特許第6173992号(P6173992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6173992-タイヤのトレッドブロック構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6173992
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】タイヤのトレッドブロック構造
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20170724BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   B60C11/03 300E
   B60C11/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-199439(P2014-199439)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2015-81079(P2015-81079A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0126500
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514040088
【氏名又は名称】ハンコック タイヤ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】洪 昌 孝
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−055974(JP,A)
【文献】 特開2009−173048(JP,A)
【文献】 特開平07−032817(JP,A)
【文献】 特開2001−253209(JP,A)
【文献】 特開平07−081326(JP,A)
【文献】 特開平02−246808(JP,A)
【文献】 特開平02−249707(JP,A)
【文献】 特開2009−132179(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137143(WO,A1)
【文献】 実開平01−154902(JP,U)
【文献】 特開昭53−080602(JP,A)
【文献】 米国特許第06213181(US,B1)
【文献】 米国特許第02121956(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/03
B60C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドブロック構造を含むタイヤの製造方法であって、加硫工程でタイヤのトレッドブロック内の同一の体積、同一のゴムを適用したトレッドコーンの鋳型金属を前記トレッドコーンの周りのゴムの鋳型部分とは異なる金属で製作して熱伝導率が異なるようにさせて、前記トレッドコーンと前記トレッドコーンの周りのゴムの加硫温度を二元化して架橋度を変化させて、トレッドブロックの外面から内面に向かって物性の異なるゴムを柱状に形成することを特徴とするタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドブロック構造に関し、より詳しくは、トレッドブロックの外面から内面に向かって物性の異なるゴムを柱状に形成した少なくとも一つのトレッドコーンを含み、ブロックの剛性をコントロールできるタイヤのトレッドブロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、一般的にタイヤの内部を構成するインナーライナーと、インナーライナーの外周に積層されるボディプライと、ボディプライの外周に積層されるベルトと、ベルトの外周に積層され実質的に地面と接触するトレッドと、タイヤの両側部を構成する両側サイドウォールと、ホイールに結合され空気圧を保つ両側ビードとを含んでなる。
【0003】
このうち、トレッドは、路面と直接接触する厚いゴム層からなり、内部のカーカス及びベルト層を保護するために折損や損傷/衝撃に対して強く、またタイヤの走行寿命を伸ばすために耐磨耗性が強いゴムを採用する。図1はこのような従来のタイヤのトレッドブロックの一例を示したイメージ図面である。
【0004】
一方、既存のタイヤは、トレッド部のブロックを1種、あるいは多種の層を有するゴムで構成し、駆動力及び制動力を伝えるように設計されている。このトレッド部を構成するゴムは、荷重及びタイヤの回転によって変形して復元され、その変形に抵抗する剛性によって駆動力及び制動力(以下、トラクションという)とコーナリングフォースなど、タイヤの性能に影響を与える特性を持つ。
【0005】
従って、タイヤ業界では、この点に主眼を置いてトレッドブロックの剛性をコントロールすることでタイヤの性能を向上させるためのたゆまない努力がなされてきたが、高いスキッドの深さを適用する場合、摩耗性能は向上するものの、剛性が低下し、トラクション性能とコーナリング性能が低くなるトレード−オフ傾向が現われるなど、既存のトレッドブロック構造の構成では様々な性能指標を同時に満足させる「トレッドブロックの剛性のコントロールを通じたタイヤ性能の向上技術」の確保に根源的な限界が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決するためのもので、本発明の目的は、タイヤのトレッドブロックの剛性をコントロールすることでタイヤの様々な性能の中、トレード−オフされる性能を最小化することで、所望の剛性を導き出すことができる、タイヤのトレッドブロック構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述のような目的を達成するための本発明の一つの態様は、タイヤのトレッドブロック構造において、前記トレッドブロック構造は、トレッドブロックの外面から内面に向かって物性の異なるゴムを柱状に形成した少なくとも一つのトレッドコーンを含み、ブロックの剛性をコントロールできることを特徴とする、タイヤのトレッドブロック構造に関する。
【0008】
本発明において、前記トレッドブロック構造のトレッドコーンは、ブロック内の加硫温度を二元化することでゴムの架橋度を変化させて形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の一つの具体例によるタイヤのトレッドブロック構造において、前記トレッドコーンの断面形状は円形、四角形、三角形、ひし形、多角形及び楕円形などの多様な形状からなることができ、トレッドブロック内で複数のトレッドコーンはランダム方式で配置されるか、または複数のトレッドコーンの間に一定の距離及び間隔を保ちながら配置することができる。
