特許第6174156号(P6174156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174156
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】オスペミフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/26 20060101AFI20170724BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 69/773 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 67/293 20060101ALI20170724BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20170724BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170724BHJP
【FI】
   C07C41/26
   C07C43/23 A
   C07C69/773CSP
   C07C69/753 Z
   C07C69/24
   C07C67/293
   B01J31/02 103Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】28
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-537313(P2015-537313)
(86)(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公表番号】特表2015-533373(P2015-533373A)
(43)【公表日】2015年11月24日
(86)【国際出願番号】FI2013000039
(87)【国際公開番号】WO2014060639
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年9月12日
(31)【優先権主張番号】61/716,171
(32)【優先日】2012年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506090750
【氏名又は名称】フェルミオン オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トイス、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ピフコ、アイノリーサ
(72)【発明者】
【氏名】グルマン、アルネ
【審査官】 高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−505079(JP,A)
【文献】 特表2003−514786(JP,A)
【文献】 特表2010−518150(JP,A)
【文献】 Wu, Chunli; Lei, Wei; Ma, Huiyan; Qiao, Jiabin; Li, Aixing,(2,4-Difluorophenyl)[1-(1H-1,2,4-triazol-1-yl)cyclopropyl]methanone,Acta Crystallographica, Section E: Structure Reports Online,2011年,67(11),o2913
【文献】 Wakasugi, K.; Nishii, Y.; Tanabe, Y.,Cyclopropane-shift type reaction of diaryl(2-halocyclopropyl)methanols promoted by Lewis acids,Tetrahedron Letters,2000年,41(31),5937-5942
【文献】 Isakhanyan, A. U.; Gevorgyan, G. A.; Panosyan, G. A.,Synthesis of 3-(4-bromophenyl)-1-morpholino-2-phenylalkan-3-ol hydrochlorides,Russian Journal of Organic Chemistry,2008年,44(8),1161-1163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/26
B01J 31/02
C07C 43/23
C07C 67/293
C07C 69/24
C07C 69/753
C07C 69/773
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物の製造方法であって、
(a)式(III)
【化2】
(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)
の化合物をフェニルマグネシウムハロゲン化物と反応させ、式(IV)
【化3】
(式中、Rは上述のとおりである)
の化合物を生成すること、および
(b)式(IV)の化合物を塩酸で処理し、式(V)
【化4】
(式中、Rは上述のとおりである)
の化合物を生成すること、および
(c)式(V)(式中、Rは上述のとおりである)の化合物のエステル結合を切断し、式(I)の化合物を得ること
を含む方法。
【請求項2】
フェニルマグネシウムハロゲン化物が塩化フェニルマグネシウムである請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(V)の化合物が結晶化により単離される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
式(V)の化合物が低級アルコールから結晶化される請求項3記載の方法。
