特許第6174143号(P6174143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174143
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】二酸化窒素濃度を低減する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20170724BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170724BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20170724BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   B01D53/86 222
   B01D53/94 222
   F23J15/00 AZAB
   F23J15/00 H
   F01N3/08 A
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-524686(P2015-524686)
(86)(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公表番号】特表2015-531671(P2015-531671A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】EP2013062244
(87)【国際公開番号】WO2014019756
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年6月2日
(31)【優先権主張番号】102012213728.9
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レンプケ,アルノ
(72)【発明者】
【氏名】ジグリング,ラルフ
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−225348(JP,A)
【文献】 特開2003−074331(JP,A)
【文献】 特開2002−295241(JP,A)
【文献】 特表2010−502418(JP,A)
【文献】 特開平07−132212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/00−53/96
F01N3/00,9/00−11/00
F23J15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼による排ガス中の二酸化窒素NO濃度を低減する方法であって、二酸化窒素と未燃焼炭化水素UHCsを含む排ガスは、
NOを貯蔵するNO貯蔵用触媒(3)に通され、ここで、該触媒(3)は、温度TNO2absで二酸化窒素を貯蔵し、温度TNO2desで二酸化窒素を放出するものであり、
次いで、前記排ガスは、UHCsの酸化の過程でUHCsとの反応によってNOを還元するNO還元用触媒(1)に通され、前記排ガス中の二酸化窒素は、前記触媒(1)の存在下で少なくとも一酸化窒素NOへと還元され、
前記触媒(1)は
(i)貯蔵温度TUHCabsを有し、該貯蔵温度TUHCabsを超える温度では、前記触媒(1)はUHCsとUHCsの部分酸化生成物を貯蔵し、
(ii)活性温度Tredを有し、該活性温度Tredを上回ると、前記触媒(1)は前記UHCsの酸化によってNOを少なくともNOに還元するように触媒反応し、
(iii)前記排ガス中で酸素OによるUHCsの酸化が始まる作用温度Toxを有し、
式(I)に示すように、UHCsを貯蔵するための貯蔵温度TUHCabsは、NOを還元する活性温度Tredを下回り
(I) TUHCabs<Tred
そして式(II)に示すように、OでUHCsを酸化するための作用温度ToxがTredを上回るように選定される
(II) Tox>Tred
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒(1)の存在下での前記還元の後で、二酸化窒素の濃度が排出制限値を超える場合、酸素によるUHCsの酸化の反応速度は、UHCsによる前記二酸化窒素の還元の反応速度より遅い、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒(1)は、式(III)に示すToxを上回る温度TUHCdesをさらに有し、
(III) TUHCdes>Tox
UHCdesを上回ると、前記触媒(1)は貯蔵されたUHCとUHCsの部分酸化生成物を放出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒(1)は、式(IV)に示すTredを下回る温度TNO2absを有し、
(IV) TNO2abs<Tred
NO2absを上回ると、前記触媒(1)は二酸化窒素を貯蔵し、
前記触媒(1)はさらに式(V)に示すTredを上回る温度TNO2desを有し、
(V) Tred<TNO2des
NO2desを上回ると、前記触媒(1)は二酸化窒素を放出する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
式(VI)に与えられるように、時間平均UHCs濃度XUHCsは、係数γによって表されるように二酸化窒素濃度XNO2の時間平均を上回る、
(VI) γ=XUHCs/XNO2>1
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記排ガスは、前記触媒(1)に通すときに前記触媒の最高温度Tmaxよりも低い温度であるように、前記触媒(1)に通す前に前記排ガスから抜熱し、
ここで、NO還元用触媒の場合に、該最高温度Tmaxを上回るとUHCsまたはNOのうちの少なくとも一方の貯蔵容量の減少、または該最高温度Tmaxを上回ると二酸化窒素還元の触媒活性の低下のうちの少なくとも一方が生じる、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記排ガスは、前記触媒(1)の下流において、UHCsおよびUHCsの部分酸化生成物を酸化するUHC酸化用触媒(2)に通される、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒(2)の上流または下流のうちの少なくとも一方、または、前記触媒(3)の上流または下流のうちの少なくとも一方で前記排ガスから熱を除去する、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼による排ガス中の二酸化窒素NOの濃度を低減する装置であって、該装置は、NO貯蔵用触媒(3)を有し、該触媒(3)は、前記触媒(1)の上流で前記排ガスと接触するように設置され、該装置は、さらに、NO還元用触媒(1)を有し、該触媒(1)は、
(i)貯蔵温度TUHCabsを有し、該貯蔵温度TUHCabsを超える温度では、前記触媒(1)はUHCsとUHCsの部分酸化生成物を貯蔵し、
(ii)活性温度Tredを有し、該活性温度Tredを上回ると、前記触媒(1)は、前記UHCsの酸化によって、NOを少なくとも一酸化窒素NOに還元するように触媒反応し、
(iii)前記排ガス中で酸素OによるUHCsの酸化が始まる作用温度Toxを有し、
