(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された亀裂モニタリング装置は、亀裂の進展による電位差の変化を検出するセンサの取り付け位置を決定するために、非破壊検査法により予め亀裂の発生位置を正確に特定する必要がある。センサの取り付け位置が正確でないと、亀裂の長さを誤判定してしまう可能性がある。
また、亀裂の進展に伴う電位差の変化が非常に小さいため、配管の使用期間が長くなるにつれて電位差を検出する端子の位置が徐々に変化し、亀裂の長さを誤判定してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定装置および損傷判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明に係る損傷判定装置は、複数の部材が溶接により接続された配管と、前記配管の外周面に延在する溶接部の近傍に取り付けられ、予め定められた第1検出方向の歪みに応じた第1出力信号を出力する第1歪み検出部と、前記第1歪み検出部が出力する前記第1出力信号に基づいて、前記配管の損傷度を判定する損傷判定部とを備え、前記第1歪み検出部は、前記第1検出方向が、前記溶接部が延在する方向に直交する方向と一致するように前記配管に取り付けられている。
【0009】
本発明に係る損傷判定装置によれば、配管の歪みを検出する第1検出方向が、溶接部が延在する方向に直交する方向と一致するように、第1歪み検出部が配管に取り付けられている。溶接部が延在する方向に直交する方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向と一致しているので、精度良く配管の損傷度を判定することができる。また、第1歪み検出部は、配管の歪みを直接的に第1出力信号として出力するものであるので、亀裂の進展に伴う微小な電位差を検出する方式と比較して、誤判定をすることが抑制される。
このように、本発明に係る損傷判定装置によれば、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0010】
本発明の第1態様の損傷判定装置は、前記溶接部の近傍に取り付けられ、予め定められた第2検出方向の歪みに応じた第2出力信号を出力する第2歪み検出部を備え、前記第2歪み検出部は、前記第2検出方向が、前記溶接部が延在する方向と一致するように前記配管に取り付けられており、前記損傷判定部が、前記第1歪み検出部が出力する前記第1出力信号と前記第2歪み検出部が出力する前記第2出力信号とに基づいて、前記配管の損傷度を判定する。
【0011】
本発明の第1態様の損傷判定装置によれば、配管の歪みを検出する第2検出方向が、溶接部が延在する方向と一致するように、第2歪み検出部が配管に取り付けられている。溶接部が延在する方向に直交する方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向とは異なる。第2歪み検出部が出力する第2出力信号を配管の損傷度の判定に用いることにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0012】
本発明の第1態様の損傷判定装置においては、前記損傷判定部が、前記第2歪み検出部が出力する前記第2出力信号の変化率に応じて前記第1出力信号を補正し、該補正された前記第1出力信号に基づいて、前記配管の損傷度を判定するようにしてもよい。
このようにすることで、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みに対応する第2出力信号の変化率に応じて第1出力信号を適切に補正することができる。これにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0013】
本発明の第2態様の損傷判定装置は、前記配管が、同径の第1配管部材および第2配管部材の端部を溶接した周方向の前記溶接部を備えており、前記第1歪み検出部が、前記溶接部が延在する前記周方向に直交する方向の前記配管の歪みに応じた前記第1出力信号を出力するように前記配管に取り付けられている。
このようにすることで、周方向の溶接部を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定装置を提供することができる。
【0014】
本発明の第3態様の損傷判定装置は、前記配管が、第3配管部材および第4配管部材の軸方向に延在する端面同士を溶接した長手方向の前記溶接部を備えており、前記第1歪み検出部が、前記溶接部が延在する前記長手方向に直交する方向の前記配管の歪みに応じた前記第1出力信号を出力するように前記配管に取り付けられている。
このようにすることで、長手方向の溶接部を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定装置を提供することができる。