【請求項5】
式(V)の化合物がメタノールまたはエタノールからなる溶媒から結晶化される請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(c)における式(V)の化合物のエステル結合の切断が、塩基触媒加水分解または還元的切断を用いて行われる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
還元的切断が、水素化リチウムアルミニウムの存在下で行われる請求項6記載の方法。
【請求項8】
生成された式(I)の化合物が結晶化により単離される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物が、C1-5アルコールから、またはC1-5アルコールおよび水の混合物から結晶化される請求項8記載の方法。
【請求項10】
Rがt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
Rがt−ブチルである請求項10記載の方法。
【請求項12】
式(III)の化合物が、式(II)
【化5】
の化合物を、式X1−CH2−CH2−X2の化合物と反応させることにより製造され、式中、X1およびX2は脱離基であり、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1がハロゲンであり、かつX2がハロゲンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
1がBrであり、かつX2がClである請求項13記載の方法。
【請求項15】
Rがt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
Rがt−ブチルである請求項15記載の方法。
【請求項17】
反応が、相間移動触媒の存在下で行われる請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
相間移動触媒が硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAHS)である請求項17記載の方法。
【請求項19】
式(II)の化合物が、式(VI)
【化6】
(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)
の化合物を、2−フェニル酢酸と反応させることにより製造される請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
Rがt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである請求項19記載の方法。
【請求項21】
Rがt−ブチルである請求項20記載の方法。
【請求項22】
式(I)
【化7】
の化合物の製造方法であって、
式(IV)
【化8】
(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)
の化合物を塩酸で処理して式(V)
【化9】
(式中、Rは上述のとおりである)
の化合物を生成し、式(V)(式中、Rは上述のとおりである)の化合物のエステル結合を切断して、式(I)の化合物を得ることを含む方法。
【請求項23】
Rがt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである請求項22記載の方法。
【請求項24】
Rがt−ブチルである請求項23記載の方法。
【請求項25】
式(III)
【化10】
(式中、Rはt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである)
の化合物。
【請求項26】
Rがt−ブチルである請求項25記載の化合物。
【請求項27】
式(IV)
【化11】
(式中、Rはt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである)
の化合物。
【請求項28】
Rがt−ブチルである請求項27記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オスペミフェンの製造方法およびその方法に使用される中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
オスペミフェン、すなわち(Z)−2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノキシ]エタノールは、式(I)によって表される。
【化1】
【0003】
オスペミフェンは、閉経による外陰部および膣の萎縮の治療用などとして、現在研究されているエストロゲン受容体アゴニスト/アンタゴニストである。
【0004】
Z−4−(4−ヒドロキシ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノールから開始されるオスペミフェンの製造方法が特許文献1に記載されている。オスペミフェンの製造に対するマクマリーカップリング反応の使用が特許文献2および特許文献3に記載されている。これらの方法は、四塩化チタン、LiAlH4、および2−Me−THFなどの高価な試薬や溶媒を大量に必要とするという欠点を抱えている。
【0005】
したがって、高収率かつ高純度のオスペミフェンを製造するための改良された方法であって、経済的に採算性があり、大量合成に適した方法の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/07402号
【特許文献2】国際公開第2008/099059号
【特許文献3】国際公開第2011/089385号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、式(I)
