特許第6174164号(P6174164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174164共重合用反応促進剤、電気絶縁テープ、電気絶縁体、及び固結体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174164
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】共重合用反応促進剤、電気絶縁テープ、電気絶縁体、及び固結体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20170724BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20170724BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08G59/68
   H01B17/56 A
   H01B3/40 P
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-555657(P2015-555657)
(86)(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公表番号】特表2016-511302(P2016-511302A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】EP2014051330
(87)【国際公開番号】WO2014118077
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】13153860.5
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ブロックシュミット
(72)【発明者】
【氏名】フリートヘルム・ポールマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ライナー
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−026426(JP,A)
【文献】 特開昭60−026441(JP,A)
【文献】 特開平01−215821(JP,A)
【文献】 特表平04−502176(JP,A)
【文献】 特開平05−097971(JP,A)
【文献】 特開昭49−105900(JP,A)
【文献】 特開昭54−029398(JP,A)
【文献】 特開昭54−065759(JP,A)
【文献】 特開2006−057017(JP,A)
【文献】 特開2009−191239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08G 59/68
H01B 3/40
H01B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸無水物とオキシランとの混合物の共重合用反応促進剤としての、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ独立してn-ヘプチル又はネオノニルである)を有する化合物の使用であって、
前記カルボン酸無水物と前記オキシランとの混合物が、反応性希釈剤を含む、使用
【請求項2】
前記カルボン酸無水物が、環状カルボン酸無水物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記オキシランが、ビスオキシランである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ独立してn-ヘプチル又はネオノニルである)を有する化合物を含み、
カルボン酸無水物とオキシランとの混合物を含浸させており、
前記カルボン酸無水物と前記オキシランとの混合物が、反応性希釈剤を含む、電気絶縁テープ。
【請求項5】
請求項4に記載の電気絶縁テープを含み、
前記カルボン酸無水物と前記オキシランとの混合物が、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物の存在下で硬化されている、
電気伝導体用の電気絶縁体。
【請求項6】
部分放電抵抗性のナノスケール粒子を含む、請求項5に記載の電気絶縁体。
【請求項7】