式(I)に示すように、UHCsを貯蔵するための貯蔵温度TUHCabsは、NOを還元する活性温度Tredを下回り
(I) TUHCabs<Tred
そして式(II)に示すように、OでUHCsを酸化するための作用温度ToxがTredを上回るように選定される
(II) Tox>Tred
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
前記触媒(1)は、式(III)に示すToxを上回る温度TUHCdesをさらに有し、
(III) TUHCdes>Tox
UHCdesを上回ると、前記触媒(1)は、貯蔵されたUHCとUHCsの部分酸化生成物を放出する、
ことを特徴とする請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記触媒(1)は、式(IV)に示すTredを下回る温度TNO2absを有し、
(IV) TNO2abs<Tred
NO2absを上回ると、前記触媒(1)は二酸化窒素を貯蔵し、
前記触媒(1)は、さらに式(V)に示すTredを上回る温度TNO2desを有し、
(V) Tred<TNO2des
NO2desを上回ると、前記触媒(1)は二酸化窒素を放出する、
ことを特徴とする請求項または10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
UHC酸化用触媒(2)をさらに有し、
該触媒は、前記触媒(1)の下流で前記排ガスと接触するように設置される、
ことを特徴とする請求項から11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記触媒(1)を通って前記ガスが流れる方向に対して、前記触媒(1)の上流または下流のうちの少なくとも一方、または、前記触媒(2)の上流または下流のうちの少なくとも一方、または、前記触媒(3)の上流または下流のうちの少なくとも一方、のうちの少なくとも一つに熱交換器を少なくとも一つ有する、
ことを特徴とする請求項から12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
請求項から13のいずれか1項に記載の装置を有することを特徴とするシステム。
【請求項15】
前記システムはガスタービン発電所、ガスタービンで動く圧縮機、ガス若しくは油燃焼ボイラ、ガスエンジン、またはディーゼル油若しくは重油の燃焼によって稼働する船舶のエンジンであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未燃焼炭化水素または未燃焼炭化水素の混合物を酸化することによって二酸化窒素を還元する触媒を用いて炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼によって排出される排ガス中の二酸化窒素濃度(含有量)を低減する方法、未燃焼炭化水素または未燃焼炭化水素の混合物を酸化することによって二酸化窒素を還元する触媒を用いて炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼によって排出される排ガス中の二酸化窒素濃度(含有量)を低減する装置、および当該装置を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、世界規模でのエネルギー需要の増大により、様々なシステムにおいてクリーンな方法で効率よくエネルギーを生み出す必要性がますます高まってきている。これは炭化水素や炭化水素の混合物を燃焼させることによって動作してエネルギーを生み出す従来のシステムにおいても同様である。
【0003】
ガスタービン発電機は、この点において、公共的なエネルギー供給用だけでなく工業用にも効率的且つクリーンに電気エネルギーを生み出し得るものとされる。高品質セラミックの保護膜や冷却に高度な思想を取り入れた結果、今やガスタービンは1500℃を超える平均タービン入口温度でも稼動することができ、熱回収なしで正味40%の熱効率、蒸気タービンへの結合を介して熱回収すると、約60%を超えるエクセルギー効率を達成する。
【0004】
最適化された燃焼器を使用することで、天然ガスを燃料として稼動の際は平均窒素酸化物(NO=窒素酸化物総量、つまりNOおよびNOをあわせたもの)排出量25ppm(体積比)未満、および一酸化炭素(CO)排出量10ppm未満が保証され、ここで定められたある試験サイクルが、排出量の決定用の基準として使用されている。そのため、排ガスの後処理を更に行わなくても、ドイツなどの多くの工業国において発電所からの排出量の国の制限値を満たすこととなる。
【0005】
ガスタービンは、低排出量と高効率において優れているだけではなく、全く異なる負荷(100%から30%未満の値までの負荷追従性)および(30分足らずで基底負荷に達する)急速立ち上げまでの急激な負荷変動といった状況下での稼動などにおける性能においてもまた優れている。電力供給網への供給電力が時間と共に大きく変動することが特徴である再生可能資源(風力、太陽光など)からのエネルギーの割合が増加するに伴い、ガスタービンの負荷追従性を利用することが増えてきている。しかし、この結果、試験サイクルで求められる平均値とは大幅に異なる排出量の汚染物質が発生する。燃焼器の出力が低いとき、ガスタービン燃焼器は等価条件下(すなわち化学量論的燃焼に必要な数値を基にした空燃比)で稼動させることとなり、タービンの基底負荷に必要な数値をかなり下回ることとなる。
【0006】
また、この等価条件では完全予混合燃焼のための希薄燃焼限界を大きく下回るため、未燃焼炭化水素および/または未燃焼炭化水素の混合物(UHCs)や一酸化炭素(CO)の排出量が増加し、窒素酸化物の排出量もまた増加することが多い。ここで、窒素酸化物は、二酸化窒素(NO)が圧倒的な割合で排出されるという特性がある。下層大気に排出されるという観点からすると、一酸化窒素は大気中でものの数分間のうちに酸化され、二酸化窒素が生成されることから、実質的な問題はない。しかし、NOは青色や近紫外スペクトル領域の光を吸収するという好ましくない性質を有しているため、発電所の排気筒から出る排気プルームの黄変(英語で「yellow plume(黄色プルーム)」と呼ばれる)のせいで、汚染物質の排出量が全て法規定を満たしているガスタービンの稼動でさえも容認問題となり得るほどである。
【0007】
さらに、ガスタービンの場合、石油を代替燃料として使用することが頻繁にある。この場合、天然ガスを燃料とする稼動と比べると、高い頻度で窒素酸化物排出量の上昇が起こり、広範囲の負荷にわたって無視できない濃度のNOの生成が観察されることとなる。
【0008】
ガスタービン発電所は長期的な投資であり、石炭発電所と同様、電力エネルギーの生成から可能な限り高い収量を達成するために、これまで通常は基底負荷で稼動されてきた。この場合、窒素酸化物の排出量のうちほぼ100%を一酸化窒素(NO)が占める。そのため、ガスタービンの急速な立ち上げをしない限り、黄色がかった排気プルームが観測されることはなかった。したがって、エネルギー市場において再生可能エネルギーが占める割合が急速に増加したことによって顕在化した排出物は、これまでは問題とされてこなかった。
【0009】
同様に、ガス圧縮機、ガスまたは油燃焼ボイラ、ガスエンジンやディーゼル油または重油を燃料とする船舶といった炭化水素や炭化水素の混合物をある稼動条件下において不完全燃焼させる機械装置の排ガス中でもさらに二酸化窒素の排出物が生成され、帯黄変色が起こることがある。
