特許第6174131号(P6174131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174131延長された行程を有する可変形態ディフューザおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174131
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】延長された行程を有する可変形態ディフューザおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20170724BHJP
   F04D 27/02 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   F04D29/46 H
   F04D27/02 B
   F04D27/02 E
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-515298(P2015-515298)
(86)(22)【出願日】2013年11月4日
(65)【公表番号】特表2015-524033(P2015-524033A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】US2013068279
(87)【国際公開番号】WO2014074448
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】61/724,684
(32)【優先日】2012年11月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598147400
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】サマー,スティーヴン・ティー
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ジェブ・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン,ジャスティン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ネンスティール,カート・エフ
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−211716(JP,A)
【文献】 特開2010−031876(JP,A)
【文献】 特開2010−261464(JP,A)
【文献】 特開2002−147386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00−13/16
F04D 17/00−19/02
F04D 21/00−25/16
F04D 29/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機のための可変形態ディフューザ(810)であって、回転可能に装着され第1の位置と第2の位置との間で可動な駆動リング(850)であって、駆動リングの周縁に配置されているカムトラック(862)を含む、駆動リング(850)と、前記駆動リングを第1の位置から第2の位置へ移動させるように前記駆動リングに取り付けられているアクチュエータ(811)と、前記駆動リングに接続されている駆動ピン(140)と、前記駆動ピンに接続され、前記駆動リング(850)の前記カムトラック内に装着されているカムフォロワ(200)と、前記駆動ピンに接続され、前記駆動リングが回転したとき軸線方向に移動するように装着され、ディフューザギャップ(134)の中を可動であるディフューザリング(830)とを有しており、改善は、
前記ディフューザリング(830)が、L字形状の断面を有し、前記L字形状の断面は、第1のフランジ(833)と第2のフランジ(835)とを有しており、前記第1のフランジ(833)は、前記ディフューザギャップ内のガスフローに対して垂直に、ディフューザプレート(120)に向かって前記ディフューザギャップ(134)内に延長可能であり、前記第2のフランジ(835)は、前記第1のフランジに対して実質的に垂直であり、前記第2のフランジは、作動手段の取り付けのために十分なサイズのものであり、前記作動手段は、駆動リング(850)を含む機構であり、前記駆動リング(850)は、カムトラックと、前記カムトラック(862)に沿って移動するように構成された駆動ピン(140)とを有しており、前記第1のフランジ(833)は、低減された面積を有し、それによって、前記ディフューザギャップ内のガスフローから前記延長されたディフューザリングにかかる荷重を低減し、低減された前記荷重は、より速い作動機構を生成すること、および、
制御装置は、前記ディフューザギャップ内の前記ディフューザリングの位置を決定し、
前記駆動リング(850)の前記周縁上に配置されている前記カムトラック(862)が、前記駆動リングの上部表面と前記駆動リングの底部表面との間で斜めに延在しており、
前記カムトラック(862)が、前記駆動リングの前記上部表面と前記駆動リングの前記底部表面との間に事前選択された勾配を有する直線の傾斜部として延在しており、
前記カムトラック(862)は、前記駆動リング(850)の前記軸線方向に垂直な平坦部を有しない、ことを特徴とする、可変形態ディフューザ(810)。
【請求項2】
前記圧縮機(100)が、ノズルベースプレート(126)をさらに含み、前記ノズルベースプレートが、前記ディフューザリング(830)を収容する溝部(837)と、前記溝部をカバーするカバープレート(839)とを有しており、前記ディフューザリングの第2のフランジ(835)が、前記ディフューザギャップ(134)内のガスのフローに実質的に平行に、および、その下方に延在しており、前記第2のフランジが、前記カバープレート(839)の下方の前記ノズルベースプレート内の前記溝部(837)内に存在している、請求項1に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項3】
前記作動手段が、リニアアクチュエータ(811)であり、前記リニアアクチュエータ(811)は、リンケージによって、前記駆動リング(850)に取り付けられており、かつ、第1の軸線方向の位置と第2の軸線方向の位置との間で可動であり、前記駆動リング(850)を、前記ディフューザギャップ内に延在する延長されたディフューザリング(830)に対応する第1の位置から、前記ディフューザギャップから後退したディフューザリング(830)に対応する第2の位置へ移動させる、請求項1に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項4】
前記ディフューザリング(830)の前記第1のフランジ(833)の完全に延長された位置、および、前記ディフューザリングの前記第1のフランジの完全に後退した位置が、前記制御装置に通信され、かつ格納される、請求項3に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項5】
前記アクチュエータ(811)が、アクチュエータセンサを含み、前記アクチュエータセンサは、前記ディフューザリング(830)が前記完全に延長された位置にあるときのアクチュエータ位置、前記ディフューザリングが前記完全に後退した位置にあるときのアクチュエータ位置、および、前記ディフューザリングが完全に延長された位置と完全に後退した位置との間の中間位置にあるときのアクチュエータ位置を示す信号を、前記制御装置に提供する、請求項4に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項6】
前記可変形態ディフューザ(810)が、音響センサをさらに含み、前記音響センサが、前記圧縮機(100)によるサージまたはストールに関連する検出された騒音の信号を、前記制御装置に提供し、前記制御装置は、前記信号が存在すると、前記ディフューザリング(830)を前記ディフューザギャップ(134)内に完全に延在させる、請求項1に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項7】