【化2】
の化合物の製造方法であって、
(a)式(III)
【化3】
(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)
の化合物を、フェニルマグネシウムハロゲン化物と反応させ、式(IV)
【化4】
(式中、Rは上述のとおりである)
の化合物を生成すること、および
(b)式(IV)の化合物を塩酸で処理し、式(V)
【化5】
(式中、Rは上述のとおりである)
の化合物を生成すること、および
(c)式(V)(式中、Rは上述のとおりである)の化合物のエステル結合を切断し、式(I)の化合物を得ること
を含む方法を提供する。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、式(I)の化合物の製造方法であって、式(IV)(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)の化合物を塩酸で処理し、式(V)の化合物を生成すること、および式(V)の化合物のエステル結合を切断し、式(I)の化合物を得ることを含む方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、式(III)および(IV)(式中、Rは、t−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである)の新規化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語「低級アルコール」は、C1-5アルコール、好ましくは、C1-4アルコールを意味する。代表的な例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールが挙げられる。特に、メタノールおよびエタノールが好ましい。
【0011】
本発明によれば、式(III)
【化6】
(式中、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)
の化合物は、フェニルマグネシウムハロゲン化物と反応し、式(IV)
【化7】
(式中Rは上述のとおりである)
の化合物を生成する。
【0012】
上記反応は、式(III)の化合物のカルボニル基への、塩化フェニルマグネシウムまたは臭化フェニルマグネシウムなどのフェニルマグネシウムハロゲン化物(グリニャール試薬)の求核付加に基づく。この反応は、ジエチルエーテルまたはTHFなどの適切な溶媒中で、窒素雰囲気下行われる。試薬は、室温で適切に加えられ、混合物は、例えば約60℃に加熱される。反応は通常、約2〜3時間で完了する。反応は、例えば飽和NH4Cl溶液の添加によりクエンチすることができる。フェニルマグネシウムハロゲン化物試薬は、モル過剰、例えば式(III)の化合物に対して1.5〜2モル当量で通常用いられる。得られる式(IV)の化合物は、所望により、溶媒の蒸発とそれに続く結晶化により単離することができる。あるいは、粗化合物を次工程に直接用いることもできる。
【0013】
次工程において、式(IV)の化合物は、塩酸で処理することにより脱水および開環反応に付され、式(V)のエステル化合物を生成する。
【化8】
【0014】
つまり、式(IV)の化合物は、ジクロロメタン(DCM)またはトルエンなどの適切な溶媒に溶解され、この溶液が、30%HCl溶液などのHCl水溶液にゆっくりと添加される。反応は、室温で適切に行われる。反応は、通常1時間未満で完了する。
【0015】
得られる式(V)のエステルは、次反応工程における使用の前の結晶化による単離、精製に特に適している。つまり、開環反応の完了後、反応混合物を、飽和NaHCO3溶液に注ぐことができ、有機相が回収される。有機相は、好ましくは蒸発され、結晶化溶媒が加えられる。適切な結晶化溶媒としては、メタノールおよびエタノールなどの単純な低級アルコールが挙げられる。特に適切な結晶化溶媒は、本質的に水を含まないメタノールまたはエタノールであり、それにより、式(V)のエステルが高収率かつ高純度で得られる。結晶化溶媒および式(V)の粗エステルの混合物は攪拌され、適切に溶解するまで加熱される。混合物は、その後、約40℃に冷却され、所望のZ−異性体で結晶化され得る。結晶化が達成されるために、一定時間にわたって(好ましくはゆっくりと、たとえば1時間よりも長くかけて)、室温以下、例えば15℃以下まで冷却が続けられる。混合物は、この温度で3時間より長く、例えば12時間、適切に攪拌される。式(V)の結晶エステルは、ろ過され、洗浄され、好ましくは減圧下で乾燥される。式(V)の結晶化化合物の化学純度は、この段階で通常92%よりも高く、E−異性体の量は5%よりも少ない。最終生成物は、所望によりさらに再結晶しても良い。
【0016】
式(III)の化合物は、本技術分野において既知の方法を用いて製造することができる。
【0017】
例えば、式(III)の化合物は、式(II)
【化9】
の化合物を、式X1−CH2−CH2−X2の化合物と反応させることにより適切に製造することができる(式中、X1およびX2は脱離基であり、Rはグリニャール試薬または他の有機金属試薬に耐える保護基である)。適切な脱離基X1およびX2としては、ハロゲン、パラトルエンスルホン酸基(CH364SO2O−)、メタンスルホン酸基(CH3SO2O−)およびトリフルオロメタンスルホン酸基(CF3SO2O−)などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。本発明の1つの実施形態によれば、X1およびX2はハロゲン、特にX1はBrでありX2はClである。式(II)の化合物と式X1−CH2−CH2−X2の化合物との反応は、四級アンモニウム塩またはホスホニウム塩などの相間移動触媒(PTC)の存在下で適切に行われる。相間移動触媒の例としては、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(TBAHS)、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムおよび臭化ヘキサデシルトリブチルホスホニウムが挙げられる。このように、式(II)の化合物は、窒素雰囲気下、室温でトルエンなどの適切な溶媒に溶解され、その後TBAHSなどの相間移動触媒およびNaOH水溶液(例えば、50%NaOH溶液)が反応混合物に添加される。得られる二相系はしっかりと攪拌され、式X1−CH2−CH2−X2の化合物が滴下される。反応は、通常12時間以内に完了する。有機相が単離、洗浄、ろ過、乾燥され、蒸発させられて式(III)の化合物が得られる。
