(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗原結合断片が、可変領域全体、重鎖の可変領域(VH)、軽鎖の可変領域(VL)、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv、又は相補性決定領域(CDR)を含む、請求項1又は2記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記抗IL-6抗体又はその抗原結合断片、及び/又は前記抗IL-23抗体又はその抗原結合断片が、少なくとも1つの非天然アミノ酸を組み込むように修飾されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記抗IL-6抗体又はその抗原結合断片及び前記抗IL-23抗体又はその抗原結合断片の両方が、1以上の非天然アミノ酸を組み込んでいる、請求項4記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記抗IL-6抗体又はその抗原結合断片が、前記抗IL-23抗体又はその抗原結合断片に、各抗体又はその抗原結合断片における非天然アミノ酸間のリンカーを介して結合している、請求項5記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記抗IL-6抗体又はその抗原結合断片の重鎖が配列番号259を含み、かつ、前記抗IL-6抗体又はその抗原結合断片の軽鎖が配列番号261を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記抗IL-23抗体又はその抗原結合断片の重鎖が配列番号267を含み、かつ、前記抗IL-23抗体又はその抗原結合断片の軽鎖が配列番号269を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載の二価の二重特異性コンストラクト。
前記ポリヌクレオチドが、大腸菌(E. coli)での発現に最適化されている、請求項19記載のポリヌクレオチド。
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、尋常性天疱瘡、臓器移植拒絶反応、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、エリテマトーデス、及び糖尿病からなる群から選択される、請求項26記載の二価の二重特異性コンストラクト。
【発明を実施するための形態】
【0082】
(発明の詳細な説明)
(二重特異性コンストラクト)
本明細書では、特に、IL-6及びIL-23に結合し、それらの活性を調節する二価の二重特異性コンストラクトが記載される。IL-6とIL-23は両方とも、T
H17細胞の分化及び活性化において役割を果たすことが知られている。活性化T
H17細胞はさらに、種々の下流経路を通じて免疫応答を媒介することに関与する。これら2つのサイトカインは、T
H17分化の異なる段階で機能しており、IL-6は、T
H17経路のT細胞コミットメントのごく初期に作用し、IL-23は、コミットしたT
H17細胞に対して作用する。したがって、本発明は、T
H17活性化経路の2つの異なる点を阻害し、かつ(例えば、線維芽細胞、内皮細胞、上皮細胞、及び間質細胞における)T
H17産物によって媒介される下流の炎症応答の一部に対してさらなる阻害効果を有する新規の二価の二重特異性コンストラクトを提供する。IL-6とIL-23の両方を標的とすることによって、該二重特異性分子は、T
H17経路内の複数の点でT
H17媒介性応答を阻害することができ、また、対応する単一特異性抗体単独よりも大きい効力で作用する可能性がある。当業者は、二価の二重特異性抗体の作製に関わる不確実性を考慮して、その成分抗体の機能的特徴を保持するか、又は改善された機能的特徴を有する安定な二価の二重特異性コンストラクトの産生の成功が、意外かつ予想外の結果を表すものであることを理解するであろう。
【0083】
さらに、本発明の二価の二重特異性コンストラクトは、T
H22細胞活性化を調節する(例えば、阻害する)ことができる。T
H22は、最近同定された(Eyerichらの文献(2009))、独特のTヘルパー細胞サブセットを表し、該細胞サブセットは、炎症過程及び創傷治癒過程に関与し、特に、皮膚炎症に関係があるとされている(Nogralesらの文献(2009))。その活性化及びその後の作用のメカニズムは、引き続き調査の対象となっているが、細胞それ自体は、IL-17でもインターフェロンγでもなく、IL-22及びTNF-αの分泌によって特徴付けられる。Th22細胞は、完全には特徴付けられていないが、乾癬患者から単離することができ、他のT細胞サブセットで見られるものとは異なる遺伝子発現プロファイルを表す。IL-22発現は、IL-23依存的であると報告されている(Kreymborgらの文献(2007))。ここで実施された研究は、Th22細胞が、成長刺激をIL-21に依存するTh17細胞とは対照的に、IL-2依存的であることをさらに示唆している。
【0084】
本発明の抗体及び二価の二重特異性コンストラクトは、IL-23、又はIL-23とIL-12の両方のどちらかに特異的であることができる。したがって、本発明は、IL-23に結合し、IL-12分子も標的とする抗体及び二価の二重特異性コンストラクトのサブセットを提供する。理論に束縛されることを望まないが、抗IL-23抗体のこのサブセット(本明細書では、抗IL-23/IL-12抗体と呼ばれる)は、IL-12とIl-23の両方に共通するp40サブユニットに結合することができると考えられる(例えば、
図10参照)。IL-23のp40サブユニットを標的とするものは、IL-23に加えて、IL-12を阻害すると考えられる。さらに、p40に対する抗体は、IL-12活性を阻害することなく、IL-23活性を弱めるエピトープに結合することができる。対照的に、IL-23のp19サブユニットを標的とする抗体は、IL-12に結合するとは考えられない。IL-12は、T
H1媒介性の免疫応答に関与し、したがって、これらの特定の二価の二重特異性コンストラクトは、T
H17細胞媒介性の免疫応答だけでなく、T
H1細胞媒介性の応答を調節する際にも有用であり得る。これは、その病因に対してT
H1媒介性の側面とT
H17媒介性の側面の両方を有する状態を治療するのに特に有利であり得る。
【0085】
したがって、ある実施態様では、本発明の二価の二重特異性コンストラクトは、抗IL-6抗体又はその誘導体、及び抗IL-23抗体又はその誘導体を含む。
【0086】
別の実施態様では、本発明の二価の二重特異性コンストラクトは、抗IL-6抗体又はその誘導体、及び抗IL-23/IL-12抗体又はその誘導体を含む。
【0087】
本発明の二価の二重特異性コンストラクト特定の例は、インビトロ法とインビボ法の両方を用いて、IL-23活性とIL-6活性の両方を調節する際のその有用性についてアッセイすることができる。特に、以下で詳述されているアッセイを用いることができる。
【0088】
二価の二重特異性コンストラクトの成分、並びにその同定及び製造手段は、以下でさらに論じられている。
【0089】
(親抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体の作製)
本発明の二価の二重特異性コンストラクトにおいて、抗体、及びその誘導体が基にしている初期抗体を、標準的な実験技術によって同定することができる。これらの抗体は、本明細書において、親抗体と呼ばれる。
【0090】
(親抗体の選択)
ある実施態様では、親抗体は、IL-6、IL-23、又はIL-12に結合するその能力に基づいて選択される。親抗体の結合は、そのKd値を決定することによって測定することができる。別の実施態様では、親抗体は、IL-6、IL-23、又はIL-12の活性を調節するその能力に基づいて選択される。好ましい実施態様では、親抗体は、IL-6、IL-23、又はIL-12に結合するその能力、及びIL-6、IL-23、又はIL-12の活性を調節するその能力に基づいて選択される。親抗体は、IL-6、IL-23、若しくはIl-12の生物学的活性を阻害するその能力について選択され得るか、又はそれらは、IL-6、IL-23、若しくはIL-12の生物学的活性を促進するその能力について選択され得る。好ましくは、親抗体は、IL-6、IL-23、及びIL-12を阻害するその能力について選択される。
【0091】
(親抗体の供給源)
ある実施態様では、親抗体又はその誘導体は、同一の又は別々の動物種から得ることができる。
【0092】
親抗体は、例えば、霊長類、齧歯類、ウサギ目、核脚下目、又は軟骨魚類で産生される抗体から得ることができる。
【0093】
親抗体は、トランスジェニック動物から得ることができる。例えば、それらは、ヒト免疫系を有するように遺伝子改変されているトランスジェニックマウス、例えば、Xenomouse(登録商標)から得ることができる。そのようなトランスジェニック動物で産生される抗体は、外因性の免疫系によって産生される抗体の特徴を有することができ、例えば、Xenomouse由来の抗体は、ヒト抗体とみなすことができる。
【0094】
親抗体の1つ又は複数が齧歯類から得られる場合、齧歯類は、有利には、マウス又はラットである。
【0095】
抗体がウサギ目から得られる場合、ウサギ目は、有利には、ウサギである。
【0096】
親抗体の1つ又は複数が核脚下目から得られる場合、それらは、ラクダ、ラマ、又はヒトコブラクダから得られる。これらの種は、単一の可変ドメインのみの高親和性抗体を産生することが知られているので、そのような「ラクダ科」抗体のこうした使用は有利であり得る。核脚下目抗体が使用される場合、VHHドメイン又はその修飾変異体を使用することが有利である。
【0097】
親抗体の1つ又は複数が軟骨魚類から得られる場合、軟骨魚類は、有利には、サメである。
【0098】
親抗体の1つ又は複数が霊長類から得られる場合、霊長類は、有利には、サル又は類人猿である。
【0099】
(抗体の不死化)
親抗体は、標準的な実験技術によって不死化することができる。したがって、本発明は、本発明による二価の二重特異性コンストラクトへの組込みに好適である親抗体から作製されるモノクローナル抗体を提供する。
【0100】
(特定の抗体の組合せ)
本発明はまた、抗体及び/又はその誘導体の組合せを含む組成物を提供する。該組成物は、IL-6抗体又はその誘導体、及びIL-23抗体又はその誘導体を含む。IL-23抗体又はその誘導体は、IL-12にも結合することができる。
【0101】
抗体、及びその誘導体の好ましい組合せは、下で定義されるIL-6抗体のうちのいずれか1つを、下で定義される抗IL-23又は抗IL-23/IL-12抗体のうちのいずれか1つと組み合わせたもの含む。
【0102】
そのような組合せを含む組成物は、単独で投与されたときの個々の抗体よりも大きい活性を有すると考えられる。抗体又はその誘導体の特に好ましい組合せは、抗IL-6抗体の13A8、又は13A8に基づく誘導体、及び抗IL-23抗体の31A12、又は31A12に基づく誘導体である。抗体のこの組合せは、どちらかの抗原のみと比べて、より大きいT
H17細胞活性の阻害を提供する。該組合せは、当技術分野で公知の抗体よりも大きいT
H17細胞阻害活性を有する。さらに、それは、有利に低い用量でこの阻害活性を示す。
【0103】
抗体又はその誘導体の特に好ましい組合せは、PEG化IL-6抗体又はその誘導体を、PEG化IL-23抗体又はその誘導体と組み合わせたものを含む。IL-23抗体又はその誘導体は、IL-12にも結合する(すなわち、IL-23/IL-12抗体である)ことができる。
【0104】
(抗体のヒト化)
二価の二重特異性コンストラクトの抗体は、ヒトに投与されたとき、それらが免疫原性の低いものとなるように改変に供することができる。そのような改変は、キメラ化、ヒト化、CDR-移植、脱免疫化、及び/又は最も近いヒト生殖系列配列に対応するフレームワーク領域アミノ酸の突然変異(生殖系列化)として一般に知られている技術のうちの1つ又は複数を含むことができる。抗体をそのような改変に供することは、もし改変に供さなければ、宿主免疫応答を誘発することになる抗体を、宿主免疫系にとって、より又は完全に「見えないもの」にし、結果として、そのような免疫応答が起こらないか、又は低減するという利点を有する。したがって、この実施態様によって記載されているように改変されている抗体は、いかなるそのような改変(複数可)も受けていない対応する抗体よりも長い期間、免疫応答関連の副作用を低下させて、又は該副作用を全く伴わずに、投与可能であり続ける。当業者は、抗体が望まない宿主免疫応答を誘発するのを防ぐために、抗体を改変しなければならないかどうか、又は抗体をどの程度改変しなければならないかを決定する方法を理解しているであろう。
【0105】
したがって、本発明は、ヒト化抗体、又はキメラ抗体が、1以上の生物体由来のアミノ酸配列を含むか、又は合成アミノ酸配列を含むように改変されているヒト化抗体、又はキメラ抗体を提供する(例えば、本発明によるヒト化抗体又はキメラ抗体は、齧歯類から得られたCDR領域に接続されたヒトフレームワーク領域を含むことができる)。
【0106】
(関心対象の特定の抗体)
したがって、本発明によれば、特定のヒト化抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体が提供される。これらの抗体は、両方ともIL-6、IL-23、又はp40に結合し、かつその生物学的活性を調節する(例えば、阻害する)能力を示した親抗体に基づいている。さらに、本発明によって提供される特定の抗体は、不死化及びヒト化の後に、これらの能力を保持するか、又は実質的に保持する。
【0107】
関心対象の特定のヒト化抗体としては、以下のものが挙げられる:
抗IL-6抗体:
13A8(配列番号259のVH及び配列番号261のVLを含む);
9H4(配列番号46のVH及び配列番号48のVLを含む)
9C8(配列番号56のVH及び配列番号58のVLを含む)
8C8(配列番号36のVH及び配列番号38のVLを含む)
18D4(配列番号26のVH及び配列番号28のVLを含む);並びに
28D2((配列番号16のVH及び配列番号18のVLを含む)。
抗IL-23抗体:
31A12(配列番号267のVH及び配列番号269のVLを含む);
34E11(配列番号116のVH及び配列番号118のVLを含む);
35H4(配列番号126のVH及び配列番号128のVLを含む);
49B7(配列番号96のVH及び配列番号98のVLを含む);並びに
16C6(配列番号106のVH及び配列番号108のVLを含む)。
抗IL-23/IL-12抗体:
45G5(配列番号275のVH及び配列番号277のVLを含む);
14B5(配列番号186のVH及び配列番号188のVLを含む)
4F3(配列番号166のVH及び配列番号168のVLを含む)
5C5(配列番号176のVH及び配列番号178のVLを含む)
22H8(配列番号271のVH及び配列番号273のVLを含む);並びに
1H1(配列番号156のVH及び配列番号158のVLを含む)
【0108】
特定の好ましいヒト化抗体は、ヒト化形態の13A8、31A12、及び22H8である。
【0109】
(抗体変異体)
本発明はまた、例えば、二価の二重特異性コンストラクトの成分として、抗体変異体を提供する。該抗体は、結合親和性、及びIL-6、IL-23、又はIL-12の生物学的活性を調節する能力を保持するか、又は実質的に保持する(例えば、変異体抗体のKd値は、その親抗体と比べて少なくとも80%であり、生物学的活性を調節するその能力は、本明細書に開示されるアッセイによって決定したとき、その親抗体の能力の少なくとも80%である)。
【0110】
変異体抗体又はその誘導体は、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインを突然変異させて、抗体の結合特性を改変することによって得ることができる。例えば、突然変異を、CDR領域の1つ又は複数をコードする核酸分子中で生成させ、IL-6若しくはIL-23に対する抗体のKdを増減させるか、IL-6、IL-23、若しくはIL-12の生物学的活性を調節する抗体の能力を増減させるか、又は抗体の結合特異性を改変することができる。部位特異的突然変異誘発を用いてそのような突然変異を導入する技術は、当技術分野で周知である。
【0111】
さらなる変異体抗体又はその誘導体は、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインを突然変異させて、等電点(pI)を改変し、最終製剤のpH3〜7,5の範囲でのタンパク質安定性を高めて、ジスルフィド結合シャッフリングを回避することによって得ることができる。例えば、配列番号332、31A12のpI最適化(この場合、以下のアミノ酸:Q26R、L56R、K109-G110insR、及びQ142Kが改変された);配列番号334、13A18のpI最適化(この場合、以下のアミノ酸:Q26R、L56R、K112-G113insR、及びQ145Kが改変された)を参照されたい。さらに、安定性は、重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインを突然変異させて、溶液中での生成物の凝集を低下させることによって高めることができ、例えば、溶解性を高め、生成物の凝集を低下させると予想される、配列番号331、31A12のF12S突然変異、及びpI最適化とF12S突然変異が組み合わされた、配列番号333、31A12を参照されたい。
【0112】
別の実施態様では、核酸分子を、フレームワーク領域のうちの1つ又は複数において突然変異させることができる。突然変異をフレームワーク領域又は定常ドメイン中で生成させ、抗IL-6又は抗IL-23抗体の半減期を増大させることができる。フレームワーク領域又は定常ドメイン中の突然変異を生成させて、別の分子への共有結合若しくは非共有結合のための部位を提供するように抗体の免疫原性を改変するか、又は補体結合のような特性を改変することもできる。
【0113】
したがって、本発明によれば、突然変異を、単一の突然変異抗体中のフレームワーク領域、定常ドメイン、及び可変領域の各々において生成させることができる。或いは、突然変異を、単一の突然変異抗体中のフレームワーク領域、可変領域、又は定常ドメインのうちの1つでのみ生成させることができる。
【0114】
(配列バリエーション)
ある実施態様では、本発明は、突然変異前の抗IL-6抗体との少なくとも90%の配列同一性を有する変異体抗IL-6抗体を提供する。好ましくは、変異体抗IL-6抗体は、突然変異前の抗IL-6抗体との少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。
【0115】
ある実施態様では、本発明は、突然変異前の抗IL-23抗体との少なくとも90%の配列同一性を有する変異体抗IL23抗体を提供する。好ましくは、変異体抗IL-23抗体は、突然変異前の抗IL23抗体との少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。
【0116】
ある実施態様では、本発明は、突然変異前の抗IL-23/IL-12抗体との少なくとも90%の配列同一性を有する変異体抗IL-23/IL-12抗体を提供する。好ましくは、変異体抗IL-23/IL-12抗体は、突然変異前の抗IL-23/IL-12抗体との少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。
【0117】
(付加、欠失、置換)
一実施態様では、突然変異前の抗IL-6抗体と比べた変異体抗IL-6抗体のVH領域又はVL領域のどちらかにおいて10個以下のアミノ酸変化がある。
別の実施態様では、突然変異前の抗IL-23抗体と比べた変異体抗IL-23抗体のVH領域又はVL領域のどちらかにおいて10個以下のアミノ酸変化がある。
別の実施態様では、突然変異前の抗IL-23/IL-12抗体と比べた変異体抗IL-23/IL-12抗体のVH領域又はVL領域のどちらかにおいて10個以下のアミノ酸変化がある。
【0118】
より好ましい実施態様では、変異体抗IL-6抗体、変異体抗IL-23抗体、又は変異体抗IL-23/IL-12抗体のVH領域又はVL領域のどちらかにおいて、5個以下のアミノ酸変化、より好ましくは、3個以下のアミノ酸変化がある。別の実施態様では、突然変異前の抗IL-6抗体と比べた変異体抗IL-6抗体、突然変異前の抗IL-23抗体と比べた変異体抗IL-23抗体、又は突然変異前の抗IL-23/IL-12抗体と比べた変異体抗IL-23/IL-12抗体のいずれかの定常ドメインにおいて、15個以下のアミノ酸変化があり、より好ましくは、10個以下のアミノ酸変化、さらにより好ましくは、5個以下のアミノ酸変化がある。
【0119】
(抗体誘導体)
抗体誘導体は、当業者に公知の技術及び方法を用いて作製することができる。本発明による抗体誘導体は、それらが由来している抗体の結合親和性、及び該抗体のIL-6、IL-23、又はp40の生物学的活性を調節する能力を保持するか、又は実質的に保持する。抗体誘導体の例としては、本明細書に開示される抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体に由来するFab、Fab'、F(ab)'、及びscFvコンストラクト、カッパボディ、ミニボディ、並びにヤヌシンが挙げられる。
【0120】
(Fab、Fab'、F(ab)')
本発明のある実施態様では、抗IL-6抗体又は変異体抗IL-6抗体のFab、Fab'、F(ab)'断片が提供される。
本発明のある実施態様では、抗IL-23抗体又は変異体抗IL-23抗体のFab、Fab'、F(ab)'断片が提供される。
本発明のある実施態様では、
抗IL-23/IL-12抗体又は変異体抗IL-23/IL-12抗体のFab、Fab'、F(ab)'断片が提供される。
【0121】
(単鎖抗体(scFv))
本発明のある実施態様では、抗IL-6抗体又は変異体抗IL-6抗体のscFv誘導体が提供される。
本発明のある実施態様では、抗IL-23抗体又は変異体抗IL-23抗体のscFv誘導体が提供される。
本発明のある実施態様では、抗IL-23/IL-12抗体又は変異体抗IL-23/IL-12抗体のscFv誘導体が提供される。
【0122】
単鎖抗体(scFv)を作出するために、VH配列及びVL配列を、VL領域及びVH領域が柔軟なリンカーで接続された、連続的な単鎖タンパク質として発現することができるように、VH及びVLをコードするDNA断片を、柔軟なリンカーをコードする別の断片に機能的に連結させる(例えば、Birdらの文献((1988) Science 242: 423-426);Hustonらの文献((1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883);McCaffertyらの文献(Nature(1990) 348: 552-554)を参照されたい)。単鎖抗体は、単一のVH及びVLのみが使用される場合、一価となり得るし、2つのVH及びVLが使用される場合、二価となり得るし、又は3以上のVH及びVLが使用される場合、多価となり得る。
【0123】
ある実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-6抗体由来の可変領域の1つ又は複数を用いて調製される。別の実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-6抗体由来の1以上のCDR領域を用いて調製される。
【0124】
一実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-23抗体由来の可変領域の1つ又は複数を用いて調製される。別の実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-23抗体由来の1以上のCDR領域を用いて調製される。
【0125】
一実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-23/IL-12抗体由来の可変領域の1つ又は複数を用いて調製される。別の実施態様では、単鎖抗体は、抗IL-23/IL-12抗体由来の1以上のCDR領域を用いて調製される。
【0126】
好ましい実施態様では、抗IL-6単鎖抗体は、上記のヒト化抗IL-6抗体に由来する。
好ましい実施態様では、抗IL-23単鎖抗体は、上記のヒト化抗IL-23抗体に由来する。
好ましい実施態様では、抗IL-23/IL-12単鎖抗体は、上記のヒト化抗IL-23/IL-12抗体に由来する。
【0127】
ある実施態様では、単鎖抗体の軽鎖及び重鎖は、以下のアミノ酸配列を有するリンカー部分によって接続されている
【化1】
。
【0128】
本発明のリンカー部分は、3〜5回反復される配列GGGGS、又は非整数反復のGGGGS配列であることができ、例えば、配列番号330を参照されたい。
【0129】
ある実施態様では、本発明の単鎖抗体は、PEGに共有結合されている。
【0130】
(カッパボディ、ミニボディ、及びヤヌシン(Janusin))
別の実施態様では、他の修飾抗体は、抗IL-6抗体、抗IL-23抗体、又は抗IL-23/IL-12抗体をコードする核酸分子を用いて調製することができる。例えば、「カッパボディ」(ILlらの文献(Protein Eng 10: 949-57(1997)))、「ミニボディ」(Martinらの文献(EMBO J 13: 5303-9(1994)))、又は「ヤヌシン」(Trauneckerらの文献(EMBO J 10: 3655-3659(1991))及びTrauneckerらの文献(「ヤヌシン:二重特異性試薬のための新しい分子設計(Janusin : new molecular design for bispecidfic reagents)」Int J Cancer Suppl 7: 51-52(1992)))は、標準的な分子生物学的技術を用いて調製することができる。
【0131】
(相補性決定領域(CDR))
相補性決定領域(CDR)は、抗原受容体(例えば、免疫グロブリン及びT細胞受容体)の可変(V)ドメインに見られる、柔軟なループの形状の比較的短いアミノ酸配列である。免疫グロブリンとT細胞受容体の両方のCDRは、それらの特異性を決定し、特異的リガンドと接触するこれらの分子の部分である。CDRは、該分子の最も変化しやすい部分であり、これらの分子の多様性の一因となり、免疫グロブリン及びT細胞受容体が、巨大な抗原レパートリーを認識するのを可能にする。したがって、本発明の二価の二重特異性コンストラクトを構成する抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体中のこれらの領域は、抗体の特異性を決定する上で重要な役割を果たしており、特定の共通したCDR領域を有する抗体は、同一又は同様の抗原特異性を有すると考えられる。したがって、本発明の一態様では、抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体、又はそれらの誘導体は、それらが基にしている抗体のCDR領域を含む。
【0132】
CDR領域の中には、抗体特異性に関して他よりも重要な役割を果たすと考えられるものがあることにも留意するべきである。特に、VHドメインの少なくとも3番目の相補性決定領域(CDR)は、CDR領域全ての結合の特異性及び親和性において主要な役割を果たすことが知られているので、二価の二重特異性コンストラクトに含める抗体又はその誘導体を設計する際に、これらを用いることが有利であることが多い。したがって、本発明は、親抗体のCDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5、及びCDR6のうちの少なくとも1つを含むように本発明の二価の二重特異性コンストラクトを構成する抗体及び抗体誘導体を提供する。好ましくは、該二価の二重特異性コンストラクトを構成する抗体及び抗体誘導体は、少なくともCDR3を含む。
【0133】
ある実施態様では、突然変異した抗IL-6抗体は、突然変異前の抗IL-6抗体と比べて変化していない少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する。変化していないCDRは、CDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5、又はCDR6であることができる。
【0134】
別の実施態様では、突然変異した抗IL-23抗体は、突然変異前の抗IL-23抗体と比べて変化していない少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する。変化していないCDRは、CDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5、又はCDR6であることができる。
【0135】
ある実施態様では、突然変異した抗IL-23/IL-12抗体は、突然変異前の
抗IL-23/IL-12抗体と比べて変化していない少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を有する。変化していないCDRは、CDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5、又はCDR6であることができる。
【0136】
(CDRのアミノ酸配列内のモチーフ)
個々のCDRの場合にも、特定の抗体又はその誘導体の特異性を決定する際に特に重要である特定の領域(本明細書ではモチーフと呼ばれる)があることが当業者によって理解されるであろう。これらの領域の特異性は、いくつかの因子、例えば、その立体構造及び該領域内での荷電アミノ酸残基の場所によって決定され得る。当業者は、エピトープマッピング、及び同じ標的に結合することが知られている抗体の配列を比較することを含む、当技術分野で公知の技術によって、これらのモチーフを同定することができる。したがって、本発明は、特定のモチーフを有するCDRを含む抗体又はその誘導体を提供する。
【0137】
ある実施態様では、該CDRは、以下の抗体のCDR領域から取られた少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つの連続するアミノ酸を含む:
【化2】
。
【0138】
別の実施態様では、該CDRは、上述のCDRから取られた置換された連続するアミノ酸配列を含む。特に、該モチーフは、アミノ酸の内容及び位置が、配列中の他のアミノ酸と比べて固定されており、かつ1つ又は2つのアミノ酸が、置換前のCDRの対応するアミノ酸と比べて置換され得る、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5、又は少なくとも6つの残基を含むことができる。好ましくは、該置換は、保存的な置換である。そのようなモチーフの例は、22H8抗IL-23/IL-12抗体のCDR2領域内に見出すことができる。該モチーフは、以下の式によって記載することができる:
アミノ酸配列の配列WX
1KG(式中、X1は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、又はトリプトファンであり、好ましくは、アラニン又はバリンである);
【0139】
本発明の抗IL-23/IL-12抗体のCDRに見られる共通モチーフの他の例としては、以下のものが挙げられる:
アミノ酸配列YAYX
1GDAFDP(式中、X
1は、アラニン若しくはイソロイシンである);(配列番号339)を含むCDR3領域中のモチーフ
並びに/又は
アミノ酸配列SDYFNX
1(式中、X
1は、イソロイシン若しくはバリンである);(配列番号340)を含むCDR3領域中のモチーフ、並びに/又は
アミノ酸配列QX
1SQX
2
(式中、
X
1は、アラニン若しくはセリンであり、かつ
X
2は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、及びチロシンからなる群から選択され;
好ましくは、X
2は、セリン若しくはトレオニンである)を含むCDR4領域中のモチーフ;並びに/又は
アミノ酸配列ASX
1LA(式中、X
1は、リジン若しくはトレオニンである);(配列番号341)を含むCDR5領域中のモチーフ、並びに/又は
アミノ酸配列QSYYDX
1NAGYG(式中、X
1は、アラニン若しくはバリンである)(配列番号342)を含むCDR6領域中のモチーフ。
【0140】
本発明のIL-23抗体のCDRに見られる共通モチーフの例としては、以下のものが挙げられる:
アミノ酸配列YYAX
1WAX
2G
(式中、
X
1は、セリン、プロリン、及びアスパルテートからなる群から選択され、かつ
X
2は、リジン及びグルタミンからなる群から選択される);(配列番号337)を含むCDR2領域中のモチーフ、並びに/又は
アミノ酸配列AX
1TLX
2S
(式中、
X
1は、セリン及びアラニンからなる群から選択され、
X
2は、アラニン及びトレオニンからなる群から選択される)(配列番号338)を含むCDR5領域中のモチーフ。
【0141】
本発明のIL-6抗体のCDRに見られる共通モチーフの例としては、以下のものが挙げられる:
アミノ酸配列YIYTDX
1STX
2YANWAKG
(式中、
X
1は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンからなる群から選択され;かつ
X
2は、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンからなる群から選択され;かつ
好ましくは、X
1は、セリン若しくはトレオニンであり、かつX2は、トリプトファン若しくはチロシンである);(配列番号335)を含むCDR2領域中のモチーフ、並びに/又は
アミノ酸配列RX
1STLX
2S(式中、X
1及びX
2は、独立に、アラニン若しくはトレオニンである)(配列番号336)を含むCDR5領域中のモチーフ。
【0142】
(非天然アミノ酸を組み込むための修飾)
本発明は、抗IL-6、抗IL-23、及び抗IL-23/IL-12抗体、又はそれらの誘導体への非天然アミノ酸残基の組込みを提供して、抗IL-6抗体又はその誘導体の、抗IL-23又は抗IL-23/IL-12抗体、又はそれらの誘導体への付着点を提供する。当業者は、例えば、アジドホモアラニン(Aha)を含む、いくつかの潜在的に好適な非天然アミノ酸を認識している。さらなる非天然アミノ酸としては、アジドノルロイシン、3-(1-ナフチル)アラニン、3-(2-ナフチル)アラニン、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギル-オキシ-フェニルアラニン、m-エチニル-フェニルアラニン、6-エチニル-トリプトファン、5-エチニル-トリプトファン、(R)-2-アミノ-3-(4-エチニル-1H-ピロル-3-イル)プロパン酸(propanic acid)、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン(idiophenylalanine)、p-アジドフェニルアラニン、3-(6-クロロインドリル)アラニン、
3-(6-ブロモインドリル(bromoindoyl))アラニン、3-(5-ブロモインドリル)アラニン、ホモアリルグリシン、ホモプロパルギルグリシン、及びp-クロロフェニルアラニンが挙げられる。好ましい実施態様では、非天然アミノ酸はAhaである。
【0143】
当業者はまた、付着部位を制御するために、これらの非天然アミノ酸が、付着が起こるべき位置にしか配置されないように、抗体又はその誘導体のアミノ酸配列を改変する必要があることを理解するであろう。ある実施態様では、非天然アミノ酸は、本明細書に開示されるような抗体又はその誘導体のN-末端に配置することができる。ある実施態様では、非天然アミノ酸は、本明細書に開示されるような抗体又はその誘導体のC-末端に配置することができる。ある実施態様では、非天然アミノ酸は、本明細書に開示されるようなscFvのVH部分とVL部分の間のリンカー領域中に(例えば、配列番号327内に)配置することができる。ある実施態様では、二価の二重特異性コンストラクトに組み込まれるべき単一の付着点が各々の抗体中にある。抗体若しくはその誘導体、scFv、及び/又は本発明の二価の二重特異性コンストラクトの部分の例としては、配列番号287〜312が挙げられる。
【0144】
ある実施態様では、非天然アミノ酸の組込みは、メチオニン(Met)の代わりに非天然アミノ酸(例えば、Aha)を組み込んでいる栄養要求性宿主細胞内で抗体を発現させることによって達成される。そこを単一の付着部位とするために、抗体ヌクレオチド配列を改変して、所望の付着部位に配置されない任意の天然に存在するメチオニンのコドンを除去しなければならない。これは、それらを他のアミノ酸(通常、天然アミノ酸)のコドンと置換することによって達成することができる。1〜2個のメチオニン残基が、免疫グロブリンVH領域のフレームワーク領域及びCDR内にはよく見られ、VL領域内にはあまり見られないので、これらの残基の好適な置換を見出す必要があり、該残基内では、該好適な置換は、所望のタンパク質の発現、安定性、又は機能(例えば、結合若しくは標的中和活性)に影響を及ぼすことなく生じる。その後、このメチオニン不含scFvを、メチオニン要求性細菌株での発現用に最適化し、精製し、再フォールディングさせ、生物学的活性について試験することができる。任意に、2以上の非天然アミノ酸(例えば、Aha)の組込みを可能にするために、2以上のメチオニンコドンを配列中に残すことができる。
