(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
リチウム電池、特にリチウム二次電池は、エネルギー密度が大きく、寿命が長いなどの特徴を有しているため、ビデオカメラ等の家電製品や、ノート型パソコン、携帯電話機等の携帯型電子機器、パワーツールなどの電動工具などの電源として広く用いられており、最近では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などに搭載される大型電池へも応用されている。
【0003】
リチウム二次電池は、充電時には、正極からリチウムがイオンとして溶け出して負極へ移動して吸蔵され、放電時には、逆に負極から正極へリチウムイオンが戻る構造の二次電池であり、その高いエネルギー密度は正極活物質の電位に起因することが知られている。
【0004】
この種のリチウム二次電池の正極活物質としては、層構造をもつLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2などのリチウム金属複合酸化物のほか、LiMn
2O
4、LiNi
0.5Mn
1.5O
4などのマンガン系のスピネル構造(Fd-3m)を有するリチウム金属複合酸化物(本発明では「LMO」とも称する)が知られている。
【0005】
中でも、マンガン系のスピネル型リチウム金属複合酸化物(LMO)は、原料価格が安く、毒性がなく安全であり、しかも過充電に強い性質を有することから、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの大型電池用の次世代正極活物質として着目されている。また、3次元的にLiイオンの挿入・脱離が可能なスピネル型リチウム金属複合酸化物(LMO)は、層構造をもつLiCoO
2などのリチウム金属複合酸化物に比べて出力特性に優れているため、EV用電池、HEV用電池などのように優れた出力特性が要求される用途に利用が期待されている。
【0006】
スピネル型リチウム金属複合酸化物(LMO)に関しては、従来、例えば特許文献1において、非水電解液二次電池において、優れた高温サイクル特性や高温保存特性を有する正極活物質として、Li
1+xMnMg
1yAl
2zO
4(x≧0、y、z>0)で表されるスピネル状結晶構造を持つリチウムマンガン酸化物である非水電解液二次電池用正極活物質が開示されている。
【0007】
特許文献2には、組成式LiMn
2O
4で表されるスピネル構造中のMnの一部を、Li,Na,K,Co,Alから選ばれる少なくとも一種以上、Mg,Ti,Cr,Fe,Cuから選ばれる一種以上、更にO(酸素)の一部をF(弗素)で置換してなることを特徴とする非水電解液二次電池正極材料であって、格子定数がa≦8.22Å、比表面積が0.8m
2/g以下、Mnの平均価数が3.7以下であることを特徴とする非水電解液二次電池正極材料が開示されている。
【0008】
特許文献3には、組成式LiMn
2O
4で表されるスピネル構造中の陽イオンの一部を、Na,K,Co,Al,Mg,Ti,Cr,Fe,Cu,Niから選ばれる少なくとも一種以上で置換してなるLi−Mn系のスピネル構造の複合酸化物であって、組成,格子定数,密度から求められる単位格子中の陽イオンの席占有率(gc)、又は組成,格子定数,密度から求められる単位格子中の陰イオンの席占有率(ga)のいずれか一方又は両方が0.985以下であることを特徴とするリチウム二次電池用正極材料が開示されている。
【0009】
特許文献4には、出力特性と高温サイクル寿命特性とを両立し得るスピネル型リチウム金属複合酸化物(LMO)として、一般式Li
1+xM
2-xO
4(但し、式中のMは、Mn、Al及びMgを含む遷移金属であり、xは0.01〜0.08である。)で表わされるリチウム金属複合酸化物において、ファンダメンタル法を用いたリートベルト法で測定されるLi-Oの原子間距離を1.971Å〜2.006Åに規定してなるスピネル型リチウム金属複合酸化物が開示されている。
【0010】
特許文献5には、充填密度を高めることができ、出力特性を高めることができ、さらには高温充電保存時の電圧低下が少ないリチウム電池用正極活物質材料として、一般式Li
1+xM
2-xO
4-δ(但し、式中のMは、Mn、Al及びMgを含む遷移金属であり、xは0.01〜0.08である。0≦δである。)で表わされるスピネル型(Fd-3m)リチウム金属複合酸化物と、ホウ素化合物とを含有するリチウム電池用正極活物質材料であって、スピネル型リチウム金属複合酸化物のLi-Oの原子間距離が1.971Å〜2.006Åであり、リチウム電池用正極活物質材料について測定される磁着物量が600ppb以下であるリチウム電池用正極活物質材料が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<本LMO>