【0018】
あるいは、式(II)の化合物と式X1−CH2−CH2−X2の化合物との反応は、DMSO、DMFまたはTHFなどの有機溶媒中で、NaH、K-、Na-またはLiOBu−tまたは対応する炭酸塩などの塩基の存在下で行うこともできる。
【0019】
式(II)の化合物は、本技術分野において既知の方法を用いて製造することができる。
【0020】
例えば、式(II)の化合物は、式(VI)
【化10】
(式中、RはC1-5アルキルまたは任意に置換されているフェニル)
の化合物を、2−フェニル酢酸と反応させることにより適切に製造することができる。通常、反応は、ポリリン酸(PPA)などのブレンステッドの酸によって触媒される。したがって、温めたPPAに式(VI)の化合物および2−フェニル酢酸が添加される。約3時間攪拌した後、水が加えられ、混合物はさらに約2時間室温で撹拌される。式(II)の沈殿した化合物は、ろ過、洗浄、そして乾燥され、所望により、ヘキサン/イソプロパノール(1:1)などの適切な溶媒から再結晶される。
【0021】
本発明の1つの実施形態によれば、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の特に適切な化合物は、Rがt−ブチル、アダマンチルまたは2,4,6−トリメチルフェニルである化合物である。式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の特に好ましい化合物は、Rがt−ブチルである化合物である。
【0022】
式(I)の化合物(オスペミフェン)は、式(V)の化合物を、オスペミフェンの水酸基が形成されるように、式(V)の化合物のエステル結合(下記の破線)
【化11】
の切断に付すことにより得られる。
【0023】
式(V)の化合物のエステル結合の切断は、加水分解または還元的切断などの周知の方法を用いて行うことができる。
【0024】
式(V)の化合物のエステル結合の加水分解は、塩基または酸により触媒される。塩基触媒による加水分解が特に好ましい。塩基触媒による加水分解は、含水THFまたは含水THF/MeOH混合物などの適切な溶媒中で、NaOHまたはLiOHなどの適切な塩基の存在下、室温で加水分解が完了するのに十分な時間行うことができる。加水分解が室温で行われる場合、反応は、通常12時間以内で完了する。その後、水およびEtOAcなどの適切な有機溶媒が添加され、有機相が洗浄、乾燥、ろ過、そして濃縮される。オスペミフェンは、適切な結晶溶媒からの結晶化により、残渣から都合よく単離することができる。結晶化に好ましい溶媒は、C1-5アルコール、特にメタノール、エタノールまたはイソプロパノール、あるいは含水メタノール(例えば、80%または90%メタノールなど)などの含水C1-5アルコールである。
【0025】
オスペミフェンを得るための式(V)の化合物のエステル結合の還元的切断は、水素化リチウムアルミニウムなどの還元剤の存在下、トルエン、THF、ヘキサンまたはキシレンまたはそれらの混合物などの適切な有機溶媒中で行うことができる。反応は、窒素雰囲気下、室温で適切に行われる。反応は、飽和NH4Cl溶液の添加により適切にクエンチされ得る。有機相は、洗浄、乾燥、ろ過および濃縮される。オスペミフェンは、上述のように、適切な結晶溶媒からの結晶化により、残渣から都合よく単離することができる。
【0026】
本発明は以下の非限定的実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0027】
[実施例1]2−フェノキシエチルピバル酸エステルの製造
2−フェノキシエタノール(50g、0.362mol)を、ジクロロメタン(500ml)に溶解し、溶液を0〜5℃に冷却した。トリエチルアミン(101ml、0.724mol)を冷却した溶液に加え、温度を5℃より低く維持しながら塩化ピバロイル(53.5ml、0.434mol)を加えた。添加後、混合物を5℃で30分間撹拌し、室温で12時間攪拌した。反応を1M HCl溶液(300ml)の添加によりクエンチし、しっかりと攪拌した。相を分離し、有機相を飽和NaHCO3溶液(2×150ml)、水(1×100ml)およびブライン(1×100ml)で洗浄した。乾燥(Na2SO4)およびろ過後、溶媒を蒸発させ、表題の化合物(76.78g、0.345mol、95%)を黄色の油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm): 7.31-7.27(2H, m, ArH), 6.96-6.93(3H, m, ArH), 4.34(2H, m, CH2CH2OPiv), 4.19(2H, m, ArOCH2CH2), 1.13(9H, s, 3×Me). 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ(ppm): 177.7, 158.7, 130.1, 121.1, 114.9, 66.1, 62.9, 38.5, 27.6.
