【実施例1】
【0030】
本発明の第1実施例である噴霧ノズル31について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0031】
図1に本発明の第1実施例である噴霧ノズル31の先端部の断面図を示す。
図2は
図1の第1実施例の噴霧ノズル31を噴霧流体の供給方向の下流側から見た平面図である。
【0032】
図1及び
図2に示した本実施例の噴霧ノズル31は、液体燃料2を噴霧流体41として圧力を加えて供給し、別の流体(圧縮空気や蒸気等)を噴霧用媒体42として圧力を加えて供給し、噴霧ノズル31内で噴霧流体41と噴霧用媒体
42を混合した混合流体43を形成し、この混合流体43を噴霧ノズル31の先端部の近傍に配設した混合流体流路57、58、60、59内で対向流にして流下させてそれらの混合流体流路内の合流部81で衝突させることにより混合流体43中の噴霧
流体41を微細化し、微細化した噴霧
流体41を噴霧ノズル31の先端部に設けた出口孔61、62から外部に噴出させるように構成している。
【0033】
噴霧ノズル31の出口孔61、62から外部に噴霧する混合流体43中の噴霧
流体41は直径で100μm未満、出来れば50μm以下に微粒化させることが望ましい。微粒子では体積に占める表面積が大きく、燃焼室からの熱放射により昇温し蒸発し易い。また、液滴としての燃焼反応も速い。
【0034】
一方、直径で150μm以上の粗大粒子は蒸発や燃焼し難く、未燃焼分としてCOや煤塵排出の原因となる。また、噴霧流体と空気との混合が悪いのでNOx排出の原因となる。
【0035】
このため、噴霧ノズル31は微粒化を進め、微粒子を増やすことで燃焼反応の促進に寄与する。なお、微粒化の程度は、混合流体43の圧力や噴霧用媒体比(噴霧流体41に対する噴霧用媒体42の割合)により調整できる。
【0036】
液体燃料の噴霧流体41を微粒化することで、燃焼用空気との混合を促進し、燃焼装置から排出されるNOxを抑制できる。また、液体燃料を微粒化することで燃焼反応を早め、未燃焼分であるCOや煤塵の排出を抑制できる。なお、燃焼方法は燃料と空気を別途に供給し燃焼させる拡散燃焼方式の燃焼器やボイラにおいても微粒化によるNOxやCO、煤塵の低減効果は得られる。
【0037】
本実施例の噴霧ノズル31の先端部の構造について
図1と
図2を用いて更に説明する。
図1と
図2に示した本実施例の噴霧ノズル31では、噴霧ノズル31の先端部は内筒部51と外筒部52に分解できる構造となっているが、一体構造であっても良い。
【0038】
噴霧ノズル31を構成する内筒部51の最上流側には、液体燃料である噴霧流体41が流れる噴霧流体流路53と、空気又は蒸気である噴霧用媒体42が流れる噴霧用媒体流路54が設けられている。噴霧流体41は軽油やA重油等の液体燃料であり、噴霧用媒体42は加圧された空気や蒸気が一般的である。
【0039】
噴霧流体41と噴霧用媒体42はそれぞれ、噴霧流体流路53と噴霧用媒体流路54の下流となる内筒部51の内部に設けられた内部混合室55に流入して混合し、この内部混合室55で混合流体43を形成する。
【0040】
図1に示した本実施例の噴霧ノズル31では、噴霧用媒体42は複数の噴霧用媒体流路56を介して内部混合室55に流入するが、単一の噴霧用媒体流路56から内部混合室55に直接流入するように形成しても良い。
【0041】
また、噴霧流体41を複数の噴霧流体流路53を介して内部混合室55に流入するように形成しても良い。前記噴霧流体41と噴霧用媒体42は複数の流路を介して内部混合室55に流入させることで、噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合が早まる効果がある。
【0042】
内部混合室55の下流側には、該内部混合室55内で噴霧流体41と噴霧用媒体42を混合した混合流体43を、内筒部51の下流側に配設した複数の混合流体流路57〜60に混合流体を分岐する分岐部70を備えている。
【0043】
