(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御手段は、前記水温検知手段によって検知された現時点の水温に前記追いだき温度を加算して得られた目標温度を前記表示部に表示させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温水の元となる冷水(たとえば水道水)の温度は、季節によって変わる。そのため、水道水の加熱が開始されてから洗濯が終了するまでに要する残時間(洗濯時間や運転時間や運転残時間ともいう)は、加熱前の水道水の温度によって変動する。特許文献1に記載の全自動洗濯機のように水道水の温度が不明な状態で目標温度を設定する構成では、残時間がどれくらいなのかを、目標温度を設定する段階でユーザが正確に把握することが困難である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、温水を用いて洗濯する構成において、残時間を正確に把握できる洗濯機を提供することを主たる目的とする。
【0006】
また、この発明は、温水を用いて洗濯する構成において、使い勝手の向上を図れる洗濯機を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽と、前記洗濯槽内の水の温度を検知する水温検知手段と、前記洗濯槽内の水を加熱する加熱手段と、前記洗濯槽内の水の温度に加算される追いだき温度の選択を、洗濯の開始に先立って受け付ける受付手段と、所定の情報が表示される表示部と、前記受付手段が前記追いだき温度の選択を受け付けると、前記水温検知手段によって検知された現時点の水温が前記追いだき温度だけ上昇するまで前記加熱手段が前記洗濯槽内の水を加熱して洗濯が終了するのに要する残時間を前記表示部に表示させる表示制御手段と、を含むことを特徴とする、洗濯機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、操作部と、前回の洗濯の際に選択された前記追いだき温度を記憶する記憶手段と、前記操作部が操作されたことに応じて、前記表示制御手段は、前回の洗濯の際に選択された前記追いだき温度を前記表示部に表示させることを特徴とする、請求項1記載の洗濯機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記洗濯機の周囲の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段が検知した温度が一定温度以下の場合に、前記残時間を長く補正する第1補正手段と、を含むことを特徴する、請求項1または2記載の洗濯機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記表示制御手段は、前記水温検知手段によって検知された現時点の水温に前記追いだき温度を加算して得られた目標温度を前記表示部に表示させることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記目標温度が所定の上限温度以下になるように前記残時間を補正する第2補正手段を含むことを特徴する、請求項4記載の洗濯機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、この洗濯機では、温水を用いて洗濯ができるのだが、水を加熱して温水を生成することに関して、温水の目標温度(加熱後の温水の温度)の選択を受け付けるのではなく、現時点の水温から加算される温度(追いだき温度)の選択を洗濯の開始に先立って受け付ける。
【0013】
この場合、現時点の水温が追いだき温度だけ上昇するまで洗濯槽内の水が加熱されて洗濯が終了するのに要する残時間は、追いだき温度の選択が受け付けられたことに応じて速やかに取得されて、表示部に表示される。なお、ここでの残時間は、選択され得る追いだき温度毎に予め計算されて洗濯機で記憶されていてもよいし、追いだき温度が選択される度に洗濯機で算出されてもよい。いずれにせよ、追いだき温度に基づく残時間は、温水の元となる冷水の温度が変動したとしても、目標温度に基づく残時間よりは正確である。
【0014】