【0010】
本発明の一つの具体例によるタイヤのトレッドブロック構造において、トレッドブロック内で前記トレッドコーンが占める体積は、トレッドブロックの全体積の10〜80%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述のような構成を持つ本発明によるタイヤのトレッドブロック構造は、トレッドブロック内に存在する物性の異なるトレッドコーンが荷重及びタイヤの回転によってトレッドブロックが変形して復元される時、既存の構造のような体積を持つブロック形状で他の剛性を誘導できるようにする。
【0012】
また、これはタイヤが持つ様々な性能指標の中、トレード−オフされる性能を最小化し、所望の剛性を導き出すがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】既存タイヤのトレッドブロックの一つの例示的な図面である。
図2】本発明の一つの具体例によるタイヤのトレッドブロック構造の形成方法を示した例示的なイメージ図面である。
図3】本発明の一つの具体例によるトレッドコーンの断面形状を例示した図である。
図4】本発明の一つの具体例によるトレッドコーンの配列を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な具体例について、添付された図面などを参照してより詳しく説明する。また、本発明を説明するに当たり、関連した公知の汎用機能または構成に対する詳細な説明は省略する。
【0015】
本発明は、トレッドブロック(1)の外面から内面に向かって物性の異なるゴムを柱状に形成することで、ブロックの剛性をコントロールできるタイヤのトレッドブロック構造に関するものである。この時、トレッドブロック内に存在する物性の異なる少なくとも一つのトレッドコーン(20)が、荷重及びタイヤの回転によってトレッドブロックが変形して復元される時、既存の構造のような体積を持つブロック形状で他の剛性を誘導できるようにする。また、これはタイヤが持つ様々な性能指標の中、トレード−オフされる性能を最小化し、所望の剛性を導き出すことができるようにする。
【0016】
前記物性の異なるトレッドコーンは、ブロック内の加硫温度を二元的に適用してゴムの架橋度を変化させ、このような変化がモジュラス及びtanDの変化をもたらすことで形成されることができる。
【0017】
一般的に、タイヤは様々なゴム及び薬品を添加して混合したゴムを圧出、圧延工程などを通じて半製品化した後、成形工程で各種半製品を接着して、完成された模様でグリーンタイヤを成形し、成形工程で完成したグリーンタイヤをタイヤの加硫モールドに入れて、内側及び外側から一連の熱と加圧蒸気を加えて配合されたゴムを化学的に結合させる、タイヤの加硫工程を通じて製造される。
【0018】
ここで、本発明によるタイヤブロック構造は、図2に示したように、2つの領域(10,20)に区分されて、領域(10)にはT, 領域(20)にはTの互いに違う水準の加硫温度を同一のブロック内で提供することによって、同一のブロック内で周辺のゴム(10)とは異なる物性を持つゴムに配された少なくとも一つのトレッドコーン(20)を含むブロック構造を形成することができるようになる。一般的に、加硫温度が高いほど架橋度は小さくなり、これによってモジュラスは増加し、tanDは減少する現象が起こる。よって、本発明によるトレッドブロック構造においては、この現象を適宜適用することによって、同一の体積、同一のゴムを適用したにもかかわらず、ブロック内に異なる物性を構成することができる効果が得られ、これを通じてブロック全体の剛性を所望の方向へと設計することができる。
【0019】
この時、異なる水準の加硫温度を同一のブロック内に提供する方法としては、これに限定されるものではないが、例えば、図2におけるT温度領域(20)にあたる部分の鋳型金属を周囲の鋳型部分とは異なる金属で製作して熱伝導率が異なるようにすることで、同一の熱入量を提供しながら異なる温度を鋳型の表面に実現する方法を考えることができる。
【0020】
本発明の一つの具体例によるタイヤのトレッドブロック構造において、前記トレッドコーンの断面形状は、図3に示したように、円形、四角形、三角形、ひし形、多角形及び楕円形などの様々な形状からなることができ、トレッドブロック内で複数のトレッドコーンは、図4(a)に示したように、ランダム方式で配置するか、または 図4(b)に示したように、複数のトレッドコーンの間に一定の距離及び間隔を保ちながら配置することができる。
【0021】
本発明の一つの具体例によるタイヤのトレッドブロック構造において、トレッドブロック内で前記トレッドコーンが占める体積は、トレッドブロックの全体積の10〜80%であることが好ましい。トレッドコーンの体積が10%未満であると、トレッドコーンから得られる剛性の調節効果が微々たるものであるという問題があり、80%を超えると、トレッドコーンによる剛性の調節効果とはみなされないことが多く、全ゴムの物性変化による剛性変化であると判断されるという問題がある。
【0022】
下記グラフは、本発明によるトレッドブロック構造の剛性コントロール効果をシミュレーションした結果を示したものである。
※トレッドブロックのサイズ:幅26mm、長さ30.5mm、深さ6.8mm
※単一のトレッドコーンのサイズ:直径14mm
※メッシュサイズ:1mm x 1mm
※Solver:Abaqus 6.10.1
※物性 (超弾性−Neo Hooke)
−トレッドブロック:C10:3、D1:0.001
−トレッドコーン1:C10:3、D1:0.002
−トレッドコーン2:C10:3、D1:0.003
−トレッドコーン3:C10:4、D1:0.002
−トレッドコーン4:C10:4.5、D1:0.001
【0023】
C10及びD1は、不変量級数式で論議される材料係数(Material coefficient)で、試験から得られたS−S曲線の物性について定義する理論式の常数であり、詳しい説明は省略する。
【0024】
【表1】
【0025】
前記グラフから分かるように、本発明によるタイヤのトレッドブロック構造は、同一の体積構造で複数のトレッドコーンが適用された場合、複数のトレッドコーンの物性によって剛性が変化することを確認できる。
【0026】
以上、本発明の好適な具体例を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明は上述した具体例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内で、本発明が属する技術分野の当業者によって多く変形することができることは自明であろう。
図1
図2
図3
図4