(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、窒化硼素10〜50質量部、リン系難燃剤3〜30質量部、フルオロポリマー0.001〜10質量部及びワラストナイト10〜100質量部を含有することを特徴とする熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は、以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0011】
[概要]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、窒化硼素15〜50質量部、リン系難燃剤3〜30質量部、フルオロポリマー0.001〜10質量部及びワラストナイト10〜100質量部を含有することを特徴とする。
【0012】
[ポリカーボネート樹脂]
本発明において使用するポリカーボネート樹脂の種類に制限はなく、ポリカーボネート樹脂は、1種類を用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び任意の比率で併用してもよい。
【0013】
ポリカーボネート樹脂は、[−O−X−O−CO−]で表される炭酸結合を有する基本構造の重合体であり、Xは一般には炭化水素であるが、種々の特性付与のためヘテロ原子、ヘテロ結合の導入されたXを用いてもよい。
【0014】
また、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂、及び脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂に分類できるが、いずれを用いることもできる。なかでも、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0015】
ポリカーボネート樹脂の具体的な種類に制限はないが、例えば、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなるポリカーボネート重合体が挙げられる。この際、ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体に加えて、ポリヒドロキシ化合物等を反応させるようにしてもよい。また、二酸化炭素をカーボネート前駆体として、環状エーテルと反応させる方法も用いてもよい。またポリカーボネート重合体は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。さらに、ポリカーボネート重合体は1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。このとき共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体等、種々の共重合形態を選択することができる。なお、通常、このようなポリカーボネート重合体は、熱可塑性の樹脂となる。
【0016】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物の例を挙げると、
【0017】
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0018】
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0019】
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0020】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0021】
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0022】
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0023】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
【0024】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0025】
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0026】
これらの中ではビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましく、中でもビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性、耐熱性の点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0027】
また、脂肪族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーの例を挙げると、
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
【0028】
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
【0029】
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0030】
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
【0031】
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;等が挙げられる。
【0032】
ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0033】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0034】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【0035】
・ポリカーボネート樹脂の製造方法
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち、特に好適なものについて具体的に説明する。
【0036】
・・界面重合法
まず、ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
【0037】
ジヒドロキシ化合物及びカーボネート前駆体は、前述のとおりである。なお、カーボネート前駆体の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
【0038】
反応に不活性な有機溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0039】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0040】
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限はないが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、ビスフェノール化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0041】
重合触媒としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
分子量調節剤としては、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的に、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等のアルキル基置換フェノール;イソプロパニルフェノール等のビニル基含有フェノール;エポキシ基含有フェノール;o−ヒドロキシ安息香酸、2−メチル−6−ヒドロキシフェニル酢酸等のカルボキシル基含有フェノール;等が挙げられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