前記可変形態ディフューザ(810)が、電気的なセンサと、前記制御装置および前記アクチュエータ(811)のためのバックアップ電源とをさらに含み、前記バックアップ電源は、前記電気的なセンサが前記圧縮機(100)への電力の喪失を検出すると活性化され、前記制御装置は、前記ディフューザリング(830)を前記ディフューザギャップ(134)内に完全に延在させるように、前記アクチュエータ(811)に信号を送る、請求項1に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項8】
前記カバープレートは、前記ディフューザギャップ(134)を通る冷媒流体の空気力学的なフローを提供する、請求項2に記載の可変形態ディフューザ(810)。
【請求項9】
遠心圧縮機(100)内の冷媒フローを制御するための方法であって、
可変形態ディフューザ(810)を提供するステップを含み、前記可変形態ディフューザ(810)は、回転可能に装着され第1の位置と第2の位置との間で可動な駆動リング(850)であって、駆動リング周縁に配置されているカムトラック(862)を有する、駆動リング(850)と、前記駆動リングを第1の位置から第2の位置へ移動させるように前記駆動リングに取り付けられているアクチュエータ(811)と、前記駆動リングに接続されている駆動ピン(140)と、前記駆動ピンに接続され、前記駆動リングの前記カムトラック内に装着されているカムフォロワ(200)と、前記駆動ピンに接続され、前記駆動リングが回転したとき軸線方向に移動するように装着され、ディフューザギャップ(134)の中を可動であるディフューザリング(830)とを含み、前記駆動リング(850)の前記周縁上に配置されている前記カムトラック(862)が、前記駆動リングの上部表面と前記駆動リングの底部表面との間で斜めに延在しており、前記カムトラック(862)が、前記駆動リングの前記上部表面と前記駆動リングの前記底部表面との間に事前選択された勾配を有する直線の傾斜部として延在しており、前記カムトラック(862)は、前記駆動リング(850)の前記軸線方向に垂直な平坦部を有しない、改善は、
L字形状の断面を有する前記ディフューザリング(830)を提供するステップであって、前記L字形状の断面は、第1のフランジ(833)と第2のフランジ(835)とをさらに含み、前記第1のフランジ(833)は、ディフューザプレート(120)に向かって前記ディフューザギャップ(134)内に延長可能であり、前記第2のフランジ(835)は、前記第1のフランジに対して実質的に直交している、ステップと、
制御装置を提供するステップと、
前記アクチュエータ(811)を作動させ、前記ディフューザリングの前記第1のフランジ(833)がノズルベースプレート(126)内に完全に後退した状態の第1の位置へ前記駆動リングを移動させることによって、前記ディフューザギャップの幅を最初に決定し、前記完全に後退したディフューザリングに対応する前記アクチュエータの位置を格納し、前記アクチュエータを活性化し、前記ノズルベースプレート内に完全に後退した前記ディフューザリングの前記第1のフランジ(833)に対応する前記第1の位置から、前記ディフューザギャップを横切って完全に延長された前記ディフューザリングの前記第1のフランジ(833)に対応する第2の位置へ、前記駆動リングを移動させ、前記完全に延長されたディフューザリングに対応する前記アクチュエータの位置を格納することによって、前記ディフューザギャップ(134)内の前記ディフューザリング(830)の位置を較正するステップであって、位置の差が、前記ディフューザギャップの前記に対応する、ステップと、
前記ディフューザギャップの前記の前記格納されている値、および、前記アクチュエータ(811)の現在の位置に基づいて、前記ディフューザギャップ(134)内の前記ディフューザリング(830)の位置、および、前記ディフューザギャップの前記を決定するステップであって、前記ディフューザリングの前記第1のフランジ(833)の位置は、前記アクチュエータの前記現在の位置、および、前記ディフューザリングが完全に後退したとき、および完全に延長されたときの前記アクチュエータの前記格納されている位置に基づいて、前記制御装置によって計算される、ステップとを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記遠心圧縮機(100)を使用した冷却システムの運転条件を前記ディフューザリングの位置に相関させるように前記制御装置をプログラミングするステップ
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却システムの少なくとも1つの条件を監視するセンサを提供するステップと、
複数の監視されている条件を示す信号を前記制御装置に提供するステップと、前記複数の監視されている条件に対応する値を入力するステップと、前記複数の監視されている条件に関して、前記ディフューザギャップ(134)に対する前記ディフューザリング(830)の位置を決定するステップと、前記複数の監視されている条件の値に対する前記ディフューザリングの位置を前記制御装置に格納するステップと、
事前選択された監視されている条件値に関して、前記制御装置のメモリーを検索するステップと、
前記事前選択された監視されている条件値を前記制御装置メモリーの中で見つけるステップと、
前記事前選択された監視されている条件値に対応する前記ディフューザリングの位置を呼び出すステップと、
前記事前選択された監視されている値に対応する、前記ディフューザギャップに対する前記格納されている位置へ、前記ディフューザリングを移動させるように、前記アクチュエータ(811)に指示するステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記監視されている条件が、蒸発器から離れる水温である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ストールおよびサージのうちの少なくとも1つを含む有害な事象の発生を感知する追加的なステップと、
前記有害な事象を感知すると、前記ディフューザリング(830)の前記第1のフランジ(833)を完全に延長された位置へ移動させ、前記ディフューザギャップを通る冷媒のフローを最小化する追加的なステップとをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この出願は、2012年11月9日に出願されたVARIABLE GEOMETRY DIFFUSER HAVING EXTENDED TRAVELという発明の名称の米国特許仮出願第61/724,684号の優先権および利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、遠心圧縮機に関し、より詳細には、起動および停止を含む、遠心圧縮機の完全な動作範囲にわたる改善された制御を可能にする改善された可変形態(variable geometry)ディフューザ機構に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]遠心圧縮機は、冷凍機など、圧縮されることになる流体を必要とする様々なデバイスの中で有用である。圧縮機は、回転インペラの上に流体を通すことによって作動する。インペラは、流体の圧力を増加させるように流体に働く。インペラの動作は、フロー内に逆圧力勾配を生み出すので、いくつかの圧縮機設計は、可変形態ディフューザを含み、可変形態ディフューザは、インペラ出口に配置され、ストール事象の間の流体フローを安定化させ、それによって、ストールを緩和する。インペラを横切る圧力差が維持されていながら冷媒フローが減少するときに、ストールが起こる。望ましくないが、ストールは、騒音を生じ、振動を引き起こし、圧縮機効率を低下させる。
【0004】
[0004]ストール条件は、圧縮機が動作する時間のうちの非常に小さい割合だけ存在するので、可変形態ディフューザの動作は、同様に限定されており、その結果、ディフューザ機構の全体的な寿命の完全性に影響を与える損傷、荷重、および他の機能は、限定されてきた。しかし、可変形態ディフューザ機構の使用を増加させることは、ディフューザ機構の全体的な信頼性および寿命に劇的に影響を与えることになる。
【0005】
