【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の発見に基づいている。
我々の理論研究によると、Hall-Petch効果と量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)との共同作用により、超硬材料の硬度が有効的に向上される(Int.J.Refract.Met.Hard Mater.2012,33,P93-106)。この理論に基づき、我々はオニオンライク構造のナノ球状窒化ホウ素を原料として、高温高圧下で高密度双晶を有するナノ立方晶窒化ホウ素を獲得した。そのため、ナノ双晶構造の獲得が、超硬材料の硬度を明らかに向上させる新方法になっている(Nature,2013,493,P385-388)。これに基づき、通常使用されているグラファイトの代わりに無核オニオンライクカーボン粒子を原料とし、高温高圧下で、無核オニオンライクカーボンからダイヤモンドへの相転移過程で大量の双晶が生じされることにより、結晶粒が大きくなるのを防ぎ、高密度双晶構造のナノ立方晶ダイヤモンドが獲得できる。また、このようなナノ双晶立方晶ダイヤモンドは超高の硬度を有し、その硬度が単結晶ダイヤモンドと従来技術で知られている多結晶ダイヤモンドに比べると遥かに大きい。従来技術により、有核オニオンライクカーボンを原料として高温高圧合成を行う場合に、ダイヤモンド核が大きくなり易いので、高密度双晶構造の立方晶ダイヤモンド材料が獲得できない。
【0011】
無核オニオンライクカーボン粒子を用いて超高硬度ナノ双晶ダイヤモンド材料を製造するのは、未だ報道されていない。また、ナノ双晶ダイヤモンドバルクの合成も報道されていない。
【0012】
具体的に、本発明は、超高硬度ナノ双晶ダイヤモンドバルク材料の高圧下の製造による合成方法を開示し、前記方法は以下のステップを含む。
【0013】
(1)無核オニオンライクカーボン粒子を原料として、金型に入れて、一定の形状を有するプレフォームに押し付ける。
【0014】
(2)プレフォームを高圧合成金型に入れて、圧力4〜25GPa、温度1200〜2300℃の条件下で1〜120分間保温させる。
【0015】
(3)圧力を放出し冷却させる。
【0016】
オニオンライクカーボン(オニオンヘッドカーボンと呼ぶ文献もある)は、オニオンライク構造のナノ球状カーボンであり、最近開発された既知の材料である。そして、当該材料の性質、特徴、及び製造方法は、当業者に知られている。また、オニオンライクカーボンの主な製造方法は、例えば、Zhijun Qia等の論文“Graphitization and microstructure transformation of nanodiamond to onion-like carbon”,Scripta Materialia,2006,54,P225-229のように、ナノダイヤモンドを1400℃以上まで加熱させて得られ、このオニオンライクカーボンのコア部には普通ダイヤモンド核がある。しかし、本発明の原料は、そのコア部にダイヤモンド核のないオニオンライクカーボン、即ち、無核オニオンライクカーボンである。これらの無核オニオンライクカーボンは、本発明者の他の特許技術(特許出願番号が
201310314469.8であり、その全文が引用によって本文に取り込まれる)により製造されている。
【0017】
“オニオンライク構造”(“onion-like structure”,“オニオンヘッド構造”とも呼ばれる)は、結晶学分野で公知の構造である。即ち、電子顕微鏡で観察すると、これら粒子が多層の共心球状構造を有している。
【0018】
簡単に言えば、本発明で使用されるオニオンライク構造のナノ球状カーボンは、このような球状カーボンの各層の結晶面が球面状であることと、その粒径が5〜70nm(10〜50nmが好ましい)範囲内に入り、粒径分布が均一であり、そのコア部にダイヤモンド核がないことと、を特徴とする粒子が球状に似ているナノレベルのカーボン材料である。当該材料は、特許出願番号