分子量調節剤の使用量は、ジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、樹脂組成物の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0044】
反応の際に、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート前駆体としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤はジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
【0045】
・・溶融エステル交換法
次に、ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
【0046】
ジヒドロキシ化合物は、前述の通りである。
一方、炭酸ジエステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート等の炭酸ジアルキル化合物;ジフェニルカーボネート;ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートなどが挙げられる。中でも、ジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが好ましく、特にジフェニルカーボネートがより好ましい。なお、炭酸ジエステルは1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0047】
ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの比率は、所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、炭酸ジエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0048】
ポリカーボネート樹脂では、その末端水酸基量が熱安定性、加水分解安定性、色調等に大きな影響を及ぼす傾向がある。このため、公知の任意の方法によって末端水酸基量を必要に応じて調整してもよい。エステル交換反応においては、通常、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を調整したポリカーボネート樹脂を得ることができる。なお、この操作により、通常は得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
【0049】
炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0050】
溶融エステル交換法によりポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は任意のものを使用できる。なかでも、例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性硼素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0051】
溶融エステル交換法において、反応温度は通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、芳香族ヒドロキシ化合物等の副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
【0052】
溶融重縮合反応は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0053】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0054】
触媒失活剤の使用量は、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは5当量以下である。更には、ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは20ppm以下である。
【0055】
・ポリカーボネート樹脂に関するその他の事項
ポリカーボネート樹脂の分子量は、適宜選択して決定すればよいが、粘度平均分子量[Mv]で通常10000以上、好ましくは16000以上、より好ましくは17000以上、より好ましくは18000以上であり、また、通常40000以下、好ましくは30000以下である。
【0056】
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
−4Mv
0.83 から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[η
sp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0057】
ポリカーボネート樹脂の末端水酸基濃度は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、通常1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下である。これによりポリカーボネート樹脂の滞留熱安定性及び色調をより向上させることができる。また、その下限は、特に溶融エステル交換法で製造されたポリカーボネート樹脂では、通常10ppm以上、好ましくは30ppm以上、より好ましくは40ppm以上である。これにより、分子量の低下を抑制し、樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
【0058】
なお、末端水酸基濃度の単位は、ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
【0059】
ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂単独(ポリカーボネート樹脂単独とは、ポリカーボネート樹脂の1種のみを含む態様に限定されず、例えば、モノマー組成や分子量が互いに異なる複数種のポリカーボネート樹脂を含む態様を含む意味で用いる。)で用いてもよく、ポリカーボネート樹脂と他の熱可塑性樹脂とのアロイ(混合物)とを組み合わせて用いてもよい。さらに、例えば、難燃性や耐衝撃性をさらに高める目的で、ポリカーボネート樹脂を、シロキサン構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性や難燃性をさらに向上させる目的でリン原子を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;熱酸化安定性を向上させる目的で、ジヒドロキシアントラキノン構造を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;光学的性質を改良するためにポリスチレン等のオレフィン系構造を有するオリゴマーまたはポリマーとの共重合体;耐薬品性を向上させる目的でポリエステル樹脂オリゴマーまたはポリマーとの共重合体;等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体として構成してもよい。
【0060】
また、成形品の外観の向上や流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1500以上、好ましくは2000以上であり、また、通常9500以下、好ましくは9000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、ポリカーボネート樹脂(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
【0061】