本発明の実施形態の一例に係るスピネル型(Fd−3m)リチウム金属複合酸化物(以下「本LMO」とも称する)は、Rietveld法により求められる酸素席占有率(OCC)が0.965〜1.000であり、且つ、Williamson-Hall法により求められる格子歪みが0.015〜0.090、中でも0.020〜0.090であり、且つ、Mn含有モル量に対するNa含有モル量の比率(Na/Mn)が0.00<Na/Mn<1.00×10
−2であることを特徴とする、スピネル型(Fd-3m)リチウム金属複合酸化物である。
【0019】
(酸素席占有率)
Rietveld法により求められる本LMOの酸素席占有率(OCC)は、0.965〜1.000であることが重要である。
酸素席占有率を0.965〜1.000に制御することで、電子密度に与える影響を好ましい範囲に調整することができる。これによって、結晶構造をより一層安定させることができるものと考えられる。
かかる観点から、本LMOの酸素席占有率は0.965〜1.000であることが重要であり、中でも0.965以上或いは0.995以下、その中でも0.965以上或いは0.990以下であることがさらに好ましい。
【0020】
なお、本LMOの酸素席占有率を制御するには、焼成促進剤の種類及び添加量、焼成条件(温度や雰囲気)、アニール条件(温度や雰囲気、時間、降温条件)を調整することにより、制御することができる。例えば酸素濃度の低い雰囲気下で焼成すれば、酸素雰囲気(酸素約100%)下で焼成した場合に比べて、酸素欠損が生じ易くなる。但し、これらの方法に限定されるものではない。
【0021】
(格子歪み)
本LMOは、Williamson-Hall法により求められる格子歪みが0.015〜0.090であることが重要である。
Naを16dサイトに挿入して格子歪みを比較的大きくすることにより、保存前(初期)の格子歪みを適度に高くすることで、保存後の格子歪みの変化を抑えることができる。その結果、当該スピネル型リチウム金属複合酸化物をリチウム電池の正極活物質として使用した際の高温保存特性を高めることができる。他方、格子歪みが大き過ぎると、出力特性(レート特性)や高温サイクル寿命特性などが劣るようになってしまう。
このような観点から、本LMOは、Williamson-Hall法により求められる格子歪みが0.015〜0.090であることが重要であり、中でも0.017以上或いは0.060以下、その中でも0.020以上或いは0.040以下であるのが特に好ましい。
【0022】
なお、本LMOの格子歪みを調整するには、16dサイトにNaが取り込まれ易いように、Naを含有する二酸化マンガンをマンガン原料として使用すると共に、16dサイトにNaが取り込まれ易いように、焼成促進剤の種類と量、焼成条件及びアニール条件などを調整すればよい。Naを含有する二酸化マンガンに関しては、中でも、結合水を多く含んだ、Naを含有する二酸化マンガンを使用するのが特に好ましい。但し、このような方法に限定されるものではない。
【0023】
(結晶子径)
本LMOの結晶子径、すなわちRietveld法による測定方法(詳しくは、実施例の欄に記載)により求められる結晶子径は、100nm〜250nmであるのが好ましく、中でも150nm以上或いは250nm以下、その中でも160nm以上或いは220nm以下であることがさらに好ましい。
本LMOの結晶子径を比較的小さくすることにより、出力を高めることができる傾向がある。
【0024】
本LMOの結晶子径を調整するには、組成や原料粒度や焼成条件などによって調整可能である。例えば焼成温度を低下させることにより結晶子径を小さくすることができる。但し、このような方法に限定されるものではない。
【0025】
ここで、「結晶子」とは、単結晶とみなせる最大の集まりを意味し、XRD測定を行いリートベルト解析を行うことにより求めることができる。
複数の結晶子によって構成され、SEM(例えば3000倍)で観察した際、粒界によって囲まれた最も小さな単位の粒子を、本発明では「一次粒子」という。したがって、一次粒子には単結晶及び多結晶が含まれる。
また、複数の一次粒子がそれぞれの外周(粒界)の一部を共有するようにして凝集し、他の粒子と孤立した粒子を、本発明では「二次粒子」又は「凝集粒子」という。
【0026】
(Na/Mn)
本LMOは、Mn含有モル量に対するNa含有モル量の比率(Na/Mn)に関して0.00<Na/Mn<1.00×10
−2であることが重要である。
本LMOのNa/Mnが、0.00<Na/Mn<1.00×10
−2であれば、16dサイトにNaが取り込まれ易くすることができ、本LMOの結晶格子に歪みを所定の割合で導入することができる。
かかる観点から、本LMOのモル比率(Na/Mn)は、0.00<Na/Mn<1.00×10
−2であることが重要であり、中でも0.80×10
−4以上或いは0.50×10
−2以下、その中でも0.80×10
−4以上或いは0.25×10
−2以下であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、16dサイトにNaが取り込まれたか否かは、XRD測定を行い、Na分を16dサイトに割り付けたリートベルト解析の結果が妥当であるか否かにより、確認することができる。
