(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イヤホン内にキャビティを設け、マイクロホンを前記キャビティ内に取付けるステップであって、前記キャビティの口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、前記イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着する前記イヤホンハウジングの部分にあり、前記イヤホンハウジングにおける前記キャビティの口と密着する位置に孔を設け、前記イヤホンが装着されると、前記キャビティと、前記孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成されるようにするステップと、
前記イヤホンを装着して、前記マイクロホンによって、前記キャビティ内の圧力変化により発生した信号を採集するステップと、
前記イヤホンに加速度センサを設けるステップと、
前記イヤホンを装着して、前記加速度センサによって装着者の体動により発生した信号を採集するステップと、
前記加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、前記マイクロホンにより採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を得るステップと、
前記マイクロホンにより採集された信号から前記推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得るステップと、
前記心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行うステップと
を含む、イヤホンに適用される心拍数検出方法。
前記マイクロホンにより採集された信号から前記推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る前に、前記マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行い、ローパスフィルタリング信号を得るステップを更に含み、
前記マイクロホンにより採集された信号から前記推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る前記ステップは、具体的には、前記ローパスフィルタリング信号から前記推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る処理を含むものである請求項1に記載の方法。
前記加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、前記マイクロホンにより採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を得る前記ステップは、
前記加速度センサにより採集された信号と、前記心拍数と関連付けられる信号と、予め設定された適応アルゴリズムとにより適応フィルタパラメータを算出する処理と、
前記適応フィルタパラメータにより、前記加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリングを行って、前記推定信号を得る処理と
を含む請求項1に記載の方法。
前記マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行い、ローパスフィルタリング信号を得て、前記減算手段に出力するためのローパスフィルタを更に含み、
前記減算手段は、前記ローパスフィルタリング信号から前記推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得て、前記心拍数検出手段に出力するために用いられる、請求項7に記載のイヤホン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施例を更に詳しく説明する。図面には、本発明の例示的な実施例が示されているが、本発明は、様々の形で実現可能であり、ここで述べた実施例に限定されるものではないと理解すべきである。また、逆に、これらの実施例を提供するのは、本発明をより十分に理解できるとともに、本発明の範囲を当業者が十分に理解できるようにするためでもある。
【0014】
図1は、本発明の一つの実施例における心拍数を検出可能なイヤホンの構造模式図である。
図1に示すように、この心拍数を検出可能なイヤホン100は、心拍数検出手段140、イヤホン内に設けられたキャビティ110、及び、キャビティ110内に取付けられたマイクロホン120を含み、
ここで、キャビティ110の口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティ110の口と密着する位置に孔が設けられ、イヤホンが装着されると、キャビティと、孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成され、
マイクロホン120は、イヤホンが装着されたとき、キャビティ110内の圧力変化により発生した信号を採集するために用いられ、