【0015】
本発明に係る損傷判定方法は、複数の部材が溶接により接続された配管の損傷を判定する損傷判定方法であって、前記配管の外周面に延在する溶接部の近傍に取り付けられた第1歪み検出部が、予め定められた第1検出方向の歪みに応じた第1出力信号を出力する第1出力工程と、前記出力工程にて出力された前記第1出力信号に基づいて、前記配管の損傷度を判定する損傷判定工程とを備え、前記第1歪み検出部は、前記第1検出方向が、前記溶接部が延在する方向に直交する方向と一致するように前記配管に取り付けられている。
【0016】
本発明に係る損傷判定方法によれば、配管の歪みを検出する第1検出方向が、溶接部が延在する方向に直交する方向と一致するように、第1歪み検出部が配管に取り付けられている。溶接部が延在する方向に直交する方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向と一致しているので、精度良く配管の損傷度を判定することができる。また、第1出力工程は、配管の歪みを直接的に第1出力信号として出力するものであるので、亀裂の進展に伴う微小な電位差を検出する方式と比較して、誤判定をすることが抑制される。
このように、本発明に係る損傷判定方法によれば、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0017】
本発明の第1態様の損傷判定方法は、前記溶接部の近傍に取り付けられた第2歪み検出部が、予め定められた第2検出方向の歪みに応じた第2出力信号を出力する第2出力工程を備え、前記第2歪み検出部は、前記第2検出方向が、前記溶接部が延在する方向と一致するように前記配管に取り付けられており、前記損傷判定工程が、前記第1出力工程にて出力された前記第1出力信号と前記第2出力工程にて出力された前記第2出力信号とに基づいて、前記配管の損傷度を判定する。
【0018】
本発明の第1態様の損傷判定方法によれば、配管の歪みを検出する第2検出方向が、溶接部が延在する方向と一致するように、第2歪み検出部が配管に取り付けられている。溶接部が延在する方向に直交する方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向とは異なる。第2歪み検出部が出力する第2出力信号を配管の損傷度の判定に用いることにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0019】
本発明の第1態様の損傷判定方法においては、前記損傷判定工程が、前記第2出力工程により出力された前記第2出力信号の変化率に応じて前記第1出力信号を補正し、該補正された前記第1出力信号に基づいて、前記配管の損傷度を判定するようにしてもよい。
このようにすることで、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みに対応する第2出力信号の変化率に応じて第1出力信号を適切に補正することができる。これにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0020】
本発明の第2態様の損傷判定方法によれば、前記配管が、同径の第1配管部材および第2配管部材の端部を溶接した周方向の前記溶接部を備えており、前記第1歪み検出部が、前記溶接部が延在する前記周方向に直交する方向の前記配管の歪みに応じた前記第1出力信号を出力するように前記配管に取り付けられている。
このようにすることで、周方向の溶接部を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定方法を提供することができる。
【0021】
本発明の第3態様の損傷判定方法によれば、前記配管が、第3配管部材および第4配管部材の軸方向に延在する端面同士を溶接した長手方向の前記溶接部を備えており、前記第1歪み検出部が、前記溶接部が延在する前記長手方向に直交する方向の前記配管の歪みに応じた前記第1出力信号を出力するように前記配管に取り付けられている。
このようにすることで、長手方向の溶接部を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することが可能な損傷判定装置および損傷判定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態の損傷判定装置100について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の損傷判定装置100の構成を示す側面図である。
【0025】
図1に示すように、損傷判定装置100は、配管部材40,41と、歪みゲージ10と、損傷判定部20とを備えている。