以上の結果、温水を用いて洗濯する構成の洗濯機において、残時間を正確に把握できる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ユーザが操作部を操作すると、前回の洗濯の際に選択された追いだき温度が表示部に表示される。よって、ユーザは、追いだき温度を選択する際に、表示部に表示された前回の追いだき温度を目安にすることができるので、洗濯機では、使い勝手の向上を図れる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、洗濯機の周囲の温度が一定温度以下の場合には、現時点の水温が追いだき温度だけ上昇するまでに通常より時間がかかることを考慮して、残時間が長く補正されるので、洗濯機では、残時間を一層正確に把握できる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、現時点の水温に追いだき温度を加算して得られた目標温度が表示部に表示されることから、表示部で目標温度を把握できるので、洗濯機では、使い勝手の一層の向上を図れる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、残時間が補正されることによって、(現時点の水温に追いだき温度を加算して得られた)目標温度が必要以上に高熱にならないようにすることができるので、洗濯機では、使い勝手の一層の向上を図れる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1を斜め前方から見た斜視図である。
図2は、洗濯機1の縦断面左側図である。
図3は、
図2のA−A矢視図である。
図4は、
図2のB−B矢視図である。
【0022】
なお、以下の実施形態では、
図1に示すように洗濯機1を正面側から見たときと基準として、洗濯機1の方向を特定する。つまり、
図1における紙面手前側は、洗濯機1の正面側(前側)であり、
図1における紙面奥側は、洗濯機1の背面側(後側)である。また、
図1における左右方向(横方向)は、洗濯機1の左右方向と一致していて、
図1における上下方向(縦方向)は、洗濯機1の上下方向と一致している。
【0023】
この実施形態における洗濯機1として、洗濯後の洗濯物を乾燥させる機能を有するドラム式洗濯乾燥機を想定している。そのため、洗濯機1では、洗濯工程(洗い工程、すすぎ工程および脱水工程)と、乾燥工程とが実行される。ただし、洗濯機1は、乾燥機能を省いたドラム式洗濯機であってもよい。
【0024】
図1に示すように、洗濯機1は、縦長の筐体2を有している。
【0025】
筐体2の前面の上端部には、操作パネル3が設けられている。操作パネル3には、液晶の表示部4と、各種のキー等によって構成された操作部5とが設けられている。表示部4には、所定の情報が表示される。ユーザは、操作部5を操作することによって、洗濯機1の運転条件を設定したり、洗濯機1の運転を開始したり停止したりすることができる。操作パネル3については、追って詳しく説明する。
【0026】
筐体2の前面において、操作パネル3の下側には、扉6が設けられている。扉6は、後側へ向かって縮径される略円錐台形状である(
図2も参照)。筐体2において扉6に対する左右のどちらかには、ヒンジ(図示せず)が設けられており、扉6は、ヒンジを介して筐体2に連結されている。扉6は、ヒンジを中心に回動することで、開閉自在である。
図1の扉6は閉じた状態にあり、
図1の状態の扉6を正面側へ引くと、扉6が開く。
【0027】
図2に示すように、洗濯機1は、筐体2内に、回転ドラム7と、外槽8と、温水ヒーター9(加熱手段)とを主に含んでいる。
【0028】
回転ドラム7は、斜め上側に延びる中心軸10を有する有底円筒状であって、その内部に洗濯物を収容することができる。つまり、回転ドラム7は、水平方向Hに対して斜めに配置されたいわゆる斜めドラム構造をなしている。回転ドラム7は、中心軸10と同心状をなす略円筒状の円周壁11と、円周壁11の後端に接続されて円周壁11の中空部分を後側から塞ぐ円板状の底壁12とを一体的に含んでいる。円周壁11では、前端部が前側へ向けて徐々に縮径されていて、円周壁11の内周面における前端縁が、回転ドラム7に設けられた円形状の開口部13を構成している。開口部13は、回転ドラム7において、中心軸10に沿った斜め上側の端部に設けられている。開口部13を介して、回転ドラム7内に洗濯物を出し入れすることができる。円周壁11において底壁12に接続された部分と底壁12とは、回転ドラム7において中心軸10に沿った斜め下側の端部に設けられた底部14を構成している。
【0029】
