(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロール本体の第1端面が、前記半導電性樹脂ロールの第1端面を形成し、前記ロール本体の第2端面が、前記半導電性樹脂ロールの第2端面を形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の半導電性樹脂ロール。
前記ロール本体の第1端面及び第2端面から前記ロール本体と同軸にそれぞれ延び、前記ロール本体と一体構造を構成する2つの軸部をさらに有し、前記2つの軸部の各端面が、前記半導電性樹脂ロールの前記第1端面及び前記第2端面を形成することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の半導電性樹脂ロール。
前記半導電性樹脂ロールの前記第1端面を形成する前記軸部の端において露出する前記非構造材と接触する導電性部材をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の半導電性樹脂ロール。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。それらの図は、正確な縮尺ではない。そして、全図にわたって、同一または同様の要素には、同じ符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施例形態に係る半導電性樹脂ロール10−1の断面図である。
【0018】
図1に示す半導電性樹脂ロール10−1は、半導電性樹脂で形成された中実のロール本体11を備える。
【0019】
ロール本体11は、直円柱体の形状を有する。直円柱は、その定義によると、軸に垂直な2つの底面とそれら2つの底面間に画定された円柱面を有する。本明細書では、「円柱面」は定義どおりに使用するが、「底面」は、端面と称することにする。すなわち、ロール本体11は、円柱面111、並びに軸と直交する2つの端面(第1端面112及び第2端面113)を有する。本明細書において、第1端面は、一方の端面を意味し、第2端面は、他方の端面を意味するに過ぎない。
【0020】
ロール本体11は、いうまでもなく、自重や外力に対してロールの形状・構造を保つための強度を有している。その観点で(すなわち、ロール本体11は自重や外力に対してロールの形状・構造を保つための強度を有しているので)、ロール本体11は、構造体である。
【0021】
ロール本体11を形成する半導電性樹脂は、熱可塑性樹脂中に導電剤を配合したものであり、導電性熱可塑性樹脂組成物と記述することもできる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用プラスチック(汎用樹脂)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のエンジニアリングプラスチック(エンジニアリング樹脂)等、またはこれらいずれか2種以上の組み合わせを使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0022】
熱可塑性樹脂に配合される導電剤としては、金属粉末、金属酸化物の粉末、カーボン系粉末、カーボンファイバー等を使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0023】
また、前記導電性熱可塑性樹脂組成物は、補強材を含んでいてもよい。上に例示した導電剤は、補強材としても機能し得る。また、ガラス繊維を補強材として用いることもできる。
【0024】
半導電性樹脂の体積抵抗率は、好ましくは1×10
5〜1×10
12Ω・cmであり、より好ましくは、1×10
61×10
10Ω・cmである。この体積抵抗率の範囲は、ロール本体11を帯電させるために好適な範囲であり、しかも経済的である。半導電性樹脂の体積抵抗率が1×10
12Ω・cmを超えると、帯電のために高い電圧が必要となる傾向にあり、他方その体積抵抗率が1×10
5Ω・cm未満であると、帯電に困難が伴う場合がある。半導電性樹脂の体積抵抗率は、熱可塑性樹脂に配合する導電剤の量で調整することができる。
【0025】
ロール本体11は、5〜60mmの直径、および210〜860mmの(軸方向の)長さ(A4〜A0用紙サイズの印刷に対応する長さ)を有し得る。すなわち、ロール本体11の円柱面111は、画像形成領域となる作用面111aを中央部に、非作用面111b及び111cを両端部に有する。
【0026】
ロール本体11内において、ロール本体11の縦断面中心領域をロール本体11の一方の端面(第1端面)112から他方の端面113に向かって延びて線状の非構造材12が配置されている。
【0027】