前記混合流体流路57〜60は、内筒部51の軸心側に配設された混合流体流路58、59と、外筒52に近接した内筒部51の外周側に配設された混合流体流路57、60から構成されている。
【0044】
混合流体43が流れる外周側に配設された混合流体流路57と軸心側に配設された混合流体流路58は、噴霧ノズル31の先端部に近接したこれらの混合流体流路57、58の下流側が混合流体43を対向して流下するように配設しており、そして前記混合流体流路57、58の下流側の流路内に、対向して流下する混合流体43が互いに衝突して混合流体43中の噴霧
流体41が微細化される合流部81を形成した構造となっている。
【0045】
同様に、混合流体43が流れる外周側に配設された混合流体流路60と軸心側に配設された混合流体流路59は、噴霧ノズル31の先端部に近接したこれらの混合流体流路60、59の下流側が混合流体43を対向して流下するように配設しており、そして前記混合流体流路60、59の下流側の流路内に、対向して流下する混合流体43が互いに衝突して混合流体43中の噴霧
流体41が微細化される合流部82を形成した構造となっている。
【0046】
そして、前記混合流体流路57、58の下流側の合流部81、及び、前記混合流体流路60、59の下流側の合流部82にそれぞれ連通して、噴霧ノズル31の先端からこれらの合流部81、82を経た混合流体43中の噴霧
流体41が微細化された扇形の噴霧44として外部に噴出させる開口部となる出口孔61、62が噴霧ノズル31の先端部の外面にそれぞれ設けられている。
【0047】
本実施例の噴霧ノズル31では、混合流体流路57〜60の下流部は内筒部51の内部と、該内筒部51と外筒部52との境界面に設けられ、出口孔61、62は外筒部52の先端部に設けた長穴63、64と前記混合流体流路57〜60の交差部となる。
【0048】
本実施例の噴霧ノズル31の場合、内筒部51の外周側に設置された外筒部52の先端部に設けた長穴63、64が、
図2に示すように混合流体流路57、58、及び混合流体流路60、59とそれぞれ直交する方向に長手方向を有する矩形状に形成されているため、噴出される混合流体43は、扇形の噴霧44は長穴63、64の長手方向(
図2のY−Y方向)に拡大する。
【0049】
このように流体を衝突させて扁平な扇形の噴霧44を形成する本実施例の噴霧ノズル31のような形式を特にファンスプレ―式噴霧ノズルと呼ぶ。
【0050】
扁平な扇形の噴霧44は一般的な円錐状の噴霧に比べて周囲気体との境界部が長いため、周囲気体との流速差によるせん断力が働きやすい。このため、扇形の噴霧44は一般的な円錐状の噴霧に比べて微粒化が良い特徴がある。
【0051】
また、扁平な扇形の噴霧44は噴霧の拡大や周囲気体とのせん断力により一般的な円錐状の噴霧に比べて噴霧の運動量が噴霧ノズル近傍で低下しやすい。このため、扁平な扇形の噴霧44は噴霧ノズル近傍に噴霧粒子が滞留しやすい。
【0052】
例えば、本実施例の噴霧ノズル31をガスタービン燃焼器の噴霧ノズルに適用した場合に、この噴霧ノズル31から噴霧流体を扁平な扇形の噴霧44として噴霧すると、噴霧の運動量が低下する。噴霧粒子は燃焼器内の気流に従って流れることで噴霧ノズル31を備えたガスタービン燃焼器の燃焼室の隔壁に付着し難くなり、噴霧粒子がガスタービン燃焼器の燃焼室の隔壁に付着することによる燃焼や液体燃料の変質によるコーキング等の障害を起こし難くなる。
【0053】
噴霧流体41の微粒化は噴霧用媒体42との混合や、出口孔61、62から噴出後の周囲気体とのせん断力により微粒化が進む。特に効果的に微粒化を進める部分について下記の(A)から(D)の4項目を示す。
【0054】
(A)噴霧ノズル31の内部混合室55での噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合。
【0055】
(B)内部混合室55から分岐後の個別の混合流体流路での噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合。
【0056】