外槽8は、回転ドラム7より一回り大きい有底円筒状であって、複数のダンパ(図示せず)を介して筐体2によって弾性支持されている。外槽8は、略円筒形状であって、その中心軸は、回転ドラム7の中心軸10と一致している。外槽8は、中心軸10と同心状をなす略円筒状の円周壁15と、円周壁15の後端に接続されて円周壁15の中空部分を後側から塞ぐ円板状の底壁16を一体的に含んでいる。外槽8の内部には、底壁16側から水(水道水や、風呂水や、洗剤が溶けた水も含む)が溜められる。
【0030】
円周壁15は、前後に分割された複数の部品を組み合わせることで構成されてもよい。円周壁15では、前端部が前側へ向けて階段状に縮径されていて、円周壁15の内周面における前端縁が、外槽8に設けられた円形状の出入口17を構成している。出入口17は、回転ドラム7の開口部13に対して同軸状で前から対向し、連通している。外槽8には、出入口17を全周に亘って縁取りつつ前側へ突出する環状のパッキン18が取り付けられている。パッキン18が、閉じた状態の扉6に密着することによって、扉6と外槽8の前端縁との間を密封するので、外槽8内の水が出入口17の外へ漏れ出すことを防止できる。扉6を開くと、開口部13および出入口17が前方に開放されるので、開口部13および出入口17を介して回転ドラム7内に洗濯物を出し入れすることができる。
【0031】
底壁16の背面には、モータ19(たとえばDDモータ)が取り付けられており、モータ19の出力軸19Aは、底壁16の円中心部分を貫通して、外槽8内で中心軸10に沿って前上側へ突出している。
【0032】
外槽8は、その内部に回転ドラム7を同軸状で収容している。回転ドラム7の底壁12の円中心部分には、モータ19の出力軸19Aが連結されている。モータ19が駆動されると、回転ドラム7は、中心軸10を中心に回転可能である。なお、回転ドラム7の円周壁11および底壁12の少なくとも一方には、複数の貫通孔(図示せず)が形成されており、回転ドラム7の中空部分と外槽8の中空部分(回転ドラム7の中空部分以外の部分)とは、当該貫通孔を介して連通している。そのため、外槽8に溜まった水は、回転ドラム7と外槽8との間で行き来することができる。
【0033】
回転ドラム7と、回転ドラム7を収容した外槽8とは、洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽50を構成している。
【0034】
また、外槽8の内面8A(厳密には、円周壁15の下側内周面15A)の略後半分の領域には、下方へ一段窪む凹み20が形成されている。凹み20の底面20Aは、回転ドラム7の底部14側から開口部13側(前上側)へ向かうのに従って回転ドラム7の下側外周面7Aから下側へ離れるように下側外周面7Aに対して傾斜している(
図3も参照)。底面20Aは、下側外周面7Aに対して傾斜しているが、実際は、水平方向Hに沿った平坦面である(
図3も参照)。底面20Aが、外槽8内における最下部となっている。そのため、外槽8に溜まる水は、底面20A側から溜まっていく。底面20Aにおいて、左奥側の隅には、排水口40が設けられている(
図4参照)。外槽8内の水は、排水口40から機外に排出される。
【0035】
次に、温水ヒーター9について説明する。
【0036】
温水ヒーター9は、外槽8(洗濯槽50)内の水を加熱するためのものである。外槽8内の水が温水ヒーター9によって加熱されて温水となると、回転ドラム7内の洗濯物を当該温水によって効果的に洗濯することができる。つまり、洗濯機1では、温水洗浄により、洗濯物の洗浄力を上げることができる。
【0037】
図4を参照して、温水ヒーター9は、平面視で略U字状をなす本体部21と、本体部21の略U字状における2つの端部21Aに接続された横長ブロック状のベース部22とを含んでいる。略U字状の本体部21において2つの端部21Aの間で湾曲している部分が、温水ヒーター9の先端部9Aである。先端部9Aは、前側へ膨出する円弧状である。各端部21Aには、コード23が接続されている。コード23には、洗濯機1に内蔵されたマイクロコンピューター51(後述する
図6参照)が電気的に接続されている。温水ヒーター9では、本体部21が、コード23経由でマイクロコンピューター51から電力や制御信号が供給されることによって、発熱する。温水ヒーター9として、いわゆるシーズヒータを用いることができる。
【0038】
ベース部22は、
図3に示すように、外槽8の底壁16において凹み20の底面20Aに隣接した下端部に固定されている。これによって、温水ヒーター9が外槽8に取り付けられている。外槽8に取り付けられた温水ヒーター9は、