構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+を有する化合物を含む、多孔質であり電気的に非伝導性の本体を有し、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+を有する化合物の存在下で硬化されたカルボン酸無水物とオキシランとの混合物が含浸されており、式中、R1及びR2は、それぞれ独立してn-ヘプチル又はネオノニルであり、前記カルボン酸無水物と前記オキシランとの混合物が、反応性希釈剤を含む、回転電気機械のコイル端用の固結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合用反応促進剤、反応促進剤を含む電気絶縁テープ、電気絶縁テープを含む電気絶縁体、及び反応促進剤を含む固結体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械、例えばモーター及び発電機は、電気伝導体、主絶縁材及び積層固定子鉄心を含む。主絶縁材には、伝導体を互いから、積層固定子鉄心から、及び環境から、電気的に絶縁するという目的がある。電気機械の領域では、部分放電がスパークを形成する可能性があり、このスパークが、主絶縁材の「トリーイング」チャネルと呼ばれるものを発生させる可能性がある。「トリーイング」チャネルの結果、主絶縁材内を通る電気的スパークオーバー(sparkover)が生じる可能性がある。部分放電に対する障壁は、主絶縁材にマイカを使用することによって実現され、このマイカは、高い部分放電抵抗を有している。マイカは、数百マイクロメートルから数ミリメートルまでの従来の粒径を有する小板形態中のマイカ粒子の形で使用され、マイカ粒子は、マイカ紙が得られるように加工される。強度を増大させるため且つ加工性を増大させるために、支持構造及びマイカ紙を有する電気絶縁テープが使用される。
【0003】
主絶縁材を生成するには、電気絶縁テープを伝導体に巻き付け、次いで合成樹脂を含浸させる。合成樹脂を、反応促進剤、従来のナフテン酸亜鉛、即ちシクロペンタン酸とシクロヘキサン酸との混合物の亜鉛塩の存在下で硬化する。混合物は、特定の温度範囲内での原油の蒸留で得られ、このことは、原油の種々のバッチから開始することによって混合物がバッチごとに異なる組成のものになり得ることもあるという効果を有する場合がある。その結果、合成樹脂の硬化特性も同様にバッチごとに変わる可能性がある。したがってナフテン酸亜鉛の各バッチは、複雑な手法で、例えば、そのpH、その酸価及びその粘度を調節することによって、調製する必要がある。
【0004】
EP 0 198 195 A2は、反応促進剤としてのオクチル酸亜鉛について記載している。US 4 178 274 Aは、反応促進剤としての2-エチルヘキサン酸亜鉛について記載している。US 3 449 641 Aは、エポキシ樹脂の存在下でのオクタン酸亜鉛を開示している。GB 1 557 960 Aは、エポキシ樹脂の存在下での2-エチルヘキサン酸亜鉛について記載している。US 6 190 775 B1は、可撓性絶縁テープについて記載している。GB 2 019 778 Aは、含浸マイカ・フィルムを開示している。EP 1 850 460 A2は、エポキシ樹脂の存在下でのナフテン酸亜鉛を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 0 198 195 A2
【特許文献2】US 4 178 274 A
【特許文献3】US 3 449 641 A
【特許文献4】GB 1 557 960 A
【特許文献5】US 6 190 775 B1
【特許文献6】GB 2 019 778 A
【特許文献7】EP 1 850 460 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、均一な品質で得ることができる共重合用反応促進剤、反応促進剤を含む電気絶縁テープ、電気絶縁テープを含む電気絶縁体、及び反応促進剤を含む固結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物が、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物の共重合用反応促進剤として使用される。本発明の電気絶縁テープ、好ましくはマイカ及び/又は酸化アルミニウムを含む電気絶縁テープは、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物を含む。電気伝導体用の本発明の電気絶縁体は、本発明の電気絶縁テープを含み、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物が、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+(式中、R1及びR2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である)を有する化合物の存在下で硬化される。
【0008】
回転電気機械のコイル端用の本発明の固結体は、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+を有する化合物を含んだ多孔質で電気的に非伝導性の本体を含み、構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+を有する化合物の存在下で硬化させたカルボン酸無水物とオキシランとの混合物が含浸されており、式中、R1及びR2は、それぞれ直鎖又は分枝状アルキル基である。
【0009】