(C)噴霧ノズル31の出口孔近傍での噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合流体43を相互に衝突させることによる噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合の促進。
【0057】
(D)噴霧ノズル31の出口孔から噴出後の混合流体43と周囲気体との流速差によるせん断力。
【0058】
前記項目(A)から(C)は流路内での液体であるの噴霧流体41と気体であるの噴霧用媒体42との混合と液体が気体中に分散することによる微粒化である。
【0059】
前記項目(A)は液体の噴霧流体41と気体の噴霧用媒体42とが混合である。項目(B)は混合流体43が混合流体流路57から60をそれぞれ流下する過程で、流路内の流速差によるせん断力で液体の分散と微粒化が進む部分を示す。
【0060】
項目(C)も混合流体43中での液体の分散と微粒化の一種である。本実施例の噴霧ノズル31の先端部となる出口孔61、62の近傍では、噴霧ノズル31の先端部に近接したこれらの混合流体流路57、58の下流側が混合流体43を対向して流下して合流部81で衝突するように配設していると共に、これらの混合流体流路60、59の下流側が混合流体43を対向して流下して合流部82で衝突するように配設している。
【0061】
よって、混合流体流路57、58の下流側を対向して流下した混合流体43が、混合流体流路57、58の合流部81で衝突し、混合流体流路60、59の下流側を対向して流下した混合流体43が、混合流体流路60、59の合流部82で衝突することで、混合流体43に強い乱れが生じる。
【0062】
この衝突により混合流体43を形成している噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合が進んで混合流体43中の噴霧
流体41の微細化が促進される。
【0063】
項目(D)は混合流体43が出口孔61、62から噴出後に周囲気体との流速差で混合流体中の液体である噴霧流体41が強いせん断力を受けることによる微粒化である。
【0064】
前記項目(C)により混合流体43が衝突することで、出口から噴出する混合流体43は衝突方向と直交する平面に拡がる扁平な扇形の噴霧44を形成する。
【0065】
扇形の噴霧44は円筒形の噴霧に比べて周囲気体との境界部が長いため、項目(D)による混合流体43中の噴霧流体41の微粒化が促進される特徴を有する。
【0066】
このように、噴霧流体41の微粒化は出口部に近い前記項目(C)と(D)が主となるが、項目(A)、項目(B)で各々の混合流体流路を流れる混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率が決まるため、項目(A)、項目(B)も噴霧流体41の微粒化性能を左右する重要な部分である。
【0067】
本実施例の噴霧ノズル31は、特に、上記項目(A)、項目(B)での混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率のばらつき低減と微粒化促進を図ったものである。噴霧流体41と噴霧用媒体42を内部混合室55で混合させて混合流体とした後にこの混合流体43を分岐し、分岐させた混合流体43を対向流として流下させて衝突させ、更に混合させるとの2段階の混合をすることで、以下の1)から3)に示す効果が生じる。
【0068】
1)1つ目の効果は、噴霧流体41と噴霧用媒体42を混合した混合流体43の形成の促進と、複数の出口孔61、62での混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率のばらつきの抑制である。これにより微粒化を促進できる。
【0069】
内筒部51の内部に設けた内部混合室55内で噴霧流体41と噴霧用媒体42が合流して混合流体43が形成される際に、それぞれの流れ方向の変化と合流に伴う流れの乱れにより両者が混合して噴霧流体41が微粒化するが、内部混合室55が大きいと流れの乱れが収まり、噴霧流体41と噴霧用媒体42の密度差により両者が分離する可能性がある。
【0070】