【0145】
メチオニンが所望の付着部位に元々存在しない場合、化学反応性のある付着部位を有する非天然アミノ酸の挿入部位として働く単一の(又は任意に2以上の)メチオニンコドンを導入することができる。
【0146】
非天然アミノ酸を含むように修飾された抗体を、1以上の別々の実体に付着させることができる。これらの実体には、リンカー基及び/又は他の同様に修飾された抗体が含まれる。好適なリンカーの例は、当技術分野で公知であり、短いペプチド配列を含む。本発明はまた、リンカーとしてのPEGの使用を提供する。したがって、ある実施態様では、非天然アミノ酸を組み込んでいる抗IL-6抗体又はその誘導体を、PEGリンカー基に共有結合させることができ、このPEGリンカー基をさらに、非天然アミノ酸を組み込んでいる抗IL-23若しくは抗IL-23/IL-12抗体、又はそれらの誘導体に付着させる。その後、そのような二重特異性、PEG化コンストラクトを精製し、再フォールディングさせて、安定で、生物学的活性のある治療タンパク質を得ることができる。
【0147】
好適には、非天然アミノ酸を含むように修飾された本発明における抗体又はその誘導体を、直接(例えば、リンカー基を使用することなく)、他の抗体若しくはその誘導体、色素、薬物、又は毒素を含むが、これらに限定されない、他の同様に修飾された分子に結合させることができる。
【0148】
(標識及び誘導体化)
本発明の二価の二重特異性コンストラクト又は抗体を誘導体化するか、又は別の分子に結合させることができる。一般に、二価の二重特異性コンストラクトは、成分抗体又はその誘導体の結合及び生物学的活性が誘導体化又は標識によって悪影響を受けないように、誘導体化される。
【0149】
例えば、本発明の二価の二重特異性コンストラクトを、(化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合、又は他の方法によって)1以上の他の分子実体、例えば、検出剤、細胞傷害剤、医薬品、及び/又は抗体若しくは抗体部分と別の分子との会合を媒介することができるタンパク質若しくはペプチド(例えば、ストレプトアビジンコア領域若しくはポリヒスチジンタグ)に機能的に結合させることができる。
【0150】
1つのタイプの誘導体化された二価の二重特異性コンストラクトは、標識された二価の二重特異性コンストラクトである。本発明の二価の二重特異性コンストラクトを誘導体化し得る有用な検出剤としては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニル(napthalenesulfonyl)クロライド、フィコエリスリン、ランタニド燐光体などを含む、蛍光化合物が挙げられる。二価の二重特異性コンストラクトは、検出に有用である酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、
β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどで標識することもできる。二価の二重特異性コンストラクトが検出可能な酵素で標識されている場合、それは、該酵素が用いるさらなる試薬を添加して、識別され得る反応生成物を産生することによって検出される。
【0151】
例えば、作用剤の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加は、検出可能である、着色された反応生成物を生じさせる。二価の二重特異性コンストラクトを、ビオチンで標識し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的な測定によって検出することもできる。二価の二重特異性コンストラクトを、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)で標識することもできる。いくつかの実施態様では、標識を様々な長さのスペーサーアームによって付着させて、潜在的な立体障害を低下させる。
【0152】
二価の二重特異性コンストラクトは、放射性標識アミノ酸で標識することもできる。放射性標識は、診断目的と治療目的の両方のために用いることができる。放射性標識二価の二重特異性コンストラクトは、診断的に、例えば、対象におけるIL-6及び/又はIL-23レベルを決定するために用いることができる。さらに、放射性標識二価の二重特異性コンストラクトは、T
H17経路によって媒介される疾患を治療するために治療的に用いることができる。放射性標識の例としては、以下の放射性同位体又は放射性核種が挙げられるが、これらに限定されない-3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。放射性同位体は、キレート化部分、例えば、DOTAによる誘導体化によって、抗体又は二重特異性体に結合させることもできる。有用なイメージング用及び治療用放射性同位体のいくつかは、これらのキレート剤に強く結合する。
【0153】
二価の二重特異性コンストラクトは、化学基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、メチル若しくはエチル基、又は炭水化物基で誘導体化することもできる。これらの基は、抗体の生物学的特徴を改善するために、例えば、血清半減期を増大させるために、又は組織結合を増大させるために有用であり得る。
【0154】
(抗体/誘導体の発現)
本発明の二価の二重特異性コンストラクト、並びに該二価の二重特異性コンストラクトを構成する抗体、及びその誘導体を、従来の組換え技術を用いて発現させることができる。さらに、該コンストラクト、並びに/又は抗体、及びその誘導体が非天然アミノ酸を含む場合、WO 2007/130453号に記載されているような組換え法を用いることができる。該二価の二重特異性コンストラクト、並びに該抗体、及びその誘導体を発現させるために用いられるヌクレオチド配列、ベクター、宿主細胞などは、本発明の目的である。
【0155】
(ポリヌクレオチド)
ある実施態様では、本発明は、二価の二重特異性コンストラクト、並びに上で定義したような二価の二重特異性コンストラクトを構成する抗体、及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0156】
したがって、本発明は、(1)本発明によるモノクローナル抗体、(2)本発明によるヒト化抗体、(3)本発明による(1)及び(2)に基づく変異体抗体、(4)本発明による(1)〜(3)の抗体の誘導体、並びに(5)本発明による二価の二重特異性コンストラクトをコードするヌクレオチド配列を包含する。
【0157】
ある実施態様では、ヌクレオチド配列は、抗IL-6抗体の部分をコードする。そのような配列の例は、13A8と表されたIL-6抗体のVH及びVL領域のヌクレオチド配列である、配列番号7及び9に与えられている。
【0158】
ある実施態様では、ヌクレオチド配列は、抗IL-23抗体の部分をコードする。そのような配列の例は、31A12と表された抗IL-23抗体のVH及びVL領域のヌクレオチド配列である、配列番号87及び89に与えられている。
【0159】
ある実施態様では、ヌクレオチド配列は、抗IL-23/IL-12抗体の部分をコードする。そのような配列の例は、22H8と表された抗IL-23/IL-12抗体のVH及びVL領域のヌクレオチド配列である、配列番号137及び139に与えられている。
【0160】
ある実施態様では、該二価の二重特異性コンストラクトは、単一の産物として発現させることができる。
【0161】
(プロモーター)
ある実施態様では、本発明のヌクレオチド配列は、プロモーター配列に機能的に連結されている。好適なプロモーターの例としては、T5/Lacプロモーター、:T7/Lac又は修飾されたT7/lacプロモーター、Trc又はtacプロモーター、ファージpL又はpR温度誘導性プロモーター、tetAプロモーター/オペレーター、araBAD(pBAD)プロモーター、rhaPBADプロモーター、及びlac UV5プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なプロモーターは、Terpe, K.の文献(2006)(Appl Microbiol Biotechnol 72:211222)から特定することができる。好ましい実施態様では、プロモーターは、T5/Lacプロモーターである。
【0162】
(ベクター)
ある実施態様では、本発明は、任意に、プロモーター配列に機能的に連結された本発明のヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。
【0163】
(宿主細胞)
ある実施態様では、本発明は、本発明のベクターでトランスフェクトされ、該ベクター内に含まれるヌクレオチド配列を発現することができる宿主細胞を提供する。任意に、該宿主細胞は、特定の天然アミノ酸の代わりに非天然アミノ酸(例えば、Metの代わりにAHA)を組み込むことができる栄養要求性細胞である。該宿主細胞は、原核生物細胞又は真核生物細胞であることができる。好適な真核生物細胞としては、酵母細胞、哺乳動物細胞、及び昆虫細胞が挙げられる。好ましくは、該宿主細胞は、原核生物、特に、大腸菌B384であり、これはメチオニン要求性細胞である。或いは、該細胞は哺乳動物細胞であり、より好ましくは、それらはヒト細胞であり、さらにより好ましくは、それらは、ヒト胚性腎細胞(例えば、HEK293若しくはHEK 293c18細胞)又はCHO細胞である。
【0164】
(プライマー)
本発明のある実施態様では、抗IL-6、抗IL-23抗体、及び抗IL-23/IL-12抗体、並びにそれらの誘導体のクローニング及び発現のためのプライマーが提供される。これらのプライマーは、10〜40ヌクレオチドで長さが様々であり、好ましくは、それらは、長さが15〜30ヌクレオチドである。当業者は、本明細書に開示される抗体、及びその誘導体の核酸配列の開示を考慮して、好適なプライマー配列を決定することができるであろう。関心対象の特定のプライマー配列は、配列番号200〜258に与えられており、これらは、本明細書に開示される抗体及びscFvのクローニング及び発現に有用である。
【0165】
(非天然アミノ酸の組込み)
部分をペプチドにコンジュゲートさせることを可能にする非天然アミノ酸の使用は、WO 2007/130453号に開示されている。そのようなタンパク質工学も以下で論じられる。
【0166】
タンパク質工学プロセスの第一の工程は、通常、所望の化学的特性を有する1組の非天然アミノ酸を選択することである。非天然アミノ酸の選択は、所定の化学的特性、及び標的分子又は標的タンパク質中で行なわれることが意図される修飾によって決まる。非天然アミノ酸は、選択されれば、販売元から購入するか、又は化学合成することができる。任意の数の非天然アミノ酸を標的分子内に組み込むことができ、その数は付着させるべき所望の化学的部分の数に応じて様々であり得る。化学的部分は、非天然アミノ酸の全て又はごく一部に付着させることができる。さらに、所望の結果に応じて、同じ又は異なる非天然アミノ酸を分子内に組み込むことができる。ある実施態様では、少なくとも2つの異なる非天然アミノ酸を分子内に組込み、1つの化学的部分、例えば、PEGを一方の非天然アミノ酸残基に付着させ、一方、別の化学的部分、例えば、細胞傷害剤を他方の非天然アミノ酸に付着させる。
【0167】
多種多様な非天然アミノ酸を本発明の方法で用いることができる。通常、本発明で有用な非天然アミノ酸は、20種の天然アミノ酸では得ることができない追加の特徴を提供するように選択又は設計される。例えば、非天然アミノ酸は、例えば、それらが組み込まれる、タンパク質を含む、分子の生物学的特性を修飾するように任意に設計又は選択される。例えば、以下の特性が、分子、例えば、タンパク質に非天然アミノ酸を含めることによって任意に修飾される:毒性、生体分布、溶解性、安定性、例えば、熱、加水分解、酸化に対する安定性、酵素分解に対する抵抗性など、精製及び処理の容易さ、構造的特性、分光学的特性、化学的及び/又は光化学的特性、触媒活性、ワクチンとして機能する能力、酸化還元電位、半減期、他の分子と、例えば、共有結合的又は非共有結合的に反応する能力など。
【0168】
本明細書で使用されるように、「非天然アミノ酸」は、セレノシステイン、及び遺伝子にコードされた以下の20種のα-アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン以外の任意のアミノ酸、修飾アミノ酸、又はアミノ酸類似体を指す。α-アミノ酸の一般構造は、式Iによって示される:
【化3】
。
【0169】
非天然アミノ酸は、通常、式I(式中、R基は、20種の天然アミノ酸で使用されているもの以外の任意の置換基である)を有する任意の構造である。20種の天然アミノ酸の構造については、例えば、L. Stryer著, 生化学(Biochemistry), 第3版 1988, Freeman and Company, New Yorkなどの、任意の生化学の教科書を参照されたい。本明細書に開示される非天然アミノ酸は、上記の20種のα-アミノ酸以外の天然に存在する化合物であってもよいことに留意されたい。本明細書に開示される非天然アミノ酸は、通常、側鎖のみが天然アミノ酸と異なるので、該非天然アミノ酸は、それらが天然に存在するタンパク質で形成されるのと同じ様式で、例えば、天然又は非天然の、他のアミノ酸とアミド結合を形成する。しかしながら、非天然アミノ酸は、それらを天然アミノ酸と区別する側鎖基を有する。例えば、式IのRは、任意に、アルキル-、アリール-、アリールハライド、ビニルハライド、β-シリルアルケニルハライド、β-シリルアルケニルスルホネート、アルキルハライド、アセチル、ケトン、アジリジン、ニトリル、ニトロ、ニトリルオキシド、ハライド、アシル-、ケト-、アジド-、ケタール、アセタール、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオエーテル、エポキシド、スルホン、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボラン、フェニルボロン酸、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式-、ピリジル、ナフチル、ベンゾフェノン、拘束された環、例えば、シクロオクチン、シクロプロペン、ノルボルネンチオエステル、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ、カルボン酸、α-ケトカルボン酸、α若しくはβ不飽和酸及びアミド、グリオキシルアミド、若しくはオルガノシラン、ピロン、テトラジン、ピリダジン、ヒドラジド(hydrzaide)、ヒドラジン、アルコキシアミン、アリールスルホネート、アリールハライド、チオセミカルバジド、セミカルバジド、テトラゾール基など、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0170】
非天然アミノ酸の具体例は、限定されないが、p-アセチル-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、β-O-GlcNAc-L-セリン、トリ-O-アセチル-GalNAc-α-トレオニン、α-GalNAc-L-トレオニン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、ピロリジン、N-σ-o-アジドベンジルオキシカルボニル-L-リジン(AzZLys)、N-σ-プロパルギルオキシカルボニル-L-リジン、N-σ-2-アジドエトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocLys)、N-σ-アリルオキシカルボニル-L-リジン(AlocLys)、N-σ-アセチル-L-リジン(AcLys)、N-σ-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン(ZLys)、N-σ-シクロペンチルオキシカルボニル-L-リジン(CycLys)、N-σ-D-プロリル-L-リジン、N-σ-ニコチノイル-L-リジン(NicLys)、N-σ-N-Me-アントラニロイル-L-リジン(NmaLys)、N-σ-ビオチニル-L-リジン、N-σ-9-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-メチル-L-リジン、N-σ-ジメチル-L-リジン、N-σ-トリメチル-L-リジン、N-σ-イソプロピル-L-リジン、N-σ-ダンシル-L-リジン、N-σ-o,p-ジニトロフェニル-L-リジン、N-σ-p-トルエンスルホニル-L-リジン、N-σ-DL-2-アミノ-2カルボキシエチル-L-リジン、N-σ-フェニルピルバミド-L-リジン、N-σ-ピルバミド-L-リジン、以下に、又は本明細書の別所に記載されているものなどを含み;かつ例えば、p-アセチル-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、β-O-GlcNAc-L-セリン、トリ-O-アセチル-GalNAc-α-トレオニン、α-GalNAc-L-トレオニン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニンから選択される。
【0171】
アリール置換は、様々な位置、例えば、オルト、メタ、パラで、1以上の官能基をアリール環上に配置させて生じることができる。関心対象の他の非天然アミノ酸としては、光活性化可能なクロスリンカーを含むアミノ酸、スピン標識アミノ酸、色素標識アミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規の官能基を有するアミノ酸、親水性、疎水性、極性、又は水素結合する能力が改変されたアミノ酸、共有結合的又は非共有結合的に他の分子と相互作用するアミノ酸、フォトケージ化された及び/又は光異性化可能なアミノ酸、ビオチン又はビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸、例えば、糖置換セリン、他の炭水化物修飾アミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコール若しくはポリエーテル、多価アルコール、又は多糖を含むアミノ酸、メタセシスを受けることができるアミノ酸、環状付加を受けることができるアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学切断可能及び/又は光切断可能なアミノ酸、天然アミノ酸と比べて伸張した側鎖、例えば、炭素が約5個よりも多いか又は約10個よりも多い、例えば、ポリエーテル又は長鎖炭化水素を有するアミノ酸、炭素結合糖含有アミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、薬物部分を含むアミノ酸、並びに1以上の毒性部分を含むアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
新規の側鎖を含む非天然アミノ酸に加えて、非天然アミノ酸は、任意に、例えば、式II及びIII;
【化4】
(式中、Zは、通常、OH、NH
2、SH、NH
2O--、NH--R'、R'NH--、R'S--、又はS--R'--を含み;X及びYは、同じもの又は異なるものであることができ、通常、S、N、又はOを含み、R及びR'は、任意に同じもの又は異なるものであり、通常、式Iを有する非天然アミノ酸について上で記載されたR基の構成成分の同じリスト、並びに水素又は(CH
2)
x又は天然アミノ酸側鎖から選択される)の構造によって示されるような、修飾された骨格構造も含む。例えば、本明細書に開示される非天然アミノ酸は、任意に、式II及びIIIによって示されるようなアミノ又はカルボキシル基に置換を含む。このタイプの非天然アミノ酸としては、α-ヒドロキシ酸、α-チオ酸、α-アミノチオカルボキシレート、又は例えば、20種の天然アミノ酸若しくは非天然の側鎖に対応する側鎖を有する、α-α-ジ置換アミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。それらには、β-アミノ酸又はγ-アミノ酸、例えば、置換されたβ-アラニン及びγ-アミノ酪酸も含まれるが、これらに限定されない。さらに、α-炭素における置換又は修飾には、任意に、L又はD異性体、例えば、D-グルタメート、D-アラニン、D-メチル-O-チロシン、アミノ酪酸などが含まれる。他の構造的代替物としては、環状アミノ酸、例えば、プロリン類似体、並びに3-、4-、6-、7-、8-、及び9-員環プロリン類似体が挙げられる。いくつかの非天然アミノ酸、例えば、アリールハライド(p-ブロモ-フェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニンは、エチンとの多目的なパラジウム触媒型クロスカップリング反応、又はアリールハライドと多種多様なカップリングパートナーとの間の炭素-炭素、炭素-窒素、及び炭素-酸素結合の形成を可能にするアセチレン反応を提供する。
【0173】
例えば、多くの非天然アミノ酸は、天然アミノ酸、例えば、チロシン、グルタミン、フェニルアラニンなどに基づくものである。チロシン類似体としては、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンが挙げられ、ここで、該置換チロシンは、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C6-C20直鎖又は分岐状炭化水素、飽和又は不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含む。さらに、多重置換アリール環も企図される。グルタミン類似体としては、α-ヒドロキシ誘導体、β-置換誘導体、環状誘導体、及びアミド置換グルタミン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なフェニルアラニン類似体としては、メタ置換フェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されず、ここで、その置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アセチル基などを含む。
【0174】
非天然アミノ酸の具体例としては、o、m、及び/又はp型のアミノ酸又はアミノ酸類似体(非天然アミノ酸)が挙げられるが、これらに限定されず、これには、ホモアリルグリシン、シス-又はトランス-クロチルグリシン、6,6,6-トリフルオロ-2-アミノヘキサン酸、2-アミノヘプタン酸(2-aminopheptanoic acid)、ノルバリン、ノルロイシン、O-メチル-L-チロシン、o-、m-、又はp-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジドフェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨードフェニルアラニン、o-、m-、又はp-ブロモフェニルアラニン、2-、3-、又は4-ピリジルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン(idiophenylalanine)、ジアミノ酪酸、アミノ酪酸、ベンゾフラニルアラニン、3-ブロモ-チロシン、3-(6-クロロインドリル)アラニン、3-(6-ブロモインドリル)アラニン、3-(5-ブロモインドリル)アラニン、p-クロロフェニルアラニン、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギル-オキシ-フェニルアラニン、m-エチニル-フェニルアラニン、6-エチニル-トリプトファン、5-エチニル-トリプトファン、(R)-2-アミノ-3-(4-エチニル-1H-ピロル-3-イル)プロパン酸、アジドノルロイシン、アジドホモアラニン、p-アセチルフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、ホモプロパルギルグリシン、p-エチル-フェニルアラニン、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギル-オキシ-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、3-(2-ナフチル)アラニン、3-(1-ナフチル)アラニン、3-ヨード(idio)-チロシン、O-プロパルギル-チロシン、ホモグルタミン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-アセチル-L-フェニルアラニン、m-アセチル-L-フェニルアラニン、セレノメチオニン、テルロメチオニン、セレノシステイン、アルキンフェニルアラニン、O-アリル-L-チロシン、O-(2-プロピニル)-L-チロシン、p-エチルチオカルボニル-L-フェニルアラニン、p-(3-オキソブタノイル)-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、ホモプロパルギルグリシン、アジドホモアラニン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモ-L-フェニルアラニン、ジヒドロキシ-フェニルアラニン、ジヒドロキシル-L-フェニルアラニン、p-ニトロ-L-フェニルアラニン、m-メトキシ-L-フェニルアラニン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、及びイソプロピル-L-フェニルアラニン、トリフルオロロイシン、ノルロイシン、4-、5-、又は6-フルオロ-トリプトファン、4-アミノトリプトファン、5-ヒドロキシトリプトファン、ビオシチン、アミノオキシ酢酸、m-ヒドロキシフェニルアラニン、m-アリルフェニルアラニン、m-メトキシフェニルアラニン基、β-GlcNAc-セリン、α-GalNAc-トレオニン、p-アセトアセチルフェニルアラニン、パラ-ハロ-フェニルアラニン、セレノ-メチオニン、エチオニン、S-ニトロソ-ホモシステイン、チア-プロリン、3-チエニル-アラニン、ホモ-アリル-グリシン、トリフルオロイソロイシン、トランス及びシス-2-アミノ-4-ヘキセン酸、2-ブチニル-グリシン、アリル-グリシン、パラ-アジド-フェニルアラニン、パラ-シアノ-フェニルアラニン、パラ-エチニル-フェニルアラニン、ヘキサフルオロロイシン、1,2,4-トリアゾール-3-アラニン、2-フルオロ-ヒスチジン、L-メチルヒスチジン、3-メチル-L-ヒスチジン、β-2-チエニル-L-アラニン、β-(2-チアゾリル)-DL-アラニン、ホモプロパルギルグリシン(HPG)、並びにアジドホモアラニン(AHA)などが含まれる。種々の非限定的な非天然アミノ酸の構造は、例えば、その内容全体が引用により本明細書中に組み込まれている、US 2003/0108885 A1号の
図29、30、及び31に提供されている。
【0175】
チロシン類似体としては、パラ置換チロシン、オルト置換チロシン、及びメタ置換チロシンが挙げられ、ここで、該置換チロシンは、アセチル基、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C6-C20直鎖又は分岐状炭化水素、飽和又は不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基などを含む。さらに、多重置換アリール環も企図される。本発明のグルタミン類似体としては、α-ヒドロキシ誘導体、β-置換誘導体、環状誘導体、及びアミド置換グルタミン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。フェニルアラニン類似体の例としては、メタ-置換フェニルアラニンが挙げられるが、これに限定されず、ここで、その置換基は、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アセチル基などを含む。リジン類似体としては、N-σ置換されたもの、例えば、ピロリジン、N-σ-o-アジドベンジルオキシカルボニル-L-リジン(AzZLys)、N-σ-プロパルギルオキシカルボニル-L-リジン、N-σ-2-アジドエトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocLys)、N-σ-アリルオキシカルボニル-L-リジン(AlocLys)、N-σ-アセチル-L-リジン(AcLys)、N-σ-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン(ZLys)、N-σ-シクロペンチルオキシカルボニル-L-リジン(CycLys)、N-σ-D-プロリル-L-リジン、N-σ-ニコチノイル-L-リジン(NicLys)、N-σ-N-Me-アントラニロイル-L-リジン(NmaLys)、N-σ-ビオチニル-L-リジン、N-σ-9-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-メチル-L-リジン、N-σ-ジメチル-L-リジン、N-σ-トリメチル-L-リジン、N-σ-イソプロピル-L-リジン、N-σ-ダンシル-L-リジン、N-σ-o,p-ジニトロフェニル-L-リジン、N-σ-p-トルエンスルホニル-L-リジン、N-σ-DL-2-アミノ-2カルボキシエチル-L-リジン、N-σ-フェニルピルバミド-L-リジン、N-σ-ピルバミド-L-リジンが挙げられる。
【0176】
さらに、他の例としては、任意に(限定されないが)、チロシンアミノ酸の非天然類似体;グルタミンアミノ酸の非天然類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然類似体;セリンアミノ酸の非天然類似体;トレオニンアミノ酸の非天然類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、ケタール、アセタール、歪んだシクロオクチン、歪んだシクロアルケン、シクロプロペン、ノルボルネン、ニトリル酸化物、β-シリルアルケニルハライド、β-シリルアルケニルスルホネート、ピロン、テトラジン、ピリダジン、アルコキシアミン、アリールスルホネート、アリールハライド、チオセミカルバジド、セミカルバジド、テトラゾール、α-ケト酸、若しくはアミノ置換アミノ酸、又はそれらの任意の組合せ;光活性化可能なクロスリンカーを有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規の官能基を有するアミノ酸;共有結合的又は非共有結合的に別の分子と相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;フォトケージ化アミノ酸;光異性化可能なアミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有アミノ酸;グリコシル化又は炭水化物修飾されたアミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールを含むアミノ酸;ポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学切断可能又は光切断可能なアミノ酸;伸張した側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換アミノ酸、例えば、糖置換セリンなど;炭素結合糖含有アミノ酸;酸化還元活性アミノ酸;α-ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,αジ置換アミノ酸;β-アミノ酸;並びに環状アミノ酸が挙げられる。
【0177】
通常、ある実施態様のために本明細書で利用される非天然アミノ酸は、20種の天然アミノ酸では得ることができない追加の特徴を提供するように選択又は設計することができる。例えば、非天然アミノ酸は、例えば、それらが組み込まれるタンパク質の生物学的特性を修飾するように任意に設計又は選択される。例えば、以下の特性が、タンパク質に非天然アミノ酸を含めることによって任意に修飾される:毒性、生体分布、溶解性、安定性、例えば、熱、加水分解、酸化に対する安定性、酵素分解に対する抵抗性など、精製及び処理の容易さ、構造的特性、分光学的特性、化学的及び/又は光化学的特性、触媒活性、酸化還元電位、半減期、他の分子と、例えば、共有結合的又は非共有結合的に反応する能力など
【0178】
アミノ酸類似体の他の例としては、任意に(限定されないが)、チロシンアミノ酸の非天然類似体;グルタミンアミノ酸の非天然類似体;フェニルアラニンアミノ酸の非天然類似体;セリンアミノ酸の非天然類似体;トレオニンアミノ酸の非天然類似体;アルキル、アリール、アシル、アジド、シアノ、ハロ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、エーテル、チオール、スルホニル、セレノ、エステル、チオ酸、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環式、エノン、イミン、アルデヒド、ヒドロキシルアミン、ケト、ケタール、アセタール、歪んだシクロオクチン、歪んだシクロアルケン、シクロプロペン、ノルボルネン、ニトリル酸化物、β-シリルアルケニルハライド、β-シリルアルケニルスルホネート、ピロン、テトラジン、ピリダジン、アルコキシアミン、アリールスルホネート、アリールハライド、チオセミカルバジド、セミカルバジド、テトラゾール、α-ケト酸、若しくはアミノ置換アミノ酸、又はこれらの任意の組合せ;光活性化可能なクロスリンカーを有するアミノ酸;スピン標識アミノ酸;蛍光アミノ酸;新規の官能基を有するアミノ酸;共有結合的又は非共有結合的に別の分子と相互作用するアミノ酸;金属結合アミノ酸;金属含有アミノ酸;放射性アミノ酸;フォトケージ化アミノ酸;光異性化可能なアミノ酸;ビオチン又はビオチン類似体含有アミノ酸;グリコシル化又は炭水化物修飾されたアミノ酸;ケト含有アミノ酸;ポリエチレングリコールを含むアミノ酸;ポリエーテルを含むアミノ酸;重原子置換アミノ酸;化学切断可能又は光切断可能なアミノ酸;伸張した側鎖を有するアミノ酸;毒性基を含むアミノ酸;糖置換アミノ酸、例えば、糖置換セリンなど;炭素結合糖含有アミノ酸;酸化還元活性アミノ酸;α-ヒドロキシ含有酸;アミノチオ酸含有アミノ酸;α,αジ置換アミノ酸;β-アミノ酸;並びにプロリン以外の環状アミノ酸が挙げられる。
【0179】
本発明の方法で使用するのに好適な非天然アミノ酸としては、アミノ酸側鎖に付着したサッカリド部分を有するものも挙げられる。一実施態様では、サッカリド部分を有する非天然アミノ酸としては、Man、GalNAc、Glc、Fuc、又はGal部分を有するセリン又はトレオニンアミノ酸が挙げられる。サッカリド部分を含む非天然アミノ酸の例としては、例えば、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、β-O-GlcNAc-L-セリン、トリ-O-アセチル-GalNAc-α-トレオニン、α-GalNAc-L-トレオニン、O-Man-L-セリン、テトラ-アセチル-O-Man-L-セリン、O-GalNAc-L-セリン、トリ-アセチル-O-GalNAc-L-セリン、Glc-L-セリン、テトラアセチル-Glc-L-セリン、fuc-L-セリン、トリ-アセチル-fuc-L-セリン、O-Gal-L-セリン、テトラ-アセチル-O-Gal-L-セリン、β-O-GlcNAc-L-トレオニン、トリ-アセチル-β-GlcNAc-L-トレオニン、O-Man-L-トレオニン、テトラ-アセチル-O-Man-L-トレオニン、O-GalNAc-L-トレオニン、トリ-アセチル-O-GalNAc-L-トレオニン、Glc-L-トレオニン、テトラアセチル-Glc-L-トレオニン、fuc-L-トレオニン、トリ-アセチル-fuc-L-トレオニン、O-Gal-L-トレオニン、テトラ-アセチル-O-Gal-L-セリン、β-N-アセチルグルコサミン-O-セリン、α-N-アセチルガラクトサミン-O-トレオニン、蛍光アミノ酸、例えば、ナフチル又はダンシル又は7-アミノクマリン又は7-ヒドロキシクマリン側鎖を含むもの、光切断可能又は光異性化可能なアミノ酸、例えば、アゾベンゼン又はニトロベンジルCys、Ser、又はTyr側鎖を含むもの、p-カルボキシ-メチル-L-フェニルアラニン、ホモグルタミン、2-アミノオクタン酸、p-アジドフェニルアラニン、p-ベンゾイルフェニルアラニン、p-アセチルフェニルアラニン、m-アセチルフェニルアラニン、2,4-ジアミノ酪酸(DAB)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明には、上記のものの非保護形態及びアセチル化形態が含まれる。(例えば、「ペプチドのリモデリング及び糖コンジュゲーション(Remodeling and Glycoconjugation of Peptides)」というタイトルのWO 03/031464 A2号;及び「サッカリド組成物、その合成のための方法及び装置(Saccharide Composition, Methods and Apparatus for their synthesis)」というタイトルの米国特許第6,331,418号;Tang及びTirrellの文献(J. Am. Chem. Soc.(2001)123: 11089-11090);並びにTangらの文献(Angew. Chem. Int. 編,(2001)40:8も参照されたく、これらは全て、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)。