配管部材40(第1配管部材)および配管部材41(第2配管部材)は、同径の部材である。配管部材40の中心軸A方向の右端部と、配管部材41の中心軸A方向の左端部とが突き合わせ溶接により溶接されており、溶接された部分が中心軸Aの周方向に延在する溶接部51となっている。配管部材40および配管部材41が溶接により接続されたものが、横断面が円筒形状の配管となっている。この配管には配管部材40,41とは異なる他の配管(不図示)も溶接により接続されている。
【0026】
歪みゲージ10(第1歪み検出部)は、歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するセンサである。歪みゲージ10は、薄い絶縁体上に配線された金属の抵抗体が取り付けられた可撓性のシート形状の部材である。歪みゲージ10は、金属の抵抗体が変形によって電気抵抗値が変化する特性を利用して、歪みに応じた出力電圧を出力するセンサである。歪みゲージ10の入力端子(不図示)を介して金属の抵抗体に予め入力電圧を与えておくと、金属の抵抗体の電気抵抗値に応じた出力電圧(出力信号)が出力端子30,31から出力される。
【0027】
歪みゲージ10は、配管部材40,41により形成される配管の外周面の周方向に延在する溶接部51の近傍に取り付けられている。
歪みゲージ10は、予め定められた検出方向(第1検出方向)の歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するものである。予め定められた検出方向とは、
図1に示す歪みゲージ10の長手方向である。
図1および
図2に示すように、歪みゲージ10は、長手方向の端部が溶接部51の端部に一致するように点溶接で取り付けられている。
【0028】
損傷判定装置100は、配管部材40,41により形成される配管の溶接部51近傍の損傷を判定する損傷判定部20を備えている。損傷判定部20は、歪みゲージ10の出力端子30,31に接続されており、出力端子30,31から入力される出力電圧に基づいて、配管部材40,41により形成される配管の損傷度を判定する。
【0029】
次に、
図2を用いて、配管部材40,41により形成される配管の損傷(亀裂)の進行状態について説明する。
図2は、
図1に示す配管の中心軸A方向の縦断面図であり、(a)は損傷のない状態を示す図であり、(b)は微小な損傷がある状態を示す図であり、(c)は損傷が進行した状態を示す図である。
【0030】
図2の各図において、実線で囲まれた溶接部51は、配管部材40,41を突き合わせ溶接する際に、溶接棒等の溶加材と配管部材40,41を構成する母材とが溶融して凝固した部分を示す。また、
図2の各図において、母材53は、配管部材40,41を突き合わせ溶接する際に何らの熱的な影響を受けなかった部分を示す。また、
図2の各図において、熱影響部52は、配管部材40,41を突き合わせ溶接する際に、溶融はしなかったが熱的な影響により組織や性質が変化した部分を示す。
図2において、点線部は、熱影響部52と母材53との境界位置を示す。
【0031】
図2(a)は、損傷のない状態を示す図である。
図2(a)に示すように、損傷のない状態の熱影響部52は、母材53と略同じ板厚となっている。
図2(a)に示す状態では、配管部材41の外周面に取付けられた歪みゲージ10に変形は生じていない。
【0032】
図2(b)は、微小な損傷がある状態を示す図である。
図2(b)に示すように、熱影響部52の溶接部51近傍の複数箇所に、微小亀裂52a,52b,52c,52d,52eが発生している。この微小亀裂は、クリーブボイドとよばれる極小の空隙が集合、合体して形成されたものであり、数百μm程度の長さの亀裂である。
図2(b)に示すように、微小亀裂が生じている状態では、熱影響部52と母材53との境界位置が溶接部51から遠ざかっている。これは、配管部材40と配管部材41とに、互いを引き離す方向の力が加わったことにより、熱影響部52が配管の中心軸A方向に延びて塑性変形が生じたからである。
【0033】
図2(b)に示すように、熱影響部52は、配管の中心軸A方向に塑性変形を生じたことにより、中心軸A方向の中央部の板厚が薄くなっている。板厚が薄くなっているのは、熱影響部52の体積が一定のまま、中心軸A方向に延びて塑性変形が生じたからである。熱影響部52の板厚が薄くなるのに伴って、熱影響部52の外周面に取付けられた歪みゲージ10が長手方向に変形し、歪みゲージ10の出力端子30,31から出力される出力電圧が変化する。
【0034】
図2(c)は、損傷が進行した状態を示す図である。
図2(c)に示すように、熱影響部52の溶接部51近傍の複数箇所に、進展亀裂52f,52g,52hが発生している。この進展亀裂52f,52g,52hは、微小亀裂52a,52b,52c,52d,52eが集合して形成されたものであり、数mm程度の長さの亀裂である。