図2に示すように、凹み20の底面20Aから若干浮いた状態で、外槽8内における回転ドラム7の底部14(底部14の下端部)の下方(真下)の凹み20内で、水平方向Hに沿って配置されている。厳密には、温水ヒーター9の上面9B(少なくとも、発熱部品である本体部21の上面21B)が、全域に亘って水平方向Hに沿っていればよい。温水ヒーター9は、外槽8内において、回転ドラム7の下側外周面7Aに沿わずに、回転ドラム7の底部14の下方で水平方向Hに沿って配置されている。そのため、外槽8内の水位が低くても、温水ヒーター9は、外槽8内の水面から上側にはみ出ないよう(外槽8内の水に完全に漬かるように)に配置されている。よって、空焚きによる温水ヒーター9の故障(温水ヒーター9に関する不具合)を防止することができるし、短時間で温水を生成することができる。
【0039】
また、
図4に示すように、温水ヒーター9のベース部22の前端面22Aにおいて本体部21の一対の端部21Aに挟まれた部分には、外槽8(洗濯槽50)内の水の温度(水温)を検知する水温センサー24(水温検知手段)が備えられている。水温センサー24は、ベース部22の前端面22Aから前側へ突出するように設けられている。
【0040】
次に、操作パネル3について詳しく説明する。
【0041】
図5は、操作パネル3の正面図である。
【0042】
図5を参照して、操作パネル3には、横長長方形状の表示部4のまわりに、操作部5が配置されている。操作部5は、電源キー25と、スタートキー26と、洗濯キー27と、洗濯乾燥キー28と、乾燥キー29と、エアウォッシュキー30と、おしえてキー31とを含んでいる。また、操作部5は、洗い設定キー32と、すすぎ設定キー33と、脱水設定キー34と、乾燥設定キー35と、設定ダイアル36と、追いだきキー37と、風呂水キー38とを含んでいる。
【0043】
電源キー25を押すことで、洗濯機1をONにしたり、OFFにしたりすることができる。スタートキー26を押すことで、洗濯機1の運転をスタートしたり、一時停止したりすることができる。洗濯キー27を押すこと(ONにすることをいい、以下同じ)で、前述した洗濯工程だけを行うコースを選択できる。洗濯乾燥キー28を押すことで、洗濯工程および乾燥工程の両方を行うコースを選択できる。乾燥キー29を押すことで、乾燥工程だけを行うコースを選択できる。エアウォッシュキー30を押すことで、特殊工程(たとえば、オゾン等の気体で洗濯物を除菌する工程)を行うコースを選択できる。おしえてキー31を押すことで、ユーザが気になる情報を表示部4に表示させることができる。
【0044】
洗い設定キー32を押してから設定ダイアル36を操作することで、洗い工程の詳細(洗い時間などを)をユーザ好みに設定することができる。すすぎ設定キー33を押してから設定ダイアル36を操作することで、すすぎ工程の詳細(すすぎ時間などを)をユーザ好みに設定することができる。脱水設定キー34を押してから設定ダイアル36を操作することで、脱水工程の詳細(脱水回数などを)をユーザ好みに設定することができる。乾燥設定キー35を押してから設定ダイアル36を操作することで、乾燥工程の詳細(乾燥時間などを)をユーザ好みに設定することができる。
【0045】
洗濯槽50内の水を温水ヒーター9で加熱する場合において、ユーザは、追いだきキー37を押すことによって、洗濯槽50内の水の温度(水温)に加算される追いだき温度(目標温度から現時点の水温を差し引いて得られる温度)を設定(選択)することができる。たとえば、追いだきキー37を一度押すと、追いだき温度を「+5℃」にし、さらに追いだきキー37を一度押すと、追いだき温度を「+10℃」に増やすことができ、最終的には、追いだき温度を「+45℃」まで増やすことができる。なお、追いだき温度が「+45℃」の状態でさらに追いだきキー37を一度押すと、追いだき温度は「+0℃」となる。つまり、追いだきキー37を押す回数と、追いだき温度とが対応していて、追いだきキー37を押すことで、追いだき温度を「+0℃」〜「+45℃」の範囲で5℃ずつ変更することができる。なお、追いだきキー37を押す回数と、追いだき温度との関係は、洗濯機1(詳しくは、後述するROM52であり、
図6参照)に記憶されている。
【0046】
風呂水キー38は、洗濯工程(洗い工程やすすぎ工程)で風呂水を使いたい場合に操作される。
【0047】
次に、洗濯機1の電気的構成について説明する。
【0048】
図6は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。
【0049】