【0180】
上に提供された非天然アミノ酸の多くは、例えば、Sigma Aldrich(USA)から市販されている。市販されていないものは、任意に、US 2004/138106 A1号(引用により本明細書中に組み込まれる)の実施例に提供されているように、又は当業者に公知の標準的な方法を用いて合成される。有機合成技術については、例えば、Fessendon及びFessendon著、有機化学(Organic Chemistry)(1982, 第2版, Willard Grant Press, Boston Mass.);March著、最先端有機化学(Advanced Organic Chemistry)(第3版, 1985, Wiley and Sons, New York);及びCarey及びSundberg著、最先端有機化学(Advanced Organic Chemistry)(第3版, パートA及びB, 1990, Plenum Press, New York)、並びにWO 02/085923号を参照されたく、これらは全て、引用により本明細書に組み込まれる。
【0181】
例えば、メタ-置換フェニルアラニンは、WO 02/085923号(例えば、この刊行物の
図14参照)に概略が示されているような手順で合成される。通常、NBS(N-ブロモスクシンイミド)をメタ-置換メチルベンゼン化合物に添加すると、メタ-置換臭化ベンジルが得られ、次に、これをマロネート化合物と反応させると、メタ置換フェニルアラニンが得られる。メタ位に使用される典型的な置換基としては、ケトン、メトキシ基、アルキル、アセチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、3-アセチル-フェニルアラニンは、NBSを3-メチルアセトフェノンの溶液と反応させることによって作製される。さらなる詳細については、下記の実施例を参照されたい。同様の合成を用いて、3-メトキシフェニルアラニンを生成させる。その場合の臭化ベンジルのメタ位のR基は--OCH
3である(例えば、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる、Matsoukasらの文献(J. Med. Chem., 1995, 38, 4660-4669)を参照されたい)。
【0182】
場合によっては、非天然アミノ酸の設計は、シンセターゼ、例えば、末端枝突然変異体(external mutant)tRNAをアミノアシル化するために使用される末端枝突然変異体tRNAシンセターゼの活性部位に関する既知情報によってバイアスがかけられる。例えば、アミドの窒素で置換された誘導体(1)、γ位のメチル基(2)、及びN-Cy-環状誘導体(3)を含む、3つのクラスのグルタミン類似体が提供される。重要な結合部位残基が酵母GlnRSと相同である大腸菌GlnRSのx線結晶構造に基づいて、類似体を、グルタミンの側鎖の10シェル以内の残基の側鎖突然変異の配列を補完するように設計し、例えば、活性部位Phe233の小さい疎水性アミノ酸への突然変異を、GlnのCy位での立体的嵩高さの増加によって補完することができる。
【0183】
例えば、N-フタロイル-L-グルタミン酸1,5-無水物(WO 02/085923号の
図23の化合物番号4)を任意に用いて、アミドの窒素に置換基を有するグルタミン類似体を合成する。(例えば、King及びKiddの文献(J. Chem. Soc., 3315-3319, 1949);Friedman及びChatterrjiの文献(J. Am. Chem. Soc. 81, 3750-3752, 1959);Craigらの文献(J. Org. Chem. 53, 1167-1170, 1988);並びにAzoulayらの文献(Eur. J. Med. Chem. 26, 201-5, 1991)を参照されたく、これらは全て、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。該無水物は、通常、アミンをフタルイミドとしてまず保護した後、酢酸中で還流することによって、グルタミン酸から調製される。次に、該無水物をいくつかのアミンで開裂させると、該アミドで様々な置換基が得られる。ヒドラジンによるフタロイル基の脱保護により、WO 2002/085923号の
図23に示されるような遊離アミノ酸が得られる。
【0184】
γ-位における置換は、通常、グルタミン酸のアルキル化によって達成される。(例えば、引用により本明細書に組み込まれる、Koskinen及びRapoportらの文献(J. Org. Chem. 54, 1859-1866, 1989)を参照されたい)。例えば、WO 02/085923号の
図24の化合物番号5によって示されているような保護アミノ酸を、任意に、アミノ部分を9-ブロモ-9-フェニルフルオレン(PhflBr)でまずアルキル化し(例えば、引用により本明細書に組み込まれる、Christie及びRapoportらの文献(J. Org. Chem. 1989, 1859-1866, 1985)を参照されたい)、その後、酸部分を、O-tert-ブチル-N,N'-ジイソプロピルイソウレアを用いてエステル化することによって調製する。KN(Si(CH
3)
3)
2を添加すると、メチルエステルのα-位で位置選択的に脱プロトン化されて、エノラートが形成され、次に、これを、任意に様々なアルキルヨウ化物でアルキル化する。t-ブチルエステル及びPhfl基を加水分解すると、所望のγ-メチルグルタミン類似体(引用により本明細書に組み込まれるWO 02/085923号の
図24の化合物番号2)が得られた。
【0185】
WO 02/085923号の
図25の化合物番号3によって示されているようなN-Cy環状類似体を、任意に、以前に記載されているように、Boc-Asp-Ot-Buから4工程で調製する。(例えば、各々、引用により本明細書に組み込まれる、Bartonらの文献(Tetrahedron Lett. 43, 4297-4308, 1987)、及びSubasingheらの文献(J. Med. Chem. 35 4602-7, 1992)を参照されたい)。N-t-Boc-ピロリジノン、ピロリジノン、又はオキサゾリドンのアニオンを生成させた後、
図25に示されているような化合物7を添加すると、マイケル付加生成物が得られる。その後、TFAで脱保護すると、遊離アミノ酸が得られる。
【0186】
トリフルオロロイシン(Tfl)及びヘキサフルオロロイシン(Hfl)は、当技術分野で公知の様々な方法によって合成することができる。例えば、5',5',5'-トリフルオロ-DL-ロイシンは、まず、市販のトリフルオロメチルクロトン酸をエタノールで希釈し、それを触媒の存在下で水素化することによって段階的に合成することができる。次に、混合物を還流し、エステルを蒸留することができる。次に、α-オキシイミノ-5',5',5'-トリフルオロイソカプロン酸を、還流及び蒸留によって誘導し、その後、5',5',5'-トリフルオロ-DL-ロイシンを再結晶化させることができる。同様に、(S)-5,5,5,5',5',5'-ヘキサフルオロロイシンは、ヘキサフルオロアセトン及びブロモピルビン酸エチルから多工程で調製することができ、該多工程には、パン酵母によるか、又はオキサザボロリジン触媒を用いるカテコールボランによる、α-ケトエステルのカルボニル基の高度にエナンチオ選択性な還元が含まれる。(さらなる詳細については、例えば、Rennert, Ankerの文献(Biochem. 1963, 2, 471);Zhangらの文献(Helv. Chim. Acta 1998, 81, 174-181)、Rの文献(Prot Sci. 7: 419-426(1998)); Hendricksonらの文献(Annual Rev. Biochem. 73: 147-176(2004));米国特許出願第20030108885号及び第20030082575号、並びに同時係属の米国仮出願第60/571,810号を参照されたく、これらは全て、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本開示の新規な点の1つは、フッ素化非天然アミノ酸(複数可)が組み込まれた、ロイシン-ジッパードメインを多く含む分子の熱安定性及び化学的安定性の増大に関する。
【0187】
同様に、ホモプロパルギルグリシン(HPG)及びアジドホモアラニン(AHA)を、公表されている方法によって合成することができる。例えば、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、Mangoldらの文献(Mutat. Res., 1989, 216, 27)による。
【0188】
(二重特異性コンストラクトの合成)
(二重特異性体を形成させる一般的方法)
ある実施態様では、本発明の二価の二重特異性コンストラクトは、下記のことを含む、以下の方法よって作製することができる:
(i)少なくとも1つの非天然アミノ酸の組込みによって修飾されている抗IL-6抗体又はその誘導体をコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を提供すること;
(ii)少なくとも1つの非天然アミノ酸の組込みによって修飾されている抗IL-23抗体又はその誘導体をコードするポリヌクレオチドを有するベクターを含む宿主細胞を提供すること;
(iii)該宿主細胞が、該修飾された抗IL-6抗体又はその誘導体、及び該修飾された抗IL-23抗体又はその誘導体を発現するような条件下で、該宿主細胞を成長させること、
(iv)該抗IL-6抗体又はその誘導体、及び該抗IL-23抗体又はその誘導体を単離すること;
(v)該抗IL-6抗体又はその誘導体が、各部分の非天然アミノ酸間の連結によって該抗IL-23抗体又はその誘導体と結合されるように、該抗IL-6抗体又はその誘導体を該抗IL-23抗体又はその誘導体と反応させること。
【0189】
本発明の二重特異性コンストラクトは、当技術分野で公知の方法によって作製することもできる。これらには、体細胞ハイブリダイゼーション、化学的カップリング、及び組換え技術が含まれる。
【0190】
体細胞ハイブリダイゼーションは、2つのハイブリドーマの融合、及び得られるクアドローマによって分泌される二重特異性体の精製を含む。2つの異なる方法が記載されている:(1)2つの樹立されたハイブリドーマの融合によって、クアドローマが作製される(Milstein及びCuelloの文献(1983);Sureshらの文献(1986))、並びに(2)1つの樹立されたハイブリドーマと、第二の抗原で免疫化されたマウスに由来するリンパ球との融合によって、トリオーマが作製される(Nolan及びKennedyの文献(1990))。bsMAbの開発のための体細胞ハイブリダイゼーションは、ハイブリドーマを調製する方法と類似した方法を含む。しかしながら、1つの細胞内での2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖の産生及びランダムな会合は、かなり大きな割合の非機能的分子のアセンブリを生じさせる。必要とされる特異性を有する二重特異性体を精製するために、複雑な精製技術が開発される必要があり、このため、臨床使用のための大規模製造がほとんど不可能になる。それでもなお、本発明は、体細胞ハイブリダイゼーションを用いて製造される上に開示されたような二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0191】
当技術分野で知られているような抗体の化学的カップリングは、約40年前に初めて実施された。第一の二重特異性ポリクローナル抗体は、2つの異なるポリクローナル抗体を化学的にカップリングすることによって産生された(Nisonoff及びRiversの文献(1961))。この化学的操作は、その内部重鎖ジスルフィド結合での2つの異なる抗体の解離、及び化学的コンジュゲーションによる2つの半分の分子の架橋を含んでいた。bsMAbを調製するために、ε-アミノ基又はヒンジ領域チオール基との反応性がある多数の二官能性試薬が用いられている。これらのクロスリンカーは、ホモ二官能性試薬又はヘテロ二官能性試薬という2つのカテゴリーに分類することができる。ホモ二官能性試薬は、内部重鎖ジスルフィド結合の還元によって生成される遊離チオールと反応する。5,5-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)又はo-フェニレンジマレイミド(O-PDM)は、MAbのFab'断片上のチオール基を活性化することができる。DTNBが、2つのFab間のジスルフィド結合を再生するように作用するのに対し、O-PDMは、2つのFab'間のチオエーテル結合を形成するように作用する。通常、O-PDMのチオエーテル結合は、DTNBによって再生されるジスルフィド結合よりも安定であることができる。ヘテロ二官能性試薬は、タンパク質上に、それが第二のタンパク質と反応することを可能にする反応基を導入することができる。N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)は、第一級アミノ基と反応させて、遊離チオール基を導入するために用いられている。SPDPは、クラス又はアイソタイプを問わず、抗体及びFab'断片を含む、露出したアミノ基を有する任意の2つのタンパク質を組み合わせることができる。しかしながら、この手法は、分子のランダムな架橋を引き起こし、そのため、バッチ間のばらつき、並びに望ましくない効果、例えば、タンパク質変性、及び/又は抗体活性の喪失を示す。それでもなお、本発明は、化学的カップリングを用いて製造される上に開示されたような二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0192】
組換え技術を用いて、二重特異性抗体を作製することもできる。遺伝子改変によって得られるそのような二重特異性抗体は、化学的架橋又は2つのハイブリドーマクローンの融合によって作製される従来の二重特異性抗体に優るいくつかの利点を示し、これには、二重特異性体の大きさ及び親和性に対するより大きな制御が含まれる。可変ドメインのみを構成単位として用いることによって、組換え抗体は、抗体のFc領域を欠如し、そのため、Fc媒介性の免疫エフェクター機能を誘導しない。多種多様な異なる組換え二重特異性抗体フォーマットが過去何年にもわたって開発されている。それらのうち、タンデム単鎖Fv分子及びダイアボディ並びにそれらの様々な誘導体は、組換え二重特異性抗体の構築のための最も広く用いられているフォーマットである。1つの共通のテーマとして、これらの分子の構築は、異なる抗原を認識する2つの単鎖Fv(scFv)断片(ペプチドリンカーを介して連結された免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域)から始まる。タンデムscFv分子(taFv)は、2つのscFv分子を追加のペプチドリンカーと単に接続しただけの単純なフォーマットを表す。これらのタンデムscFv分子中に存在する2つのscFv断片は、別々のフォールディング実体を形成する。したがって、様々なリンカーを用いて、2つのscFv断片を接続することができ、最大63残基の長さを有するリンカーが報告されている。親scFv断片は、通常、細菌内で可溶性形態で発現させることができるが、タンデムscFv分子は細菌内で不溶性の凝集体を形成することがよく観察される。したがって、可溶性のタンデムscFv分子を産生するために、再フォールディングプロトコル又は哺乳動物発現系の使用がルーチンに適用される。このようにして、本発明は、上で詳述したような組換え技術を用いて製造される上に開示されたような二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0193】
上に示したような好ましい製造方法では、非天然アミノ酸は、連結の前のアジド、シアノ、ニトリル酸化物、アルキン、アルケン、歪んだシクロオクチン、歪んだシクロアルケン、シクロプロペン、ノルボルネン、又はアリール、アルキル、若しくはビニルハライド、ケトン、アルデヒド、ケタール、アセタール、ヒドラジン、ヒドラジド、アルコキシアミン、ボロン酸、有機スズ、有機ケイ素、β-シリルアルケニルハライド、β-シリルアルケニルスルホネート、ピロン、テトラジン、ピリダジン、アリールスルホネート、チオセミカルバジド、セミカルバジド、テトラゾール、α-ケト酸基を含む。非天然アミノ酸は、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、ホモアリルグリシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニン又はエチニルフェニルアラニン(ethynylephenylalanine)、trans-クロチルアルケンなどの内部アルケンを含むアミノ酸、セリンアリルエーテル、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、又はビニルグリシン、ピロリジン、N-σ-o-アジドベンジルオキシカルボニル-L-リジン(AzZLys)、N-σ-プロパルギルオキシカルボニル-L-リジン、N-σ-2-アジドエトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocLys)、N-σ-アリルオキシカルボニル-L-リジン(AlocLys)、N-σ-アセチル-L-リジン(AcLys)、N-σ-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン(ZLys)、N-σ-シクロペンチルオキシカルボニル-L-リジン(CycLys)、N-σ-D-プロリル-L-リジン、N-σ-ニコチノイル-L-リジン(NicLys)、N-σ-N-Me-アントラニロイル-L-リジン(NmaLys)、N-σ-ビオチニル-L-リジン、N-σ-9-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン、N-σ-メチル-L-リジン、N-σ-ジメチル-L-リジン、N-σ-トリメチル-L-リジン、N-σ-イソプロピル-L-リジン、N-σ-ダンシル-L-リジン、N-σ-o,p-ジニトロフェニル-L-リジン、N-σ-p-トルエンスルホニル-L-リジン、N-σ-DL-2-アミノ-2カルボキシエチル-L-リジン、N-σ-フェニルピルバミド-L-リジン、N-σ-ピルバミド-L-リジンであってもよい。
【0194】
例えば、上で示したような好ましい製造方法において、非天然アミノ酸は、連結の前のアジド、アルキン、アルケン、又はアリール、アルキル、又はビニルハライド、ケトン、アルデヒド、ヒドラジン、ヒドラジド、アルコキシアミン、ボロン酸、有機スズ、有機ケイ素基を含む。非天然アミノ酸は、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、ホモアリルグリシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニン、又はエチニルフェニルアラニン(ethynylephenylalanine)、trans-クロチルアルケンなどの内部アルケンを含むアミノ酸、セリンアリルエーテル、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、又はビニルグリシンであってもよい。
【0195】
上に示したような好ましい製造方法では、第一の部分を第二の部分にカップリングさせるための反応は、[3+2]双極性環状付加若しくはクリック反応、ヘック反応、薗頭反応、鈴木反応、スティルカップリング、檜山/デンマーク反応、オレフィンメタセシス、ディールス-アルダー反応、又はヒドラジン、ヒドラジド、アルコキシアミン、若しくはヒドロキシルアミンとのカルボニル縮合である。
【0196】
(二価の二重特異性コンストラクト及び抗体のPEG化)
当技術分野で公知の組換え二重特異性抗体の短所の1つは、体内でのその短い循環時間である。ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、及びタンデムscFv分子は、50〜60kDaの分子量を有しており、このため、溢出、タンパク質分解、及び腎排出によるこれらの実体の循環からの迅速なクリアランスが生じることがある。これらの実体の例示的な初期半減期(t1/2α)は30分未満である。組換え抗体の薬物動態を改善するために、いくつかの手法が取られている。1つの手法は、これらの分子のサイズを増大させることである。100〜115kDaの分子量を有する二量体単鎖ダイアボディ分子は、可変ドメインを接続するリンカーの長さを変えることによって作製することもできる。他の手法は、二重特異性体と、長い半減期を有する血清タンパク質との会合に依存している。これらには、二重特異性抗体と、ヒト血清アルブミン(HSA)、HSA結合ペプチド、又は本来長い半減期を有するホルモンに由来するペプチドとの融合が含まれる。そのような方法を、本発明の二価の二重特異性コンストラクトに適用することができる。しかしながら、本発明は、ポリエチレングリコールポリマー(PEG)の使用を提供するものでもあり、該使用は、本発明の二価の二重特異性コンストラクトの半減期を延長する上で特に有利であることが本明細書で初めて示されている。
【0197】
PEGは、最終的な二重特異性生成物において望ましく、かつscFvに固有の問題を解決するいくつかの化学的特性を有する。PEG化は、タンパク質溶解性を改善し、scFv安定性を増大させ、それにより、scFvの凝集及び沈殿を低下させるはずである。さらに、PEGなどの、長くて柔軟なリンカーは、2つの抗体断片の物理的隔離を増大させ、それらが互いに独立に再フォールディングするのを可能にする。これは、遺伝子融合によって連結された二重特異性抗原結合ドメインの再フォールディングでよく起こる問題の1つ、(すなわち、2つの成分抗体間の無制御でかつ望ましくない架橋)を解決する。
【0198】
PEGポリマーは、従来、リジン、システイン、及びヒスチジン残基などの反応性部位を介して生体分子に共有結合される。しかしながら、最適な安定性を達成するために、標的分子に付着させるポリマーの量は、厳しく制御される必要がある。PEGポリマーとタンパク質中の反応性部位とのコンジュゲーションは、PEG修飾タンパク質の不均一な混合物を生じさせることが多く、これにより、最適でない安定化及び半減期増大、並びにPEG反応性部位がタンパク質活性にとって重要である(例えば、それらが、受容体結合部位又はその近くに位置する)場合、ポリマー修飾タンパク質の生体活性の潜在的な損失がもたらされることがある。本発明は、特定の場所に非天然アミノ酸を含むように二価の二重特異性コンストラクトの成分抗体を改変し、PEGをこれらの非天然アミノ酸と反応させることによって、この問題に対する解決を提供する。
【0199】
PEGリンカーの使用は、使用し得る化学合成の多用途性のために、上で詳述されたものに対してさらにより多くの利点を提供する。PEGは、scFvタンパク質に組み込まれる任意の非天然アミノ酸との相補的反応パートナーとなるように容易に官能化することができる。PEGは、多価タンパク質ハイブリッドの構築を可能にする複数のコンジュゲーション部位を有するように官能化することもできる。PEG官能化は、所望のコンジュゲーション化学反応に応じてホモ二官能性又はヘテロ二官能性PEGを用いて行なうことができる。さらに、PEGの構造は、薬物動態及び生体活性に影響を及ぼし得る線状又は分岐状のバリエーションに合わせることができる。
【0200】
これらのPEG化二価の二重特異性コンストラクトの調製を以下でさらに論じる。
【0201】
二重特異性scFvは、2つの異なるscFv抗原結合ドメインをリンカーによって互いにコンジュゲートさせることによって構築することができる。この戦略は、各scFvが二官能性リンカーにコンジュゲートされる2工程プロセスで実現される。二重特異性コンジュゲートを含む2つのscFvは、各々、特異的なコンジュゲーション部位の役割を果たす位置で少なくとも1つの非天然アミノ酸(例えば、Aha)を含む。リンカーは、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性であることができ、かつscFvに含まれる非天然アミノ酸(Aha)と反応性がある相補的官能基(例えば、アルキン)を含むことができる。その後、以下の反応スキームを適用して、二重特異性scFvを作製することができる(下のスキーム1)。
【化5】
【0202】
scFvをリンカーにコンジュゲートさせるために用いられる化学反応は、20種の天然アミノ酸に対して直交性である。scFv-PEGコンジュゲート及び二重特異性体の調製において、ここでは、アジド-アルキン銅媒介性の環状付加を用いる。典型的なシークエンスにおいて、アジドホモアラニン(Aha)を含むscFvを、アルキンで官能化された過剰量のホモ二官能性PEGリンカーと反応させる。限界過剰のPEGでの主要生成物は一価のPEG化scFvであり、その後、これを精製する。PEGリンカーの遊離のペンダントアルキンは、Ahaを含む第二のscFとの第二の銅媒介性アジド-アルキン環状付加を経て、二重特異性体を生じさせる。
【0203】
アジド-アルキン銅媒介性の環状付加(Meldal及びTorneの文献(2008)、Kolbらの文献(2001))、並びにアルケン-アリールハライドパラジウム媒介性のヘック反応は、標的タンパク質へのポリマー、毒素、又はペプチドの部位特異的コンジュゲーションに広く適用されている。銅媒介性の環状付加反応は、全ての天然アミノ酸と完全に直交性であり、そのため、非天然アジド又はアルキン含有部分を導入することができない限り、この化学反応を用いて、生物学的分子を修飾することができない。これが行なわれるとき、該化学反応は、そのアジド又はアルキンの位置でしか起こらない。アジド及びアルキンは、天然アミノ酸の類似体としてタンパク質中に導入され、バイオコンジュゲーションのための特異的な位置を提供することができる。
【0204】
別所に注記したように、抗IL-6及び抗IL-23又はそれらの誘導体(抗IL-23/IL-12抗体又はその誘導体を含む)をPEG化を介して任意に修飾し、半減期を増大させることができる。抗IL-6及び抗IL-23又はそれらの誘導体のPEG化は、同様の方法によって達成することができる。
【0205】
好適には、本発明の二重特異性コンストラクト及び抗体において有用なPEG基及びPEG リンカーは、2〜100kDa、例えば、5〜60kDa、例えば、10〜40kDa、例えば、約20kDa又は約40kDaの重量を有する。PEG基及びリンカーは、直鎖であっても分岐状であってもよい。
【0206】
(医薬組成物)
別の態様に従って、本発明は、本発明の二価の二重特異性コンストラクト及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物及びキットを提供する。いくつかの実施態様では、該医薬組成物又はキットはさらに、別の成分、例えば、イメージング試薬又は治療剤を含む。好ましい実施態様では、該医薬組成物又はキットは、診断法又は治療法で用いられる。
【0207】
医薬組成物は、例えば、水性製剤、例えば、従来の賦形剤、例えば、塩化ナトリウム、糖、アミノ酸、界面活性剤などを含む水溶液であってもよい。
【0208】
医薬組成物はまた、水又は食塩水の添加による再構成に好適な凍結乾燥製品であってもよい。
【0209】
(治療方法)
別の態様に従って、本発明は、治療における本発明の二価の二重特異性コンストラクトの使用を提供する。特に、本発明は、T
H17、T
H22、及びT
H1媒介性疾患、並びにこれらのT
H細胞の組合せによって媒介される疾患の治療を提供する。
【0210】
本発明の二価の二重特異性コンストラクトを用いて治療し得るそのような疾患の例としては、炎症性疾患及び自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、乾癬、乾癬性関節炎、尋常性天疱瘡、臓器移植拒絶反応、クローン病、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、エリテマトーデス、及び糖尿病が挙げられる。
【0211】
T
H17媒介性疾患のさらなる例としては、筋萎縮性側索硬化症又はALS(ルーゲーリック病)、強直性脊椎炎、アスペルガー障害、背部痛、バレット食道、双極性障害、心不整脈、セリアック病、慢性疲労症候群(CFS/CFIDS/,E)、慢性ライム病(ボレリア症)、クローン病、尿崩症、I型糖尿病、II型糖尿病、認知症、鬱病、てんかん、線維筋痛(FM)、胃食道逆流性疾患(GERD)、橋本甲状腺炎、過敏性腸症候群(IBS)、間質性膀胱炎(IC)、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、腎臓結石、レフグレン症候群、エリテマトーデス、躁病、多種化学物質過敏症(MCS)、片頭痛、モルジェロンズ病、多発性硬化症、重症筋無力症、ニューロパシー、強迫神経症(OCD)、変形性関節炎、パニック発作、パーキンソン病、リウマチ性多発筋痛、体位性起立性頻脈症候群(Postural orthostatic , achycardia syndrome)(POTS)、前立腺炎、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー症候群/レイノー現象、反応性関節炎(ライター症候群)、レストレスレッグ症候群、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、副鼻腔炎(inusitis)、季節性情動障害(SAD)、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、及びめまいが挙げられる。さらなる疾患としては、敗血症又は出血熱によるサイトカインストーム、胆汁性肝硬変、スティル病、COPD、グレーブス眼症、腹膜炎(perionditis)、ベーチェット病、喘息、アトピー性皮膚炎、汗腺膿瘍、巨細胞性動脈炎、及び心臓線維症が挙げられる。
【0212】
T
H22媒介性疾患のさらなる例としては、慢性炎症性疾患、例えば、湿疹、強皮症、喘息、及びCOPDが挙げられる。
【0213】
したがって、ある実施態様では、本発明は、本発明の二価の二重特異性コンストラクトの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H17媒介性疾患の治療方法を提供する。
【0214】
別の実施態様では、本発明は、T
H17によって媒介される疾患の治療用の本発明の二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0215】
別の実施態様では、本発明は、T
H17によって媒介される疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明の二価の二重特異性コンストラクトの使用を提供する。
【0216】
別の実施態様では、本発明は、本発明の二価の二重特異性コンストラクトの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H22細胞によって媒介される疾患の治療方法を提供する。
【0217】
別の実施態様では、本発明は、T
H22細胞によって媒介される疾患の治療用の本発明の二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0218】
別の実施態様では、本発明は、両方のT
H22細胞によって媒介される疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明の二価の二重特異性コンストラクトの使用を提供する。
【0219】
別の実施態様では、本発明は、本発明の二価の二重特異性コンストラクトの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H17細胞とT
H1細胞の両方によって媒介される疾患の治療方法を提供する。
【0220】
別の実施態様では、本発明は、T
H17とT
H1の両方によって媒介される疾患の治療用の本発明の二価の二重特異性コンストラクトを提供する。
【0221】
別の実施態様では、本発明は、T
H17とT
H1の両方によって媒介される疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明の二価の二重特異性コンストラクトの使用を提供する。
【0222】
別の実施態様では、本発明は、本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H17媒介性疾患の治療方法を提供する。
【0223】
別の実施態様では、本発明は、T
H17媒介性疾患の治療用の本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せを提供する。
【0224】
別の実施態様では、本発明は、T
H17媒介性疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの使用を提供する。
【0225】
したがって、ある実施態様では、本発明は、本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H22細胞によって媒介される疾患の治療方法を提供する。
【0226】
別の実施態様では、本発明は、T
H22細胞によって媒介される疾患の治療用の本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せを提供する。
【0227】
別の実施態様では、本発明は、T
H22細胞によって媒介される疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの使用を提供する。
【0228】
したがって、ある実施態様では、本発明は、本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの治療有効量を患者に投与することを含む、T
H17とT
H1の両方によって媒介される疾患の治療方法を提供する。
【0229】
別の実施態様では、本発明は、T
H17とT
H1の両方によって媒介される疾患の治療用の本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せを提供する。
【0230】
別の実施態様では、本発明は、T
H17とT
H1の両方によって媒介される疾患の治療用の薬剤の製造のための本発明による抗IL-6及び抗IL-23抗体又はそれらの誘導体の組合せの使用を提供する。
【0231】
本発明はまた、その原因に対してT
H17成分とT
H22成分の両方を有する疾患の治療方法を提供する。さらに、本発明によって治療されるべき疾患の原因は、T
H17細胞、T
H22細胞、及びT
H1細胞の3つ全てが関係し得る。
【0232】
上記の実施態様の各々において、抗IL-23抗体又はその誘導体は、抗Il-23/IL-12抗体であってもよい。
【0233】
(投薬計画)
本発明の別の態様では、本発明(the present ionvention)による治療で使用するための二価の二重特異性コンストラクト、抗体、及び抗体組合せは、当技術分野で現在利用可能な治療と比べて同じ治療効果を達成しながらも、有利に低い用量で患者に投与することができる。この低用量は、本明細書に開示される抗体のより高い活性によって促進されることができ、かつ副作用の発生を低下させる可能性がある。
【0234】
或いは、より大きい活性が望ましい場合、本発明による治療で使用するための二価の二重特異性コンストラクト、抗体、及び抗体組合せは、当技術分野で現在利用可能な治療と比べて等しいか又はそれより高い用量で患者に投与することができる。そのようなより高い投薬量は、患者への二価の二重特異性コンストラクト、抗体、及び抗体組合せの投与の頻度の低下を促進することができる。
【0235】
ある実施態様では、本発明の二価の二重特異性コンストラクト、抗体、及び抗体組合せは、月1回、月2回、週1回、週2回、1日1回、1日2回投与することができる。
【0236】
(IL-6、IL-23、及びIL-23/IL-12抗体の親和性及び生物学的活性を決定するためのアッセイ)
(抗体親和性の決定)
抗体親和性は、当業者に周知の方法を用いて決定することができる。抗体が、それらを、本発明の二価の二重特異性抗体に含めるのに潜在的に適したものにする所望の親和性を有するかどうかを決定する目的のために、以下の詳細なアッセイ手順を提供するが、(例えば、異なるが、類似する装置、又は異なるブランドの一般試薬の使用において)方法論を少し変更しても、同じ決定がなされることが可能になることが理解されるであろう。