図2(c)に示すように、進展亀裂が生じている状態では、熱影響部52と母材53との境界位置が溶接部51から更に遠ざかっている。熱影響部52の板厚が更に薄くなるのに伴って、熱影響部52の外周面に貼付された歪みゲージ10が長手方向に更に変形し、歪みゲージ10から出力される出力電圧が変化する。
【0035】
図2の各図に示すように、亀裂の進展に伴って溶接部51の形状の変化は殆ど生じない。損傷が進行して中心軸A方向の変形が生じるのは主に熱影響部52の部分である。したがって、本実施形態においては、亀裂の進展に伴って生じる配管部材41の歪みを精度良く検出するために、歪みゲージ10の長手方向の端部を溶接部51の端部と一致させている。このようにすることで、損傷の進行(亀裂の進展)により変形の生じやすい熱影響部52の変形をより検知し易くしている。
【0036】
前述したように、歪みゲージ10は、予め定められた検出方向(第1検出方向)の歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するものである。
図2を用いて説明したように、配管の損傷による配管部材41の外周面の歪みは、主に溶接部51が延在する周方向に直交する中心軸A方向と一致する。そこで、本実施形態の損傷判定装置100では、歪みゲージ10の歪みの検出方向が、溶接部51が延在する周方向に直交する中心軸A方向と一致するように配管部材41に取り付けられている。
【0037】
本実施形態において、歪みゲージ10は、歪みの検出方向が中心軸A方向と一致するように取り付けられるが、ここでいう「一致する」とは、実質的に同方向となるように取り付けられることをいう。実質的に同方向とは、中心軸A方向に対して、10°程度の範囲で交差する方向をいう。0°(中心軸Aと同方向)であるのが望ましいが、歪みゲージ10は、歪みの検出精度の許容度等に応じて10°程度の範囲の方向に取り付けられる。
【0038】
図3は、本実施形態の配管の歪み量と使用時間の関係を示す図である。
図3に示すように、配管部材40,41により形成される配管の歪み量は、配管の使用時間に伴って徐々に増加する。そして、一定の使用時間T1が経過して歪み量がS1となった後、歪み量が急激に増加する。これは、歪み量がS1を超えると、熱影響部に生じた亀裂が急激に成長し、最終的には配管の破断に至るからである。本実施形態では、歪み量が急激に進展する前の歪み量S1を検出して損傷度を判定することにより、亀裂が急激に進展する前に配管の交換や修繕を促すようにする。
【0039】
次に、本実施形態の損傷判定部20が実行する損傷判定方法について説明する。
損傷判定部20は、CPU等の制御部(不図示)がROM等の記憶部(不図示)に格納されたプログラムを読み出し、読み出したプログラムを実行することにより、後述する損傷判定方法を実行する。
【0040】
歪みゲージ10は、配管部材40,41により形成される配管の外周面の中心軸A方向の歪みに応じた出力電圧を、出力端子30,31から出力する(第1出力工程)。損傷判定部20は、出力端子30,31から出力される出力電圧を受信する。
【0041】
損傷判定部20は、出力端子30,31から出力される出力電圧に基づいて、配管部材40,41により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えているかどうかを判定する。損傷判定部20は、予め定められた損傷度に応じた出力電圧をROM等の記憶部(不図示)に記憶しておき、記憶した出力電圧と出力端子30,31から出力される出力電圧とを比較する。
【0042】
ここで、歪みゲージ10は、配管が延びる場合に出力電圧が増加するようになっているものとする。損傷判定部20は、出力端子30,31から出力される出力電圧が記憶した出力電圧値を超えた場合に、配管部材40,41により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定する(損傷判定工程)。損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定された場合、損傷判定部20は、表示画面(不図示)等を介してその旨をプラントの作業者に通知する(通知工程)。この通知を受けた作業者は、配管部材40,41により形成される配管の補修または交換が必要であると認識することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の損傷判定装置100によれば、配管の歪みを検出する検出方向(第1検出方向)が、溶接部51が延在する周方向に直交する中心軸A方向と一致するように、歪みゲージ10(第1歪み検出部)が配管に取り付けられている。溶接部51が延在する周方向に直交する中心軸A方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向と一致しているので、精度良く配管の損傷度を判定することができる。また、歪みゲージ10(第1歪み検出部)は、配管の歪みを直接的に出力電圧(第1出力信号)として出力するものであるので、亀裂の進展に伴う微小な電位差を検出する方式と比較して、誤判定をすることが抑制される。このように、本実施形態の損傷判定装置100によれば、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0044】