[0005]効果的であるディフューザ設計は、2005年3月29日に発行されたNenstielによる米国特許第6,872,050号(’050特許)に述べられている。’050特許は、可変形態ディフューザを開示しており、その可変形態ディフューザは、圧縮機の動作中に開閉され、製造するのに安価であり、組み立てるのが容易であり、修理または交換するのが簡単であり、初期のストール条件に応答して、制御装置からの信号または命令に応答して、位置決定に関して積極的に関与する。
【0006】
[0006]’050特許の可変形態ディフューザ設計は、第1の後退した位置と第2の延長された位置との間で可動であるディフューザリングを利用しており、第1の後退した位置では、ディフューザギャップを通るフローが遮られず、第2の延長された位置では、ディフューザリングが、ディフューザギャップ内に延び、ストールの検出に応答して、ディフューザギャップを通る流体フローを変更する。これは、実質的にディフューザギャップを横切ってディフューザリングを延ばし、流体フローを変更することによって、達成される。この緩和は、ディフューザギャップの約75%を横切ってディフューザリングを延ばすことによって、達成され得る。ディフューザリングは、ディフューザリングの第1の後退した位置に対応する第1の位置、ディフューザリングの第2の延長された位置に対応する第2の位置、および、第1の位置と第2の位置との間の任意の中間位置から可動である駆動リングによって駆動される。第2の位置は、延長された位置であり、それは、ディフューザギャップの約75%においてシステムを安定化させ、ストールが緩和されるようになっている。そして、駆動リングが、支持ブロックに装着されており、駆動リングが、支持ブロックに対して回転可能に可動であり、支持ブロックは、ノズルベースプレートの背面に装着されている。ノズルベースプレートは、遠心圧縮機のインペラに隣接してハウジングに固定されている。可変形態ディフューザ設計は、ディフューザリングがその第2の延長された位置にあるときに、圧縮機運転中に、ディフューザギャップを通るフローを変更するのに効果的であるが、ディフューザリングは、圧縮機停止中に十分にフローを遮蔽せず、圧縮機バックスピンおよび関連する過渡的な荷重を妨害せず、または、起動中に、圧縮機が低い負荷および低速から高速へ増加するときに、過渡的なサージおよびストールを回避しない。
【0007】
[0007]可変形態ディフューザの使用は、全体的なリング面積にかかる圧力差に起因して、ディフューザリングに荷重を発生させる。リングが、その後退した位置にあるときには、圧縮された冷媒は、リング表面の上を通り、非常に小さい荷重が引き起こされる。しかし、リングが、ディフューザギャップ内に、その延長された位置に移動すると、高速のガスが、ディフューザリングの面の上を通り、低圧領域を生み出す。ノズルベースプレートの溝部内のより高圧のガスは、リングの背面に力を働かせる。リングおよび可変形態ディフューザ機構の残りにかかる荷重を計算することが可能である。それは、リングの両側部にかかるガス圧力の差に、リングの面積を乗じたものである。本発明の可変形態ディフューザは、比較的に大きいディフューザリングを含み、その動作は、かなりの力に打ち勝たなければならず、かつ、それは、動作時にかなりの力に耐えなければならない。したがって、機構は頑丈であり、これらの機構を動作させてこれらの力に打ち勝つために必要とされるエネルギーも、かなり大きい。しかし、可変形態ディフューザは、圧縮機の全体寿命のうちの小さい割合だけに関与するので、可変形態ディフューザによって受ける荷重および損傷は、受け入れ可能であった。
【0008】
[0008]可変形態ディフューザリングの使用を増加させ、単なるストール緩和デバイスとしてだけではなく使用され得るようにする要望が存在する。可変形態ディフューザは、ストール緩和のためだけでなく、容量制御、サージ制御、改善されたターンダウン、圧縮機停止中の圧縮機バックスピンおよび関連する過渡的な荷重の最小化、ならびに、起動過渡状態の最小化のためにも使用することが可能である。そのような可変形態ディフューザの使用の増加に起因して、改善されたデバイスは、使用が増加する可変形態ディフューザに長い寿命を提供しながら、全体的な遠心圧縮機動作に対して望ましい制御強化を提供することが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]本発明は、可変形態ディフューザ(VGD)機構を提供する。VGD機構は、ディフューザギャップ内に延びるディフューザリングを含み、それは、VGD機構に期待されるように、ストールを緩和する。しかし、本発明のVGD機構は、先行技術のVGD機構よりもさらにディフューザギャップ内に延び、本発明のVGD機構は、他の運転機能を制御するように使用され得るようになっている。したがって、VGD機構は、圧縮機停止中に、ディフューザギャップを通る冷媒ガスの逆流を防止することによって、圧縮機停止中の圧縮機バックスピンおよび関連する過渡的な荷重を最小化するために使用することが可能である。ディフューザリングの完全な延長によって、ディフューザギャップが実質的に遮蔽されるので、冷媒ガスの逆流は防止される。VGD機構は、より良好でより効率的な圧縮機ターンダウンをさらに提供し、低い冷却容量運転中のかなりの高温のガスバイパスに対する必要性を低減させる。起動中に、負荷およびインペラ速度が増加するときにディフューザギャップを通るガスフローを妨げるように、可変形態ディフューザリングが配置され得るので、過渡的なサージおよびストールも効果的に排除することが可能であり、それによって、低い速度における起動負荷によって引き起こされる問題を軽減する。本発明のVGD機構は、同様に、容量制御のために使用し、低い負荷において、より効果的なターンダウンを実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]ディフューザリングは、ディフューザギャップを横切って延び、通常動作中に、特定の条件の下で、ディフューザギャップを通る低減されたガスフローに対応するが、インペラが、起動中に速度を増加させるか、または、停止中にその速度を減少させるときに、ガスフローがかなり低減されるので、ディフューザリングは、停止中および起動中に、ディフューザギャップを横切って実質的に完全に延びなければならない。ディフューザリングの外側縁部は、フランジを含み、フランジは、ディフューザギャップを横切って完全に延長されたときに、ディフューザギャップを通るガスフローを実質的に妨げる。ディフューザリングにかかる軸線方向の力は、リングの両側部、および、リングの面積にかかる圧力差の関数である。ディフューザリングが、ディフューザギャップ内に延ばされると、高速のガスが、リングの外側面の上を通り、低圧領域を生み出す。リングの第1の側部のより高圧のガスが、リングの第1の側部に力を提供する。リングにかかる全体的な軸線方向の力は、リングの第1の側部とリングの第2の反対側の側部との間のガス圧力の差に、リングの半径方向の面積を乗じたものである。リングにかかる軸線方向の力は、リングの面積を低減させることによって、最小化することが可能である。ディフューザギャップ内に延びるリングの半径方向の幅を低減させることによって、リングにかかる軸線方向の力は、リングの幅に比例して低減される。リングの幅(厚さ)は、荷重を低くするように低減させることが可能であるが、リングは、リングを通り過ぎるフローからの増加された半径方向の力に対応するのに十分に厚くなければならず、そうでなければ、それは、ガスフローを効果的に遮蔽するように作用することにならず、動作障害を受ける可能性がある。リングの厚さは、圧縮機の容量に応じて、圧縮機によって異なることになり、リングの厚さは、相対的であり(その関係は、いくつかの要因に依存する)、最も重要なことは、とりわけ、インペラが停止中に動作速度から減速するとき、または、起動中に動作速度まで増加させるときの、ディフューザリングの第1の内側円筒形状の表面および第2の外側円筒形状の表面に作用する正味の半径方向のフロー力である。より大きいインペラを備えるより大きい圧縮機は、より高いフロー力を発生させ、かつ、より高い荷重を受けることになり、より厚いリングを必要とする。しかし、圧縮機サイズにかかわらず、リングにかかる軸線方向の力を低減させることは、VGD機構を動作させるのに必要な力を低減させる。