【0237】
平衡解離定数は、SensiQ Pioneer(ICx Nomadics, Stillwater, OK)、及びアミンカップリングに適したカルボキシル化COOH1センサー(同上)を用いて、表面プラズモン共鳴によって決定することができる。
【0238】
プロテインG(6510-10, Biovision, Mountain View, CA)は、アミンカップリング試薬(Sigma Aldrich(N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS, 56480)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-B'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC, E7750)、エタノールアミン(398136), St. Louis, MO)を用いるか、又はBiacoreアミンカップリングキット(BR-1000-50, GE Healthcare, Waukesha, WI)を用いて、COOH1センサーにカップリングされる。
【0239】
簡潔に述べると、カルボキシル化された表面を、2〜10分の範囲の接触時間の間、2mM EDC及び.5mM NHSで活性化する。20〜400ug/mLの範囲の可変濃度のプロテインGを、10mM酢酸バッファー、pH4.3(酢酸ナトリウム、BP334-1;氷酢酸、A490-212;Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)中に希釈し、5〜10分の範囲の可変接触時間の間、5〜10μL/分の範囲の速度で、活性化されたセンサーの上に注入する。COOH1センサーチップに固定化されるプロテインGの量は、400〜2000応答単位(RU)の範囲である。残りの活性化された部位は、25μL/分の流速で100μLのエタノールアミンでキャッピングするべきである。
【0240】
ウサギヒトキメラmAbの平衡定数は、タンパク質GがコーティングされたチップへのmAbの結合と、その後の各分析物(IL-6又はIL-23)のそのそれぞれのmAbへの結合によって決定することができる。物質移動効果を最小限に抑えるために、分析物の結合が飽和に達したときに、その対応するRUが200〜300低下するように、各分析物に対するmAbの表面密度を調整するべきである。1〜100nMの範囲の3x-FLAG-IL-6(実施例1参照)、IL-6(CYT-213, Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)、又はヒト二量体IL-23(34-8239, eBiosciences, San Diego, CA)の希釈物をチップ表面の上に注入し、会合速度定数(Ka)及び解離速度定数(Kd)を測定する。各々の結合及び解離サイクルのために、チップ表面を15uLの20mM NaOH(5671-02, Mallinckrodt Baker, Philliphsburg, NJ)で再生するべきである。アッセイ温度を25℃で維持し、分析物の流速を50μL/分とし、2分の会合段階及び10〜30分の解離段階を含めるべきである。結合/解離(on/off)速度(ka/kd)及び解離定数(KD)は、上記のフォーマットを擬一次1:1相互作用モデルソフトウェア(Qdat, ICx Nomadics, Stillwater, OK)とともに用いて決定することができる。
【0241】
scFvの平衡定数は先に記載した通りに決定することができる;但し、エピトープタグ化IL-6がチップ表面に捕捉され、IL-6からの抗IL-6 scFvの解離がモニタリングされるように、プロトコルを修正するべきである。簡潔に述べると、抗FLAG(登録商標)M2抗体(200472, Agilent Technologies, Santa Clara, CA)をプロテインGに結合させ、その後、3xFLAG-IL-6を抗FLAG抗体によって捕捉する。抗IL-6 scFvは、1〜100nMの濃度範囲にわたってアッセイするべきである。
【0242】
(二重特異性scFvのSPR)
二重特異性scFvのSPRを、抗IL-6部分の測定について先に記載した通りに実施する;但し、二重特異性体の他方の末端での、付着した抗IL-23 scFv、31A12の結合反応速度も決定するために、プロトコルを修正する。簡潔に述べると、二重特異性体によるIL-23結合を、記載したようなIL-6を用いて、該二重特異性体を一定密度(〜240RU)で固定化することによって実施した。組換えヒト二量体IL-23(34-8239, eBiosciences, San Diego, CA)の結合及び解離は、上で詳述したのと同じパラメータを用いて、3〜25nMの範囲の濃度でアッセイすることができる。
【0243】
(IL-6活性の決定)
IL-6活性を調節する抗体及びその誘導体の能力は、当業者に周知の方法を用いてアッセイすることができる。抗体が、それらを、本発明の二価の二重特異性抗体に含めるのに潜在的に適したものにする所望のIL-6活性調節能力を有するかどうかを決定する目的のために、以下の詳細なアッセイ手順を提供するが、(例えば、異なるが、類似する装置、又は異なるブランドの一般試薬の使用において)方法論を少し変更しても、同じ決定がなされることが可能になることが理解されるであろう。
【0244】
ELISAを用いて、IL-6結合を評価することができる。組換えIL-6(実施例1参照)を、100μlのPBS中、0.25μg/mlでELISAプレートに添加する。プレートは、37℃で1時間、又は4℃で一晩インキュベートするべきである。ブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100μl/ウェルのPBSを各ウェルに添加するべきである。その後、プレートを室温で1時間インキュベートするべきである。その後、プレートを脱イオン水で5回すすぐべきである。各ウェルに、50μlのPBS/10%ヤギ血清を添加する。その後、試験試料を50μl/ウェルで添加する。その後、プレートを室温で1時間インキュベートするべきである。その後、プレートを脱イオン水で5回すすぐべきである。各ウェルに、PBS/10%ヤギ血清中で1:5000希釈した100μlのペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(カタログ#111-035-008, Jackson Immuno Research)を添加する。その後、プレートを室温で1時間インキュベートし、その後、プレートを脱イオン水で5回洗浄するべきである。TMB基質(Thermo Scientific, Rockford, IL., USA)を100μl/ウェルで添加する。その後、反応を100μlの1N H2SO4(JT Baker, Phillipsburg, NJ, USA)で停止させるべきである。その後、Molecular Devices製のM2プレートリーダーを用いて、吸光度を450nmで測定することができる。
【0245】
IL-6依存的マウスB細胞ハイブリドーマ細胞株(B9細胞株;Aardenらの文献(1987))を用いるバイオアッセイを用いて、IL-6阻害を評価することができる(
図3)。中和活性について試験するべき試料を、96ウェル組織培養プレート中で、100μlのアッセイ培地(L-グルタミン、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノールを含むRPMI 1640)に希釈するべきである。これに続いて、50μlのIL-6(カタログ# CYT-274 Prospec-Tany Technogene)含有アッセイ培地を添加し、室温で30分間インキュベートする。その後、B9細胞をフラスコから回収し、180×gで7分間遠心分離し、ペレットをIL-6不含培養培地(L-グルタミン、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノールを含むRPMI 1640)に再懸濁する。細胞を3回遠心分離及び再懸濁して、IL-6を除去するべきである。トリパンブルー排除によって生存率を決定した後、細胞を
1×105細胞/mlに調整するべきである。5×10
3細胞に相当する、50μlの容量のB9細胞を、IL-6不含培地を含む適切な対照ウェルとともに、各ウェルに添加するべきである。
【0246】
その後、プレートを、37℃、5%CO2で、48時間インキュベートするべきである。その後、20μlのAlamar Blue(カタログ# DAL1100, Invitrogen, USA)を各ウェルに添加し、プレートをさらに18時間インキュベートするべきである。その後、プレートを、570nm及び600nmで、Molecular Devices(Sunnyvale, CA, USA)製のM2プレートリーダー上で読み取ることができる。
【0247】
(IL-23活性の決定)
ELISAアッセイを用いて、IL-23結合を評価することができる(Aggarwalらの文献(2003))。ELISAプレートは、IL-23直接結合法又はIL-23間接結合法のどちらかを用いて、コーティングすることができる。
【0248】
間接結合法のために、抗His抗体(カタログ# A00613, GenScript社, New Jersey, USA)を、100ml/ウェルのPBS中、0.01〜0.02ug/mlでプレートに添加するべきである。その後、プレートを37℃で1時間又は4℃で一晩インキュベートするべきである。非特異的結合をブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100ml/ウェルのPBSを各ウェルに添加するべきであり、その後、プレートを脱イオン水で5回すすぐべきである。100ml/ウェルのPBS/10%ヤギ血清中の0.5mg/mlのIL-23 p40-p19-His(配列番号4)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートするべきである。
【0249】
直接結合法のために、IL-23 p40-p19-His(配列番号4)を、100mlのPBS中、0.5mg/mlでELISAプレートに添加するべきである。その後、プレートを37℃で1時間又は4℃で一晩インキュベートするべきである。非特異的結合をブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100ml/ウェルのPBSを各ウェルに添加するべきである。その後、プレートを室温で1時間インキュベートするべきである。
【0250】
IL-23結合後、プレートを脱イオン水で5回すすぐべきである。各ウェルに、50mlのPBS/10%ヤギ血清を添加するべきである。その後、試験試料を50ml/ウェルで添加するべきである。その後、プレートを室温で1時間インキュベートし、脱イオン水で5回すすぐべきである。その後、各ウェルに、PBS/10%ヤギ血清中で1:5000に希釈した100mlのペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(カタログ#111-035-008, Jackson Immuno Research)を添加するべきである。その後、プレートを室温で1時間インキュベートし、その後、プレートを脱イオン水で5回洗浄するべきである。TMB基質(Thermo Scientific, Rockford, IL., USA)を100ml/ウェルで添加するべきである。その後、反応を100mlの1N H2SO4(JT Baker, Phillipsburg, NJ, USA)で停止させるべきである。その後、Molecular Devices製のM2プレートリーダーを用いて、吸光度を450nmで測定することができる。
【0251】
マウス脾臓細胞によるIL-23誘導性IL-17発現の検出に基づくバイオアッセイを用いて、IL-23受容体に対するIL-23結合の抗体媒介性阻害、及び結果として生じる生体活性を検出することができる。
【0252】
5×10
5個のC57Bl/6脾臓細胞を、ヘテロ二量体IL-23(eBioscience カタログ#14-8239又はHumanzyme, Chicago, USA カタログ#HZ-1049)の希釈物を含む200ml中で、96ウェルプレートのウェル中で培養し、プレートを37℃で2〜3日間インキュベートするべきである。使用される培養培地は、RPMI 1640、10%FBS、50uM 2-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、ピルピン酸塩、ゲンタマイシン、及び10ng/mlヒトIL-2(カタログ# CYT-209, Prospec-Tany Technogene)であるべきである。3日後、培養上清を、下記のように、IL-17AについてELISAでアッセイするべきである。
【0253】
ELISAアッセイを用いて、マウスIL-17を検出することができる。プレートを、100mlのPBS中1mg/mlの抗mIL-17A(eBioscience #14-7178)でコーティングし、4℃で一晩又は37℃で1時間インキュベートする。プレートを脱イオン水中で洗浄し、100mlのPBS、10%ヤギ血清で1時間ブロッキングするべきである。プレートを洗浄した後、50mlのPBS/10%ヤギ血清及び50mlの培養上清をプレートに添加し、1時間インキュベートするべきである。その後、プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中0.5mg/mlで100ml/ウェルの抗mIL-17A-ビオチン(eBioscience #13-7179)を添加し、プレートを室温で1時間インキュベートするべきである。その後、プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中1:1000で100ml/ウェルのストレプトアビジン-HRP(Jackson Labs)と反応させるべきである。プレートを再洗浄し、100ml/ウェルのTMB基質(Thermo Scientific, IL, USA)を添加することによって、シグナルを検出するべきである。100ml/ウェルの1N H2SO4で反応を停止させた後、光学密度を450nMで読み取ることができる。
【0254】
(IL-12(p40)活性の決定)
さらに、IL-23のp40サブユニットも、T
H1シグナル伝達経路に関与するIL-12の一部を形成することを考慮して、IL-12に対するその中和能力を測定するアッセイが、IFN-γ(T
H1細胞活性の生成物)のレベルを調節するその能力を利用することが本明細書に開示されている。当業者であれば、抗体の中和効果、及びIFN-γ産生に対するその効果を決定するための好適なアッセイ法を認識しているであろうが、以下のアッセイを好適なアッセイの一例として提供する。
【0255】
抗体は、IL-12応答性細胞株NK-92(CRL-2407, ATCC, Manassas, Virginia, USA)を用いて、p40中和能力についてアッセイすることができる。B細胞クローニングプレートからの50mlの培養上清、又は抗体トランスフェクションからの50mlの上清を96ウェル組織培養プレートに移すべきである。50mlのヒトIL-12(カタログ# Cyt-362, Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)を各ウェルに4ng/mlで添加するべきである。その後、プレートを室温で30〜60分間インキュベートするべきであり、その後、5×10
4個のNK-92細胞を100ml中で各ウェルに添加するべきである。その後、培養物を37℃で3日間インキュベートし、その上清をヒトインターフェロン-γ産生についてアッセイするべきである。アッセイ培地は、RPMI 1640、10%FBS、NEAA、ピルピン酸塩、50mM 2-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及び10ng/mlヒトIL-2(カタログ# Z00368, GeneScript社, Piscataway, NJ, USA)であるべきである。
【0256】
ELISAアッセイを用いて、ヒトインターフェロン-γを検出することができる。プレートを、100mlのPBS中1mg/mlの抗ヒトインターフェロン-g(カタログ# Mab 1-D1K, Mabtech, Cincinnati, OH, USA)で、4℃で一晩又は37℃で1時間コーティングする。その後、プレートを脱イオン水中で洗浄し、100μlのPBS、10%ヤギ血清で1時間ブロッキングするべきである。プレートを洗浄した後、50mlのPBS/10%ヤギ血清及び50mlの培養上清をプレートに添加し、1時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中0.5mg/mlで100ml/ウェルの抗ヒトインターフェロン-γ-ビオチン(カタログ# Mab 7b6-1-ビオチン, Mabtech)を添加し、その後、プレートを室温で1時間インキュベートした。その後、プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中1:1000で100ml/ウェルのストレプトアビジン-HRP(Jackson Labs)と反応させるべきである。その後、プレートを再洗浄し、100ml/ウェルのTMB基質(Thermo Scientific, IL, USA)を添加することによって、シグナルを検出するべきである。100ml/ウェルの1N H2SO4で反応を停止させた後、光学密度を450nMで読み取ることができる。
【0257】
(霊長類インターロイキン(IL-6、IL-23、及びIL-12)に対する反応性)
霊長類インターロイキンに対するアッセイは、霊長類バージョンのサイトカインの使用がアッセイされることを除いて、ヒトアッセイに対する活性の測定用のものと同一である。
【0258】
ヒト治療用の任意のサイトカインアンタゴニストの開発の成功は、初期の毒性試験を必要とする。毒性は、非ヒト種において最も効率的に証明される。初期の毒性研究を容易にするために、本発明の抗体を、研究が検討されている種に由来するIL-6を中和するその能力についてスクリーニングすることができる。
【0259】
(定義)
以下の用語は、特に示さない限り、以下の意味を有することが理解されるものとする:
【0260】
「免疫グロブリン」は四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成されており、各々の対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100〜110個又はそれより多くのアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を規定する。ヒト軽鎖は、
κ軽鎖及びλ軽鎖と分類される。重鎖は、又はEと分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと規定する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12個又はそれより多くのアミノ酸の「J」領域によって接続され、重鎖は、約10個又はそれより多くのアミノ酸の「D」領域も含む。一般には、基礎免疫学(Fundamental Immunology)第7章(Paul, W.編, 第2版 Raven Press, N. Y.(1989))(全ての目的のためにその全体が引用により組み込まれる)を参照されたい。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。
【0261】
免疫グロブリン鎖は、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)が、相補性決定領域又はCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって接続されているという同じ一般構造を示す。各々の対の2つの鎖に由来するCDRは、フレームワーク領域に並置されており、特異的エピトープへの結合を可能にしている。N-末端からC-末端に向かって、軽鎖と重鎖は両方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインに対するアミノ酸の割当ては、Kabatの文献(免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest))(National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1987及び1991))、又はChothia及びLeskの文献(J. Mol. Biol. 196: 901-917(1987)); Chothiaらの文献(Nature 342: 878-883(1989))の定義に従う。
【0262】
「抗体」は、無傷の免疫グロブリン、又は特異的結合を無傷の抗体と競合するその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組換えDNA技術によるか、又は無傷の抗体の酵素的若しくは化学的切断によって生成させることができる。抗原結合部分としては、特に、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、dAb、及び相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、ダイアボディ、並びにポリペプチドに特異的抗原結合を付与するのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが挙げられる。Fab断片は、VL、VH、CL、及びCH Iドメインからなる一価断片であり;F(ab')2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であり;Fd断片は、VHドメイン及びCH 1ドメインからなり;Fv断片は、抗体の単一のアームのVLドメイン及びVHドメインからなり;かつdAb断片(Wardらの文献(Nature 341: 544-546,1989))は、VHドメインからなる。単鎖抗体(scFv)は、VL領域及びVH領域が対合し、それらを単一のタンパク質鎖として生成させることを可能にする合成リンカーを介して一価分子を形成する抗体である(Birdらの文献(Science 242: 423-426,1988)、及びHustonらの文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883,1988))。
【0263】
抗体は、1以上の結合部位を有することができる。2以上の結合部位がある場合、結合部位は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、2つの同一の結合部位を有し、単鎖抗体又はFab断片は、1つの結合部位を有し、一方、「二重特異性」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合又はFab'断片の連結を含む、種々の方法によって産生することができる。例えば、Songsivilai及びLachmannの文献(Clin. Exp. Immunol. 79: 315-321(1990))、Kostelnyらの文献(J. Immunol. 148: 1547-1553(1992))を参照されたい。
【0264】
「単離された抗体」は、(1)その天然状態でそれに付随する、他の天然に関連する抗体を含む、天然に関連する成分と関連していないか、(2)同じ種由来の他のタンパク質を含まないか、(3)異なる種由来の細胞によって発現されるか、又は(4)天然では生じない、抗体である。単離された抗体の例としては、IL-6を用いて親和性精製された抗IL-6抗体、ハイブリドーマ又は他の細胞株によってインビトロで合成された抗IL-6抗体、及びトランスジェニックマウスに由来するヒト抗IL-6抗体が挙げられる。
【0265】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1以上の可変領域及び/又は定常領域を有する全ての抗体を含む。これらの抗体は、種々の方法で調製することができ、一例として、2つが以下に記載されている。
【0266】
ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する抗体であり、該抗体では、重鎖及び軽鎖のフレームワーク及び定常ドメイン中の特定のアミノ酸は、ヒトでの免疫応答を回避又は無効にするように突然変異させられている。
【0267】
或いは、ヒト化抗体は、ヒト抗体由来の定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインと融合することによって産生することができる。ヒト化抗体の作製方法の例は、米国特許第6,054,297号、第5,886,152号、及び第5,877,293号に見出すことができる。
【0268】
「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体由来の1以上の領域、及び1以上の他の抗体由来の1以上の領域を含む抗体を指す。
【0269】
「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての解離速度(off rate)定数を指す。
【0270】
「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指す。
【0271】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン又はT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性のある表面分子集団からなり、通常、特定の3次元構造特性、及び特定の電荷特性を有する。解離定数が、好ましくは10nM未満、最も好ましくは0nMであるとき、抗体は、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0272】
抗体又は免疫グロブリン分子の断片又は類似体は、本明細書の教示に従って、当業者によって容易に調製され得る。
【0273】
断片又は類似体の好ましいアミノ末端及びカルボキシ末端は、機能ドメインの境界付近で生じる。構造ドメイン及び機能ドメインは、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データと公的な又は専用の配列データベースとの比較によって同定することができる。
【0274】
「IL-12」は、ジスルフィド結合で連結された、2つのサブユニットp35及びp40からなるヘテロ二量体である。主にミエロイド系統の抗原提示細胞はIL-12を発現し、IL-12は、T細胞又はナチュラルキラー細胞の表面に発現される受容体複合体との結合によって細胞性免疫に関与する。IL-12のp40サブユニットがIL-12受容体ベータ1(IL-12Rβ1)受容体に結合し、p35サブユニットが第二の受容体鎖(IL-12Rβ2)に結合して、細胞内シグナル伝達を生じさせると考えられている。
【0275】
「IL-23」は、p19タンパク質と共有結合した、IL-12の同じp40タンパク質サブユニットからなるヘテロ二量体である。IL-23は、IL-12Rと関連する受容体に結合し、IL-12Rは、IL-12Rβ1鎖を共有し、かつ固有のIL-23R鎖も有する。
【0276】
「IL-6」は、造血、炎症、及び腫瘍形成を含む、免疫調節における様々な生物学的活性を有する多面的サイトカインである。IL-6は、IL-6受容体(IL-6R)及びシグナル伝達受容体サブユニットgp130からなる受容体複合体を活性化する。IL-6Rは、膜貫通形態と可溶性形態の両方で存在する。IL-6は、これらの形態の両方に結合し、これはその後、gp130と相互作用して、下流のシグナル伝達及び遺伝子発現を誘発することができる。
【0277】
「T
H1細胞」は、哺乳動物免疫応答に関与するT調節性細胞(Tヘルパー細胞としても知られる)である。それらは、IFN-γの産生を特徴とする。
【0278】
「T
H17細胞」は、哺乳動物免疫応答に関与するT調節性細胞(Tヘルパー細胞としても知られる)である。それらは、IL-17の産生を特徴とする。
【0279】
「T
H17媒介性疾患」は、T
H17細胞が、該疾患の病因において役割を果たす疾患である。
【0280】
「T
H22細胞」は、哺乳動物免疫応答に関与するT調節性細胞(Tヘルパー細胞としても知られる)である。それらは、IL-22の産生を特徴とする。
【0281】
「T
H22媒介性疾患」は、T
H22細胞が、該疾患の病因において役割を果たす疾患である。
【0282】
好ましくは、コンピュータによる比較方法を用いて、既知の構造及び/又は機能の他のタンパク質に生じる配列モチーフ又は予測されるタンパク質立体構造ドメインを同定する。既知の3次元構造にフォールディングされるタンパク質配列を同定するための方法が公知である。Bowieらの文献(Science 253: 164(1991))を参照されたい。
【0283】
好ましいアミノ酸置換は:(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成する結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、かつ(4)そのような類似体の他の物理化学的又は機能的特性を付与又は修飾する置換である。類似体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々なムテインを含むことができる。例えば、単一又は多重アミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列中(好ましくは、分子間接触を形成するドメイン(複数可)の外側のポリペプチドの部分で行なうことができる。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造特性を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に生じるヘリックスを破壊するか、又は親配列を特徴付ける他のタイプの二次構造を破壊する傾向を有するべきではない)。当技術分野で認識されているポリペプチド二次構造及び三次構造の例は、タンパク質、構造、及び分子原理(Proteins, Structures and Molecular Principles)(Creighton編, W. H. Freeman and Company, New York(1984));タンパク質構造入門(Introduction to Protein Structure)(C. Branden及びJ. Tooze編, Garland Publishing, New York, N. Y.(1991));並びにThorntonらの文献(Nature 354: 105(1991))に記載されており、これらの文献は各々、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0284】
本明細書で使用されるように、20種の従来のアミノ酸及びそれらの略語は、従来の用法に従う。引用により本明細書中に組み込まれる、免疫学-合成(Immunology-A Synthesis)(第2版, E. S. Golub及びD. R. Gren編, Sinauer Associates, Sunderland, Mass.(1991))を参照されたい。20種の従来のアミノ酸の位置異性体(例えば、D-アミノ酸)、非天然アミノ酸、例えば、
α-,α-ジ置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、及び他の非従来的なアミノ酸も、本発明のポリペプチドの好適な構成要素であることができる。非従来的なアミノ酸の例としては:4-ヒドロキシプロリン、-カルボキシグルタメート、s-N、N、N-トリメチルリジン、s-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、s-N-メチルアルギニン、及び他の同様のアミノ酸及びイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書で使用されるポリペプチド表記法では、標準的な用法及び慣習に従って、左手方向がアミノ末端方向であり、右手方向がカルボキシ末端方向である。
【0285】
本明細書で言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのどちらかの、長さが少なくとも10塩基のヌクレオチドのポリマー形態、又はどちらかのタイプのヌクレオチドの修飾形態を意味する。本用語は、DNAの一本鎖形態及び二本鎖形態を含む。
【0286】
本明細書で使用される「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム起源、cDNA起源、若しくは合成起源、又はそれらのいくつかの組合せのポリヌクレオチドを意味するものとし、その起源によって、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然において見出されるポリヌクレオチドの全て若しくは一部と関連していないか、(2)天然において連結されていないポリヌクレオチドと機能的に連結されているか、又は(3)より大きな配列の一部として天然に存在していない。
【0287】
本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在するオリゴヌクレオチド連結、及び天然に存在しないオリゴヌクレオチド連結によって一緒に連結された、天然に存在するヌクレオチド、及び修飾ヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、通常、200塩基以下の長さを含むポリヌクレオチドサブセットである。好ましくは、オリゴヌクレオチドは、長さが10〜60塩基であり、最も好ましくは、長さが12、13、14、15、16、17、18、19、又は20〜40塩基である。オリゴヌクレオチドは、通常、例えば、プローブの場合、一本鎖であるが;オリゴヌクレオチドは、例えば、遺伝子突然変異体の構築に使用する場合、二本鎖であり得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、センスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドのどちらかであることができる。
【0288】
本明細書で言及される「天然に存在するヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾又は置換された糖基などを有するヌクレオチドを含む。本明細書で言及される「オリゴヌクレオチド連結」という用語は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホロアミデートなどのオリゴヌクレオチド連結を含む。例えば、LaPlancheらの文献(Nucl. Acids Res. 14: 9081(1986));Stecらの文献(J. Am. Chem. Soc. 106: 6077(1984));Steinらの文献(Nucl. Acids Res. 16: 3209(1988)); Zonらの文献(Anti-Cancer Drug Design 6: 539(1991));Zonらの文献(オリゴヌクレオチド及び類似体:実践的手法(Oligonucleotides and Analogues : A Practical Approach), pp. 87-108(F. Eckstein編, Oxford University Press, Oxford England(1991));Stecらの文献(米国特許第5,151,510号);Uhlmann及びPeymanの文献(Chemical Reviews 90: 543(1990))を参照されたく、これらの開示は、引用により本明細書に組み込まれる。オリゴヌクレオチドは、所望の場合には、検出用の標識を含むことができる。
【0289】
特に明示しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5'末端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5'方向と呼ばれる。新生RNA転写物の5'から3'への付加の方向は転写方向と呼ばれ;RNAと同じ配列を有し、かつRNA転写物の5'末端に対して5'側であるDNA鎖上の配列領域は、「上流配列」と呼ばれ;RNAと同じ配列を有し、かつRNA転写物の3'末端に対して3'側であるDNA鎖上の配列領域は、「下流配列」と呼ばれる。
【0290】