構造式R1CO2-R2CO2-Zn2+を有する化合物は、均一な品質で市販されており且つ/又は均一な品質で調製可能である。したがって、反応促進剤としての化合物の使用は、バッチごとに、混合物の本質的に同一の共重合をもたらすことが、有利な手法で確実にされる。更に、化合物を含む電気絶縁テープは、化合物の均一な品質により、同様に均一な含浸特性を有し、その結果、混合物を均一な品質で電気絶縁テープに含浸させることが有利に可能になる。同一の手法で進行する共重合及び電気絶縁テープの均一な含浸の結果、電気絶縁体及び固結体を均質な品質で生成することが有利に可能になる。
【0010】
電気絶縁体は、例えば、発電機用の主絶縁材として提供されてもよい。主絶縁材は、発電機のコイル端の領域に設けられることも考えられる。酸化アルミニウムがマイカの代わりに又はマイカと共に使用される場合、その結果は、熱伝導率がより高い主絶縁材となり、その結果、主絶縁材の温度を低く保つことが可能になり、したがってその寿命は有利に長くなる。
【0011】
好ましくは、R1及びR2は、それぞれ独立して、C6アルキル、C7アルキル、C8アルキル、C9アルキル又はC10アルキルである。意外にも、混合物は、ナフテン酸亜鉛を有する場合よりも、これらのアルキル基を有する反応促進剤を含んだ電気絶縁テープに、より素早く且つ均一に含浸させることが可能であり、その結果、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物を硬化した後に、均質な電気絶縁体が有利に形成される。同じことが、固結体にもいえる。
【0012】
R1及びR2は、好ましくは、それぞれ独立して、n-ヘプチル、1-メチル-n-ヘキシル、2-メチル-n-ヘキシル、3-メチル-n-ヘキシル、4-メチル-n-ヘキシル、5-メチル-n-ヘキシル、3-エチル-n-ペンチル、2-エチル-n-ペンチル、1-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-n-ペンチル、2,2-ジメチル-n-ペンチル、3,3-ジメチル-n-ペンチル、4,4-ジメチル-n-ペンチル、1,2-ジメチル-n-ペンチル、1,3-ジメチル-n-ペンチル、1,4-ジメチル-n-ペンチル、2,3-ジメチル-n-ペンチル、2,4-ジメチル-n-ペンチル、3,4-ジメチル-n-ペンチル、1,1,2-トリメチル-n-ブチル、1,1,3-トリメチル-n-ブチル、1,2,3-トリメチル-n-ブチル、1,2,2-トリメチル-n-ブチル、2,2,3-トリメチル-n-ブチル、2,3,3-トリメチル-n-ブチル、1,3,3-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1-メチル-n-ブチル、1-エチル-2-メチル-n-ブチル、1-エチル-3-メチル-n-ブチル、2-エチル-1-メチル-n-ブチル、2-エチル-2-メチル-n-ブチル、2-エチル-3-メチル-n-ブチル、1-イソプロピル-n-ブチル、2-イソプロピル-n-ブチル、1,1,2,2-テトラメチル-n-プロピル、1,1-ジエチル-n-プロピル、2,2-ジメチル-1-エチル-n-プロピル、1,2-ジメチル-1-エチル-n-プロピル、1-イソプロピル-1-メチル-n-プロピル又は1-イソプロピル-2-メチル-n-プロピル又はネオノニルであり、好ましくは第3級C9アルキル基であり、より好ましくは、1,1-ジメチル-n-ヘプチル、1,1,2-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,3-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,4-トリメチル-n-ヘキシル、1,1,5-トリメチル-n-ヘキシル、1-エチル-1-メチル-n-ヘキシル、1,2-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,3-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,4-ジメチル-1-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-2-エチル-n-ペンチル、1,1-ジメチル-3-エチル-n-ペンチル、1,1,2,2-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,2,3-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,2,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,3,3-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,3,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1,4,4-テトラメチル-n-ペンチル、1,1-ジエチル-n-ペンチル、1-メチル-1-n-プロピル-n-ペンチル、1-メチル-1-イソプロピル-n-ペンチル、1,1,2,2,3-ペンタメチル-n-ブチル、1,1,2,3