【0028】
本LMOにおいて、Na/Mnを調整するには、16dサイトにNaが取り込まれ易いように、Naを含有する二酸化マンガンをマンガン原料として使用すると共に、水洗条件などを調整すればよい。但し、このような方法に限定されるものではない。
【0029】
(組成)
本LMOは、スピネル型(Fd-3m)の結晶構造を有していれば、特に組成を限定するものではない。
ただし、リチウム電池の正極活物質として用いた場合の総合的な特性を考慮すると、一般式(1)・・Li
1+xM
2-xO
4(但し、式中のMは、Mn、Al、Mg、Ca、Ti、Ba、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びZnからなる群から選ばれた一種又は二種以上の元素を含有する金属元素である。)で表されるスピネル型リチウム金属複合酸化物であるのが好ましい。
【0030】
一般式(1)において、「x」は0.01〜0.09であるのが好ましい。Liを多く含んでいると、洗浄してもLiが抜け難くなり、水などの溶媒に対する耐性が高まるからである。よってかかる観点から、「x」は、0.01〜0.09であるのが好ましく、中でも0.02以上或いは0.08以下、中でも0.07以下、さらにその中でも0.05以下であるのが特に好ましい。
【0031】
なお、本LMOは酸素欠損を含むため、上記一般式(1)において酸素の原子比「4」は多少の不定比性(例えば4−δ(0≦δ))を含むことを許容する意であり、酸素の一部がフッ素で置換されていてもよい。
【0032】
(不純物)
また、本LMOは、上記以外の他の成分をそれぞれ0.5質量%以下程度であれば含んでいてもよい。この程度の量であれば、本LMOの性能にほとんど影響しないと考えられるからである。
【0033】
<製造方法>
次に、本LMOの製造方法の一例について説明する。
【0034】
本LMOは、所定の原料、中でもNaが16dサイトに取り込まれ易くなる所定のマンガン原料を使用し、且つ、Naが16dサイトに取り込まれ易くなるように、焼成促進剤を原料に加えると共に、所定の条件下で焼成し、アニールし、解砕し、水洗することにより、得ることができる。但し、このような製造方法に限定するものではない。
以下、詳細に説明する。
【0035】
(原料)
出発原料としては、リチウム原料と、マンガン原料及びマグネシウム原料などの上記Li
1+xM
2-xO
4におけるM元素原料と、ホウ素原料などとを適宜選択すればよい。
【0036】
リチウム原料は、特に限定するものではなく、リチウム塩、例えば水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、硝酸リチウム(LiNO
3)、水酸化リチウム一水和物(LiOH・H
2O)、酸化リチウム(Li
2O)、その他脂肪酸リチウムやリチウムハロゲン化物等が挙げられる。中でもリチウムの水酸化物塩、炭酸塩、硝酸塩が好ましい。
【0037】
マンガン原料としては、Mn含有モル量に対するNa含有モル量の比率(Na/Mn)が0.0001以上のものが好ましく、中でも0.0002以上のものが特に好ましい。その中でも0.002<Na/Mn<0.026である二酸化マンガン又は四酸化三マンガンを原料として使用するのが好ましい。
マンガン原料としては、例えば天然二酸化マンガン、化学合成二酸化マンガン、電解二酸化マンガン、化学合成四酸化三マンガンなどを挙げることができる。中でも、電解二酸化マンガン(「EMD」と称する)又は化学合成四酸化三マンガンを使用するのが好ましく、中でもNaを含有した電解二酸化マンガンを使用するのがさらに好ましい。その中でも、結合水を多く含んだ、Naを含有する二酸化マンガンを使用することがさらに好ましい。結合水量は、例えば示差熱分析で150℃から500℃までの減量を測定することで計測することができる。
【0038】
マグネシウム原料としては、特に限定するものではなく、例えば酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、硝酸マグネシウム(Mg(NO
3)
2)などを用いることができ、中でも酸化マグネシウムが好ましい。
【0039】
M元素原料としては、M元素を含有する酸化物や水酸化物などを用いることができる。但し、これらに限定するものではない。例えばM元素がアルミニウムの場合、アルミニウム原料として、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)、フッ化アルミニウム(AlF
3)などを用いることができ、中でも水酸化アルミニウムが好ましい。
【0040】
(焼成促進剤)
焼成促進剤としては、ホウ素或いはホウ素化合物のほか、融点が焼成温度以下の物質、例えばバナジウム化合物(V
2O
5)、アンチモン化合物(Sb
2O
3)、リン化合物(P
2O