【0010】
MORIO HORI, NAOKI MATSUNAGA, NICK MARINOV, WILLIAM PITZ and CHARLES WESTBROOK: AN EXPERIMENTAL AND KINETIC CALCULATON OF THE PROMOTION EFFECT OF HYDROCARBONS ON THE NO‐NO2 CONVERSION IN A FLOW REACTOR; Twenty‐Seventh Symposium(International)on Combustion/The Combustion Institute;1998;389‐396頁に示されるように、一般的にこれらのNO排出物の発生とこの現象が燃料に依存する原因は、不完全燃焼の結果として起こる特定の温度範囲内での一酸化窒素(NO)とUHCs若しくはCOの気相化学反応である。ところが、例えば、ガスタービンの始動期間中だけでなく、負荷が低い部分負荷状態での稼働中にも、ガスタービンの安定した運転を保証するために、使用される燃料の不完全燃焼は受容されている。
【0011】
しかし、状況によっては、異なるNO排出量削減策を必要とするような他の原因でもNOは生成される。したがって、排熱回収ボイラを有し、前段でCO酸化触媒に続きアンモニア(NH)注入、そして後段でSCR触媒(SCRは選択触媒還元「selective catalytic reduction」)を用いる統合的多段式排ガス後処理をするようなガスタービンの場合でも、目に見える形でNO排出物の生成が検出されていた。この問題を解決するために、EP 2 223 733 A1には適切な温度範囲においてCO酸化触媒を作用させることが提案されている。しかしながら、このような排ガス浄化方法は既存のシステムの中では自在に改良することができない、または改良するためには多額の費用がかかることから、手法的な観点からすると複雑で費用がかかるものである。
【発明の概要】
【0012】
本発明は炭化水素や炭化水素の混合物の不完全燃焼によって排出される排ガス中の二酸化窒素濃度を低減する方法と装置を提供することを目的とし、この方法と装置によって、排ガスから二酸化窒素を簡単かつ効果的に取り除くことができる。
【0013】
本発明は、さらに窒素酸化物に対してNHを還元剤として用いた選択触媒還元(SCR)を行うシステムをまだ備えていないシステムに対し、炭化水素や炭化水素の混合物の不完全燃焼によって排出される排ガス中のNOの排出を低減するための改良可能な解決策を提供し、その際に、利点としてアンモニアなどの還元剤の保存、計測、及び注入といった手間を省くことを目的とする。この場合、還元剤注入を必要とする解決策に比べ、資本コストを抑え、還元剤や保守管理に必要な作業コストを減らし、それ自体が汚染物質となり得る未反応または反応が不完全な還元剤の排出を防ぐ、といった利点がある。
【0014】
これらの目的は、請求項1に記載の方法と請求項10に記載の装置によって達成される。さらに、本発明による装置が設けられるシステムも提供される。本発明の好ましい追加的実施形態は従属項に記載される。
【0015】
本明細書に提案されるガスタービン排ガス中のNO排出を低減する解決策は、驚くべき発見を基にしているものであって、この発見によれば、酸素を用いて炭化水素を酸化させる触媒活性が十分低くなるよう選択された状態でNOと未燃焼炭化水素を触媒反応させることよって、総窒素酸化物(NO)濃度は変わらなかったとしても、NO濃度が各触媒温度でのNO−NO間の熱力学的平衡比から求められる数値をはるかに下回る数値となるような排ガスの組成となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下において、図面を参照し例を用いて本発明を説明する。図面は本発明の理解を深めることを目的とし、決して本発明を限定するものではない。
図1】排ガス処理のない従来型のタービン発電所を示す。
図2】本発明の一実施形態によるNO還元用の触媒処理を含むガスタービン発電所を示す。
図3】本発明の別の実施形態による排熱回収ボイラと排ガス触媒浄化を含むガスタービン発電所を示す。
図4】本発明の一実施形態による装置を示す。
図5】本発明の一実施形態による別の装置を示す。
図6】ガスタービンの排ガスの相対的熱平衡状態にあるNOとNOの濃度の推移とNO還元触媒の下流におけるNOとNOの濃度の推移を示す。
図7】実施例2のNOとNOの濃度を図7a、実施例2の温度推移と空間速度SVを図7b、実施例2のC1換算で測定された炭化水素濃度の推移を図7cに示す。
【0017】
添付の図面は本発明の実施形態を説明することを目的とし本発明の実施形態のさらなる理解を助けるものである。また、明細書の記載に関連して、本発明の概念や原則を明確にするものである。これらの図面を基に、他の実施形態やここに記載された効果の多くが得られるものとする。
【0018】
図面中の構成要素の大きさは、他の構成要素に対して必ずしも真の縮尺で描かれているものではない。特記しない限り、同一、機能的に同一、そして同一の動作をする構成要素、特徴、部品には、図面中で同じ参照符号が付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
二酸化窒素NOと未燃焼炭化水素UHCsを含む排ガスをUHCsの酸化の過程でUHCsとの反応によってNOを還元するNO還元用触媒1に通す、炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼から排出される排ガス中の二酸化窒素濃度を低減する本発明の方法は、排ガス中に存在する二酸化窒素が触媒1の存在下においてUHCsの酸化によって少なくとも一酸化窒素NOに還元されることを特徴とし、ここでこの触媒1は
(i)貯蔵温度TUHCabsを有し、貯蔵温度TUHCabsを上回ると、触媒1がUHCsとUHCsの部分酸化生成物を貯蔵し、
(ii)活性温度Tredを有し、活性温度Tredを上回ると、触媒1がUHCsの酸化によってNOを少なくともNOに還元するよう触媒し、
(iii)排ガス中で酸素OによるUHCsの酸化が始まる作用温度Toxを有し、
ここで式(I)に示すように、
(I) TUHCabs<Tred
UHCsを貯蔵するための貯蔵温度TUHCabsはNOを還元する活性温度Tredを下回り、
そして式(II)に示すように、
(II) Tox>Tred
UHCsをOで酸化するための作動温度ToxはTredを上回る。
【0020】
本発明によれば、炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼から排出される排ガス中の二酸化窒素濃度を低減する装置において、当該装置はNO還元用の触媒1を有することを特徴とし、この触媒は
(i)貯蔵温度TUHCabsを有し、TUHCabsを上回ると、触媒1は未燃焼炭化水素UHCsとUHCsの部分酸化生成物を貯蔵し、
(ii)活性温度Tredを有し、活性温度Tredを上回ると、触媒1がUHCsの酸化によってNOを少なくとも一酸化炭素NOに還元するよう触媒し、
(iii)排ガス中で酸素OによるUHCsの酸化が始まる作用温度Toxを有し、
ここで式(I)に示すように、
(I) TUHCabs<Tred
UHCsを貯蔵するための貯蔵温度TUHCabsはNOを還元する活性温度Tredを下回り、
そして式(II)に示すように、
(II) Tox>Tred
UHCsをOで酸化するための作動温度ToxはTredを上回る。