【0011】
[0011]結果として生じるリングにかかる軸線方向の荷重は、最終的に、アクチュエータ機構に伝達される。本発明のアクチュエータ機構は、改善を含み、その改善によって、それがオイルフリーの環境で動作されること(その動作は、そのように制限されないが)が可能となる。また、ハウジングの反対側の内部面に対するディフューザリングの位置が、必要に応じて、制御装置によって監視および調節され得るように、アクチュエータ機構は修正される。また、ディフューザギャップ内のリングの位置が、任意の時間において決定され得るように、関連するカムトラック機構は修正された。
【0012】
[0012]圧縮機の寿命にわたり半径方向の荷重に対処するように、リングは、十分に厚くなければならないだけでなく、リングは、反対側のハウジングと相互作用し、所定のギャップを提供しなければならず、所定のギャップは、その周縁の周りに均一であり、かつ、ハウジングの内部面に効果的に適合しなければならず、ハウジングの内部面も、均一となるように寸法決めされなければならない。ギャップが、実質的に均一でない、すなわち、許容公差の外側にある場合には、加圧ガスは、ギャップが許容値よりも大きい場所において、ギャップを通して漏出することになり、停止および起動中に起こる容量制御に関連する問題(サージ)を低減させることなく、ならびに、改善されたVGD機構に関連する他の動作改善がなく、閉じられたディフューザリングの目的にそぐわない。停止中および起動中のディフューザリングの周りのそのような漏れの排除は、先行技術設計には不可欠ではなかったが、効果的となるためには、本発明のディフューザリングおよびハウジングの反対側の内部面の両方は、慎重に制御された合わせ面を有しなければならず、VGD機構の適正な動作が、条件の所定の範囲にわたり達成できるようになっている。
【0013】
[0013]したがって、本発明では、ディフューザギャップを通るガスフローの制御に影響を与えるために、ディフューザギャップ内にディフューザリングの行程(travel)を延ばす物理的な変化が、VGD機構にとって必要とされる。ディフューザギャップ内にディフューザリングの長さを延ばし、ディフューザギャップの完全な閉止を実質的に可能にすることに加えて、圧力に応答してリングにかかる軸線方向の力を低減させるために、ディフューザリングの半径方向の面積が低減される。また、センサを含むことによって、ここで、制御装置は、ディフューザリングの位置を正確に監視することが可能であり、かつ、圧縮機運転条件に応答して、完全に開いている位置と完全に閉じている位置との間でディフューザリングを正確に移動させるようにアクチュエータ機構に命令することが可能である。より速い作用機構が、リング位置のより良好な制御を実現するために使用され、かつ、圧縮機を横切る圧力差を伴う起動、または、電力障害停止などのような、冷凍機システムの過渡状態に応答することが可能である。
【0014】
[0014]この発明の改善された可変形態ディフューザの追加的な利益は、容量制御および起動管理のための予旋回羽根(pre−rotation vanes)に対する必要性の排除である。予旋回羽根、および、その機構は、複雑であり、高価であり、かつ、それ自身の駆動機構および制御を必要とする。
【0015】
[0015]本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を伴って、以下の好適な実施形態のより詳細な説明から明らかになることになり、添付の図面は、例として、本発明の原理を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】[0016]可動のディフューザリングを利用する遠心圧縮機内の先行技術の可変形態ディフューザの断面図である。
図2】[0017]先行技術のディフューザリングの斜視図である。
図3】[0018]本発明の可変形態ディフューザの断面図である。
図4】[0019]本発明のディフューザリングの上面図である。
図5】[0020]本発明のディフューザリングの上の荷重分布を示す断面図である。
図6】[0021]可変形態ディフューザの駆動リング動作を一般的に示す図である。
図7】[0022]本発明の駆動リングに対するリニアアクチュエータの配置を示す図である。
図8】[0023]本発明の駆動リングの周縁にあるカムトラックを示す図である。
図9】[0024]先行技術の駆動リングの周縁にあるカムトラックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0025]本発明は、遠心圧縮機のための改善されたVGD機構を述べている。図1は、一般的に、VGD機構を利用する先行技術の可変容量遠心圧縮機100を断面で示しており、VGD機構は、米国特許第6,872,050号に開示されているような、ディフューザギャップ134を通る流体のフローを制御する可動のディフューザリング130を有しており、米国特許第6,872,050号は、本発明の譲受人に譲渡され、かつ、その全体は、参照により本明細に組み込まれている。図1は、現在の最新式の可変容量遠心圧縮機を一般的に表している。
【0018】
[0026]図1に図示されているように、圧縮機100は、ディフューザプレート120を含み、ディフューザプレート120は、示されているように、圧縮機ハウジング、インペラ122、およびノズルベースプレート126と一体になっている。ディフューザリング130(可変形態ディフューザ110の一部)は、ノズルベースプレート126内に機械加工された溝部132内に組み立てられており、かつ、駆動ピン140の上に装着されている。また、図1の断面に示されているのは、カムフォロワ200であり、カムフォロワ200は、駆動リング250内に配置されているカムトラック262内に挿入されている。カムフォロワ200は、駆動ピン140に接続されている。これらの機構は、’050特許に完全に議論されているように、駆動リング250の回転運動をディフューザリング130の軸線方向の運動へ変換する。内側円周方向の溝部260が、軸線方向の軸受(図示せず)を支持しており、軸線方向の軸受は、駆動リング250が回転したときに駆動リング250の軸線方向の運動に抵抗する。
【0019】
[0027]ディフューザリング130は、溝部132から離れて、ディフューザプレート120およびノズルベースプレート126を分離するディフューザギャップ134内で可動である。冷媒が、ディフューザギャップ134を通過し、ディフューザギャップ134は、インペラ122と、ディフューザ110を出ていく冷媒を受け入れる渦巻き部(volute)(図示せず)との中間にある。冷媒は、渦巻き部を通って、圧縮の追加的な段へ、または、凝縮器(これも図示せず)へ進むことが可能である。完全に後退した位置において、ディフューザリング130は、ノズルベースプレート126内の溝部132内に入れ子にされ、ディフューザギャップ134は、最大冷媒フローを可能にする条件になる。完全に延長された位置において、ディフューザリング130は、ディフューザギャップ134を横切って延び、冷媒がディフューザギャップ134を通過するためのクリアランスを低減させる。ディフューザリング130は、後退した位置と延長された位置の中間の任意の位置に移動させられ得る。
【0020】
[0028]インペラ122の回転は、インペラ入口部124において進入する流体(典型的には、冷媒)に仕事を与え、それによって、その圧力を増加させる。当技術分野で周知であるように、より高速の冷媒が、インペラを出ていき、および、それが渦巻き部へ方向付けされるときに、および、最終的に圧縮機出口へ方向付けされるときに、ディフューザギャップ134を通過する。ディフューザ110は、ディフューザプレート120、ノズルベースプレート126、および、ディフューザプレート120とノズルベースプレート126との間に形成されるディフューザギャップ134、ならびに、ディフューザギャップ134を調節するために使用されるディフューザリング130を含み、インペラ122からの冷媒の速度を低減させ、それによって、ディフューザ出口における冷媒の圧力を増加させる。
【0021】