そこで、内部混合室55の下流側に分岐部70を設けて該内部混合室55内で形成された混合流体43が該内部混合室55から下流側に複数の混合流体流路57〜60に分割して流下することで、出口孔61、62から噴出する混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率のばらつきを抑制する。
【0071】
また、混合流体43を流下する混合流体流路を複数の混合流体流路57〜60に分岐することで、混合流体43と流路を形成する壁面との間のせん断力により混合流体43には乱れが生じ易くなる。この混合流体43の乱れを利用することで、混合流体43を形成する噴霧流体41と噴霧用媒体42との混合と、混合流体43の微粒化が促進される。
【0072】
特許文献1に示す内部混合室の場合、内部混合室の容積により混合状態が変わる。たとえば、内部混合室を狭めると噴霧流体と噴霧用媒体の混合が進む前に出口孔に到達する。
【0073】
一方、内部混合室を大きすぎる場合、噴霧流体と噴霧用媒体の混合する際の流れの乱れが収まり、両者の密度差により分離が生じる場合がある。
【0074】
この混合状態は内部混合室の容積と噴霧流体、噴霧用媒体の流量や圧力条件により変動する。このため、運転条件が変わると微粒化性能も変化することとなる。
【0075】
一方、本実施例の噴霧ノズル31では、噴霧ノズル31に設けた内部混合室55の下流側を複数の混合流体流路に分岐している。噴霧流体41と噴霧用媒体42の流れの乱れが収まり、両者が分離する前に複数の混合流体流路に分岐することで、運転条件に関わらず、噴霧ノズル先端部の出口孔での混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率のばらつきを抑制できる。
【0076】
また、噴霧流体41と噴霧用媒体42を混合させた混合流体43を複数の混合流体流路に分岐して流下させることで、混合流体43とその流路壁面との間のせん断力により混合流体43には乱れが生じ易くなる。この混合流体43の乱れによって、噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合と、噴霧流体41の微粒化が促進されることになる。
【0077】
2)2つ目の効果は、噴霧流体41と噴霧用媒体42とが混合する混合部での摩耗の抑制である。噴霧流体41と噴霧用媒体42を混合する場合、例えば、それぞれの流路を交差させて両者の混合する場合には、両者の混合部の壁面に噴霧流体41や噴霧用媒体42が角度をもって衝突し易い。
【0078】
噴霧流体41中に含まれる固形分は流路の壁面に対して角度をもって衝突すると壁面が摩耗しやすくなる。特に流路が狭いと流路断面積に対する壁面との接触部の割合が増えるので噴霧流体41中の固形分が流路の壁面に衝突する頻度が増え、混合部で摩耗しやすくなる。
【0079】
本実施例の噴霧ノズル31では、内筒部51の内部に設けた内部混合室55で噴霧流体41と噴霧用媒体42を合流させて混合流体43を形成している。複数の流路を用いた噴霧流体41と噴霧用媒体42の合流と混合を行う場合に比べて、前記内部混合室55の如く広い空間で両者を混合させているので、流路断面積に対する流路壁面との接触部の割合が小さく、噴霧流体41中の固形分が流路の壁面に衝突する頻度は少ない。
【0080】
また、内部混合室55の下流側で混合流体43を流下させる流路を分岐して複数の混合流体流路に分割させているが、内部混合室55の下流側では噴霧流体41と噴霧用媒体42はほぼ同じ方向に流れるので、流路壁面に噴霧流体41のみが角度をもって衝突し難い。このため、複数の流路を用いた噴霧流体41と噴霧用媒体42の合流と混合を行う場合に比べて混合部で流路の壁面が摩耗しにくくなる。
【0081】
特許文献2に示す複数の流路での混合の場合、混合部の上流側から接続する噴霧流体の流路と噴霧用媒体の流路が交差するため、混合部の壁面に噴霧流体や噴霧用媒体が角度をもって衝突しやすい。
【0082】