【0021】
本発明による方法及び本発明による装置の触媒の作動温度Toxが活性温度Tredを上回ることから、得られるUHCsによって少なくとも一時的にはNO濃度は確実に低減されることが保証され得る。特定の応用や実施形態においては、二酸化窒素濃度は100ppm未満、好ましくは50ppmの数値まで減らすことができ、特にディーゼル装置等においては20ppmまたは10ppm、好ましくは8ppmまで、そして特にガスタービンにおいては6ppmまで低減することができる。
【0022】
特定の実施形態においては、本発明による方法では、できるだけ完全なNO濃度の低減を確実に行うためにToxを下回る温度でも動作可能である。しかし、このような実施形態においては、例えば、1時間未満、好ましくは30分間未満、さらに好ましくは20分間未満、特に好ましくは10分間未満といった短い間に、動作温度が作用温度Toxを上回ることもあり得る。このような実施形態において温度が温度Tox未満に戻るのが迅速であるほど、NO濃度の低減改善も迅速に実現することができる。そのうえ、例えば排ガスを発生する燃焼が完全燃焼となりNOがまったく生成されない場合、もしくは生成されても濃度の低減が必要ない程度の低濃度であった場合には、このような実施形態では比較的長い時間、動作温度が作用温度Toxを上回ることもあり得る。
【0023】
同様に、特定の実施形態において、二酸化窒素ができるだけ低減できるように、活性温度Tred以上で本発明による方法を実施することが好ましいこともある。しかし、例えば、30分間未満、好ましくは20分間未満、さらに好ましくは10分間未満、特に好ましくは5分間未満といった短い間、Tredを下回る温度で本発明による方法を実施することも可能である。ただ、このような温度は、早くTred以上に戻されるほうが好ましい。
【0024】
特定の実施形態においては、本発明による方法は、主に、例えば95%超の時間を、TredからToxの温度範囲内で実施することも可能である。特定の実施形態においては、本発明による方法は、時間平均の温度をTredからToxの温度範囲中のある温度として実施することも可能である。
【0025】
しかしながら、特定の実施形態においては、例えば、Tredを下回る温度ではNOを蓄えるNO貯蔵用貯蔵場所が存在し、NO貯蔵用貯蔵場所の貯蔵容量を使い尽くすと温度がTred以上に上昇するということであれば、Tredを下回る温度で長時間にわたって本発明による方法を実施することも可能である。この場合のNO貯蔵用貯蔵場所は、触媒1、または例えばNOを貯蔵する触媒3などさらなる触媒、もしくは別のNO貯蔵用の貯蔵場所、例えば吸収液がある。
【0026】
本発明による方法では、NO濃度は、触媒で完全にもしくは一部のみ低減される。また、NOの排出による黄色プルーム(yellow plume)の発生を防ぐために、NOはさらに窒素Nへと還元されていくが、少なくともNOは一酸化窒素NOにまで還元される。特定の実施形態では、Nへの完全還元に比べて必要な活性化エネルギーが低いので、UHCsを用いてNOをNOへ還元するほうが好ましい。しかし、特定の実施形態においては、本発明による触媒1に対する必要条件が満たされているならば、処理済みの排ガスの放出後、大気中でNOからNOが再形成されることを避けるという環境上の側面から、NOのNへの完全還元が好ましいこともある。同様にして、特定の実施形態において、NOとNOを含むNOの総量を低減することが可能となる。
【0027】
さらに、本発明による方法において、UHCsの酸化は、UHCsの部分酸化、または完全酸化であってもよい。特定の実施形態において、大気および/または環境を汚染する可能性があるアルデヒドや一酸化炭素COなどUHCsの部分酸化生成物を後で酸化することを回避するために、酸化は完全酸化とする。そのため、特定の実施形態では、UHCsの二酸化炭素COへの完全酸化が行われることが好ましい。
【0028】
本発明による方法中のUHCsとして、炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼によって排出される未燃焼炭化水素単独および未燃焼炭化水素の混合物の両方が考えられる。本発明による方法では、未燃焼炭化水素及び炭化水素の混合物の場合と同様に、燃焼中の炭化水素や炭化水素の混合物は特に限定されない。
【0029】
例えば、燃焼される炭化水素および炭化水素の混合物は、石油、天然ガス、ディーゼル油、重油、原油、メタン、エタン、あるいはメタノールやエタノールなどの部分的に置換された炭化水素を含み得る。この場合の炭化水素は、例えば1から40個の炭素原子などいくつ炭素を含んでもよく、分岐/非分岐、飽和/不飽和、置換/非置換のどちらでもよく、芳香族でも環状でもよい。この場合の燃焼用の炭化水素の混合物は、他の物質、例えば炭素、硫黄、金属または、例えばチオール、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミン、ニトロ化合物などの置換炭化水素など他の不純物も含んでいる。特定の実施形態においては、これらの物質は排ガス中に見られるが、実施形態によっては、触媒1単独および/または触媒1および/または2および/または3の上流でフィルターにかけることができる。特定の実施形態においては、触媒1単独および/または触媒1および/または2および/または3に悪影響を与える、例えば触媒毒のような物質を触媒1の上流で取り除く、および/または触媒1および/または2および/または3の上流で取り除くことが好ましい。
【0030】
本発明の趣旨において、文脈から特に問題がなければ、燃焼用に供給される炭化水素および炭化水素の混合物を燃料とも呼ぶことができる。
【0031】
未燃焼炭化水素は、例えば1から20個、好ましくは1から10個、さらに好ましくは1から4個の炭素原子を含む炭化水素であって、例えばメタン、エタン、プロパン、プロペン、ブタン、1−ブテン、2−ブテン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタン、ヘキサン、ベンゼンやトルエンがある。同様に、未燃焼炭化水素および未燃焼炭化水素の混合物は、炭化水素や炭化水素混合物を燃焼させてできた、更に酸化可能である部分酸化反応生成物であって、例えばアルデヒドやケトンがある。この場合の炭化水素は、飽和/不飽和、分岐/非分岐のどちらであってもよく、環状でも芳香族でもよい。また、特定の実施形態において、炭化水素は置換されていてもよい。特定の好ましい実施形態において、好ましくは触媒1に対して、および/または触媒1および/または2および/または3に対して悪影響を与えないような炭化水素が、これらに対して供給される。
【0032】
本発明による方法においては、排ガスプルームの目に見える変色を起こさないことが望ましいと同時に、全ての法定制限値を満たすように、少なくとも2つの対策を組み合わせることで、特に低負荷の部分負荷状態の範囲(50%未満)で、または立ち上げや負荷の変更の際に、天然ガスや石油を燃料にガスタービンやシステムを稼動するときに、排ガス中の高レベルのNO排出量を低減できることが望ましい。負荷の変化や負荷が低い部分負荷状態は、本発明による他のシステム、例えば電力網に電力を供給するシステムや速度をスロットルで調整している船舶のように負荷が常に同じでなくてもよいシステム等においても起こり得る。例えば、風力および/または太陽光エネルギーなど変動する再生可能エネルギーによる大きなエネルギーが電力網に供給され、結果として炭化水素や炭化水素の混合物を燃焼させる発電所から供給されるエネルギーは少なくてすむ場合には、炭化水素や炭化水素の混合物を燃焼させる発電所においても低負荷が起こり得る。