心拍数検出手段140は、マイクロホン120により採集された信号に基づいて心拍数検出を行うために用いられる。
【0015】
図1に示す心拍数を検出可能なイヤホン100において、イヤホン100内に小キャビティ110を設けてマイクロホン120を配置し、小キャビティ110と耳介とによって密閉空間を形成することが可能であるため、外部雑音の干渉が低減されるとともに、マイクロホン120により採集された信号情報が強化された。
【0016】
本発明の一つの実施例において、心拍数検出手段140は、フィルタリング後のマイクロホンにより採集された信号の周期を検出し、検出された信号の周期の逆数から心拍数を得るために用いられる。
【0017】
従来のイヤホンにより心拍数を検出する技術において、通常、マイクロホンは、イヤホンにおいて耳道と真向いになる位置に直接に配置され、鼓膜振動により発生した耳腔内の圧力変化情報を採集するために用いられるが、イヤホンと耳道とによって形成された空間が大きく、耳道内に気体の漏れを引き起こしてしまうため、マイクロホンにより採集された圧力変化情報が非常に弱くなり、また、イヤホンが耳道全体を占有できないことが多く、マイクロホンを直接にイヤホンに配置すると、外部雑音に干渉されてしまう。そのため、本発明の
図1に示すイヤホンには、別のマイクロホンの取付け方式が設計されており、具体的には、
図2A〜2Cに示す。
【0018】
図2Aは、本発明の一つの実施例におけるキャビティ110が設けられたイヤホン100の側面模式図である。
図2Bは、本発明の一つの実施例におけるキャビティ110が設けられたイヤホン100の背面模式図である。
図2Cは、本発明の一つの実施例におけるキャビティ110が設けられたイヤホン100の側面断面図である。心拍に関連する有用な信号をより好適に採集するために、本発明は、マイクロホンを配置するための小キャビティを設計している。
図2A及び
図2Bにおいて、図中の破線に示す範囲は、イヤホン内部に形成されたキャビティ110の位置を模式的に示したものである。
図2Cを参照すると、キャビティ110の開口がイヤホンハウジングと密着している。これで分かるように、当該実施例において、キャビティ110が、イヤホン縁部における耳介にしっかり密着した部位に位置し、イヤホンは、キャビティと密着した部位に孔111が設けられ、イヤホンが装着されると、この開孔111が耳介と緊密に密着し、これにより、キャビティ110と、しっかり密着した耳介部分とによって密閉空間が構成される。マイクロホンを当該キャビティ110に取付けると、耳介壁の収縮振動がキャビティ110内の圧力変化を起こすため、マイクロホンがキャビティ110内の圧力変化情報を採集できるようになり、当該情報は、ある程度心臓の拍動周波数を反映しているため、これにより心拍数検出を行うことができる。
【0019】
物理学によると、密閉空間(温度を考慮せず)では、プレッシャーと体積とが反比例し、つまり、体積が小さいほどプレッシャーが大きくなり、一定の面積に作用する圧力も大きくなる。ユーザがイヤホンを装着すると、耳道内に密閉空間が形成され、血管の脈圧変動により耳壁の収縮を起こすため、キャビティ内に一定の圧力変化が発生し、当該圧力変化信号がマイクロホンに検出されることになる。一般的に、血管の脈圧変動は非常に弱いので、密閉空間が大きいと、マイクロホンにより検出される圧力変化は小さくなる。マイクロホンにより検出される圧力変化の強度を増加するために、本実施例は、マイクロホンを密閉的な小キャビティ内に配置し、小キャビティを耳道にしっかり密着するようにしており、血管の脈圧変動により耳壁に収縮振動が発生し、この振動による圧力変化が小キャビティ内のマイクロホンにより検出されることになる。また、小キャビティの設計により、外部干渉信号の影響を低減することができる。
【0020】
図3は、本発明の別の実施例における心拍数を検出可能なイヤホンの構造模式図である。
図3に示すように、当該心拍数を検出可能なイヤホン300は、フィルタリング手段330、心拍数検出手段340、イヤホン内に設けられたキャビティ310、及び、キャビティ310内に取付けられたマイクロホン320を含み、
ここで、キャビティ310の口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティ310の口と密着する位置に孔が設けられ、イヤホンが装着されると、キャビティと、孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成され、
マイクロホン320は、イヤホンが装着されたとき、キャビティ310内の圧力変化により発生した信号を採集して、当該信号をフィルタリング手段130に出力するために用いられ、
フィルタリング手段330は、マイクロホン320により採集された信号に対してフィルタリング処理を行い、フィルタリング後の信号を得て、前記心拍数検出手段340に出力するために用いられる。ここで、フィルタリング手段が、マイクロホン320により採集された信号に対してフィルタリングを行うのは、干渉雑音による心拍数検出への影響を除去するためである。
心拍数検出手段340は、フィルタリング後の信号に基づいて心拍数検出を行うために用いられる。
【0021】