【0028】
[実施例2]2−(4−(2−フェニルアセチル)フェノキシ)エチルピバル酸エステルの製造
ポリリン酸(PPA)(250g)を反応容器に入れ、機械的に攪拌しながら50℃(浴温)に温めた。2−フェニル酢酸(30.6g、0.225mol)をPPAに加え、その後2−フェノキシエチルピバル酸エステル(50g、0.225mol)を加えた。3時間後、TLCおよびHPLCが完全な変換を示し、水(1000ml)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。沈殿した生成物をろ過し、水(300ml)で洗浄した。真空下で乾燥後、粗生成物(65g)をヘキサン/i−PrOH 1:1で再結晶し、表題の化合物を淡黄色の固体として得た(51.49g、0.151mol、67%)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ(ppm): 8.02(2H, d, J=9.2Hz, ArH), 7.32-7.22(5H, m, ArH), 7.07(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 4.37(2H, m, CH2CH2OPiv), 4.31(2H, s, ArCH2CO), 4.3(2H, m, ArOCH2CH2), 1.12(9H, s, 3×Me). 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ(ppm): 196.4, 177.7, 162.6, 135.8, 131.2, 129.9, 129.8, 128.7, 126.8, 114.8, 66.5, 62.7, 44.8, 38.6, 27.2.
【0029】
[実施例3]2−(4−(1−フェニルシクロプロパンカルボニル)フェノキシ)エチルピバル酸エステルの製造
2−(4−(2−フェニルアセチル)フェノキシ)エチルピバル酸エステル(15g、44.1mmol)を窒素を吹き込んだトルエン(150ml)に溶解し、窒素雰囲気下で10分間、室温で撹拌した。硫酸水素テトラブチルアンモニウム(1.496g、4.41mmol)触媒を撹拌した溶液に加え、その後、50%NaOH溶液(60ml、1137mmol)を加えた。二相系を10分間しっかり撹拌した。1−ブロモ−2−クロロエタン(9.17ml、110mmol)をトルエン(35ml)に溶解し、撹拌反応混合物に滴下した。12時間後、出発原料が消費され、水(100ml)を添加した。相を分離し、水層をトルエン(50ml)で抽出した。合わせたトルエン相を水(100ml)およびブライン(100ml)で洗浄した。乾燥(Na2SO4)およびろ過後、トルエンを真空下で除去した。表題の粗化合物(15.39g、42mmol、95%)を、15%のO−アルキル化副生成物の混じった粘性の茶色の油状物として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm): 7.80(2H, d, J=9.2Hz, ArH), 7.26-7.16(5H, m, ArH), 6.77(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 4.37(2H, t, J=4.8Hz, CH2CH2OPiv), 4.15(2H, t, J=5.0Hz, ArOCH2CH2), 1.60(2H, AB-系, J=4.4Hz, CH2CH2), 1.32(2H, AB-系, J=4.4Hz, CH2CH2), 1.17(9H, s, 3×Me). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ(ppm): 198.6, 178.9, 162.1, 141.7, 132.3, 130.2, 129.1, 127.9, 126.8, 114.2, 67.0, 62.8, 39.2, 35.0, 27.5, 16.1.