【0033】
特定の実施形態においては、排ガス、例えばガスタービンの排ガスは、次のような特性を有する触媒1へと送られる。活性温度Tredを上回る温度でNOとガスタービン中の未燃焼炭化水素UHCsの排出物を反応させ、UHCsを酸化する過程でNOを還元して少なくともNOとする。作用温度Tox>Tredを上回る温度において、排ガス中で未消費の酸素Oを用いたUHCsの酸化が始まる。
【0034】
好ましい実施形態においては、NO濃度が所望の排出量制限値を上回る場合には、Oを用いた酸化反応速度は、NOを用いた場合の反応速度よりも遅くなる。例えば、本発明による方法において、排出量制限値は100ppm、好ましくは50ppm、更に好ましくは20ppm、特に好ましくは10ppm、特に8ppm、更に6ppmとなる。このように、NO濃度低減の改善を達成することができる。
【0035】
さらに、本発明による方法の触媒1は、低温TUHCabs<Tredを上回る温度でUHCsおよびアルデヒドなどのUHCsの部分酸化の反応生成物を貯蔵し、酸化の作用温度Toxを上回る(特に作用温度Toxよりもはるかに高い)ことが好ましい、次の数式(III)に表す温度TUHCdesでこれらを放出する、という特性を有していてもよい。
(III) TUHCdes>Tox
例えば、好ましい実施形態において、触媒1はToxよりも20℃高い温度、好ましくはToxよりも50℃高い温度、より好ましくはToxよりも100℃高い温度でUHCsおよびUHCsの部分酸化の反応生成物を放出することができる。このような実施形態では、特に、本発明による方法を用いたシステムの稼働中に、NOに対してUHCsが足りなくなっても、低温時に触媒1中にNOを還元するためのUHCsの蓄えを確保できるようにする。また、このような実施形態において、低温でUHCsを貯蔵しておくことによって、より多くのUHCsが得られ、温度がTredまで上がったときにNOの削減量が増加していることになる。
【0036】
好ましい実施形態においては、触媒1は、同じように低温であって数式(IV)に表すように、Tredよりも低い温度TNO2absを上回る温度においてはNOを貯蔵し、数式(V)に表すように、還元の活性温度を上回る温度TNO2desでNOを放出/脱離する、という特性をさらに有していてもよい。
(IV) TNO2abs<Tred
(V) Tred<TNO2des
このような例示の実施形態においては、例えば、本発明によるシステムの炭化水素の燃焼開始時に、気温が−40℃から+40℃の範囲内、任意で10℃から35℃の範囲内、または任意で20℃から30℃の範囲内といった低温でNO濃度をさらに低減することが可能である。こういった実施形態において、NO脱離/放出時に、NOの還元に十分なUHCsを確保するために温度TNO2desはToxよりも低いことが好ましい。好ましい実施形態ではTNO2absは、排ガスを触媒1に通す際の温度よりも低い温度とする。
【0037】
特定の実施形態においては、例えば燃焼開始時には温度によってこの方法を制御することができない可能性があるため、このような実施形態においては、温度が上昇したときに、NOの還元に使うことができるように開始時により多くのUHCsを生成し、蓄えておくことが好ましい。適切な量のNOの還元が達成された後に、UHCsの生成量を再び減らすことができる。
【0038】
また、本発明による方法における特定の実施形態において、燃焼では、例えば開始段階や低負荷の部分負荷状態の段階におけるUHCの時間平均濃度がある係数γで表されるようにNO排出の時間平均を上回るように制御され、この係数γは、数式(VI)によってUHCsの濃度XUHCおよびNOの濃度XNO2から計算することができる。
(VI) γ=XUHC/XNO2>1
ここで、この係数の値は、炭化水素や炭化水素の混合物の燃焼に用いられる天然ガスや石油などの燃料によって、触媒材料の組成、結晶構造および/または特定の表面積等によって、および/または触媒温度によって決まる。また、特定の実施形態において係数γは、例えば空気や炭化水素または炭化水素の混合物など燃焼に加えられる物質の量/割合、空気等を供給する温度、および/または燃焼室BK内の燃焼温度の制御によって得られる。しかし、特定の実施形態においては、係数γの値が後に1よりも大きい値に戻るのであれば短時間だけ、例えば1分から30分の間、好ましくは5分から10分の間だけ、1未満の値をとることも可能である。
【0039】
特定の実施形態においては、触媒1の下流で排ガスはUHCsを酸化するために触媒2に送られ、触媒2でUHCsおよび/またはUHCsの酸化生成物を酸素等で酸化する。このようにして、UHCsや環境に有害なUHCsの酸化生成物の放出を少なくする、または減らせることができる。好ましい実施形態においては、触媒2は、排ガスが触媒1を通った後の温度で、UHCsおよび/またはUHCsの酸化生成物の酸化を触媒することができる。特定の実施形態において、触媒2は、Tred以下の温度で、UHCsおよび/またはUHCsの酸化生成物を酸化することができる。また、特定の実施形態において、好都合なことに、触媒2は一酸化炭素COも酸化、少なくとも部分酸化して、二酸化炭素COにする。触媒2の好適な触媒材料として、当業者が適切なものを使うことができる。
【0040】
同様に、特定の実施形態においては、排ガスを触媒1の上流のNO貯蔵用の触媒3に送ることも可能であり、好ましい実施形態において、この触媒3は、温度TNO2absで二酸化窒素を貯蔵し、温度TNO2desで放出する。このような実施形態において、NO貯蔵場所を追加することも可能であり、結果として排ガス中のNO濃度をさらに低減することが可能となる。特定の実施形態においては、Tredよりも高い温度TNO2desでのNOの放出を経て、さらにNO濃度を低減することが可能であり、このような実施形態において、NOは、Tredよりも高い温度の触媒1へ送られるだけである。好ましい実施形態においては、Toxより低い温度でNOが触媒1に確実に送られるように、TNO2desはToxよりも低温となる。特定の実施形態において、排ガスは、例えばNO収着媒体や固体貯蔵媒体である触媒3に加えて、または触媒3のかわりに、一つ以上の追加されたNOの貯蔵場所を経て触媒1の上流に送られてもよく、ここで特定の実施形態では、この追加された貯蔵媒体も、TNO2absとTNO2desに関して触媒3の温度特性を有していてもよい。好ましい実施形態においてTNO2absは、排ガスが触媒3および/または追加された貯蔵媒体に送られる温度よりも低い。特定の実施形態においては、触媒3と追加されたNOの貯蔵場所を設けることができる。触媒3の好適な触媒材料については、当業者が、例えば計測システムでの簡単な実験を元に適宜決めることができる。さらに、特定の実施形態には、別の貯蔵触媒および/または他の触媒を排ガス浄化用に設けてもよい。
【0041】
特定の実施形態では、触媒温度を、例えば触媒1、触媒2、および/または触媒3のTmaxより低く設定する手段を設けることが好ましく、UHCおよび/またはNOに対して十分な貯蔵容量を有する触媒は、例えばガスタービンの排ガスの最高温度より低い閾値Tmaxを上回る温度での貯蔵容量および/または触媒活性の減少に反応する可能性がある。そのため、このような好ましい実施形態においては、NO濃度の低減効果を低下させる原因となり得る一つ以上の触媒の損傷を防止することができる。
