【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、構造
式R1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物が、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物の共重合用反応促進剤として使用される。本発明の電気絶縁テープ、好ましくはマイカ及び/又は酸化アルミニウムを含む電気絶縁テープは、構造式R
1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+(式中、R
1及びR
2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物を含む。電気伝導体用の本発明の電気絶縁体は、本発明の電気絶縁テープを含み、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物が、構造式R
1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+(式中、R
1及びR
2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物の存在下で硬化される。
【0008】
回転電気機械のコイル端用の本発明の固結体は、構造式R
1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+を有する化合物を含んだ多孔質で電気的に非伝導性の本体を含み、構造式R
1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+を有する化合物の存在下で硬化させたカルボン酸無水物とオキシランとの混合物が含浸されており、式中、R
1及びR
2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である。
【0009】
構造式R
1CO
2-R
2CO
2-Zn
2+を有する化合物は、均一な品質で市販されており且つ/又は均一な品質で調製可能である。したがって、反応促進剤としての化合物の使用は、バッチごとに、混合物の本質的に同一の共重合をもたらすことが、有利な手法で確実にされる。更に、化合物を含む電気絶縁テープは、化合物の均一な品質により、同様に均一な含浸特性を有し、その結果、混合物を均一な品質で電気絶縁テープに含浸させることが有利に可能になる。同一の手法で進行する共重合及び電気絶縁テープの均一な含浸の結果、電気絶縁体及び固結体を均質な品質で生成することが有利に可能になる。
【0010】
電気絶縁体は、例えば、発電機用の主絶縁材として提供されてもよい。主絶縁材は、発電機のコイル端の領域に設けられることも考えられる。酸化アルミニウムがマイカの代わりに又はマイカと共に使用される場合、その結果は、熱伝導率がより高い主絶縁材となり、その結果、主絶縁材の温度を低く保つことが可能になり、したがってその寿命は有利に長くなる。
【0011】
好ましくは、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、C
6アルキル、C
7アルキル、C
8アルキル、C
9アルキル又はC
10アルキルである。意外にも、混合物は、ナフテン酸亜鉛を有する場合よりも、これらのアルキル基を有する反応促進剤を含んだ電気絶縁テープに、より素早く且つ均一に含浸させることが可能であり、その結果、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物を硬化した後に、均質な電気絶縁体が有利に形成される。同じことが、固結体にもいえる。
【0012】
R
1及びR
2は、好ましくは、それぞれ独立して、n-ヘプチル、1-メチル-n-ヘキシル、2-メチル-n-ヘキシル、3-メチル-n-ヘキシル、4-メチル-n-ヘキシル、5-メチル-n-ヘキシル、3-エチル-n-ペンチル、2-エチル-n-ペンチル、1-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ペンチル、2,2-ジメチル-n-ペンチル、3,3-ジメチル-n-ペンチル、4,4-ジメチル-n-ペンチル、1,2-ジメチル-n-ペンチル、1,3-ジメチル-n-ペンチル、1,4-ジメチル-n-ペンチル、2,3-ジメチル-n-ペンチル、2,4-ジメチル-n-ペンチル、3,4-ジメチル-n-ペンチル、1,1,2-トリメチル-n-ブチル、1,1,3-トリメチル-n-ブチル、1,2,3-トリメチル-n-ブチル、1,2,2-トリメチル-n-ブチル、2,2,3-トリメチル-n-ブチル、2,3,3-トリメチル-n-ブチル、1,3,3-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1-メチル-n-ブチル、1-エチル-2-メチル-n-ブチル、1-エチル-3-メチル-n-ブチル、2-エチル-1-メチル-n-ブチル、2-エチル-2-メチル-n-ブチル、2-エチル-3-メチル-n-ブチル、1-イソプロピル-n-ブチル、2-イソプロピル-n-ブチル、1,1,2,2-テトラメチル-n-プロピル、1,1-ジエチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-1-エチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-1-エチル-n-プロピル、1-イソプロピル-1-メチル-n-プロピル又は1-イソプロピル-2-メチル-n-プロピル又はネオノニルであり、好ましくは第3級C
9アルキル基であり、より好ましくは、1,1-ジメチル-n-ヘプチル、1,1,2-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,3-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,4-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,5-トリメチル-n-ヘキシル、1-エチル-1-メチル-n-ヘキシル、1,2-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,3-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,4-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-2-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-3-エチル-n-ペンチル、1,1,2,2-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,2,3-