特許第6174170号(P6174170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174170
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】パネル及び仮設作業用構造物
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/28 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   E04G21/28 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-8049(P2016-8049)
(22)【出願日】2016年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-128888(P2017-128888A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金川 雅晃
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−011660(JP,U)
【文献】 特開2014−181512(JP,A)
【文献】 特開2009−203742(JP,A)
【文献】 特開2000−192666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/28
E04D 3/00−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設屋根を構成する矩形のパネルであって、
平行に配置された2本の長尺の縦部材と、
前記2本の縦部材に架け渡された複数の横部材と、
前記2本の縦部材の高さ範囲内において前記複数の横部材に取り付けられ、前記2本の縦部材の高さ範囲内において前記2本の縦部材の各々の下面を含む平面に対し傾斜し前記パネルの外縁に向かい下がる勾配を有する板状部材と
を備えるパネル。
【請求項2】
前記板状部材は、前記2本の縦部材の長手方向に沿った方向が流れ方向となる切妻屋根形状または片流れ屋根形状である
請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記板状部材は1以上の波板により構成される
請求項1または2に記載のパネル。
【請求項4】
複数の支持部材と、
前記複数の支持部材の上に載置された1以上の請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパネルと
を備える仮設作業用構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設屋根を構成するパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの屋根片(a)を結合し、結合したそれらの屋根片(a)の接合部下方に山形の中央補強体(b)を取り付け、また、結合したそれらの屋根片(a)の縁部下方に三角状の先端台座(c)を取り付け、一方の縁部下方の先端台座(c)と他方の縁部下方の先端台座(c)とを引張軸体(d)により連結した組立屋根盤(A)が開示されている(本願図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−160689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工事の際に資材の組み立て等の作業を行うための空間を作り出す仮設作業用構造物が必要となる場合がある。仮設作業用構造物は、通常の構造物と比較し同じ場所における利用期間が短いため、その設置と撤去が容易である必要がある。また、再利用が可能であり、不使用時の運搬や保管に便利なように嵩張らないことが望ましい。
【0005】
上記のような制約がある仮設作業用構造物の屋根は、可能な限り単純な構造のものが望ましい。特許文献1に開示の組立屋根盤は、2つの屋根片の結合部分を棟とし、棟の両側が斜面となる、切妻屋根と呼ばれる構造をしている。切妻屋根は、降雨または降雪の際、雨または雪が棟の両側に流れ落ちる両流れ屋根のうち、最も構造が単純なものである。構造が単純な屋根としては、切妻屋根の他に、一枚の屋根片を単純に傾斜させた片流れ屋根と呼ばれるものがある。従って、仮設作業用構造物の屋根の構造としては、切妻屋根または片流れ屋根が採用される場合が多い。
【0006】