,3-ペンタメチル-n-ブチル、1-エチル-1,2,2-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1,2,3-トリメチル-n-ブチル、1-エチル-1,3,3-トリメチル-n-ブチル、2-エチル-1,1,2-トリメチル-n-ブチル、2-エチル-1,1,3-トリメチル-n-ブチル、1,2-ジメチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1,3-ジメチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1-エチル-1-n-プロピル-n-ブチル、1,2-ジメチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1,3-ジメチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1-エチル-1-イソプロピル-n-ブチル、1,1-ジエチル-2-メチル-n-ブチル、1,1-ジエチル-3-メチル-n-ブチル、1,2-ジエチル-1-メチル-n-ブチル、1-メチル-1-tert-ブチル-n-ブチル、1,1-ジエチル-2,2-ジメチル-n-プロピル、1-イソプロピル-1,2,2-トリメチル-n-プロピル、1,1-ジイソプロピル-n-プロピル、又は6,6-ジメチル-n-ヘプチルである。
【0013】
これらの化合物には、例えばオクタン酸亜鉛及びネオデカン酸亜鉛が含まれ、これらは例えば、OMG Borchers(ドイツ)からBorchikat 15、Borchikat 22、Soligen Zinc 11/12、Octa-Soligen-Zinc 22という商標名で市販されており、ナフテン酸亜鉛に比べて高純度のものである。
【0014】
カルボン酸無水物は、好ましくは環状カルボン酸無水物であり、特に、無水フタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、及び/又は無水ヘキサヒドロフタル酸である。オキシランは、好ましくはビスオキシランであり、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及び/又はビスフェノールFジグリシジルエーテルである。それは好ましくはスチレンであり、好ましくは、混合物に対して0質量%から約60質量%の割合のスチレンである。約3%から約10%のスチレンが特に好ましい。反応性希釈剤は、電気絶縁テープ及び/又は固結体のより良好な含浸性に向けて、混合物の粘度を有利に低下させ、同様に共重合で変換される。
【0015】
電気絶縁テープには、好ましくはカルボン酸無水物とオキシランとの混合物を含浸させた。
【0016】
好ましくは、電気絶縁体は、部分放電抵抗性のナノスケール粒子を、好ましくはカルボン酸無水物、オキシラン及び上記粒子の混合物に対して2質量%から10質量%の割合で、含む。その結果、電気絶縁体の部分放電抵抗は増大し、その寿命を有利に延長する。粒子は、無機粒子、特に、二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び/又は酸化アルミニウムを含む粒子であることが好ましい。好ましくは、粒子の平均粒子直径は1nmから50nmの間である。電気絶縁体の生成のため、電気絶縁テープの含浸の前に、粒子を、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物に添加する。粒子とアルキルアルコキシシラン、特に、メチル-トリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及び/又はトリメチルメトキシシランとを反応させることによる、粒子表面のシラン処理を通して、粒子表面を有機親和性化することが可能になり、その結果、粒子の望ましくない凝塊形成をなすことなく、粒子は、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物に有利に、より良好に混和するようになる。しかし、混合物中の粒子は同様に共重合を加速させる。ナノ粒子が混合物中に存在する場合、電気絶縁体の均質な形成は、電気絶縁テープに反応促進剤を提供することが必要不可欠である。
【0017】
好ましくは、電気絶縁テープは、多孔質の電気的に非伝導性の支持構造、特に、編地、不織布、発泡体、特に開放気孔形態、ガラス・ニット、ガラス・ロービング、織布、及び/又は樹脂マットを有する。支持構造の多孔率は、混合物を含浸させることができるようなものである。支持構造は、ポリエステル、特にDacron、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を好ましくは含む。支持構造は、好ましくは絶縁紙に、特にマイカ及び/又は酸化アルミニウムを含む絶縁紙に結合されている。絶縁紙は、好ましくは、混合物を含浸させることができるような多孔率を有する。
【0018】