本発明の一つの実施例において、心拍数検出手段340は、心拍数と関連付けられる信号の周期を検出し、検出された信号の周期の逆数から心拍数を得るために用いられる。例えば、心拍数検出手段340は、従来の自己相関法、閾値法等により、心拍数と関連付けられる信号の周期を検出することが可能である。
【0022】
本発明の一つの実施例において、
図3に示すフィルタリング手段330は、ローパスフィルタを含み、当該ローパスフィルタは、マイクロホン320により採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行うことで、高周波干渉信号をフィルタアウトするために用いられる。これは、脈波振動の周波数が低く(0.3Hz〜3Hz程度)、外部雑音の周波数が高いため、この特徴に基づいて、ローパスフィルタにより外部高周波雑音の影響を除去できるからである。例えば、ローパスフィルタとしては、遮断周波数が5HzであるFIRフィルタ等を選択してもよい。
【0023】
図3に示すイヤホンにおいては、ローパスフィルタを用いて、マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行う。
図3に示すように、まず、小キャビティ内におけるマイクロホンにより、キャビティ内における圧力信号を採集し、次に、ローパスフィルタにより、マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリングを行い、最後に、心拍数信号を得てから、心拍数の検出を行うことが可能となる。心臓の拍動が一定の周期性を有するため、心拍数信号が一定の周期性を有する信号となり、自己相関法により、当該信号に対応した周期を取得でき、周期の逆数が即ち心拍数である。
【0024】
具体的なプロセスは、下記の通りになる。
マイクロホンにより検出された信号がx(n) = y(n)+d(n)であると仮定し、
ここで、y(n)が干渉信号を表し、d(n)が、血液が流れることにより発生した圧力変化信号を表し、nがサンプリング時点を表す。
x(n)がローパスフィルタリングされると、信号はxL(n)=dL(n)になり、ローパスフィルタリングを経ることにより、マイクロホンにより採集された外部雑音信号がフィルタアウトされる。
【0025】
得られたdL(n)について、当該信号の周期性特徴に基づいて、自己相関法、閾値法等により、その周期を検出することが可能であり、その周期の逆数が即ち心拍数である。
【0026】
図1又は
図3に示す実施例におけるイヤホンにより、人々のさまざまな状況(安静、運動等)での心拍数を取得することができ、これにより、人体の健康状況情報を取得することができ、若しくは、これを根拠として、人々は、具体的な状況に応じて自身の運動量を適切な範囲内にコントロールすることができる。
【0027】
上記実施例に基づいて、本発明におけるイヤホンに適用される心拍数検出方法を挙げる。
図4は、本発明の実施例におけるイヤホンに適用される心拍数検出方法のフローチャートである。
図4に示すように、当該方法は、
イヤホン内にキャビティを設け、マイクロホンをキャビティ内に取付けるステップであって、キャビティの口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティの口と密着する位置に孔を設け、イヤホンが装着されると、キャビティと孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成されるようにするステップS410と、
イヤホンを装着して、マイクロホンによって、キャビティ内における圧力変化により発生した信号を採集するステップS420と、
マイクロホンにより採集された信号に基づいて心拍数検出を行うステップであって、即ち、マイクロホンにより採集された信号を心拍数と関連付けられる信号として、この心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行うステップS430とを含む。
【0028】
本発明の一つの実施例では、
図4に示す方法において、ステップ430の前に、マイクロホンにより採集された信号に対してフィルタリング処理を行い、フィルタリング後の信号を得るステップを更に含む。そうすると、ステップS430におけるマイクロホンにより採集された信号に基づいて心拍数検出を行う処理は、フィルタリング後の信号に基づいて心拍数検出を行う処理を含むことになる。
【0029】
本発明の一つの実施例において、
図4に示す方法における、マイクロホンにより採集された信号に対してフィルタリング処理を行う処理は、マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行うことで、高周波干渉信号をフィルタアウトする処理を含む。
【0030】
本発明の一つの実施例において、上記のフィルタリング後の信号に基づいて心拍数検出を行う処理は、フィルタリング後の信号の周期を検出し、検出された信号の周期の逆数から心拍数を得る処理を含む。
【0031】
以上をまとめると、本発明の上記実施例における技術構成は、下記の有益な効果を有する。
(1)体積が小さな密閉キャビティを利用してマイクロホンを配置することで、外部雑音干渉が低減されるとともに、マイクロホンにより検出された信号情報が強化された。
