特許第6174037号(P6174037)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュランの特許一覧 ▶ ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニムの特許一覧

特許6174037含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド
<>
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000007
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000008
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000009
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000010
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000011
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000012
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000013
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000014
  • 特許6174037-含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174037
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】含浸繊維アセンブリで覆われたトレッドパターン要素を含むトレッド
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/14 20060101AFI20170724BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20170724BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   B60C11/14 Z
   B60C11/00 E
   B60C11/12 Z
   B60C11/00 A
【請求項の数】29
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-546544(P2014-546544)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-500176(P2015-500176A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012075627
(87)【国際公開番号】WO2013087878
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年10月5日
(31)【優先権主張番号】1161811
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】アバ ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】エル−ハラク アブデスラム
(72)【発明者】
【氏名】ペリン フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】マエサカ マサユキ
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−186616(JP,A)
【文献】 米国特許第02710042(US,A)
【文献】 特開平01−153305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/14
B60C 11/00
B60C 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気タイヤのためのトレッドであって、
・側面と、当該トレッドを備えたタイヤが運転している時に路面と接触するようになった接触面とを含み、該接触面と地面の間の前記接触の境界が少なくとも1つのエッジコーナを形成する複数のトレッドパターン要素と、
・対向する側面によって区切られ、溝及び/又はサイプの形態の複数の切り込みと、
・主剤と呼ばれる少なくとも1つの第1のゴム化合物で形成された各トレッドパターン要素と、
を含み、
前記空気タイヤの回転軸に垂直な平面における断面で、かつトレッドパターン要素の少なくとも1つの接触面を通して見ると、該接触面に隣接する前記切り込みのうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的にカバー層で覆われ、かつ該カバー層が、織又は不織繊維アセンブリを含有
前記カバー層はエラストマー材料を含有し、前記繊維アセンブリは前記エラストマー材料で含浸されており、
前記エラストマー材料による含浸前の前記繊維アセンブリの見掛け密度が0.4未満であり、
前記エラストマー材料は、少なくとも1つのジエンエラストマーに基づく組成物であり、
前記組成物は、20重量部(phr)よりも多い硫黄のゴムを含有し
10Hzの周波数及び−10℃の温度で0.7MPaの交互最大応力を受ける前記エラストマー材料の動的剛性率G*が、100MPaよりも大きい
ことを特徴とするトレッド。
【請求項2】
前記繊維アセンブリの繊維が、50mmを超える長さの長繊維であることを特徴とする請求項に記載のトレッド。
【請求項3】
前記繊維アセンブリは、前記繊維の2次元アセンブリであることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレッド。
【請求項4】
前記2次元アセンブリは、不織物であることを特徴とする請求項に記載のトレッド。
【請求項5】
前記2次元アセンブリは、織物であることを特徴とする請求項に記載のトレッド。
【請求項6】
前記繊維アセンブリは、長繊維の3次元アセンブリであることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項7】
前記3次元繊維アセンブリは、フェルトであることを特徴とする請求項に記載のトレッド。
【請求項8】
前記繊維アセンブリの繊維が、紡織繊維、鉱物繊維、及びこれらの混合物の群から選択されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項9】
前記繊維アセンブリの繊維は、絹、綿、及び羊毛繊維の群から選択された繊維を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項10】
前記繊維アセンブリの繊維は、セルロース、ポリアミド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、及びポリ塩化ビニル繊維の群から選択された繊維を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項11】
前記ポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート繊維の群から選択された繊維を含有することを特徴とする請求項10に記載のトレッド。
【請求項12】
前記繊維アセンブリの繊維は、ガラス、炭素、及び玄武岩繊維の群から選択された鉱物繊維を含有することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項13】
エラストマー材料による含浸前の前記繊維アセンブリの見掛け密度が、0.25未満であることを特徴とする請求項から請求項12のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項14】
前記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項15】
前記エラストマー材料は、少なくとも1つのエラストマーブロックと少なくとも1つの熱可塑性ブロックとを含むブロックコポリマーである少なくとも1つの熱可塑性エラストマーに基づいていることを特徴とする請求項から請求項13のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項16】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記エラストマーブロックは、25℃よりも低いガラス遷移温度を有するエラストマーから選択されることを特徴とする請求項15に記載のトレッド。
【請求項17】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記エラストマーブロックは、エチレンエラストマー、ジエンエラストマー、及びこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項15及び請求項16のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記エラストマーブロックは、イソプレン、ブタジエン、又はこれらの混合物から誘導されたジエンエラストマーであることを特徴とする請求項17に記載のトレッド。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記熱可塑性ブロックは、80℃よりも高いガラス遷移温度及び半結晶熱可塑性ブロックの場合に80℃よりも高い融点を有するポリマーから選択されることを特徴とする請求項15から請求項18のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項20】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記熱可塑性ブロックは、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリエーテル、フェニレンポリスルフィド、ポリフッ化物、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルイミド、熱可塑性コポリマー、及びこれらの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項15から請求項19のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項21】
前記ブロックコポリマーの1つ又は複数の前記熱可塑性ブロックは、ポリスチレンから選択されることを特徴とする請求項15から請求項20のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項22】
1つ又は複数の前記熱可塑性エラストマーは、スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)熱可塑性エラストマー、及びこのようなコポリマーの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項15から請求項21のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項23】
前記繊維アセンブリは、少なくとも1つの可塑剤を更に含有する材料で含浸されることを特徴とする請求項15から請求項22のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項24】
10Hzの周波数及び−10℃の温度で0.7MPaの交互最大応力を受ける前記エラストマー材料の動的剛性率G*が、200MPaよりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項23のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項25】
前記カバー層の厚みが、0.4と3.5mmの間で構成されることを特徴とする請求項1から請求項24のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項26】
前記カバー層の前記厚みは、0.4と1.0mmの間で構成されることを特徴とする請求項25に記載のトレッド。
【請求項27】
前記カバーの前記厚みは、2.0と3.0mmの間で構成されることを特徴とする請求項25に記載のトレッド。