固結体の本体は、好ましくは、編地、不織布、発泡体、特に開放気孔形態、ガラス・ニット、ガラス・ロービング、織布、及び/又は樹脂マットを含む。好ましくは、固結体は、電気機械の、特にモーター又は発電機のコイル端の領域に及びコイル端の電気伝導体の間に設けられる。好ましくは、固結体は、コイル端の剛化をもたらすようにコイル端の領域に配置構成され、その結果、コイル端は、電気機械の領域で誘導された振動に対して感受性が低くなり、したがって長い寿命を持つ。固結体の生成では、固結体は電気絶縁体と同時に、カルボン酸無水物とオキシランとの混合物を含浸させることができる。好ましくは、固結体の本体は、ポリエステル、特にDacron、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について、4つの実施例により以下に詳細に説明する。
【0020】
第1の実施例では、電気絶縁体を下記の通り生成する:マイカ紙を含む多孔質の、したがって含浸性の電気絶縁テープに、ネオデカン酸亜鉛を溶媒、特にナフサに溶かした溶液を含浸させる。含浸に対する可能性ある代替例は、ロール塗布、噴霧、浸漬、散水、2点間法、及び/又はキス塗布法である。その後、溶媒を、特に熱を供給することによって且つ/又は真空乾燥によって、電気絶縁テープから除去する。電気絶縁テープを電気伝導体に巻き付ける。好ましくはそのような巻線を有する電気伝導体を、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと無水ヘキサヒドロフタル酸との化学量論的な混合物の浴に導入する。電気絶縁テープと、電気絶縁テープの個々の巻線の間の空洞に、真空を印加しながらVPI(vacuum pressure impregnation)(真空圧含浸)プロセスにおいて浴内で混合物を含浸させる。その後、混合物を、圧力を加えることによってVPIプロセスで硬化し、したがって電気絶縁体が完成する。
【0021】
第2の実施例では、電気絶縁体を下記の通り生成する:多孔質マイカ紙を、接着剤によって、PETから作製された多孔質樹脂マットに結合し、このようにして電気絶縁テープを生成する。n-オクタン酸亜鉛をナフサに溶かした溶液を、電気絶縁テープに噴霧し、次いでナフサを、真空乾燥によって電気絶縁テープから除去する。電気絶縁テープを電気伝導体に巻き付け、好ましくはそのような巻線を有する電気伝導体を、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと無水メチルヘキサヒドロフタル酸との化学量論的な混合物の浴に導入する。混合物の粘度を低減させるため、混合物は同様に、この混合物に対して10質量パーセントのスチレンを含む。電気絶縁テープと、電気絶縁テープの個々の巻線の間の空洞とに、真空を印加しながらVPIプロセスにおいて浴内で混合物を含浸させる。その後、混合物を、圧力を加えることによってVPIプロセスで硬化し、したがって電気絶縁体が完成する。
【0022】
第3の実施例では、電気絶縁紙を下記の通り生成する:多孔質マイカ紙を、接着剤によりガラス・ニットに結合し、このようにして電気絶縁テープを生成する。電気絶縁テープに、n-オクタン酸亜鉛をナフサに溶かした溶液を含浸させ、次いで熱を供給することによって、ナフサを電気絶縁テープから除去する。電気絶縁テープを電気伝導体に巻き付け、そのような巻線を有する電気伝導体を、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと無水メチルヘキサヒドロフタル酸との化学量論的な混合物の浴に導入する。混合物は同様に、平均粒子直径が50nmであり割合が混合物に対して3質量パーセントである二酸化チタンの粒子を含む。混合物の粘度を低減させるため、混合物は、この混合物に対して10質量パーセントのスチレンも含む。電気絶縁テープと、電気絶縁テープの個々の巻線の間の空洞とに、真空を印加しながらVPIプロセスにおいて浴内で混合物を含浸させる。その後、混合物を、圧力を加えることによってVPIプロセスで硬化し、したがって電気絶縁体が完成する。
【0023】
第4の実施例では、固結体を下記の通り生成する:PETから作製された多孔質の、したがって含浸性の織布に、ネオデカン酸亜鉛を溶媒、特にナフサに溶かした溶液を含浸させる。その後、溶媒を、真空乾燥することによって織布から除去する。織布をその後、電気機械のコイル端に巻き付ける。電気機械をコイル端と一緒に、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと無水ヘキサヒドロフタル酸との化学量論的な混合物の浴に導入する。織布に、真空を印加しながらVPIプロセスにおいて浴内で混合物を含浸させる。その後、混合物を、圧力を加えることによりVPIプロセスで硬化し、したがって電気絶縁体が完成する。このように完成した固結体は、コイル端の剛化をもたらし、その結果、電気機械の動作の過程で振動する傾向が低下するようになる。
【0024】
本発明を、好ましい実施例により例示し詳述してきたが、本発明は、開示した実施例により制限されず、当業者であれば、本発明の保護範囲から逸脱することなく、それらから、その他の変形例を導くことができる。