(2)脈波振動周波数の特徴に基づいてローパスフィルタを設計することで、外部高周波雑音の影響が更に低減された。
【0032】
また、イヤホンにより心拍数を検出する際には、もう一つの重要な要素が心拍数の検出精度に影響している。それは、人の体動である。人の体動が耳壁の振動を引き起こすのは必然なことであり、このような振動も、耳道内における圧力変化を起こし、このような圧力変化もマイクロホンにより採集されるため、心拍数信号に対する分析に干渉してしまう。このため、本発明は、更に、下記のような解決策を提供する。
【0033】
図5は、本発明の実施例における心拍数を検出可能なイヤホンの構造模式図である。
図5に示すように、当該心拍数を検出可能なイヤホン500は、減算手段550、心拍数検出手段560、加速度センサ530、適応フィルタリング手段540、イヤホン内に設けられたキャビティ510、及び、キャビティ510内に取付けられたマイクロホン520を含み、
ここで、キャビティ510の口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着された時に人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティ510の口と密着する位置に孔が設けられ、イヤホンが装着されると、キャビティと、孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成される。
【0034】
マイクロホン520は、イヤホン500が装着されたとき、キャビティ510内の圧力変化により発生した信号を採集して減算手段550に出力するために用いられる。
【0035】
加速度センサ530は、イヤホンが装着されたとき、装着者の体動により発生した信号を採集して適応フィルタリング手段540に出力するために用いられる。
【0036】
適応フィルタリング手段540は、心拍数と関連付けられる信号に基づいて、加速度センサ530により採集された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、マイクロホン520により採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を得て、減算手段550に出力するために用いられる。
【0037】
減算手段550は、マイクロホンにより採集された信号から、適応フィルタリング手段540から出力された推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得て心拍数検出手段560及び適応フィルタリング手段540に出力するために用いられる。
【0038】
心拍数検出手段560は、心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行うために用いられる。
【0039】
図5において、加速度センサ530により検出された信号に対して適応フィルタリング処理を行うことで、加速度センサ530により採集された人の体動信号から、マイクロホン520により採集された人の体動信号を正確に推定することができる。その目的は、人の体動による心拍数検出への影響を除去することである。マイクロホン520及び加速度センサ530は、いずれも、人の体動により発生した振動信号を検出することができ、両方の信号は、周期が一致しているが振幅に差異があるため、フィルタを用いてこの差異を除去する(振幅を同じにする)必要があり、これにより、人の体動により発生した加速度信号をマイクロホンにより採集された信号から除去し、有効な心拍数情報を取得することができる。
【0040】
図5に示す心拍数を検出可能なイヤホン500では、イヤホン500内にキャビティ510を設けてマイクロホン520を配置することで、外部雑音の干渉が低減されるとともに、マイクロホン520により採集された信号情報が強化された。また、当該心拍数を検出可能なイヤホン500に加速度センサ530を加えて装着者の体動により発生した信号を採集し、加速度センサ530により採集された信号に対して適応フィルタリングを行い、適応フィルタリング後の加速度センサ信号をマイクロホンにより採集された信号から差し引いてから、心拍数検出を行うことで、装着者の体動による心拍数検出への影響が除去された。
【0041】
本発明の一つの実施例において、
図5に示すイヤホンは、ローパスフィルタを更に含み、当該ローパスフィルタは、マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行い、ローパスフィルタリング信号を得て、減算手段550に出力するために用いられる。即ち、減算手段550は、ローパスフィルタリング信号から、適応フィルタリング手段540から出力された推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得て、心拍数検出手段に出力するために用いられる。これは、脈波振動の周波数が低く(0.3Hz〜3Hz程度)、外部雑音の周波数が高いため、この特徴に基づいて、ローパスフィルタにより外部高周波雑音の影響を除去できるからである。例えば、ローパスフィルタとしては、遮断周波数が5HzであるFIRフィルタ等を選択してもよい。