本実施形態の損傷判定装置100は、配管が、同径の配管部材40(第1配管部材)および配管部材41(第2配管部材)の端部を溶接した周方向の溶接部51を備えており、歪みゲージ10(第1歪み検出部)が、溶接部51が延在する周方向に直交する方向の配管の歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するように配管に取り付けられている。
このようにすることで、周方向の溶接部51を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0045】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について
図4および
図5を用いて説明する。
図4は、第2実施形態の損傷判定装置200の構成を示す側面図である。
図5は、第2実施形態の配管の歪み量と使用時間の関係を示す図である。
第2実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態における歪みゲージ10に加え、歪みゲージ11が追加されている点が異なる。なお、第1実施形態と同一の符号を付した構成は、同一のものであるとし、その説明を省略する。
【0046】
歪みゲージ11(第2歪み検出部)は、歪みに応じた出力電圧(第2出力信号)を出力するセンサである。歪みゲージ11は、薄い絶縁体上に配線された金属の抵抗体が取り付けられた可撓性のシート形状の部材となっている。歪みゲージ11は、金属の抵抗体が変形によって電気抵抗値が変化する特性を利用して、歪みに応じた出力電圧を出力するセンサである。歪みゲージ11の入力端子(不図示)を介して金属の抵抗体に予め入力電圧を与えておくと、金属の抵抗体の電気抵抗値に応じた出力電圧(出力信号)が出力端子32,33から出力される。
【0047】
歪みゲージ11は、配管部材40,41により形成される配管の外周面に延在する溶接部51の近傍に取り付けられている。
歪みゲージ11は、予め定められた検出方向(第2検出方向)の歪みに応じた出力電圧(第2出力信号)を出力するものである。予め定められた検出方向とは、
図1に示す歪みゲージ11の長手方向である。
図4に示すように、歪みゲージ11は、短手方向の端部が溶接部51の端部に一致するように点溶接で取り付けられている。
【0048】
損傷判定装置200は、配管部材40,41により形成される配管の溶接部51近傍の損傷を判定する損傷判定部21を備えている。損傷判定部21は、歪みゲージ10の出力端子30,31および歪みゲージ11の出力端子32,33に接続されている。損傷判定部21は、出力端子30,31から入力される出力電圧(第1出力信号)と、出力端子32,33から入力される出力電圧(第2出力信号)とに基づいて、配管部材40,41により形成される配管の損傷度を判定する。
【0049】
第2実施形態において歪みゲージ11を設けているのは、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制するためである。第1実施形態で説明したように、配管の損傷による配管部材41の外周面の歪みは、主に溶接部51が延在する周方向に直交する中心軸A方向と一致している。一方、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みは、中心軸A方向だけでなく周方向にも生じる。歪みゲージ11は、長手方向が溶接部51が延在する周方向に一致するように配管部材41の外周面に貼付されている。歪みゲージ11によって、配管の温度や圧力の変化による配管の周方向の歪みに応じた出力電圧を出力し、この出力電圧に基づいて歪みゲージ10の出力電圧を補正することにより、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0050】
ここで、本実施形態の配管の歪み量と使用時間の関係について
図5を用いて説明する。
図5は、歪み量がS1である時間T1において配管が設置されるプラントの運転条件が変更され、その後の歪み量がS2まで増加した時間T2に至ることを示している。運転条件の変更とは、例えば、プラントの出力を上昇させる運転条件の変更である。この変更が行われると、配管を流通する蒸気の温度や圧力が上昇し、配管が中心軸A方向と周方向にそれぞれ延びる方向に歪みが発生する。