【請求項28】
前記カバー層は、前記切り込みの底部から、4mmに少なくとも等しい高さHrにわたって延びることを特徴とする請求項1から請求項27のいずれか1項に記載のトレッド。
【請求項29】
前記カバー層は、新しい条件において、前記トレッドパターン要素の前記接触面と前記側面の間の前記境界によって形成された前記エッジコーナまで遠くに延びることを特徴とする請求項28に記載のトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、より具体的には、このようなタイヤのトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特に濡れた路面上で満足のいく運転性能を取得するために、切り込みによって互いに分離されたトレッドパターン要素によって形成されたトレッドパターンを有するタイヤトレッド(2mmよりも大きいか又はそれに等しい平均幅の溝、及び/又は2mm未満の平均幅のサイプ)を与えることは公知の慣例であり、これらの切り込みは、例えば、成形によって得られる。こうして形成されたトレッドパターン要素は、運転中に路面と接触するように意図された接触面を含み、側面も、切り込みで区切り、接触面との各側面の交差位置は、取りわけ路面が濡れている時にタイヤと路面の間の接触を促進するエッジコーナを形成する。より一般的には、エッジコーナは、運転中の地面とのトレッドパターン要素の接触の幾何学的境界であると定義される。
【0003】
トレッドパターン要素により、タイヤの周囲全体を行かない要素(ブロック)とタイヤの周囲全体を行く要素(リブ)との間で区別される。更に、トレッドパターン要素は、付加的エッジコーナを形成するように1つ又はそれよりも多くのサイプを含むことができ、各サイプは、トレッドパターン要素の少なくとも1つの側面上に開くか又は開かないことが可能である。定義により、サイプは、2mm未満の幅だけ互いに離れている2つの対向する主面によって区切られた空間である。
【0004】
濡れた路面上のタイヤのグリップを改善するために、トレッドを作るゴム化合物(ゴム組成物とも呼ばれる)の性質そのものが、かなりの影響があることは公知である。すなわち、濡れた地面上により良好なグリップを有するゴム化合物で作られたタイヤトレッドは、濡れた条件で運転している時に改善された性能を取得することを可能にする。しかし、湿潤グリップ性能のこの改善は、一般的な規則として、乾いた路面上の摩耗性の低下と共に起こり、より短い摩耗寿命と車両上のタイヤをより多く交換する必要性とをもたらす。
【0005】
本出願人の会社の国際公開第03/089257号は、
・側面と、トレッドを備えたタイヤを運転している時に路面と接触するように意図された接触面と含み、接触面と地面の間の接触の境界が少なくとも1つのエッジコーナを形成する複数のトレッドパターン要素と、
・対向する側面によって区切られ、溝及び/又はサイプの形態の複数の切り込みと、
・主剤と呼ばれる少なくとも1つの第1のゴム化合物で形成された各トレッドパターン要素と、
を含む空気タイヤのためのトレッドを開示しており、このトレッドは、このトレッドの厚みを含む平面において断面で見ると、少なくとも部分的にカバー層で覆われた少なくとも1つの切り込みの範囲を定める少なくとも1つの面を有する。このトレッドは、主剤が、同じ地面上のカバー層の材料のグリップよりも劣る湿潤グリップを有するようなものである。
【0006】
このトレッドは、それを備えた空気タイヤの湿潤気候性能の相当の改善を可能にする。
【0007】
このトレッドを製造する1つの方法は、取りわけ、国際公開第2006/069912号に開示されている。この製造の方法により、第1の段階において、噴射ノズルを使用してグリーンタイヤの中に1つ又はそれよりも多くのインサートの形態で注入されるカバー材料を具備する。1つ又は複数のインサートは、次に、第2の段階において、加硫モールドのバーにより、これらのバーによって成形された溝の壁の全て又は一部が覆われるように成形される。
【0008】
この製造の方法は、特に精密な成形品を取得する観点からいくつかの制限を有する。具体的には、インサートは、それが形成されている間に、このインサートをより薄い厚みの層に変換しようとしてバーから実質的な剪断力を受ける。この剪断力は、インサート内に亀裂を発生し、このインサートが作られる材料の移動を制御することをより困難にする場合がある。こうして形成されたカバー材料の層の形状及び厚みは、従って、ランダムに変化する場合がある。追加の層によってタイヤの作動に提供される利点は、こうして低下する。
【0009】
これに加えて、この実施形態において、インサートをバーに位置合せすることが必要である。これは、次に、トレッドの製造をより複雑にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、タイヤトレッド内の切り込みの壁上のカバー材料の層の配置を改善する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
定義
「タイヤ」又は「空気タイヤ」は、内部圧力を受けるか否かに関わらず全てのタイプの弾性タイヤを意味する。
【0012】
「グリーンタイヤ」は、補強されるか又はされない場合があるストリップ又はシートの形態で存在する複数の半仕上げゴム製品の重ね合わせを意味する。グリーンタイヤは、タイヤを取得するためにモールド内で加硫されるように意図される。
【0013】
タイヤの「トレッド」は、外側面により、かつ一方がタイヤを運転している時に路面と接触するように意図された2つの主表面により区切られたある一定量のゴム状材料を意味する。
【0014】
「トレッド表面」は、タイヤを運転している時に路面と接触するタイヤのトレッドの点によって形成された表面を意味する。
【0015】
「トレッドパターン要素」は、切り込み、すなわち、溝及び/又はサイプによって区切られたトレッドの要素を意味する。トレッドパターン要素の中で、タイヤの周囲全体を行くリブとタイヤの周囲全体を行かないブロックとの間で区別される。
【0016】
「モールド」は、互いにより近づけた時にドーナツ形成形空間の範囲を定める別々の成形要素の集合を意味する。
【0017】
モールドの「成形表面」は、タイヤのトレッド表面を成形するように意図されたモールドの表面を意味する。
【0018】
成形要素の「ブレード」は、成形表面から突き出た突起を意味する。ブレードの中でも、2mm未満の幅を有するサイプブレードと2mmよりも大きいか又はそれに等しい幅を有するバーとの間で区別される。サイプブレードは、タイヤが地面と接触する接地面において閉ざすタイヤのトレッド内のサイプ、すなわち、切り込みを成形するように意図される。バーは、タイヤが地面と接触する接地面において閉ざさないトレッド内の溝、すなわち、切り込みを成形するように意図される。
【0019】
「成形段階」は、ブレードがグリーンタイヤを覆う材料と接触する瞬間から始まる作動を意味する。この作動は、このブレードが、それが成形した切り込みを離れる瞬間に終了する。
【0020】
本発明の主題は、空気タイヤの回転軸に垂直でトレッドパターン要素の少なくとも1つの接触面を通過する平面の断面で見ると、接触面に隣接する切り込みのうちの少なくとも1つが、カバー層で少なくとも部分的に覆われ、かつカバー層が、織又は不織繊維アセンブリを含有する国際公開第03/089257号のものに類似するトレッドである。
【0021】
この織又は不織繊維アセンブリの存在は、その固有の剛性のために、カバー材料の層をトレッドのトレッドパターンの切り込みに容易にかつ高い精度で配置することを可能にする。
【0022】
こうして覆われたこれらの切り込みは、好ましくは、空気タイヤの周方向に垂直であり、又は空気タイヤの周方向に垂直な成分を有する向きを有する。
【0023】
切り込みのこのような向きを有するカバー層の存在は、特に雪道上で空気タイヤのグリップを改善することを可能にする。
【0024】
好ましくは、カバー層がエラストマー材料を含有する場合に、繊維アセンブリは、カバー層のエラストマー材料で含浸される。
【0025】
「エラストマー材料で含浸された織又は不織繊維アセンブリ」は、それが形成された後で、エラストマー材料で含浸されたあらゆる2次元又は3次元繊維アセンブリを意味する。特に、組成物の成分の全てを練り、次に、それを成形することによって生成された繊維を含有するゴム状組成物は、この定義から除外される。
【0026】
好ましくは、繊維アセンブリは、織又は不織によって組み付けられた長繊維を使用する。長繊維は、その最長寸法が50mmよりも大きい繊維を意味する。
【0027】
カバー層のエラストマー材料で含浸されたこのような繊維アセンブリの存在は、グリーンタイヤを加硫する前にカバー層の優れた凝集力を取得することを可能にし、従って、このカバー層を空気タイヤの成形の時点で配置しやすくする。
【0028】
第1の実施形態により、繊維アセンブリは、織又は不織のような2次元繊維アセンブリである。
【0029】
別の実施形態により、繊維アセンブリは、フェルトのような3次元繊維アセンブリである。
【0030】
繊維アセンブリの繊維は、織物繊維、鉱物繊維、及びこれらの配合物の群から選択することができる。
【0031】
非常に多くのタイプの繊維を使用して繊維アセンブリ、及び従ってグリーンタイヤを成形する時のカバー層の配置をより容易にする十分な引張剛性のカバー層を与えることができる。
【0032】
好ましくは、エラストマー材料による含浸の前に、繊維アセンブリの見掛け密度は、0.4未満及び好ましくは0.25未満である。
【0033】
繊維アセンブリのこの低い初期密度は、弾性材料による優れた含浸を達成することを可能にし、含浸は、例えば、プレス機内のカレンダ加工又は成形によって例えば、高温及び加圧下で行われる。
【0034】
1つの有利な実施形態により、カバー層のエラストマー材料は、少なくとも1つのジエンエラストマーに基づく組成物である。
【0035】
1つの特定の実施形態により、ジエンエラストマーに基づく組成物は、硫黄で高度に充填される。好ましくは、硫黄含有量は、20重量部(phr)よりも高い。
【0036】
カバー層のこのような材料は、非常に高い剛性のカバー層を取得することを可能にし、これは、雪の地面上でのグリップを促進する。
【0037】
別の実施形態により、カバー層のエラストマー材料は、少なくとも1つのエラストマーブロックと少なくとも1つの熱可塑性ブロックとを含むブロックコポリマーである少なくとも1つの熱可塑性エラストマーに基づいている。
【0038】
熱可塑性エラストマーの使用は、繊維アセンブリをプレス機内で繊維アセンブリにわたってエラストマー材料を成形することにより、又は熱可塑性エラストマーの融点又は軟化温度を超える再度高温状態で射出成形することにより優れた条件下で含浸することができることを意味する。
【0039】
好ましい実施形態により、10Hzの周波数及び−10℃の温度で0.7MPaの交互最大応力を受けるカバー層のエラストマー材料の動的剛性率G*は、100MPaよりも大きく、好ましくは200MPaよりも大きい。
【0040】
低温で非常に高い弾性率を有するこの材料は、雪の上でのグリップを促進する高剛性のカバー層を生成することを可能にする。
【0041】
好ましくは、カバー層の厚みは、0.1と3.5mmの間で構成される。
【0042】
1つの特定の実施形態により、この厚みは、雪の地面上で優れた挙動を維持し、同時に氷の地面上のグリップに欠点をもたらす範囲を制限することを可能にするように、0.4と1.0mmの間で構成される。
【0043】
別の特定の実施形態により、この厚みは、2.0と3.0mmの間で構成される。この厚みは、湿潤グリップと雪グリップの間の妥協点を改善するのに非常に有益である。
【0044】
好ましくは、カバー材料は、少なくとも4mmに等しい高さHrにわたって切り込みの底部から延びる。
【0045】
それは、高さHrが4mmに近い時に、非常に剛性のカバー層の作用により雪の地面上の挙動を改善することを可能にする。実際に、雪の地面上でのグリップを専門とするタイヤは、トレッドパターン要素の残留厚みが4mm近く又はそれ未満になるとこれらの性能の低下を見ることは公知である。このようなタイヤに対して、この実施形態は、低トレッドパターン要素高さでもそれら固有の品質を延ばす。
【0046】
別の有利な実施形態により、カバー層は、新しい条件下で、トレッドパターン要素の接触面と側面の間の境界によって形成されたエッジコーナまで遠くに延びる。
【0047】
この実施形態において、カバー層の特性は、移動する最初の数キロメートルからすぐに使用される。
【0048】