特許文献1に開示の組立屋根盤は、傾斜している屋根片を柱(杆)の上に固定するために、両側の端部下方に先端台座を取り付ける必要がある。また、両流れの形状を保つために、棟下部分に山形の中央補強体を取り付けるとともに、両側の先端台座を引張軸体で連結する必要がある。従って、特許文献1に開示の組立屋根盤の組み立ておよび分解には手間と時間を要する。また、特許文献1に開示の組立屋根盤は分解せずに積み重ねることは困難である。従って、特許文献1に開示の組立屋根盤は運搬や保管の際にはその都度、分解する必要がある。
【0007】
片流れ屋根は、屋根自体の構造は一枚の屋根片を傾斜させただけの単純なものである。しかしながら、屋根片を傾斜させて柱の上に固定するために、切妻屋根の場合と同様に、特殊な構造の連結部材の取り付けを要する。また、傾斜した屋根片を支持するために、傾斜方向の上端側で屋根片を支持する柱と傾斜方向の下端側で屋根片を支持する柱の長さを異ならせる必要がある。このように、片流れ屋根は屋根自体の構造は単純でも、屋根を支持する構造物が複雑な構造となってしまう場合が多い。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、設置および撤去が容易で、運搬や保管に便利な仮設作業用構造物の屋根構造を実現するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、仮設屋根を構成する矩形のパネルであって、平行に配置された2本の長尺の縦部材と、前記2本の縦部材に架け渡された複数の横部材と、前記2本の縦部材の高さ範囲内において前記複数の横部材に取り付けられ、前記2本の縦部材の高さ範囲内において前記2本の縦部材の各々の下面を含む平面に対し傾斜し前記パネルの外縁に向かい下がる勾配を有する板状部材とを備えるパネルを提案する。
【0010】
上記のパネルの望ましい態様において、前記板状部材は、前記2本の縦部材の長手方向に沿った方向が流れ方向となる切妻屋根形状または片流れ屋根形状である、という構成が採用されてもよい。
【0011】
また、上記のパネルの望ましい態様において、前記板状部材は1以上の波板により構成される、という構成が採用されてもよい。
【0012】
また、本発明は、複数の支持部材と、前記複数の支持部材の上に載置された上記のパネルとを備える仮設作業用構造物を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仮設作業用構造物の柱の上に複数のパネルを並べて載せ置いて固定すれば当該仮設作業用構造物の屋根の組み立てが完了する。その際、特殊な連結部材を用いた取り付け作業等は要さない。従って、分解もまた容易である。さらに、本発明によれば、分解後のパネルは複数枚を重ね置くことができ、運搬および保管に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】仮設作業用構造物1の概略を示す斜視図。
図2】パネル11の構成を示す斜視図。
図3図2(b)に示すA−A線におけるパネル11の断面図。
図4図3に示すB−B線における縦部材20の断面図。
図5】変形例を示す断面図。
図6】従来技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態の一例を説明する。図1は、仮設作業用構造物1の概略を示す斜視図である。仮設作業用構造物1は、作業空間を囲う囲い2と、囲い2の上に載せ置かれた仮設屋根10とを備える。囲い2は、作業空間を囲うように配置された複数の支持部材3を互いに連結したものである。支持部材3は、例えば、ビティ足場である。仮設屋根10は、1以上の矩形のパネル11を並べたものである。図1の例では、仮設屋根10は5枚のパネル11で構成されているが、その枚数は5枚に限られない。
【0016】
図2は、パネル11の構成を示す斜視図である。パネル11の主な構成要素は、2本の長尺の縦部材20、複数本の横部材30、屈曲した1枚の板状部材40である。図2(a)は、板状部材40が取り付けられる前の未完成のパネル11を示す。図2(b)は、図2(a)に示す構成に対して板状部材40が取り付けられ完成した状態のパネル11を示す。
【0017】
図2に示されるように、2本の縦部材20は互いに平行に配置されている。また、複数本の横部材30の各々は、2本の縦部材20に架け渡されている。板状部材40は、複数の横部材30の上を覆うように配置された状態で横部材30の各々に取り付けられている。
【0018】