【0030】
[実施例4](Z)−2−(4−(4−クロロ−1,2−ジフェニルブト−1−エン−1−イル)フェノキシ)エチルピバル酸エステルの製造
粗2−(4−(1−フェニルシクロプロパンカルボニル)フェノキシ)エチルピバル酸エステル(15.3g、41.8mmol)を、窒素雰囲気下で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)(200ml)に溶解した。塩化フェニルマグネシウムの1M THF溶液(35.5ml、71mmol)を、溶液に室温で滴下した。添加後、反応を60℃まで温め、この温度で2時間保持した。反応を飽和NH4Cl溶液(300ml)の添加によりクエンチした。5%HCl溶液でpHを4に調整し、THF相を分離した。水相をジクロロメタン(2×75ml)で抽出し、THF相と合わせ、水(100ml)およびブライン(100ml)で洗浄した。乾燥(Na2SO4)およびろ過後、溶媒を蒸発させ、粗シクロプロピルカルビノール中間体(21g)を開環工程に直接送った。粗シクロプロピルカルビノール中間体を、ジクロロメタン(DCM)(150ml)に溶解し、30%HCl溶液(120ml)で処理した。60分後、脱水および開環が完了し、反応混合物を飽和NaHCO3溶液(350)mlに注いだ。相を分離し、DCM相を水(100ml)およびブライン(100ml)で洗浄した。乾燥(Na2SO4)およびろ過後、溶媒を蒸発させた。残渣を沸騰メタノールに溶解し、40℃まで冷却し、結晶化させた。室温で攪拌(12時間)後、沈殿した表題の化合物をろ過し、冷MeOHで洗浄した。表題の化合物を、白色固体として得た(5.4g、11.7mmol、二工程を通じて28%)。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm): 7.39-7.13(6H, m, ArH), 6.79(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 6.56(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 4.31(2H, t, J=4.4Hz, CH2CH2OPiv), 4.04(2H, t, J=4.8Hz, ArOCH2CH2), 3.41(2H, t, J=7.6Hz, ClCH2CH2), 2.92(2H, t, J=7.6Hz, ClCH2CH2), 1.17(9H, s, 3×Me). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ(ppm): 178.5, 156.8, 142.8, 141.6, 140.9, 135.3, 135.2, 131.7, 129.5, 129.4, 128.4, 128.2, 127.0, 126.6, 113.6, 65.7, 62.7, 42.8, 38.7, 38.6, 27.1.
【0031】
[実施例5](Z)−2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノキシ]エタノール(オスペミフェン)の、ピバロイル基の塩基による加水分解による製造
(Z)−2−(4−(4−クロロ−1,2−ジフェニルブト−1−エン−1−イル)フェノキシ)エチルピバル酸エステル(1g、2.16mmol)をTHF(8ml)に溶解し、その後MeOH(1ml)および水(1ml)を添加した。水酸化ナトリウム(0.1g、2.5mmol)を一度に加え、反応を室温で12時間攪拌した。反応完了後、混合物を水(20ml)およびEtOAc(20ml)との間に分配した。有機相を水(20ml)およびブライン(20ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、そして濃縮した。残渣をi−PrOHから結晶化し、オスペミフェン(0.29g、35%)を白色固体として得た。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm): 7.37(2H, t, J=8Hz, ArH), 7.29(3H, t, J=7.2Hz, ArH), 7.20(2H, t, J=7.6Hz, ArH), 7.16-7.13(3H, m, ArH), 6.80(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 6.57(2H, d, J=8.8Hz, ArH), 3.94(2H, t, J=4.4Hz, ArOCH2CH2OH), 3.87(2H, m, ArOCH2CH2OH), 3.42(2H, t, J=7.2Hz, ClCH2CH2), 2.92(2H, t, J=7.2Hz, ClCH2CH2), 1.95(1H, t, J=6.4Hz, OH). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ(ppm):157.2, 143.2, 142.1, 141.3, 2 x 135.7, 132.2, 130.0, 129.8, 128.8, 128.7, 127.4, 127.0, 113.9, 69.3, 61.8, 43.3, 39.0.
【0032】
[実施例6](Z)−2−[4−(4−クロロ−1,2−ジフェニル−ブト−1−エニル)フェノキシ]エタノール(オスペミフェン)の、ピバロイル基の還元的切断による製造
(Z)−2−(4−(4−クロロ−1,2−ジフェニルブト−1−エン−1−イル)フェノキシ)エチルピバル酸エステル(3.5g、7.56mmol)をトルエン(35ml)に溶解し、窒素雰囲気下、室温で5分間撹拌した。水素化リチウムアルミニウム溶液(THF中1M)(7.56ml、7.56mmol)を反応に滴下し、混合物を室温で30分間撹拌した。HPLCが完了を示した後、反応を飽和NH4Cl溶液(75ml)の添加によりクエンチした。さらにトルエン(30ml)を加え、相を分離した。有機相を水(50ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、ろ過し、そして真空下で濃縮した。残渣を90%MeOHから結晶化し、オスペミフェン(1.75g、61%)を白色固体として得た。