設けられている。
【0044】
以上のように構成された給湯器1において、各伝熱管19には、入水管9Aから水が供給され、その水が第一接手部7Aを介して各伝熱管19へと流入する。また、主熱交換器において主に顕熱が回収された燃焼排気は、導入口11を介してケーシング5の内部空間へと流入する。
【0045】
ケーシング5の内部空間へ導入される燃焼排気は、既に主熱交換器において顕熱が奪われて温度が低下し、それに伴って相対湿度が高くなっている。そのため、燃焼排気と伝熱管19が接触すると、燃焼排気中の水蒸気が凝縮してドレン(凝縮水)が発生、燃焼排気からは主に潜熱が回収されることになる。これにより、各伝熱管19内を流れる水は昇温し、その昇温した水が第二接手部7Bを介して出水管9Bへと流出する。なお、出水管9Bを流通する水は、更に主熱交換器へと送られて加熱されることになる。
【0046】
ケーシング5の内部空間において、燃焼排気は、図8中に矢印で概念的な流動方向を例示したように、いくらか上昇傾向を伴って導入口11側から排出口13側へと流れる。ただし、上流側伝熱部17Aの上部付近を通過した燃焼排気は、上昇方向へ流動する傾向があるにもかかわらず、天井部37が有する第二領域42に沿って斜め下方へと流れることで、下流側伝熱部17Bに到達する。
【0047】
そのため、上流側伝熱部17Aの上部付近を通過した燃焼排気が更に上昇する方向へ流動するものに比べ、燃焼排気が下流側伝熱部17Bに向かって流れるので、燃焼排気と伝熱管19の接触効率を高めることができる。したがって、燃焼排気と伝熱管19の接触効率は極めて高くなり、燃焼排気が伝熱管19に接触することなくケーシング5外へ素通りしてしまうのを抑制できるので、熱効率を高めることができる。
【0048】
なお、本実施形態の場合、ケーシング5において、伝熱部17を挟んで天井部37とは反対側の位置には、図8に示すように、床部51が設けられている。この床部51は、伝熱部17の下面側の形状に応じて、上流側伝熱部17Aの下方にある部分が、下流側伝熱部17Bの下方にある部分よりも上方へと盛り上がっている。
【0049】
これにより、伝熱部17の下方においても、伝熱管19と床部51との間に過大な空隙が生じるのを抑制している。したがって、伝熱部17の下方に形成される空間の容量を削減することができ、燃焼排気と伝熱管19の接触効率を高めることができる。
【0050】
また、この副熱交換器3においては、上述のような凹部35を形成することにより、所期の第二領域42及び第三領域43を設けてあるので、このような凹部35であれば金属板に対する絞り加工で形成することができる。したがって、同等な第二領域42及び第三領域43を設けるために別体の複数部品を接合したような構造とは異なり、部品点数を削減することができ、また、接合箇所から燃焼排気が漏出するといった問題も未然に防ぐことができる。
【0051】
さらに、この副熱交換器3において、上流側伝熱部17A及び下流側伝熱部17Bを通過した燃焼排気は、排出口13よりも低い位置にある通気口45を通ってから排出口13へと流れる。そのため、ケーシング5内における通気口45よりも高い領域では、上昇傾向にある燃焼排気が流れ込むことにより、高温の燃焼排気がある程度長時間にわたって滞留する。
【0052】
したがって、このような通気口45を経由することなく、より上方にある排出口13に向かって燃焼排気が真っ直ぐに流れてしまうものに比べ、燃焼排気と伝熱管19とをより長時間にわたって接触させることができ、熱効率を向上させることができる。
【0053】
また、この副熱交換器3において、伝熱管19には、抑え部23A,23Bやスペーサー31には、貫通孔27,29,33及び開口28が設けてあるので、これらの貫通孔27,29,33及び開口28を介して燃焼排気が流通する。したがって、このような貫通孔27,29,33及び開口28が設けられていない場合に比べ、燃焼排気がケーシング5の内部空間を隅々まで流通し、熱効率を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
例えば、上記実施形態では、伝熱部17の一例として、複数の伝熱管19が螺旋状に形成されるとともに、それらの螺旋が同軸配置された構造となっているものを例示したが、伝熱管の具体的な立体構造は、上記の一例に限定されるものではない。
【0055】
他の例としては、例えば、螺旋状ではない伝熱管であってもよいし、螺旋状ではあるものの同軸配置されていない伝熱管であってもよい。上記実施形態の場合、伝熱管19が螺旋状であったため、伝熱管19を流れる水は上流側伝熱部17Aと下流側伝熱部17Bを交互に通過しているが、伝熱管の具体的形状によっては、上流側伝熱部17Aと下流側伝熱部17Bを交互には通過しないものであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、抑え部23A,23Bやスペーサー31を備える事例を示したが、これらの抑え部23A,23Bやスペーサー31を設けるか否かは任意である。
【符号の説明】
【0057】
1…給湯器、3…副熱交換器、5…ケーシング、7A…第一接手部、7B…第二接手部、9A…入水管、9B…出水管、11…導入口、13…排出口、15…排気フード、17…伝熱部、17A…上流側伝熱部、17B…下流側伝熱部、17C…第一連通部、17D…第二連通部、19…伝熱管、19A…後側部分、19B…前側部分、19C…左側部分、19D…右側部分、21…第一部分、22…第二部分、23A,23B…抑え部、24…側壁、25…主抑え板、26…副抑え板、27,29…貫通孔、28…開口、31…スペーサー、32…凸部、33…貫通孔、35…凹部、37…天井部、41…第一領域、42…第二領域、43…第三領域、45…通気口、51…床部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8