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,2,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,3,3-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,3,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,4,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1-ジエチル-n-ペンチル、1-メチル-1-n-プロピル-n-ペンチル、1-メチル-1-イソプロピル-n-ペンチル、1,1,2,2,3-ペンタメチル-n-ブチル、1,1,2,3,3-ペンタメチル-n-ブチル、1-エチル-1,2,2-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1,2,3-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1,3,3-トリメチル-n-ブチル、2-エチル-1,1,2-トリメチル-n-ブチル、2-エチル-1,1,3-トリメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1,3-ジメチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1-エチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1,2-ジメチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1,3-ジメチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1-エチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1,1-ジエチル-2-メチル-n-ブチル、1,1-ジエチル-3-メチル-n-ブチル、1,2-ジエチル-1-メチル-n-ブチル、1-メチル-1-tert-ブチル-n-ブチル、1,1-ジエチル-2,2-ジメチル-n-プロピル、1-イソプロピル-1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1,1-ジイソプロピル-n-プロピル、又は6,6-ジメチル-n-ヘプチルである。
【0013】
これらの化合物には、例えばオクタン酸亜鉛及びネオデカン酸亜鉛が含まれ、これらは例えば、OMG Borchers(ドイツ)からBorchikat 15、Borchikat 22、Soligen Zinc 11/12、Octa-Soligen-Zinc 22という商標名で市販されており、ナフテン酸亜鉛に比べて高純度のものである。
【0014】
カルボン酸無水物は、好ましくは環状カルボン酸無水物であり、特に、無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、及び/又は無水ヘキサヒドロフタル酸である。オキシランは、好ましくはビスオキシランであり、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び/又はビスフェノールFジグリシジルエーテルである。それは好ましくはスチレンであり、好ましくは、混合物に対して0質量%から約60質量%の割合のスチレンである。約3%から約10%のスチレンが特に好ましい。反応性希釈剤は、電気絶縁テープ及び/又は固結体のより良好な含浸性に向けて、混合物の粘度を有利に低下させ、同様に共重合で変換される。
【0015】
電気絶縁テープには、好ましくはカルボン酸無水物とオキシランとの混合物を含浸させた。
【0016】
好ましくは、電気絶縁体は、部分放電抵抗性のナノスケール粒子を、好ましくはカルボン酸無水物、オキシラン及び上記粒子の混合物に対して2質量%から10質量%の割合で、含む。その結果、電気絶縁体の部分放電抵抗は増大し、その寿命を有利に延長する。粒子は、無機粒子、特に、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び/又は酸化アルミニウムを含む粒子であることが好ましい。好ましくは、粒子の平均粒子直径は1nmから50nmの間である。電気絶縁体の生成のため、電気絶縁テープの含浸の前に、粒子を、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物に添加する。粒子とアルキルアルコキシシラン、特に、メチル-トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及び/又はトリメチルメトキシシランとを反応させることによる、粒子表面のシラン処理を通して、粒子表面を有機親和性化することが可能になり、その結果、粒子の望ましくない凝塊形成をなすことなく、粒子は、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物に有利に、より良好に混和するようになる。しかし、混合物中の粒子は同様に共重合を加速させる。ナノ粒子が混合物中に存在する場合、電気絶縁体の均質な形成は、電気絶縁テープに反応促進剤を提供することが必要不可欠である。
【0017】
好ましくは、電気絶縁テープは、多孔質の電気的に非伝導性の支持構造、特に、編地、不織布、発泡体、特に開放気孔形態、ガラス・ニット、ガラス・ロービング、織布、及び/又は樹脂マットを有する。支持構造の多孔率は、混合物を含浸させることができるようなものである。支持構造は、ポリエステル、特にDacron、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましくは含む。支持構造は、好ましくは絶縁紙に、特にマイカ及び/又は酸化アルミニウムを含む絶縁紙に結合されている。絶縁紙は、好ましくは、混合物を含浸させることができるような多孔率を有する。
【0018】
固結体の本体は、好ましくは、編地、不織布、発泡体、特に開放気孔形態、ガラス・ニット、ガラス・ロービング、織布、及び/又は樹脂マットを含む。好ましくは、固結体は、電気機械の、特にモーター又は発電機のコイル端の領域に及びコイル端の電気伝導体の間に設けられる。好ましくは、固結体は、コイル端の剛化をもたらすようにコイル端の領域に配置構成され、その結果、コイル端は、電気機械の領域で誘導された振動に対して感受性が低くなり、したがって長い寿命を持つ。固結体の生成では、固結体は電気絶縁体と同時に、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物を含浸させることができる。好ましくは、固結体の本体は、ポリエステル、特にDacron、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。