上述の空気タイヤのためのトレッドの全ては、取りわけ、欧州特許第0510550明細書で示された方法を使用して生成することができる。
【0049】
しかし、この組のトレッドは、以下に説明する方法を使用して生成するのに特に良好に適している。
【0050】
この製造の方法は、グリーンタイヤを調製する段階と、グリーンタイヤの外側表面の全て又は一部にわたって織又は不織繊維アセンブリを含むカバー層を配置する段階と、ブレードを含むモールドにグリーンタイヤを配置する段階と、このブレードを使用してトレッドパターン要素の側面を成形する段階と、グリーンタイヤを加硫して完成タイヤを取得する段階とを伴う。製造の方法はまた、カバー層を切断して同じ厚みの複数の部分にする段階と、ブレードによるトレッドパターン要素の側面の成形中に、このブレードが、カバー層の各部分の1つ又はそれよりも多くをグリーンタイヤの中に押し込む段階とを伴う。好ましくは、カバー層を切断するこの段階は、トレッドパターン要素の側面の成形中に実施される。
【0051】
本発明の製造の方法を使用して、カバー層は、それ自体がブレードの下に位置決めされることが見出され、成形の時点でこの層とのブレードの接触面積は大きい。すなわち、この成形中に、カバー層は、ブレードによってグリーンタイヤの厚みの中に押し込まれ、かつ従来技術ではそうであったが、モールドの急峻なコーナによって変形されない。繊維アセンブリの固有の引張剛性のために、カバー層は、グリーンタイヤの成形においてこの押し込み段階中に僅かに少しだけ変形する。
【0052】
本発明は、特に、乗用車の動力車両、SUV(「スポーツ多目的車両」)、二輪(特定のオートバイ)、及び飛行機タイプに、かつバン、大型車両、すなわち、メトロ、バス、道路輸送車両(ローリー、トラクタ、トレーラ)、農業又は建築プラント機械のようなオフロード車両、及び他の輸送又は荷役車両から選択された産業車両に適合するように意図された空気タイヤに関する。
【0053】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】トレッドのブロックパターンの部分平面図である。
図2】区分II−IIの線上の断面に図1のブロックを示す図である。
図3】雪の上の摩擦試験のための試験片の平面図である。
図4】側面図で図3の試験片を示す図である。
図5】本発明のトレッドを成形する方法による成形要素を概略的に示す図である。
図6a】切断手段が、トレッドのグリーン形態を覆うカバー層とそれらの端部で接触する図5の成形要素によって実施される第1の成形段階を示す図である。
図6b】ブレードが、グリーンタイヤを覆うカバー層に接触する第2の成形段階を示す図である。
図6c】切断手段及びブレードがグリーンタイヤに完全に位置決めされる第3の成形段階を示す図である。
図6d図6a〜図6cの成形段階の終わりでの本発明によるトレッドの一部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本説明において、明示的にそれ以外を示さない限り、示す全てのパーセント(%)は重量%である。
【0056】
更に、表現「aとbの間」で示される値のいずれの範囲も、aよりも大きいからb未満まで延びる(すなわち、終点a及びbは除く)値の範囲を表すのに対して、表現「aからbまで」で示される値のいずれの範囲も、aからbまで延びる(すなわち、厳密な終点a及びbを含む)値の範囲を意味する。
【0057】
I.試験
A.試験片上で測定された摩擦係数
摩擦試験は、Sam Ella、Pierre−Yves Formagne、 Vasileios Koutsos、及びJane R.Blackford著「タイヤに対する雪上のゴム摩擦の調査」(38th LEEDS−Lyons Symposium on tribology,Lyons,6−9 September 2011)という名称の論文に説明された方法により線形摩擦計を用いて実施された。
【0058】
試験のパラメータは、0.5ms-1に等しい速度及び0.82kNの負荷である。安定化速度は、5ms-2の加速度で到達する。
【0059】
使用する試験片30は、添付の図3(上から見た)及び図4(側部から見た)に示されている。この試験片は、平行六面体のゴム状支持体34(長さL=60mm、幅l=56mm、及び厚み2mm)上に成形されたゴム化合物の4つのブロック31から構成される。
【0060】
25mmに等しい幅L1のブロック及び27mmに等しい長さL2は、両方とも約6mm幅の縦溝3及び横溝4によって分離される。各ブロック31は、各々がブロック31を5つの等しい部分32に分けるブロックの各側で開いて0.6mm厚の軸線方向向きYの4つのサイプ33を含む。ブロックの高さは9mmである。試験片は、サイプの軸線方向向きYに垂直な縦方向Xに移動される。
【0061】
試験は、−10℃の温度の詰め固めた人工雪で覆われた長さ110mmの軌道上で実施された。
【0062】
負荷及び接線力は、トレッドのその部分が水平に移動する時に記録される。摩擦係数が、次に計算され、これは、接線力の平均値を移動の最初の30ミリメートルに印加された負荷で割ることによって得られる。
【0063】
B.動的機構測定
本明細書において、「弾性係数G’」及び「粘性係数G”」は、当業者に公知の動的特性を示している。これらの特性は、未加硫組成物から成形された試験片に対してMetravib VA4000型粘性分析計で測定される。基準ASTM D 5992−96(1996年に最初に承認され2006年9月に公開されたバージョン)、図X2.1(円形実施形態)に説明されたような試験片を使用する。試験片の直径「d」は、10mm(従って、試験片は、78.5mmの円形断面を有する)であり、ゴム組成物の各部分の各々の厚み「L」は、2mmであり、試験片は、5の「d/L」比(2のd/L値を推奨する段落X2.4におけるASTM標準に示されたISO標準2856とは異なる)を与える。
【0064】
10Hzの周波数で単純交互正弦剪断応力を受ける加硫ゴム組成物の試験片の反応を記録する。試験片は、対称的にその平衡位置の周りで課せられた応力(0.7MPa)によって10Hzで正弦的に剪断負荷を受ける。
【0065】
試験片は、測定前に順応サイクルを受ける。試験片は、次に、周囲温度で100%変形ピーク間で10Hzで正弦的に剪断負荷を受ける。
【0066】
測定は、材料のガラス遷移温度(Tg)よりも低い温度Tminから材料のゴムプラトーに対応することができる温度Tmaxまで1分当たり1.5℃の勾配で温度が増加する時に行われる。掃引が始まる前に、試験片内で均一な温度を有するように、20分間温度Tminで試験片を安定化する。引き出された結果は、選択した温度(この場合は、0°、5°、及び20℃)における動的剪断弾性係数(G’)及び粘性剛性率(G”)である。
【0067】
「複素弾性係数」G*は、弾性係数G’及び粘性係数G”の複素和の絶対値であるとして定義される。
【0068】
II.カバー層
A.繊維アセンブリ
本発明の1つの態様によるカバー層の集合における不可欠な要素は、それが織又は不織繊維アセンブリを含むべきであるということである。
【0069】
織又は不織繊維アセンブリが意味するものは、これらが一方向に分配されるか又はランダムに分配されるかに関わらず、繊維のウェブ、ラップ、又はマットから構成されるあらゆる製造製品であり、これらの繊維は、不織の場合には2次元的又は3次元的に織り交ぜ又は交絡され、又は織の場合には織られる。
【0070】
この織又は不織繊維アセンブリの固有の剛性のために、カバー材料の層をトレッドのトレッドパターンの切り込みに容易にかつ高い精度で配置することが可能である。
【0071】
1つの第1の実施形態により、繊維アセンブリは、織又は不織のような2次元繊維アセンブリである。
【0072】
別の実施形態により、繊維アセンブリは、フェルトのような3次元繊維アセンブリである。
【0073】
繊維アセンブリの繊維は、織物繊維、鉱物繊維、及びこれらの配合物の群から選択することができる。
【0074】
グリーンタイヤの成形の時点で、このカバー層を容易に導入することができる十分な引張剛性を繊維アセンブリ及び従ってカバー層に与えるのに使用することができる非常に多くのタイプの繊維がある。
【0075】
このような織又は不織繊維アセンブリを製造する方法は公知であり、取りわけ、フェルトのような3次元アセンブリの場合は穿刺又は縮充を含む。
【0076】
フェルトの繊維は、天然起源の織物繊維から、例えば、絹、綿、竹、セルロース、羊毛繊維、及びこれらの配合物から選択することができる。
【0077】
羊毛フェルトの例は、Laoureuxカンパニーによる「PLB」及び「MLB」フェルトである。これらのフェルトは、0.20と0.44の間で変動する見掛け密度で販売されている。
【0078】
フェルトの繊維はまた、合成織物繊維、例えば、ポリエステル、ポリアミド、炭素、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール繊維、及びこれらの配合物の群から選択することができる。
【0079】
フェルトのポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET−ダクロン・インビスタ・インコーポレーテッド)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、及びこれらの配合物から有利に選択することができる。
【0080】
アラミド繊維で作られた繊維の例として、デュポン・ドゥ・ヌムール・カンパニーによるNomex(登録商標)繊維(メタアラミド繊維:シンボルMPD−Iのポリ(m−フェニレンイソフタルアミド))を使用して生成されたフェルトについて言及することができる。
【0081】
フェルトの繊維はまた、鉱物繊維、例えば、ガラス及び玄武岩繊維の群から選択することができる。
【0082】
フェルトは、いかなる好ましさも示すことなく、上述したような1つのかつ同じ群からの又は異なる群からのいくつかのタイプの繊維で構成することができる。
【0083】
好ましくは、エラストマー材料による含浸前の繊維アセンブリの見掛け密度は、0.4未満及び好ましくは、0.30未満である。
【0084】
この低い見掛け密度は、カバー層のエラストマー材料による繊維アセンブリの優れた含浸を生じるように意図されている。
【0085】
B.カバー層のエラストマー材料
1.ジエン配合物
本発明の1つの本質的な特徴により、トレッドのトレッドパターン要素の側面のカバー層に使用する繊維アセンブリは、エラストマー材料で含浸される。
【0086】
「エラストマー材料で含浸された織又は不織繊維アセンブリ」は、繊維アセンブリが形成された後にエラストマー材料で含浸されたあらゆる2次元又は3次元繊維アセンブリを意味する。特に、組成物の成分の全てを練り、次に、成形することによって生成された繊維を含有するゴム状組成物は、この定義から除外される。
【0087】
カバー層のエラストマー材料で含浸されたこのような繊維アセンブリは、繊維アセンブリを製造している間にカバー層の優れた凝集力を取得することを可能にし、従って、このカバー層を空気タイヤの成形中に配置しやすくする。
【0088】
1つの第1の実施形態により、使用する繊維アセンブリは、ジエンエラストマーに基づくエラストマー材料で含浸される。
【0089】
a)ジエンエラストマー
「ジエン」エラストマー又はゴムは、公知の方法では、ジエンモノマー(共役又は非共役の2つの炭素−炭素二重結合を担持するモノマー)から少なくとも部分的に生じる1つ(これは1つ又はそれよりも多くを意味する)のエラストマー(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味することは理解されるものとする。
【0090】
エラストマー材料のジエンエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(BP)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、及びこれらのエラストマーの配合物から構成される高度不飽和ジエンエラストマーの群から選択される。このようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン−ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン−スチレンコポリマー(SIR)、及びイソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBIR)から構成される群から選択される。
【0091】