5)などの化合物を挙げることができる。
このような焼成促進剤を添加して焼成することで、LMOの結晶粒子が集合した微粒子の焼結を促進でき、緻密な凝集微粒子(二次粒子)を形成できるため、充填密度(タップ密度)を高めることができる。同時に、LMOの結晶の生成および成長を促進できるため、結晶子サイズを大きくすることができる。
【0041】
ホウ素或いはホウ素化合物は、ホウ素(B元素)を含有する化合物であればよい。
焼成前に添加したホウ素或いはホウ素化合物は、焼成によって形態が変化するものと考えられるが、その形態を正確に特定することは困難である。但し、ホウ素或いはホウ素化合物中のホウ素(B元素)は、水で溶出される状態で存在していることから、当該B元素はスピネル構成元素ではなく、何らかの形態のホウ素化合物としてスピネルの外に存在していることが確認されている。よって、スピネル中にホウ素(B元素)は存在せず、結晶粒子の表面と内部においてホウ素(B元素)の明確な濃度勾配が存在することもない。
【0042】
焼成促進剤、例えばホウ素或いはホウ素化合物の添加量は、Mn含有モル量に対するB含有モル量の比率(B/Mn)が0.001<B/Mn<0.1となるように、中でも0.0025≦B/Mn≦0.04となるように調整して添加することが好ましい。
焼成促進剤の添加量をこのような量とすることで、焼結助剤として有効な効果を得ることができ、低温環境でも焼結を促進させることができる。焼成温度が高い領域では、結晶構造中の酸素原子が失われる傾向があるため、低温で焼結を進めることができることにより、酸素欠損を少なくすることができる。
【0043】
(混合方法)
原料の混合は、均一に混合できれば、その方法を特に限定するものではない。例えばミキサー等の公知の混合機を用いて各原料を同時又は適当な順序で加えて湿式又は乾式で攪拌混合すればよい。
乾式混合としては、例えば高速で混合粉を回転させる精密混合機を使用した混合方法を例示することができる。
他方、湿式混合としては、水や分散剤などの液媒体を加えて湿式混合してスラリー化させ、得られたスラリーを湿式粉砕機で粉砕する混合方法を例示することができる。特にサブミクロンオーダーまで粉砕するのが好ましい。サブミクロンオーダーまで粉砕した後、造粒及び焼成することにより、焼成反応前の各粒子の均一性を高めることができ、反応性を高めることができる。
【0044】
(造粒)
上記の如く混合した原料は、必要に応じて所定の大きさに造粒した後、焼成してもよい。但し、造粒は必ずしもしなくてもよい。
造粒方法は、前工程で粉砕された各種原料が分離せずに造粒粒子内で分散していれば湿式でも乾式でもよく、押し出し造粒法、転動造粒法、流動造粒法、混合造粒法、噴霧乾燥造粒法、加圧成型造粒法、或いはロール等を用いたフレーク造粒法でもよい。但し、湿式造粒した場合には、焼成前に充分に乾燥させることが必要である。
【0045】
この際の乾燥方法としては、噴霧熱乾燥法、熱風乾燥法、真空乾燥法、フリーズドライ法などの公知の乾燥方法によって乾燥させればよく、中でも噴霧熱乾燥法が好ましい。噴霧熱乾燥法は、熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて行うのが好ましい。熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー)を用いて造粒することにより、粒度分布をよりシャープにすることができるばかりか、丸く凝集してなる凝集粒子(二次粒子)を含むように二次粒子の形態を調製することができる。
【0046】
(焼成工程)
焼成は、Naが16dサイトに取り込まれ易い条件で行うのが好ましい。
例えば大気雰囲気下で、500℃以上、特に700〜1050℃、中でも710℃以上或いは920℃以下、その中でも720℃以上或いは950℃以下、その中でも特に750℃以上或いは940℃以下の焼成温度を保持するように加熱するのが好ましい。
なお、この焼成温度とは、焼成炉内の焼成物に熱電対を接触させて測定される焼成物の品温を意味する。
上記焼成温度を保持する時間は、焼成温度にもよるが、0.5時間〜90時間、中でも1時間以上或いは80時間以下、その中でも5時間以上或いは30時間以下とするのが好ましい。
【0047】
焼成炉の種類は特に限定するものではない。例えばロータリーキルン、静置炉、その他の焼成炉を用いて焼成することができる。
【0048】
(アニール)
必要に応じて、上記焼成に引き続いて、焼成と同一焼成炉内で、500℃まで降温することによりアニール(熱処理)を行うようにしてもよい。
この際、500℃までの降温速度は、焼成温度にもよるが、10℃/min以下、中でも5℃/min以下、その中でも3℃/min以下、その中でも2℃/min以下とするのが好ましい。
なお、この際の温度とは、焼成炉内の焼成物に熱電対を接触させて測定される焼成物の品温を意味する。
このような条件でアニールすることにより、焼成段階で放出された酸素をLMO構造中に効果的に取り込むことができる。また、上記降温速度の範囲で温度の停滞なく降温することにより、各温度で平衡的に戻り得る酸素原子を十分に構造内に取り込むことができる。