「機能的に連結された」配列には、関心対象の遺伝子に隣接している発現制御配列と、トランス位置又は少し離れたところで作用して関心対象の遺伝子を制御する発現制御配列の両方が含まれる。本明細書で使用される「発現制御配列」という用語は、それらが連結されているコード配列の発現及びプロセッシングをもたらすのに必要であるポリヌクレオチド配列を指す。発現制御配列としては、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、及びエンハンサー配列;効率的なRNAプロセッシングシグナル、例えば、スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナル;細胞質内mRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;並びに所望の場合には、タンパク質分泌を増強する配列が挙げられる。そのような制御配列の性質は、宿主生物によって異なり;原核生物では、そのような制御配列は、通常、プロモーター、リボソーム結合部位、及び転写終結配列を含み;真核生物では、通常、そのような制御配列は、プロモーター及び転写終結配列を含む。「制御配列」という用語は、最低でも、その存在が発現及びプロセッシングに不可欠である全ての構成要素を含むことが意図され、かつその存在が有利である追加の構成要素、例えば、リーダー配列及び融合パートナー配列を含むこともできる。
【0291】
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、その中に追加のDNAセグメントを連結することができる、環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターは、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中に連結することができるウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入される宿主細胞内で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されたときに宿主細胞のゲノム中に組み込まれることができ、それにより、宿主ゲノムと一緒に複製される。
【0292】
さらに、ある種のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。プラスミドは、ベクターの形態で最もよく使用されるので、本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、互換的に使用されることができる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすような他の形態の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含むことが意図される。
【0293】
本明細書で使用される「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入されている細胞を指すことが意図される。そのような用語は、特定の対象細胞だけではなく、そのような細胞の子孫も指すことが意図されることを理解するべきである。突然変異又は環境の影響のどちらかが原因で、後続の世代においてある種の修飾が生じる場合があるので、そのような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでもなお、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0294】
本明細書で言及される「選択的にハイブリダイズする」という用語は、検出可能にかつ特異的に結合することを意味する。本発明によるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、及びそれらの断片は、非特異的な核酸への検出可能な結合の感知可能な量を最小化するハイブリダイゼーション及び洗浄条件下で、核酸鎖に選択的にハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー」又は「高度にストリンジェントな」条件を用いて、当技術分野で公知であり、かつ本明細書で考察されている、選択的ハイブリダイゼーション条件を達成することができる。「高ストリンジェンシー」又は「高度にストリンジェントな」条件の一例は、あるポリヌクレオチドを別のポリヌクレオチドとともに(この場合、一方のポリヌクレオチドをメンブレンなどの固体表面に貼り付けてもよい)、6×SSPE又はSSC、50%ホルムアミド、5×デンハルト試薬、0.5%SDS、100p,g/mlの変性させ、断片化したサケ精子DNAのハイブリダイゼーションバッファー中、42℃のハイブリダイゼーション温度で12〜16時間、インキュベートし、次いで、1×SSC、0.5%SDSの洗浄バッファーを用いて、55℃で2回洗浄する方法である。Sambrookらの文献(上記、pp. 9.50-9.55)も参照されたい。
【0295】
2つのアミノ酸配列は、それらの配列間に部分的な又は完全な同一性がある場合、相同である。例えば、85%相同性は、2つの配列を最大限一致するように整列させたときに、アミノ酸の85%が同一であることを意味する。(一致させている2つの配列のうちのどちらかにおける)ギャップは、一致を最大化する際に容認され;5以下のギャップ長が好ましく、2以下がより好ましい。或いは、及び好ましくは、2つのタンパク質配列(又はそれらに由来する長さが少なくとも30アミノ酸のポリペプチド配列)は、それらが、突然変異データマトリクス及び6以上のギャップペナルティを用いるプログラムALIGNを用いて、5(標準偏差単位)を上回るアラインメントスコアを有する場合、この用語が本明細書で使用されるように、相同である。Dayhoff, M. O.の文献、タンパク質配列及び構造のアトラス(Atlas of Protein Sequence and Structure), pp. 101-110(第5巻, National Biomedical Research Foundation(1972))、及びこの巻の補遺2, pp. 1-10を参照されたい。2つの配列又はそれらの部分は、より好ましくは、それらのアミノ酸が、ALIGNプログラムを用いて最適に整列されたときに、50%以上同一である場合、相同である。
【0296】
「に対応する」という用語は、ポリヌクレオチド配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全て若しくは一部と同一であること、又はポリペプチド配列が参照ポリペプチド配列と同一であることを意味するために本明細書で使用される。対照的に、「に相補的な」という用語は、相補的配列が、参照ポリヌクレオチド配列の全て又は一部と同一であることを意味するために本明細書で使用される。説明のために、ヌクレオチド配列「TATAC」は、参照配列「TATAC」に対応するものであり、かつ参照配列「GTATA」に相補的なものである。
【0297】
以下の用語は、2以上のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間の配列関係性を説明するために使用される:「参照配列」、「比較ウィンドウ」、「配列同一性」、「配列同一性のパーセンテージ」、及び「実質的な同一性」。「参照配列」は、配列比較のための基準として用いられる規定の配列であり;参照配列は、例えば、配列表に示された全長cDNA若しくは遺伝子配列のセグメントとしての、より大きい配列のサブセットであってもよく、又は完全なcDNA若しくは遺伝子配列を含んでいてもよい。通常、参照配列は、長さが少なくとも18ヌクレオチド又は6アミノ酸であり、長さが少なくとも24ヌクレオチド又は8アミノ酸であることが多く、また、長さが少なくとも48ヌクレオチド又は16アミノ酸であることが多い。2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列は、各々、(1)2つの分子間で類似している配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の一部)を含むことができ、かつ(2)2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間で相違する配列をさらに含むことができるので、2つ(又はそれより多く)の分子間の配列比較は、通常、2つの分子の配列を「比較ウィンドウ」上で比較し、配列が類似する局所領域を同定し、かつそれらを比較することによって行なわれる。本明細書で使用される「比較ウィンドウ」は、少なくとも18個の連続するヌクレオチドの位置又は6アミノ酸の概念的セグメントを指し、ここで、ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、少なくとも18個の連続するヌクレオチド又は6アミノ酸配列の参照配列と比較することができ、また、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントのために、(付加も欠失も含まない)参照配列と比較して20%以下の付加、欠失、置換、及び同様のもの(すなわち、ギャップ)を含むことができる。比較ウィンドウを整列させるための最適な配列アラインメントは、Smith及びWatermanの文献(Adv. Appl. Math. 2: 482(1981))の局所相同性アルゴリズムによるか、Needleman及びWunschの文献(J. Mol. Biol. 48: 443(1970))の相同性アラインメントアルゴリズムによるか、Pearson及びLipmanの文献(Proc. Natl. Acad. Sci.(U. S. A.)85: 2444(1988))の類似性検索方法によるか、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA(Genetics Computer Group, 575 Science Dr. , Madison, Wis.)、Geneworks、若しくはMacVectorソフトウェアパッケージ)によるか、又は検査によって行なうことができ、様々な方法によって生成される最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウ上で最も高いパーセンテージの相同性を生じさせるもの)が選択される。
【0298】
「配列同一性」という用語は、比較ウィンドウ上で2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸の配列が同一であること(すなわち、ヌクレオチドベース又は残基ベースで)を意味する。「配列同一性のパーセンテージ」という用語は、比較ウィンドウ上で2つの最適に整列された配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、若しくはI)又は残基が両方の配列中で生じる位置の数を決定して、一致した位置の数を得、この一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で除し、その結果に100を乗じることによって、配列同一性のパーセンテージを得ることにより算出される。本明細書で使用される「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチド又はアミノ酸配列の特徴を示し、ここで、該ポリヌクレオチド又はアミノ酸は、少なくとも18ヌクレオチド(6アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で、多くの場合、少なくとも24〜48ヌクレオチド(8〜16アミノ酸)の位置の比較ウィンドウ上で参照配列と比較したときに、少なくとも90〜95%の配列同一性、より好ましくな少なくとも98%の配列同一性、より一般的には少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含み、ここで、この配列同一性のパーセンテージは、参照配列と、比較ウィンドウ上で参照配列の合計20%以下である欠失又は付加を含み得る配列とを比較することによって算出される。参照配列は、より大きい配列のサブセットであってもよい。
【0299】
ポリペプチドに対して適用される場合、「実質的な同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、デフォルトのギャップウェイトを用いるGAPプログラム又はBESTFITプログラムなどによって最適に整列されたときに、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性、最も好ましくは99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0300】
好ましくは、同一ではない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリン及びトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;かつ硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換のグループは:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタメート-アスパルテート、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0301】
本明細書で論じられているように、抗体又は免疫グロブリン分子のアミノ酸配列のわずかな変動は、該アミノ酸配列の変動が、少なくとも90%、より好ましくは95%、最も好ましくは99%の配列同一性を維持する場合、本発明によって包含されることが企図される。特に、保存的なアミノ酸置換が企図される。保存的置換は、その側鎖が関連しているアミノ酸のファミリー内で生じるものである。遺伝子にコードされるアミノ酸は、通常、以下のファミリーに分類される:(1)酸性=アスパルテート、グルタメート;(2)塩基性=リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。より好ましいファミリーは、以下のものである:セリン及びトレオニンは、脂肪族ヒドロキシファミリーであり;アスパラギン及びグルタミンは、アミド含有ファミリーであり;アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンは、脂肪族ファミリーであり;かつフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、芳香族ファミリーである。例えば、ロイシンとイソロイシン又はバリンとの単独の置換、アスパルテートとグルタメートとの単独の置換、トレオニンとセリンとの単独の置換、又はあるアミノ酸と構造的に関連するアミノ酸との同様の置換が、特に、該置換がフレームワーク部位内のアミノ酸を含まない場合、得られる分子の結合又は特性に対してそれほど大きな影響を及ぼさないと考えるのは妥当である。アミノ酸変化が機能的ペプチドを生じさせるかどうかは、ポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。アッセイは、本明細書で詳細に記載されている。
【0302】
本明細書で使用されるように、「標識」又は「標識された」という用語は、抗体中への別の分子の組込みを意味する。一実施態様では、標識は、検出可能なマーカー、例えば、放射性標識アミノ酸の組込み、又はマークを付けたアビジン(例えば、光学的方法若しくは比色法によって検出することができる蛍光マーカー若しくは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの付着である。別の実施態様では、標識又はマーカーは、治療薬、例えば、薬物コンジュゲート又は毒素であることができる。ポリペプチド及び糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野で公知であり、かつ使用可能である。
【0303】
標識の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド燐光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、
β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光マーカー、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対の配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、磁性物質、例えば、ガドリニウムキレート、毒素、例えば、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン、及びそれらの類似体又は相同体。いくつかの実施態様では、標識を様々な長さのスペーサーアームによって付着させ、潜在的な立体障害を低下させる。
【0304】
「患者」という用語は、ヒト及び獣医学的対象を含む。
【0305】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変化形は、記載された整数又は整数の群の包含を意味するが、任意の他の整数又は整数の群の除外を意味しないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0306】
(本発明の実施例)
抗原結合ドメインは、過免疫化ウサギから、クローニングされた抗原特異的B細胞から作製される。抗原特異的B細胞は、抗原パニングによってウサギ血液から選択され、活性化B細胞の拡大に有利に働く培養条件下でクローニングされる。
【0307】
(実施例1:IL6及びIL23発現クローンの構築、並びに融合タンパク質の精製:)
ヒトIL-6(DQ891463;ABM82389.1、配列番号343及び344)を3xFLAG-IL6-Avi融合体として発現させた。発現コンストラクトを、2工程のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって作製した。生成物を、CMVプロモーターの下流で、プレ-プロ-トリプシンリーダー配列及び三連FLAGタグとインフレームにして、プラスミドp3xFLAG-CMV-23(Sigma)に挿入した。発現されたIL-6(配列番号1)は、アミノ末端三連FLAGタグ(アミノ酸配列dhdgdykdhdidykdddd;配列番号345)及びカルボキシル末端Aviタグ(glndifeaqkiewhe;配列番号346)(ALLO66-MM4-80)を含んでいた。IL6コード領域をPCRで増幅し、p3xFLAG-CMV-23に挿入して、3xFLAG-IL6及び3xFLAG-IL6-myc融合体(配列番号2)を発現させた。
【0308】
アカゲザルIL-6(mmIL-6;NM_001042733.1;NP_001036198;配列番号346及び配列番号347)のコード領域を、オリゴマーの重複及びPCR(DNA2.0)によって作製した。合成された配列は、アミノ末端シグナル配列(mnsfstsafgpvafslglllvlpaafpap;配列番号349)及びカルボキシル末端FLAGタグを含むmmIL-6をコードする。このコンストラクトを、CMVプロモーター(ALLO66-MM4-143)の下流で、哺乳動物発現ベクターpCEP4(Invitrogen)に挿入した(配列番号3)。
【0309】
ヒトIL-23サイトカインは、p19タンパク質(IL23A;アクセッション番号NT_029419)及びp40タンパク質(IL12B;NT 023133)の機能的ヘテロ二量体である。該IL-23二量体を、個々のタンパク質がエラスチンリンカー(アクセッション番号NM_001081755;配列番号351) アミノ酸配列VPGVGVPGVG 配列番号352をコードする、gttcctggagtaggggtacctggggtgggc)で隔てられたp40:p19融合体として発現させた。2工程のPCR増幅戦略を用いて、p40:p19遺伝子融合体を作製し、該ドメインの各々に6xHISタグも導入した。p40:p19-6xHIS(配列番号4)及びp40-6xHIS:p19をコードする得られたコンストラクトを哺乳動物発現プラスミドpCEP4(Invitrogen)に導入した。
【0310】
霊長類IL23ヘテロ二量体を、2つのタンパク質の間にエラスチンリンカーを有し、3' 6xHISタグを含むp40(NP_001038190;NM_001044725):p19(BV209310)融合体として発現させた。該コンストラクトをオリゴマーの重複及びPCRによって合成し、CMVプロモーターの下流で、プレ-プロ-トリプシンシグナル配列(ALLO87-MM-5-74)(配列番号5)とインフレームにして、p3xFLAG-CMV-13プラスミドにクローニングした。
【0311】
(哺乳動物発現及び標的タンパク質の精製:)
哺乳動物サイトカインの発現をHEK293又はHEK293c18細胞で実施した。トランスフェクションを、およそ200,000細胞/cm
2の密度でプレーティングされた細胞に対して3μl/μg DNAのlipofectamine 2000、又は293fectin(Invitrogen)を用いて、100万個の細胞当たり2〜2.5μgのDNAを用いて実施した。細胞を、10%胎仔ウシ血清を含むDMEM中で、37℃で3〜4日間インキュベートし、成長培地を標的タンパク質の精製のために回収した。精製のために、6xHISタグ化タンパク質、1/10量の10×結合バッファー(500mMリン酸バッファー pH7.5、3M NaCl、200mMイミダゾール、1%Tween-20)を培養培地に添加し、PBSに対して4℃で一晩透析した。Ni-NTAビーズを抽出物に4℃で2〜3時間添加し、回転混合した。ビーズを遠心分離によって回収し、Ni-NTA洗浄バッファー(50mMリン酸塩、300mM NaCl、20mMイミダゾール、0.1%Tween)中で洗浄した。Ni-NTAビーズに結合したタンパク質を溶出バッファー(50mMリン酸バッファー pH7.5、300mM NaCl、500mMイミダゾール)によって溶出させた。標的タンパク質を含む画分をSDS-PAGE及びクマシーブルー染色によって同定し、デンシトメトリーによって定量した。ピーク画分を合わせ、PBSに対して透析し、インビトロアッセイ又はSPR解析で直接用いた。
【0312】
FLAGタグ化タンパク質を、M2コンジュゲートビーズ(Invitrogen)を用いて、発現培地から精製した。手短に言えば、M2ビーズを発現培地に直接添加し、4℃で4〜16時間インキュベートした。該ビーズをFLAG洗浄バッファー(20mMトリス、pH7.4、150mM NaCl、0.1%Tween-20、1mMエチレンジアミン四酢酸)中で洗浄し、結合タンパク質を、0.1Mグリシン(pH2.5)で洗浄するか、又は3x FLAGペプチドを用いて回収した。酸溶出物を、1/20量の1Mトリス塩基を用いて、すぐに中和した。ピーク画分をSDS-PAGE及びクマシーブルー染色によって同定し、プールした。これらをPBSに対して透析し、インビトロアッセイ又はSPR解析に直接用いた。
【0313】
(実施例2 抗体親和性の決定)
平衡解離定数は、SensiQ Pioneer(ICx Nomadics, Stillwater, OK)、及びアミンカップリングに適したカルボキシル化COOH1センサー(同上)を用いて、表面プラズモン共鳴によって決定した。プロテインG(6510-10, Biovision, Mountain View, CA)を、アミンカップリング試薬(Sigma Aldrich(N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS, 56480)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)
-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC, E7750)、エタノールアミン(398136), St. Louis, MO)を用いるか、又はBiacoreアミンカップリングキット(BR-1000-50, GE Healthcare, Waukesha, WI)を用いて、COOH1センサーにカップリングさせた。
【0314】
簡潔に述べると、カルボキシル化された表面を、2〜10分の範囲の接触時間の間、2mM EDC及び.5mM NHSで活性化する。20〜400ug/mLの範囲の可変濃度のプロテインGを、10mM酢酸バッファー、pH4.3(酢酸ナトリウム、BP334-1;氷酢酸、A490-212; Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)中に希釈し、5〜10分の範囲の可変接触時間の間、5〜10μL/分の範囲の速度で、活性化されたセンサーの上に注入した。COOH1センサーチップに固定化されるプロテインGの量は、400〜2000応答単位(RU)の範囲である。残りの活性化された部位を、25μL/分の流速で100μLのエタノールアミンでキャッピングした。
【0315】
ウサギヒトキメラmAbの平衡定数を、タンパク質GがコーティングされたチップへのmAbの結合と、その後の各分析物(IL-6又はIL-23)のそのそれぞれのmAbへの結合によって決定した。物質移動効果を最小限に抑えるために、分析物の結合が飽和に達したときに、その対応するRUが200〜300低下するように、各分析物に対するmAbの表面密度を調整した。1〜100nMの範囲の3x-FLAG-IL-6(実施例1参照)、IL-6(CYT-213, Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)、又はヒト二量体IL-23(34-8239, eBiosciences, San Diego, CA)の希釈物をチップ表面の上に注入し、会合速度定数(K
a)及び解離速度定数(K
d)を測定した。各々の結合及び解離サイクルのために、チップ表面を15uLの20mM NaOH(5671-02, Mallinckrodt Baker, Philliphsburg, NJ)で再生した。アッセイ温度を25℃で維持し、分析物の流速を50μL/分とし、2分の会合段階及び10〜30分の解離段階を含めた。結合/解離(on/off)速度(k
a/k
d)及び解離定数(K
D)を、上記のフォーマットを擬一次1:1相互作用モデルソフトウェア(Qdat, ICx Nomadics, Stillwater, OK)とともに用いて決定した。
【0316】
scFvの平衡定数を先に記載した通りに決定した;しかしながら、エピトープタグ化IL-6がチップ表面に捕捉され、IL-6からの抗IL-6 scFvの解離がモニタリングされるように、プロトコルを修正した。簡潔に述べると、抗FLAG(登録商標)M2抗体(200472, Agilent Technologies, Santa Clara, CA)をプロテインGに結合させ、その後、3xFLAG-IL-6を抗FLAG抗体によって捕捉した。抗IL-6 scFvを、1〜100nMの濃度範囲にわたってアッセイした。
【0317】
二重特異性scFvのSPRを、抗IL-6部分の測定について先に記載した通りに実施した;しかしながら、抗IL-23 scFv、31A12の結合反応速度を決定するために、プロトコルの修正が必要であった。簡潔に述べると、二重特異性体によるIL-23結合を、記載したようなIL-6を用いて、該二重特異性体を一定密度(〜240RU)で固定化することによって実施した。組換えヒト二量体IL-23(34-8239, eBiosciences, San Diego, CA)の結合及び解離を、上で詳述したのと同じパラメータを用いて、3〜25nMの範囲の濃度でアッセイした。
【0318】
(実施例3:ウサギ抗ヒトIL-6モノクローナル抗体の作製)
(3.1 ウサギ免疫化:)
1匹のニュージーランドホワイトウサギを、Sigma Adjuvant System(Sigma S6322)中で、0、21、及び42日目に、100μgのIL-6タンパク質(組換え大腸菌由来ヒトIL-6、参照配列アクセッションNP000591.1、ProSpec-Tany TechnoGene社, Rehovot, Israel(カタログ# CYT-213i)から入手した)で免疫化した。採血の10日以上前に、ウサギに追加免疫した。ウサギを、NIH、USDA、及びIACUCガイドラインに従って、R & R Research Laboratories(Stanwood, WA, USA)で維持した。
【0319】
(3.2 B細胞クローニング:)
30mlの血液を静脈穿刺により各ウサギから回収した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度遠心分離(Lympholyte-rabbit, カタログ# CL5050, Cedarlane Laboratories社, Ontario, Canada)により調製した。
【0320】
ヒトIL-6に対する免疫ウサギ血清の中和活性を3回の免疫化の後にアッセイした。
【0321】
ヒトIL-6を、免疫ウサギ血清の1:3200希釈物を用いて又はそれを用いないで、1ng/mlから力価測定する。IL-6に特異的なB細胞を選択するために、6cmの組織培養ペトリ皿を以下のように、IL-6でコーティングした:Hisタグ化ヒトIL-6(カタログ# CYT-484, Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)を、抗His抗体がコーティングされたプレート上で捕捉した。PBS中2μg/mlの抗His抗体(カタログ# A00613, GeneScript社, New Jersey, USA)を、4℃で一晩、又は37℃で1時間、6cmのプラスチックペトリ皿中でインキュベートした。その後、抗体溶液を除去し、4mlのPBS+5%BSAを1時間添加した。PBS中2μg/mlの3mlのHis-IL-6を1時間インキュベートすることによって、IL-6を捕捉し、その後、PBSで4回洗浄した。PBMCを、5%BSAを含む2mlのPBSに懸濁し、抗原がコーティングされた皿に、4℃で40分間プレーティングした。その後、プレートをPBSで4〜8回洗浄し、軽く擦ることによって、接着細胞を除去した。これらの細胞を、完全培地(RPMI 1640、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸塩、50uM β-メルカプトエタノール)に、100〜500×10
3細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液を、5×10
5細胞/ウェルのマイトマイシン-c処理したEL4-B5細胞(Zublerらの文献(1985))、20ng/mlの組換えヒトIL-2(GenScript社, Piscataway, NJ, USA)、及びウサギ脾臓細胞からの5%馴化培地を含む100μlの完全培地に加えて、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。
【0322】
簡潔に述べると、EL4-B5細胞を、
1×107細胞/mlの密度で、50μg/mlマイトマイシン-c(カタログ# M0503, Sigma-Aldrich)を含むRPMIに40分間懸濁し、完全培地中で6回洗浄した。
【0323】
ウサギ馴化培地を以下のように調製した:ウサギ脾臓細胞を機械的に解離させ、70μmメッシュに通して濾過し、1×10
6細胞/mlで、完全培地(RPMI 1640、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸塩、50uMβ-メルカプトエタノール)に再懸濁した。細胞を、500ng/mlのイオノマイシンと、5μg/mlのコンカナバリンA(カタログ# C 5275, Sigma-Aldrich)又は40ng/mlのPMAのどちらかとで、CO2(5%)インキュベーター中、37℃で48時間刺激した。馴化培地を滅菌濾過し、後の実験のために-20℃で保存した。いくつかの実験については、マイトマイシン-c処理した(EL4-B5のように)正常ウサギ脾臓細胞を、クローニングプレートに1〜2×10
5細胞/ウェルで添加した。
【0324】
抗原選択された細胞を含むプレートを、37℃、5%CO2で7〜10日間インキュベートした。その後、培養上清を回収し、IL-6結合(ELISA)及びIL-6活性の阻害についてアッセイした。
【0325】
ELISAを用いて、IL-6結合を評価した。組換えIL-6(実施例1参照)を、100μlのPBS中、0.25μg/mlでELISAプレートに添加した。プレートを、37℃で1時間、又は4℃で一晩インキュベートした。ブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100μl/ウェルのPBSを各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを脱イオン水で5回すすいだ。各ウェルに、50μlのPBS/10%ヤギ血清を添加した。その後、試験試料を50μl/ウェルで添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを脱イオン水で5回すすいだ。各ウェルに、PBS/10%ヤギ血清中で1:5000希釈した100μlのペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(カタログ#111-035-008, Jackson Immuno Research)を添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後、プレートを脱イオン水で5回洗浄した。TMB基質(Thermo Scientific, Rockford, IL., USA)を100μl/ウェルで添加した。反応を100μlの1N H
2SO
4(JT Baker, Phillipsburg, NJ, USA)で停止させた。Molecular Devices製のM2プレートリーダーを用いて、吸光度を450nmで測定した。
【0326】
IL-6依存的マウスB細胞ハイブリドーマ細胞株(B9細胞株;Aardenらの文献(1987))を用いるバイオアッセイを用いて、大腸菌又はCHO細胞由来ヒトIL-6(Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)に応答するB9細胞増殖を測定することによって、IL-6阻害を評価した。中和活性について試験するべき試料を、96ウェル組織培養プレート中で、100μlのアッセイ培地(L-グルタミン、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノールを含むRPMI 1640)に希釈した。これに続いて、50μlのIL-6(カタログ# CYT-274 Prospec-Tany Technogene)含有アッセイ培地を添加し、室温で30分間インキュベートした。B9細胞をフラスコから回収し、180×gで7分間遠心分離し、ペレットをIL-6不含培養培地(L-グルタミン、10%FBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、50μM 2-メルカプトエタノールを含むRPMI 1640)に再懸濁した。細胞を3回遠心分離及び再懸濁して、IL-6を除去した。トリパンブルー排除によって生存率を決定した後、細胞を1×10
5細胞/mlに調整した。5×10
3細胞に相当する、50μlの容量のB9細胞を、IL-6不含培地を含む適切な対照ウェルとともに、各ウェルに添加した。
【0327】
プレートを、37℃、5%CO2で、48時間インキュベートした。その後、20μlのAlamar Blue(カタログ# DAL1100, Invitrogen, USA)を各ウェルに添加し、プレートをさらに18時間インキュベートした。プレートを、570nm及び600nmで、Molecular Devices(Sunnyvale, CA, USA)製のM2プレートリーダー上で読み取った。
【0328】
図1は、さらなる特徴付けに好適な抗体を産生する細胞を選択するために実施された例示的実験を示しており:各々の上清は、IL-6結合(下のパネル)とIL-6中和(上のパネル)の両方について試験された。さらなる特徴付けに好適な上清は、両方のアッセイで陽性であった(矢印及び星印)。
【0329】
(3.3 ウサギB細胞からのV-領域レスキュー)
V-領域レスキューのプロセスを
図2にまとめる。
【0330】
簡潔に述べると、IL-6中和試験とIL-6結合試験の両方について陽性の上清由来のIgG可変重鎖及び軽鎖を、逆転写酵素連動型ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いる増幅によって取得した。このようにして得られたVH及びVL cDNAをクローニングし、最終的なcDNAコンストラクトが、
図3に示すようなキメラウサギヒトIgGをコードするように、ヒト定常領域コンストラクトに連結した。
【0331】