4%〜80%の−1,2単位の含有量(モル%)を有するポリブタジエン、又は80%よりも高いシス−1,4の含有量(モル%)を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレンコポリマー、及び特に0℃〜−70℃及び特に−10℃〜−60℃のTg(ASTM D3418に従って測定されたガラス遷移温度)、5重量%〜60重量%及び特に20%〜50%のスチレン含有量、4%〜75%のブタジエン部の−1,2結合の含有量(モル%)、10%〜80%のトランス−1,4結合の含有量(モル%)を有するもの、ブタジエン−イソプレンコポリマー、取りわけ、5重量%〜90重量%のイソプレン含有量及び−40℃〜−80℃のTgを有するもの、イソプレン−スチレンコポリマー、及び取りわけ5重量%〜50重量%のスチレン含有量及び−25℃〜−50℃のTgを有するものは、特に適している。
【0092】
ブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーの場合には、5重量%〜50重量%の及び特に10%〜40%のスチレン含有量と、15重量%〜60重量%及び特に20%〜50%のイソプレン含有量と、5重量%〜50重量%の及び特に20%〜40%のブタジエン含有量と、4%〜85%のブタジエン部の−1,2単位の含有量(モル%)と、6%〜80%のブタジエン部のトランス−1,4単位の含有量(モル%)と、5%〜70%のイソプレン部の−1,2プラス−3,4単位の含有量(モル%)と、10%〜50%のイソプレン部のトランス−1,4単位の含有量(モル%)とを有するもの、より一般的に、−20℃〜−70℃のTgを有するあらゆるブタジエン−スチレン−イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0093】
1つの特定の実施形態により、ジエンエラストマーは、これがエマルジョンSBR(「ESBR」)であるか又は溶液SBR(「SSBR」)であるかに関わらず、又はSBR/BR、SBR/NR(又はSBR/IR)、BR/NR(又はBR/IR)又は更にSBR/BR/NR(又はSBR/BR/IR)のカット(配合物)であるかに関わらず、大部分は(すなわち、50phrを超える点では)SBRである。SBR(ESBR又はSSBR)エラストマーの場合には、例えば、20重量%〜35重量%の平均スチレン含有量、又は例えば35〜45%の高いスチレン含有量、15%〜70%のブタジエン部のビニル結合の含有量、15%〜75%のトランス−1,4結合、及び−10℃〜−55℃のTgの含有量(モル%)を有するSBRについて取りわけ使用され、このようなSBRは、好ましくは、シス−1,4結合の90%(モル%)よりも多くを有するBRとの配合物で有利に使用することができる。
【0094】
別の特定の実施形態により、ジエンエラストマーは、大部分は(50phrを超える点では)イソプレンエラストマーである。「イソプレンエラストマー」は、公知の方法では、イソプレンのホモポリマー又はコポリマー、又は換言すれば天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、イソプレンの様々なコポリマー、及びこれらのエラストマーの配合物から構成される群から選択されたジエンエラストマーを意味する。イソプレンコポリマーのうち、イソブテン−イソプレン(ブチルゴム−IIR)、イソプレン−スチレン(SIR)、イソプレン−ブタジエン(BIR)、又はイソプレン−ブタジエン−スチレン(SBIR)コポリマーについて以下に詳細に言及する。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム又はこれらの合成ポリイソプレンのうちの合成シス1,4ポリイソプレンであり、90%よりも高い、より好ましくは、更に98%よりも高いシス−1,4結合の含有量(モル%)を有するポリイソプレンが使用される。
【0095】
本発明の別の好ましい実施形態により、エラストマー材料は、−70℃〜0℃のTgを有する1つの(1つ又はそれよりも多くの)いわゆる「低Tg」ジエンエラストマー、及び−110℃〜−80℃、より好ましくは、−105℃〜−90℃のTgを有する1つの(1つ又はそれよりも多くの)いわゆる「低Tg」ジエンエラストマーのカットを含有する。高Tgエラストマーは、好ましくは、S−SBR、E−SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは、95%よりも高いシス−1,4シーケンスの含有量(モル%)を有する)、BIR、SIR、SBIR、及びこれらのエラストマーの配合物から構成される群から選択される。低Tgエラストマーは、好ましくは、少なくとも70%に等しい含有量(モル%)でブタジエン単位を含み、低Tgエラストマーは、90%よりも高いシス−1,4シーケンスの含有量(モル%)を有するポリブタジエン(BR)から構成される。
【0096】
本発明の別の特定の実施形態により、エラストマー材料の組成物は、例えば、30〜100phr、特に0〜70phrを有する高Tgカットの50〜100phr、特に低Tgエラストマーの0〜50phrを含み、別の例により、全て100phrは、1つ又はそれよりも多くの溶液SBRによって表される。
【0097】
本発明の別の特定の実施形態により、エラストマー組成物のジエンエラストマーは、1つ又はそれよりも多くのS−SBR又はE−SBR(高Tgエラストマーとして)を有する90%よりも高いシス−1,4シーケンスの含有量(モル%)を有するBR(低Tgエラストマーとして)のカットを含む。
【0098】
本発明により調合された組成物は、単一ジエンエラストマー又はいくつかのジエンエラストマーの配合物を含有することができ、ジエンエラストマー以外のあらゆるタイプの合成エラストマーと又は更にエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーと組み合わせて、1つ又は複数のジエンエラストマーを使用することができる。
【0099】
(1)ナノメートル又は補強充填剤
タイヤトレッドの製造のために使用することができるゴム組成物を補強する機能が公知であるあらゆるタイプの補強充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような補強無機充填剤、又は更にこれらの2つのタイプの充填剤のカット、取りわけカーボンブラック及びシリカのカットを使用することができる。
【0100】
好ましいカーボンブラックは、全てカーボンブラック、取りわけ一般的にタイヤトレッドに使用するブラック(タイヤ等級と呼ばれるブラック)を含む。これらについて、例えば、ブラックN115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375のようなシリーズ100、200、又は300(ASTM等級)の補強カーボンブラック、又は更に意図する用途に応じて、より高いシリーズ(例えば、N660、N683、N772)のブラックについて以下により詳細に言及する。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチ(例えば、国際公開第97/36724号または国際公開第99/16600号)の形態のイソプレンエラストマーの中に事前に組み込むことができる。
【0101】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例として、国際公開第2006/069792号及び国際公開第2006/069793号に説明されているような官能性ポリビニル芳香族有機充填剤について言及することができる。
【0102】
「補強無機充填剤」は、定義により、カーボンブラックとは対照的に、タイヤの製造を意図したゴム組成物を補強する中間カプリング剤以外の付加的手段なしに自然に可能である又は換言すれば従来のタイヤ等級カーボンブラックを置換するその補強機能において「白色」充填剤、「透明」充填剤又は更に「ノンブラック充填剤」とも呼ばれるあらゆる無機又は鉱物充填剤(その色及び起源(天然又は合成)に関わらず)を意味することを本出願において理解しなければならず、このような充填剤は、公知のように、その表面においてヒドロキシ(−OH)基の存在によって特徴付けられる。
【0103】
補強無機充填剤が取る物理的形態は、その形態が粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズの形態、又は他の適切な高密度化形態に関わらず、あらゆるものとすることができる。勿論、補強無機充填剤はまた、以下に説明するように、様々な補強無機充填剤、特に高度に分散可能なアルミニウム及び/又はシリカ充填剤の配合物を網羅する。
【0104】
補強無機充填剤として、シリカタイプ、特にシリカ(SiO2)、又はアルミニウムタイプ、特にアルミナ(Al23)の鉱物充填剤が特に適している。使用するシリカは、当業者には公知のあらゆる補強シリカ、取りわけ両方とも450m2/g、好ましくは、30〜400m2/gのBET表面積及びCTAB比表面積を有するあらゆる沈降又は熱分解シリカとすることができる。高度に分散可能な沈降シリカ(「HDS」と呼ばれる)として、例えば、デグサ・カンパニーによるUltrasil 7000及びUltrasil 7005シリカ、ロディア・カンパニーのZeosil 1165MP、1135MP、及び1115MPシリカ、PPGカンパニーのHi−Sil EZ150Gシリカ、フーバー・カンパニーのZeopol 8715、8745、及び8755シリカ、及び国際公開第03/16837号に説明されているような高比表面積円筒体について以下に言及する。
【0105】
使用する補強無機充填剤は、特にその充填剤がシリカである時に、好ましくは、45〜400m2/g、より好ましくは、60〜300m2/gのBET表面積を有する。
【0106】
好ましくは、エラストマー材料に対して、総補強充填剤含有量(カーボンブラック及び/又はシリカのような補強無機充填剤)は、30phrよりも大きく、好ましくは、40〜100phrであり、これは、エラストマー材料が亀裂に対する良好な抵抗を与えることを可能にし、一方でそれと同時に低ヒステリシスを維持する。
【0107】
好ましくは、ナノ粒子の平均サイズ(質量による)は、20〜200nm、より好ましくは、20〜150nmである。
【0108】
補強無機充填剤をジエンエラストマーと結合するために、カプリング剤(又は結合剤)、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーの間に十分な化学的及び/又は物理的接続を与えるように意図された少なくとも二官能基のもの、特にオルガノシラン又は二官能基のポリオルガノシロキサンが公知の方法で使用される。
【0109】
例えば、国際公開第03/002648号(又は米国特許出願公開2005/016651号)及び国際公開第03/002649号(又は米国特許出願公開2005/016650号)に説明されているようなそれらの詳細な構造により「対称的」又は「非対称的」と呼ばれるポリスルフィドが取りわけ使用される。
【0110】
以下の定義を制限とすることなく、特に適するポリスルフィドシランは、以下の一般公式(I)に対応するいわゆる「対称的」なものである。
(I)Z−A−SX−A−Z、式中
・xは、2〜8(好ましくは、2〜5)の整数であり、
・Aは、二価の炭化水素基(好ましくは、C1−C18アルキレンン基又はC6−C12アリレン基、特に、C1−C10、取りわけC1−C4アルケン、特にプロピレン)であり、
・Zは、以下の公式:
のうちの1つに対応し、式中
・互いに同一又は異なり、置換することができ又は置換することができないラジカルR1は、C1−C18アルキル基、C5−C18シクロアルキル基、又はC6−C18アリル基(好ましくは、C1−C6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、取りわけC1−C4アルキル基、特に、メチル及び/又はエチル)を表し、
・互いに同一又は異なり、置換することができ又は置換することができないラジカルR2は、C1−C18アルコキシル、又はC5−C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1−C8アルコキシル及びC5−C8シクロアルコキシルから選択された群、より好ましくは、更にC1−C4アルコキシル、特にメトキシ及びエトキシ基から選択された群)を表している。
【0111】