ここで、非構造材とは、自重や外力に対して形状・構造を保つための強度を担う構造材と相対する用語であり、外力に対して形状・構造を保つための強度を持たない材を意味する。従って、非構造材には、各種ロールにおける芯金、シャフト、軸芯、ジャーナル等は含まれない。
【0028】
線状の非構造材12は、上記半導電性樹脂が示す体積抵抗率よりも低い体積抵抗率を示す。線状の非構造材12は、好ましくは1×10
-6〜1×10
4Ω・cmの体積抵抗率を有し、より好ましくは1×10
-6〜1×10
3Ω・cmの体積抵抗率を有する。上記半導電性樹脂が示す体積抵抗率と非構造材12が示す体積抵抗率との差は、1×10
1Ω・cm以上であることが好ましい。
【0029】
線状の非構造材12は、鉄、ステンレス鋼、銅、金、銀、亜鉛、鉛、アルミニウム等の金属もしくはそれらの合金、導電剤を含む繊維、樹脂等で形成することができる。線状の非構造材12は、上記導電材の単線または複数の単線の束(撚線を含む)で構成することができる。コストを考慮するとより安価な金属製の線材が好ましい。
【0030】
なお、上記体積抵抗率は、JIS K6911に準じた測定方法により測定する。
【0031】
いずれの場合も、上記測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%の環境下で行う。
【0032】
ところで、本明細書で記述している線状の非構造材12は、非構造材であるか構造材であるかを問わなければ、線状部材と記述することができる。
【0033】
非構造材である線状部材は、外力に対して形状構造を保つために十分な強度を持たないので、線状の非構造材をたわみ量で表現することができる。すなわち、0.02%以上のたわみ量を示すものを非構造体ということができる。たわみ量が0.02%以上のものは構造材として機能しない。
【0034】
たわみ量は、非構造材の両端を支持した際、自重でたわんだ量(δ
max)が両端支持間長さ(l)の何%であるかを示す量であり、下記式(1)により計算することができる。ここで、たわみ量の測定は、温度20±2℃、相対湿度65±5%RHの環境下で行う。
【0035】
式(1):たわみ量=(δ
max/l)×100
また、軸方向の断面形状が同一の線材の場合、δ
maxは、はりの両端支持の等分布荷重計算式:
δ
max=5wl
4/384EI
(ここで、wは、等分布荷重、lは、はりの両端支持間長さ、Eはヤング率、Iは、断面二次モーメント)を用いて簡便に計算することもできる。ここで、wは、自重がはりに与える力を指す。
【0036】
さて、線状の非構造材12は、上に述べたように、ロール本体11内において、ロール本体11の縦断面中心領域をロール本体11の第1端面112から他方の端面113に向かって延びている。非構造材12は、ロール本体11の第1端面112において露出し、通電用の電気接点を構成している。非構造材12の他端は、作用面111の第2端に対応する位置からロール本体11の半径(r)に相当する距離だけ内側に隔たった地点からロール本体11の第2端面113までの範囲内(
図1において、破線で示す範囲内)まで延びている。
図1に示す例では、ちょうど、非構造材12の他端は、作用面111の第2端に対応する位置からロール本体11の半径(r)に相当する距離だけ内側に隔たった地点まで延びている。
【0037】
以上の構成の半導電性樹脂ロール10−1は、そのロール形状に対応する内部形状を有する射出成形用金型の中央に、軸方向両端に渡って線状の非構造材を配置し、半導電性樹脂組成物を射出成形機に投入し、金型に射出することによって製造することができる。または、半導電性樹脂ロール10−1は、押出し成形によっても製造することができる。
【0038】
図2は、第2の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−2を示す概略図である。
【0039】
半導電性樹脂ロール10−2は、ロール本体11の両端に軸部11aおよび11bを備えている。軸部11aおよび11bは、ロール本体11と同軸で、本体よりも小さな直径を有する。軸部11aおよび11bは、2〜40mmの直径、および3〜50mmの長さを有し得る。
【0040】
軸部11aおよび11bは、ロール本体11と一体的に形成することができる。すなわち、軸部11aおよび11bは、ロール本体11を形成する半導電性樹脂と同じ半導電性樹脂で形成することができる。線状の非構造材12は、上述のようにロール本体11の中央領域内を延びるが、さらに軸部11aおよび11bそれぞれの中央領域内を延びてそれらの端面まで延出して、電気接点をそれぞれ構成している。なお、非構造材12は、
図2において破線で示すように、軸部11a及び11bの端面から突出していてもよく、その場合、両突出部が電気的接点を構成する。