活性化されたウサギB細胞から免疫グロブリンV-領域をレスキューするためのプライマーを、細胞溶解後に取得されたmRNAからのcDNA合成及びその後のPCR増幅工程の両方のために設計した。該PCR増幅工程では、最後のPCRによって、発現ベクターにクローニングするための制限酵素部位が付加される。1匹のウサギはb9アロタイプバックグラウンドを有するので(Raderらの文献(2000))、J-カッパ領域及びC-カッパ領域の利用がウサギアロタイプ間で異なる場合、様々なcDNAプライマー及び入れ子型J-領域プライマーを設計する必要があった(Sehgalらの文献(1990))。RT工程とPCR工程の両方で使用される選択されたDNAオリゴヌクレオチドプライマーのリストを表1に示し、その重鎖/軽鎖特異性を右側の欄に示す。
【0332】
選択された陽性のB細胞を溶解させ、Dynabeads製のmRNA DIRECT Micro Kit(カタログ# 610.21)を製造者の指示に従って用いて、mRNAを調製した。v-領域を回収するために、単一の抗原陽性ウェルから生成されたmRNAを、重鎖と軽鎖の両方について、1工程RT/PCR(Qiagen One Step RT-PCRキット, カタログN. 210212)反応で用いる。該反応のために、ウサギIgG分子の重鎖及び軽鎖の定常領域に位置する遺伝子特異的プライマーを用いて、一本鎖cDNAを生成させ、その後、ウサギ可変領域の第一ラウンドのPCR生成のために、入れ子型J-領域プライマーをリーダーペプチド特異的プライマーとともに用いる。
【表1】
【0333】
ヒトIgG1の重鎖又は軽鎖のどちらかの定常領域を含むベクターにサブクローニングするために、第二ラウンドのPCRを実施して、レスキューされたV-領域に制限部位を付加する。重鎖及び軽鎖について、別々のPCRを実施する。該V-領域に付加される制限部位は、重鎖及び軽鎖について、それぞれ、HindIII/XhoI及びNcoI/BsiW1である。定常領域を含むベクターは、InvivoGen(pFUSE-CHIg-hG1 #08E07-SV及びpFUSE2-CLIg-hk #08F19-SV)から入手した。両方のベクターをサブクローニング戦略用に自前で修飾した。制限部位を付加した後、PCR生成物を適切な制限酵素消化に供し、ゲル精製し、適切なベクターに連結した。
【0334】
サブクローニング後、連結されたDNAをDH5α大腸菌(Invitrogen)に形質転換した。形質転換混合物全体を、適切な抗生物質耐性を含む培地中で一晩培養した。培養された細菌を回収し、キメラ抗体の一過性HEK293発現で使用するために、プラスミドDNAを単離し、精製した(Qiagenキット)。選択されたウェルは、1以上の異なるB細胞クローンを含み得るので、この時、単離されたDNAは、1つの特定のV-領域について均一であっても均一でなくてもよい。キメラ抗体を作製するために、HEK293細胞に、選択されたウェルからの重鎖と軽鎖の両方のDNAをコトランスフェクトした。上清を細胞培養の3〜5日後に回収し、ELISAによるIgGと抗原の結合、及びIL-6中和についてアッセイした(方法については、上記を参照)。トランスフェクション上清中のIgGの存在を検出するために、ELISAプレートにコーティングされた抗ヒトIgG Fc捕捉抗体、次いで、上清及びヒトIgG標準を用いるELISA免疫アッセイを行なう。Fcによって捕捉された抗体の検出は、抗ヒトIgG(H&L)-HRP試薬及びTMB基質を用いて得られる。
【0335】
1ウェル当たり2種以上の固有のクローンがおそらく存在するであろうという前提の下、どれだけ多くの固有の重鎖と軽鎖の組合せがレスキューされるかを決定するために、DNAシークエンシングを用いて、各ELISA陽性ウェルをスクリーニングした。DNAシークエンシングのために、先にトランスフェクション用に単離されたDNAをDH5α大腸菌に再び形質転換し、適切な抗生物質を含む寒天プレート上にプレーティングする。各形質転換からの複数のコロニーを採取し、製造者の指示に従ってローリングサイクルDNA増幅キット(Templiphy, GE Healthcare)を用いて、DNA生成用に処理する。Templiphy反応から生成されたDNAをシークエンシングし、その後、解析して、各ウェルについて、V-領域の複雑さを決定する。この時、各DNAは固有のクローンを表すので、DNAの作製に加えて、Templiphy反応に用いた細菌を、その後のDNA単離のために取っておく。
【0336】
配列解析後、Templiphy反応から取っておいた細菌を用いて、重鎖と軽鎖の両方について、レスキューされた各ウェルから、各々の固有のV-領域のDNAを得た。重鎖及び軽鎖を一致させ、HEK293に一過性にトランスフェクトした。2以上の考えられる重鎖と軽鎖の組合せが存在する(ウェルがクローン性でない)とき、固有の重鎖と軽鎖の対のあらゆる考えられる組合せをトランスフェクトした。3〜5日後、上清を回収し、ELISAによるIgGと抗原の結合、及びIL-6中和についてアッセイした(方法については、上記参照)。この解析工程の後、所望の活性を保持する重鎖と軽鎖の組合せをヒト化用に選択した。
【0337】
以下の抗体クローンは、抗原結合及び抗原中和についての基準を満たし、さらなる開発のために選択された:
【0338】
(13A8:)
配列番号6のアミノ酸配列;配列番号7のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号8のアミノ酸配列;配列番号9のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0339】
13A8クローンは、34pg/ml(
図3A及びB)のEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力、並びにSPR解析で決定される高親和性抗原結合特性:K
d 1.38×10
-4(s
-1);K
a 6.33×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 218pMを示した。
【表2】
【0340】
(28D2)
配列番号16のアミノ酸配列及び配列番号17のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号18のアミノ酸配列及び配列番号19のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0341】
28D2クローンは、65pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力を示した(
図3A及びB)。
【表3】
【0342】
(18D4)
配列番号26のアミノ酸配列及び配列番号27のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号28のアミノ酸配列及び配列番号29のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0343】
18D4クローンは、54pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力、並びにSPR解析で決定される高親和性抗原結合特性:K
d 8.49×10
-5(s
-1);K
a 6.66×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 128pMを示した。
【表4】
【0344】
(8C8)
配列番号36のアミノ酸配列及び配列番号37のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号38のアミノ酸配列及び配列番号39のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0345】
8C8クローンの最初のトランスフェクション上清は、生体活性の阻害についての高い効力を示した。その後、scFvをウサギIgGから直接誘導体化し、これらは、510pg/mlのEC50(200pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力を示した(
図12A)。
【表5】
【0346】
(9H4)
配列番号46のアミノ酸配列及び配列番号47のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号48のアミノ酸配列及び配列番号49のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0347】
9H4クローンは、109pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力(
図3C、D、E)、並びにSPR解析で決定される高親和性抗原結合特性:K
d 4.75×10
-5(s
-1);K
a 8.16×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 58pMを示した。
【表6】
【0348】
(9C8)
配列番号56のアミノ酸配列及び配列番号57のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号58のアミノ酸配列及び配列番号59のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0349】
9C8クローンは、400pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)(
図3E)、及びK
d 3.17×10
-5(s
-1);K
a 7.65×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 42 pMを有する、高い活性及び抗原結合特性を示した。
【表7】
【0350】
(3.4 霊長類IL-6に対する反応性)
ヒト治療用の任意のサイトカインアンタゴニストの開発の成功は、初期の毒性試験を必要とする。毒性は、非ヒト種において最も効率的に証明される。毒性研究を実施するために、研究が検討されている種に由来するIL-6を中和する抗体の能力を示すことがまず必要である。
【0351】
非ヒト霊長類IL-6活性の中和について試験された抗IL6キメラ抗体のいくつかを
図3に示す。
【0352】
(実施例4:ウサギ抗ヒトIL-23モノクローナル抗体の作製)
(4.1 ウサギ免疫化)
1匹のニュージーランドホワイトウサギ(NZW)及び1匹のB9ウサギを、0、21、及び42日目に、Sigma Adjuvant System(Sigma S6322)中で、100μgのIL-23タンパク質(p40鎖、アクセッションNM_002187及びp19鎖、アクセッションNM_016584から構成されるバキュロウイルス由来組換えヒトIL-23、eBiosciences, San Diego CA, USA製(カタログ#34-8239))で免疫化した。免疫化の少なくとも10日後に、該動物から採血した。ウサギを、NIH、USDA、及びIACUCガイドラインに従って、R & R Research Laboratories(Stanwood, WA, USA)及びSpring Valley Laboratories(Woodbine, MD, USA)で維持した。
【0353】
NZWウサギ及びB9ウサギは、異なる免疫グロブリン遺伝子アロタイプを発現しており、該アロタイプは、フレームワーク領域及びCDR領域の違いに対応し、また、単離されるmAbの構造の違いに対応している。b9アロタイプウサギは、V領域中にCys残基が存在しないために、mAbのファージディスプレイクローニングでの使用により優れていることが報告されている。抗IL-6 mAbは全てNZWウサギからクローニングされ、V領域中にCys残基を示すものはなかった。
【0354】
ヒトIL-23で免疫化されたB9ウサギ及びNZWウサギ由来の高力価血清のIL-23中和活性を測定した。免疫ウサギ由来の血清は、マウス脾細胞から600pg/mlのヒトIL-23によって誘導されるIL-17A分泌を、ほぼ1:10,000に等しい希釈で完全に中和することができる。
【0355】
(4.2 B細胞クローニング)
IL-23に特異的なB細胞を実施例3と同様に選択した。
【0356】
末梢血単核細胞(PBMC)を、各ウサギから密度遠心分離(Lympholyte-rabbit, カタログ# CL5050, Cedarlane Laboratories社, Ontario, Canada)により調製した。IL-23がコーティングされたプレートを、PBS中2μg/mlのIL23(eBioscience)を4℃で一晩、又は37℃で1時間インキュベートすることにより作製し、PBSで4回洗浄し、B細胞を捕捉するのに用いた。PBMCを、5%BSAを含む2mlのPBSに懸濁し、抗原がコーティングされた皿に、4℃で40分間プレーティングした。その後、プレートをPBSで4〜8回洗浄し、軽く擦ることによって、接着細胞を除去した。細胞をウサギ脾臓細胞馴化培地及びEL4-B5細胞(実施例1参照)中にプレーティングし、37℃、5%CO2で、7〜10日間インキュベートした。その後、培養上清を回収し、IL-23結合(ELISA)、及びIL-23活性の阻害について試験した。
【0357】
ELISAアッセイを用いて、IL-23結合を評価した(Aggarwalらの文献(2003))。ELISAプレートを、IL-23直接結合法又はIL-23間接結合法のどちらかを用いて、コーティングした。
【0358】
間接結合法のために、抗His抗体(カタログ# A00613, GenScript社, New Jersey, USA)を、100μl/ウェルのPBS中、0.01〜0.02ug/mlでプレートに添加した。プレートを37℃で1時間、又は4℃で一晩インキュベートした。非特異的結合をブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100μl/ウェルのPBSを各ウェルに添加し、その後、プレートを脱イオン水で5回すすいだ。100μl/ウェルのPBS/10%ヤギ血清中の0.5μg/mlのIL-23 p40-p19-His(配列番号4)を添加し、室温で1時間インキュベートした。
【0359】
直接結合法のために、IL-23 p40-p19-His(配列番号4)を、100μlのPBS中、0.5μg/mlでELISAプレートに添加した。プレートを37℃で1時間、又は4℃で一晩インキュベートした。非特異的結合をブロッキングするために、10%ヤギ血清(カタログ#16210-072, Invitrogen, USA)を含む100μl/ウェルのPBSを各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間インキュベートした。
【0360】
IL-23結合後、プレートを脱イオン水で5回すすいだ。各ウェルに、50μlのPBS/10%ヤギ血清を添加した。その後、試験試料を50μl/ウェルで添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、脱イオン水で5回すすいだ。各ウェルに、PBS/10%ヤギ血清中で1:5000に希釈した100μlのペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(カタログ#111-035-008, Jackson Immuno Research)を添加した。プレートを室温で1時間インキュベートし、その後、脱イオン水で5回洗浄した。TMB基質(Thermo Scientific, Rockford, IL., USA)を100μl/ウェルで添加した。反応を100μlの1N H
2SO
4(JT Baker, Phillipsburg, NJ, USA)で停止させた。Molecular Devices製のM2プレートリーダーを用いて、吸光度を450nmで測定した。
【0361】
マウス脾臓細胞によるIL-23誘導性IL-17発現の検出に基づくバイオアッセイを用いて、IL-23受容体に対するIL-23結合の抗体媒介性阻害、及び結果として生じる生体活性を検出した。
【0362】
5×10
5個のC57Bl/6脾臓細胞を、ヘテロ二量体IL-23(eBioscience カタログ#14-8239又はHumanzyme, Chicago, USA カタログ#HZ-1049)の希釈物を含む200μl中で、96ウェルプレートのウェル中で培養し、プレートを37℃で2〜3日間インキュベートした。培養培地は、RPMI 1640、10%FBS、50uM 2-メルカプトエタノール、非必須アミノ酸、ピルピン酸塩、ゲンタマイシン、及び10ng/mlヒトIL-2(カタログ# CYT-209, Prospec-Tany Technogene)である。3日後、培養上清を、下記のように、IL-17AについてELISAでアッセイした。
【0363】
IL-23阻害についてアッセイするために、試験mAb試料を、150〜1200pg/mlのIL-23を含むマウス脾臓細胞の培養物に様々な希釈で添加し、IL-17Aの分泌を、mAbで処理していない培養物と比較した。
【0364】
ELISAアッセイを用いて、マウスIL-17を検出した。プレートを、100μlのPBS中1μg/mlの抗mIL-17A(eBioscience #14-7178)で、4℃で一晩又は37℃で1時間コーティングした。プレートを脱イオン水中で洗浄し、100μlのPBS、10%ヤギ血清で1時間ブロッキングした。プレートを洗浄した後、50μlのPBS/10%ヤギ血清及び50mlの培養上清をプレートに添加し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中0.5μg/mlで100μl/ウェルの抗mIL-17A-ビオチン(eBioscience #13-7179)を添加し、プレートをRTで1時間インキュベートし、洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中1:1000で100μl/ウェルのストレプトアビジン-HRP(Jackson Labs)と反応させた。プレートを再洗浄し、100μl/ウェルのTMB基質(Thermo Scientific, IL, USA)を添加することによって、シグナルを検出した。100μl/ウェルの1N H
2SO
4で反応を停止させた後、光学密度を450nMで読み取った。データをプロットし、Graphpad(Prism, Mountainview, CA)ソフトウェアで解析した。
【0365】
B細胞をIL-23免疫化ウサギからクローニングし、B細胞クローン上清をIL-23中和及びIL-23結合について試験した。
【0366】
図7は、各上清をIL-23結合(下のパネル)とIL-23中和(上のパネル)の両方について試験した実験からの例となる96ウェルプレートを示す。さらなる特徴付けに好適な上清は、両方の試験で陽性であった。
【0367】
(4.3 活性化B細胞からのV-領域レスキュー:)
IL-23中和アッセイとIL-23結合アッセイの両方について陽性のB細胞由来のIgG可変重鎖及び軽鎖を、本質的に実施例3と同様のRT-PCRで取得した。
【0368】
図5A〜Iは、得られたいくつかの抗IL-23中和mAbによるヒトIL-23中和活性の例を示す。
【0369】
いくつかの抗体を、
図6に示すように、霊長類IL-23に対するその結合に関してさらに特徴付けた。IL-23を中和するモノクローナル抗体を、
図8Aに示すように、ヒトIL-12の中和についてさらに試験した。mAb 31A12は、IL-23を特異的に中和し、一方、45G5及び22H8は、IL-23とIL-12の両方を中和する。
【0370】
本発明の抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、交差競合結合アッセイ、又は線状ペプチドに対する結合などの、いくつかの実験方法によって達成することができる。
【0371】
詳細なエピトープマッピングは、モノクローナル抗体又はその抗体断片と抗原の複合体の共結晶化によって得ることができる。代替法は、mAbの存在下で、重水素で標識した後、抗原ペプチドの液体クロマトグラフィーマススペクトロスコピー(LCMS)解析を用いる。重水素化されていない残基は、mAbによって保護された残基を表す。
【0372】
抗原結合、抗原中和、及びIL-23の選択的結合についての基準を満たした以下のモノクローナル抗体を、さらなる開発のために選択した:
【0373】
(31A12:)
配列番号86のアミノ酸配列;配列番号87のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号88のアミノ酸配列;配列番号89のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0374】
31A12 mAbは、3286pg/mlのEC50(600pg/mlのIL-23の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)、並びにSPR解析で決定される高親和性抗原結合特性:K
d 2.02×10
-4(s
-1);K
a 4.79×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 422pMを有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表8】
【0375】
(49B7)
配列番号96のアミノ酸配列及び配列番号97のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号98のアミノ酸配列及び配列番号99のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0376】
49B7 mAbは、988pg/mlのEC50(600pg/mlのIL-23の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力を示した。
【表9】
【0377】
(16C6)
配列番号106のアミノ酸配列及び配列番号107のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号108のアミノ酸配列及び配列番号109のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0378】
16C6 mAbは、219pg/mlのEC50(150pg/mlのIL-23の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力を示した。
【表10】
【0379】
(34E11)
配列番号116のアミノ酸配列及び配列番号117のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号118のアミノ酸配列及び配列番号119のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)
【0380】
34E11クローンは、50pg/mlのEC50(150pg/mlのIL-23の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する高い効力を示した。
【表11】
【0381】
(35H4)
配列番号126のアミノ酸配列及び配列番号127のヌクレオチド配列として同定された可変領域
重鎖(Vh)。
配列番号128のアミノ酸配列及び配列番号129のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0382】
35H4クローンは、同じB細胞クローニング実験で単離された他のmAbと比べて、クローニングされたmAbのトランスフェクション上清中で高い効力を示した(
図5I)。
【表12】
【0383】
(実施例5:ウサギ抗ヒトIL-23/IL-12モノクローナル抗体の作製)
図8Aに示すように、IL-23を中和する抗体を、IL-23に特異的であるものと、IL-23とIL-12の両方を中和するものとに細かく分けることができる。IL-12及びIL-23は、共通のp40ポリペプチドを共有しており、p40に共有結合する第二の鎖が異なる(
図7A)。IL-23のp19鎖及びIL-12のp35鎖は両方とも、4ヘリックスバンドル型のサイトカイン様ポリペプチドである。p19サブユニット及びp40サブユニットは、ジスルフィド結合によって共通のp40サブユニットに連結される。IL-12とIL-23の両方を中和する抗体は、この2つの分子間でのp40鎖の共有のために生じる。
【0384】
IL-12受容体及びIL-23受容体は、共通の鎖(IL-12Rβ1)を共有し、さらに各々、固有の受容体成分(IL-23R及びIL-12Rβ2)を有する(
図7B)。これらの違いは、標的細胞、並びにIL-12及びIL-23によって用いられるシグナル伝達経路の顕著な差をもたらす。これらの受容体は、STAT活性化のためにJAK2又はTYK2チロシンキナーゼと対をなす膜貫通シグナル伝達ドメインを有する。
【0385】
IL-23とIL-12の両方に結合する抗体を、組換えIL-23で免疫化したウサギから単離した(実施例4参照)。IL-23とIL-12の両方に対する結合活性及び機能的活性を示すB細胞クローンをさらなる特徴付けのために選択した。
【0386】
B細胞由来のキメラIgGの一次レスキュートランスフェクションをIL-23の中和について試験した。IL-23の中和に成功したものをシークエンシングし、サブクローニングし、再びトランスフェクトし、mAbをトランスフェクション上清中で定量した。これらのmAbを抗IL-23活性について確認し(
図8B〜E)、その後、IL-12(
図8F〜G)及び霊長類IL-23(
図8H、I)の中和について試験した。
【0387】
抗原結合、抗原中和、並びにIL-12及びIL-23の選択的結合についての基準を満たした以下のモノクローナル抗体を、さらなる開発のために選択した:
【0388】
(22H8:)
配列番号136のアミノ酸配列;配列番号137のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号138のアミノ酸配列;配列番号139のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0389】
mAb 22H8は、603pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)、並びにSPR解析で決定される高親和性抗原結合特性:K
d 8.94×10
-5(s
-1);K
a 4.03×10
5(M
-1s
-1)、及びK
D 221pMを有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表13】
【0390】
(45G5:)
配列番号146のアミノ酸配列;配列番号147のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号148のアミノ酸配列;配列番号149のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0391】
mAb 45G5は、385pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表14】
【0392】
(1H1:)
配列番号156のアミノ酸配列;配列番号157のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号158のアミノ酸配列;配列番号159のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0393】
mAb 1H1は、603pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表15】
【0394】
(4F3:)
配列番号166のアミノ酸配列;配列番号167のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号168のアミノ酸配列;配列番号169のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0395】
mAb 4F3は、2339pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表16】
【0396】
(5C5:)
配列番号176のアミノ酸配列;配列番号177のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(Vh);
配列番号178のアミノ酸配列;配列番号179のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(Vl)。
【0397】
mAb 5C5は、1907pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表17】
【0398】
(14B5:)
配列番号186のアミノ酸配列;配列番号187のヌクレオチド配列として同定された可変領域重鎖(VH);
配列番号188のアミノ酸配列;配列番号189のヌクレオチド配列として同定された可変領域軽鎖(VL)。
【0399】
mAb 14B5は、767pg/mlのEC50(50pg/mlのIL-6の生体活性を阻害するのに必要な濃度として算出された)を有する、高い効力及び抗原結合特性を示した。
【表18】
【0400】
(5.1 IL-12バイオアッセイ)
抗体を、IL-12応答性細胞株NK-92(CRL-2407, ATCC, Manassas, Virginia, USA)を用いて、IL-12中和能力についてアッセイした。B細胞クローニングプレートからの50μlの培養上清、又は抗体トランスフェクションからの50μlの上清を96ウェル組織培養プレートに移した。50μlのヒトIL-12(カタログ# Cyt-362, Prospec-Tany Technogene, Rehovot, Israel)を各ウェルに4ng/mlで添加した。プレートを室温で30〜60分間インキュベートし、その後、5×10
4個のNK-92細胞を100μl中で各ウェルに添加した。培養物を37℃で3日間インキュベートし、上清をヒトインターフェロン
-γ産生についてアッセイした。アッセイ培地は、RPMI 1640、10%FBS、NEAA、ピルピン酸塩、50μM 2-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及び10ng/mlヒトIL-2(カタログ# Z00368, GeneScript社, Piscataway, NJ, USA)である。
【0401】
(インターフェロン-γELISA)
ELISAアッセイを用いて、ヒトインターフェロン-γを検出した。プレートを、100μのPBS中1μg/mlの抗ヒトインターフェロン-γ(カタログ# Mab 1-D1K, Mabtech, Cincinnati, OH, USA)で、4℃で一晩又は37℃で1時間コーティングした。プレートを脱イオン水中で洗浄し、100μlのPBS、10%ヤギ血清で1時間ブロッキングした。プレートを洗浄した後、50μlのPBS/10%ヤギ血清及び50μlの培養上清をプレートに添加し、1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中0.5μg/mlで100μl/ウェルの抗ヒトインターフェロン-γ--ビオチン(カタログ# Mab 7b6-1-ビオチン, Mabtech)を添加し、プレートをRTで1時間インキュベートし、洗浄し、PBS/10%ヤギ血清中1:1000で100μl/ウェルのストレプトアビジン-HRP(Jackson Labs)と反応させた。プレートを再洗浄し、00μl/ウェルのTMB基質(Thermo Scientific, IL, USA)を添加することによって、シグナルを検出した。100μl/ウェルの1N H
2SO
4で反応を停止させた後、光学密度を450nMで読み取った。
【0402】
(実施例6:ヒト化scFvの人為作製)
(ヒト化の概要)
ウサギ免疫グロブリン可変領域(V-領域)を免疫化ウサギ由来の末梢血B細胞から単離されたmRNAから取得する。これらのウサギB細胞を低密度で96ウェルプレートにプレーティングし、先に記載したように活性化した。定常領域由来の遺伝子特異的プライマーを第一鎖合成用に、及びその3'末端の入れ子型J-領域特異的プライマーを5'リーダープライマーとともにPCR工程用に用いる、逆転写酵素-PCR(RT-PCR)を用いて、V-領域cDNAを各ウェルのmRNAから増幅する。その後、V-領域を、ヒトIgG重鎖ベクターカセット、カッパ軽鎖ベクターカセット、又はラムダ軽鎖ベクターカセットのいずれかにクローニングし、HEK 293細胞で一過性に発現させ、72時間後のトランスフェクション上清を、全体のIgG発現とそれぞれの標的の中和の両方について試験する。その後、強力な中和作用物質(neutralizer)をシークエンシングし、それらがサブクローニングされたウェル中に存在する複雑さのレベルを決定した。固有の軽鎖及び重鎖の数を決定した後、存在する全ての考えられる組合せをHEK 293に再び一過性に発現させ、中和及びIgG含量についてアッセイした。その後、強力な中和作用物質を、他の望ましい活性についてさらにアッセイした。抗ヒトIL-6抗体を非ヒト霊長類由来のIL-6の中和について試験した。IL-12二量体とIL-23二量体は両方とも同じp19鎖を共有するので、抗ヒトIL-23抗体を、非ヒト霊長類IL-23の中和だけでなく、ヒトIL-12の中和についてもアッセイする。
【0403】
本発明者らは2つの戦略に従った:本発明者らは、配列gly-gly-gly-gly-ser(G4S)の4つのタンデム反復から構成される20アミノ酸のリンカーを2つのドメインの間に導入することによって、重鎖V-領域と軽鎖V-領域をVLVH方向又はVHVL方向のどちらかで遺伝子融合するPCRにより、選択された重鎖(VH)及び軽鎖(VK又はVL)から直接ウサギscFvを構築した。ウサギscFvは、キメラ抗体からscFvフォーマットへの変換がV-領域対の機能的又は生物物理的特性に悪影響を及ぼしたかどうかを評価するのに役立つ。その後、scFvをHEK 293で一過性に発現させ、
図12Aに示すような機能についてアッセイした。強力な中和作用物質をヒト化用に選択した(第6.1節参照)。
【0404】
或いは、ウサギV-領域をscFvフォーマットで直接ヒト化した(下記の6.2参照)。
【0405】
免疫グロブリンV-領域は、全長抗体と単鎖Fv(scFv)の両方を含む、多くの異なるフォーマットでヒト化することができる。記載した発明は、原核生物組換えタンパク質発現に依存しているので、全長抗体構造は望ましくない。しかしながら、本発明は、抗体フォーマットでのウサギV-領域の良好なヒト化を実際に記載する。フォーマットを問わず、本発明は、任意の天然に存在するメチオニン残基の除去を含み、それにより、それらを他のアミノ酸と置換する。メチオニン残基は、免疫グロブリンV-領域のフレームワーク領域及びCDR内に見出されることが多いので、これらの残基の好適な置換を見出す必要があり、その場合は、該置換が、所望のタンパク質の発現、安定性、又は機能に影響を及ぼすことなく生じる。その後、このメチオニン不含scFvを、メチオニン要求性細菌株での発現用に最適化し、精製し、再フォールディングさせ、生物学的活性について試験することができる。
【0406】
良好なヒト化及びその後のメチオニン置換は、活性化PEG部分などの他の相補的分子と共有結合させるための化学反応性の高い部位を有する非天然アミノ酸の挿入部位として役立つ単一のメチオニンコドンの挿入によって化学的に修飾することができる治療的ビヒクルの一部を提供する。その後、このPEG化scFvを、PEGポリマーの残りの末端での同様に反応性の高い基を介した別のそのようなscFvへの共有結合によってさらに修飾することができる。その後、この二重特異性、PEG化生成物を精製し、再フォールディングさせて、安定で、生物学的に活性のある治療タンパク質を生じさせることができる。
【0407】
(6.1 全長抗体ヒト化プロセス)
ウサギ-ヒトキメラモノクローナル抗体を全長抗体としてヒト化することができる。これは、ヒトのVHフレームワーク領域及びVLフレームワーク領域を、ウサギCDRを保持したままウサギフレームワークと交換することを必要とし、多くの場合、特定のウサギフレームワーク残基を保持することを含む。齧歯類V-領域をヒト化する戦略も多数あるし、ウサギ-ヒトキメラ抗体を部分的に又は完全にヒト化し得る他の方法も考えられる。ここでは、本発明者らは、抗ヒトIL-6クローン9C8を抗体フォーマットでヒト化するために用いられる方法を記載する。高親和性かつ高効力のキメラmAbである9C8を、VH及びVLのフレームワーク領域をヒトフレームワーク配列に変化させることによってヒト化し、ウサギフレームワーク配列への復帰突然変異を制限した。
【0408】