ポリスルフィドシランの例として、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドについて以下により詳細に言及する。これらの化合物のうち、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド又は略してTESPT、又はビス−(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド又は略してTESPDについて以下により詳細に言及する。好ましい例として、国際公開第02/083782号(又は米国特許出願公開2004/132880号)に説明されているように、ビス−(モノアルコキシル(C1−C4)−ジアルキル(C1−C4)シリルプロピル)ポリスルフィド(取りわけジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、特に、ビス−モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドについて同様に以下に言及する。
【0112】
ポリスルフィドアルコキシシラン以外のカプリング剤として、例えば、国際公開第02/30939号(又は米国特許第6,774,255号明細書)及び国際公開第02/31041号(又は米国特許出願公開2004/051210号)に説明されているような二官能基POS(ポリオルガノシロキサン)又は更にヒドロキシシランポリスルフィド(上記公式IのR2=OH)について、又は更に例えば国際公開第2006/125532号、国際公開第2006/125533号、国際公開第2006/125534号に説明されているようなアゾ−ジカルボニル官能基を担持するシラン又はPOSについて以下に詳細に言及する。
【0113】
本発明の1つの主題によるエラストマー材料組成物において、カプリング剤含有量は、好ましくは、3〜12phr、より好ましくは、4〜9phrである。
【0114】
この段落に説明する補強無機充填剤と同等の充填剤として、この補強充填剤が、シリカのような無機層で覆われていれば、又は補強充填剤が、充填剤とエラストマーの間に結合を確立するためにカプリング剤の使用を必要とする官能部位、取りわけヒドロキシ部位をその表面に含むのであれば、異なる性質の補強充填剤、取りわけ有機性のものを使用することが可能であることを当業者は理解するであろう。
【0115】
(2)様々な添加剤
エラストマー材料の組成物はまた、例えば、色素、オゾン劣化防止剤ワックスのような保護剤、化学的オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、抗疲労剤、補強樹脂、受容体(例えば、ノボラックフェノール樹脂)又は例えば国際公開第02/10269号に説明されているようなメチレンの供与体(例えば、HMT又はH3M)、硫黄又は硫黄供与体及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドのいずれかに基づく架橋システム、加硫反応促進剤、加硫活性化ファクタのようなタイヤ製造を意図したエラストマー組成物で従来使用する有益な添加剤の全て又は一部を含むことができる。
【0116】
エラストマー材料の形成はまた、更に、カプリング剤、カプリング活性化剤、無機充填剤を覆うための薬剤、又はより一般的にはゴムマトリックス中の充填剤の分散を改善することにより、及びこれらを生の状態で作業しやすくする組成物の粘性を下げることにより公知の方法で可能な作業性を助ける薬剤を含有することができ、これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシラン、ピロール、ポリエーテル、1級、2級、又は3級アミン、水酸化又は加水分解性ポリオルガノシロキサンのような加水分解性シランである。
【0117】
エラストマー材料はまた、好ましい非芳香族又は僅かに弱い芳香族の可塑剤として、例えば、国際公開第2005/087859号、国際公開第2006/061064号、及び国際公開第2007/017060号に説明されているようなナフタレン油、パラフィン油、MES油、TDAE油、エステル可塑剤(例えば、三オレイン酸グリセリン塩)、高Tg好ましくは、約30℃を有する炭化水素樹脂、及びこのような化合物の配合物を含有することができる。このような好ましい可塑剤の総含有量は、好ましくは、10〜100phr、より好ましくは、20〜80phr、取りわけ10〜50phrの範囲にある。
【0118】
上述の炭化水素可塑性樹脂(「樹脂」という用語は、固形化合物に対する定義によって留保されることを思い起こすであろう)のうち、アルファピネン、ベータピネン、ジペンテン、又はポリリモネン、カットC5、例えば、カットC5/スチレンコポリマー又はカットC5/カットC9コポリマーのホモ又はコポリマーである樹脂について以下に特に言及し、これらは、例えば、単独又は例えばMES又はTDAE油のような可塑性油と組み合わせて使用することができる。
【0119】
(3)エボナイト
カバー層のエラストマー材料の1つの特定の実施形態により、硫黄で非常に高度に充填された少なくとも1つのジエンエラストマーに基づく組成物が使用される。
【0120】
好ましくは、組成物は、20重量部(phr)よりも多くの硫黄のゴムを含有する。
【0121】
このようなエラストマー材料を有するカバー層は、含浸前に非常に低い見掛け密度を有する織又は不織のような2次元繊維アセンブリを有利に含むことができる。
【0122】
このようなカバー層には、カバー層を含む切り込みの向きが空気タイヤの周方向に垂直な成分の向きを有する時に、グリーンタイヤを加硫すると、雪の地面上のタイヤの挙動に非常に有利な非常に高い剛性を有するという利点がある。
【0123】
(4)調製
ジエンゴムに基づくエラストマー材料組成物は、当業者には公知の一般的な手順により、130℃〜200℃の最高温度まで、好ましくは、145〜185℃の高温における熱機械混練又は作業の第1の相(場合によっては「非生産」相と条件つけられる)と、続いて、架橋又は加硫システムを組み込む仕上げ相の間の典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃〜100℃の低温における機械作業の第2の相(場合によっては「生産」相と条件つけられる)との2つの連続調製相を使用して好ましい製粉機において製造される。
【0124】
次に、繊維アセンブリは、プレス機での高温カレンダ加工、成形、又は加圧下での注入によって上述のようにこの組成物で含浸される。
【0125】
2.熱可塑性エラストマー
カバー層のエラストマー材料の第2の実施形態により、このエラストマー材料の組成物は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーに基づいており、熱可塑性エラストマーは、少なくとも1つのエラストマーブロック及び少なくとも1つの熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーである。
【0126】
a)熱可塑性エラストマー(TPE)
熱可塑性エラストマー(略してTPE)は、熱可塑性ポリマーとエラストマーの間のどこかにある構造を有する。これらは、可撓性のエラストマーブロックによって接続された剛性熱可塑性ブロックから構成されるブロックコポリマーである。
【0127】
本発明の1つの態様を実施するために使用する熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマーであり、その熱可塑性ブロック及びエラストマーブロックの化学的性質は異なる場合がある。
【0128】
(1)TPEの構造
TPEの数平均分子量(Mn)は、好ましくは、30,000〜500,000g/モル、より好ましくは、40,000〜400,000g/モルである。指示した最小値よりも小さいと、取りわけ場合によっては希釈され(増量油の存在下で)、従って、TPEのエラストマーシーケンスの間に結合が悪影響を受ける危険性があり、更に、使用温度の上昇は、機械的特性、取りわけ「高温」性能の低下をもたらすような破壊特性に悪影響を与える危険性を伴う。更に、高すぎるMnは、作業性の観点から欠点をもたらす場合がある。従って、50,000〜300,000g/モルの範囲に含まれる値は、特に、取りわけカバー層の組成物におけるTPEの使用に良好に適していることが公知である。
【0129】
TPEの数平均分子量(Mn)は、立体サイズ排除クロマトグラフィー(SFC)によって公知の方法で判断される。例えば、熱可塑性スチレンエラストマーの場合には、予め約1g/lの濃度でテトラヒドロフランに試験片を溶解し、次に、注入前に孔隙率0.45μmのフィルタで溶液を濾過する。使用する装置は、WATERS類似クロマトグラフである。溶出溶媒はテトラヒドロフランであり、流量は0.7ミリリットル/分であり、システムの温度は35℃であり、かつ解析時間は90分である。「STYRAGEL」商品名(「HMW7」、「HMW6E」及び2つの「HT6E」)を有するシリーズの4つのWATERSコラムのセットを使用する。ポリマーサンプルの溶液の注入された容量は、100μlである。検出器は、「WATERS 2410」示差屈折計であり、クロマトグラフデータを処理するためのその関連ソフトウエアは、「WATERS MILLENIUM」システムである。計算平均モル質量は、ポリスチレン標準で生成された較正曲線に関連している。この条件は、当業者によって適応させることができる。
【0130】
TPEの多分散指数Ip(銘記:Ip=Mw/Mn、式中、Mwは平均分子量であり、Mnは数平均分子量である)の値は、好ましくは、3よりも低く、より好ましくは、2よりも低く、より好ましくは、更に1.5よりも低い。
【0131】
本出願において、TPEのガラス遷移温度を参照するが、これは、エラストマーブロックに対するTgである。TPEは、好ましくは、25℃よりも低いか又はそれに等しく、より好ましくは、10℃よりも低いか又はそれに等しいガラス遷移温度(「Tg」)を有することが好ましい。これらの最小値よりも高いTg値は、非常に低い温度に使用する時にカバー層の性能を低下させる場合があり、このような使用に対して、TPEのTgは、より好ましくは、更に−10℃よりも低いか又はそれに等しい。好ましくは、TPEのTgは、−100℃よりも高い。
【0132】
公知の方法において、TPEは、TPEのエラストマー部に関連付けられたより低い温度と、TPEの熱可塑性部に関連付けられたより高い温度との2つのガラス遷移温度スパイク(ASTM D3418に従って測定されたTg)を有する。従って、TPEの可撓性ブロックは、周囲温度(25℃)よりも低いTgによって定められるのに対して、剛性ブロックは、より高いTgを有する。
【0133】
性質上エラストマー性及び熱可塑性の両方であるためには、これらがこれらの固有のエラストマーブロック又は熱可塑性ブロック特性を維持することと十分に適合しない(すなわち、これらのそれぞれの重量、これらのそれぞれの極性、又はこれらのそれぞれのTgのために異なる)ブロックをTPEに設ける必要がある。
【0134】
TPEは、少数のブロック(5つよりも少ない、典型的には2つ又は3つ)のコポリマーとすることができ、その場合には、これらのブロックは、好ましくは、15,000g/モルを超える高重量を有する。これらのTPEは、例えば、1つの熱可塑性ブロック及び1つのエラストマーブロックを含むジブロックコポリマーとすることができる。これらはまた、多くの場合に、可撓性セグメントによって接続された2つの剛性セグメントを有するトリブロックエラストマーである。剛性及び可撓性セグメントは、一列になり、星形になり、又は分岐構成で配置することができる。典型的には、これらのセグメント又はブロックの各々は、多くの場合、少なくとも5つよりも多く、一般的に10よりも多くの基本単位(例えば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマーの場合はスチレン単位及びブタジエン単位)を含有する。
【0135】
TPEはまた、より小さい非常に多くのブロック(30よりも多く、典型的には50〜500)を含むことができ、その場合には、これらのブロックは、好ましくは、例えば、500〜5000g/モルのかなり低い重量を有し、これらのTPEは、以下ではマルチブロックTPEと呼び、一連のエラストマーブロック及び熱可塑性ブロックである。
【0136】
第1の代替形態によって、TPEは線形形態を取る。例えば、TPEは、ジブロックコポリマー:熱可塑性ブロック/エラストマーブロックである。TPEはまた、トリブロックコポリマー:熱可塑性ブロック/エラストマーブロック/熱可塑性ブロック、つまり中心のエラストマーブロックと2つの熱可塑性ブロック、エラストマーブロックの両端の各々に1つとすることができる。同様に、マルチブロックTPEは、エラストマーブロック及び熱可塑性ブロックの線形シーケンスとすることができる。