201310314469.8に開示される方法で製造される。例えば、その製造方法は以下の方法であってもいい。カーボンブラックをアルコールに入れて懸濁液を調製し、調製された懸濁液を液流式粉砕機に入れる。液流式粉砕機は、懸濁液に高速噴流による乱流を生成させ、発振器を励起させて超音波、衝動波を生成させ、カーボンブラック懸濁液が数回押し付けられて変形された後、オニオンライク構造のナノ球状カーボンが得られる。また、このようなオニオンライクカーボンのコア部には、ダイヤモンド核がない。
【0019】
より詳しく言うと、本発明で使用される無核オニオンライクカーボンは、以下の例示的な方法により製造できる。
【0020】
(1)カーボンブラックを原料として、粒径が30〜100nmのカーボンブラック粉末をアルコール(analytically pure)の中に入れて、1〜30wt%濃度の懸濁液を調製する。
【0021】
(2)懸濁液を超細粒化装置(例えば、廊坊ナノ機械有限会社が開発したPEL-20型超細粒化机上実験装置は、懸濁液の最大のパワーが1500kg/cm
2、即ち、150MPaの圧力まで達するようにすることができる)で循環的な処理を行い、圧力100〜150MPaで循環的に50〜1000回実行させる。
【0022】
(3)産物溶液を乾燥機に入れて、45〜60℃環境で3〜6時間乾燥させ、乾燥産物を粉末に粉砕した後、収集すると、粒径が5〜50nmのナノオニオンライクカーボンが得られる。
【0023】
図1(a)は、例示的な無核オニオンライクカーボン粒子の電子顕微鏡写真である。
【0024】
本発明の原料であるナノレベルの無核オニオンライクカーボン粒子として、粒径が5〜70nmであるのが好ましく、10〜50nmであるのが更に好ましい。反応原料として、その純度が90%以上であるのが好ましく、その純度が95%以上であるのが更に好ましい。
【0025】
本発明方法の高温高圧合成前に必ず無核オニオンライクカーボン粉末を押し付けてプレフォームとする。例えば、窒素雰囲気のグローブボックスのような不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0026】
本発明の第2ステップの高温高圧合成で、使用される温度範囲が通常1200〜2300℃である。例えば、1300℃、1400℃、1500℃又は1600℃から1800℃、1900℃、2000℃又は2100℃までであり、また例えば1800〜2300℃であってもいい。使用される圧力の範囲は、通常4〜25GPaである。例えば、5、6、7、8、9、10、11又は12GPaから18、19、20、21、22、23、24又は25GPaまでである。反応時間は、通常キーポイントではなく、例えば、1〜600分、1〜240分、1〜120分、2〜120分、10-120分等であっても良く、使用される温度、圧力により調節させることができる。
【0027】
高温高圧合成ナノ双晶ダイヤモンドバルク材料の設備が既に知られているため、本発明の方法は、例えば、米国Rockland Research会社T25型1000トン高温高圧合成及び原位置高圧物理性能テストシステムのような公知の設備で行われる。
【0028】
通常高温高圧合成を行う場合に、原料プレフォームを1つの高温高圧組立ブロックに入れ、そして原料プレフォームを有する高温高圧組立ブロックを、高温高圧合成設備の中に入れる。
図2は、高温高圧組立ブロックを例示的に示す図である。その原理は、MgO等のセラムミックス粉末を用いて中心穴を有するバルク(T25システムでは、八面体である)に製造し、中心穴に試料と加熱体及び温度測定部品が入られ、MgOバルクを加圧で高密度化して、合成過程の圧力伝送と密封及び断熱等の作用を実現する。本発明の実施例で使用される高温高圧組立ブロックは米国Arizona州立大学で製造され、米国TJ Pegasus会社から購入され、合成中で10/5と8/3の2種類の規格の高温高圧合成ブロックが使用される。
【0029】