NZWウサギV-領域のヒト化は、まず、その一次アミノ酸配列をヒトV-領域中に見られるものと比較することによって遂行された(Altschulらの文献(1990))。適合する可能性があるヒトV-領域フレームワークを、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)内の配列類似性、相補性決定領域(CDR1、CDR2、及びCDR3)内の配列の長さ及び内容、並びにIgVのカノニカルループ構造を支持するのに極めて重要であることが知られている重要なFR残基に基づいて作製した。これらのデータを用いて、ヒトフレームワークを、軽鎖V-領域と重鎖V-領域の両方について選択し、ウサギCDRを、
図15に示すように、重複するオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによって、これらのフレームワーク上に移植した(表19)。
【0409】
9C8のヒト化のために、ウサギのVカッパフレームワークをヒトフレームワークDPK8 VK1に変化させ、一方、ウサギのVHフレームワークをヒトのDP42 VH3-53フレームワークに変化させた。CDRは全てウサギのものである。重鎖の2つのバージョン(v1及びv2)を作製した(下記参照)。これら2つのバージョンは、CDR1 VH(残基H23-30)近くのフレームワーク領域が異なる。ここで、内在性9C8ウサギフレームワーク領域は、アミノ酸配列TVSGIDLSであり、これをv2に用いた。v1については、この配列の最初の2つのフレームワーク残基(ウサギにおけるTV)を、相同なヒトVH3フレームワーク位置で高度に保存されているAAに変化させた。親キメラ9C8 mAbを、ヒト化バージョンの9C8 mAbv1及びmAbv2と並べて比較した(
図9B)。両バージョンとも完全な活性を保持していた。
【0410】
9C8 v1及びv2におけるフレームワーク及びCDR1 VHバリエーション:
9C8 v1
FW VH復帰突然変異(H23-30):AASGIDLS(配列番号355)
CDR1 VH(H31-35):SYDMS
9C8 v2
FW-VH復帰突然変異(H23-30):TVSGIDLS(配列番号356)
CDR1 VH:(H31-35)SYDMS
【0411】
図9Bは、親キメラ9C8 mAbと、VH領域(位置H23-H30)のCDR1の近くに2つの異なるウサギ復帰突然変異を含むヒト化9C8 mAb(9C8 mAbv1及び9C8 mAbv2)との並列比較を示す。ヒト化モノクローナル抗体9C8 mAbv1(VH残基23-24でTVを含む)及び9C8 mAbv2(23-24でAA)を、先に記載したように、重鎖DNAと軽鎖DNAの両方のHEK293細胞への一過性コトランスフェクションにより発現させた。ヒト化モノクローナル抗体を、示したように、50pg/ml IL-6の中和について試験した。これらの変化、TVSGIDLS(mAbv2)又はAASGIDLS(mAbv1)は、機能的活性に影響を及ぼさない(
図9B)。9C8 mAbv1を、
図9Cのヒト化mAb 18D4とさらに比較した。
【表19】
【0412】
ヒト化V-領域を増幅するために用いられるプライマーは、先の実施例でウサギV-領域を取得するために用いられ、
図10に示されているものと同一の制限酵素部位をコードする。この方法で、ヒト化軽鎖を、Cカッパを含む発現ベクターに連結し、ヒト化重鎖V-領域を、Cガンマ1を含む発現ベクターに連結し、先に記載したように、大腸菌に形質転換した。その後、単離されたコロニーをスクリーニングし、シークエンシングした。
【表20】
【0413】
ヒト化9C8 scFvをヒト化mAbv1(TV)及びmAbv2(AA)から得た。得られたscFvは、VH1CDR1近くにウサギフレームワーク1残基(23-30)を保持していた。これらのscFvは、H34及びH82に内在性メチオニン残基も保持していた。その後、9C8のヒト化scFvの最終バージョンをこれらのscFvから作製したが、新しいフレームワークDPK5,6/DP47に置換した。これらの新しいヒト化scFv、9C8 Hum scFv v3-1及び9C8 Hum scFv v3-2は、強力な抗IL-6中和活性を示した(
図9D)。
【0414】
(6.2 V-領域の1工程ヒト化及びウサギ-ヒトキメラmAbからのscFvの作製)
ウサギV-領域は、scFvフォーマットで直接ヒト化することもできる。用いられるヒト化方法は、一般に、モノクローナル抗体をヒト化するのに用いられるものと同じであり得るが、全てのヒト化抗体が容易にscFvに変換されるわけではない。さらに、抗体のヒト化は、移植されたCDRとの定常領域相互作用を説明する必要条件を備えている。重鎖V-領域と軽鎖V-領域の両方の配列をヒト生殖系列比較し、実施例6.1に記載されているようなV-ベース(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)及びIgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)の両方を用いて、配列を発現させた。
【0415】
クローニングされたウサギVH領域及びVL領域の大部分は、それぞれ、ヒトIGVH3(IGHV3-66、IGHV3-49)ファミリー及びIGVK1(DPK-9)ファミリーのメンバーと厳密に一致したが、位置L4のメチオニンが存在しないために、DPK-8(VK1遺伝子座L8、V-BASEデータベース)を軽鎖フレームワークとして用いた(第6.1節参照)。
【0416】
5'のNot I制限酵素部位に続いて、コザックボックス(Kozakの文献(1987))、IgVK3リーダー(L2)、ヒトVK1-JK4フレームワーク、20アミノ酸の柔軟な(gly4ser)4リンカー、ヒトVH3-JH4フレームワーク、及びVH3-FR4のC-末端の最後の2つのセリン残基内で入れ子になっている3'のXho I制限部位をコードするように、ヒト化scFvを設計した(
図15)。scFv DNAは全て、重複するDNAオリゴヌクレオチド伸張(Dillon及びRosenの文献(1990))を用いるデノボのDNA合成によって構築し、Not I及びXho I(NEB, Ipswich,MA)で消化し、1%アガロース-TAEゲルで単離し、ゲルから切り出し、製造者の指示を用いて、MinElute Gel Extractionキット(Qiagen, wherever, CA)を用いて精製した。このDNAを、T4 DNAリガーゼ(NEB, Ipswich, MA)を用いて、Not I-Xho I消化されたpcDNA 3.1(-)(Invitrogen, Carlsbad, CA)に連結した。pcDNA3.1(-)ベクターカセットは、プロリンに富む短いリンカーに続いて、6XHisタグ(gly-pro-pro-pro-pro-his-his-his-his-his-his)をscFvのC-末端とインフレームでコードするように修飾されたものであった。連結されたpcDNA3.1-6_13A8をコンピテント大腸菌TOP 10(Invitrogen, Carlsbad, CA)に形質転換し、LB寒天+100μg/mlカルベニシリンプレート(Teknova, Hollister, CA)上で37℃で一晩選択した。これらのプレートから、単離されたコロニーを採取し、2mlのYTブロス+100μg/mlカルベニシリン(Teknova)に播種し、振盪インキュベーター内で、37℃で一晩成長させた。PureLink Quick Plasmid Miniprepカラム(Invitrogen)を用いて、いくつかのクローンからDNAを単離し、その後、制限消化により、0.8KbpのscFv断片の存在についてスクリーニングした。その後、正確な制限パターンを与えるクローンを、製造者の指示に従ってBig Dye Terminator v3.1キット(ABI)を用いるPCRサイクルシークエンシングの後に、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems, Foster City, CA)でシークエンシングした。得られたDNA配列を解析し、VNTI v 10(Invitrogen)を用いて、その参照ヌクレオチド配列及び参照アミノ酸配列と比較した。
【0417】
配列を確認した後、各scFvを、製造者のプロトコルを用いてLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、HEK293細胞にトランスフェクトした。簡潔に述べると、トランスフェクションの前日に、対数期のHEK293細胞を、完全培地(DMEM+Glutamax+非必須アミノ酸+Pen-Strep+10%FBSLife Sciences)中、1ウェル当たり500,000細胞の密度で、12ウェル培養プレート(Corning, Lowell, MA)にプレーティングし、37℃のCO
2インキュベーター内で一晩インキュベートした。細胞が約80%コンフルエントになったとき、4μgのscFv DNAを100μLのOpti-MEMに希釈し、4μLのLipofectamine 2000を100μLのOpti-MEMに希釈し、その後、これら2つの希釈物を合わせて、トランスフェクションミックスとし、室温で20分間インキュベートした。その後、12ウェルプレートから培地を除去し、1ml/ウェルのSFM4 -Transfectx - 293無血清培地(Hyclone, Logan, UT)と交換し、トランスフェクションミックスを各ウェルに滴加した。トランスフェクションプレートを37℃のCO
2インキュベーターに戻して、3日間成長させ、先の実施例で記載したような機能的活性について試験した。
【0418】
1工程法を用いてヒト化された抗IL-6 scFvは、13A8(
図11A〜B)、28D2、及び9C8 v3-1(
図11C)について示したように、哺乳動物細胞で発現させたとき、IL-6中和活性を保持していた。表面プラズモン共鳴(SPR)による結合親和性の測定もまたは、13A8及び9C8抗IL-6 scFvの良好なヒト化を示した(表21)。親和性試験に用いられたヒト化13A8及び9C8 scFvは、6x-ヒスチジンタグを含んでおり、トランスフェクトされたHEK上清から(先の実施例に記載の方法を用いて)精製され、本質的に実施例2に記載したように実施されたSPRによって試験された。
【表21】
【0419】
哺乳動物細胞で発現された抗IL-23 31A12ヒト化scFvは、ヒトIL-23と霊長類IL-23の両方に対して親mAbと同程度のIL-23中和活性を保持していた(
図12)。さらに、31A12 scFvは、親キメラmAbと少なくとも同じくらい良好なピコモル濃度の親和性を保持している(表22)。
【表22】
【0420】
45G5ヒト化scFvは、
図13に記載したようなIL-23に対する強力な生物学的活性を保持していた。
【表23】
【0421】
(6.3 ヒト化scFvにおけるメチオニン置換)
ヒト免疫グロブリン(Ig)V領域は、VH-FR3の比較的保存された残基(ヒトVH3ファミリー、アミノ酸H82)、及びカッパ軽鎖の位置L4で、軽鎖と重鎖の両方のCDR1にメチオニン残基を含むことが多い。これらのヒト化scFvは、メチオニン類似体を用いて最終的に共有結合されるので、成熟scFv内の全てのメチオニン残基は、別の天然に存在するアミノ酸に置換されなければならない。このアミノ酸置換は、得られるscFvの機能又は安定性に対して、最小限の影響しか及ぼさないもの、又は全く影響を及ぼさないものでなければならない。
【0422】
軽鎖アミノ酸の位置L4でのメチオニン残基を回避するために、CDRを、その位置にロイシン残基を有するヒト生殖系列フレームワークDPK8(GenBank X93626)に移植した。位置H82の重鎖のメチオニン残基を置換するために、メチオニンをイソロイシン(ile)、ロイシン(leu)、バリン(val)、又はフェニルアラニン(phe)のいずれかに変化させるような、縮重オリゴヌクレオチドプライマーを設計した。これら4つのアミノ酸は、他の種由来のIgVH領域内の位置H82で、及びいくつかの発現されたヒト抗体において見出すことができる。これらの新しいメチオニン不含scFvをHEK 293細胞で一過性に発現させ、その後、中和活性をその親scFvのものと比較した。
【0423】
効力及び発現に基づいて、メチオニンを含まないDNA配列を、翻訳効率に干渉し得るコドン使用及び潜在的二次構造を変化させることによって、大腸菌内での発現用に最適化した。
【0424】
VHの位置H82Mで代わりのアミノ酸に置換するために、フランキングプライマー(上記のプライマー1、2 それぞれ、配列番号200及び201)を伴うPCRによって、ロイシン、バリン、イソロイシン、又はフェニルアラニンを位置H82に導入するように、重複する縮重プライマー(上記のプライマー54、55)を設計した。PCR生成物を上記のようにクローニングし、DNAをシークエンシングして、各々の選択されたクローンによってどのアミノ酸がコードされているかを決定した。
【0425】
ヒト化抗IL-6 scFv 13A8(いくつかの他のscFvとして)は、VHの位置H34及びH82に2つのメチオニン残基を有している。これらの残基を、縮重オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRにより置換し、メチオニンと上記のようなロイシン、イソロイシン、バリン、又はフェニルアラニンのいずれかとの置換を生じさせた。その後、これらのメチオニン不含scFv(下記の表24)を、製造者のプロトコルを用いて、HEK 293細胞にトランスフェクトし(Lipofectamine 2000, Invitrogen,Carlsbad,CA)、得られた72時間の上清を、野生型親scFv対照上清と比べたIL-6中和についてアッセイした。ほとんど全ての置換によって、活性の完全な保持が得られた(
図14A〜D)。
【表24】
【0426】
H34Lは、一般に、十分に許容される置換であった。抗IL-23ヒト化scFvの31A12において、H34Lと組み合わせて、H82を異なるアミノ酸と置換することによって、Metを含む親scFvと比べて、活性の完全な保持が得られた(
図14E)。同様のやり方で、H34Lと組み合わせて、45G5 H82をL又はVと置換することによって、もとのキメラmAbと比べて、活性の完全な保持が得られた(
図14F)。H82L及びH34Lを有するように9C8ヒト化scFv中のMetを置換することによっても、強力な活性が保持された(
図14G)。22H8 scFvは、本来、位置H82にMet残基を持たない。H34のMetをL又はVのどちらかと置換することによって、強力なIL-23中和活性の完全な保持が得られた(
図14H)。各々のリード候補VH領域の特異的なVH突然変異が表25Xに示されており、これは、H23〜30、及びH49でのウサギ復帰突然変異、並びにH34及びH82メチオニン置換を示している。
【0427】
最終的なリードscFv候補の各々について、位置H82と位置H34の両方で置換されるアミノ酸としてロイシンを選んだ。リード候補scFv DNA配列を、大腸菌が好むものに従ってコドン使用を修飾することにより、大腸菌内での発現用に最適化した。この時点で、Ahaなどのメチオニン類似体によるインビボでの置換を表す単一のMet残基の配置を調べた。DNAを(上記のような)PCRによって合成し、pQEベクターなどの適切な発現ベクターにクローニングした。発現ベクター中の合成DNA遺伝子配列をDNA配列により確認した。最後に、発現ベクター内の合成遺伝子を、組換えタンパク質産生のために、B834などのメチオニン(Methionione)要求性大腸菌宿主に形質転換した。
【表25】
【0428】
scFvは、非天然アミノ酸(NNAA)が大腸菌内でのタンパク質産生時に組み込まれ得る位置に導入される単一のMet残基を有さなければならない。このNNAAは、特異的なバイオコンジュゲーション部位になる。これらの生成物に好まれるNNAAはアジドホモアラニン(Aha)であり、これは、銅によって触媒される環状付加バイオコンジュゲーションの使用を可能にする。1つのAha残基を含むscFvを産生するために、単一のメチオニンコドンを含むscFv DNAを、大腸菌発現用にコドン最適化し、合成し、B384などのメチオニン要求性大腸菌株中にクローニングした。細胞を対数期まで成長させ、Ahaを含むメチオニン不含培地に移し、1mMのIPTGを添加してscFv発現を誘導した。その後、所望の場所に機能的Aha基を有する所望のscFvを含む封入体(IB)を単離した。
【0429】
単一のメチオニン残基を、限定されないが、N末端及びC末端、又はVLドメインとVHドメインを接続するリンカー中を含む、多くの可能な位置で、scFvに導入し得ることが明らかにされた。3つの単一のMet形態は全て、ヒト化28D2から構築されており、これを、Aha NNAAがメチオニン残基の代わりに導入されている大腸菌で発現させ、機能的活性について試験した。3つの形態全てが、完全な生物学的活性を保持していた(
図15)。さらに、それらは全て、高い親和性を保持していた。
【表26】
【0430】
(実施例7:ヒト化scFvのPEG化及び再フォールディング)
(二重特異性体調製の一般的概観)
二重特異性scFvは、2つの異なるscFv抗原結合ドメインをリンカーによって互いにコンジュゲートさせることにより構築される。この戦略は、各scFvが二官能性リンカーにコンジュゲートされる2工程プロセスで実現される。二重特異性コンジュゲートを含む2つのscFvは、各々、特異的なコンジュゲーション部位の役割を果たす位置で単一の非天然アミノ酸(Aha又はその他)を含む。リンカーは、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性であることができ、scFvに含まれる非天然アミノ酸(Aha)と反応性がある相補的官能基(アルキン)を含む。反応スキームは、以下の実施例で詳述されているように、本発明者らによって、いくつかの二重特異性scFvの良好な作製にうまく適用されている(下記スキーム1)。
【0431】
これらの実施例で利用されるリンカーは、PEG(ポリエチレングリコール)である。PEGは、最終的な二重特異性生成物で望ましく、かつscFvに特有の問題を解決するいくつかの化学的特性を有する。PEG化は、タンパク質溶解性を向上させ、scFv安定性を増大させ、scFvの凝集及び沈殿を低下させる。さらに、PEG化は、scFv二重特異性生成物の血清半減期を増大させることが示されている。PEGなどの長くて柔軟なリンカーは、2つの抗体断片の物理的隔離を増大させ、それらが互いに独立に再フォールディングするのを可能にする。これは、遺伝子融合によって連結された二重特異性抗原結合ドメインの再フォールディングで起こり、そのために、2つのドメインの無制御でかつ望ましくない架橋が生じる傾向がよくある、極めて重大な問題の1つを解決する。
【0432】
PEGリンカーの使用は、化学合成の柔軟性のために、さらなる利点を有する。PEGは、scFvタンパク質に組み込まれる任意の非天然アミノ酸との相補的反応パートナーとなるように容易に官能化することができる。PEGは、多価タンパク質ハイブリッドの構築を可能にする複数のコンジュゲーション部位を有するように官能化することもできる。PEG官能化は、所望のコンジュゲーション化学反応に応じてホモ二官能性又はヘテロ二官能性PEGを用いて行なうことができる。PEGの構造は、薬物動態及び生体活性に影響を及ぼし得る線状又は分岐状のバリエーションに合わせることができる。
【0433】
scFvをリンカーにコンジュゲートさせるために用いられる化学反応は、20種の天然アミノ酸に対して直交性である。scFv-PEGコンジュゲート及び二重特異性体の調製において、ここでは、アジド-アルキン銅媒介性の環状付加を用いる。典型的なシークエンスにおいて、アジドホモアラニン(Aha)を含むscFvを、アルキンで官能化された過剰量のホモ二官能性PEGリンカーと反応させる。一価のPEG化材料を精製し、その後、PEGリンカーの遊離のペンダントアルキンは、Ahaを含む第二のscFとの第二の銅媒介性アジド-アルキン環状付加を経て、二重特異性体を生じさせる。
【化6】
【0434】
(工程1の概観)
二重特異性体の調製の第一工程は、アジドホモアラニン(Aha)などの非天然アミノ酸を含むscFvのPEGによる部位特異的PEG化であり、該PEGは、ホモ二官能性(例えば、ビス-アルキン)又はヘテロ二官能性(例えば、少なくともモノ-アルキン)のどちらかである。一価のPEG化scFvを、このプロセスの第二工程の前に、一連のCHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーによって精製する。また、一価材料を、再フォールディングされるその能力について評価する。最後に、再フォールディングされた材料を活性についてバイオアッセイにより評価する。
【0435】
非天然アミノ酸のアジドホモアラニン(Aha)を含むscFvのPEG化は、過剰のPEGビス-アルキン(2〜100当量)で進める。種々のPEG分子量が使用されている。コンジュゲーションに使用されるアジド-アルキン環状付加は、CuIなどの銅(I)供給源に由来するか、又は銅(II)供給源(CuSO4)を、DTT、システイン、β-メルカプトエタノール、グルタチオン、シスタミン、トリス-カルボキシエチルホスフィンなどの還元剤で還元することによって得られる銅(I)によって媒介される。トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾル-4-イル)メチル]アミン、TBTAなどの配位子も反応混合物に含まれる。TBTAなどの配位子は、反応性の銅種を安定化し、反応収率を改善することが示されている。反応pHは、リン酸ナトリウムバッファー、トリス、又はHEPESなどの緩衝化試薬の添加によって、3〜10、又は場合により、6〜9に保持される。SDSなどのさらなる添加剤を用いて、反応条件及びタンパク質動力学を向上させることができる。Ahaなどの非天然アミノ酸をscFv配列の骨格のどこかに組み込む能力は、後に、PEG化がこの所定の場所で起こることを可能にする。これらの実施例では、PEG化は、scFvのC末端、及びN末端で示されているが、さらなるプログラムされた場所でも同様に起こり得る。この一般化された手順は、いくつかの抗IL-6 scFv及び抗IL-23 scFvをPEG化するのにうまく利用されている。(スキーム2)。
【化7】
【0436】
反応後、一価のPEG化scFvを未反応のscFv及びPEGから分離することができる。これは、後の二重特異性体調製工程における副生成物の形成を防ぐ。その目的のために、通常、混合物を遠心分離又は濾過して、固体微粒子を除去し、溶液を過剰の還元剤、例えば、DTTで処理する。その後、該溶液は、一連のクロマトグラフィー工程を経る。一価scFv-PEGの精製の第一工程は、還元された反応混合物をCHTカラムに充填することであり、このカラムは、反応中のscFv及びscFv-PEG生成物を捕捉するが、未反応PEGには全く結合しない。反応中のscFv及び生成物scFv-PEGは、CHTカラムからのリン酸塩溶出によって部分的に又は完全に分割することができる。所望の画分をプールし、その後、残りの未反応のscFvを分離することができるサイズ排除カラム(SEC)に充填する。SECの後、材料は、次の工程で使用されるか、又は再フォールディング実験を経るのに十分に純粋である。
【0437】
(7.1 抗IL-6 scFvのコンジュゲーション)
(7.1.1 30kDa PEGへの28D2c Ahaのコンジュゲーション)
磁気撹拌棒を備えた250mLのガラスビーカーに、リン酸ナトリウムバッファー(250mM、pH7.4、7.1mL)及びSDSの溶液(10%wt/vol、3.3mL)を入れた。28D2c Ahaの溶液(2.81mg/mL、1当量、53mL)及び30K PEGアルキンの溶液(NOF、2mM、60mg/mL、8.7当量、22mL)を添加した。TBTAトリアゾール配位子及びヨウ化銅のDMSO溶液(両成分とも80mM、2.8mL)を速やかに添加すると、沈殿が生じた。混合物を5分間静置させておき、その後、撹拌を開始した。該混合物を一晩(18h)撹拌し、その後、SDS-PAGE(還元型)及びレーザーデンシトメトリーでアッセイすると、56%の収率が示された。
【0438】
該反応混合物を50mLの遠心分離チューブに注ぎ入れ、遠心分離した(12,000g、10分)。上清をDTT(1.5g)に注ぎ入れ、窒素下で1時間撹拌した。CHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーの組合せによって、精製を達成した。
【0439】
(7.1.2 PEGビス-アルキンによる28D2c AhaのPEG化)
磁気撹拌子を備えた50mLの丸底フラスコに、水(9.7mL)、及び28D2c Ahaの溶液(2.58mg/mL、1当量、8.7mL)を添加した。この溶液に、20K PEGビス-アルキンの溶液(3mM、60mg/mL、4当量、1mL)を添加した。TBTAトリアゾール配位子(48mg)を添加し、溶液を数分間静置させておいた。ヨウ化銅のDMSO溶液(40mM、DMSO溶液、1.1mL)を添加し、丸底フラスコに蓋をして、混合物を一晩(16h)撹拌した。反応混合物をSDS-PAGE(還元型)及びデンシトメトリーで解析すると、42%の収率が示された。
【0440】
該反応混合物を50mLの遠心分離チューブに注ぎ入れ、遠心分離した(12,000g、10分)。上清をDTT(462mg)に添加し、窒素下で1時間撹拌した後、-20℃で保存した。
【0441】
(7.1.3 20K PEGビス-アルキンによる13A8n AhaのPEG化)
磁気撹拌棒を備えた400mLのガラスビーカー中に、リン酸ナトリウムバッファー(50mM、pH7.4、14mL)、ドデシル硫酸ナトリウムの溶液(10%wt/vol、42mL)、及びジチオスレイトールの溶液(250mM、2.7mL)を入れた。13A8n Ahaの溶液(3mg/mL、1当量、86mL)及び20K PEGビス-アルキンの溶液(3mM、60mg/mL、26当量、75mL)を添加した。TBTAトリアゾール配位子(537mg)を添加し、混合物を撹拌しないで静置させておいた。硫酸銅溶液(80mM、6.4mL)を添加し、ビーカーをアルミ箔で覆った。混合物を室温で一晩(16時間)撹拌した。該混合物を、レーザーデンシトメトリーによるゲル解析を伴うSDS-PAGE(還元型)で評価すると、69%の収率が示された。
図16A。
【0442】
該反応混合物を遠心分離ボトルに注ぎ入れ、遠心分離した(10000g、15分)。上清を250mLのボトルに注ぎ入れ、DTT(3.4g)を添加し、窒素下で1時間撹拌した。セラミックハイドロキシアパタイト(CHT-I、Bio-Rad)クロマトグラフィーと、それに続くサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(Superdex 200)によって、さらなる精製を達成した。
【0443】
(7.1.4 20K PEGビス-アルキンによる13A8c AhaのPEG化)
スクリューキャップ及び磁気撹拌子を備えた1000mLのガラスボトル中に、リン酸ナトリウムバッファー(50mM、pH=7.4、58mL)、SDSの溶液(10%wt/vol、112mL)、及びジチオスレイトールの溶液(250mM、7.2mL)を入れた。scFv 13A8c Ahaの溶液(3.5mg/mL、1当量、206mL)及び20K PEGビス-アルキンの溶液(3mM、60mg/mL、25当量、200mL)を該ボトルに添加した。TBTAトリアゾール配位子(1.4g)を添加し、混合物を撹拌しないで静置させておいた。5分後、硫酸銅の溶液(80mM、17mL)を添加し、該ボトルに蓋をして、混合物を適度な速度で一晩撹拌した。青灰色の溶液をSDS-PAGE(還元型)及びレーザーデンシトメトリー解析で評価し、反応物が70%の収率を有することを明らかにした(
図16B)。
【0444】
該反応混合物を1対の遠心分離ボトルに注ぎ入れ、遠心分離した(10000g、15分)。上清をスクリューキャップ付きの2Lのガラスボトルに注ぎ入れた。DTTを添加し(9g)、容器に窒素を行き渡らせ、1時間撹拌した。反応混合物の精製を、実施例7.1.3と同様に、CHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーの組合せにより達成した。
【0445】
(7.1.5 40K PEGビス-アルキンによる13A8c AhaのPEG化)
スクリューキャップ及び磁気撹拌棒を備えた500mLのポリカーボネート遠心分離ボトルの中に、scFv 13A8cAHAの溶液(8.8mg/mL、1当量、142mL)、リン酸ナトリウムバッファーの溶液(500mMストック溶液、pH=7.4、23mL)、及びSDSの溶液(20%wt/volストック溶液、8.8mL)を入れた。40K PEGビス-アルキン(9.35g)を該撹拌溶液に固体として添加した。混合物を全てのPEGが溶解するまで撹拌し、TBTAトリアゾール配位子(446mg)を添加し、該混合物を撹拌しないで5分間静置させておいた。撹拌を再開し、新鮮なシステインの溶液(250mMストック、534uL)を添加した。硫酸銅の溶液(160mMストック溶液、2.6mL)を添加し、混合物に窒素を行き渡らせ、適度な撹拌で4時間撹拌した。該反応混合物をレーザーデンシトメトリーによるゲル解析を伴うSDS-PAGE(還元型)用にサンプリングして、反応収率(51%)を決定した(
図16C)。
【0446】
撹拌棒を反応容器から取り出し、混合物を高速で遠心分離した(10000g、15分)。上清を500mLのポリカーボネートボトルに注ぎ入れた。DTTを添加し(3g)、容器に窒素を行き渡らせ、1時間撹拌した。反応混合物の精製を、先の実施例と同様に、CHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーの組合せによって達成した。
【0447】
(7.1.6 20K PEGビス-アルキンによる13A8L AhaのPEG化)
磁気撹拌子を備えた250mLの丸底フラスコ中に、極めて純粋な水(12.5mL)、SDSの溶液(10%wt/volストック、17.3mL)、及びscFv 13A8L AHAの溶液(4.11mg/mLストック、26.3mL)を入れた。20K PEGビス-アルキンの溶液(3mM、60mg/mLストック、30mL)を該反応混合物に添加した。TBTAトリアゾール配位子(214mg)を添加し、混合物を撹拌しないで静置させておいた。撹拌を再開し、ジチオスレイトールの溶液(250mMストック、1.08mL)、次いで、硫酸銅の溶液(80mMストック、2.53mL)を添加した。丸底をセプタムで閉じ、一晩撹拌した。翌日、反応混合物をSDS-PAGE(還元型)で評価した。得られたゲルをレーザーデンシトメトリー解析で解析すると、60%の反応収率が示された(
図16D)。
【0448】
該反応混合物を遠心分離ボトル(250mL)に移し、遠心分離した(12000g、15分)。上清を250mLのボトルに注ぎ入れ、DTTを添加した(1.5g)。容器に窒素を行き渡らせ、固体が溶解するまで撹拌した。反応混合物の精製を、先の調製と同様に、CHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーの組合せによって達成した。
【0449】
(7.2 抗IL-23 scFv Ahaとの反応)
(7.2.1 20kDa PEG-ビスアルキンへのIL-23 31A12c Aha scFvのコンジュゲーション)
スクリューキャップ及び磁気撹拌子を備えた1000mLのガラスボトルに、リン酸ナトリウムバッファーの溶液(50mM、pH=7.4、65mL)、SDSの溶液(10%溶液、80mL)、及びジチオスレイトールの溶液(250mM、5.1mL)を入れた。該溶液を穏やかに撹拌し、IL-23-31A12c Ahaの溶液(pH=7.4、4mg/mL、1当量、121mL)及び20K PEGビス-アルキンの溶液(60mg/mL、26当量、142mL)を添加した。撹拌を中断し、TBTA(1.1g)を添加した。該材料を沈殿させておき(〜5分)、硫酸銅の溶液(80mM、12mL)を添加し、撹拌を再開した。ボトルに蓋をし、混合物を室温で16時間撹拌した。該反応混合物をSDS-PAGE(還元型)で解析し、得られたゲルをデンシトメトリーで解析すると、出発材料の所望のPEG化生成物への59%変換が示された(
図16B)。
【0450】
該反応混合物を遠心分離ボトル(500mL)に移し、遠心分離した(10,000g、15分)。得られた上清を滅菌ポリカーボネートボトルに移し、ジチオスレイトールを添加し(6.3g)、該溶液を窒素下で1時間撹拌した。さらなる精製を、実施例7.1.3で実施されたようなCHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーによって達成した。
【0451】
(7.2.2 20K PEGビス-アルキンによる45G5c AhaのPEG化)
磁気撹拌子を備えた250mLの丸底フラスコ中に、リン酸ナトリウムバッファー(50mM、pH7.4、74mL)を入れ、撹拌を開始し、ジチオスレイトールの溶液(250mM、1.9mL)を添加した。scFv 45G5c Ahaの溶液(1.8mg/mL、1当量、53mL)及び20K PEGビスアルキンの溶液(3mM、60mg/mL、25当量、27mL)を該撹拌溶液に添加した。撹拌を中断し、TBTAトリアゾール配位子(382mg)を添加し、混合物を5分間静置させておいた。硫酸銅溶液(80mM、4.5mL)を添加し、フラスコにゴム製のセプタムで蓋をした。混合物を設定を最低にして一晩(16時間)撹拌した。反応をSDS-PAGE(還元ゲル)でアッセイし、ゲルをデンシトメトリーで解析すると、40%の収率が示された(
図16E)。
【0452】
該反応混合物を遠心分離ボトルに移し、ティルトローターで遠心分離した(10,000g、15分)。上清を新しいポリカーボネートボトルに注ぎ入れ、撹拌棒及びDTT(2.4g)を添加し、窒素下で1時間撹拌した。精製を、実施例7.1.3で実施されたようなCHTクロマトグラフィーと、それに続くサイズ排除クロマトグラフィーによって達成した。
【0453】
(7.4 フォールディング:)
フォールディングは、変性したscFv-PEG(例えば、8M尿素中)を取り、それを(例えば、透析又は接線流濾過によって)酸化還元系(例えば、システイン/シスチン)を含む部分変性バッファー(例えば、3M尿素)中に交換し、その後、それを非変性バッファー(例えば、リン酸緩衝化食塩水)中に交換することによって生じることができる。
【0454】
(7.4.1 28D2c-PEGのフォールディング)
30kDaの線状PEGビスアルキンがC末端にコンジュゲートされたscFv 28D2をフォールディングさせた。28D2c-PEGをまず精製し、バッファーを9M尿素及びジチオスレイトール(DTT)を含むバッファー、pH7.2に交換した。その後、28D2c-PEGを0.05〜1mg/mLタンパク質の出発濃度にまで希釈した。その後、出発材料を、室温で一晩、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2〜6mMシステイン、及び1〜3mMシスチンからなる第一のフォールディングバッファー中に透析した。その後、該材料を、室温で一晩、20mMリン酸ナトリウム及び150mM NaCl、pH7.4からなる最終的なバッファー中に透析した。
【0455】
再フォールディングした材料は、非還元SDS-PAGEとSECの両方により、単量体と見られる。単量体28D2c-PEGの回収は、0.05〜0.25mg/mLタンパク質のタンパク質フォールディング濃度で最も良好であった。同様の結果は、6:1〜2:3mMの範囲のシステイン:シスチン濃度で達成された。具体的な例として、材料を0.1mg/mLタンパク質、3mMシスチン、及び2mMシステインでフォールディングさせたとき、SECによる単量体回収は37%であり、生成物のEC50は116pg/mLであり(
図17A)、SPR(本質的に実施例1.4と同様に実施された)で測定された結合親和性を表27に示す。
【表27】
【0456】
フォールディングは、変性したscFv-PEGを取り、それを部分変性バッファー中に速やかに希釈し、その後、それを非変性バッファー中に交換することによって生じることもできる。この方法のための出発材料は、尿素若しくはグアニジン中で変性させたか、又はSDS中で変性させたscFV-PEGを含むことができる。
【0457】
9M尿素及びDTTを含むバッファー、pH7.2中の28D2c-PEG、1mg/mLを、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2〜6mMシステイン、及び1〜3mMシスチンからなる第一のフォールディングバッファー中に0.05〜0.1mg/mLになるまで速やかに希釈し、その後、同じバッファー中で、室温で一晩透析した。その後、該材料を、20mMリン酸ナトリウム及び150mM NaClからなる最終的なバッファー、pH7.4中に、室温で一晩透析した。具体的な例として、材料を、2mMシステイン及び2mMシスチンを用いて、0.1mg/mLでフォールディングさせたとき、SECによる単量体回収は38%であり、生成物のEC50は138pg/mLであった。
【0458】