図6を参照して、洗濯機1は、前述したマイクロコンピューター51(受付手段、表示制御手段、第1補正手段、第2補正手段)を備えている。マイクロコンピューター51は、CPU59と、RAM等のメモリ60(記憶手段)とで構成されている。なお、メモリ60には、前回の洗濯の際にユーザによって選択された追いだき温度が記憶されている。
【0050】
マイクロコンピューター51には、前述した表示部4、操作部5および水温センサー24のそれぞれと、ROM52と、水位センサー53と、室温センサー54(温度検知手段)と、ブザー55とが電気的に接続されている。マイクロコンピューター51に接続されるこれらの部品は、洗濯機1に含まれる。
【0051】
ROM52には、必要な情報が記憶されている。たとえば、ROM52には、前述した「+0℃」〜「+45℃」の範囲における5℃おきの追いだき温度について、水温が追いだき温度だけ上昇するのに要する温水ヒーター9の駆動時間についての目安(水の予測加熱時間であり、以下では「目安時間」ということにする)が追いだき温度毎に記憶されている。
【0052】
水位センサー53は、洗濯槽50内に溜まった水の水位を検知するセンサーである。室温センサー54は、洗濯機1が設置された部屋の温度(洗濯機1の周囲の温度)を検知するセンサーである。ブザー55は、警報を発する。マイクロコンピューター51には、操作部5の操作内容や、各センサーの検知結果が入力される。マイクロコンピューター51は、表示部4に所定の情報を表示させ、ブザー55に警報を発するよう指示する。
【0053】
さらに、マイクロコンピューター51には、前述した温水ヒーター9およびモータ19のそれぞれと、給水弁56と、排水弁57とが、駆動回路58を介して電気的に接続されている。マイクロコンピューター51に接続されるこれらの部品は、洗濯機1に含まれる。
【0054】
給水弁56は、洗濯機1において水道水の蛇口につながった給水路(図示)の途中に設けられていて、開放されることによって、水道水を洗濯槽50に供給する。排水弁57は、洗濯機1において排水口40につながった排水路(図示せず)の途中に設けられていて、開放されることによって、洗濯槽50内の水を機外に排水させる。マイクロコンピューター51は、給水弁56および排水弁57のそれぞれを開閉させたり、温水ヒーター9およびモータ19のそれぞれを駆動させたりする。
【0055】
次に、
図7〜
図10を参照して、この洗濯機1において行われる制御動作(詳しくは、洗い工程が始まるまでの処理)について説明する。なお、
図10では、制御動作中における表示部4の表示内容を示している。洗濯機1の運転前(電源投入前)の表示部4には、何も表示されていない(
図10の表示部4A参照)。
【0056】
まず、
図7を参照して、洗濯機1の運転開始として、ユーザの操作によって電源キー25がONに操作されることで電源が投入されると(ステップS1)、表示部4に初期画面が表示される(
図10の表示部4B参照)。次いで、ユーザによって洗濯キー27または洗濯乾燥キー28が押されることでコース(ここでは、一例として、洗濯工程だけを行うコース)が選択されると、マイクロコンピューター51は、当該コースを表示部4に表示させる(
図10の表示部4C参照)。そして、ユーザによって各設定キー32〜35および設定ダイアル36(
図5参照)によるコース内容の詳細設定がなされると、マイクロコンピューター51は、設定された内容を表示部4に表示させる(
図10の表示部4D参照)。
【0057】
このとき、ユーザが追いだきキー37を押して追いだき温度を選択すると、マイクロコンピューター51は、選択された追いだき温度と、選択された追いだき温度の場合に洗い工程において追加でかかる前記目安時間(ROM52に記憶されている)とを表示部4に表示させる(
図10の表示部4E参照)。表示部4Eの場合、追いだき温度が約+15℃であり、目安時間が約+45分である。
【0058】
また、この状態でユーザがおしえてキー31を押すと、マイクロコンピューター51は、メモリ60の記憶内容を参照して、前回の洗濯での洗い工程における追いだき温度と、前回の洗い工程における加熱前の水温と、当該水温に追いだき温度を加算した後の水温(前回の洗い工程における加熱後の水温)とを表示部4に表示させる(
図10の表示部4F参照)。表示部4Fの場合、前回の洗濯での追いだき温度が約+15℃であり、前回の洗い工程における加熱前の水温が約15℃であり、前回の洗い工程における加熱後の水温が約30℃である。これらの温度についての情報を、「前回運転内容」ということにする。