さらにポリカーボネート樹脂は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)であってもよい。前記の使用済みの製品としては、例えば、光学ディスク等の光記録媒体;導光板;自動車窓ガラス、自動車ヘッドランプレンズ、風防等の車両透明部材;水ボトル等の容器;メガネレンズ;防音壁、ガラス窓、波板等の建築部材などが挙げられる。また、製品の不適合品、スプルー、ランナー等から得られた粉砕品またはそれらを溶融して得たペレット等も使用可能である。
ただし、再生されたポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネート樹脂を前記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
【0062】
[窒化硼素]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、窒化硼素を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、10〜50質量部の割合で含有する。このような範囲で窒化硼素を含有することによって、得られるポリカーボネート樹脂組成物の熱伝導性を大きく向上させることができ、また高い熱伝導性と耐衝撃性と難燃性のバランスに優れた熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物となる。
【0063】
本発明に用いる窒化硼素の形状は特に限定されず、従来公知の任意のものを使用できる。具体的には、球状、線状(繊維状)、平板状(鱗片状)、曲板状、針状等が挙げられる。そして単粒体として、または顆粒状(単粒の凝集体)として用いてもよい。本発明では鱗片状のものを用いると、熱伝導性に優れた樹脂組成物が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。
【0064】
窒化硼素には、c−BN(閃亜鉛鉱構造)、w−BN(ウルツ鉱構造)、h−BN(六方晶構造)、r−BN(菱面体晶構造)など、複数の安定構造が知られている。本発明では、いずれの窒化硼素を用いてもよいが、なかでも、六方晶構造の窒化硼素を用いるのが熱伝導性が充分となりかつ樹脂成形体を得る際に用いる成形機や金型の摩耗が低減できるので、好ましい。また、窒化硼素には、球状のものと鱗片状のものがあり、本発明にはいずれも用いることができるが、鱗片状のものを用いると、より熱伝導性に優れた成形品が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。
【0065】
本発明で用いる窒化硼素の平均粒子径には制限はないが、好ましくは、1〜300μmであり、より好ましくは2〜200μm、さらには5〜100μmであることが好ましい。
窒化硼素としては、25℃における熱伝導率が30W/(m・K)以上であることが好ましく、中でも50W/(m・K)以上であるものが好ましい。
【0066】
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物における窒化硼素の含有量は、前記のとおり、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、10〜50質量部である。窒化硼素の含有量が10質量部未満では熱伝導性が不十分となり、逆に50質量部を超えると耐衝撃性や流動性、成形加工性が不十分となりやすい。窒化硼素の含有量は、好ましくは12質量部以上、より好ましくは13質量部以上であり、また好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
【0067】
[リン系難燃剤]
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系難燃剤を、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、3〜30質量部含有する。このようにリン系難燃剤を含有することで、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0068】
リン系難燃剤としては、分子中にリンを含む化合物であり、低分子であっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよいが、熱安定性の面から、例えばリン酸エステル化合物やホスファゼン化合物が特に好ましい。
【0069】
[リン酸エステル化合物]
リン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物が好ましい。
【化1】
上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物は、kが異なる数を有する化合物の混合物であってもよく、かかるkが異なる縮合リン酸エステルの混合物の場合は、kはそれらの混合物の平均値となる。kは、通常0〜5の整数であり、異なるk数を有する化合物の混合物の場合は、平均のk数は好ましくは0.5〜2、より好ましくは0.6〜1.5、さらに好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.95〜1.15の範囲である。
【0070】
また、X
1は、二価のアリーレン基を示し、例えばレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基である。これらのうち、特に、レゾルシノール、ビスフェノールA、3,3’−ジヒドロキシビフェニルから誘導される二価の基が好ましい。
【0071】
また、一般式(1)におけるp、q、rおよびsは、それぞれ0または1を表し、なかでも1であることが好ましい。
【0072】
また、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基またはアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を示す。このようなアリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、ジ−tert−ブチルフェニル基、p−クミルフェニル基等が挙げられるが、フェニル基、クレジル基、キシリル基がより好ましい。
【0073】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の具体例としては、
トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート(EHDP)、tert−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(tert−ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス−(tert−ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス−(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス−(イソプロピルフェニル)ホスフェート等の芳香族リン酸エステル類;
レゾルシノールビス−ジフェニルホスフェート(RDP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルホスフェート(RDX)、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート(BDP)、ビフェニルビス−ジフェニルホスフェート等の縮合リン酸エステル類;
等が好ましく挙げられる。
【0074】