[0029]圧縮機流量が、例えば、冷凍機に対する冷却要求の低減に対応するように減少し、および、同じ圧力が、インペラ122を横切って維持される場合には、インペラ122を出ていく流体フローは、不安定になる可能性があり、かつ、前後に交互に流れ、上述のストールおよび/またはサージ条件を生み出す可能性がある。より低い冷媒フローに応答して、サージ条件が発達するのを防止するために、ディフューザギャップ134が低減され、インペラ出口における面積を減少させ、流体フローを安定化させる。ディフューザギャップ134は、ディフューザリング130をギャップ134内に移動させることによって変化させることが可能であり、溝部132の中でディフューザリングを移動させることによって、ギャップ134の断面積を減少させるか、または、ギャップ134の断面積を増加させる。しかし、ディフューザリング130を駆動するために使用される機構に起因して、ギャップ134内のディフューザリングの正確な位置は、ディフューザリングの極端な位置(すなわち、完全に延長されたとき、または、完全に後退したとき)以外は分からない。そのうえ、ディフューザリングとディフューザプレートの両方の幾何学形状は、’050特許の発明では、慎重に制御されていないので、ディフューザリング130が完全に延ばされたときでさえも、ディフューザリングを通過する漏れを許容するギャップが、依然として存在する可能性がある。先行技術のディフューザリング130が、’050特許の図6および図7に示されており、’050特許の図6は、本明細書で図2として再現されている。特徴が、’050特許において完全に説明されており、ここで、150は、ディフューザリング130の第1の面であり、152は、ディフューザリング130の第2の反対側面であり、154は、ディフューザリング130の内側円周方向の壁部であり、156は、ディフューザリング130の外側円周方向の壁部であり、158は、その運動を容易にするようにディフューザリングを嵌め合い部品に組み立てるために使用される開口部である。しかし、’050特許のVGD機構は、関連する騒音および振動に基づいて、ストールの制御のために利用されるので、構成は、その意図された目的のために受け入れ可能であるが、他の機能のためのその使用は制限されている。
【0022】
[0030]本発明の改善された可変形態ディフューザ(VGD)機構が、ここで、図面をさらに参照して、詳細に説明されることになる。本発明のVGD機構は、回転ストールを制御することに加えて機能を果たし、したがって、異なる構成、および、異なる制御機構を必要とする。
【0023】
[0031]本発明のVGD機構810が、図3に示されている。それは、先のVGD機構と多くの類似点を有しているが、しかし、それは、重要な相違点も有しており、その相違点は、圧縮機の動作に影響を及ぼし得る。本発明のディフューザリング830は、先行技術のディフューザリング130とは異なる断面プロファイルを有している。ディフューザリング130は、図2において斜視図で示されており、長方形断面を有している。それとは対照的に、本発明のディフューザリング830は、図3の断面および図4に示されているように、L字形状の断面を有している。ディフューザリング830は、一組の実質的に直交するフランジ、すなわち、ディフューザギャップ134内に延長可能な第1のフランジ833と、第1のフランジに対して実質的に垂直である第2のフランジ835とを含み、第2のフランジ835は、ディフューザギャップおよびガスフローの方向に対して実質的に平行に延在している。直交するフランジは、互いに対して90°に延在している場合において、実質的に直交するフランジは、90°±15°を含む範囲の中で互いに延在するフランジを意味している。第2のフランジがディフューザギャップおよびガスフローの方向に対して実質的に平行に延在しているということは、0°が平行である場合に、直交するフランジが、0°±15°を含む範囲の中で延在していることを意味している。ディフューザリング830が、VGD機構810のエレメントとして圧縮機内に組み立てられるときに、第1のフランジ833は、ディフューザプレート120の反対側面に向かって延在する。フランジ833が、軸線方向に(すなわち、ディフューザギャップ134内に)延長された寸法を提供するときに、第1のフランジ833は、先行技術のディフューザリング130よりも、さらにディフューザギャップ134内に延びる能力を、ディフューザリング830に提供することに留意されたい。ディフューザリング830にかかる軸線方向の力は、第1のフランジ833を横切る圧力差の結果である。ディフューザリング830が完全に後退したときには、圧力差が存在しないので、軸線方向の力は、その最小となる。しかし、第1のフランジ833が、ディフューザギャップ134内に延長されたときには、高速のガスが、リングの第1のフランジ833の面の上を通り、低圧の領域を生み出す。ノズルベースプレート126の溝部内のより高圧のガスが、第2のフランジ835に圧力を加える。リング830にかかる力、ならびに、ディフューザギャップ134内に、および、ディフューザギャップ134からリングを移動させる機構にかかる力は、先述のように、ガス圧力の差にディフューザフランジ833の面積を乗じたものである。
【0024】
[0032]第1のフランジ833の全体的な半径方向の厚さを低減させることによって、リング830にかかる軸線方向の力が低減され、第1のフランジ833の半径方向の厚さは、第1のフランジ833が延長されたときに、ディフューザギャップ134内に延びるディフューザリング830の一部分であり、第1のフランジの半径方向の厚さは、ディフューザギャップ134内のガスフローの方向に対して垂直である。図3およびディフューザリング830を参照すると、ディフューザギャップ134内に突出する第1のフランジ833の面積は、先行技術のディフューザリング130の設計と比較して、低減されている。第1のフランジ833の半径方向の厚さは、約2/3まで低減されており、それによって、ディフューザリングにかかる荷重を比例的に(すなわち、約2/3まで)低減させる。何故なら、荷重は、ディフューザギャップ134内の第1のフランジ833の面積に比例するからである。
【0025】
[0033]第1のフランジ833の半径方向の厚さの低減は、ディフューザリング830をその後退した位置からその延長された位置へ移動させる作動手段を取り付けるために利用可能なスペースを低減させる。第2のフランジ835は、図3に示されているように、そのような取り付けを可能にするように設けられている。第2のフランジ835は、ノズルベースプレート内の溝部837内に存在しており、第2のフランジ835は、溝部837の中で移動し、ディフューザリングフランジ833が、ディフューザギャップ134内に、および、ディフューザギャップ134から移動することを可能にする。また、ノズルベースプレート126内の溝部837は、VGD機構へのディフューザリング830の組み立てを許容することも必要とされる。第2のフランジ835の周りの大きい半径方向のギャップは、溝部837に進入する高圧ガスが第2のフランジ835の両側において均一化することを可能にし、それによって、ディフューザリング830の上のガス圧力に関連する荷重には貢献しない。したがって、ディフューザリング830の上に荷重をかける全体的な圧力は、ディフューザギャップ134内に延びるときに、第1のフランジ833の露出された部分の面積に作用する冷媒の圧力である。取り外し可能なカバープレート839が、ノズルベースプレート126に組み立てられており、かつ、ディフューザリング駆動機構の組み立てを容易にするために設けられている。カバープレート839は、冷媒ガスのフローが圧縮機排出口へ流れるときのための滑らかで空気力学的な表面を提供しており、この領域での乱流の可能性を低減させている。
【0026】