【0041】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−3を示す概略断面図である。この半導電性樹脂ロール10−3は、軸部11aの端面からロール内に延びる線状の非構造材12の他方の端が軸部11bの端面まで達しておらず、
図1に関して説明した作用面111の第2端に対応する位置からロール本体11の半径(r)に相当する距離だけ内側に隔たった地点からロール本体11の第2端面113までの途中でとどまっている以外は、第2の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−2と同様の構造を有する。
【0042】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−4を部分的に示す概略断面図である。この半導電性樹脂ロール10−4は、軸部11aの端面に配置した、例えば円盤形の、導電性カバー13を有する以外は、
図2又は
図3に示す半導電性樹脂ロールと同様の構造を有する。線状の非構造材12は、その端において導電性カバー13と接触し、カバー13を介して通電される。導電性カバー13は、例えば金属で形成することができる。
図4において、非構造材12が、
図2に示すように、軸部11bの端面まで延びている場合、軸部11bの端面は、導電性カバー13と同様の導電性カバーが設けられる。しかし、非構造材12が、
図3に示すように、軸部11bの端面に達しない場合、軸部11bの端面には、導電性カバーを設ける必要はない。
【0043】
図5は、本発明の第5の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−5を示す概略断面図である。この半導電性樹脂ロール10−5は、軸部11aの端面を覆うとともに、軸部11a周面一部を覆う、例えば一端が塞がれた円筒形の、導電性カバー14を有する以外は、
図2又は
図3に示す半導電性樹脂ロールと同様の構造を有する。線状の非構造材12は、その端において導電性カバー14と接触し、カバー14を介して通電される。導電性カバー14は、例えば金属で形成することができる。
図5において、非構造材12が、
図2に示すように、軸部11bの端面まで延びている場合、軸部11bの端部には、導電性カバー14と同様の導電性カバーが設けられる。しかし、非構造材12が、
図3に示すように、軸部11bの端面に達しない場合、軸部11bの端面には、導電性カバーを設ける必要はない。
【0044】
図6は、本発明の第6の実施形態に係る半導電性樹脂ロール10−6を示す概略断面図である。この半導電性樹脂ロール10−6は、ロール本体11の端部112に、軸を構成し得る円柱状導電性部材15が設けられている以外は、
図1に示す半導電性樹脂ロールと同様の構造を有する。円柱状導電性部材15は、一端部がロール本体12内に挿入され、残りの部分がロール本体の端面から突出している。半導電性樹脂ロール10−6は、左右対称の構造を取ることができる。その場合、ロール本体11の端部113に円柱状導電性部材15と同様の円柱状導電性部材が設けられる。しかしながら、非構造材12が、
図1に実線で示すように、ロール本体11の端面113まで達していない場合には、円柱状導電性部材を設ける必要はない。
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
【0046】
実施例1
図2に示す構造を有する半導電性樹脂ロールを作製した。
【0047】
ロール内部に配置した導電性非構造体は、ステンレス鋼製で、体積抵抗率が、6.0×10
-5Ω・cm、直径が3mmで、成形時の長さが354.4mm、軸部を含め内部に配置される長さが344mm、胴体内に配置される長さは320mmであった。この線材の胴体内部分に配置される長さ320mmのたわみ量は0.023%である。
【0048】
ロールの胴体部(ロール本体)および軸部となる基材樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(ポリプラスチック製M130)100重量部に、導電性付与剤、カーボンファイバー(東レ製1401T30)7重量部、補強剤、グラスファイバー(セントラルグラスファイバー製EFT75−01)6重量部を、溶融混合し、ペレット化したものであった。
【0049】
次に、前記線材の両端部の各々5.2mmを把持し、配置できる溝と、線材の円周部に、直径が14mmで、長さが320mmの空域の両端に直径が6mmで長さが12mmの軸となる空域を有した金型に、前記の線材を配置、その金型を配置した射出成型機に、ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂であるペレットを投入しロールを成形した。