【0059】
その後、ユーザによってスタートキー26がONに操作されると(ステップS2)、マイクロコンピューター51は、洗濯槽50内の洗濯物の負荷量の測定を開始する(ステップS3)。具体的には、マイクロコンピューター51は、回転ドラム7に一定の電力をかけ、回転ドラム7を、先ず、ある程度の回転数(たとえば65rpm)で回転させ、その後電力は一定のまま、たとえば140rpmまで回転数を上げて、衣類を回転ドラム7の内周面に貼り付けさせる。そして、図示しないタイマにより計測した、回転数が上述の65rpmから140rpmまで上昇するのに要した時間から、回転ドラム7にかかる負荷量、すなわち回転ドラム7内に収容された洗濯物の量(洗濯量)を測定する。負荷量は、洗濯物の洗濯に必要な洗剤量と関係しているので、負荷量測定中の間、マイクロコンピューター51は、洗剤量(または、前述した洗濯量)を測定中である旨を表示部4に表示させる(
図10の表示部4G参照)。
【0060】
その後、マイクロコンピューター51は、ステップS3での測定結果に基づいて洗濯物の負荷量を判定するとともに、当該負荷量に応じて必要な洗剤量を判定する(ステップS4)。なお、ここでの洗剤量は、負荷量毎に予め決められていて、ROM52に記憶されている。マイクロコンピューター51は、判定した洗剤量を表示部4(
図10の表示部4H参照)に表示させてから(ステップS5)、ユーザによる洗濯槽50内への洗剤の投入を待つ(ステップS6)。
【0061】
洗剤量が表示部4(
図10の表示部4H参照)に表示されてから1分経過すると(ステップS7でYES)、マイクロコンピューター51は、ユーザのよって追いだきキー37がONに操作されたか否かを確認する(ステップS8)。
【0062】
1分経過してもユーザによる追いだきキー37の操作(ON)がなければ(ステップS8でNO)、マイクロコンピューター51は、排水弁57を閉じた状態で給水弁56を開くとともに、今回のコース(この実施形態の場合、洗濯工程に係る洗濯機1の運転)が全て終了するまでに要する残時間(温水を用いない場合の残時間であり、「初期残時間」ということにする)を表示部4(
図10の表示部4I参照)に表示させる(ステップS9)。残時間は、各コースにおいて負荷量毎に予め算出されてROM52に記憶されており、マイクロコンピューター51は、ステップS9において、ステップS4で判定した負荷量に対応する残時間をROM52から取得して、表示部4に表示させる。
【0063】
残時間の表示後、マイクロコンピューター51は、洗い工程を開始する。今回のコースが全て終了すると、マイクロコンピューター51は、その旨を表示部4に表示させる(
図10の表示部4J参照)。
【0064】
一方、ユーザによって追いだきキー37がONに操作された場合には(ステップS8でYES)、マイクロコンピューター51は、ユーザによる追いだき温度の選択を、洗濯(洗い工程)の開始に先立って受け付けたことになる。マイクロコンピューター51は、選択された追いだき温度(ユーザが追いだきキー37を押した回数に応じた追いだき温度)と、当該追いだき温度に対応した目安時間とを、表示部4(
図10の表示部4K参照)に表示させる(ステップS10)。
【0065】
表示部4に追いだき温度と目安時間とが表示された状態で、ユーザによっておしえてキー37がONに操作されると(ステップS11でYES)、マイクロコンピューター51は、前述した前回運転内容を表示部4(
図10の表示部4L参照)に表示させる(ステップS12)。つまり、マイクロコンピューター51は、おしえてキー37(操作部5)が操作されたことに応じて、前回運転内容(前回の洗濯の際に選択された追いだき温度を含む)を表示部4に表示させる。よって、ユーザは、追いだき温度を選択する際に、表示部4に表示された前回の追いだき温度を目安にすることができるので、洗濯機1では、使い勝手の向上を図れる。前回運転内容が表示されてから所定時間(たとえば数秒)が経過すると、表示部4の表示が自動で切り替わり、追いだき温度と目安時間とが再表示されてもよい(
図10の表示部4K参照)。
【0066】