ステップ(2)の高温高圧条件下で、無核オニオンライクカーボンが立方晶ダイヤモンドに変換される。前述のように、本発明で無核オニオンライクカーボン粒子を原料とするため、この過程において、球状結晶面を有する原料が立方相に変換する時に大量の双晶を形成することにより、結晶粒が大きくなるのが阻止され、知られている方法に比べて更に小さい(同効果)結晶粒サイズが形成され、そのため、その性能が大幅に向上される。
【0030】
高温高圧合成後、圧力を放出し冷却させることにより、双晶ナノ立方晶ダイヤモンドバルクを含有する材料が得られる。これは、超硬ナノ双晶多結晶立方晶(又は複相)ダイヤモンドバルク材料であり、以下の特徴/性能の1種類又は複数の種類を有する。
【0031】
1)ナノ双晶ダイヤモンドバルクは、ビッカース硬度が、例えば、155、160、165、170、175、180、190又は200GPaから280、290、300、310、320、330、340又は350GPaまでの155〜350GPaに達し、ヌープ硬度が、例えば、120、125、130、135又は140GPaから200、210、220、225、230、235又は240GPaまでの120〜240GPaに達する。
【0032】
2)ナノ双晶ダイヤモンドバルクは、破壊靭性(K
1C)が、例えば、17〜22MPa・m
1/2、18〜21MPa・m
1/2の10〜30MPa・m
1/2である。
【0033】
3)ナノ双晶ダイヤモンドバルクの結晶粒のサイズが、例えば、2、4、5、6、8、10、12、15、18又は20nmから65、70、75、80、85、90又は95nmまでの2〜100nmである。
【0034】
4)結晶粒内に高密度双晶構造を有し、双晶幅が1〜15nmである。
【0035】
5)ナノ双晶ダイヤモンドバルクは、無色透明又は黒色不透明の結晶である。
【0036】
6)ナノ双晶ダイヤモンドバルクの体積が、例えば、1〜1500mm
3、5〜1500mm
3、5〜1000mm
3、10〜1500mm
3、10〜800mm
3、10〜500mm
3、又は10〜200mm
3の1〜2000mm
3である。
【0037】
また、本発明は更に、内部が高密度双晶を有するナノ立方晶構造であり、結晶粒径が2〜100nmであり、ビッカース硬度が160〜350GPaであり、ヌープ硬度が140〜240GPaである超高硬度立方晶ダイヤモンドバルク材料(ナノ双晶ダイヤモンドバルク)に関する。
【0038】
研究により、本発明の超高硬度ナノ双晶ダイヤモンドバルク材料の構造は、純立方晶閃亜鉛鉱構造の単相又は立方晶閃亜鉛鉱構造と少量の6Hダイヤモンド構造との2種類の高密度相で組成されるとともに、結晶粒内に大量の双晶距離が1〜15nmである双晶組織を有する。
【0039】
本発明と従来技術とを比べると、獲得されるナノ双晶ダイヤモンドバルクは、普通の立方晶ダイヤモンド単結晶より遥かに高い硬度を有する。そのビッカース硬度が、最大単結晶ダイヤモンドの3倍ぐらいの350GPaに達し、ヌープ硬度が最大240GPaに達する。ナノ双晶ダイヤモンドバルクは、精密及び超精密加工分野、研摩用具と伸線ダイス及び特種光学デバイス等の分野で広い応用前景を有する。
【0040】
本発明は、硬度が高い以外にも、更に以下の突出した得点と有益効果の1個又は複数を有する。
【0041】
1)本発明は、工芸が簡単で、反応原料に対して特別な処理が要らなく、高圧合成パラーメータが制御し易い。
【0042】
2)高温高圧合成方法でバルク材料が製造され、材料の密度が高い。
【0043】
3)ナノ双晶立方晶(又は複相)ダイヤモンドバルクの体積が大きく、そのサイズの範囲が1〜200mm
3であってもいい。
【0044】
4)ナノ双晶ダイヤモンドバルクの破壊靭性(K
1C)が10〜30MPa・m
1/2である(例えば、17〜22MPa・m
1/2)。
【0045】
5)ナノ双晶ダイヤモンドバルクの結晶粒のサイズが5〜100nmである。
【0046】
6)ナノ双晶ダイヤモンドバルクが無色透明又は黒色不透明の結晶である。