噴霧流体中に含まれる固形分は流路壁面に対して角度をもって衝突すると噴霧流体が流下する流路壁面が摩耗しやすくなる。さらに、この流路が複数の流路に分岐されている場合には、流路断面積に対する流路壁面との接触部の割合が増えるので、噴霧流体に含まれる固形分が流路壁面に衝突する頻度が増える。このため、噴霧流体と噴霧用媒体が混合する混合部で流路壁面が摩耗しやすい。
【0083】
一方、本実施例の噴霧ノズル31では、噴霧ノズル31に設けた内部混合室55で噴霧流体41と噴霧用媒体42を合流させて混合流体43を形成している。複数の流路での合流と混合の場合に比べて流路断面積に対する壁面との接触部の割合が小さく、流れ中の固形分が壁面に衝突する頻度は少ない。
【0084】
また、内部混合室55の下流側で複数の混合流体流路に分岐させるので、噴霧流体41と噴霧用媒体42は同じ方向に流れ、混合部の壁面に噴霧流体のみが角度をもって衝突し難い。このため、複数の流路での合流と混合の場合に比べて混合部で摩耗しにくくなる。
【0085】
3)3つ目の効果は、噴霧流体41(液体燃料)の変質による流動障害の抑制である。液体燃料は高温の状態で滞留すると、内部の高分子成分が変質し、固体として析出して流路の壁面に付着する、いわゆるコーキングという現象をもたらすことがある。
【0086】
このコーキングが生じると流路が閉塞し、噴霧ノズルからの噴霧や、噴霧ノズルを備えた燃焼装置の運転の障害となる。コーキングは液体燃料が単独で存在し、かつ高温部にさらされることで生じやすくなる。
【0087】
例えば、本実施例の噴霧ノズル31をガスタービン燃焼器の噴霧ノズルに適用した場合に、この噴霧ノズル31の先端部はガスタービン燃焼器の燃焼室の内筒に面するため、高温の燃焼ガスからの熱放射により高温となり易い。
【0088】
このため噴霧ノズル31の先端部では、液体燃料の噴霧流体41を、噴霧流体41と噴霧用媒体42が混合した混合流体43の状態で供給し、かつ高速流で送ることで滞留時間を短くすることが望ましい。
【0089】
一方、噴霧ノズル31の内筒部51の内部に設けた内部混合室55のように広い空間では、液体の一部が滞留する空間を有するため、内部混合室55を噴霧ノズル31の先端部からできるだけ離すことが望ましい。
【0090】
本実施例の噴霧ノズル31では、内筒部51の内部に設けた内部混合室55の下流側に該内部混合室55内で形成した混合流体43を分岐して流下させる複数の混合流体流路を配設することで、噴霧ノズル31の先端部から離れた位置に内部混合室55を設けることができる。
【0091】
内部混合室55から混合流体43を分岐して流下させる複数の混合流体流路は上述のように流路断面積が狭く、噴霧流体41と噴霧用媒体42の分離が生じ難い。また、流路の壁面を摩耗する可能性が低い。
【0092】
このため、液体燃料単独での流路や内部混合室55のように広い空間を噴霧ノズルの先端部から離れた位置に形成することで、噴霧ノズル31内の流路でのコーキングの発生とそれに伴う流動障害が生じ難い。
【0093】
上記したように、本実施例の噴霧ノズル31では、個々の出口孔から噴出する混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率を一定とし、噴霧流体41の微粒化の促進と噴霧用媒体の使用量の低減や加圧力の低減を両立させることができる。
【0094】
また、噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合部での摩耗や流路内でのコーキングを抑制し、噴霧ノズル31の使用時間を延ばすことができる。
【0095】
混合流体43の微粒化により、液体燃料の単位重量当たりの表面積が増加するので、燃焼反応が進み、噴霧ノズル31を備えた燃焼装置出口での未燃焼分である一酸化炭素や煤塵が低減し、燃焼効率を高くできる。また、燃焼反応を早く進めることで、酸素の消費が進み、窒素酸化物の発生を抑えることができる。
【0096】
さらに、未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減することで、噴霧ノズル31を備えた燃焼装置に投入する余剰な空気を削減できる。余剰な空気が減ると、燃焼排ガス量も低下し、燃焼排ガスとともに燃焼装置外に放出される顕熱を低下させ、熱効率を高めることができる。