【0042】
本発明の実施例において、イヤホン500内に設けられたキャビティ510及びキャビティ510内に取付けられたマイクロホン520の具体的な取付け方式は、
図2A〜2Cに示す形態と同じであり、ここでは説明を繰り返さない。
【0043】
図6は、本発明の一つの実施例における加速度センサの配置位置の模式図である。人体の皮膚が人体の運動に伴って振動するため、本実施例において、加速度センサ装置をイヤホンにおいて皮膚に接触しない部位に配置することで、皮膚の振動が加速度センサにより採集された信号に影響を与えることが回避され、加速度センサの信号採集の正確さが向上する。
図6を参照して、加速度センサ530は、
図6に示す破線枠で模式的に示されたイヤホン500の任意の部位に配置してもよい。
【0044】
実際には、イヤホンが耳道全体を占有し、完全に閉鎖したキャビティを形成できたとしても、人の体動による心拍数検出への影響は、避けられないものである。これは、人の体動が耳壁の振動を起こすのは必然なことであり、このような振動により発生したキャビティ内の圧力変化も、マイクロホンにより検出されるからである。こうして、マイクロホンにより採集されたデータには、血管の脈圧変動により発生した圧力変化情報だけではなく、人の体動により耳道内で発生した圧力変化情報も含まれる。人の体動による心拍数検出への影響を除去するために、本発明は、イヤホンに加速度センサを加えて、加速度センサを、イヤホンにおいて皮膚に接触しない部位に配置し、例えば、
図6に示す破線枠に示すイヤホン位置に配置する。加速度センサによって、人の体動により発生した加速度情報を採集する。人の体動により発生した耳道内における圧力変化情報及び加速度は、同じ振動周波数を有し、これを基として、特定のフィルタを利用して、人の体動により発生した干渉を除去することができる。
【0045】
上記の分析により、もしマイクロホンにより検出された信号から、人の体動により発生した信号をフィルタアウトすることができれば、血液が流れることにより耳道自身が収縮して発生した信号を得ることができ、この信号が心臓拍動周波数に関連し、この信号に基づいて、心拍数情報が得られる。
【0046】
マイクロホンにより採集された情報は、人の体動による耳道圧力変化情報を含み、一方、加速度センサにより採集された情報は、人の体動に対応した加速度情報である。両者の信号は同じ振動周波数を有し、即ち周期が同じであるが、振幅が異なり、当該信号をマイクロホンにより採集された信号から直接に除去することができないため、本実施例では、適応フィルタリングの方法を通じて、人の体動により発生した干渉をフィルタアウトする。
【0047】
以上をまとめると、本実施例において、まず、体積が小さな密閉キャビティを利用してマイクロホンを配置することで、外部雑音干渉が低減されるとともに、マイクロホンにより検出された信号情報が強化された。次に、イヤホンに加速度センサを加えることで人の体動により発生した信号を採集するとともに、適応フィルタを設計することで人の体動による心拍数検出への影響を除去するようにした。そして、脈波振動周波数の特徴に基づいてローパスフィルタを設計することで、外部雑音の影響が更に低減された。以下、
図7を例としてさらなる説明を行う。
【0048】
図7は、本発明の別の実施例における心拍数を検出可能なイヤホンの構造模式図である。
図7に示すように、当該心拍数を検出可能なイヤホン700は、減算手段750、心拍数検出手段760、ローパスフィルタ770、加速度センサ730、適応フィルタリング手段740、イヤホン内に設けられたキャビティ710、及び、キャビティ710内に取付けられたマイクロホン720を含む。そのうち、適応フィルタリング手段740は、パラメータ可変フィルタ741とパラメータ適応調整手段742とを含む。
【0049】
ここで、キャビティ710の口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティ710の口と密着する位置に孔が設けられ、イヤホンが装着されると、キャビティと、孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成される。
【0050】
マイクロホン720は、イヤホン700が装着されたとき、キャビティ710内における圧力変化により発生した信号を採集してローパスフィルタ770に出力するために用いられる。
【0051】
ローパスフィルタ770は、マイクロホン720により採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行い、ローパスフィルタリング信号を得て、減算手段750に出力するために用いられる。
【0052】
加速度センサ730は、イヤホンが装着されたとき、装着者の体動により発生した信号を採集して、適応フィルタリング手段740におけるパラメータ可変フィルタ741及びパラメータ適応調整手段742に出力するために用いられる。
【0053】
パラメータ適応調整手段742は、加速度センサ730により採集された信号、心拍数と関連付けられる信号、及び、予め設定された適応アルゴリズムにより、パラメータ可変フィルタ741のフィルタパラメータを調整するために用いられる。
【0054】