【0137】
本発明の別の代替形態によって、本発明の目的のために利用されるTPEは、少なくとも1つの枝を有する星形を取る。例えば、TPEは、次に、少なくとも3つの枝を有する星形エラストマーブロックにより、及びエラストマーブロックの枝の各々の端部にある熱可塑性ブロックにより構成することができる。中心エラストマーの枝の数は、例えば、3〜12及び好ましくは3〜6と異なる場合がある。
【0138】
本発明の別の代替形態によって、TPEは、分岐又はデンドリマー形態を取る。TPEは、次に、分岐又はデンドリマーエラストマーブロックにより、及びデンドリマーエラストマーブロックの枝の端部にある熱可塑性ブロックにより構成することができる。
【0139】
(2)エラストマーブロックの性質
本発明の目的のためのTPEのエラストマーブロックは、当業者には公知のあらゆるエラストマーとすることができる。これらは、好ましくは、25℃よりも低い、好ましくは、10℃よりも低い、より好ましくは、0℃よりも低い、より好ましくは、−10℃よりも低いTgを有する。同様に、好ましくは、TPEのエラストマーブロックのTgは、−100℃を上回っている。
【0140】
炭素鎖エラストマーブロックの場合には、TPEのエラストマー部にエチレン不飽和がない場合のTPEのエラストマー部は、飽和エラストマーブロックであるとして公知である。TPEのエラストマーブロックにエチレン不飽和(すなわち、炭素−炭素二重結合)がない場合のTPEのエラストマーブロックは、次に、不飽和又はジエンエラストマーブロックと呼ばれることになる。
【0141】
飽和エラストマーブロックは、少なくとも1つの(すなわち、1つ又はそれよりも多くの)エチレンモノマー、すなわち、炭素−炭素二重結合を含有するものを重合させることによって得られるポリマーシーケンスから構成される。これらのエチレンモノマーから生じるブロックの中に含まれるのは、エチレン−プロピレン又はエチレン−ブチレン統計コポリマーのようなポリアルキレンブロックを言及することができる。これらの飽和エラストマーブロックはまた、不飽和エラストマーブロックを水素化することによって取得することができる。これらはまた、ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート系から生じる脂肪族ブロックとすることができる。
【0142】
飽和エラストマーブロックの場合には、TPEのこのエラストマーブロックは、好ましくは、大部分はエチレン単位から構成される。大部分が意味するものは、エラストマーブロックの総重量に対してできるだけ高いエチレンモノマーの重量による含有量、好ましくは、50重量%よりも多い、より好ましくは、75重量%よりも多い、より好ましくは、更に85重量%よりも多い重量含有量である。
【0143】
4−C14共役ジエンは、エチレンモノマーと共重合することができる。次に、これらは、飽和コポリマーである。好ましくは、これらの共役ジエンは、イソプレン、ブタジエン、1−メチルブタジエン、2−メチルブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、3−メチル−1,3−ヘキサジエン、4−メチル−1,3−ヘキサジエン、5−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−ビニル−1,3−シクロヘキサジエン、又はこれらの配合物から選択される。より好ましくは、共役ジエンは、イソプレン又はイソプレン含有配合物である。
【0144】
不飽和エラストマーブロックの場合には、TPEのこのエラストマーブロックは、好ましくは、大部分はジエンエラストマー部から構成される。大部分が意味するものは、エラストマーブロックの総重量に対してできるだけ高いジエンモノマーの重量による含有量、好ましくは、50重量%よりも多い、より好ましくは、75重量%よりも多い、より好ましくは、更に85重量%よりも多い重量による含有量である。これに代えて、不飽和エラストマーブロックの不飽和は、二重結合を含むモノマー及び例えばポリノルボルネンの場合は環状タイプの不飽和から生じる場合がある。
【0145】
好ましくは、C4−C14共役ジエンは、重合化又は共重合してジエンエラストマーブロックを形成することができる。好ましくは、これらの共役ジエンは、イソプレン、ブタジエン、ピペリレン、1−メチルブタジエン、2−メチルブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ブタタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−メチル−1,3−ヘキサジエン、4−メチル−1,3−ヘキサジエン、5−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、1,3−シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−ビニル−1,3−シクロヘキサジエン、又はこれらの配合物から選択される。より好ましくは、共役ジエンは、イソプレン又はブタジエン又はイソプレン及び/又はブタジエンを含有する配合物である。
【0146】
代替形態によって、TPEのエラストマー部を形成するように重合されたモノマーは、エラストマーブロックを形成するように少なくとも1つの他のモノマーと統計的に共重合することができる。この代替形態において、エラストマーブロックの単位の総数に対してエチレンモノマー以外の重合モノマーのモル分率は、このブロックがそのエラストマー特性を維持するようにしなければならない。有利な態様においては、この他のコモノマーのモル分率は、0〜50%、より好ましくは、0〜45%、より好ましくは、更に0〜40%に及ぶ場合がある。
【0147】
一例として、第1のモノマーと共重合することが可能なこの他のモノマーは、以上に定義したようなエチレンモノマー(例えば、エチレン)、ジエンモノマー、特に、以上に定義したような4〜14の炭素原子を有する共役ジエンモノマー(例えば、ブタジエン)、以上で定義したような8〜20の炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択することができ、又はこれに代えて、それは、酢酸ビニルのようなモノマーとすることができる。
【0148】
コモノマーがビニル芳香族タイプのものである時に、コモノマーは、0〜50%、好ましくは、0〜45%に、より好ましくは、更に0〜40%に及ぶ熱可塑性ブロックの単位の総数に対する単位の分率を有利に表している。取りわけ、ビニル芳香族化合物として、上述のスチレンモノマー、すなわち、メチルスチレン、パラ−3級−ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、フルオロスチレン又は更にパラ−ヒドロキシ−スチレンが適している。好ましくは、ビニル芳香族タイプのコモノマーは、スチレンである。
【0149】
本発明の好ましい実施形態により、TPEのエラストマーブロックは、タイヤトレッドパターン要素の側面を覆うカバー層における使用に適合するTPEの良好なエラストマー特性及び十分な機械的一体性を与えるように、合計で25,000g/モル〜350,000g/モル、好ましくは、35,000g/モル〜250,000g/モルに及ぶ数平均分子量(Mn)を有する。
【0150】
エラストマーブロックはまた、以上に定義したようないくつかのタイプのエチレン、ジエン、又はスチレンモノマーを含有するブロックとすることができる。
【0151】
エラストマーブロックはまた、以上に定義したようないくつかのエラストマーブロックで構成することができる。
【0152】
(3)熱可塑性ブロックの性質
剛性熱可塑性ブロックのガラス遷移温度(Tg)を使用して、熱可塑性ブロックを以下に定める。この特性は、当業者には公知である。その特性は、取りわけ工業的作業性(変換)温度を選択することを可能にする。非晶質ポリマー(又はポリマーブロック)の場合には、Tgよりも有意に高くなるように作業性温度を選択する。半結晶ポリマー(又はポリマーブロック)の特定の場合には、次に、ガラス遷移温度よりも高い融点を観察することができる。このような場合には、融点は、むしろ考慮中のポリマー(又はポリマーブロック)の作業性温度を選択するのに使用される融点(Tf)である。従って、以下では、「Tg(又は適切な場合はTf)」について言及する場合に、これは、作業性温度を選択するために使用する温度を意味することを考慮しなければならない。
【0153】
本発明の目的のために、TPEは、好ましくは、80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有し、重合モノマーから構成される1つ又はそれよりも多くの熱可塑性ブロックを含む。好ましくは、この熱可塑性ブロックは、80℃〜250℃で変動する範囲に含まれるTg(又は適切な場合はTf)を有する。好ましくは、この熱可塑性ブロックのTg(又は適切な場合はTf)は、好ましくは、80℃〜200℃、より好ましくは、80℃〜180℃である。
【0154】
本発明の実施のために定義したようなTPEに対する熱可塑性ブロックの割合は、上述のコポリマーを示すことになる熱可塑性特性によって最初に判断される。80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックは、好ましくは、十分な割合で存在し、本発明によるエラストマーの熱可塑性を維持する。TPEにおいて80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックの最小含有量は、コポリマーを使用すべき条件により異なる場合がある。更に、タイヤの調製中に変形するTPEの機能も、80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックの割合の決定に寄与する場合がある。
【0155】
80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックは、様々な種類の重合モノマーで構成することができ、取りわけ、これらは、以下のブロック又はこれらの配合物を構成することができる。
−ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)
−ポリウレタン、
−ポリアミド、
−ポリエステル、
−ポリアセタール、
−ポリエーテル(ポリエチレンオキシド、ポリエチレンエーテル)、
−ポリフェニレンスルフィド、
−ポリフッ化物(FEP、PFA、ETFE)、
−ポリスチレン(以下に詳述する)、
−ポリカーボネート、
−ポリスルホン、
−ポリメチルメタクリレート、
−ポリエーテルイミド、
−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマーのような熱可塑性コポリマー。
【0156】
80℃よりも高いか又はそれに等しいTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックも、以下の化合物及びこれらの配合物から選択されたモノマーから取得することができる。
−アセナフチレン:当業者は、例えば、Z.Fodor及びJ.P.Kennedy、Polymer Bulletin 1992 29(6)697−705による論文に言及することが可能であり、
−インデン及びその誘導体、例えば、2−メチルインデン、3−メチルインデン、4−メチルインデン、ジメチル−インデン、2−フェニルインデン、3−フェニルインデン及び4−フェニルインデン;当業者は、例えば、本発明者Kennedy,Puskas,Kaszas、及びHagerによる米国特許第4946899号明細書、及びJ.E.Puskas,G.Kaszas,J.P.Kennedy,W.G.Hager、Journal of Polymer Science Part A:Polymer Chemistry(1992)30,41、及びJ.P.Kennedy,N.Meguriya,B.Keszler、Macromolecules(1991)24(25),6572−6577の文献に言及することが可能であり、
−次に、一定数の1,4−トランスポリイソプレン単位及び分子内過程による環化単位の形成をもたらすイソプレン;当業者は、例えば、G.Kaszas,J.E.Puskas,J.P.Kennedy、Applied Polymer Science(1990)39(1)119−144、及びJ.E.Puskas,G.Kaszas,J.P.Kennedy、Macromolecular Science,Chemistry A28(1991)65−80の文献に言及することが可能である。