【0042】
特定の実施形態においては、温度が低下してある温度を下回ったときに、触媒1、および/または触媒1および/または3、および/または追加された貯蔵触媒、および/または貯蔵媒体の貯蔵容量を、所定時間活用することが可能である。しかし、特定の実施形態では、この貯蔵場所を小さく構成することができるように、排ガス中の温度および/または圧力および/または物質の流れおよび/または物質濃度を適切に制御することで、この方法の規定の条件の範囲内でこの方法を制御することが好ましい。
【0043】
そのため、特定の実施形態、例えばガスタービン発電所においては、触媒における排ガス温度が確実にTmaxを下回る温度になるように、ボイラなどの熱回収手段/熱交換器を、例えば触媒反応体等の触媒の上流に採用し/用いることができる。熱回収手段がない場合、もしくは熱回収手段が設けられていない場合には、特定の実施形態において、炭化水素や炭化水素の混合物の燃焼の下流で排ガスの最高温度まで、できれば活性を失うことなく作用することが可能な感温性の低い触媒を用いることが好ましく、つまりこの場合、Tmaxは排ガスの最高温度よりも高くなる。
【0044】
特定の実施形態において、一つ以上の触媒の上流で温度を上げたり下げたりして規定値、例えば触媒1の場合TredとToxの間の数値および/または触媒3の場合TNO2absとTNO2desの間の数値、にする手段をとることも可能である。
【0045】
特定の実施形態では、温度上昇の手段を、一つ以上の熱交換器(heat exchanger)/熱交換機(heat interchanger)によって行ってもよい。この場合の熱交換器の種類は限定されるものではない。例えば、触媒1および/または触媒2および/または触媒3を含む本発明による装置では、一つ以上の熱交換器をそれぞれ、触媒(1)の上流および/または下流に、および/または任意で触媒(2)の上流および/または下流に、および/または任意で触媒(3)の上流および/または下流に設けることができる。そのため、例えば、0から30の熱交換機、好ましくは4から20の熱交換器、特に好ましくは10から15の熱交換器が設けられることとなる。
【0046】
特定の実施形態では、触媒の上流および/または下流の圧力を調節することで、触媒の上流および/または下流の温度も追加的に、または単独で適宜調整することができる。
【0047】
特定の実施形態では、排ガスが送られる各触媒の上流に少なくとも一つずつと、最後の触媒の下流に少なくとも一つの熱交換器が置かれる。
【0048】
特定の実施形態では、本発明による方法および/または本発明による装置における温度の前提条件および/または反応速度の前提条件は、触媒単体/複数の触媒に適切な物質を選択することによって調整が可能となる。特定の実施形態において、触媒材料の選択を変えることで、温度および/または反応速度の要件を確実に満たすことができる。
【0049】
特定の実施形態によれば、触媒1へUHCsの貯蔵および任意でNOの貯蔵および/または任意でNO貯蔵用の触媒3へのNOの貯蔵は、それぞれが化学的作用および/または物理的作用に基づいて、吸収だけでなく、触媒への吸着によって進められる。本発明による方法において、この貯蔵に用いられる触媒1および/または3の組成や結晶構造は、好ましくは貯蔵された物質の非反応性または反応性の放出によって、貯蔵と再生が可逆的に行われるように調整することができる。特に、材料の特性は、本発明による方法における触媒1または他の貯蔵触媒、例えばNO貯蔵用の触媒3等が、貯蔵された物質の非反応性または反応性の放出によって行われる貯蔵や再生によって損傷しないように調整され得る。
【0050】
なお、本発明の趣旨において、文脈から特に問題がなければ、触媒1および/または触媒2および/または触媒3が、触媒1および/または2として称されることもある。
【0051】
本発明による方法および/または本発明による装置において、特定の実施形態には、一つ以上の触媒1、および/または一つ以上の触媒2、および/または一つ以上の触媒3、および/または一つ以上の熱交換器が備えられる。ここで、これらの触媒および/または熱交換器は、同一でもよく、異なってもよい。
【0052】
特定の実施形態においては、例えば、ある担体の上の触媒1の片側および/または反対側に触媒2および/または3の溶液および/または乳濁液および/または懸濁液を含浸させた後に、熱処理をして、触媒1の全体が触媒2および/または触媒3の触媒材料で覆われないようにすることで、触媒1および/または2および/または3を合わせることもまた可能である。例として、コーディエライト製担体に様々なゼオライトを適用してもよい。このような実施形態における触媒は、触媒1および/または触媒2および/または触媒3のそれぞれ対応する異なる領域を有することとなる。
【0053】
本発明による方法および/または本発明による装置において、触媒1および/または触媒2および/または触媒3の触媒材料は、所要の温度条件を満たす限り、特に限定されるものではない。例えば、組成、結晶構造、および/または表面特性によって特徴付けられる適切な触媒や貯蔵材料は、昇温反応法、昇温吸収法、昇温脱離法、ストレステストや長期研究等の周知の実験方法を基に当業者が決定することができる。このような研究は、例えば測定システムにおいて行われ、制御調整可能な組成、制御調整可能な気体流量、および制御調整可能な温度である気体混合物を、制御調整可能な温度の材料サンプル含有反応器に通して、適切な気体分析の手法を用いて組成の変化を定量的に分析してもよい。
【0054】
例えば、触媒のNOの貯蔵特性および/またはUHCの貯蔵特性は、その触媒の酸性度および/または細孔構造に影響を受ける。また、例えば、ゼオライトの場合、貯蔵特性は、結晶細孔の構造によって調整が可能である。
【0055】
例えば、二酸化チタンTiOは良好なUHCの貯蔵性を示し、さらに例えば三酸化タングステンWOによって安定化するため、ガスタービンの排ガス温度範囲の全般にわたって使用することができる。同時に、この材料はNOの貯蔵能力も有する。また、高含有量のWOによって、比較的高い温度、例えば約650℃でも利用できる触媒材料を得ることができる。例えば、二酸化ジルコニウムと二酸化チタンの混合酸化物TiO/ZrO、または三酸化アルミニウムと二酸化チタンの混合酸化物TiO/Alが、触媒製造の基材として当業者に知られており、当然そのように使用することができる。
【0056】
このような基材を、例えば五酸化バナジウムVと混ぜ合わせると、UHCsによってNOが還元され、UHCsは酸化される。触媒のV含有量が増加するのに対して、これらの反応の活性温度Tredと作用温度Toxは、通常は下がる。V含有量が高すぎると、UHCの酸化がNOの還元よりも優勢となり、広い温度範囲において、UHCの排出量の低減は十分に達成できるものの、NOの排出量の十分な低減はできなくなる。例えば、特定の実施形態においては、V含有量が1.7重量%であるとき、比較的高い温度であってもNOを十分に低減することが確実に可能であるが、特定の実施形態においては、V含有量が3重量%のときに400℃を上回る温度で、NOの削減量の低下が既に起こり得る。
【0057】