一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物の酸価は、0.2mgKOH/gが好ましく、より好ましくは0.15mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは0.1mgKOH以下であり、特に好ましくは0.05mgKOH/g以下である。かかる酸価の下限は実質的に0とすることも可能である。一方、ハーフエステルの含有量は1.1質量部以下がより好ましく、0.9質量部以下がさらに好ましい。酸価が0.2mgKOH/gを超える場合やハーフエステル含有量が1.5mgを超える場合は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性や耐加水分解性の低下を招く。
【0075】
本発明に用いるリン酸エステル化合物としては、上述のものの他に、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、リン酸エステル部位を含有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはエポキシ樹脂も当然含まれる。
【0076】
[ホスファゼン化合物]
ホスファゼン化合物としては、下記式(2)で表されるヘキサフェノキシトリシクロホスファゼン(2)と下記式(3)で表されるオクタフェノキシテトラシクロホスファゼン(3)を、75/25〜95/5の質量比((2)/(3))で含有する環状芳香族ホスファゼン化合物が好ましい。
【0078】
上記ホスファゼン化合物(2)は、耐熱性が高く、物性も良好で、ポリカーボネート樹脂への相溶性が良好である点で難燃効果に優れるが、一方で成形品の色相や加熱変色性が悪化しやすいという欠点を有している。これに対し、ホスファゼン化合物(2)よりもわずかに融点の低い上記ホスファゼン化合物(3)を、(2)/(3)=75/25〜95/5の質量比で含有することで、成形品の色相悪化や耐熱変色性の問題が改良できるので好ましい。
ホスファゼン化合物(2)とホスファゼン化合物(3)の含量の比は、より好ましくは(2)/(3)=77/23〜95/5であり、80/20〜93/7であることがさらに好ましい。
【0079】
リン系難燃剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、3質量部以上であり、好ましくは4質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、30質量部以下であり、好ましくは25量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。リン系難燃剤の配合量が3質量部を下回る場合は、難燃性が不十分であり、30質量部を超えると著しい耐熱性の低下や、機械物性の低下を引き起こす。
【0080】
[フルオロポリマー]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、滴下防止剤としてフルオロポリマーを含有する。
フルオロポリマーとしては、例えば、フルオロオレフィン樹脂が挙げられる。フルオロオレフィン樹脂は、通常フルオロエチレン構造を含む重合体あるいは共重合体である。具体例としては、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂、テトラフルオロエチレン/パーフルアルキルビニルエーテル共重合樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくはテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
【0081】
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)6J」、「テフロン(登録商標)640J」、「テフロン(登録商標)6C」、ダイキン工業社製「ポリフロンF201L」、「ポリフロンF103」、「ポリフロンFA500H」などが挙げられる。さらに、フルオロエチレン樹脂の水性分散液の市販品として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、「テフロン(登録商標)31−JR」、ダイキン工業社製「フルオンD−1」等が挙げられる。
【0082】
さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も使用することができ、このようなフルオロエチレン重合体としては、ポリスチレン−フルオロエチレン複合体、ポリスチレン−アクリロニトリル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸メチル−フルオロエチレン複合体、ポリメタクリル酸ブチル−フルオロエチレン複合体等が挙げられ、具体例としては三菱レイヨン社製「メタブレンA−3800」、GEスペシャリティケミカル社製「ブレンデックス449」等が挙げられる。
なお、フルオロポリマーは、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0083】
フルオロポリマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上であり、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、また、10質量部以下であり、好ましくは8質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。フルオロポリマーの含有量が前記範囲の下限値未満の場合は、フルオロポリマーによる難燃性改良の効果が不十分となり、フルオロポリマーの含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、ポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品の外観不良や機械的強度の低下が生じやすい。
【0084】
[ワラストナイト]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、ワラストナイトを含有する。ワラストナイトを、窒化硼素、リン系難燃剤及びフルオロポリマーと共に含有することで、高い熱伝導性と耐衝撃性と高度の難燃性を達成することができる。
ワラストナイトは、針状結晶をもつ白色鉱物であり、およその化学式はCaO・SiO
2で表され、通常SiO
2が約50質量%、CaOが約46質量%、その他Fe
2O
3、Al
2O
3等を含有しており、比重は通常2.9程度である。
【0085】
針状結晶をもつ白色鉱物のワラストナイトを、ジェットミルなどで粉砕し、遠心分級機などで分級することにより各種形状のワラストナイトを得ることができる。
ワラストナイトの平均粒子径としては、好ましくは0.1〜25μmであり、より好ましくは0.3〜15μmであり、特に好ましくは0.5〜10μmである。
平均粒子径が0.1μm未満では補強効果が不充分となり易く、25μmを超えると製品外観に悪影響を与えやすく、耐衝撃性も十分でない場合がある。ここで、平均粒子径とは、X線透過による液相沈降方式で測定されたD
50をいう。このような測定ができる装置としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruments社製「モデル5100」)等を挙げることができる。
【0086】
また、ワラストナイトの体積平均繊維長は、好ましくは3〜100μmであり、より好ましくは5〜70μm、特に好ましくは7〜50μmである。ここで、体積平均繊維長とは、走査型電子顕微鏡を用いて画像解析により求めることができる。
【0087】
ワラストナイトは、水と混合した場合に水中に分散しない性質を有するものが好ましい。ここで、水と混合した場合に水中に分散しない、とは、次のようにして判断する。内容積200ミリリットルのスキーブ型分液ロートを用い、純水100gと、325メッシュの篩を通過させたワラストナイト(被覆されたワラストナイトを含む。以下、単に「ワラストナイト」ということがある。)5gとを分液ロートに投入し、手で1分間振った後に60分間静置させ、分液ロートの底に沈降しているワラストナイトの重量が投入した全ワラストナイト中5重量%以下であるものを示す。