【0050】
また、作成したロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、1.4×10
5Ω・cmであった。
【0051】
さらに、この半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万の印刷試験において、概ね良好な画像であったが、稀に画像に支障のない程度の微細なトナーの抜けが見受けられた。
【0052】
実施例2
本実施例では、基材樹脂の導電付与剤の量を変えた以外は、実施例1と同様にしていくつかの半導電性樹脂ロールを作製した。
【0053】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(ポリプラスチック製M130)100重量部に、導電性付与剤、カーボンファイバー(東レ製1401T30)7重量部、補強剤、グラスファイバー(セントラルグラスファイバー製EFT75−01)5重量部を、溶融混合し、ペレット化したものであった。
【0054】
作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、7.3×10
6Ω・cmであった。
【0055】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、すべて良好な画像を得ることができた。
【0056】
実施例3
本実施例では、基材樹脂の導電付与剤の量を変えた以外は、実施例1と同様にしていくつかの半導電性樹脂ロールを作製した。
【0057】
ロールの胴体部(ロール本体)および軸部となる基材樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(ポリプラスチック製M130)100重量部に、導電性付与剤、カーボンファイバー(東レ製1401T30)7重量部、補強剤、グラスファイバー(セントラルグラスファイバー製EFT75−01)4重量部を、溶融混合し、ペレット化したものであった。
【0058】
作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、9.6×10
9Ω・cmであった。
【0059】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、すべて良好な画像を得ることができた。
【0060】
実施例4
本実施例では、基材樹脂の導電付与剤の量を変えた以外は、実施例1と同様にしていくつかの半導電性樹脂ロールを作製した。
【0061】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(ポリプラスチック製M130)100重量部に、導電性付与剤、カーボンファイバー(東レ製1401T30)7重量部、補強剤、グラスファイバー(セントラルグラスファイバー製EFT75−01)3重量部を、溶融混合し、ペレット化したものであった。
【0062】
また、作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、2.7×10
11Ω・cmであった。
【0063】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、概ね良好な画像であったが、稀に画像に支障のない程度の微細なトナーの抜けが見受けられた。
【0064】
実施例5
図2に示す構造を有する半導電性樹脂ロールを以下のとおり作製した。
【0065】
この半導電性樹脂ロールにおいて、ロール内部に配置した導電性非構造体は、ステンレス鋼製で、体積抵抗率が6.0×10
-5Ω・cmであり、直径が2mmで、成形時の長さが254.4mm、軸部を含め内部に配置される長さが244mm、胴体内に配置される長さは220mmであった。この線材の胴体内部分に配置される長さ220mmのたわみ量は0.020%である。
【0066】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、実施例2と同じであった。
【0067】
前記ステンレス鋼製線材をその両端からそれぞれ5.2mmずつ内側に寄った位置で把持して配置できる溝と、直径が10mmで、長さが220mmのロール本体形成用空域及びこの空域の両端面から同軸に外側にそれぞれ延びる直径が4mmで長さが12mmの軸部形成用空域とを有した金型に、前記線材を配置し、その金型を配置した射出成型機にロールの胴体部および軸部となる基材樹脂であるペレットを投入しロールを成形した。
【0068】
次に、前記で成形したロールの両軸部端面から露出した線材を、電気接点を残し、研削除去した。
【0069】