さらに、ZSM5型ゼオライト等のゼオライトは、優れたUHCsの吸着能力を示し、Cu、Fe、Pt、W、In、またはAg等の触媒活性成分を(例えば、対応する塩に含浸させることによって)適宜ドープすることで、NOからNOへの良好な変換速度を示し、時には二酸化窒素からNへの完全還元をも示す。H−ZSM5は、NO還元触媒の基材として特に都合がよいのに対し、広く普及しているNa−ZSM5型はここに記載される活用ではあまり有益ではない。また、ゼオライトは通常、例えば650℃を超える比較的高い温度での使用に適している。
【0058】
また、多様な触媒材料は、UHCsを酸化して多用な生成物を生成することができる。従って、例えば実施例1に用いられるPt−NHZSM5型触媒は、UHCsを酸化してCOを生成するのに対して、実施例1に用いられるFe−NaZSM5型触媒あるいは実施例2に用いられる触媒は、UHCsを酸化して一酸化炭素を生成する。
【0059】
特定の実施形態においては、本発明による方法および/または本発明による装置および/または本発明によるシステムの制御は、1分間から30分間の範囲内、好ましくは3分間から10分間の範囲内で行うことができる。しかし、特定の実施形態において、さらに速い制御が行われることもある。
【0060】
炭化水素または炭化水素の混合物の不完全燃焼による排ガス中の二酸化窒素濃度を低減する本発明による装置において、当該装置はNO還元用の少なくとも一つの触媒1を有し、この触媒は
(i)貯蔵温度がTUHCabsであって、これを上回ると、触媒1はUHCsとUHCsの部分酸化生成物を貯蔵し、
(ii)活性温度がTredであって、これを上回ると、触媒1はUHCsを酸化してNOを少なくともNOに還元するよう触媒し、
(iii)作動温度がToxであって、この温度では、排ガス中で酸素OによるUHCsの酸化が始まり、
ここで式(I)に示すように
(I) TUHCabs<Tred
UHCsを貯蔵するための貯蔵温度TUHCabsは、NOを還元する活性温度Tredを下回り、
そして式(II)に示すように
(II) Tox>Tred
でUHCsを酸化するための作動温度ToxはTredを上回る。
【0061】
さらに、本発明による装置は、特定の実施形態において、一つ以上の触媒1および/または一つ以上の触媒2および/または一つ以上の触媒3および/または一つ以上の熱交換器を有してもよい。
【0062】
例えば、本発明による装置は、特定の実施形態において、ガスタービンの排ガスラインに組み込まれ、触媒1を少なくとも一つ含む排ガス浄化用触媒反応体であってもよい。
【0063】
特定の実施形態において、触媒1および/または触媒2および/または触媒3はハニカム触媒や板状触媒等として構成され、触媒のセル密度または板同士の間隔および長さは、例えば特定の実施形態の適切な動作条件下で、排ガスの滞留時間が30msを超えように選択され、そして、触媒1におけるUHCsを用いたNOの触媒による変換では物質移動は律速とはならず、触媒回転頻度によってもそれほど制限されないものの、全負荷状態での排ガスの反対圧力が、ガスタービン効率化のための許容値(通常は5〜10mbar)を超えないように選択される。
【0064】
特定の実施形態において、触媒1または触媒1および/または2および/または3は、薄いセル壁または触媒材料で覆われた薄い壁厚の担体材料がセラミックまたは金属の押出し成形された固体触媒でもよい。
【0065】
本発明による装置は、特定の実施形態において、システム内で用いることが可能である。
【0066】
本発明による装置を含むシステムもここに開示する。
そのようなシステムの例として、ガスタービン発電所、一つ以上のガスタービンで動く圧縮機、ガスまたは油燃焼ボイラ、ガスエンジン、そしてディーゼル油または重油を燃料とする船舶等がある。
【0067】
特定の実施形態のこのようなシステムにおいて、システムの排ガスラインには、熱回収および/または熱交換用の装置が一つ以上備えられていてもよい。
【0068】
特定の実施形態において、熱回収および/または熱交換用の装置は、排ガスに接触する熱交換器を少なくとも一つ含む。例えば、特定の実施形態におけるこのような熱回収用の装置は排熱回収ボイラであってよい。
【0069】
特定の実施形態において、本発明によるシステムは、熱電併給の地域暖房発電所であってもよく、このような実施形態においては、他の触媒や処理と慎重に適合させる必要がある。
【0070】
本発明による装置を備えたシステムの一例は、図1に示すようなガスタービン発電所であって、発電機G、空気Lを圧縮する圧縮機KP、炭化水素または炭化水素の混合物である燃料BによってガスタービンGTを稼動させるための燃焼室BKを含む。このシステムにおいて、ガスタービンGTからの排ガスは、ディフューザーDを通して排気筒Kへ送られる。
【0071】
本発明の特定の実施形態においては、図2に示すように、当該システムのディフューザーDの下流に、触媒反応体KRを有する装置を導入してもよい。
【0072】
好ましい実施形態においては、例えば図2に示すように、触媒反応体KRを有する装置は排気筒Kには設置されないか、または少なくとも触媒材料が雨に晒されうるようには、排気筒Kに設置されない。なぜならば、例えば蒸発する雨水の圧力で爆発して、一つまたは複数の触媒が雨で損傷したり使えなくなってしまったりするからである。触媒は温度衝撃にも弱いため、特定の実施形態では、厳しい温度変化によっても損傷が起こり得る。
【0073】
ディフューザーの下流に触媒1と4つの熱交換器WT1、WT2、WT3、WT4を有する排熱回収ボイラADを備える本発明に従うさらなる実施形態を図3に示す。しかし、特定の実施形態において、排熱回収ボイラは、例えば触媒1および/または2および/または3など、一つ以上の触媒を含むものでもよく、また、一つ以上の熱交換器を備えていてもよいが、この場合に熱交換器の配置は多様であってよい。
【0074】
本発明による装置の実施形態の一例が図4に示され、図4において排ガスは左から右へと流れ、触媒3、触媒1、触媒2を連続的に通る。図5では、本発明による装置の実施形態の別の例が示され、図5においては、熱交換器WTA、WTB,WTC,WTDが、触媒1、2、3の上流や中間、下流に加えられている。しかし、特定の実施形態は、触媒1、2、3等、触媒をより多くおよび/または熱交換器をより多くまたはより少なく備えることも可能であるし、触媒2および/または触媒3を省略することも可能であり、また、この両方も可能である。図5に示す装置は、特定の実施形態において、二酸化窒素が貯蔵されているため、特にシステムの立ち上げ時/準備時、または不安定な状態での稼動時に効果がある。また、熱交換器を通して触媒温度をより良好に制御できる。
【0075】
本発明による特定の実施形態において、本発明による方法または本発明による装置の使用が、触媒の下流でNOやNOの濃度に及ぼす効果を、ガスタービン内のこれら2つの物質の平衡濃度を比較して図6に例として示す。なお、この図6は本発明を限定するものではない。
【0076】
上述された実施形態、構成、変更等は、有意であれば所望のように組み合わせることが可能である。また、さらに考えられる本発明の構成、変更および実装には、以上にまたは以下に例示される実施形態に記載される本発明の特徴のうち明確に言及されていない組み合わせも含まれる。特に、当業者が、本発明の基本形状それぞれに対する改良または補足の態様をそれぞれ加えることもある。
【例示的実施形態】
【0077】
ここで、例示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。なお、これらの例示的実施形態は決して本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0078】