[0034]フランジ833を形成させるときに、事前選択された半径方向の厚さをフランジ833に提供するように注意が払われなければならない。図5図5は、ノズルベースプレート126に組み立てられたディフューザリング830の断面を示している)に示されているように、ディフューザリング830がディフューザギャップ134内に延びているときに、高圧冷媒は、冷媒フロー863によって指示されているように、第1のフランジ833に衝突する。図5は、第1のフランジ833にかかる半径方向の圧力を指示している。フランジ833の半径方向の厚さを決定するために考慮されるべき別の要因は、かなり大きな圧力変動に露出されるディフューザリング830の疲労寿命である。加えて、本発明では、VGD機構が、容量制御、改善されたターンダウン、サージ制御、および、起動時および停止時における圧縮機の過渡的な荷重の最小化に関するその能力を増加させるために、ディフューザリング830は、ディフューザプレート120に可能な限り近づけて延びなければならない。可能な限りギャップを低減させるために、ディフューザプレート120は、慎重に制御された寸法を有しており、フランジ833は、フランジ833の面、および、対合するディフューザプレート120の面の平坦性の観点から、慎重に制御された公差を有していなければならない。フランジ833が薄すぎる場合には、公差に悪影響を及ぼし得るスプリングバックなどのような機構が起こる可能性があるので、所望の公差内にこれらの幾何学的な特徴を維持することは可能でない可能性がある。公差からの偏差は、フランジの周りで、および、ディフューザギャップを通して、漏れを増加させることになり、VGD機構がストール緩和で使用するためのその能力を保持することは可能であるとしても、容量制御、ターンダウン、起動およびターンダウンおよびサージの間の過渡的な制御のために効果的にVGD機構が使用されることを防止する。見ることができるように、ディフューザリング830、および、とりわけディフューザリングフランジ833は、理想的には、それに作用する力を最小化するために、可能な限り小さいフランジ厚さを有しなければならないが、製作の間のスプリングバックを回避するのに十分な厚さを有しなければならず、かつ、それに加えられるガス圧力の力に抵抗しながら、動作中の疲労を満足させなければならない。
【0027】
[0035]幾何学的な公差を維持し、ディフューザリング830が完全に延ばされているときに、ディフューザリング830の周りの漏れ、および、ディフューザギャップ134を通る漏れを最小化するようになっていることが、この可動のディフューザリングの動作にとって、重要な態様である。より高い冷却能力を有する圧縮機は、より幅の広いディフューザ幅にわたるより高い圧力に対応し、上記に引用されている競合的な設計要求を満足させるために、フランジ厚さに対する追加的な増加を必要とする可能性がある。
【0028】
[0036]また、他の考慮事項も、本発明の可変形態ディフューザ機構の全体的な設計に影響を与える。最近の圧縮機設計は、先の設計で一般的に使用される機械的な軸受よりも、電磁軸受を利用している。電磁軸受を利用する圧縮機は、油の使用を避ける。しかし、機械的な軸受を利用する圧縮機内の油のいくらかは、アクチュエータ機構を潤滑することを支援し、アクチュエータ機構は、先行技術設計のディフューザリング130を、ディフューザギャップ134の中で後退した位置から延長された位置へ動かすために使用される。
【0029】
[0037]また、本発明の可変形態ディフューザ810は、改善された機構設計を利用しており、改善された機構設計は、標準的な潤滑を用いる機械的な軸受を使用する従来の遠心圧縮機の中で、または、実質的に潤滑フリーの環境で電磁軸受を利用する遠心圧縮機とともに、動作可能である。一般的に、ディフューザリング830を動かす機構が、図6に示されており、カムトラック862の中を移動する駆動ピン140を含む。駆動ピン140は、第2のフランジ835を駆動リング850に接続し、駆動リング850の回転運動が、ディフューザギャップ134内において、可逆的な後退した位置から可逆的な延長された位置へのディフューザリング830の並進運動を、結果として生じさせるようになっている。駆動リング850は、図1の駆動リング250に対応している。また、本発明の可変形態ディフューザ810内のカムフォロワ200に対する駆動ピン140の配置は、図1に示されている先行技術の幾何学形状ディフューザ110の配置と同一である。駆動ピン140がカムトラック862の中を移動するときに、駆動ピン140に取り付けられているカムフォロワ200が、駆動リング850内のカムトラック862に追従する。本発明の駆動リング850は、駆動リング250のカムトラック幾何学形状262(図9に最良に示されている)、および、駆動リング850のカムトラック幾何学形状862(図6および図8に示されている)における重要な相違点を除いて、図1の駆動リング250と同一である。ディフューザリング830への駆動リング850の取り付けは、それぞれのディフューザリング130および830への駆動ピン140の接続の点を除いて、ディフューザリング230への駆動リング250の取り付けと同一である。本発明のディフューザリング830は、フランジ形状の構成を有しており、駆動ピン140は、ディフューザリング830の第2のフランジ835に接続している。当然のことながら、ディフューザリング130は、図1の断面図に示されているように、簡単な円筒形状のリングであるので、第2のフランジ830は、ディフューザリング130内に存在していない。
【0030】
[0038]ここで図7を参照すると、本発明のアクチュエータ811は、制御装置と連動して動作し、その動作は、プログラムされ得るようになっている。アクチュエータ811は、リニアアクチュエータであり、かつ、駆動モーター898に取り付けられている駆動ロッド896を含む。駆動ロッド896は、操作レバー901に直接的に取り付けられており、操作レバー901は、駆動リング850に取り付けられている。そして、駆動ロッド896の線形運動が、駆動リング850を回転させる。
【0031】
[0039]ここで図8を参照すると、カムトラック862(それは、駆動リング850の外側円周方向の表面252の上に配置されている)は、カムフォロワ200を受け入れるために事前選択された幅および深さを有している。図8には、1つだけが示されているが、一般的に、駆動リング850の円周方向の表面252に配置されている3つのカムトラック862が存在している。カムトラック862は、駆動リング250の底部表面258から駆動リング850の上部表面256に向かって延在し、これらの表面の間で斜めに延在しており、好ましくは、実質的に直線に延在している。ここで、傾斜部のそれぞれの端部において平坦部267および269を有する、図9に示されている先行技術のカムトラック262から区別されるように、カムトラック862の形状は、実質的に事前選択された線形勾配を有する傾斜部である。先行技術のカムトラック262内の平坦部は、オリジナルのダンパーモーターの不正確な位置および移動能力、ならびに、完全に後退した位置での機構の調節に対応することの原因となる。平坦部は、行程の両極端部におけるジャミング(jamming)の可能性を排除するので、平坦部は、機構に対する損傷を防止し、不正確な位置決めは、先行技術のカムトラックの動作および能力の要因ではなかった。
【0032】
[0040]それとは対照的に、駆動リング850(駆動リング850は、ディフューザギャップ134内にディフューザリング830を位置決めする)を制御するためにリニアカムトラック862と連動して動作するアクチュエータ811(一実施形態では、リニアアクチュエータ)は、より速い作動、可変速度、位置精度、および、ディフューザギャップ134内の第1のフランジ833の場所の位置決めの精密なフィードバックを提供する。本発明のシステムは、ディフューザリング830の極端部における、ディフューザギャップ134に関するディフューザリング830の較正の準備を可能にし、ディフューザリング830が、単にストール緩和するためにとどまらずに使用されることを可能にする。当然のことながら、レバーとアクチュエータのリンケージとの間の接続の簡単化、および、駆動リング250に取り付けられている操作レバー901が、さらなる利点を提供する。
【0033】