図3は、図2(b)に示すA−A線におけるパネル11の断面図である。図4は、図3に示すB−B線における縦部材20の断面図である。図4は、図2(b)における奥側の縦部材20の断面形状を図示したものであるが、手前側の縦部材20の断面形状は、図4に示すものと左右対称となる。
【0019】
図4に示されるように、1本の縦部材20は、2本のリップ溝形鋼21と、複数枚の平鋼22で構成される。1本の縦部材20を構成する2本のリップ溝形鋼21は、溝の設けられていないウェブにおいて互いに接合され、全体としてH形鋼と似た形状を呈している。互いに接合された2本のリップ溝形鋼21のうちの一方(図4の右側のリップ溝形鋼21)の溝の設けられている側面上には、複数の横部材30の各々に応じた位置に平鋼22が、上側のリップと下側のリップに架け渡された状態で接合されている。
【0020】
2本のリップ溝形鋼21の接合と、リップ溝形鋼21と平鋼22の接合は、例えば溶接により行われる。ただし、これらの部材の接合の方法は溶接に限られず、例えばボルトとナットの締め付けによって行われてもよい。
【0021】
上記のように構成された2本の縦部材20は、平鋼22が設けられた側が互いに対向する向きで、互いに平行に配置されている。
【0022】
複数本の横部材30の各々は山形鋼(アングル)である。横部材30の両端は各々、縦部材20の対応する位置に取り付けられた平鋼22に、例えば溶接により取り付けられている。すなわち、図2(a)及び図3に示されるように、縦部材20の長手方向において概ね等間隔を空けて取り付けられた複数の平鋼22の各々に、横部材30の端部が取り付けられている。
【0023】
ここで注目すべき点は、平鋼22に対する横部材30の高さ方向における取り付け位置が、全体として山形を描くように調整されている、という点である。より具体的には、2本の縦部材20の長手方向における概ね中央に位置する横部材30(図2(a)及び図3の例では、両端から5つめの横部材30)の取り付け位置が最も高く、この位置からパネル11の外縁に向かい、横部材30の取り付け位置が徐々に低くなっている。これは、次に説明する板状部材40に両流れの傾斜を付けるためである。
【0024】
板状部材40は1枚または複数枚の波板で構成される。板状部材40を構成する波板は、降雨または降雪の際、雨または雪が2本の縦部材20の長手方向に沿った方向に流れるように、その谷の延伸方向が2本の縦部材20の長手方向に沿った方向となるように配置されている。なお、板状部材40を構成する波板の素材は、トタン、樹脂等のいずれであってもよい。
【0025】
板状部材40が複数枚の波板で構成される場合、互いに隣接する波板が隣接する縁部領域の1以上の山または谷で重なるように配置されている。そのため、降雨または降雪の際に、複数枚の波板の隙間から雨または雪が漏れ落ちることはない。なお、止水性を高めるために、互いに隣接する波板の縁部領域において、それらの波板がテープ等で貼り合わせられていてもよい。
【0026】
板状部材40は、複数本の横部材30の上に、それらを覆うように載せ置かれた状態で、例えばフックボルトにより、接する横部材30に取り付けられている。図2(b)及び図3に示されるように、板状部材40は、2本の縦部材20の長手方向における概ね中央の位置から外側(パネル11の外縁)に向かい下がる勾配を有する。すなわち、板状部材40は、2本の縦部材20の長手方向に沿った方向が流れ方向となる切妻屋根形状を呈する。図2(b)及び図3に示すライン41は、当該切妻屋根形状を呈する板状部材40の頂部である。
【0027】
なお、板状部材40のライン41における屈曲は、波板の折り曲げにより実現されてもよいし、例えば、ライン41上で縁辺が互いに接するように、ライン41の両側に異なる波板を配置することにより実現されてもよい。後者の場合、ライン41上で互いに接する波板の隙間から雨や雪が漏れ落ちないように、ライン41上に配置された止水テープ等によりそれらの波板が互いに連結されていることが望ましい。
【0028】
また、図2(b)及び図3に示されるように、板状部材40は、2本の縦部材20の高さ範囲内において複数の横部材30に取り付けられている。すなわち、板状部材40は、2本の縦部材20の上面より上、もしくはそれらの下面より下にはみ出すことはない。
【0029】
複数の横部材30の各々の高さ方向における位置は、それらに取り付けられる板状部材40が上述した形状および位置となるように調整されている。また、複数の横部材30の各々の板状部材40と接する面が板状部材40に沿って勾配を有するように、横部材30の長手方向を軸とする軸周りの角度が調整されている。
【0030】