【0097】
また、噴霧用媒体42の使用量の抑制や圧力の低減により、噴霧用媒体42の各々の供給や加圧力に使用なエネルギー消費量を低減できる。
【0098】
なお、
図1〜
図2に示した第1実施例の噴霧ノズル31では出口孔が出口孔61及び出口孔62との2つある場合について説明したが、出口孔が3つ以上ある場合についても本実施例の噴霧ノズル31を適用することができる。
【実施例4】
【0121】
次に本発明の第4実施例である噴霧ノズルを備えた燃焼装置として、噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器について
図6を用いて説明する。
【0122】
図6は本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器が設置されたガスタービンプラントの全体構成を示す概略構成図である。
図6に示したガスタービンプラントは、空気を圧縮して高圧の燃焼用空気1を生成する圧縮機6と、圧縮機6で生成した燃焼用空気1と燃料2を導入して燃焼し、高温の燃焼ガス3を発生させる燃焼装置を構成する
図1〜
図5に示した第1実施例〜第3実施例の噴霧ノズル31を備えたガスタービン燃焼器7と、ガスタービン燃焼器7で発生した燃焼ガス3を導入して駆動されるタービン8と、タービン8によって駆動され、電力を発生させる発電機9を有する。
【0123】
ガスタービン燃焼器7で発生させた燃焼ガス3によってタービン8を駆動した動力は発電機9を回転して発電すると共に、圧縮機6の駆動用としても用いられる。
【0124】
上記したガスタービンプラントではタービン8で得られた動力で発電機9を駆動して発電する例を示すが、タービン8で得られた動力をたとえば回転機械に使用しても構わない。
【0125】
本実施例となる噴霧ノズル31を備えた燃焼装置であるガスタービン燃焼器7は、燃焼用空気1を導入する外筒11と、該外筒11に取り付けられたエンドカバー12とで密閉された圧力容器を構成している。
【0126】
外筒11の内部は燃料ノズル31から噴霧された燃料と燃焼用空気を混合させて燃焼し、燃焼ガス3を生成する燃焼空間となる燃焼室13aを内部に形成する内筒13と、この内筒13の下流に該内筒13の流路よりも流路を狭めたトランジションピース14があり、このトランジションピース14の下流でタービン8に接続されている。
【0127】
燃焼用空気1は外筒11と内筒13の間の空間を通り、内筒13の最上流部(
図1のエンドカバー12側)から内筒13内に供給され、燃料2はエンドカバー15を貫通する燃料ノズル31から内筒13内の燃焼室13aに噴霧される。
【0128】
内筒13内の燃焼室13aに噴霧された燃料2は燃焼用空気1と混合し、その混合ガスが点火栓16により点火されて燃焼を開始する。
【0129】
ガスタービン燃焼器7では、窒素酸化物(NOx)や一酸化炭素(CO)、煤塵の低減が求められる。このため、燃焼用空気1と燃料2の混合を改良し、燃焼用空気1に旋回流を与える旋回器15や、空気取入口17を介して燃焼用空気1の噴出方向や流速、流量配分を調整して内筒13内の燃焼室13aに燃焼用空気1を流入させている。
【0130】
また、燃焼用空気1の一部を内筒13の側面に設けた空気導入口19から内筒13内の燃焼室13aに導入して、内筒13の隔壁部を冷却することが望ましい。
【0131】
図6に示す本実施例の噴霧ノズル31を備えたガスタービン燃焼器7に燃料を供給する燃料供給系統について説明すると、本実施例の噴霧ノズル31を備えた燃焼装置であるガスタービン燃焼器7に液体燃料を供給する燃料供給系統には、燃料タンク22と、この燃料タンク22から液体燃料を移送する移送ポンプ23と、移送する燃料を調節する移送調整弁24を備え、前記移送ポンプ23及び移送調整弁24の下流側には該移送ポンプ23及び移送調整弁24を経た液体燃料を加圧する高圧ポンプ25と、燃料の圧力を調節する圧力調整弁26を備えている。
【0132】