また、酸素加圧雰囲気下でアニールを行ってもよい。酸素加圧雰囲気とは、大気圧よりも酸素分圧が高い雰囲気を意味する。酸素加圧雰囲気下でアニールを行うことで、焼成段階で放出した酸素原子を結晶構造内にさらに効果的に取り込むことができる。
【0049】
(解砕若しくは粉砕)
焼成後は、必要に応じて、得られた本LMOを解砕若しくは粉砕するのが好ましい。
この際、解砕若しくは粉砕の程度は一次粒子を崩壊させないようにするのが好ましい。
【0050】
(水洗工程)
上記のようにして得られた本LMO粉末は、水と接触させて、濾過することにより、当該粉末に含まれる不純物、例えばリチウム金属複合酸化物の表面に生成されたNa化合物などを除去することが好ましい。
洗浄方法としては、例えば本LMO粉末と水とを混合し攪拌してスラリーとし、得られたスラリーを濾過することによって固液分離して不純物を除去するようにすればよい。この際、固液分離は後工程で行ってもよい。
なお、スラリーとは、極性溶媒中に本LMOが分散した状態を意味する。
【0051】
洗浄に用いる極性溶媒としては、水を用いるのが好ましい。
水としては、市水でもよいが、フィルターまたは湿式磁選機を通過させた市水やイオン交換水や純水を用いるのが好ましい。
水のpHは5〜9であるのが好ましい。
【0052】
洗浄時の液温に関しては、液温が低ければ電池特性がより良好になることが確認されているため、かかる観点から、5〜70℃であるのが好ましく、中でも60℃以下であるのがより一層好ましく、その中でも特に45℃以下であるのがより一層好ましい。さらには特に30℃以下であるのがより一層好ましい。
洗浄時の液温が低ければ、電池特性がより良好になる理由は、液温が高過ぎると、本LMO中のリチウムの一部がイオン交換水のプロトンとイオン交換してリチウムが抜けて高温特性に影響するためであると考えられる。
【0053】
本LMO粉末と接触させる極性溶媒の量については、極性溶媒に対する本LMO粉末の質量比(「スラリー濃度」とも称する)が10〜70wt%となるように調整するのが好ましく、中でも20wt%以上或いは60wt%以下、その中でも30wt%以上或いは50wt%以下となるように調整するのがより一層好ましい。極性溶媒の量が10wt%以上であれば、SO
4などの不純物を溶出させることが容易であり、逆に60wt%以下であれば、極性溶媒の量に見合った洗浄効果を得ることができる。
【0054】
<特性・用途>
本LMOは、必要に応じて解砕・分級した後、リチウム電池の正極活物質として有効に利用することができる。
例えば、本LMOと、カーボンブラック等からなる導電材と、テフロン(登録商標)バインダー等からなる結着剤とを混合して正極合剤を製造することができる。そしてそのような正極合剤を正極に用い、例えば負極にはリチウムまたはカーボン等のリチウムを吸蔵・脱蔵できる材料を用い、非水系電解質には六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)等のリチウム塩をエチレンカーボネート−ジメチルカーボネート等の混合溶媒に溶解したものを用いてリチウム二次電池を構成することができる。但し、このような構成の電池に限定する意味ではない。
【0055】
本LMOを正極活物質として備えたリチウム電池は、高温で保存された際にも容量を維持することができるから、特に電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)に搭載するモータ駆動用電源として用いる大型のリチウム電池の正極活物質の用途に特に優れている。
【0056】
<語句の説明>
「リチウム電池」とは、リチウム一次電池、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池など、電池内にリチウム又はリチウムイオンを含有する電池を全て包含する意である。
【0057】
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0058】
次に、実施例及び比較例に基づいて、本発明について更に説明する。但し、本発明が以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
Na量0.2wt%(モル比率Na/Mn:0.8×10
-2)で、示差熱分析で150℃から500℃までの減量が4.3%の電解二酸化マンガンを入手し、その電解二酸化マンガン5500gと、炭酸リチウム1366.75gと、酸化マグネシウム9.831gと、水酸化アルミニウム200.269gと、ホウ酸48.056gとを秤量し、精密混合機で混合して原料混合組成物を得た。
【0060】
得られた原料混合組成物を、焼成容器(アルミナ製のルツボ大きさ=たて*よこ*たかさ=10*10*5(cm))内に、開放面積と充填高さの比(開放面積cm
2/充填高さcm)が100となるように充填した。この際の原料見掛密度は1.1g/cm