ステップS12において前回運転内容が表示部4に表示された場合、または、ステップS11においておしえてキー37が操作されなかった場合(ステップS11でNO)、つまり、少なくともステップS8で追いだきキー37が押された場合には、マイクロコンピューター51は、以下に述べる温水制御を実行する(ステップS13)。ちなみに、温水制御を実行する場合において基準となる当初の残時間(「基準残時間」ということにする)は、前述した初期残時間に、ステップS8で追いだきキー37で押された回数に応じた(ユーザに選択された追いだき温度に応じた)目安時間を加算して得られる時間である。厳密には、基準残時間は、温水ヒーター9による水の加熱を開始してから今回のコース(ここでは洗濯工程)が全て終了するまでに要する時間である。基準残時間は、追いだきキー37で押される度に、前述した手順でマイクロコンピューター51によって算出されてもよい。または、基準残時間は、負荷量毎(換言すれば負荷量に応じた水位毎)に、各追いだき温度に対応付けてROM52に記憶されていてもよい。つまり、負荷量(または当該負荷量の洗濯に必要な水位)がある値であって、選択された追いだき温度がいくつである場合に基準残時間がいくらであるのかが、ROM52に記憶されている。
【0067】
温水制御の一環として、
図8を参照して、マイクロコンピューター51は、まず、排水弁57を閉じた状態で給水弁56を開いて洗濯槽50への給水を開始する(ステップS21)。そして、マイクロコンピューター51は、給水中において、室温センサー54による室温の測定と水温センサー24による水温(給水弁56から洗濯槽50内に供給された水道水の温度)の測定とを開始する(ステップS22)。その際、マイクロコンピューター51は、水温測定中である旨を表示部4(
図10の表示部4M参照)に表示させる(ステップS23)。
【0068】
その後、マイクロコンピューター51は、給水によって洗濯槽50内の水位が測定水位に到達したか否かを、水位センサー53によって監視する(ステップS24)。ここでの測定水位とは、温水ヒーター9が完全に水没している水位であるとともに、洗濯槽50内の洗濯物が洗濯槽50内の水を目一杯吸収することによって、安定した状態(これ以上洗濯物が水を吸収しない状態)にある水位のことである。
【0069】
洗濯槽50内の水位が測定水位に到達すると(ステップS24でYES)、マイクロコンピューター51は、給水を停止し、その時点(水位が測定水位に到達した時点であり、以下では「現時点」という)における室温センサー54および水温センサー24のそれぞれの測定結果から、現時点の室温および水温を判定する(ステップS25)。
【0070】
その後、マイクロコンピューター51は、以下に述べる残時間補正制御を実行する(ステップS26)。
【0071】
残時間補正制御の一環として、
図9を参照して、マイクロコンピューター51は、ステップS25で判定した室温が15℃以下か否かを判断し(ステップS31)、室温が15℃以下であれば(ステップS31でYES)、室温が5℃以下か否かをさらに判断する(ステップS32)。室温が5℃以下であれば(ステップS32でYES)、マイクロコンピューター51は、以下の式(1)に基づいて補正時間X(単位は分)を算出し、残時間(前述した基準残時間)にX分の補正時間を追加すると判断して(ステップS33)、元の温水制御に戻る。室温が15℃以下であるものの5℃より高ければ(ステップS32でNO)、マイクロコンピューター51は、以下の式(2)に基づいて補正時間Y(単位は分)を算出し、残時間(基準残時間)にY分の補正時間を追加すると判断して(ステップS34)、元の温水制御に戻る。
【0072】
X=2×追いだき温度…式(1)
Y=1×追いだき温度…式(2)
なお、室温が15℃より高ければ(ステップS31でNO)、マイクロコンピューター51は、補正時間は0(零)として残時間補正制御を終えて、元の温水制御に戻る。
【0073】
図8に戻り、マイクロコンピューター51は、残時間補正制御を終えると、残時間補正制御で決定した補正時間を残時間(基準残時間)に追加して得られた補正後の残時間を、表示部4(
図10の表示部4I参照)に表示させる(ステップS27)。
【0074】
以上のように、マイクロコンピューター51は、ステップS8で追いだき温度の選択を受け付けると、ステップS13の温水制御において、水温センサー24によって検知された現時点の水温が追いだき温度だけ上昇するまで温水ヒーター9が洗濯槽50内の水を加熱して洗濯が終了するのに要する残時間(基準残時間または基準残時間に補正時間を追加した時間)を表示部4に表示させる(ステップS27)。
【0075】
つまり、洗濯機1では、水を加熱して温水を生成することに関して、温水の目標温度(加熱後の温水の温度)の選択を受け付けるのではなく、現時点の水温から加算される温度(追いだき温度)の選択を洗濯の開始に先立って受け付ける(ステップS8)。