【0088】
本発明の好ましい態様である水と混合した場合に水中に分散しない性質を有するワラストナイトを得るには、例えばアルキルシランなどの撥水性の表面処理剤で表面処理する方法などが挙げられる。表面処理の方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法で行うことができる。例えば、ヘンシェルミキサ−、ボ−ルミル、アドマイザ−コロイドミル、バンバリ−ミキサ−などの各種機械的混合機を用いて、噴霧、滴下、湿潤、浸漬などの方法によって表面処理剤とワラストナイトを接触させ、所定温度で所定時間混合攪拌することによって行う方法が挙げられる。
【0089】
ワラストナイトの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、10〜100質量部である。10質量部未満の場合は補強効果が十分でなく、また100質量部を超える場合は、外観や耐衝撃性が劣り、流動性が十分でない。ワラストナイトの好ましい含有量は、15質量部以上であり、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは25質量部以上であり、好ましくは90質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、特に好ましくは60質量部以下、最も好ましくは50質量部以下である。
【0090】
[エラストマー]
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、エラストマーを含有することも好ましい。エラストマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、その上限は好ましくは10質量部以下である。エラストマーの含有量が、前記下限値未満の場合は、エラストマーによる耐衝撃性向上効果が不十分となりやすく、前記上限値を超える場合は、難燃性、耐熱性、耐衝撃性の低下、成形品の外観不良が生じやすい。
【0091】
エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーまたはコア/シェル型グラフト共重合体タイプのエラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマーとは、常温ではゴム状弾性を持つ固体であるが、加熱すると粘度が低下するという、熱可塑性樹脂と溶融混合可能な性質を有する高分子物質の総称である。熱可塑性エラストマーの種類は特に制限されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系およびウレタン系等が挙げられる。
コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものとしては、ポリブタジエン含有ゴム又はポリオルガノシロキサン系ゴムをコア層とし、その周囲に(メタ)アクリル酸エステルを共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0092】
[その他の成分]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外のその他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂、上記した以外の各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0093】
・その他の樹脂
その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;
ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
その他の樹脂を含有する場合は、ポリカーボネート樹脂及びその他の樹脂の合計100質量部中の、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。
【0094】
・樹脂添加剤
樹脂添加剤としては、例えば、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料(カーボンブラックを含む)、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
以下、本発明に使用するポリカーボネート樹脂組成物に好適な添加剤の例について具体的に説明する。
【0095】
・・離型剤
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0096】
脂肪族カルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の脂肪族一価、二価または三価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。これらの中で好ましい脂肪族カルボン酸は炭素数6〜36の一価または二価カルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和一価カルボン酸がさらに好ましい。かかる脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
【0097】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルにおける脂肪族カルボン酸としては、例えば、前記脂肪族カルボン酸と同じものが使用できる。一方、アルコールとしては、例えば、飽和または不飽和の一価または多価アルコールが挙げられる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の一価または多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和一価アルコールまたは脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
【0098】
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0099】
なお、上記のエステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよい。また、上記のエステルは、純物質であってもよいが、複数の化合物の混合物であってもよい。さらに、結合して一つのエステルを構成する脂肪族カルボン酸及びアルコールは、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0100】
脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられる。
【0101】
数平均分子量200〜15,000の脂肪族炭化水素としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャ−トロプシュワックス、炭素数3〜12のα−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。なお、ここで脂肪族炭化水素としては、脂環式炭化水素も含まれる。また、これらの炭化水素は部分酸化されていてもよい。また、数平均分子量は、好ましくは5,000以下である。脂肪族炭化水素は単一物質であってもよいが、構成成分や分子量が様々なものの混合物であっても、主成分が上記の範囲内であれば使用できる。
【0102】
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがさらに好ましく、ポリエチレンワックスが特に好ましい。
【0103】