図5において、グラフG1は歪みゲージ10により検出される歪み量を示すグラフであり、グラフG2は歪みゲージ11により検出される歪み量を示すグラフである。
【0051】
本実施形態の損傷判定部21は、
図5に示す歪みが発生する場合、時刻T2において歪みゲージ10が検出する歪み量S4を下記の式(1)に基づいて補正し、補正後の歪み量S4′を算出する。
S4′=S4−[S3・(S2−S1)/S1] (1)
式(1)において、(S2−S1)/S1は、歪みゲージ11が検出する時刻T1での歪み量S1に対する時刻T2での歪み量S2の変化率(増加率)である。そして、この変化率に歪みゲージ10が検出する時刻T1での歪み量S3を乗じることにより、時刻T2における配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による中心軸A方向の配管の歪みの増加量が算出される。この増加量を時刻T2において歪みゲージ10が検出する歪み量S4から減算することにより、補正後の歪み量S4′が算出される。
【0052】
損傷判定部21は、出力端子30,31から出力される出力電圧と、出力端子32,33から出力される出力電圧とに基づいて、前述した式(1)を用いて歪み量を算出する。式(1)における歪み量S1,S2,S3,S4の値としては、歪み量に比例する値である出力電圧の値を用いるものとする。損傷判定部21は、算出された歪み量に基づいて、配管部材40,41により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えているかどうかを判定する。損傷判定部20は、予め定められた損傷度に応じた歪み量をROM等の記憶部(不図示)に記憶しておき、記憶した歪み量と算出された歪み量とを比較する。そして、算出された歪み量が記憶した歪み量を超える場合に、配管部材40,41により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定する(損傷判定工程)。
【0053】
損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定された場合、損傷判定部20は、表示画面(不図示)等を介してその旨をプラントの作業者に通知する(通知工程)。この通知を受けた作業者は、配管部材40,41により形成される配管の補修または交換が必要であると認識することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の損傷判定装置200によれば、配管の歪みを検出する検出方向(第2検出方向)が、溶接部51が延在する方向と一致するように、歪みゲージ11(第2歪み検出部)が配管に取り付けられている。溶接部51が延在する方向に直交する周方向は、クリープ損傷が進行することにより配管に歪みが発生する方向とは異なる。歪みゲージ11が出力する出力電圧(第2出力信号)を配管の損傷度の判定に用いることにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0055】
本実施形態の損傷判定装置200は、損傷判定部21が、歪みゲージ11が出力する出力電圧(第2出力信号)の変化率(増加率)に応じて歪みゲージ10が出力する出力電圧(第1出力信号)を補正し、補正された出力電圧(歪み量)に基づいて、配管の損傷度を判定する。
このようにすることで、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みに対応する歪みゲージ11の出力電圧(第2出力信号)の変化率に応じて歪みゲージ10の出力電圧(第1出力信号)を適切に補正することができる。これにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。
【0056】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、本発明の第3実施形態の損傷判定装置600の構成を示す側面図である。
図7は、本発明の第3実施形態の配管の中心軸方向に直交する方向の断面図である。
第3実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下で特に説明する部分を除き、第1実施形態と同様であるものとし、説明を省略する。
【0057】
第1実施形態の配管は、同径の部材である配管部材40(第1配管部材)および配管部材41(第2配管部材)により構成されるものであった。それに対して、本実施形態の配管は、中心軸A方向に延在する配管部材60(第3配管部材)および配管部材61(第4配管部材)により構成されるものである。配管部材60および配管部材61は、中心軸A方向に延在する端面同士が溶接されている。この溶接された部分が、配管の長手方向(中心軸A方向)の溶接部62となっている。