作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、7.3×10
6Ω・cmであった。
【0070】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、すべて良好な画像を得ることができた。
【0071】
実施例6
図2に示す構造を有する半導電性樹脂ロールを以下のとおり作製した。
【0072】
この半導電性樹脂ロールにおいて、ロール内部に配置した導電性非構造体は、ステンレス鋼製で、体積抵抗率が6.0×10
-5Ω・cmであり、直径が8mmで、成形時の長さが670.4mm、軸部を含め内部に配置される長さが660mm、胴体内に配置される長さは620mmであった。この線材の胴体内部分に配置される長さ620mmのたわみ量は0.028%である。
【0073】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、実施例2と同様であった。
【0074】
前記線材をその両端からそれぞれ5.2mmずつ内側に寄った位置で把持して配置できる溝と、直径が24mmで、長さが620mmのロール本体形成用空域及びこの空域の両端面から同軸に外側にそれぞれ延びる直径が13mmで長さが20mmの軸部形成用空域とを有した金型に、前記線材を配置し、その金型を配置した射出成型機にロールの胴体部および軸部となる基材樹脂であるペレットを投入しロールを成形した。
【0075】
次に、前記で成形したロールの両軸部端面から露出した線材を、電気接点を残し、研削除去した。
【0076】
また、作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、7.3×10
6Ω・cmであった。
【0077】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、すべて良好な画像を得ることができた。
【0078】
実施例7
図3に示す構造を有する(胴体部(本体)および軸部が半導電性樹脂で、内部に導電性非構造体を有しているが、その長さが胴体部長さに満たない)半導電性樹脂ロールを作製した。
【0079】
この半導電性樹脂ロールにおいて、ロール内部に配置した導電性非構造体は、ステンレス鋼製で、体積抵抗率が6.0×10
-5Ω・cmであり、直径が3mmで、成形時の長さが318.7mm、軸部を含め内部に配置される長さが318.7mm、胴体内に配置される長さは301.5mmであった。この線材の胴体内部分に配置される長さ301.5mmのたわみ量は0.028%である。
【0080】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、実施例2と同様であった。
【0081】
前記線材をその一方の端を5.2mm内側に寄った位置で把持して配置できる溝と、直径が14mmで、長さが320mmのロール本体形成用空域及びこの空域の両端から同軸的に外側にそれぞれ延びる直径が6mmで長さが12mmの軸部形成用空域とを有した金型に、前記線材を配置し、その金型を配置した射出成型機にロールの胴体部および軸部となる基材樹脂であるペレットを投入しロールを成形した。
【0082】
また、作製した半導電性樹脂ロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、7.3×10
6Ω・cmであった。
【0083】
さらに、作製した半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。10万枚の印刷試験において、線材が露出しない側の面付近に稀に画像に支障のない程度の微細なトナーの抜けが見受けられたが、すべて概ね良好な画像を得ることができた。
【0084】
比較例1
金属製線材の周りにイオン導電性のゴムで形成されたロール本体を有する半導電性ゴムロールを以下のとおり作製した。
【0085】
ロール本体を形成する基材ゴムは、イオン導電性を有するエピクロロヒドリンゴム(日本ゼオン社製ハイドリンT3100)100重量部に、加硫促進剤(酸化亜鉛2種)計5重量部、加硫剤(硫黄)1重量部及び軟化剤(ステアリン酸)0.5重量部を添加配合したものを混練し、混合物を形成した。
【0086】
得られた混合物を押し出し機に投入し、直径が2mmで、長さが1200mmのステンレス製のマンドレル(中子)の周りにゴムを押し出し、マンドレルを当該ゴムで被覆した。被覆した基材ゴムの外径は15mmであった。
【0087】
次に、上記被覆成形物をオートクレーブにて加圧・加熱し加硫した後、中子であるマンドレルを引き抜いて貫通穴を残して、ゴムチューブを得、これを長さ335mmに切断した。
【0088】
この長さ335mmのゴムチューブの貫通穴に、体積抵抗率が6.0×10