パラメータ可変フィルタ741は、フィルタパラメータにより、加速度センサ730により採集された信号に対して適応フィルタリングを行い、マイクロホン720により採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を減算手段750に出力するために用いられる。
【0055】
減算手段750は、ローパスフィルタから出力された信号から、パラメータ可変フィルタ741から出力された推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得て心拍数検出手段760に出力するために用いられ、減算手段750は、また、心拍数と関連付けられる信号をパラメータ適応調整手段742に出力するためにも用いられる。
【0056】
ここで、パラメータ適応調整手段742は、入力された加速度センサ730により採集された信号、及び、減算手段750からフィードバックされた心拍数と関連付けられる信号に基づいて、適応アルゴリズムを用いてパラメータ可変フィルタ741のフィルタパラメータを算出する。
【0057】
心拍数検出手段760は、心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行うために用いられる。
【0058】
本発明の一つの実施例において、心拍数検出手段760は、心拍数と関連付けられる信号の周期を検出し、検出された信号の周期の逆数から心拍数を得るために用いられる。例えば、心拍数検出手段760は、従来の自己相関法、閾値法等により、心拍数と関連付けられる信号の周期を検出することが可能である。
【0059】
図8は、適応フィルタの一般的構造の模式図である。
図8に示すように、適応フィルタは、主に、パラメータ可変フィルタと、フィルタ係数を調整するパラメータ適応調整手段との二つの部分から構成される。適応フィルタは、設計時に、信号の統計的特性に関する知識を予め知っておく必要がなく、自分の作業中に、必要な統計的特性を徐々に「理解していく」か若しくはそれを推定していくと共に、これを根拠として自身のパラメータを自動的に調整することで、最適なフィルタリング効果を達成することができる。
図8において、Ex(n)が所望信号、In(n)が入力信号、Out(n)が出力信号、e(n)が推定誤差であり、e(n) = Ex(n) - Out(n)である。適応フィルタのフィルタ係数が誤差信号により制御され、e(n)を用いる所定の適応アルゴリズムにより適応係数を調整し、最終的に、e(n)の平均二乗誤差が一番小さくなるようにすると、出力信号は所望信号に最も近くなる。
【0060】
図7に示すイヤホンにおいて、適応フィルタを用いて、加速度センサにより採集された信号に対してフィルタリング処理を行うことで、マイクロホンにより採集された、人の体動により発生した信号を正確に推定する。
図7に示すように、y1(n)が加速度センサ730により採集された信号であり、即ち、適応フィルタリング手段740における入力信号に対応し、y2(n)が適応フィルタリング手段740の出力信号であり、xL(n)が、対応する所望信号を表し、
が誤差信号(主に心拍数信号を含む)に対応する。 yL(n)とy1(n)は、一定の相関性を有し、適切な伝達関数を設計することで、y1(n)がフィルタリングされて得られた出力信号y2(n)をyL(n)に近づけることが可能である。例えば最小平均二乗誤差準則に従うことが可能であり、誤差信号の平均二乗の所望値が最も小さい場合、出力信号y2(n)によりyL(n)を有効に推定することが可能とである。そうすると、人の体動による心拍数検出への干渉を、マイクロホンにより採集された信号から除去し、干渉信号の影響を更に除去することができる。マイクロホンからのローパスフィルタリング後の信号から、加速度センサからの適応フィルタリング後の信号を差し引いて心拍数と関連付けられる信号情報
を得て、これを基として、心拍数の検出を行う。心臓の拍動が一定の周期性を有するため、
は一定の周期性を有する信号であり、自己相関法により、当該信号に対応した周期を取得でき、周期の逆数が即ち心拍数である。
【0061】
具体的なプロセスは、下記の通りになる。
マイクロホンにより検出された信号がx(n) = y(n)+d(n)であり、加速度センサにより検出された信号がy1(n)であると仮定する。
ここで、y(n)が人の体動により発生した圧力変化信号を表し、d(n)が、血液が流れることにより発生した圧力変化信号を表し、y1(n)が人の体動により発生した加速度信号を表し、nがサンプリング時点を表す。
【0062】
x(n)がローパスフィルタリングされると、信号はxL(n) = yL(n)+dL(n)になる。
y1(n)及びy(n)は、いずれも運動により発生した信号であり、y1(n)が加速度情報に対応し、y(n)が圧力情報に対応し、両者は、それぞれに対応した振幅が異なるが、同じ振動周波数を有する。y(n)をx(n)から除去するために、適応フィルタ(衝撃応答は、h(n))を選択してy1(n)に対してフィルタリングを行い、y2(n) = y1(n) * h(n)を得て、y2(n)を、x(n)がローパスフィルタリングされた後の人の体動により発生した圧力変化信号yL(n)にできるだけ近づくようにする。