【0076】
この場合、現時点の水温が追いだき温度だけ上昇するまで洗濯槽50内の水が加熱されて洗濯が終了するのに要する残時間は、追いだき温度の選択が受け付けられたことに応じて速やかに取得されて、表示部4に表示される。なお、ここでの残時間は、選択され得る追いだき温度毎(ここでは、+0℃〜+45℃の範囲における5℃おき)に予め計算されてROM52で記憶されていてもよいし、追いだき温度が選択される度にマイクロコンピューター51によって(測定した水位、室温および水温に基づいて)算出されてもよい。いずれにせよ、追いだき温度に基づく残時間は、温水の元となる冷水(ここでは水道水であるが、風呂水でもよい)の温度が季節によって変動したとしても、目標温度に基づく残時間よりは正確である。
【0077】
以上の結果、温水を用いて洗濯する構成の洗濯機1において、残時間を正確に把握できる。
【0078】
また、室温センサー54が検知した現時点の温度(室温)が一定温度(この実施例では、15℃や5℃)以下の場合に、マイクロコンピューター51は、ステップS26の残時間補正制御において、残時間(基準残時間)を(室温が一定温度より高いときの残時間よりも)長く補正する。つまり、洗濯機1の周囲の温度が一定温度以下の場合には、現時点の水温が追いだき温度だけ上昇するまでに通常より時間がかかること(水温の上昇が鈍いこと)を考慮して、残時間が長く補正されるので、洗濯機1では、残時間を一層正確に把握できる。なお、残時間補正制御では、前述した式(1)や(2)を用いて補正時間を算出している。これに代え、室温の範囲毎(0℃以上5℃未満といった5℃おきの範囲毎)に1℃あたりの加算時間が予め定められてROM52に記憶されていて、現時点の室温に対応する加算時間を基準室温(平均の室温)と現時点の室温との差に乗じて得られた値を、補正時間としてもよい。
【0079】
ステップS27において補正後の残時間が表示部4に表示された状態で、ユーザが追いだきキー37を押したとする。その場合、マイクロコンピューター51は、ユーザによって選択された追いだき温度と、現時点の水温(ステップS25で判定した水温)と、水温センサー24によって検知された現時点の水温に追いだき温度を加算して得られた温度(加熱後の水温であり、以下では「目標温度」という)とを表示部4に表示させる(
図10の表示部4N参照)。表示部4Nの場合、追いだき温度が約+15℃であり、現時点の水温(現在水温)が約15℃であり、目標温度が約30℃である。これにより、ユーザは、表示部4で目標温度を把握できるので、洗濯機1では、使い勝手の一層の向上を図れる。表示部4Nで表示されるこれらの温度についての情報を、「今回運転内容」ということにする。ちなみに、ユーザが追いだきキー37をさらに押すことで追いだき温度を再度変更し、残時間(基準残時間および補正後の基準残時間)が再計算されてもよい。また、表示部4に今回運転内容が表示された状態でユーザがおしえてキー31を押すと、マイクロコンピューター51は、表示部4に前回運転内容を表示させる(
図10の表示部4P参照)。
【0080】
そして、マイクロコンピューター51は、ステップS27で残時間の表示を開始した後(前述した再計算がない場合には)、加熱工程として、温水ヒーター9を駆動させて、洗濯槽50内の水を、水温が追いだき温度だけ上昇するまで(目標温度に到達するまで)加熱する(ステップS28)。なお、加熱工程では、洗濯槽50内の水温が場所によってばらつかないように、マイクロコンピューター51は、定期的に回転ドラム7を回転させる。
【0081】
洗濯槽50内の水温が追いだき温度だけ上昇して目標温度に到達すると、加熱工程を含む温水制御全体が終了し、マイクロコンピューター51は、
図7に示すように、洗い工程を開始する。
【0082】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0083】
たとえば、前述した目標温度が所定の上限温度(たとえば50℃)を超えそうであれば、マイクロコンピューター51は、当該目標温度が上限温度以下になるように、残時間を短く補正してもよい。具体的には、補正の一例として、温水ヒーター9の駆動時間(換言すれば水の加熱時間)を強制的に所定時間短くすることが挙げられる。このように残時間が補正されることによって、(現時点の水温に追いだき温度を加算して得られた)目標温度が必要以上に高熱にならないようにすることができるので、洗濯機1では、使い勝手の一層の向上を図れる。