【0058】
歪みゲージ12(第1歪み検出部)は、歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するセンサである。歪みゲージ12は、薄い絶縁体上に配線された金属の抵抗体が取り付けられた可撓性のシート形状の部材となっている。歪みゲージ12は、金属の抵抗体が変形によって電気抵抗値が変化する特性を利用して、歪みに応じた出力電圧を出力するものである。歪みゲージ12の入力端子(不図示)を介して金属の抵抗体に予め入力電圧を与えておくと、金属の抵抗体の電気抵抗値に応じた出力電圧(出力信号)が出力端子63,64から出力される。
【0059】
損傷判定装置600は、配管部材60,61により形成される配管の溶接部62近傍の損傷を判定する損傷判定部22を備えている。損傷判定部22は、歪みゲージ12の出力端子63,64に接続されており、出力端子63,64から入力される出力電圧に基づいて、配管部材60,61により形成される配管の損傷度を判定する。
【0060】
歪みゲージ12は、予め定められた検出方向(第1検出方向)の歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するものである。配管の損傷による配管部材61の外周面の歪みは、主に溶接部51が延在する中心軸A方向に直交する周方向と一致する。そこで、本実施形態の損傷判定装置600では、歪みゲージ12の歪みの検出方向が、溶接部62が延在する中心軸A方向に直交する周方向と一致するように配管部材61に取り付けられている。
【0061】
歪みゲージ102は、配管部材60,61により形成される配管の外周面の周方向の歪みに応じた出力電圧を、出力端子63,64から出力する(第1出力工程)。損傷判定部22は、出力端子63,64から出力される出力電圧を受信する。
【0062】
損傷判定部22は、出力端子63,64から出力される出力電圧に基づいて、配管部材60,61により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えているかどうかを判定する。損傷判定部22は、予め定められた損傷度に応じた出力電圧をROM等の記憶部(不図示)に記憶しておき、記憶した出力電圧と出力端子63,64から出力される出力電圧とを比較する。
【0063】
ここで、歪みゲージ12は、配管が延びる場合に出力電圧が増加するようになっているものとする。損傷判定部22は、出力端子63,64から出力される出力電圧が記憶した出力電圧値を超えた場合に、配管部材63,64により形成される配管の損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定する(損傷判定工程)。損傷度が予め定められた損傷度を超えていると判定された場合、損傷判定部22は、表示画面(不図示)等を介してその旨をプラントの作業者に通知する(通知工程)。この通知を受けた作業者は、配管部材60,61により形成される配管の補修または交換が必要であると認識することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の損傷判定装置600は、配管が、配管部材60(第3配管部材)および配管部材61(第4配管部材)の中心軸A方向に延在する端面同士を溶接した長手方向の溶接部62を備えており、歪みゲージ12(第1歪み検出部)が、溶接部62が延在する長手方向に直交する周方向の配管の歪みに応じた出力電圧(第1出力信号)を出力するように配管に取り付けられている。
このようにすることで、長手方向の溶接部62を備える配管において、誤判定を抑制して精度良く配管の損傷度を判定することができる。
【0065】
〔他の実施形態〕
第1実施形態において、歪みゲージ10は、歪みに応じた出力電圧を出力端子30,31から出力するものであったが、他の態様であってもよい。例えば、歪みエージ10に歪みに応じた出力電圧をデジタル信号に変換する機能を設け、歪みに応じたデジタル信号(出力信号)を損傷判定部20に送信するようにしてもよい。
【0066】
また、第3実施形態は、歪みゲージ12のみを配管に貼付するものであったが、他の態様であっても良い。歪みゲージ12に加え、他の歪みゲージを追加してもよい。この場合、他の歪みゲージは、溶接部62が延在する中心軸A方向が長手方向となるように設置するものとする。そして、他の歪みゲージが出力する出力電圧は、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みに対応するものである。他の歪みゲージの出力電圧(第2出力信号)の変化率(増加率)に応じて歪みゲージ12の出力電圧(第1出力信号)を適切に補正することができる。これにより、配管の温度や圧力の変化等、クリープ損傷の進行以外の原因による配管の歪みによる誤判定を抑制することができる。