3であった。そして、電気炉内にて、大気雰囲気下、725℃(品温)で13時間焼成し、続いて同じ電気炉内にて、大気雰囲気下、700℃(品温)まで4.5時間かけて降温するようにしてアニール(降温速度0.09℃/min)し、続いて同じ電気炉内にて常温まで自然冷却させた。
その後、せん断式破砕機で解砕して分級機によって分級を行い、325メッシュアンダーのスピネル型リチウム金属複合酸化物粉末(サンプル)を得た。
【0061】
得られたスピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末)7000gとイオン交換水(pH5.8、温度20℃)13.5Lとを混合し、10分間攪拌して水洗を行い、スピネル型リチウム金属複合酸化物のスラリーを得た(スラリー濃度34wt%)。この時の液温は25℃であった。そして、このスラリーを濾別して、得られたスピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末)を、大気中で350℃(品温)を5時間維持するように加熱して乾燥させ、次いで、分級機によって分級を行い、325メッシュアンダーの粉末状のスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0062】
得られたスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)の酸素席占有率(OCC)、歪み、Na含有量、Mn含有量及び結晶子サイズを測定して、表1に示した(後述する実施例・比較例も同様)。この際、Mn含有モル量に対するB含有モル量の比率(B/Mn)は0.013であった。
また、サンプルが、スピネル型(Fd-3m)リチウム金属複合酸化物であることは、ファンダメンタル法を用いたリートベルト法による測定によって確認した(後述する実施例・比較例も同様)。
【0063】
<実施例2−5>
焼成温度を表1に示した温度に変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0064】
<実施例6>
焼成温度を表1に示した温度に変更し、原料としての電解二酸化マンガン5500gを化学合成四酸化三マンガン(モル比率Na/Mn:2.0×10
-4)4733gに変更すると共に、ホウ酸の量を31.950gに変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0065】
<実施例7>
焼成温度を表1に示した温度に変更し、アニールの条件を変更した以外は全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。アニールは、焼成に続いて同じ電気炉にて、酸素加圧雰囲気下(酸素分圧0.19MPa)において、1.3℃/minの昇温速度で730℃(品温)まで加熱し、到達後その温度を15時間保持した後、同じ電気炉内にて1.3℃/minの降温速度で室温まで冷却した。
【0066】
<実施例8>
焼成温度を表1に示した温度に変更し、原料としての酸化マグネシウム9.831gをオキシ水酸化コバルト22.000gに変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0067】
<実施例9>
焼成温度を表1に示した温度に変更し、原料としての水酸化アルミニウム200.269gを水酸化ニッケル243.9gに変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0068】
<実施例10>
焼成温度を表1に示した温度に変更し、原料としての水酸化アルミニウム200.269gをオキシ水酸化コバルト251.9gに変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0069】
<比較例1−2>
ホウ素原料をホウ酸から四ホウ酸リチウムに変更したことと、焼成温度を850℃に変更した以外は、全て実施例1と同様にスピネル型リチウム金属複合酸化物(サンプル)を得た。
【0070】
[評価]
実施例および比較例で得られたスピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末)に関して、以下に示す方法で諸特性を評価した。
【0071】
<化学分析測定>
実施例・比較例で得たスピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末)のNa量(ppm)、Mn量(質量%)を、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により測定し、表1に示した。
また、実施例・比較例で得たスピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末、サンプル)の各元素量についても、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により測定し、分析値に基づいた組成式を表1に示した。但し、組成式の記載数字は丸めによる誤差が含まれている。