-5Ω・cmであり、外径が3mmで、長さが344mmのステンレス製の線材をゴムチューブから左右対称の長さで露出するように挿入した。
【0089】
次に、ロール本体の長さが320mmで、露出した線材の長さが左右対称になるように、両端部の余分なゴムをカットし除去した。このロール本体を円筒研削盤にて、直径14mmまで研削加工した。こうして、いくつかの半導電性ゴムロールを作製した。
【0090】
また、作製した半導電性ゴムロールの内の1本の半導電性ゴム部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、8.1×10
7Ω・cmであった。
【0091】
さらに、作製した半導電性ゴムロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。印刷試験において、ロールがバウンドし画像を得ることができなかった。
【0092】
比較例2
ロール内部に線状の非構造材をもたない以外は
図1と同様の外形にしていくつかの半導電性樹脂ロールを作製した。
【0093】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、実施例2と同様であった。
【0094】
直径が14mmで、長さが320mmのロール本体形成用空域及びこの空域の両端面から同軸に外側にそれぞれ延びる直径が6mmで長さが12mmの軸部形成用空域とを有した金型を射出成型機に配置し、これに前記再ペレット化基材樹脂を投入しロールを成形した。こうして、直径が14mmで、長さが320mmの本体と、この本体の両端面からそれぞれ12mmの長さで突出する直径が6mmの軸部とからなる半導電性樹脂ロールをいくつか作製した。
【0095】
また、作製したロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、7.3×10
6Ω・cmであった。
【0096】
さらに、この半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。印刷試験において、感光ドラムのトナー画像を紙面に転写できず、画像を得ることができなかった。
【0097】
比較例3
本比較例では、基材樹脂の導電付与剤の量を変えた以外は、比較例2と同様にしていくつかの半導電性樹脂ロールを作製した。
【0098】
ロールの胴体部および軸部となる基材樹脂は、熱可塑性樹脂であるポリアセタール(ポリプラスチック製M130)100重量部に、導電性付与剤、カーボンファイバー(東レ製1401T30)7重量部、補強剤、グラスファイバー(セントラルグラスファイバー製EFT75−01)7重量部を、溶融混合し、ペレット化したものであった。
【0099】
また、作製したロールの内の1本の半導電性樹脂部の一部を切り取り、JIS K6911に準じて体積抵抗率を測定したところ、9.7×10
3Ω・cmであった。
【0100】
さらに、この半導電性樹脂ロールをプリンターの画像転写部における転写ロールとして配置し、印刷試験を行った。印刷試験において、感光ドラムのトナー画像を紙面に転写できず、画像を得ることができなかった。
【0101】
以上、本発明のいくつかの実施形態を実施例とともに説明したが、本発明は、それらの実施形態、実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、線状の非構造材を単一線材で構成したものとして示したが、撚線であってもよいし、1本に限らず、複数本であってもよい。また、上記実施形態では、線状の非構造材をロール本体の中心を通るものとして示したが、ロール本体の円柱面に露出しない限りにおいて、ロール本体内部であればいずれの領域で配置してもよい。しかしながら、好ましくは、以上説明した各実施形態におけるように、線状の非構造材をロール本体の中心を通るように配置する。ロール本体の円柱面と線状非構造材との距離が均一となり、帯電が均一となるからである。
【解決手段】 半導電性樹脂ロールは、半電性樹脂で形成され、第1端面及び第2端面を有する中実のロール本体を備え、ロール本体の第1端面側の第1端面及びその反対側の第2端面を有し、ロールの第1端面において露出する、通電のための電気接点を有する。ロール本体の円柱面は、その中央部に作用面を、両端部に2つの非作用面を規定し、作用面は、ロール本体の第1端面側の第1端及びその反対側の第2端を有する。ロールは、電気接点からロールの第2端面に向かって延びる少なくとも1つの線状の非構造材を内部に備え、非構造材は、ロール内において、作用面の第2端に対応する位置からロール本体の半径に相当する距離だけ内側に隔たった地点からロールの第2端面までの範囲内まで延びているとともに、半導電性樹脂が示す体積抵抗率よりも低い体積抵抗率を示す。