[0041]本発明のVGD機構810の初期のセットアップの間に、または、フォローアップ較正が望まれるときにはいつでも、アクチュエータは、駆動リング250を回転させるように簡単に動作し、カムトラック862内の行程の一方の端部から、カムトラック862内の行程の反対側の端部に向かって、カムフォロワ200を移動させる。カムトラック862の中でカムフォロワ200を迅速に移動させるデバイスが好ましいが、この役割を達成することができる任意のアクチュエータまたはモーターを使用することが可能である。回転アクチュエータは、使用され得る1つの変形例であるが、リニアアクチュエータが好ましい。カムトラック862の両端部において、行程の端部は、第1のフランジ833の完全に延長された位置、および、第1のフランジ833の完全に後退した位置に対応する。第1のフランジ833におけるディフューザギャップ134の最大寸法(それは、ディフューザプレート120とカバープレート839の外側表面との間の距離である)は、製造および組み立てに基づいて決定または測定することが可能な既知の距離である。制御装置のプログラミング機能は、ディフューザリング830の極端な位置、第1のフランジ833におけるディフューザギャップ134の最大寸法、ならびに、とりわけ、ディフューザプレート120、カバープレート839、およびアクチュエータ811に対する第1のフランジ833を格納および保存する能力を含み、極端な位置が知られるだけでなく、(第1のフランジ833の位置に基づいて)任意の時間におけるディフューザギャップ134の開度が知られるようになっており、ディフューザギャップ134の開度が、圧縮機100の変化する動作条件に基づいて、迅速に調節され得るようになっている。行程の極端部におけるディフューザリング830の位置を較正することが可能であり、これらの極端部内のどこかにあるディフューザリングの位置を、追加的なセンサを使用することなく決定することが可能である。アクチュエータからの信号は、較正手順の一部として使用することが可能であり、および、較正後にディフューザリング830の位置を決定するように使用することが可能である。そのうえ、ディフューザリング830の位置の精度についての問題が、動作の過程で生じた場合には、再較正が、要求通りに達成され得る。プログラミング機能は、アクチュエータ811がディフューザリング830を通常モードで動作および移動させることを可能にし、運動は、圧縮機100の通常の過渡状態に基づく。しかし、アクチュエータ811は、急速モードで動作することも可能であり、急速モードは、ディフューザリング830が完全に延長された位置に移動することを許容し、完全に延長された位置では、ディフューザギャップ134は、差し迫るサージまたはストールが検出される場合には必要に応じて、完全に制限される。本明細書で使用されているように、完全に制限されたディフューザギャップ134は、ディフューザギャップ134の開度が最小であるように、ディフューザリング830が完全に延びている状態である。ディフューザリング830が完全に延長された位置にあるときに、VGD機構810の設計は、100%ガスシールを提供しないが、それは、ディフューザリング130が完全に延長された位置にあるときにディフューザギャップ134の約75%の低減しか提供しなかった先行技術のVGD機構に対して、かなりの改善を提供する。本発明の改善は、ターンダウンまたは起動および停止サージの冷凍機制御にもはや影響を及ぼさない程度まで、漏れが最小化されることを可能にする。したがって、完全に制限されたディフューザギャップ134、および/または、完全に延長されたディフューザリング130は、機能的に、ターンダウンまたは起動および停止サージの冷凍機制御に影響を及ぼさないものである。
【0034】
[0042]また、アクチュエータ811によってディフューザリング830を急速に位置決めする能力は、通常運転中の遠心圧縮機の容量制御も可能にする。加えて、ディフューザギャップ134を通る冷媒のフローが限定されるように、ディフューザリング830の位置決めを制御する能力は、高温の冷媒ガスバイパスの使用が必要とされる前に、より大きい冷凍機ターンダウンを許容する。冷凍機ターンダウンは、最小容量として画定され、最小容量は、圧縮機を停止する必要なく連続的な動作を依然として可能にしながら、圧縮機によって実現され得る。高温のガスバイパス(または、他の同様の手段)は、低い圧縮機容量を実現するための非常に非効率な手段であるので(何故なら、それは、圧縮機に冷媒フローで人為的に負荷をかけることを必要とするからである)、これは有利である。
【0035】
[0043]また、アクチュエータ811によるディフューザリング830の急速位置決めは、停止中にディフューザギャップ134を通るガスフローの速い制御も可能にする。冷凍機の冷却サイクルは、機械的な仕事(圧縮機/モーター)を必要とし、冷媒の圧力上昇を生み出し、蒸発条件から凝縮条件へ冷媒を移動させる。通常の「緩やかな」停止中に、圧縮機速度は、制御される様式で低減され、蒸発器および凝縮器シェル内の圧力の均一化を可能にし、それによって、停止中の大きく過渡的な条件または異常な条件を排除する。しかし、モーターへの電力の喪失などに起因して(停電、故障、安全装置など)、システムが即時停止を必要とするときに、凝縮器シェル内の高圧を維持する手段が存在しない。システム圧力をバランスさせるための唯一の機構は、高圧凝縮器から低圧蒸発器へ圧縮機を通る冷媒の逆流による。圧縮機への電力がない状態で、インペラは、望ましくないが、冷媒圧力が均一化し、低圧(蒸発器)側へ流れ、逆向きに(設計意図の反対側に)圧縮機インペラを回転させるので、タービンとして振る舞い、凝縮器内の高圧流体から圧縮機へのエネルギー変換を伴う。電力の喪失の状況において、停止における動作をVGDが保持することを保証するために、パワーアクチュエータ811に対するバッテリーバックアップを設けることが可能である。加えて、バックスピン、ストール、またはサージが発生する場合に、軸受荷重は、停止中にその最高レベルになる可能性がある。VGD機構810によるディフューザギャップ134の高速作動閉止は、停止における軸受安定性の問題を回避する。また、それは、これらのより高い荷重の一部分を軽減し、したがって、より低い荷重の軸受を使用することが可能であり、そのことは、そのような軸受は高価でないので、コスト節約につながる。ディフューザギャップ134を閉じることは、圧縮機100を通る冷媒の逆流に対する抵抗を生み出す。
【0036】
[0044]また、アクチュエータ811によるディフューザリング830の急速位置決めは、起動中にディフューザギャップ134を通るガスフローの急速制御も可能にする。起動中に、ウォーターポンプが、蒸発器を流れる冷水および凝縮器を流れる温水とともに既に稼働している場合には、圧縮機にかかるかなりの荷重が既に存在し得る。この場合には、圧縮機は、システム圧力差を克服するのに十分な速度を実現するまで、ストールおよびサージを通過することが可能である。閉じたVGDを用いて開始することによって、これらの条件の下での過渡的なサージを回避することが可能である。したがって、起動の前に、制御装置は、ディフューザリング830を完全に延長された位置へ移動させ、ディフューザギャップ134を閉じるように、アクチュエータ811に自動的に指示することが可能である。次いで、制御装置は、感知された圧力または圧縮機速度などのような、感知された条件に基づいて、望ましい場合には、事前にプログラムされたアルゴリズムにしたがって、その完全に延長された位置から、ディフューザリング830を後退させるように、アクチュエータ811に指示することが可能である。
【0037】
[0045]可変形態ディフューザのアッセンブリのほとんどは、先の設計から変化させないままであることが可能である。しかし、本発明では、ディフューザプレート120に対するディフューザリング830の精密な位置が、通常の圧縮機運転中に、任意の時間において知られるように、設計が修正されており、ディフューザギャップ134の精密な開度が、任意の時間において知られることを可能にする。これは、追加的なプロセス潤滑を必要としないかまたは利用しない機構によって達成される。先行技術のVGD機構とは異なり、本発明のVGD機構810は、好ましくは、電磁軸受を利用するものなどのような、オイルフリーの圧縮機で使用することが可能である。しかし、それは、油潤滑式の軸受を利用する圧縮機で使用することも可能である。
【0038】