測定システムでは、NOやNO等の不純物および下記の表1と表2にある総炭化水素濃度HCtotを有し、窒素の組成がN/O/HO=体積比82/8/10%の供給ガスをモデル排ガスとして、毎平方インチ当たり400セル(400cpsi)のセル密度でコーディエライト製担体を覆う2つの異なる触媒材料Pt−NHZSM5およびFe−NaZSM5へと送られた。この場合、Pt−NHZSM5はプラチナがドープされ、アンモニウムイオン交換したZSM5型ゼオライトであり、Fe−NaZSM5は鉄がドープされ、ナトリウムをイオン交換したZSM5型ゼオライトである。
【0079】
全ての実験において空間速度は、標準気体密度で50000/時であった。
総炭化水素濃度HCtotはフレームイオン化検出器を用いて測定され、その濃度は、C1換算で体積ppmとして表された。
【0080】
NOとNOの濃度は電気化学センサーを用いて判定された。
気体組成は、表1や表2に示されるような様々な温度で測定された。それぞれの触媒について、温度が一定速度で100℃から600℃まで上がる(上昇する)ときと、温度が一定速度で600℃から100℃まで下がる(下降する)ときの2種類の測定が行われ、ここでは±10K/分で温度が変化した。この場合、温度上昇時と温度下降時の一連の気体組成測定は、未燃の炭化水素UHCs用の触媒材料の貯蔵容量を決める役割をも果たす。表中で、触媒を通過した後除去された二酸化窒素の供給ガスに対する割合はdeNOの列にパーセントで示され、供給ガス中のNO濃度と触媒下流でのNO濃度との差を供給ガス中のNO濃度で割って計算した値となる。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
表1と表2からわかるように、Pt−NHZSM5とFe−NaZSM5の二つの触媒を用いることで、それぞれの触媒を通過した後に排ガス中の二酸化窒素濃度を下げることができる。
【0083】
二つの表を比較してみると、Pt−NHZSM5型触媒が約200℃で二酸化窒素還元の最適温度に達するのに対して、Fe−NaZSM5型触媒は400℃まで最適温度にはならない。これはプラチナ含有触媒が低温時には既にUHCsを酸素で酸化する反応を触媒し、高温では主にUHCsが酸素による酸化によって混合物から除かれ、そのためNOの還元にはほとんど使えなくなってしまうことに起因すると考えられる。また、場合によっては、NOxの総量の減少も見られる。
【0084】
さらに、表1と表2からわかるように、Pt−NHZSM5型触媒では100℃のとき、Fe−NaZSM5型触媒ではすべての温度のときに、温度が下降時よりも上昇時に除去されるNOの量が多くなる。つまり、触媒を通した後はNOの量が減り、これは温度上昇時(TUHCabs<Tred)に触媒がUHCsを貯蔵する特定の作用によるものと考えられる。この場合、触媒は低温時にUHCsを貯蔵し、活性温度TredになるとこのUHCsが利用される。しかし温度下降時には、高温下でUHCsが最初から酸化されてしまいUHCsを貯蔵することができず、つまりNOの還元に使えなくなってしまい、そして低温時にはわずかなUHCsしか残らなくなる。
【実施例2】
【0085】
部分負荷で稼動されるガスタービンからの排ガスを、傍流でVを3体積パーセント含むTiO/WO/Vを基礎とする触媒にさらし、その触媒によるNOの還元を行った。従来のSCR触媒で通常用いられるアンモニアはこのNO還元のためには添加されなかった。気体の滞留時間がNO還元へ及ぼす影響を調べるために、傍流を流れる排ガスの質量流量を規則的に変化させ、排ガスの空間速度SVを変化させた。この場合の触媒の上流(NO(in)とNO(in))と下流(NO(out)とNO((out))における排ガス中のNOとNOそれぞれの濃度X(ppm)、温度T、および排ガスの空間速度SV、そしてC1換算で求められた排ガス中のUHCsの濃度X(ppmC1)を測定し、または質量流量、温度、気体組成、触媒体積の測定値を基に計算して、図7a、図7b、図7cに示す。
【0086】
図7aからわかるように、ガスタービンの立ち上げ時(最初の10分間)、触媒上流のNO濃度は、およそ90ppmのピーク値に達し、NOは触媒作用によって部分的にNOへと還元された。そのため、NOはおよそ10ppmから70ppmまで濃度が高くなったのに対して、NO濃度は触媒下流においてピーク値がおよそ30ppmと低くなった。これは67%のNOの還元に相当する。ここで、例えばNO貯蔵触媒を加えることでNO濃度をさらに低減することも可能である。この実験で52分が経過するまでの過程においては、除去率が100%に達し、触媒下流のNO濃度は確認できる限界値を常に下回る数値となった。その後、NO濃度は触媒下流においておよそ15ppmまで高くなり、これは30分が経過するくらいから排ガス中のUHC濃度が触媒上流のNO濃度を平均して下回ったことによるものと考えられる。58分経過後からのガスタービン排ガス中のUHC濃度の増加によって、4分間のわずかな遅延の後、NO濃度が3ppmを再度下回るほどNOの還元が改善されることとなった。これはガスタービンでの燃焼の適切な制御とともに、UHC貯蔵がNO濃度の低減に及ぼす効果を明らかに示している。これらの図から明らかなように、ガスタービンやシステムを適切に制御することにより、そして、例えば十分な量のUHCsをガスタービン排ガス中に供給することにより、触媒上流の濃度と比較して触媒下流のNO濃度が大きく低下することとなり、その結果、放出される排ガスに起因する黄色プルームの発生を防ぐことが疑いもなく可能となる。また、図面には、触媒下流で排ガス中のNOとNO含有量が変化する原因となるUHCsの触媒への貯蔵と触媒からの放出の過程が示されている。
【0087】
例えばEP 2 223 733 A1に記載されるように、従来技術は、NOとNOの温度依存性の熱力学的平衡比の濃度までNOが、NOの触媒による酸化によって生成されることを前提としている。対照的に、本明細書に提案される、例えばガスタービン排ガス中のNO排出低減の解決策は、酸素によって炭化水素を酸化する触媒活性が十分低くなるよう選択される場合、NO濃度が各温度におけるNOとNOの熱力学的平衡比から算出される各濃度をはるかに下回る排ガス組成となるという驚くべき発見に基づくものであり、図6からわかるように、例えばガスタービンで温度が300℃未満の時には、窒素酸化物の大部分はNOとして存在するであろうことが予想される。
【0088】
対照的に、図7の実験結果は、触媒処理によってNOの大半がNOへと還元されることを示している。
【0089】
従来の方法とは対照的に、本明細書中に記載される解決策は、アンモニア選択接触還元法(SCR法)を基にしているわけではないので、還元剤(アンモニアや尿素)を備蓄して注入する必要がない。さらに、最も好ましい場合においては、例えばガスタービンでは、排ガスラインの必要な触媒区域は一つで済み、これは従来の方法の複数の区域と比べてかなりコンパクトとなり得る。なぜならば、NOの還元に必要な気体滞留時間は、SCR法やCOの酸化に必要な気体滞留時間のたった25〜50%となるからである。
【0090】
従って、本明細書中に記載の解決策は、原則として改良を加えることが可能であるが、完成形であるSCR法は、構築空間の理由から改良を加えることはできないことが多い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c