更に、前記高圧ポンプ25及び圧力調整弁26の下流側には該高圧ポンプ25及び圧力調整弁26を経た液体燃料の供給を遮断する遮断弁27と、液体燃料の流量を調節する流量調整弁28を備え、その下流側に該高圧ポンプ25及び圧力調整弁26を経た液体燃料の流量を測定する燃料流量計29と、液体燃料を分配する燃料分配器30が設置されており、前記燃料分配器30で分配された液体燃料2はガスタービン燃焼器7に設置された燃料ノズル31に供給され、この燃料ノズル31から燃料2を内筒13内の燃焼室13aに噴霧して燃焼させるように構成されている。
【0133】
また、ガスタービン燃焼器7に供給される噴霧用空気1は、圧縮機6で圧縮した空気の一部を高圧圧縮機32で昇圧し、この高圧圧縮機32の下流側に設置した圧力・流量調整弁33と空気分配器34を介して噴霧用空気1として燃料ノズル31に供給するように構成されている。
【0134】
この噴霧用空気1は液体燃料2の微粒化に用いられるほか、液体燃料2の供給開始時や停止時に流路や燃料ノズル31内の残留物を除去するパージ用の空気としても用いられる。
【0135】
なお、噴霧用空気1はガスタービンの圧縮機6で得られた圧縮空気を昇圧する方法のほか、単独の圧縮機で得ることも可能である。また、空気に代わり蒸気を用いることも可能である。
【0136】
噴霧ノズル31やガスタービン燃焼器7はガスタービンプラントに複数設けられるのが一般的であるが、
図6ではその一部のみを記載した。
【0137】
また、
図6に示した本実施例の噴霧ノズル31を備えたガスタービン燃焼器7では、燃料として液体燃料2を使用する場合を例に説明したが、本実施例の噴霧ノズル31を有するガスタービン燃焼器7は、液体燃料のほかに気体燃料を別の系統として有し、燃料の供給状況に応じて気体燃料と液体燃料を使用できるいわゆるデュアルフューエルと呼ばれるガスタービン燃焼器にも適用できる。
【0138】
液体燃料は直径で100μm未満、出来れば50μm以下に微粒化させることが望ましい。微粒子では体積に占める表面積が大きく、炉内からの熱放射により昇温し蒸発し易い。また、液滴としての燃焼反応も速い。
【0139】
一方、直径で150μm以上の粗大粒子は蒸発や燃焼し難く、未燃焼分としてCOや煤塵排出の原因となる。また、燃料気体と空気との混合が悪いのでNOx排出の原因となる。このため、噴霧ノズルは微粒化を進め、微粒子を増やすことで燃焼反応の促進に寄与する。なお、微粒化の程度は、混合流体の圧力や噴霧用媒体量(噴霧流体に対する噴霧用媒体の割合)により調整できる。
【0140】
実施例1から3のいずれかに示した本発明の噴霧ノズル31を本実施例に示す燃焼装置に用いることで、噴霧ノズル31の個々の出口孔から噴出する混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率を一定とし、噴霧流体41の微粒化の促進と噴霧用媒体の使用量の低減や加圧力の低減を両立させることができる。
【0141】
また、噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合部での摩耗や流路内でのコーキングを抑制し、噴霧ノズル31の使用時間を延ばすことができる。
【0142】
混合流体43の微粒化により、液体燃料の単位重量当たりの表面積が増加するので、燃焼反応が進み、噴霧ノズル31を備えた燃焼装置出口での未燃焼分である一酸化炭素や煤塵が低減し、燃焼効率を高くできる。
【0143】
また、燃焼反応を早く進めることで、酸素の消費が進み、窒素酸化物の発生を抑え、かつ未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減することができる。また、噴霧用媒体42の使用量の抑制や圧力の低減により、噴霧用媒体42の各々の供給や加圧力に使用なエネルギー消費量を低減できる。
【0144】
なお、燃焼方法は燃料と空気を別途に供給し燃焼させる拡散燃焼方式の燃焼器やボイラにおいても微粒化によるNOxやCO、煤塵の低減効果は得られる。
【実施例5】
【0145】
次に本発明の第5実施例である噴霧ノズルを備えた燃焼装置として、噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器について