【0072】
<Rietveld法による結晶子サイズ・酸素席占有率の測定>
実施例及び比較例で得られたサンプル(粉体)について、結晶子サイズ及び酸素席占有率を、次に説明するファンダメンタル法を用いたリートベルト法により測定した。
ファンダメンタル法を用いたリートベルト法は、粉末X線回折等により得られた回折強度から、結晶の構造パラメータを精密化する方法である。結晶構造モデルを仮定し、その構造から計算により導かれるX線回折パターンと、実測されたX線回折パターンとができるだけ一致するように、その結晶構造の各種パラメータを精密化する手法である。
【0073】
X線回折パターンの測定には、Cu‐Kα線を用いたX線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製D8 ADVANCE)を使用した。回折角2θ=10〜120°の範囲より得られたX線回折パターンのピークについて解析用ソフトウエア(製品名「Topas Version3」)を用いて解析することにより結晶子サイズ及び酸素席占有率を求めた。
なお、結晶構造は、空間群Fd−3m(Origin Choice2)の立方晶に帰属され、その8aサイトにLiが存在すると仮定し、16dサイトにはMnと、Mnの置換元素、すなわち実施例に応じてMg、Al、Co及びNiのうちの適宜元素と、さらには過剰なLi分と、Naとが存在すると仮定し、32eサイトをOが占有していると仮定した。
【0074】
また、LMO構造については、先述した原子変位の特異性を考慮すると、各原子の熱振動を考慮する必要がある。各原子が等方的に球対称に熱振動しているものと定義し、中性子回折による実験結果で求められた各原子の平均二乗変位結果(M.Yonemura et al.,Journal of Materials Chemistry,14,1948(2004))を参照し、各元素の等方性原子変位パラメータを求めた。各元素の等方性原子変位パラメータBは、Li原子が1.0638、Mn原子が0.8361、O原子が1.1122と固定し、酸素の分率座標を変数として、観測強度と計算強度の一致の程度を表す指標Rwp<10.0、GOF<2.0を目安に収束するまで繰り返し計算を行った。なお、結晶子サイズ及び歪みはガウス関数を用い、解析を行った。
【0075】
その他測定・リートベルト法解析に使用した機器仕様・条件等は以下の通りである。
Detector:PSD
Detector Type:VANTEC−1
High Voltage:5585V
Discr. Lower Level:0.25V
Discr. Window Width:0.15V
Grid Lower Level:0.075V
Grid Window Width:0.524V
Flood Field Correction:Disabled
Primary radius:250mm
Secondary radius:250mm
Receiving slit width:0.1436626mm
Divergence angle:0.3°
Filament Length:12mm
Sample Length:25mm
Receiving Slit Length:12mm
Primary Sollers:2.623°
Secondary Sollers:2.623°
Lorentzian,1/Cos:0.004933548Th
【0076】
<格子歪みの測定>
上述したリートベルト法解析にて得られた歪みとは別に、結晶格子の歪みを求めるために以下の方法で解析を行った。
スピネル型リチウム金属複合酸化物に対する格子歪みについては、定性的にはXRDの回折ピークの幅で判断できる。定量的に格子歪みを評価するには、X線結晶学分野で知られている以下の式(1)で表されるWilliamson-Hall法を用いることが有利である(Hall,W.II.,J.Inst.Met.,75,1127(1950);idem,Proc.Phys.Soc.,A62,741(1949))。
βcosθ/λ=2η(sinθ/λ)+(1/ε)・・・・・(1)
【0077】
式(1)中、ηは格子歪み(無次元数)を表し、βは結晶子の大きさによる回折線の拡がり(ラジアン)を表し、λは測定X線の波長(Å)を示し、θは回折線のブラッグ角(ラジアン)を表し、εは定数を表す。なお、格子歪みであるηは無次元数であるが、100を乗じて%表示した値を意味する。
【0078】
実施例及び比較例で得られたサンプル(粉体)については、格子歪みを以下の方法で測定した。
X線源として、CuKα線を用いて、粉末法XRDにより、対象物の回折ピークを測定した。そして、回折角2θ=90度以下に現れるすべての回折ピークの積分幅を実測した。この実測値に、上述したWilliamson-Hall法を適用して格子歪みを算出した。積分幅を算出する時の装置関数を見積もるためには、X線回折用標準試料であるLaB