[0046]ディフューザリング830を精密に位置決めする能力は、繊細な調節が、圧縮機運転中に、圧縮機要求および/または出力(すなわち、冷凍機冷却負荷、および、凝縮器と蒸発器との間の圧力差)に基づいて、ディフューザギャップ134に対してなされることを可能にし、これらの繊細な調節は、較正手順の間に制御装置内にプログラムされ、制御装置内に格納され得る。例えば、温度が、条件付けされた(conditioned)スペースの中で変化すると、ディフューザギャップ134は、冷凍機に対する冷却要求に対応して修正することが可能であり、温度は、圧縮機要求に対応するように変化する。圧縮機に対する要求は、実際の圧縮機出力と比較することが可能である。したがって、スペースをわずかに冷却するか、または、スペースを(外側の温度が増加するときに)所定の温度に維持するために、要求がわずかに増加する場合には、および、要求が圧縮機出力のわずかな増加を必要とする場合には、ディフューザギャップ134は、わずかに増加され得る。スペース内のより低い温度に対するかなりの要求などによって、要求が劇的に増加される場合には、圧縮機出力において必要とされる対応する大きな増加が存在し、ディフューザギャップ134は、増加した冷媒フローに対応するように完全に開けられ得る。ディフューザリング830の位置、および、したがって、ディフューザギャップ134の開度は、較正することが可能であり、較正の結果は、制御装置内に格納することが可能である。したがって、圧縮機要求が100%である場合において、ディフューザリング830が完全に後退したときには、ディフューザギャップ134を完全に開けることが可能である。ディフューザリングフランジ833が、溝部832内に完全に後退したときに、完全に後退したディフューザリング830が生じる。圧縮機停止のときなどのように、ディフューザフランジ833がディフューザギャップ134内に完全に延長されたときに、完全に延長されたディフューザリング830が生じる。これらの2つの条件は、圧縮機動作の極端例を表している。
【0039】
[0047]留意されるように、制御装置は、これらの極端な位置におけるディフューザリング830の位置、および、これらの極端な位置同士の間のディフューザリング830の位置を決定するアクチュエータからの信号を使用して、プログラムすることが可能である。加えて、動作条件は、ディフューザリングの位置に相関性がある可能性がある。したがって、制御装置は、例えば、蒸発器(冷却負荷)から離れる水温におけるディフューザリング830の位置を「学習する」ようにプログラムすることが可能である。また、通常に監視および感知されるシステムの他の条件も、ディフューザリング830およびアクチュエータの位置に相関性がある可能性がある。加えて、ストールおよびサージは、好ましくは、音響センサを使用して感知することが可能であるが、サージおよびストールを感知することは、そのような音響センサの使用に限定されないが、サージおよびストールが目前に迫っている可能性があるときを決定するために、他の方法を利用することが可能である。当然のことながら、本発明では、制御装置は、任意の時間におけるディフューザリング830の位置を決定することが可能であるので、冷媒フローの挙動、圧縮機効率、および、サージまたはストールの検出に基づいて、ディフューザリング830を動かすために、制御装置が、この位置を使用することが可能であり、これらの条件のいずれかに対する影響は、ディフューザリング830の位置に線形に関連していない。
【0040】
[0048]例えば、起動時に、圧縮機要求が10%まで絞られるとき、ディフューザリング830を完全に延長された(閉じた)位置から第1の所定の位置へ移動させることによって、ディフューザギャップ134を開けることが可能である。ディフューザリング運動の非線形の影響に起因して、ディフューザリング830の運動は、圧縮機要求の10%の変化の場合と常に同じであるわけではないことに留意されたい。また、運動は、ディフューザリング830の初期位置および最終位置にも依存する。同様に、圧縮機要求が50%(上記の10%の要求から40%の増加)で必要とされるときには、ディフューザリング830を第1の所定の位置から第2の所定の位置へ位置決めすることによって、ディフューザギャップ134をさらに開けることが可能である。このように、値の全体範囲は、必要に応じて、圧縮機の効率的な運転を提供するために、制御装置内に格納することが可能であり、およびこれらの値は、圧縮機デューティが変化するときに呼び出す(または、さらに推定する)ことが可能であり、ディフューザリング830は、定常状態の運転条件を実現するために、制御装置によって迅速に再配置することが可能である。
【0041】
[0049]音響センサによって検出されるサージもしくはストール、または、システムへの電力の喪失などのような、有害な事象の発生が検出されると、制御装置は、プログラムされている設定を覆し、ディフューザリング830をディフューザギャップ134内に迅速に延在させ、ストールまたはサージが緩和されるまで、ディフューザギャップ134を通る冷媒のフローを抑えることが可能である。また、サージまたはストールは、ディフューザ810を通る冷媒フローをセンサで監視することによって検出することが可能であるが、サージまたはストールを監視する好適な方法は、音響センサの使用によるものであり、サージまたはストールが、かなりの騒音および望ましくない騒音を発生させるときに、音響センサが、制御装置と通信する。サージおよびストールを検出するための他の方法は、2008年4月15日に発行された「System and Method for Stability Control in a Centrifugal Compressor」という発明の名称の米国特許第7,356,999号、2011年3月15日に発行された「Control System」という発明の名称の米国特許第7,905,102号に述べられているような、サージまたはストールを検出するアルゴリズムを利用することが可能である。2011年3月15日に発行された「Method for Detecting Rotating Stall in a Compressor」という発明の名称の米国特許第7,905,702号は、ディフューザリングの下流で圧力変換器を利用し、回転ストールを検出および是正する。これらの特許は、すべて、本発明の譲受人に譲渡されており、かつ、参照により本明細書に組み込まれている。サージまたはストールが是正された後で、圧縮機要求に基づいてディフューザリング830の位置決めをするプログラムされた動作は、上述のように、制御装置によって再格納され得る。
【0042】
[0050]本発明の改善された可変形態ディフューザ機構810の利点は、機構に作用する力を低減させる、可動のL字形状のフランジ833の使用を含む。また、このL字形状のフランジは、先行技術の可変形態ディフューザ機構で利用されている可動フランジよりも、重量が軽いことが可能である。低減された力および低減された重量は、より速く反応することが可能なVGDを提供する。また、それは、より軽い重量のアクチュエータ、および、より安価なアクチュエータの使用を可能にする。さらに、完全に閉じるだけでなく、感知されたシステム条件に基づいて、圧縮機動作を制御するように較正される、改善された可変形態ディフューザの能力は、可変形態ディフューザが、容量制御のために、ならびに、サージおよびストール緩和のために使用されることを可能にする。この容量制御の特徴は、過去に使用されてきた予旋回羽根(PRV)の排除を許容する。したがって、改善された可変形態ディフューザは、より多く使用されることになるほど、より低い力を受けることになり、そのより軽い重量は、摩耗の低減を結果として生じさせ、より長い寿命を伴うことになり、そして、そのことは、信頼性の向上を提供することになる。
【0043】
[0051]本発明は、好適な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変化をなすことが可能であり、均等物が、そのエレメントの代わりとされることが可能であることが当業者によって理解されることになる。加えて、本発明の本質的な範囲を逸脱することなく、本発明の教示について、特定の状況または材料に、多くの修正例を適合させることが可能である。したがって、本発明は、この発明を実施するために考えられる最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるべきでなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に該当するすべての実施形態を含むことになることが意図されている。
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