図7を用いて説明する。
【0146】
図7は本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7bが設置されたガスタービンプラントの全体構成を示す概略構成図である。
【0147】
図7に示した本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7bは、
図6に示した第4実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7と基本的な構成及び作用効果は同じであるので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する部分についてのみ以下に説明する。
【0148】
図7に示した本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7bに用いられる噴霧ノズル31は、
図1〜
図2に示した第1実施例の噴霧ノズル31、並びに
図3〜
図5に示した第2実施例及び第3実施例の噴霧ノズル31であるので、噴霧ノズル31についての説明は省略する。
【0149】
図7に示した本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7bにおいて、
図6に示した第4実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7と異なっているのは、ガスタービン燃焼器7の内筒13の内部の、燃料ノズル31から噴霧された燃料と燃焼用空気を混合させて燃焼して燃焼ガス3を生成する燃焼空間となる燃焼室13aの上流側であって、燃焼用空気1を旋回して流入させる旋回器15の下流側となる前記燃料ノズル31の周囲に、燃焼用空気1の一部を投入する予混合室18を設けてこの予混合室18で前記噴霧ノズル31から噴出する液体燃料2と燃焼空気1の一部を混合し、下流側の燃焼室13aで燃焼するように構成したものである。
【0150】
そして前記予混合室18は下流側の燃焼室13aと接続されており、この下流側の燃焼室13aの流路断面積が前記予混合室18の流路断面積よりも広い流路断面積を有するように形成されて、本実施例の噴霧ノズルを備えたガスタービン燃焼器7bを構成したものである。
【0151】
ガスタービン燃焼器7の内筒13の上流側に燃焼用空気1と燃料2を燃焼前に混合させる空間を形成する予混合室18を設けることで、燃焼用空気1と燃料2が混合後に燃焼するので、希薄燃焼により燃焼時に温度が局所的に高い部分が形成されない。このため、高い温度での燃焼で生成しやすい窒素酸化物(NOx)を効果的に低減できる。
【0152】
この際、予混合室18の流路断面積を内筒13内の燃焼室13aの流路断面積よりも狭くなるように形成して、予混合室18内の燃焼用空気1と燃料2の流速を早めると、予混合室18内での燃料2の燃焼を抑制し、燃焼用空気1と燃料2の混合を促進することができる。
【0153】
実施例1から3のいずれかに示した本発明の噴霧ノズル31を本実施例に示す燃焼装置に用いることで、噴霧ノズル31の個々の出口孔から噴出する混合流体43中の噴霧流体41と噴霧用媒体42の比率を一定とし、噴霧流体41の微粒化の促進と噴霧用媒体の使用量の低減や加圧力の低減を両立させることができる。
【0154】
また、噴霧流体41と噴霧用媒体42の混合部での摩耗や流路内でのコーキングを抑制し、噴霧ノズル31の使用時間を延ばすことができる。
【0155】
混合流体43の微粒化により、液体燃料の単位重量当たりの表面積が増加するので、燃焼反応が進み、噴霧ノズル31を備えた燃焼装置出口での未燃焼分である一酸化炭素や煤塵が低減し、燃焼効率を高くできる。
【0156】
また、燃焼反応を早く進めることで、酸素の消費が進み、窒素酸化物の発生を抑え、かつ未燃焼分や煤塵、一酸化炭素が低減することができる。また、噴霧用媒体42の使用量の抑制や圧力の低減により、噴霧用媒体42の各々の供給や加圧力に使用なエネルギー消費量を低減できる。