上記のように構成されるパネル11は、仮設作業用構造物1の設置の際に、囲い2の組み立てが完了した後、クレーン等により吊り上げられ、囲い2の上に必要な枚数だけ並べて載せ置かれる(図1参照)。なお、パネル11は、囲い2の上に直接載せ置かれてもよいが、パネル11を囲い2に載せ置く際の騒音低減等のために、パネル11と囲い2の間にスポンジ等の緩衝材が配置されてもよい。また、強風によりパネル11が吹き飛ばされたり、地震によりパネル11が囲い2の上から滑り落ちたりしないように、パネル11がボルト、フック等により囲い2に連結されてもよい。
【0031】
上述したパネル11によれば、仮設作業用構造物1の設置の際、囲い2の上に必要な枚数のパネル11を並べて載せ置くだけで、仮設作業用構造物1の仮設屋根10の組み立てが完了する。また、ボルトやフック等によりパネル11が囲い2に対し連結される場合でも、囲い2に接するパネル11の縦部材20は水平面に対し傾斜させる必要がないため、その連結に特殊な連結部材等を用いる必要がなく、連結作業が容易である。仮設作業用構造物1の撤去の際には、上述した組み立て時の逆の作業により、容易にパネル11を囲い2から取り外すことができる。
【0032】
また、パネル11は、板状部材40が高さ方向において縦部材20の高さ範囲内に収まっている。従って、同じサイズの複数枚のパネル11を段積みすることができる。複数枚のパネル11が段積みされた状態において、それらのパネル11の板状部材40は互いに直接接することはない。従って、段積み時に板状部材40が隣接するパネル11との接触等により破損することはない。このように、パネル11は段積みが可能であるため、運搬や保管において嵩張らず便利である。
【0033】
<変形例>
上記の実施形態は本発明の一実施形態であって、様々に変形され得る。以下にそれらの変形の例を示す。
<変形例1>
図5は、一変形例にかかるパネル11の断面図である。図5の断面図は、上記の実施形態に関する図3と同じ方向の断面を示す。この変形例では、板状部材40が、2本の縦部材20の長手方向における一方の縁辺(パネル11の一方の外縁)から他方の縁辺(パネル11の他方の外縁)に向かい下がる勾配を有する。すなわち、板状部材40は、2本の縦部材20の長手方向に沿った方向が流れ方向となる片流れ根形状を呈する。
【0034】
板状部材40が上記の形状を成すように、この変形例においては、複数の横部材30の各々の高さ方向における取り付け位置が、一方の縁辺(図5の右側の縁辺)から他方の縁辺(図5の左側の縁辺)に向かい徐々に低くなるように調整されている。
【0035】
<変形例2>
上記の実施形態においてパネル11に採用されている部材の種別、数量、材料等は様々に変更可能である。例えば、上記の実施形態においては、互いに接合された2本のリップ溝形鋼21が1本の縦部材20を構成している。リップ溝形鋼21に代えて、例えば軽溝形鋼等の他の種別の部材が用いられてもよい。また、互いに接合された2本のリップ溝形鋼21に代えて、例えば1本のH形鋼等の他の種別の部材が用いられてもよい。また、縦部材20の長手方向のスパンが短く必要とされる強度が小さければ、1本の縦部材20が1本のリップ溝形鋼で構成されてもよい。
【0036】
また、上記の実施形態においては、板状部材40に波板が採用されている。板状部材40の形状は波形に限られず、例えば平坦な板材が板状部材40として採用されてもよい。
【0037】
また、上記の実施形態においては、横部材30に山形鋼が採用されている。山形鋼に代えて、例えば軽山形鋼等の他の種別の部材が横部材30として採用されてもよい。
【0038】
<変形例3>
上記の実施形態において板状部材40は、縦部材20の長手方向における概ね中央に頂部を持つ切妻屋根形状を呈する。板状部材40が切妻屋根形状を呈する場合、縦部材20の長手方向における頂部の位置は中央でなくてもよい。
【0039】
<変形例4>
上記の実施形態において図1乃至図3に示したパネル11の形状やパネル11を構成する構成要素の数量はあくまで例示であって、他の様々な形状や数量が採用されてもよい。例えば、横部材30の本数は図2および図3の例では9本であるが、8本以下または10本以上であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…仮設作業用構造物、2…囲い、3…支持部材、10…仮設屋根、11…パネル、20…縦部材、21…リップ溝形鋼、22…平鋼、30…横部材、40…板状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6