このように、耳道の収縮により発生した信号を
と表すことが可能となる。
【0063】
フィルタの適応パラメータは、適応アルゴリズムによって取得されるものであり、適応アルゴリズムを実現する様々な方法を用いることができ、例えば、最小平均二乗誤差方法を用いてもよく、その場合、
が最小値を取るようなフィルタ係数を用いる。
を算出してから、当該信号の周期性特徴に基づいて、自己相関法、閾値法等により、その周期を検出することが可能であり、その周期の逆数が即ち心拍数である。
【0064】
図5又は
図7に示す実施例におけるイヤホンにより、人々のさまざまな状況(安静、運動等)での心拍数を取得することができ、これにより、人の健康状況情報を取得することができ、若しくは、これを根拠として、人々は、具体的な状況に応じて自己自身の運動量を適切な範囲内にコントロールすることができる。
【0065】
上記実施例に基づいて、本発明におけるイヤホンに適用される心拍数検出方法を挙げる。本発明の方法の実施例における各ステップの具体的な内容については、本発明の製品の実施例の関連記載を参照してもよい。
【0066】
図9は、本発明の実施例におけるイヤホンに適用される心拍数検出方法のフローチャートである。
図9に示すように、当該方法は、
イヤホン内にキャビティを設け、マイクロホンをキャビティ内に取付けるステップであって、キャビティの口とイヤホンハウジングとが密着する位置は、イヤホンが装着されたときに人の耳介と密着するイヤホンハウジングの部分にあり、イヤホンハウジングにおけるキャビティの口と密着する位置に孔を設け、イヤホンが装着されると、キャビティと、開孔と密着する耳介とによって密閉空間が構成されるようにし、イヤホンに更に加速度センサを、例えばイヤホンにおける装着者の皮膚に接触しない位置に設けるステップS910と、
イヤホンを装着して、マイクロホンによって、キャビティ内の圧力変化により発生した信号を採集し、加速度センサによって、装着者の体動により発生した信号を採集するステップS920と、
加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、マイクロホンにより採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を得るステップS930と、
マイクロホンにより採集された信号から当該推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得るステップS940と、
心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行うステップS950とを含む。
【0067】
本発明の一つの実施例において、
図9に示す方法は、マイクロホンにより採集された信号から推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る前に、マイクロホンにより採集された信号に対してローパスフィルタリング処理を行い、ローパスフィルタリング信号を得るステップを更に含む。その場合、ステップS940におけるマイクロホンにより採集された信号から当該推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る処理は、具体的には、ローパスフィルタリング信号から当該推定信号を差し引いて、心拍数と関連付けられる信号を得る処理を含む。
【0068】
本発明の一つの実施例において、ステップS930において、加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、マイクロホンにより採集された信号のうち装着者の体動により発生した信号の推定信号を得る処理は、
加速度センサにより採集された信号、心拍数と関連付けられる信号、及び、予め設定された適応アルゴリズムにより、適応フィルタパラメータを算出する処理と、
この適応フィルタパラメータにより、加速度センサにより採集された信号に対して適応フィルタリングを行って当該推定信号を得る処理とを含む。
【0069】
本発明の一つの実施例において、ステップS950において、心拍数と関連付けられる信号に基づいて心拍数検出を行う処理は、心拍数と関連付けられる信号の周期を検出し、検出された信号の周期の逆数から心拍数を得る処理を含む。
【0070】
以上をまとめると、本発明の
図5〜9に示す実施例における技術構成は、下記の有益な効果を有する。
(1)体積が小さな密閉キャビティを利用してマイクロホンを配置することで、外部雑音干渉が低減されるとともに、マイクロホンにより検出された信号情報が強化された。
(2)イヤホンに加速度センサを加えることで人の体動により発生した信号を採集するとともに、適応フィルタを設計することで人の体動の心拍数検出への影響を除去するようにした。
(3)脈波振動周波数の特徴に基づいてローパスフィルタを設計することで、外部高周波雑音の影響が更に低減された。
【0071】
上記したのは、あくまでも本発明の好ましい実施例であり、本発明の保護範囲を限定するためのものではない。本発明の精神及び原則内になされたすべての補正、均等的置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものである。