(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174194
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】配向膜およびそれを用いた液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20170724BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20170724BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20170724BHJP
C08L 79/08 20060101ALN20170724BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/1368
C08G73/10
!C08L79/08 Z
【請求項の数】13
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-96413(P2016-96413)
(22)【出願日】2016年5月12日
(62)【分割の表示】特願2012-19516(P2012-19516)の分割
【原出願日】2012年2月1日
(65)【公開番号】特開2016-173593(P2016-173593A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松森 正樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 慶枝
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】國松 登
【審査官】
磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/115080(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/115118(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/115078(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/115077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、
前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されており、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物とを前駆体とするポリイミドを含み、
前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする液晶表示装置。
【化1】
(但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30モル%以上90モル%以下は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む4価の有機基である。また、構造中に少なくとも1つの芳香族基を含まない4価の有機基である残りのY
1は、下記化学式(Y‐102)、(Y‐103)及び(Y‐104)からなる群から選択されるいずれかの4価の有機基を含む。)
【化2】
【請求項2】
前記配向膜は、前記第一の化合物及び前記第一の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、前記第二の化合物及び前記第二の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、を20:80〜80:20のモル比で含む、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
それぞれの前記X1のうちの50モル%以上は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む2価の有機基である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一の化合物はシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体と芳香族ジアミンとを用いて形成される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記X
1のうちの少なくとも一部は、下記化学式(X‐5)、(X‐18)、(X‐22)、(X‐23)、(X‐38)及び(X‐105)からなる群から選択されるいずれかの2価の有機基を含む、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【化3】
【請求項6】
ポリイミドと前記ポリイミドの前駆体とを含む配向膜であって、
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物を含み、
前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする液晶配向膜。
【化4】
(但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30モル%以上90モル%以下は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む4価の有機基である。また、構造中に少なくとも1つの芳香族基を含まない4価の有機基である残りのY
1は、下記化学式(Y‐102)、(Y‐103)及び(Y‐104)からなる群から選択されるいずれかの4価の有機基を含む。)
【化5】
【請求項7】
それぞれの前記X1のうちの50モル%以上は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む2価の有機基である、ことを特徴とする請求項6に記載の液晶配向膜。
【請求項8】
前記第一の化合物はシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体と芳香族ジアミンとを用いて形成される、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の液晶配向膜。
【請求項9】
前記X
1のうちの少なくとも一部は、下記化学式(X‐5)、(X‐18)、(X‐22)、(X‐23)、(X‐38)及び(X‐105)からなる群から選択されるいずれかの2価の有機基を含む、ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の液晶配向膜。
【化6】
【請求項10】
ポリイミドと前記ポリイミドの前駆体とを含む配向膜を形成する液晶配向膜形成用組成物であって、
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物を含み、
前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする液晶配向膜形成用組成物。
【化7】
(但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30モル%以上90モル%以下は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む4価の有機基である。また、構造中に少なくとも1つの芳香族基を含まない4価の有機基である残りのY
1は、下記化学式(Y‐102)、(Y‐103)及び(Y‐104)からなる群から選択されるいずれかの4価の有機基を含む。)
【化8】
【請求項11】
それぞれの前記X1のうちの50モル%以上は構造中に少なくとも1つの芳香族基を含む2価の有機基である、ことを特徴とする請求項10に記載の液晶配向膜形成用組成物。
【請求項12】
前記第一の化合物はシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体と芳香族ジアミンとを用いて形成される、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の液晶配向膜形成用組成物。
【請求項13】
前記X
1のうちの少なくとも一部は、下記化学式(X‐5)、(X‐18)、(X‐22)、(X‐23)、(X‐38)及び(X‐105)からなる群から選択されるいずれかの2価の有機基を含む、ことを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の液晶配向膜形成用組成物。
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板に挟持された液晶層を配向させる配向膜、およびその配向膜を形成するための配向膜形成用組成物、およびその配向膜を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は表示品質が高く、且つ薄型、軽量、低消費電力などといった特長からその用途を広げており、携帯電話用モニター、デジタルスチルカメラ用モニターなどの携帯向けモニターからデスクトップパソコン用モニター、印刷やデザイン向けモニター、医療用モニターさらには液晶テレビなど様々な用途に用いられている。これら用途拡大に伴い、液晶表示装置には高透過率化による高輝度化、低消費電力化、また低コスト化が強く求められている。
【0003】
通常、液晶表示装置の表示は一対の基板間に挟まれた液晶層の液晶分子に電界を印加することにより液晶分子の配向方向を変化させ、それにより生じた液晶層の光学特性の変化により行われる。電界無印加時の液晶分子の配向方向は、ポリイミド薄膜の表面にラビング処理を施した配向膜により規定されている。従来、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブ駆動型液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板のそれぞれに電極を設け、液晶層に印加する電界の方向が基板面に対してほぼ垂直になる、所謂縦電界になるように設定され、液晶層を構成する液晶分子の光旋光性を利用して表示を行う。縦電界方式の代表的な液晶表示装置として、ツイステッドネマチック(TN:Twisted Nematic)方式が知られている。
【0004】
TN方式の液晶表示装置においては視野角が狭いことが大きな課題の一つである。そこで、広視野角化を達成する表示方式としてIPS(In−Plane Switching)方式やVA(Vertically Alignment)方式が知られている。
【0005】
いくつかの方式の液晶表示装置において配向膜の体積固有抵抗が高いと液晶表示装置に残留電荷が溜まってしまい、表示画像が焼きつく残像が起こることが知られている。特許文献1にVA方式における配向膜の体積固有抵抗低減に関する提案がある。また、特許文献2に配向膜構造に関する提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−241249号公報
【特許文献2】特開2002−162630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の液晶表示装置に用いられる配向膜においては、表示画像の焼き付きの抑制が不十分であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。また、本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る液晶表示装置は、少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されており、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物とを前駆体とするポリイミドを含み、前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする。
【化1】
【0010】
但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は、構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む、4価の有機基である。
【0011】
また、前記配向膜は、前記第一の化合物及び前記第一の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、前記第二の化合物及び前記第二の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、を20:80〜80:20のモル比で含む、こととしてもよい。
【0012】
また、前記不飽和環状構造を含む4価の有機基は、下記化合物群Aに示される化合物から選択されるいずれかの化合物の4価の有機基である、こととしてもよい。
【化2】
【0013】
但し、A
1はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキレン基、−CR
2−、−CO−、−COO−、−NR−、−NH−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−Si−、および、−SiR
2−、から選択される構造であり、前記A
1に含まれるRはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から8のアルキル基、および、炭素数1から8のフルオロアルキル基から選択される構造である。
【0014】
また、前記化合物群Aに示される化合物中に含まれる前記不飽和環状構造を含む4価の有機基と結合する水素原子の少なくとも1つは、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、炭素数1から3のフルオロアルキル基、炭素数1から3のフルオロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、若しくは、臭素原子で置換されている、こととしてもよい。
【0015】
また、それぞれの前記X
1のうちの50%以上は構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む2価の有機基である、こととしてもよい。
【0016】
また、前記第一の化合物はシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体と芳香族ジアミンとを用いて形成される、こととしてもよい。
【0017】
本発明に係る配向膜は、ポリイミドと前記ポリイミドの前駆体とを含む配向膜であって、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物を含み、前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする。
【化3】
【0018】
但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基である。
【0019】
本発明に係る配向膜形成用組成物は、ポリイミドと前記ポリイミドの前駆体とを含む配向膜を形成する配向膜形成用組成物であって、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルである第一の化合物とポリアミド酸である第二の化合物を含み、前記第二の化合物の化学構造は下記式(1)で示される、ことを特徴とする。
【化4】
【0020】
但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【
図2A】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【
図3】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【
図4A】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【
図5】実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【
図6】実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【
図7】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【
図8】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
IPS方式の液晶表示装置における、配向膜(配向制御膜とも言う)の配向処理方法として、配向膜表面を布で擦るラビング配向技術に代わり、配向膜表面に光を照射することにより液晶配向能を付与する光配向技術が注目されている。光配向技術においては、焼き付き(残像とも言う)が大きな課題となっており、焼き付きを解決するため、配向膜に次の二つの特性が必要である点に発明者らは着目した。一つ目は長期間にわたって安定した液晶配向能(高アンカリング特性)であり、もう一つは配向膜の体積比抵抗の低減である。安定した液晶配向能を得るためには、光配向膜材料として化学構造中にシクロブタン誘導体を含むポリアミド酸エステルを用いることが有効である。しかし、ポリアミド酸エステルは体積比抵抗が高く、液晶駆動時に配向膜界面に直流電荷が蓄積し、焼き付きが生じてしまうという問題がある点に発明者らは着目した。
【0024】
そして、発明者らの鋭意検討の結果、ポリアミド酸エステルである第一の化合物を含む光配向膜材料の体積比抵抗を下げるためには、下記化学式(1)で示されるような化学構造のポリアミド酸である第二の化合物を当該光配向膜材料に混合することが有効であることが分かった。
【化5】
【0025】
但し、nは10〜10000の整数であり、それぞれのX
1は2価の有機基であり、また、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基である。また、上記化学式(1)におけるnは、高分子量化に伴い配向膜強度が高くなるため、配向膜の削れ耐性などが向上するため、あるいは、表示画像の焼き付きがより少ない配向膜を得るために20〜10000であることが好適であり、30〜10000であることが更に好適である。
【0026】
また、それぞれのY
1は4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの40%以上85%以下が構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基であることが好ましく、更にはそれぞれのY
1のうちの50%以上80%以下が構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む4価の芳香族基であることが特に好ましい。
【0027】
また、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は構造中に1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基であることとしてもよい。また、それぞれのY
1は4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの40%以上85%以下が構造中に1つの不飽和環状構造を含む4価の有機基であることとしてもよい、更にはそれぞれのY
1のうちの50%以上80%以下が構造中に1つの不飽和環状構造を含む4価の芳香族基であることとしてもよい。Y
1に1つの不飽和環状構造のみを含むことは、ポリアミド酸エステルである第一の化合物を含む光配向膜材料の溶媒への溶解安定性の観点から好ましい。
【0028】
また、上述の不飽和環状構造は、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、およびアントラセン環構造から選択される環状構造であることとしてもよい。また、上述の不飽和環状構造は、ベンゼン環構造、および、ナフタレン環構造から選択される環状構造であることが好ましい。不飽和環状構造がアントラセン環構造である場合、形成される配向膜が着色してしまう虞があるためである。また、上述の不飽和環状構造は、ベンゼン環構造であることが特に好ましい。不飽和環状構造がナフタレン環構造である場合、アントラセン環構造よりも顕著ではないが、形成される配向膜が着色してしまう虞があるためである。
【0029】
また、それぞれのY
1は4価の有機基で、それぞれのY
1のうちの30%以上90%以下は構造中に2つ以下のベンゼン環構造を含む4価の有機基であることとしてもよい。また、それぞれのY
1のうちの40%以上85%以下が構造中に2つ以下のベンゼン環構造を含む4価の有機基であることとしてもよい。更にはそれぞれのY
1のうちの50%以上80%以下が構造中に2つ以下のベンゼン環構造を含む4価の有機基であることとしてもよい。
【0030】
また、上述の不飽和環状構造は、炭化水素からなる炭素環構造のみならず、環構造に炭素以外の元素を含む複素環構造であることとしてもよい。しかしながら、不飽和環状構造が複素環構造である場合、形成される配向膜のコストが高くなり、また、形成される配向膜が着色してしまう虞があるため、不飽和環状構造は、炭化水素からなる炭素環構造である方がより好ましい。また、不飽和環状構造が複素環構造である場合、複素環構造に窒素原子を含むと、形成される配向膜の着色がより濃くなる虞がある。そのため、複素環構造に窒素原子を含まないことがより好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、ポリアミド酸に光導電性を付与することができ、液晶表示装置のバックライト(BL)からの光を吸収して抵抗を下げられるため、残像の解消に有効に作用する。不飽和環状構造の導入により分子構造中の共役系が拡張すると、吸収波長が長波長化してバックライトの可視光の吸収効率が高くなり、また共役電子系が拡張してπ電子が動きやすくなるため、光導電性の向上が期待できる。
【0032】
また、ポリアミド酸の構造中に不飽和環状構造を含む4価の有機基であるY
1の数が多いほど体積比抵抗が下がるが、多すぎると形成される配向膜の透過率の低下、光配向膜材量の溶媒への溶解安定性が低下するという問題がある。
【0033】
またそれぞれのY
1は構造中にシクロブタン構造を含まない4価の有機基であることが好ましい。すなわち、本発明に用いられるポリアミド酸は、その原料としてシクロブタン誘導体を含まないことが好ましい。Y
1が構造中にシクロブタン構造を含むと、光照射の際にポリアミド酸の高分子鎖が当該シクロブタン構造の部分で切断され、ポリアミド酸の分子量が低下してしまう。分子量低下によって配向膜が脆弱になってしまい、液晶配向能の安定性を低下、残像特性を悪化させてしまうため、Y
1が構造中にシクロブタン構造を含むことは好ましくない。
【0034】
本発明の液晶表示装置における配向膜は、ポリアミド酸エステルである第一の化合物及び当該第一の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、ポリアミド酸である第二の化合物及び当該第二の化合物を前駆体とするポリイミドの合計と、を20:80〜80:20のモル比で含むことが好ましく、より好ましくは30:70〜から70:30のモル比で含み、更に好ましくは40:60〜60:40のモル比で含む。配向膜において、ポリアミド酸エステル及びポリアミド酸エステルを前駆体とするポリイミドの比率が高すぎると当該配向膜の抵抗が高くなってしまい、ポリアミド酸及びポリアミド酸を前駆体とするポリイミドの比率が高すぎると当該配向膜の液晶配向能の安定性が低下してしまうため、残像特性が悪化し、好ましくない。
【0035】
また、第二の化合物の化学構造中に含まれるY
1のうちの、不飽和環状構造を含む4価の有機基はそれぞれ独立に、下記化合物群Aに示される化合物から選択されるいずれかの化合物の4価の有機基であることとしてもよい。
【0036】
また、第二の化合物の化学構造中に含まれるY
1のうちの、不飽和環状構造を含む4価の有機基は、下記化合物群Aに示される化合物から選択されるいずれか1種の化合物の4価の有機基であることとしてもよい。
【化6】
【0037】
但し、A
1はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキレン基、−CR
2−、−CO−、−COO−、−NR−、−NH−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−Si−、および、−SiR
2−、から選択される構造であり、 前記A
1に含まれるRはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から8のアルキル基、および、炭素数1から8のフルオロアルキル基から選択される構造である。
【0038】
また、前記化合物群Aに示される化合物の構造中に含まれる不飽和環状構造と結合する水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、炭素数1から3のフルオロアルキル基、炭素数1から3のフルオロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、若しくは、臭素原子で置換されている、又は、未置換である。すなわち、前記化合物群Aに示される化合物の構造中に含まれる不飽和環状構造と結合する水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、炭素数1から3のフルオロアルキル基、炭素数1から3のフルオロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、若しくは、臭素原子で置換されていることとしてもよい。
【0039】
以下に、Y
1の不飽和環状構造を含む4価の有機基の具体的構造を下記化学式(Y−1)〜(Y−32)に示す。但し、これらに限定されるものではない。
【化7A】
【化7B】
【化7C】
【0040】
上記例示した不飽和環状構造を含む4価の有機基に対し、Y
1に対応する脂肪族基(不飽和環状構造を含まない4価の有機基)の代表例は以下のようなものがある。但し、これらに限定されるものではない。
【化8】
【0041】
また、上記化学式(1)におけるX
1のうちの50%以上は構造中に不飽和環状構造を含む2価の有機基であることが好ましい。また、上記化学式(1)におけるX
1のうちの60%以上は構造中に不飽和環状構造を含む2価の有機基であることがより好ましい。また、上記化学式(1)におけるX
1のうちの70%以上は構造中に不飽和環状構造を含む2価の有機基であることが特に好ましい。本構成とすることにより、ポリアミド酸である第二の化合物の抵抗を下げることができ、残像特性の向上に有効に作用する。
【0042】
また、第二の化合物の化学構造中に含まれるX
1のうちの、不飽和環状構造を含む2価の有機基はそれぞれ独立に、下記化合物群Bに示される化合物から選択されるいずれかの化合物の2価の有機基であることとしてもよい。
【0043】
また、第二の化合物の化学構造中に含まれるX
1のうちの、不飽和環状構造を含む2価の有機基は、下記化合物群Bに示される化合物から選択されるいずれか1種の化合物の2価の有機基であることとしてもよい。
【化9】
【0044】
但し、A
2はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキレン基、−CR
2−、−CO−、−COO−、−NR−、−NH−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、−Si−、および、−SiR
2−、から選択される構造であり、前記A
2に含まれるRはそれぞれ独立に、水素、炭素数1から8のアルキル基、および、炭素数1から8のフルオロアルキル基から選択される構造である。また、A
3は単結合または炭素数1から8のアルキレン基である。
【0045】
また、前記化合物群Bに示される化合物の構造中に含まれる不飽和環状構造と結合する水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、炭素数1から3のフルオロアルキル基、炭素数1から3のフルオロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、若しくは、ホスホン酸基で置換されている、又は、未置換である。すなわち、前記化合物群Bに示される化合物の構造中に含まれる不飽和環状構造と結合する水素原子はそれぞれ独立に、炭素数1から3のアルキル基、炭素数1から3のアルコキシ基、炭素数1から3のフルオロアルキル基、炭素数1から3のフルオロアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、若しくは、ホスホン酸基で置換されていることとしてもよい。
【0046】
また、上述の不飽和環状構造を含む2価の有機基における不飽和環状構造は、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、およびアントラセン環構造から選択される環状構造であることとしてもよい。また、上述の不飽和環状構造を含む2価の有機基における不飽和環状構造は、ベンゼン環構造、および、ナフタレン環構造から選択される環状構造であることが好ましい。不飽和環状構造がアントラセン環構造である場合、形成される配向膜が着色してしまう虞があるためである。また、上述の不飽和環状構造を含む2価の有機基における不飽和環状構造は、ベンゼン環構造であることが特に好ましい。不飽和環状構造がナフタレン環構造である場合、アントラセン環構造よりも顕著ではないが、形成される配向膜が着色してしまう虞があるためである。
【0047】
また、上述の不飽和環状構造を含む2価の有機基における不飽和環状構造は、炭化水素からなる炭素環構造のみならず、環構造に炭素以外の元素を含む複素環構造であることとしてもよい。しかしながら、不飽和環状構造が複素環構造である場合、形成される配向膜のコストが高くなり、また、形成される配向膜が着色してしまう虞があるため、不飽和環状構造は、炭化水素からなる炭素環構造である方がより好ましい。また、不飽和環状構造が複素環構造である場合、複素環構造に窒素原子を含むと、形成される配向膜の着色がより濃くなる虞がある。そのため、複素環構造に窒素原子を含まないことがより好ましい。
【0048】
以下に、X
1の不飽和環状構造を含む2価の有機基の具体的構造を下記化学式(X−1)〜(X−39)に示す。但し、これらに限定されるものではない。
【化10A】
【化10B】
【化10C】
【0049】
但し、上記化学式(X−31)、(X−32)、(X−33)において、mは1から6の整数である。
【0050】
上記例示した不飽和環状構造を含む2価の有機基に対し、X
1に対応する脂肪族基(不飽和環状構造を含まない2価の有機基)の代表例は以下のようなものがある。但し、これらに限定されるものではない。
【化11】
【0051】
また、本発明の液晶表示装置に備えられる配向膜に含まれるポリアミド酸エステルである第一の化合物のうちの50モル%は、下記化学式(2)で示される化合物であることは好ましい。また、本発明の液晶表示装置に備えられる配向膜に含まれるポリアミド酸エステルである第一の化合物のうちの70モル%は、下記化学式(2)で示される化合物であることは好ましい。本発明の液晶表示装置に備えられる配向膜に含まれるポリアミド酸エステルである第一の化合物のうちの90モル%は、下記化学式(2)で示される化合物であることは特に好ましい。
【化12】
【0052】
但し、nは10〜10000の整数であり、上記化学式(2)で示される化合物において、X
2は構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む2価の有機基であり、Y
2はそれぞれ独立に炭素数1から8のアルキル基または炭素数1から8のアルコキシ基であり、Z
2はそれぞれ独立に炭素数1から8のアルキル基である。本構成とすることにより、安定した液晶配向能を得ることができ、残像特性の向上に有効に作用する。また、上記化学式(2)におけるnは、高分子量化に伴い配向膜強度が高くなるため、配向膜の削れ耐性などが向上するため、あるいは、表示画像の焼き付きがより少ない配向膜を得るために20〜10000であることが好適であり、30〜10000であることが更に好適である。
【0053】
また、上記化学式(2)で示される化合物におけるX
2に対応する、構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む2価の有機基の代表例は、上記化学式(1)で示される化合物におけるX
1に対応する、構造中に少なくとも1つの不飽和環状構造を含む2価の有機基にて例示した、上記化合物群Bに示される化合物から選択されるいずれか1種の化合物の2価の有機基が同様に挙げられる。
【0054】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない液晶表示装置用配向膜および該配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【0055】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。これら実施例に用いた本発明による配向制御膜はその一例を示したもので、その他の構造についても同様の効果が確認されている。なお、以下では、薄膜トランジスタ等のアクティブ素子を形成した基板をアクティブマトリクス基板という。また、その対向基板にカラーフィルタを有する場合は、これをカラーフィルタ基板ともいう。また、本発明において、目標として望ましいコントラストは500:1以上であり、目標とする残像が消失する時間は5分以内が望ましい。なお、残像消失時間は下記の実施例において定義される方法にて決定される。
【実施例1】
【0056】
図1は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。また、
図2は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
図2A実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
図2Bは
図2Aに示す2B線に沿った断面図である。
図2Cは
図2Aに示す2C線に沿った断面図である。また、
図1は、
図2Aに示す2B線に沿った断面の一部に対応する。
【0057】
なお、
図2Bと
図2Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、
図2Aの2B線と2C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、
図2Bでは半導体膜116は図示せず、
図2Cではコモン電極103とコモン配線120を接続するスルーホール118は1箇所のみを代表して示してある。
【0058】
本実施例では、アクティブマトリクス基板(第一の基板)としてのガラス基板101上には、Cr(クロム)からなる走査配線(ゲート電極)104及び共通電極配線(コモン配線)120が配置され、このゲート電極104及びコモン配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。
【0059】
また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)115の能動層として機能するようにされている。また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにCr・Mo(クロム・モリブデン)よりなる信号配線(ドレイン電極)106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。
【0060】
また、
図2Cに示すように、ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を貫通して形成されたスルーホール118を介してコモン配線120に接続するコモン電極103がオーバーコート層(有機保護膜)112上に配置されている。また、
図2Aに示すように、平面的には1画素の領域において、その画素電極105に対向するように、コモン配線120からスルーホール118を介して引き出されているコモン電極103が形成されている。
【0061】
本実施例においては、画素電極105は、有機保護膜112の下層の保護絶縁膜108のさらに下層に配置され、有機保護膜112上に共通電極103が配置された構成となっている。これらの複数の画素電極105と共通電極103とに挟まれた領域で、1画素が構成される構造となっている。また、以上のように構成した単位画素をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板の表面、すなわち、共通電極103が形成された有機保護膜112上には配向制御膜109が形成されている。
【0062】
一方、
図1に示すように、対向基板を構成するガラス基板102には、カラーフィルタ層111が遮光膜(ブラックマトリクス)113で画素毎に区切られて配置され、また、カラーフィルタ層111及び遮光膜113上は、透明な絶縁性材料からなる有機保護膜112で覆われている。さらに、その有機保護膜112上にも配向制御膜109が形成されてカラーフィルタ基板(第二の基板)を構成している。
【0063】
なお、アクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、で一対の基板を構成している。したがって本明細書中ではアクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、をまとめて一対の基板ということがある。
【0064】
これらの配向制御膜109は、ラビング配向法または高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により液晶配向能が付与されている。
【0065】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101とカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102とが、配向制御膜109の面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成される液晶層(液晶組成物層)110bが配置される。また、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102の外側の面のそれぞれには、偏光板114が形成されている。
【0066】
以上のようにして、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置(TFT液晶表示装置)が構成される。このTFT液晶表示装置では、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは、電界無印加時には対向配置されているガラス基板101,102面にほぼ平行に配向された状態となり、配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。
【0067】
ここで、ゲート電極104に電圧を印加してTFT115をオンにすると、画素電極105と共通電極103の間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物層110bが持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0068】
また、有機保護膜112は、絶縁性、透明性に優れるアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂又はポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いればよい。また、有機保護膜112として光硬化性の透明な樹脂を用いてもよいし、ポリシロキサン系の樹脂など無機系の材料を用いてもよい。さらには、有機保護膜112が配向制御膜109を兼ねるものであってもよい。
【0069】
一般的に、IPS方式においては、従来のTN方式に代表される縦電界方式と異なり基板面との界面チルトが原理的に必要なく、界面チルト角が小さいほど視角特性が良いことが知られており、特に1度以下にすることにより、液晶表示装置の視角による色変化、明度変化を大幅に抑制することが出来るため、チルト角が発生しにくい光配向法による配向が効果的である。
【0070】
次に、本実施例の液晶表示装置の製造方法として、配向制御膜のラビングレス配向法を用いた配向制御膜の形成について説明する。本実施例による配向制御膜の形成工程のフローは、以下(1)から(4)のようになる。
(1)配向制御膜の塗膜・形成(表示領域全面にわたり均一な塗膜を形成する)
(2)配向制御膜のイミド化焼成(ワニス溶剤の除去と耐熱性の高いポリイミド化を促進する)
(3)偏光照射による液晶配向能付与(表示領域に均一な配向能を付与する)
(4)(加熱、赤外線照射、遠赤外線照射、電子線照射、放射線照射)による配向能の促進・安定化
【0071】
以上の4段階のプロセスを介して配向制御膜を形成するが、上記(1)から(4)のプロセスの順番に限定されるものではなく、以下(a)(b)のような場合には更なる効果が期待される。
(a)上記(3)(4)を時間的に重なるように処理することにより液晶配向能付与を加速し架橋反応などを誘起することで、更に効果的に配向制御膜を形成することが可能となる。
(b)上記(4)の加熱、赤外線照射、遠赤外線照射などを用いる場合には、上記(2)(3)(4)を時間的にオーバーラップさせることにより、上記(4)のプロセスが上記(2)のイミド化プロセスを兼ねることも可能となり、短時間に配向制御膜の形成が可能となる。
【0072】
次に、本実施例の具体的な製造方法について説明する。アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102として、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101に形成する薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。
【0073】
走査配線104、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。なお、共通電極103と画素電極105については、低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用することで透明電極を構成して、より高い輝度特性を達成することも可能である。
【0074】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある有機保護膜112を形成した。
【0075】
次に、フォトリソグラフィ、エッチング処理により、
図2Cに示すように、共通電極配線120までスルーホール118を形成し、共通電極配線120と接続する共通電極103をパターニングして形成した。
【0076】
その結果、単位画素(1画素)内では、
図2Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0077】
本実施例において、配向制御膜109として、上記化学式(1)中のX
1およびY
1の構造が下記表1Aに示す構造であるポリアミド酸と、上記化学式(2)中のX
2が上記化学式(X−1)の構造であり、上記化学式(2)中の4箇所のY
2のうちの2箇所が水素原子で、2箇所がメチル基であり、上記化学式(2)中の2箇所のZ
2がメチル基であるポリアミド酸エステルと、を50:50の割合(モル比)で混合した配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度(配向膜材料)5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、膜厚約130nmの緻密な配向制御膜109を形成した。本発明においてイミド化率は25〜100%の範囲にて適宜選択されることとしてよい。本実施例では第一の化合物及び第二の化合物のそれぞれのイミド化率は約90%である。また、第二の化合物における平均重合度はn=30であり、すなわち上記化学式(1)におけるnはn=30を含むものである。
【0078】
【表1A】
【0079】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様のポリアミド酸アミドワニスを印刷形成し、約100nmの緻密なポリイミド及びポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。その表面に液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、240nm〜320nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約10:1の直線偏光とし、2.0J/cm
2の照射エネルギーで照射した。その結果、配向制御膜表面の液晶分子の配向方向は、照射した偏光UVの偏光方向に対し、直交方向であることがわかった。
【0080】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの液晶配向能を有する配向制御膜109を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させ、周辺部にシ−ル剤を塗布し、液晶表示装置となる液晶表示パネル(以下「セル」ともいう。)を組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。このセルに、誘電異方性Δεが正で、その値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。
【0081】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δn・d)は、約0.31μmとなる。Δn・dは0.2μm≦Δn・d≦0.5μmの範囲が望ましく、この範囲を超えると白表示が色づいてしまうなどの問題がある。また、このパネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。この液晶表示パネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0082】
次に、本実施例による液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比500対1の高品位な表示が確認されるとともに、中間調表示時における広視野角が確認された。
【0083】
また、本実施例による液晶表示装置の画像の焼き付け、残像を定量的に測定するため、ホトダイオードを組合せたオシロスコープを用いて評価した。まず、画面上に最大輝度でウインドウパターンを100時間表示し、その後、残像が最も目立つ中間調表示、ここでは、輝度が最大輝度の10%となるように全面を切り換え、ウインドウパターンのエッジ部のパターンが消えるまでの時間を残像消失時間として評価した。ただし、ここで許容される残像消失時間は5分以下である。
【0084】
本実施例で作製した液晶表示装置について、残像消失時間を評価した。結果を表1Bに示す。
【0085】
【表1B】
【実施例2】
【0086】
図3は、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
図4Aは、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
図4Bは
図4Aに示す4B線に沿った断面図である。
図4Cは
図4Aに示す4C線に沿った断面図である。
【0087】
また、
図4は、本実施例による液晶表示装置の1画素付近の構成を説明するアクティブマトリクス基板の模式図であり、
図4Aは平面図、
図4Bは
図4Aに示す4B線に沿った断面図、
図4Cは
図4Aの4C線に沿った断面図を示す。また、
図3は
図4Aに示す4B線に沿った断面の一部に対応する。
【0088】
なお、
図4Bと
図4Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、
図4Aの4B線と4C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、
図4Bでは半導体膜116は図示していない。
【0089】
本実施例では、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101上には、Crよりなるゲート電極104及び共通電極配線120が配置され、ゲート電極104と共通電極配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子である薄膜トランジスタ115の能動層として機能するようにされている。
【0090】
また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにクロム・モリブデンよりなるドレイン電極106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。この保護絶縁膜108上には、有機保護膜112が配置されている。この有機保護膜112は、例えば、アクリル樹脂などの透明な材料から構成する。また、画素電極105はITO(In
2O
3:Sn)などの透明電極から構成されている。共通電極103は、ゲート絶縁膜107、保護絶縁膜108及び有機保護膜112を貫通するスルーホール118を介して、共通電極配線120に接続している。
【0091】
液晶を駆動する電界を与える場合に、画素電極105と対をなす共通電極103は、平面的に1画素の領域を囲うように形成されている。また、この共通電極103は、有機保護膜112の上に配置されている。そして、この共通電極103は、上部から見たときに下層に配置しているドレイン電極106、走査配線104及び能動素子である薄膜トランジスタ115を隠すように配置され、半導体膜116を遮光する遮光層を兼ねている。
【0092】
以上のように構成した単位画素(1画素)をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101の表面、すなわち、有機保護膜112上及びその上に形成された共通電極103の上には、配向制御膜109が形成されている。一方、対向基板を構成するガラス基板102にも、カラーフィルタ層111の上に形成される有機保護膜112の上には、配向制御膜109が形成されている。
【0093】
ここで、実施例1と同様に、高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により、これらの配向制御膜109に液晶配向能が付与されている。
【0094】
そして、ガラス基板101と対向ガラス基板102が、配向制御膜109の形成面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成された液晶組成物層110bが配置される。また、ガラス基板101及び対向ガラス基板102の外側の面のそれぞれには偏光板114が形成されている。
【0095】
このように、本実施例においても、先に述べた実施例1と同様に、画素電極105は、有機保護膜112及び保護絶縁膜108の下層に配置され、画素電極105と有機保護膜112との上に共通電極103が配置された構成となっている。また、共通電極103の電気抵抗が十分低い場合には、この共通電極103は、最下層に形成されている共通電極配線120も兼ねることができる。その際には、最下層に配置している共通電極配線120の形成及びそれに伴うスルーホール118の加工を省くことができる。
【0096】
本実施例では、
図4Aに示すように、格子状に形成された共通電極103に囲まれた領域で1画素が構成され、画素電極105と合わせて1画素を4つの領域に分割するように配置されている。また、画素電極105及びそれと対向する共通電極103がお互いに平行に配置されたジグザグな屈曲構造からなり、1画素が2つ以上の複数の副画素を形成している。これにより面内での色調変化を相殺する構造となっている。
【0097】
次に、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101及び102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104は、アルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120及び信号配線106は、クロム膜をパターニングし、画素電極105は、ITO膜をパターニングし、
図4Aに示すように、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0098】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、
図4Cに示すように、共通電極配線120まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、で1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間のカラーフィルタ層111の境界部分の段差凹凸を平坦化した。
【0099】
その後、約7μm径にスルーホール118を再度エッチング処理し、その上から共通電極配線120と接続する共通電極103を、ITO膜をパターニングして形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。さらに、この共通電極103は、信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0100】
その結果、単位画素内では
図4Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板が得られた。
【0101】
本実施例において、配向制御膜109として、上記化学式(1)中のX
1およびY
1の構造が下記表2Aに示す構造であるポリアミド酸と、上記化学式(2)中のX
2が上記化学式(X−1)80モル%、(X−26)20モル%の構造であり、上記化学式(2)中の4箇所のY
2のうちの2箇所が水素原子で、2箇所がメチル基であり、上記化学式(2)中の2箇所のZ
2がメチル基であるポリアミド酸エステルと、を60:40の割合(モル比)で混合した配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度(配向膜材料)5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、膜厚約130nmの緻密な配向制御膜109を形成した。本実施例では第一の化合物及び第二の化合物のそれぞれのイミド化率は約90%である。また、第二の化合物における平均重合度はn=30であり、すなわち上記化学式(1)におけるnはn=30を含むものである。
【表2A】
【0102】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを2.5J/cm
2の照射エネルギーで照射した。
【0103】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの配向制御膜を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させて、周辺部にシール剤を塗布し、液晶表示パネルを組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。
【0104】
この液晶表示パネルに誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。このパネルのリタデーション(Δnd)は、約0.31μmとなる。
【0105】
また、この液晶表示パネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。このパネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0106】
本実施例で作製した液晶表示装置について、実施例1と同様にして残像消失時間を評価した。結果を表2Bに示す。
【0107】
【表2B】
【実施例3】
【0108】
図5は、実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。
図5に示すように、本実施例では、保護絶縁膜108の下層に配置した画素電極105を、スルーホール118を介して有機保護膜112上に引き上げて共通電極103と同層に配置した。この構成とした場合には、液晶を駆動する電圧をさらに低減することが可能である。
【0109】
以上のように構成されたTFT液晶表示装置では、電界無印加時には、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは対向配置されているガラス基板101と102の面にほぼ平行な状態となり、光配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。ここで、ゲート電極104に電圧を印加して薄膜トランジスタ115をオンにすると、画素電極105と共通電極103との間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物が持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0110】
以下、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104はアルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105はクロム膜をパターニングして形成した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1.0μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間の段差凹凸を平坦化した。
【0111】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、
図5に示すように、ソース電極105まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からソース電極105と接続する画素電極105を、ITO膜をパターニングして形成した。また、共通電極配線120についても約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からITO膜をパターニングして共通電極103を形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとし、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。さらに、この共通電極103は信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0112】
その結果、単位画素内に2種類のスルーホール118が形成されている以外は、実施例2とほぼ同様に、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0113】
以上のように、画素構造と、用いる配向制御膜以外は、実施例2と同様として、
図5に示すように、液晶表示装置を作製した。
【0114】
本実施例において、配向制御膜109として、上記化学式(1)中のX
1およびY
1の構造が次の下記表3Aに示す構造であるポリアミド酸と、上記化学式(2)中のX
2が上記化学式(X−16)30モル%、(X−25)70モル%の構造であり、上記化学式(2)中の4箇所のY
2のうちの3箇所が水素原子であり、1箇所がメチル基、上記化学式(2)中の2箇所のZ
2がt−ブチル基であるポリアミド酸エステルと、を20:80の割合で混合した配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度(配向膜材料)5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、膜厚約130nmの緻密な配向制御膜109を形成した。本実施例では第一の化合物及び第二の化合物のそれぞれのイミド化率は約90%である。また、第二の化合物における平均重合度はn=30であり、すなわち上記化学式(1)におけるnはn=30を含むものである。