6を用いた。
なお、90度以下の回折角に現れる代表的な回折ピークとしては、(111)面、(220)面、(311)面、(222)面、(400)面、(331)面、(511)面、(333)面、(440)面、(531)面、(533)面、(622)面、(444)面、(551)面、(711)面などが挙げられる。
【0079】
<電池評価>
(電池の作製)
スピネル型リチウム金属複合酸化物(粉末)8.80gと、アセチレンブラック(電気化学工業製)0.60g及びNMP(N-メチルピロリドン)中にPVDF(キシダ化学製)12wt%溶解した液5.0gとを正確に計り取り、そこにNMPを5ml加え十分に混合し、ペーストを作製した。このペーストを集電体であるアルミ箔上にのせ、250μmのギャップに調整したアプリケーターで塗膜化し、120℃一昼夜真空乾燥した後、φ16mmで打ち抜き、4t/cm
2でプレス厚密し、正極とした。電池作製直前に120℃で120min以上真空乾燥し、付着水分を除去し電池に組み込んだ。また、予めφ16mmのアルミ箔の重さの平均値を求めておき、正極の重さからアルミ箔の重さを差し引き正極合材の重さを求め、また正極活物質とアセチレンブラック、PVDFの混合割合から正極活物質の含有量を求めた。
負極はφ20mm×厚み1.0mmの金属リチウムとし、これらの材料を使用して
図1に示す電気化学評価用セルTOMCEL(登録商標)を作製した。
【0080】
図1の電気化学用セルは、耐有機電解液性のステンレス鋼製の下ボディ1の内側中央に、前記正極合材からなる正極3を配置した。この正極3の上面には、電解液を含浸した微孔性のポリプロピレン樹脂製のセパレータ4を配置し、テフロン(登録商標)スペーサー5によりセパレータを固定した。更に、セパレータ上面には、下方に金属リチウムからなる負極6を配置し、負極端子を兼ねたスペーサー7を配置し、その上に上ボディ2を被せて螺子で締め付け、電池を密封した。
電解液は、ECとDMCを3:7体積混合したものを溶媒とし、これに溶質としてLiPF
6を1mol/L溶解させたものを用いた。
【0081】
(高温保存特性の評価)
電気化学用セルを、下記の状態で、60℃で保存した時の容量維持率を測定した。
電気化学用セルを、3〜4.5V(Li基準)の電圧範囲で0.2Cの電流値で定電流充放電測定を行い、十分に電気化学活性があることを確認した。その後、SOC(State Of Charge)40%まで充電し、60℃の恒温槽で5日保存した。
保存後の電気化学用セルを、放電してセルに残っている容量(残存容量)を測定し、残存容量を保存前に充電した容量で割ることによって容量維持率を求め、表2に示した。
なお、SOCとは、電気化学セルの充電状態のことであり、満充電状態をSOC100%と規定する。
【0082】
また、実施例2及び5、並びに比較例1及び2については、上記高温保存の期間を28日間まで延長し、電池を3Vまで放電させた状態の電池を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体して正極を取り出した。得られた正極は、透明ラミネートで密閉したうえで、XRD測定を実施した。そして、導電助剤等に起因する回折ピークを除外しLMO構造に由来する格子定数の変化を確認した。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
28日間の高温保存前後でのLMOに帰属される格子定数の変化は、SOC40%条件の実施例2で0.001Å、実施例5で0.002Åとなり、比較例1で0.016Å、比較例2で0.015Åとなり、実施例の格子定数変化が小さい結果となった。
また、SOC100%条件も実施したところ、実施例2で0.002Å、実施例5で0.002Åとなり、比較例1で0.005Å、比較例2で0.006Åとなり、同じく実施例の格子定数変化が小さい結果が得られた。
以上のような実施例の結果は、適度な格子歪みを与えることにより、高温保存前後での格子定数の変化を緩和した結果であると考えられる。
【0086】
上記実施例の結果と、発明者が行ったこれまでの試験結果から、スピネル型(Fd-3m)リチウム金属複合酸化物において、Rietveld法により求められる酸素席占有率(OCC)を0.965〜1.000に制御し、且つ、Williamson-Hall法により求められる格子歪みを0.015〜0.090、中でも0.020〜0.090に制御し、且つ、Mn含有モル量に対するNa含有モル量の比率(Na/Mn)を0.00<Na/Mn<1.00×10
−2に制御することにより、当該スピネル型リチウム金属複合酸化物をリチウム電池の正極活物質として使用した際、優れた高温保存特性を発揮することができることが分かった。
これは、スピネル型(Fd-3m)結晶構造の16dサイトにNaが取り込まれた結果、歪みが大きくなったことにより、結晶格子の膨張収縮に伴う歪みの変化(ストレスの変化)が緩和されるため、高温保存特性が高まったものと推察することができる。