【0157】
ポリスチレンは、スチレンモノマーから得られる。スチレンモノマーは、非置換の又は置換されたスチレンを含むあらゆるモノマーを意味すると本説明では理解しなければならず、言及することができる置換されたスチレンは、例えば、メチルスチレン(例えば、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン又はp−メチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、アルファ−2−ジメチルスチレン、アルファ−4−メチルスチレン又はジフェニルエチレン)、パラ−3級−ブチルスチレン、クロロスチレン(例えば、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン又は2,4,6−トリクロロスチレン)、ブロモスチレン(例えば、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、2,6−ジブロモスチレン又は2,4,6−トリブロモスチレン)、フルオロスチレン(例えば、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2,6−ジフルオロスチレン又は2,4,6−トリフルオロスチレン)又は更にパラ−ヒドロキシスチレンを含む。
【0158】
本発明の好ましい実施形態により、TPEにおけるスチレンの重量含有量は、5%〜50%で含まれる。図示の最小値よりも小さいと、エラストマーの熱可塑性はかなり低下することになるという危険があるのに対して、推奨最大値を超えると、カバー層の弾性は、悪影響を受ける場合がある。これらの理由のために、スチレン含有量は、より好ましくは、10%〜40%で含まれる。
【0159】
本発明の代替形態によって、以上に定義したような重合モノマーを少なくとも1つの他のモノマーと共重合して、以上に定義したようなTg(又は適切な場合はTf)を有する熱可塑性ブロックを形成することができる。
【0160】
一例として、重合モノマーと共重合することができるこの他のモノマーは、エラストマーブロックに関連付けられた部分で定義したように、ジエンモノマー、特に、4〜14炭素原子を有する共役ジエンモノマー、及び8〜20炭素原子を有するビニル芳香族タイプのモノマーから選択することができる。
【0161】
本発明により、TPEの熱可塑性ブロックは、カバー層としてのその用途に適合するTPEの良好な特性及び十分な機械的強度を与えるように、合計で5,000g/モル〜150,000g/モルに及ぶ数平均分子量(Mn)を有する。
【0162】
熱可塑性ブロックも、以上に定義したようないくつかの熱可塑性ブロックで構成することができる。
【0163】
(4)TPEの例
例えば、TPEは、TPEのエラストマー部が飽和し、TPEがスチレンブロック及びアルキレンブロックを含むコポリマーである。アルキレンブロックは、好ましくは、エチレン、プロピレン、又はブチレンである。より好ましくは、このTPEは、線形又は分岐星形トリブロック又はジブロックコポリマーから構成される以下の群から選択される:スチレン/エチレン/ブチレン(SEB)、スチレン/エチレン/プロピレン(SEP)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン(SEEP)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEPS)、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEEPS)、スチレン/イソブチレン(SIB)、スチレン/イソブチレン/スチレン(SIBS)、及びこれらのコポリマーの配合物。
【0164】
別の例により、TPEは、TPEのエラストマー部が飽和し、TPEがスチレンブロック及びジエンブロックを含むコポリマーであり、これらのジエンブロックは、特に、イソプレン又はブタジエンブロックである。より好ましくは、このTPEは、線形又は分岐星形ジブロック又はトリブロックコポリマーから構成される以下の群から選択される:スチレン/ブタジエン(SB)、スチレン/イソプレン(SI)、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)、及びこのようなコポリマーの配合物。
【0165】
同じく例えば、TPEは、TPEのエラストマー部が、例えば、スチレン/ブタジエン/ブチレン(SBB)、スチレン/ブタジエン/ブタジエン/スチレン(SBBS)、又はこれらのコポリマーの配合物のような飽和部及び不飽和部を含む線形又は分岐星形コポリマーである。
【0166】
マルチブロックTPEのうち、エチレンの統計コポリマーブロックを含むコポリマー、及びプロピレン/ポリプロピレン、ポリブタジエン/ポリウレタン(TPU)、ポリエーテル/ポリエステル(COPE)、ポリエーテル/ポリアミド(PEBA)について言及することができる。
【0167】
本発明の1つの態様によって、以上の例として示したTPEをカバー層のエラストマー材料の組成物内で互いに混合することも可能である。
【0168】
市販のTPEの例として、商品名「Kraton G」(例えば、製品G1650、G1651、 G1654、 G1730)でクレイトン・カンパニー、又は商品名「Septon」(例えば、「Septon 2007」、「SEPTON 4033」、「SEPTON 8004」)でクラレ・カンパニーが市販するSEPS、SEEPS、又はSEBSタイプのエラストマー、又は「Hybrar 5125」という名前でクラレが市販し、又は「D1161」という名前でクレイトンが市販するSISタイプのエラストマー、又は更に商品名「Europren SOL T 166」でポリメリ・ユーロパが市販する線形SBSタイプのエラストマー、又は商品名「D1184」でクレイトンが市販する星形分岐SBSエラストマーについて言及することができる。「Vector」(例えば、「Vector 4114」、「Vector 8508」)の商品名でカンパニー・デキスコ・ポリマーズが市販するエラストマーについても言及することができる。これらのマルチTPEのうち、エクソン・カンパニーが市販するTPE「Vistamaxx」、商品名「Arnitel」でDSMカンパニー、又は商品名「Hytrel」でデュポン・カンパニー、又は商品名「Riteflex」でティコナ・カンパニーが市販するCOPE TPE、商品名「PEBAX」でアルケマ・カンパニーが市販するPEBA TPA、商品名「TPU 7840」でサートマー・カンパニー、又は商品名「Elastogran」でBASFカンパニーが市販するTPU TPEについて言及することができる。
【0169】
(5)TPEの量
他の(非熱可塑性)エラストマーを熱可塑性エラストマー組成物に使用することができるが、1つのTPE又は複数のTPEは、主要な重量分率を構成する。従って、TPEの量は、65〜100phr、好ましくは、70〜100phrで変動する範囲に含まれる。勿論、TPE及びジエンエラストマーの量の合計は、常に100phrである。
【0170】
1つ又は複数のTPEは、好ましくは、カバー層において唯一のエラストマーである。
【0171】
(6)組成物における他の要素
エラストマー材料の組成物はまた、既に説明されているような充填剤又は様々な添加剤を含有することができる。
【0172】
(7)調製
TPEは、例えば、ビーズ又は顆粒の形態で利用可能な原料から押出するか又は成形によってTPEに対しては従来型の方法で作業することができる。
【0173】
本発明による熱可塑性エラストマーに基づくエラストマー材料は、例えば、マトリックスを溶融して全ての成分を組み込むように2軸押出機において様々な成分を組み込むことにより、次に、輪郭要素を生成するようにダイを使用することにより従来の方法で調製される。繊維アセンブリは、次に、加圧下で高温カレンダ加工又は注入により、上述したようにエラストマー材料で含浸される。
【0174】
TPEのエラストマーブロックが飽和エラストマーブロックである場合に、カバー層とトレッドのトレッドパターン要素の隣接する壁との間に不飽和エラストマーブロックを有するTPAを含有し、上述のカバー層と完成タイヤ内のトレッドの隣接する層との間の接着を促進するタックフィルム又は層又はコートを含むことが必要な場合がある。
【0175】
III.カバー層を有するトレッド
図1は、本発明によるトレッドパターンの矩形形状のブロック1の接触面2を示し、上述のブロック1は、縦方向向き4及び横断方向又は軸線方向向き3の溝によって区切られている。これらのブロック1の各々は、接触面2を有する交差位置が、特に滑りやすくなっている(取りわけ水又は雪の存在により)路面上で運転するのに重要な役割を果たすエッジコーナ23、24、25、26をそれぞれ形成する4つの側面13、14、15、16を含む。各ブロック1は、幅L1及び長さL2の矩形形状のものである(ブロックの幅L1の方向は、説明する状況では、トレッドの縦方向又は更にトレッドを備えたタイヤの周方向と一致している)。
【0176】
4つの側面13、14、15、16は、ゴム状組成物MB(以下では塩基組成物と呼ばれる)とは異なるカバー層MRの実質的に一定の(この場合に溝の深さHに等しいカバーの高さHr全体にわたって)厚みE1(図2で目に見える)で完全に覆われている。
【0177】
図2に描き、図1の線II−IIに沿った2つのブロック1の接触面2に垂直な断面において、横断方向に向けられた溝3を境界付ける側面13及び15上のカバー材料のMRの存在を層の表面で見ることができる。
【0178】
描かれたトレッドパターン要素は、全てのこれらの側面上にカバー材料の層を含むが、雪の地面上でのグリップの改善を取得するためには、それは、側面であり、その向きは、タイヤの周方向に垂直であり、その向きは、好ましくは、このようなカバー材料の層で覆う必要がある周方向に垂直な成分を有する。
【0179】
本発明のこの実施形態により、カバー材料は、新しい条件下で、トレッドパターン要素の接触面と側面の間の境界によって形成されたエッジコーナの範囲まで延びる。
【0180】
カバー材料の層MRの厚みE1は、好ましくは、0.1mmよりも大きく、より好ましくは、用途に応じて0.25〜3.5mmである。
【0181】
本発明の別の実施形態(描かず)により、カバー材料は、新しい条件下で、4mmの距離Hrまで切り込みの底部から半径方向に延びる。この実施形態は、トレッドの残りがすり減っている時に雪の地面上にスノータイヤの付加的グリップを回復するのに利用される。この付加的グリップは、カバー材料が、タイヤの周方向に垂直な側面上に配置される時に特に鋭く、又はその向きは、タイヤの周方向に垂直な成分を有する。
【0182】
IV.カバー層を有するトレッドの製造
A.カバー層の製造
カバー層を有するトレッドの製造の第1の段階は、カバー層を調製することである。
【0183】
織又は不織繊維アセンブリを選択し、それを好ましい寸法に切断すると、調製すべきカバー層の厚みに応じて、かつ繊維アセンブリ及びエラストマー材料の性質に応じて、この繊維アセンブリは、エラストマー材料の1つ又は2つの層で含浸される。
【0184】
この含浸は、例えば、モールドにおいて加圧下の高温状態で実施することができる。
【0185】
B.カバー層を有するトレッドの成形
以下の説明において、実質的に同一又は類似の要素は、同一の基準に示すことになる。このようなトレッドパターンを取得する1つの方法は、例えば、トレッド及び溝、並びにサイプを成形する前に、好ましい厚みのカバー材料の層によって基本化合物から生成されたトレッドのグリーン形態の全体を覆うことである。成形後、リブの接触面上のカバー材料を所定位置に残し、又は機械的手段により(取りわけ研削により)取除くことができる。
【0186】
本発明によりトレッドを工業的に生産する別の方法は、欧州特許第0510550号に説明されているように、未加硫基本化合物で作られたトレッドを備えたタイヤの未加硫グリーン形態に基本化合物とは異なるカバー材料の薄いストリップを付加することにあると考えられる(周方向及び/又は横断方向のトレッドに薄いストリップを付加することができる)。別の方法は、トレッドが押出されている時に2つ(又はそれよりも多くの)化合物を共に押し出すことによってトレッドを生産することにあると考えられる。
【0187】
1つの好ましい実施形態をここに説明する。以下の説明において、実質的に同一又は類似の要素は、同一の基準に示すことになる。
【0188】
図5は、本発明の1つの態様による成形要素41を示している。
【0189】
より具体的には、成形要素41は、タイヤのトレッド表面の一部を成形するように意図された成形表面43を含む。成形要素41はまた、ブレード45を含み、そのうちの単に1つが、本発明を理解しやすくするように本明細書に描かれている。この場合のブレードは、タイヤのトレッドに溝を成形するように意図されたバー45である。トレッドの「溝」が意味するものは、幅、すなわち、この溝の2つの横壁を分離する距離が2mmよりも大きいこのトレッドへの切込みである。バー45はまた、この成形表面43から高さ方向に延びる。バー45はまた、成形表面43から突き出ながら縦方向延長部Xの方向の縦方向に延びる。モールドにおいて、この方向は、モールドの周方向に従う周方向とすることができる。代替形態として、縦方向延長部の方向は、モールドの周方向に垂直の横断方向である。別の代替形態において、縦方向延長部のこの方向は、モールドの周方向及び横断方向と非ゼロ角をなす斜め方向である。
【0190】
図5は、延長部Xの方向に垂直の断面平面で見た成形要素41を示している。この断面平面において、バー45は、対称軸Sに関して対称性を示す断面を有する。対称軸Sは、本明細書ではバー45の高さHcに延び、このバー45を幅W/2の半分のバーに分ける。
【0191】
この場合のバーの断面は、矩形形状である。「矩形形状」は、バーの上面がこのバーの側面に垂直であること、すなわち、バーの側面が、このバーの上面と85°〜95°の角度をなすことを意味する。
【0192】
本発明はまた、バーの側面とこのバーの上面の間の接続の領域が丸い場合と、バーの側面とバーの間の接続の領域が同様に丸い場合とを包含する。
【0193】
実施形態の付加的代替形態において、バーの断面は、正方形、三角形などのような矩形形状以外の形状を使用することができる。
【0194】
バー45の断面は、成形表面43を有するバー45の交差位置A及びBの2つの点の間に図5の太線に示しているプロフィールを有することにも注意されたい。このプロフィールは、LP=2*(Hc+W/2)、すなわち、プロフィール長さLpが、バー5の高さHcプラスこのバーの幅Wの2倍に対応するようなプロフィール長さLpを有する。
【0195】
図5の例において、交差位置A及びBの点は決定しやすく、バー45の横壁は、成形表面43に垂直である。代替形態として、バーの横壁が2つの円弧を形成する接続の2つの丸い領域によって成形表面43に接続される場合には、交差位置A及びBの点は、円弧の中心を通過し、これらの弧を2つの同一の半分の弧に分ける直線で円弧の交差位置にそれぞれ対応する。
【0196】
図5の成形要素41はまた、バー45の両側に1つずつ配置された2つの切断手段47を有する。これらの切断手段は、バー45の縦方向Xに平行な方向のこれらの長さに沿って延びる。「平行な方向」は、切断手段が延びる方向が、バーの縦方向延長部Xの方向と−5°〜+5°の角度をなすことを意味する。切断手段の高さHlcは、バーの高さHcに少なくとも等しい。
【0197】
各切断手段は、カバー材料の層49を切断することが可能な端部48を有し、このカバー材料は、タイヤトレッドのグリーン形態51を覆う。特に、各切断手段は、その端部に切断エッジ(図5に点として描かれた)を含む。この切断エッジは、図5の平面において、60°よりも小さいか又はそれに等しい角度αを有する(2つの切断手段47のうちの一方の端部の拡大である図5に関連付けられた差込み図詳細を参照)。好ましい実施形態において、角度αは、35°よりも小さいか又はそれに等しい。
【0198】
この切断エッジは、時間と共にその機械的一体性を改善するために予め硬化されている場合があることは注目されるであろう。例えば、切断エッジは、特定の熱処理中に硬化されている場合がある。代替形態として、切断エッジを作って成形要素の残りよりも強力にする材料を計画することができる。
【0199】
切断手段の各端部とバー45の断面の対称軸Sとの間の距離DがD=Hc+W/2になるように断面のプロフィールの長さLpの半分未満又はそれに等しいような方法で、切断手段47を成形要素31に配置することも注目されるであろう。言い換えれば、対称軸Sは、2つのサブプロフィールを定める点Cにおいてバー45のプロフィールと交差する。第1のサブプロフィールは、セグメントA−Cに対応し、第2のサブプロフィールは、セグメントB−Cに対応する。各切断手段に対して、この切断手段の切断エッジと対称軸Sの間の距離は、この切断手段に隣接するサブプロフィールの長さ未満又はそれに等しく、すなわち、サブプロフィールは、切断手段の最も近い半バーに属する。図5の例において、切断手段47に最も近いサブプロフィールは、セグメントB−Cに対応するサブプロフィールである。
【0200】
図6a〜図6dは、トレッドの溝にカバー材料を配置するための様々な段階をより詳細に示している。
【0201】
図6aは、成形要素41及びグリーンタイヤ51が互いに近づく第1の段階を取りわけ開示している。この一緒になる移動は、例えば、モールドの中の膜(描かず)によって開始される。加圧蒸気の量の作用下で、この膜は膨張し、グリーンタイヤを成形要素41に押しやる。特に、図6aは、切断手段47がカバー材料51内に切り込む瞬間を示している。切断手段の切断エッジの作用により、この切断段階が容易にされる。
【0202】
図6bは、バー45がグリーンタイヤ51の中に押し込まれる第2の段階を示している。特に、この段階において、バー45は、カバー材料の層において切断されている材料のビット53と接触する。バー45は、従って、このビット53をグリーンタイヤ51の深さの中に挿入する。
【0203】
切断手段47の高さHlcは、バー45の高さHcよりも大きいことは本明細書で注目されるであろう。従って、図6aの切断段階は、バー45がグリーンタイヤ51の中に押し込む段階の前にくる。代替形態として、切断手段47の高さHlcがバー45の高さHcと同一になるように計画することは可能である。その場合には、図6aの段階及び図6bの段階は同時に行われる。
【0204】
図6cは、バー45がその高さHcにわたってグリーンタイヤの中に押し込められる第3の段階を示している。カバー材料のビット53の全ては、従って、それ自体グリーンタイヤ内に見出される。この段階が実施された状態で、グリーンタイヤを加硫し、すなわち、グリーンタイヤを可塑性から弾性状態にするゴム材料を変換することができる。
【0205】
図6dは、図6a〜図6cに示すグリーンタイヤを成形及び加硫する様々な段階の結果を示している。こうして得られるトレッドのビット55は、バー45の周囲のゴムを成形することによって得られる溝57と、2つの切断手段47の周囲のゴムを成形することによって得られる2つのサイプ59とを含む。溝の壁の全て、すなわち、横壁と横壁が側に位置する底壁とは、カバー材料のカットビット53によって覆われることは本明細書では注目されるであろう。
【0206】
V.試験
切り込みにカバー層を含むトレッドを有するタイヤを生成するための様々な試験を実施した。
【0207】
表1は、実施された様々な試験を記述するものである。
【0208】
表2は、使用するエラストマー材料の製剤を示し、表3は、実施された摩擦試験の結果を提示するものである。
【0209】
【表1】
【0210】
【表2】
【0211】
第1の試験A1は、繊維アセンブリとして織綿繊維織物から構成されるカバー層、及び含浸エラストマー材料として硫黄で大量に充填されたジエン化合物ME1の層に実施された。
【0212】
アセンブリは、織物を化合物で含浸するために、9分の持続時間にわたって160℃の温度で16barの存在下でプラテンプリンタに置かれた。カバー層の仕上げ厚みは、約0.6mmのものであった。
【0213】
含浸後、カバー層のストリップは、空気タイヤトレッドのグリーン形態の表面上に置かれた。これらが成形中にカバー層のあらゆる延伸に対抗するように、綿糸(縦糸又は横糸)の一部が、成形中に意図する進行の方向に垂直に向けられたことに注意しなければならない。
【0214】
グリーンタイヤトレッド側でなく、モールド側に綿織物を位置することが好ましく、それは、織物の切断及び切断の位置へのカバー層の摺動を容易にするからである。
【0215】
次に、アセンブリをモールドの中に配置し、図6a〜図6dに説明されているような成形作動が、次に難なく実施され、綿織物は、トレッド中の切り込みにおいてカバー層の正確な配置を可能にした。特に、微細綿織物は、計画通りにブレード47によって難なく切断することができ、バー45は、カバー層を切り込み3、4、57の中に挿入した。
【0216】
硫黄で高度に充填されたエラストマー材料ME1は、高温含浸中及び通常の圧力の下で得られる生の状態で又は限られた事前加硫によって挙動する。
【0217】
20phrを超える硫黄含有量は、雪の地面上でグリップするのに非常に有益な非常に高い係数(約300〜1000MPaの3%の変形における引張係数)を有するカバー層材料を取得することを可能にする。
【0218】
第2の試験A2は、繊維アセンブリとして綿織物であるが、高Tg化合物ME2で同様に実施された。
【0219】
含浸条件は、第1の試験のものと同一であり、綿織物はモールド側に置かれ、ME2材料は含浸中に事前加硫された。
【0220】
以前のように、成形は良好に作業された。
【0221】
繊維アセンブリとしてベーズ又はビスコースフェルト、及び含浸エラストマー材料としてME2ジエン化合物の1つ又は2つの層を用いて他の3つの試験を実施した。
【0222】
使用したビスコースフェルトは、0.275の密度である。より低密度0.145のビスコースフェルトに実施した付加的試験も、カバー層の成形が関係していた範囲まで満足することができるものであったと判明した。この密度を0.10よりも高くすることが望ましい。
【0223】
試験A3に対して、同一の温度及び圧力条件下で11分間ME2化合物の間にビスコースフェルトを挟んだ。それは、化合物がフェルトを確実に含浸することを可能にした。カバー層の仕上げ厚みは、1.1mmであった。
【0224】
成形作動は良好に行われた。それは、層が図のように切り込みにわたって正確に終端したので、カバー層が滑脱中に引き伸ばすことなく容易に滑ったことを保証するほどビスコースフェルトの固有の剛性が十分であったことを示している。
【0225】
試験A4は、非常に類似のものであり、唯一の変化は、11よりも20分のより長い含浸持続時間であった。それは、エラストマー化合物の事前加硫をかなり増加させ、トレッドのグリーン形態に対するカバー層の滑脱の非常な容易さが注目された。
【0226】
試験A5に対して、ME2ジエン化合物の単に1つの層を使用してビスコースフェルトが含浸された。含浸作動の持続時間は9分であった。カバー層の仕上げ厚みは、約0.6mmのものであった。
【0227】
この成形試験は、同様に良好に行われた。
【0228】
試験A3、A4、及びA5のものに類似するカバー層も使用して図3及び図4に説明するものに類似する試験片を生成した。カバー層の3つの厚み:1.1mm、0.8mm、及び0.5mmを得た。各トレッドパターンブロックが、そのエッジコーナのうちの単に1つの上にカバー材料の1つの層を有するような方法で、これらの試験片を成形した。このエッジコーナは、軸線方向に向けられた。
【0229】
基本化合物として、「雪」タイプのトレッド組成物を使用して、対照試験片を生成した。同じ化合物が、試験している試験片のための基本化合物として使用された。
【0230】
雪の地面に対する摩擦試験は、これらの試験片を使用して実施されたが、結果を相対値の観点から表3に示している。100の値は、制御試験片の結果に割り当てられ、100よりも大きい値は、より高い摩擦係数、従って、より良好なグリップ性能を示している。100よりも低い値は、その試験に対する摩擦係数が対照値を下回ったことを示している。
【0231】
化合物ME2は、非常に高いガラス遷移温度Tg=−12℃を有するSBRに基づく化合物である。組成物は、−10℃の温度で約275MPaの動的剛性率G*を有し、試験片のエッジコーナにこの非常に低い温度の時に非常に高い剛性を与える。この組成物はまた、60℃の温度で0.4MPaよりも低い遙かに低い動的剛性率を有する。
【0232】
【表3】
【0233】
得られる結果は、低温で高い弾性率を有する材料で作られたカバー層の十分な利益を示している。カバー層が厚くなるほど、この高剛性カバー層がより顕著な効果を有することも見ることができる。
【符号の説明】
【0234】
2 接触面
3 溝
E1 厚み
MB ゴム状組成物
MR カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d