【0115】
【表3A】
【0116】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを2.5J/cm
2の照射エネルギーで照射した。
【0117】
本実施例で作製した液晶表示装置について、実施例1と同様にして残像消失時間を評価した。結果を表3Bに示す。
【0118】
【表3B】
【実施例4】
【0119】
図6は、実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例では、電極などによる段差が大きい構造となっている。
図6において、薄膜トランジスタ115のゲート電極104と共通電極103とを同層に形成し、共通電極103と画素電極105による電界117によって、液晶分子110aはその電界方向に向きを変える。
【0120】
また、上記した各実施例においては、1つの画素における共通電極103と画素電極105から構成される表示領域は、複数組設けることが可能である。このように、複数組設けることによって、1つの画素が大きい場合でも、画素電極105と共通電極103との間の距離を短くできるので、液晶を駆動させるために印加する電圧を小さくできる。
【0121】
また、上記した各実施例においては、画素電極と共通電極の少なくとも一方を構成する透明導電膜の材料としては、特に制限はないが、加工の容易さ、信頼性の高さ等を考慮して、インジウム・チン・オキサイド(ITO)のようなチタン酸化物にイオンドープされた透明導電膜又はイオンドープされた亜鉛酸化物を用いるのが望ましい。
【0122】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104、共通電極配線120、信号配線106、画素電極105及び共通電極103は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0123】
本実施例において、配向制御膜109として、上記化学式(1)中のX
1およびY
1の構造が下記表4Aに示す構造であるポリアミド酸と、上記化学式(2)中のX
2が上記化学式(X−1)90モル%、(X−33)(但し、m=3)10モル%の構造であり、上記化学式(2)中の4箇所のY
2のうちの2箇所が水素原子であり、2箇所がメチル基であり、上記化学式(2)中の2箇所のZ
2がメチル基であるポリアミド酸エステルを80:20の割合で混合した配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度(配向膜材料)5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、膜厚約130nmの緻密な配向制御膜109を形成した。本実施例では第一の化合物及び第二の化合物のそれぞれのイミド化率は約90%である。また、第二の化合物における平均重合度はn=30であり、すなわち上記化学式(1)におけるnはn=30を含むものである。
【0124】
【表4A】
【0125】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを2.5J/cm
2の照射エネルギーで照射した。その結果、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0126】
以上のように、画素構造以外は実施例1と同様として、
図6に示す本実施例の液晶表示装置を作製した。
【0127】
本実施例で作製した液晶表示装置について、実施例1と同様にして残像消失時間を評価した。結果を表4Bに示す。
【0128】
【表4B】
【実施例5】
【0129】
図7は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例において、画素電極105と共通電極103は、ITOにより形成されており、共通電極103は画素のほぼ全体を覆うベタ電極で構成されている。本構成により電極上も透過部として利用することができ、開口率を向上することができる。また、電極間隔を短くすることができ、電界を効率よく液晶に印加できる。
【0130】
図8は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図であり、薄膜トランジスタ115、共通電極103、画素電極105、信号配線106の構造を示す。
【0131】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101上には、共通電極103、画素電極105、信号配線106及び走査配線104の短絡を防止するためのゲート絶縁膜107と、薄膜トランジスタ115、画素電極105及び信号配線106を保護する保護絶縁膜108を形成してTFT基板とする。
【0132】
薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線(ゲート電極)104はアルミニウム膜をパターニングし、信号配線(ドレイン電極)106はクロム膜をパターニングし、そして共通電極103と画素電極105とはITOをパターニングして形成する。
【0133】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.2μmと0.3μmとした。容量素子は画素電極105と共通電極103でゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を挟む構造として形成する。
【0134】
画素電極105は、ベタ形状の共通電極103の上層に重畳する形で配置されている。画素数は1024×3(R,G,Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とする。
【0135】
ガラス基板102上には、実施例1と同様に、ブラックマトリクス113付きカラーフィルタ層111を形成し、対向カラーフィルタ基板とした。
【0136】
本実施例において、配向制御膜109として、上記化学式(1)中のX
1およびY
1の構造が下記表5Aに示す構造であるポリアミド酸と、上記化学式(2)中のX
2が上記化学式(X−1)75モル%、(X−31)(但し、m=2)25モル%の構造であり、上記化学式(2)中の4箇所のY
2のうち2箇所が水素原子で、2箇所がメチル基であり上記化学式(2)中の2箇所のZ
2がメチル基であるポリアミド酸エステルを50:50の割合で混合した配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度(配向膜材料)5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、膜厚約130nmの緻密な配向制御膜109を形成した。本実施例では第一の化合物及び第二の化合物のそれぞれのイミド化率は約90%である。また、第二の化合物における平均重合度はn=30であり、すなわち上記化学式(1)におけるnはn=30を含むものである。
【0137】
【表5A】
【0138】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様の配向制御膜109を形成した。
【0139】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを2.5J/cm
2の照射エネルギーで照射した。
【0140】
TFT基板及びカラーフィルタ基板における配向制御膜109の配向方向は互いにほぼ平行とした。これらの基板間に平均粒径が4μmのポリマービーズをスペーサとして分散し、TFT基板とカラーフィルタ基板との間に液晶分子110aを挟み込んだ。液晶分子110aは、実施例1と同じ液晶組成物Aを用いた。
【0141】
TFT基板とカラーフィルタ基板とを挟む2枚の偏光板114はクロスニコルに配置した。そして、低電圧で暗状態となり、高電圧で明状態をとるノーマリークローズ特性を採用した。
【0142】
本実施例で作製した液晶表示装置について、実施例1と同様にして残像消失時間を評価した。結果を表5Bに示す。
【0143】
【表5B】
【符号の説明】
【0144】
101,102 ガラス基板、103 共通電極(コモン電極)、104 走査配線(ゲート電極)、105 画素電極(ソース電極)、106 信号配線(ドレイン電極)、107 ゲート絶縁膜、108 保護絶縁膜、109 配向制御膜、110a 液晶分子、110b 液晶層(液晶組成物層)、111 カラーフィルタ層、112 オーバーコート層(有機保護膜)、113 遮光膜(ブラックマトリクス)、114 偏光板、115 薄膜トランジスタ(TFT)、116 半導体膜(アモルファスシリコン又はポリシリコン)、117 電界(電界方向)、118 スルーホール、120 共通電極配線(コモン配線)。