0.1%SDS及びDTTを含むバッファー、pH7.25中、0.52mg/mLタンパク質の28D2c-PEGを、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2〜6mMシステイン、及び1〜3mMシスチンからなる第一のフォールディングバッファー中に速やかに希釈し、その後、同じバッファー中で一晩透析した。200倍希釈を用いて、最終SDS濃度を0.0005%にまで低下させた。任意に、該フォールディングバッファーは、400mMアルギニン及び/又は150mM NaClも含んでいた。或いは、該フォールディングバッファーは、システイン/シスチンの代わりに、2mMグルタチオン及び2mM酸化グルタチオンを含んでいた。その後、該材料を、5℃で3日間、20mMリン酸ナトリウム及び150mM NaClからなる最終的なバッファー、pH7.4中に透析した。その後、該材料を、Millipore Centriprep濃縮装置(10,000 MWCO)を用いて20倍濃縮した。
【0459】
具体的な例として、材料を3mMシスチン及び2mMシステインでフォールディングさせたとき、SECによる単量体回収は20%であり、生成物のEC50は256pg/mLであった。これらの試料によるIL-6結合反応速度をSPRで決定した。これを表28に示す。(SPRは、本質的に実施例1.4と同様に実施された)
【表28】
【0460】
フォールディングは、グアニジン中で変性させた出発材料からの交換及び/又は希釈によって生じることもできる。6M塩酸グアニジン及びDTTを含むバッファー、pH8.0中で28D2c-PEGを調製した。その後、該材料を、フォールディングバッファー中に透析するか、又は速やかに希釈した後、該バッファー中に透析し、その後、PBS中に透析した。フォールド中のタンパク質濃度は0.05〜0.25mg/mLであり、フォールドバッファーは、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2mMシステイン、及び2mMシスチンからなっていた。任意に、フォールドバッファーは、400mMアルギニンも含み、任意に、150mM NaClも含んでいた。具体的な例としては、タンパク質濃度が0.25mg/mLであるとき、SECによる単量体回収は22%であり、生成物のEC50は150pg/mLであった。
【0461】
(7.4.2 他のPEG化scFvのフォールディング)
線状PEG 20kDaがN末端又はC末端にコンジュゲートされたscFvの13A8n、13A8c、13A8L、及び31A12cも同様の方法でフォールディングさせた。これらのscFv-PEGを8M尿素及びDTTを含むバッファー中で調製し、0.05〜0.5mg/mLの総タンパク質になるまで希釈した。その後、それらを、室温で、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2〜6mMシステイン、及び1〜3mMシスチンを含むフォールドバッファー中に透析した。交互に、pH8若しくは9、4M若しくは2M尿素、1%ポリソルベート80、及び/又は4℃での透析も用いた。タンパク質は、ポリソルベート80を添加した、又はポリソルベート80を添加していない、尿素を含まないフォールドバッファー中への透析によってフォールディングさせることもできた。フォールディングを、PBS、又は酸化還元系(2〜6mMシステイン及び1〜3mMシスチン)を含むPBS中への透析によって完了させた。具体的な例を表29に示す。
【表29】
【0462】
回収は、0.05〜0.1mg/mLでのタンパク質フォールディングの場合に最も良好であった。フォールドバッファー中での尿素の非存在下での31A12c-PEGのフォールディングによって、生成物中のジスルフィド結合がより多い高分子量種が得られた。PEG化scFvを、異なる温度での安定性について評価し、哺乳動物で発現させた非PEG化scFvと比較した。2つのPEG化種、13A8c-PEG及び31A12c-PEGは、13〜20日間の期間にわたって、その全ての活性を保持していた(
図17B及び17C)。
【0463】
PEG化scFvのTm測定によって、これらの分子の安定性がさらに確認された。31A12-PEGは、69.9℃のTmを有することが分かった。13A8-PEGは、66.1℃のTmを有することが分かった。
【0464】
(7.4.3 非PEG化scFvのフォールディング)
同様のフォールディング方法を、非PEG化scFv[例えば、13A8c及び22H8c]をフォールディングさせるために用いることができた。これらの方法は、望ましい場合、コンジュゲーションの前にタンパク質をフォールディングさせるのに有用であり得た。具体的な例として、3つのバッチの13A8cを、3M尿素、4mMシステイン、2mMシスチン、30mMトリスを含むバッファー、pH8.5中、0.1mg/mLの総タンパク質でフォールディングさせ、その後、PBS中に透析した。この再フォールディングプロトコルは再現性があり、SDS-PAGEによる3つのバッチからの単量体13A8c回収収率は、それぞれ、37%、35%、及び44%であった。再フォールディングされた非PEG化22H8c scFvは、親mAbと比べて高い効力を保持していた。
【0465】
(実施例8:scFv-PEG-scFv二重特異性抗IL-6/IL23コンジュゲートの作製)
抗IL-6/抗IL-23 scFv PEGコンジュゲートの作製の次の工程は、Ahaなどの非天然アミノ酸を含むscFvの、実施例7で調製されたscFv-PEGアルキンコンジュゲートへのコンジュゲーションである。コンジュゲーション反応後、混合物をクロマトグラフィーの組合せによって精製し、その後、再フォールディングプロセスを経ると、所望のscFv-PEG-scFv二重特異性体が得られる。最終的な材料を、生体活性及び薬物動態特性、並びに疾患モデルにおける効力について評価する。
【0466】
二重特異性体調製における第二の化学工程は、精製された一価体(scFv-PEG)の第二のscFvへのコンジュゲーションである。カップリングは、銅媒介性のヒュスゲン環状付加を介した第二のscFvのAhaに対する一価scFv-PEGの遊離のペンダントアルキンの反応によって達成される。いくつかの一価scFv-PEGコンジュゲートが良好に作製されており、抗IL-6-scFv-PEG又は抗IL-23 scFv-PEGのどちらかを用いることができる。同様に、Aha含有タンパク質は、抗IL-6 scFv又は抗IL-23 scFvのどちらかであることができる。
【0467】
第二の反応については、反応条件が、第一の工程の銅媒介性の環状付加とは異なる。工程1では、反応条件は、反応を助けるために、過剰のPEG-ビスアルキン及びSDSなどの添加物を用いた。しかしながら、過剰のアルキンの使用は、経済的に実現可能でもないし、精製の観点から望ましくもない。それゆえ、第二の工程は、はるかに厳しい比率のアルキン対アジド(1:1〜1:3のアルキン:アジド)反応成分を用いる。さらに、第二の工程のコンジュゲーションは、より大きい希釈で最もうまく行くことが分かった。さらに、このプロセスの第一の工程で利用されるTBTAトリアゾール配位子を最終的に省いた。
【0468】
反応混合物の精製は、実施例7で用いたものと同様の、クロマトグラフィーの混合によって進める。反応混合物をまずCHTカラムに充填し、リン酸塩勾配を用いて溶出させる。所望の画分をプールし、その後、SECカラムに充填する。その後、この材料を、再フォールディング条件用に、さらに処理することができる。
【0469】
上記のプロセスにおいて、コンジュゲーションは、フォールディングに先行する。PEGリンカーの存在は、その後の再フォールディング工程を容易にし、scFvは、最小限の鎖間架橋で独立に再フォールディングする。鎖間架橋は、遺伝子融合によって連結され、かつPEGリンカーを持たない二重特異性コンストラクトでよく生じる重大な障害であり、抗原結合ドメインの相互作用を妨げる。
【0470】
(8.1 抗IL-23、抗IL-6二重特異性31A12c-PEG-28D2cの調製)
磁気撹拌棒を備えた1Lのガラスビーカー中に、リン酸ナトリウムバッファー(125mM、pH7.4、486mL)を入れた。28D2c Ahaの溶液(4.2mg/mL、5.1mL)及び31A12c-PEGの溶液(0.49mg/mL、44mL)を添加した。TBTAトリアゾール配位子及びヨウ化銅の溶液(両成分とも80mM、16mL)を添加すると、沈殿が形成した。混合物を一晩(16時間)撹拌した。反応混合物をSDS-PAGE(還元型)及びデンシトメトリーで解析した(収率=29%)。
【0471】
該反応混合物を2つの遠心分離ボトル(500mL)に分けて、遠心分離し(10000g、30分)、上清を捨てた。1つのボトルに、SDSの溶液(8%wt/vol)及びTPPTSの溶液(1M HEPES、pH7.4、25mL中、500mM TPPTS)及びリン酸ナトリウムバッファー(10mM、25mL)を添加した。材料が溶解するか又は完全に懸濁されるまで、該ボトルを転頭運動及び旋回させた。中身を第二の遠心分離ボトル/ペレットに移し、第一の遠心分離ボトルから2部のリン酸ナトリウムバッファー(10mM、12.5mL)ですすぎ落とした。第二の遠心分離ボトルを、ペレットが溶解するまで、旋回させた。該材料を遠心分離した(10,000g、5分)。上清をさらなる精製のために保持した。
【0472】
(8.2 抗IL-23、抗IL-6二重特異性31A12c-PEG-13A8cの調製)
スクリューキャップ及び小型撹拌棒を備えた2000mLのガラスボトルに、水(814mL)、及びジチオスレイトールの溶液(250mM、12mL)を添加し、穏やかに撹拌した。scFv 13A8c Ahaの溶液(0.85mg/mL、35mL)、次いで、31A12c-PEGコンジュゲートの溶液(0.55mg/mL、55mL)を添加した。MESバッファーの溶液(80mM、pH7.5、56mL)及び硫酸銅(80mM、28mL)を添加した。該ボトルに蓋をし、混合物を最低撹拌速度で一晩(16時間)撹拌した。反応をSDS PAGE(還元型)及びデンシトメトリーで解析すると、51%の収率が示された。2つのさらなる1000mL反応を同時に実施すると、同様の収率であった。
【0473】
プール反応混合物(3000mL)の一部を遠心分離ボトル(250mLボトル当たり〜200mL)に注ぎ入れ、スピニングバケット遠心分離器中で遠心分離した(Sorvall RC-3BP、5000g、15分)。上清を捨てた。さらなるプール反応混合物をペレットに添加し、再び遠心分離した。該反応混合物が全て処理されてしまうまで、このシークエンスを繰り返した。ペレットに、600mLの以下のバッファー、10mMリン酸塩pH=7.4、2%SDS、及び250mM DTTを添加した。撹拌棒を加え、混合物を30分間撹拌し、次いで50℃まで5分間温め、その後、室温でさらに撹拌した。固体をガラス棒で破壊した。TPPTS(Strem、350mM、pH7.6、25mL)を添加し、混合物を1時間撹拌し、その時点で、固体は全て溶解した。該材料をさらなる精製に回した。セラミックハイドロキシアパタイト(CHT-I、BioRad)クロマトグラフィーとサイズ排除(Superdex 6プレップ)クロマトグラフィーの組合せを用いて、二重特異性生成物を精製した。
【0474】
(8.3 抗IL-23、抗IL-6二重特異性13A8c-PEG-31A12cの調製)
磁気撹拌子を備えたスクリューキャップ付きの2000mLのガラスボトル中に、水(830mL)を入れ、ジチオスレイトールの溶液(250mM、12mL)を添加しながら、この溶液を穏やかに撹拌した。scFv 31A12cAhaの溶液(0.88mg/mL、45mL)及びコンジュゲート13A8c-PEGの溶液(0.7mg/mL、30mL)を添加した。MESバッファー(80mM、56mL)及び硫酸銅の溶液(80mM、28.1mL)を添加し、ボトルに蓋をした。一晩穏やかに撹拌し続ける。反応混合物のSDS PAGE解析及びデンシトメトリーにより、48%の収率が示された。反応を、2つのさらなる1L反応及び7つのさらなる500mL反応を用いて同時に実施すると、49%の平均収率であった(
図18A)。
【0475】
プールした6500mLの反応容量を以下のように処理した。2つの遠心分離ボトル(500mL)中に、各ボトルに、およそ450mLの反応混合物を入れた。スイングバケット遠心分離器(5000g、15分)中で遠心分離した。上清を捨て、さらなる反応混合物を各回収遠心分離ボトルに添加し、材料を再び遠心分離した。プールした反応容量が全て遠心分離されてしまうまでシークエンスを繰り返し、ペレット(×2)を保持した。各ボトルに、撹拌棒、及び以下のバッファー(700ml):250mM DTT、2%SDS、10mMリン酸ナトリウムバッファーを添加した。室温で30分間撹拌した。水浴(40℃)中に入れ、10分間撹拌した。さらに30分間撹拌し、その時点で、固体は残っていなかった。2つの溶液をプールした後、CHTカラムに充填した。リン酸塩勾配による溶出。所望の画分を、サイズ排除カラムによるさらなる精製によってプールする。
【0476】
(8.4 抗IL-23、抗IL-6二重特異性13A8n-PEG-31A12cの調製)
小型磁気撹拌子を備えたスクリューキャップ付きの2000mLのガラスボトル中に、水(640mL)及びDTTの溶液(250mM、9.6mL)を入れた。この混合物に、31A12cAhaの溶液(0.88mg/mL、27mL)及び13A8c-PEGコンジュゲートの溶液(0.42mg/mL、56mL)を添加した。MESバッファー(80mM、45mL)及び硫酸銅溶液(80mM、23mL)を添加し、ボトルに蓋をした。混合物を、最低撹拌速度で、一晩(16時間)穏やかに撹拌した。SDS-PAGE及びデンシトメトリーによって、47%の収率が示された。2つのさらなる反応を先に記載したのと同じように調製すると、ゲル解析によって、それぞれ、51%及び47%の収率が得られた。
【0477】
3つの反応容量を合わせ、以下のように処理した。2つの遠心分離ボトル(250mL)中に、各ボトルに、およそ200mLの反応混合物を入れた。スイングバケット遠心分離器(5000g、15分)中で遠心分離した。上清を捨て、さらなる反応混合物を各回収遠心分離ボトルに添加し、材料を再び遠心分離した。3つの反応からの反応混合物が全て遠心分離されてしまうまでシークエンスを繰り返し、ペレットを保持した。各ボトルに、撹拌棒、及び以下のバッファー(220ml):250mM DTT、2%SDS、10mMリン酸ナトリウムバッファーを添加した。室温で30分間撹拌した。水浴(40℃)中に入れ、10分間撹拌した。固体が残った。水浴から取り出し、TPPTS溶液(250mM、pH=7.4、5mL)を添加した。撹拌し(1時間)、その時点で、固体は残っていなかった。溶液をプールした後、CHTカラムに充填した。リン酸塩勾配による材料の溶出によって、二重特異性体及びさらなるタンパク質成分の半精製混合物が得られた。SECによるさらなる精製によって、所望の二重特異性生成物が得られた。
【0478】
(8.5 抗IL-12/23、抗IL-6二重特異性13A8n-PEG-45G5cの調製)
大きい磁気撹拌棒を備えた2000mLのガラスビーカー中に、水(898mL)及びDTTの溶液(250mM、12mL)を入れた。45G5cAhaの溶液(0.9mg/mL、33mL)及び13A8n-PEGの溶液(0.98mg/mL、30mL)を添加した。硫酸銅溶液(80mM、28mL)を添加し、混合物を一晩撹拌した(16時間)。第二の同一の反応を先に記載した反応と並行して実施した。反応混合物をSDS-PAGE(還元型)及びデンシトメトリーで評価した(24%収率-反応1及び25%反応2)(
図18B)。
【0479】
およそ400mLの反応混合物を遠心分離ボトルに注ぎ入れた(500mL×2、両方の反応混合物を別々にした)。スイングバケット遠心分離器中に入れ、遠心分離した(5000g、15分)。上清を捨てた。反応混合物が全て処理されるまでシークエンスを繰り返し、ペレットだけが残る。該ペレットに、以下のバッファー(200mL):20mMリン酸ナトリウムバッファー、2%SDS、250mM DTTを添加した。30分間穏やかに撹拌した。撹拌しながら、水浴(40℃)中で10分間温めた。室温に戻し、固体が溶解するまで撹拌した。還元された材料をプールし、さらなる精製をCHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーによって達成した。
【0480】
(8.6 抗IL-12/23、抗IL-6二重特異性13A8c-PEG-22H8の調製)
スクリューキャップ及び磁気撹拌子を備えた2000mLのボトル中に、水(950mL)及びDTTの溶液(250mM、14mL)を入れて、穏やかに撹拌した。この撹拌溶液に、scFv 22H8cAhaの溶液(0.75mg/mL、60mL)及び13A8c-PEGコンジュゲートの溶液(0.69mg/mL、35mL)を添加した。MESバッファー(80mM、65mL)及び硫酸銅の溶液(80mM、32mL)を添加し、該ボトルに蓋をして、混合物を一晩撹拌した。SDS PAGE解析及びデンシトメトリーによって、60%の収率が示された(
図18C)。同じ割合のさらに5つの1150mL反応を同時に実施すると、54%の平均収率であった。
【0481】
合わせた6900mLの反応容量を先に記載したのと同様に処理した。2つの500mLの遠心分離ボトル(500mL)に、およそ450mL(×2)の反応容量を入れた。混合物をスイングバケット遠心分離器中で遠心分離した(5000g、15分)。上清を捨て、さらなる反応混合物を各回収遠心分離ボトルに添加し、材料を再び遠心分離した。6900mL全体が処理されるまで、このシークエンスを繰り返した。各ペレットに、以下のバッファー(700mL):250mM DTT、2%SDS、10mMリン酸ナトリウムバッファーを添加した。室温で30分間撹拌した。固体をへらで粉砕し、撹拌をさらに1時間再開した。2つの溶液を合わせ、CHTカラムに充填し、リン酸塩勾配により溶出させた。半純粋な二重特異性体のさらなる精製をSECクロマトグラフィーによって達成した。
【0482】
(8.7 抗IL-23、抗IL-6二重特異性13A8c-40KPEG-31A12cの調製)
磁気撹拌子を備えたスクリューキャップ付きの5000mLのガラスボトル中に、リン酸ナトリウムバッファー(5mMストック溶液、2100mL)を入れた。一価の中間体13A8c-40KPEGの溶液(0.34mg/mLストック、138mL)及びscFv31A12cAHAの溶液(3.2mg/mLストック、26.1mL)を添加した。該溶液を穏やかに撹拌しながら、MESバッファー(80mMストック、141mL)及びジチオスレイトールの溶液(250mMストック、12mL)を添加した。硫酸銅の溶液(80mMストック、70mL)を添加し、該ボトルに蓋をして、一晩穏やかに撹拌し続けた。反応混合物のSDS PAGE解析及びデンシトメトリーによって、58%の収率が示された。反応を、2つのさらなる2.5L反応及び1つのさらなる1.0L反応を用いて同時に実施すると、58%の平均収率であった(
図18D)。
【0483】
プールした8500mLの反応容量を遠心分離して、固体を全て回収した。該固体を以下の後処理バッファー(1700mL):250mM DTT、2%SDS、10mMリン酸ナトリウムバッファーに溶解させた。最終的な溶液をCHTクロマトグラフィー及びSECクロマトグラフィーの組合せによって精製した。
【0484】
(8.8 抗IL-23、抗IL-6二重特異性31A12c-20KPEG-13A8Lの調製)
磁気撹拌子を備えた8×30mMのバイアル中に、水(87uL)及びMESバッファー(80mMストック、5.6uL)を入れた。これに、31A12c-20KPEGの溶液(0.550mg/mLストック、3.8uL)及びscFv 13A8LAHAの溶液(4.11mg/mLストック、0.95uL)を添加した。DTTの溶液(250mMストック、1.2uL)及び硫酸銅の溶液(80mMストック、2.8uL)を添加し、バイアルに蓋をし、室温で一晩撹拌させておいた。翌日、反応混合物をSDS-PAGE用にサンプリングした。得られたゲルをレーザーデンシトメトリーで解析し、37%の二重特異性体の収率が示された(
図18E)。
【0485】
(8.9 二重特異性scFvのフォールディング:)
線状の20kDa PEGリンカーを介して13A8にコンジュゲートされた31A12(両方ともC末端にコンジュゲートされている)を、上に示したものと同様の方法でフォールディングさせた。二重特異性分子を、8M尿素及びDTTを含むバッファー、pH7.3中、0.05〜0.1mg/mLの総タンパク質で調製した。材料は、この段階で、二重特異性分子の他に、若干量の残留未反応31A12-PEG scFvを含んでいる可能性があった。その後、該材料を、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン中に、室温で一晩透析することによってフォールディングさせた。任意に、1%ポリソルベート80、500mMトリス、又は500mMアルギニンも、該フォールドバッファーに添加したか、又はフォールディングを4℃で実施することができた。フォールディング反応物を20mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.4(PBS)中にさらに透析した。具体的な例としては、4つのバッチの0.1mg/mLの31A12c-PEG-13A8cを、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン中、室温で再フォールディングさせ、その後、PBS中に透析した。この再フォールディングプロトコルは再現性があり、同様の単量体二重特異性scFv回収収率及びEC50をもたらした(表30、
図19A及び19B)。単量体タンパク質を回収し、得られた分子は、親分子と比べて高い生体活性を保持していた。重要なことに、フォールディングは、大量の31A12c-PEG scFvの存在下でもうまく行った。さらに、表面プラズモン共鳴データによって、IL-6標的(13A8)とIL-23標的(31A12)の両方に対する二重特異性体の両方の末端の生体活性がさらに確認された(表31)。
【表30】
【表31】
【0486】
20kDa線状PEGリンカーを用いて作製された、二重特異性体のインビボ薬物動態を、裸のscFvのPKと比較した。scFv単体は極めて迅速に排泄され、約2時間の終末t
1/2、500pg/mlのCmax、1〜2時間のtmaxを有し、8時間までにほぼ完全に除去された(
図20A)。該二重特異性体は、はるかにより長いインビボ半減期を示し、約24時間の終末t
1/2、1500pg/mlのCmax、24時間のtmax、及び100時間での血清中での検出可能なレベルを有していた(
図20B)。二重特異性scFvの薬物動態挙動のこの改善により、それは、単純なscFvよりもはるかに強力でかつ効果的な治療薬になる。
【0487】
同じフォールディング方法をPEG化二重特異性13A8n-PEG20-31A12cに用いることができた(C末端ではなく13A8のN末端でのPEG化)。2つのバッチの0.1mg/mLのタンパク質を、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン中でフォールディングさせ、その後、PBS中に透析した。両方のバッチから、SECによる>95%の単量体回収、哺乳動物由来の13A8 scFvの場合の59pg/mlというEC50と比べて、それぞれ、二重特異性体によるIL-6の中和についての1674pg/mL及び1691pg/mLのEC50(
図21)、並びにそれぞれ、IL-23の中和についての4956pg/mL及び3249pg/mLのEC50が得られた。単量体タンパク質は、良好な収率で回収された。
【0488】
(8.8 さらなる二重特異性scFvコンストラクトの再フォールディング)
13A8n-PEG-45G5cを、31A12に基づく二重特異性体についての方法と同様の方法でフォールディングさせた。0.1mg/mLのタンパク質を、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン中でフォールディングさせ、その後、PBS中に透析した。これにより、SEC による29%の単量体回収、並びにIL-6に対する933pg/mLのEC50、及びIL-23に対する5,662pg/mLのEC50が得られた(
図22A及びB)。
【0489】
13A8c-PEG-22H8cを上と同様の方法でフォールディングさせた。13A8c-PEG-22H8cを、8M尿素及びDTTを含むバッファー中で調製し、0.05〜0.1mg/mLの総タンパク質になるまで希釈した。その後、それらを、室温で、3M尿素、30mMトリス pH8.5、2〜6mMシステイン、及び1〜3mMシスチンを含むフォールドバッファー中に透析した。交互に、pH8若しくは9、0.01〜1%ポリソルベート80、及び/又は4℃での透析も用いた。フォールディングをPBS中への透析により終了させた。具体的な例としては、0.1mg/mLの13A8c-PEG-22H8cを、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン、0.05%ポリソルベー80中で、室温でフォールディングさせ、その後、0.05%ポリソルベート80を含むPBS中に透析した。これにより、SECによる35%の単量体回収、並びにIL-6の中和についての246pg/mLのEC50、及びIL-23の中和についての234pg/mLのEC50が得られた(
図23A及びB)。
【0490】
13A8c-40KPEG-31A12cを、20K二重特異性体についての方法と同様の方法でフォールディングさせた。0.1mg/mLのタンパク質を、3M尿素、30mMトリス pH8.5、4mMシステイン、2mMシスチン中で、4℃でフォールディングさせ、その後、4℃でPBS中に透析した。これにより、SECによる56.3%回収、並びにIL-6に対する137.5pg/mLのEC50及びIL-23に対する2699pg/mLのEC50が得られた(
図24A及びB)。さらに、13A8c-40KPEG-31A12cを、室温と4℃の両方の温度での、0.5M塩酸グアニジンを含む再フォールディングバッファー中への透析によって、より高い濃度(0.5mg/mL)で再フォールディングさせることもできた。
【0491】
13A8c-40KPEG-31A12c二重特異性体のインビボ薬物動態を、13A8c-20KPEG-31A12c、13A8c-PEG、及び裸の28D2のPKと比較した(
図25A及びB)。被験物質をラットの皮下に1mg/kg(二重特異性体及び裸のscFv)又は0.5mg/kg(13A8c-PEG)で投与した。投与後に時間間隔を空けて採血し、血清を、B9 IL-6中和アッセイを用いて、被験物質の存在についてアッセイした。結果は、裸のscFvが速やかに排除される一方で、二重特異性体及び13A8c-PEGが、有意により大きい半減期及びAUCを有することを示している。13A8c-40KPEG-31A12cもまた、13A8c-20KPEG-31A12cと比べて有意に増大したAUCを示している(
図25B)。
【0492】
再フォールディングした二重特異性コンジュゲートは、4℃で最大6カ月間の優れた安定性を示した。13A8-PEG-31A12二重特異性体は、抗IL-6アッセイと抗IL-23アッセイの両方で一貫した効力を示した。SDS-PAGE解析でもSECクロマトグラフィーでも、分解はほとんど観察されなかった。
【表32】
【0493】
(実施例9:インビトロで測定されるTh17細胞及びTh22細胞の発生に対する二重特異性scFvの効果)
Th17 T細胞サブセット及びTh22 T細胞サブセットは、抗CD3+抗CD28を用いた全PBMC若しくは純化T細胞の刺激によるか、又は混合リンパ球培養物中の同種異系細胞によるかのどちらかによって、インビトロで分化させることができる(
図26A)。そのようなT細胞の分化は、Th17細胞について特に十分に特徴付けられているいくつかの重要な調節性サイトカインの添加をさらに必要とする。これらの調節性サイトカインは、主に骨髄性細胞に由来しており、該調節性サイトカインの添加は、骨髄性細胞をその調節性サイトカインを放出するように刺激する化合物と併せた該骨髄性細胞の添加と置き換えることができる。LPSを抗CD3とともに用いて、Th17細胞へと分化するように全PBMCを刺激した。多くの研究者により、骨髄性細胞に由来するこれらのサイトカインが、純化されたナイーブT細胞からのTh17の分化を促進することが以前に示されているように、最も良好な結果は、IL-1及びTGFβも添加したときに得られた。Th17 T細胞及びTh22 T細胞は、骨髄性細胞をその調節性サイトカインを放出するように誘導する刺激物質を添加して、同種異系混合リンパ球培養物(MLC)中で分化させることもできる。ペプチドグリカンは、IL-1、IL-6、TNF、並びに他の調節性サイトカイン及び炎症促進性サイトカインの分泌を誘導することが知られているので、ペプチドグリカンをその刺激物質としてMLCに添加した。Th22細胞の誘導を研究することが目的である場合、IL-2の添加も必要であった。PBMCを抗CD3/28+LPS及びTGFβで刺激した。5日後、それらをPMA+イオノマイシンで再刺激して、サイトカイン分泌を誘導し、IL-17の発現についてフローサイトメトリーで解析した。PBMC培養物中のTh17細胞のパーセンテージは、これらの培養条件の結果として3倍になった(
図26B)。IL-23アンタゴニストと組み合わせてIL-6を含めると、Th17細胞の3倍化が妨げられた。Th22細胞は、抗CD3/28刺激でも見られる(
図26C)。同種異系白血球を用いるインビトロのヒトT細胞のインビトロ刺激もまた、高レベルのIL-17産生T細胞を誘導した(
図26D)。
【0494】
個々のIL-6アンタゴニスト及びIL-23アンタゴニストの添加は、抗CD3/28培養系でのTh17分化及びTh22分化を阻害した。2つのアンタゴニスト、31A12 scFv及び13A8 scFvの組合せは、どちらかのアンタゴニスト単独よりも効果的であった(
図27)。これは、先の実験と同じアンタゴニストによるMLC中でのTh17の阻害の場合にも当てはまる(
図28)。13A8c-20kPEG-31A12c二重特異性体は、親キメラmAbである13A8及び31A12の組合せよりも活性があり、どちらかのmAb単独よりも、MLC中でのTh17細胞の阻害が良好であった(
図29)。これは、本発明の二価の二重特異性コンストラクトを用いることによって得られる有益な効果を示している。
【0495】
(実施例10:インビボで測定されるTh17細胞及びTh22細胞の発生に対するscFvの効果)
インビボでのTH17及びTH22分化の阻害を評価するために、異種移植片モデルを使用した。このモデルでは、ヒト造血幹細胞が免疫不全マウスに移植され、それにより、ヒト免疫系が獲得されている。これらのヒト化NOD-scid IL2rg
null(NSG)マウスに、マウスに存在するヒト免疫細胞と同種異系のヒト皮膚を移植する(
図30)。その後、それらを、IL-6及びIL-23のPEG化scFvアンタゴニスト(13A8c-PEG及び31A12c-PEG)の混合物で処置する。その後、ヒト免疫系は、ヒトT細胞のエフェクター細胞への分化を介して、この同種異系ヒト皮膚を拒絶する。IL-6アンタゴニスト及びIL-23アンタゴニストは、同種異系皮膚移植の1つの結果であるTh17細胞の分化を阻害したが、これらのアンタゴニストは、皮膚同種移植片の拒絶を阻害せず、その狙いを定めた免疫抑制効果を反映した。簡潔に述べると、新生NSGマウスに放射線照射し、臍帯血由来のヒト造血幹細胞を注射し、その後、12週での末梢血中の生着レベルをスクリーニングした(Brehmらの文献(2010))。生着に成功したマウスに、ヒト同種異系皮膚を移植し、100μgの抗IL-6及び抗IL-23(13A8c-PEG及び31A12c-PEG)を2日おきに投与した。皮膚移植から30日後、脾臓を摘出し、単一細胞懸濁液をPMA/イオノマイシンで刺激し、細胞内サイトカインについてアッセイした。CD3+/CD4+細胞を、IL-17及びIL-22産生についてフローサイトメトリーで解析した。
【0496】
サイトカインアンタゴニストで処置していないマウスでは、フローサイトメトリープロファイル(
図31A)、及び各サブセット中のTh細胞の数を表す収集データ(
図31B)に示すように、極めて顕著なレベルのTH17細胞及びTH22細胞が発達した。皮膚移植後、マウスを、抗IL-6(13A8c scFv-PEG)と抗IL-23(31A12c-PEG)の組合せで30日間処置した。処置マウスにおけるTH17細胞及びTH22細胞の分化は、完全に阻害された。これらのデータは、IL-6及びIL-23が、これらのTH17細胞及びTH22細胞のインビボ分化に必要であることを初めて明確に示している。さらに、これらのデータは、この動物モデルが、ヒトT細胞分化の誘導及び調節をすることができるモデルであることを示している。最後に、これらのデータは、これらのサイトカインの作用をインビボで完全に阻害するためにここで用いられているIL-6アンタゴニスト及びIL-23アンタゴニストの有効性を示している。
【0497】
同様の結果は、13A8c-20kPEG-31A12c抗IL-6/抗IL-23二重特異性体についても得られた。
図32A〜Cに示すように、この二重特異性分子は、一価の抗IL-23試薬よりもTh17分化を阻害するのに効果的である。しかしながら、TH17/22以外の細胞型の白血球マーカーが有意には低下しなかったので、
図32D〜Lは、該二重特異性体が、一般に免疫抑制性であるわけではないことを示している。
【0498】
(実施例11:インビボの乾癬モデルで測定されるTh17細胞及びTh22細胞のエフェクター機能に対するscFvの効果)
炎症部位でのTh17エフェクター機能の阻害を評価するために、ヒトの乾癬皮膚が免疫不全scidマウスに移植されているscid/hu乾癬モデルを用いた。皮膚移植片及び乾癬炎症は、最大2カ月間存続する。このマウスを薬物で2週間処置し、炎症に対する効果を、
図33に示すような組織学的解析で測定する。この解析では、13A8c-20kPEG-31A12c抗IL-6/抗IL-23二重特異性体の効果を、表皮厚の有意な低下に明白に見ることができる。この効果は、組織学的切片から定量することもできる。13A8c-20kPEG-31A12cとその一価抗IL-6阻害剤成分、又はIL-6アンタゴニストmAbのトシリズマブ(Actemra)との比較は、移植片がまだマウス表面に存在する間の、病理学者による半定量的臨床スコアリング(
図34A)、又は上記のような組織学的切片における表皮厚の定量的測定(
図34B)のどちらかによって測定される、どちらかのIL-6アンタゴニスト単体に対する13A8c-20kPEG-31A12cの有意な優位性を示している。さらに、13A8c-20kPEG-31A12cは、TNFアンタゴニストのEnbrelよりも素速く炎症を阻害するように作用する(
図34C〜D)。
【0499】
(実施例12:インビボで測定されるIL-23媒介性の耳の炎症の発生に対する二重特異性scFvの効果)
ヒトIL-23はマウスIL-23受容体に作用することができるので、ヒトIL-23をマウスの耳に皮内注射すると、該IL-23は炎症を引き起こす。耳に4日間毎日IL-23を注射することにより、ヒトIL-23によって誘導される耳の炎症を阻害する13A8c-PEG-31A12cの能力を測定した。その後、耳の腫脹を測定した(
図35A)。IL-23処置が始まる前日に始めて、IL-23処置が始まった翌日に、マウスを処置し、この処置は、耳の腫脹を効果的に阻止した(
図35B)。13A8c-PEG-31A12cは、
図35Cに示すように、IL-12/23アンタゴニストmAbのStelera(ウステキヌマブ)と少なくとも同じくらい効果的であった。重要なことに、20kDa PEG又は40kDa PEGのどちらかを用いて作製された13A8c-PEG-31A12cによるマウスの処置は、IL-23処置が始まる前日にしか投与されない場合でも、耳の腫脹の非常に効果的な阻害剤となった(
図35D)。
【0500】
(実施例13:AZ17のIL-23特異的scFv成分のエピトープマッピング)
31A12 mAbは、これまでに記載されていない独特のエピトープに結合する。使用されたmAbは全て、ヒトIL-12に結合するが(
図36B)、31A12及び49B7は、IL-23阻害に特異的であり、ヒトIL-12を阻害しない(
図36B)。これらのデータは、これらのmAbがp40鎖に結合することを明白に示している。31A12及び49B7は、IL-12も阻害する22H8と比べて、比較的弱くヒトIL-12に結合する。しかしながら、3つのmAbは全て、サルIL-12に強く結合し(
図36B)、かつサルIL-12生体活性も阻害する(
図36C)。したがって、31A12及び49B7は、ヒトIL-12活性とサルIL-12活性を識別する。31A12及び49B7は、ヒトIL-12で部分的にマスクされ、サルIL-12、及び両方の種由来のIL-23で露出しているp40エピトープを認識するようである。さらに、AZ17は、ヒトIL-12とヒトIL-23の両方を阻害するp40特異的mAbである、ウステキヌマブの結合を阻害しない。
【0501】
(参考文献)
【化8】