なお、離型剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。離型剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、離型性の効果が十分でない場合があり、離型剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などが生じる可能性がある。
【0104】
・・熱安定剤
熱安定剤としては、例えばリン系化合物が挙げられる。リン系化合物としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0105】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
なお、熱安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0106】
熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.7質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。熱安定剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、熱安定剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0107】
・・酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリイル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0108】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0109】
酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。酸化防止剤の含有量が上記範囲の下限値未満の場合は、酸化防止剤としての効果が不十分となる可能性があり、酸化防止剤の含有量が上記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある。
【0110】
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱伝導性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂、窒化硼素、リン系難燃剤、フルオロポリマー及びワラストナイト、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。
【0111】
[成形品]
上記したポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズしたペレットは、各種の成形法で成形して成形品とされる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、成形して成形品にすることもできる。
成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0112】
成形体を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ−ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0113】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、熱伝導性(放熱性)と耐衝撃性と難燃性に優れた高熱伝導性の樹脂材料であるので、これを成形した成形品は、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ或いは各種携帯端末の部品や筺体、LED照明におけるLED実装用基板又はヒートシンク部材並びに部品類、バッテリー充電用機器部品、バッテリーカバー等に特に好適である。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
以下の実施例及び比較例に使用した各原料成分は、以下の表1のとおりである。
【0115】
【表1】
【0116】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
上記表1に記載した各成分を、下記の表3に示す割合(全て質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEX30HSST)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hrにて押出機上流部のバレルより押出機にフィードし、溶融混練させてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0117】
[引張特性の評価]
上記の方法で得られた樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55−60H」)を用い、シリンダー設定温度270〜290℃、金型温度100℃、射出時間2秒、成形サイクル40秒の条件で射出成形を行い、ISO多目的試験片(4mm厚)を射出成形した。
得られたISO試験片を用い、ISO規格527−1及びISO527−2に準拠して23℃の温度で、引張弾性率(単位:MPa)、破壊点強度(単位:MPa)及び破壊点呼び歪(単位:%)を測定した。
【0118】
[曲げ特性の評価]
上記引張特性評価と同様にして製造した曲げ試験片(厚さ4mm)を用いて、ISO178に準拠して、23℃の温度で曲げ弾性率(単位:MPa)、曲げ応力(単位:MPa)を測定した。
【0119】
[耐衝撃性の評価:シャルピー衝撃値]
得られたISO多目的試験片を使用し、切削加工にてノッチ有の試験片も準備した。
得られた試験片を用い、ISO179に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有とノッチ無シャルピー耐衝撃強度(単位:kJ/m
2)をそれぞれ測定した。
【0120】
[耐熱性の評価:DTUL(荷重たわみ温度、単位:℃)]
上記で得られたISO多目的試験片を用い、ISO75−1&2に従い、荷重1.80MPaの条件(A法)にて測定を行った。なお、表中、「DTUL」と表記する。
【0121】
[熱伝導率の測定(単位:W/m・K)]
上記で得られたISO多目的試験片を0.15〜0.5mm厚のスライス状に切削し、これを試料として、(株)アイフェイズ製温度波熱分析装置「ai−Phase Mobile1」を使用し、MD方向(成形時の樹脂流れ方向)について、熱伝導率(単位:W/m・K)を測定した。
【0122】
[燃焼性の評価:UL94試験]
上記で得られたペレットを100℃、5時間乾燥後、射出成形機(日本製鋼所製「J55−60H」)にて、シリンダー設定温度340℃、金型温度120℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、長さ125mm×幅13mmで、厚さが1.5mmのUL試験用試験片を成形した。
得られた試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して行なった。UL94Vとは、鉛直に保持した所定の大きさの試験片にバーナーの炎を10秒間接炎した後の残炎時間やドリップ性から燃焼性を評価する方法であり、V−0、V−1及びV−2の燃焼性を有するためには、以下の表2に示す基準を満たすことが必要となる。
【0123】
【表2】
【0124】
ここで残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の、試験片の有炎燃焼を続ける時間の長さである。また、ドリップによる綿着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。さらに、5試料のうち、1つでも上記基準を満たさないものがある場合、V−2を満足しないとしてNR(not rated)と評価した。
以上の評価結果を、表3に示した。
【0125】
【表3】