(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず
図1を参照して本発明の第1実施の形態におけるフロントフォーク10について説明する。
図1は第1実施の形態におけるフロントフォーク10の断面図である。フロントフォーク10は、二輪車の車輪(図示せず)の両側面に取り付けられる装置であり、平行に配置される第1緩衝器20及び第2緩衝器100を備えている。第1緩衝器20は第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70(減衰力発生部)を内蔵し、第2緩衝器100は減衰力発生部を内蔵しないで、第1気室132及び第2ばね141(コイルばね)を内蔵する。
【0011】
第1緩衝器20は、第1チューブ21に第2チューブ22が出入りするテレスコピック型であり、車体側ブラケット(図示せず)に連結される円筒状の第1チューブ21と、車輪側ブラケット23に連結される円筒状の第2チューブ22とを備えている。第1緩衝器20は、路面の凹凸による衝撃が車輪(図示せず)に入力されると、第2チューブ22が第1チューブ21に出入りして伸縮する。
【0012】
本実施の形態では、車体側の第1チューブ21に車輪側の第2チューブ22が出入りする倒立型の第1緩衝器20を説明するが、これに限るものではない。車体側の第1チューブ21が車輪側の第2チューブ22に出入りする正立型の第1緩衝器20にすることは当然可能である。
【0013】
第1チューブ21は、上端の開口がフォークボルト24により閉塞される。フォークボルト24は、Oリングを介してシリンダ31の内周に挿入され螺着される。第1チューブ21は、フォークボルト24によりシリンダ31を吊り下げた状態に保持する。シリンダ31は、シリンダ31の上部に位置する円筒状の大径部32と、段部34を介して大径部32に連なる円筒状の小径部35とを備えている。
【0014】
第2チューブ22は、段部34よりも車輪側ブラケット23側にコイルばね61(第1ばねの一部)が設定される。コイルばね61は、第1チューブ21及び第2チューブ22を伸長方向へ付勢するばねである。第1チューブ21及び第2チューブ22の内側でシリンダ31の外側にリザーバ37が設けられる。
【0015】
リザーバ37は、作動油が貯留する油室と、自由界面を介して油室と接触する気室とが形成される。気室に閉じ込められた気体がエアばね(第1ばねの一部)を構成する。リザーバ37の気室のエアばね及びコイルばね61の弾性力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0016】
車輪側ブラケット23は、ボトムボルト42がOリングを介して螺着される。ボトムボルト42はロッド40の下端を螺着する。ロッド40は、中心軸に沿って小径部35から段部34を通って大径部32まで突出し、ピストン50を支持する。ピストン50はシリンダ31をピストン側油室51とロッド側油室52とに区画する。
【0017】
第2緩衝器100は、第3チューブ101に第4チューブ102が出入りするテレスコピック型であり、車体側ブラケット(図示せず)に連結される円筒状の第3チューブ101と、車輪側ブラケット103に連結される円筒状の第4チューブ102とを備えている。第2緩衝器100は、路面の凹凸による衝撃が車輪(図示せず)に入力されると、第4チューブ102が第3チューブ101に出入りして伸縮する。
【0018】
本実施の形態では、車体側の第3チューブ101に車輪側の第4チューブ102が出入りする倒立型の第2緩衝器100を説明するが、これに限るものではない。車体側の第3チューブ101が車輪側の第4チューブ102に出入りする正立型の第2緩衝器100にすることは当然可能である。
【0019】
第3チューブ101は、上端の開口がフォークボルト104により閉塞される。フォークボルト104は、Oリングを介してシリンダ110の内周に挿入され螺着される。第3チューブ101は、フォークボルト104によりスリーブ110aを介してシリンダ110を吊り下げた状態に保持する。シリンダ110は、シリンダ110の上部に位置する円筒状の大径部111と、段部113を介して大径部111に連なる円筒状の小径部114とを備えている。
【0020】
第4チューブ102は、下端の開口が車輪側ブラケット103及びボトムボルト122で塞がれている。ボトムボルト122はロッド120の下端を螺着する。ロッド120は、中心軸に沿って小径部114から段部113を通って大径部111まで突出し、ピストン130を支持する。
【0021】
ピストン130により大径部111内に第1気室132が形成され、第3チューブ101及び第4チューブ102の内側でシリンダ110の外側に第2気室134が形成される。第4チューブ102は下部に潤滑油が貯留しているので、第4チューブ102に貯留する潤滑油の液面(図示せず)から上方の空間(シリンダ110を除く)が第2気室134である。第1気室132及び第2気室134に閉じ込められた気体がエアばねを構成する。
【0022】
第4チューブ102は、段部113よりも車輪側ブラケット103側に第2ばね141が設定される。第2ばね141は、第3チューブ101及び第4チューブ102を伸長方向へ付勢する金属製のコイルばねである。第1気室132及び第2気室134によるエアばね及び第2ばね141の弾性力が、車両が路面から受ける衝撃力を吸収する。
【0023】
第1緩衝器20の減衰力発生部(第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70)は、第1緩衝器20のコイルばね61及びエアばね(リザーバ37の気室)、並びに、第2緩衝器100の第1気室132及び第2気室134によるエアばね及び第2ばね141の弾性力による伸縮振動を制振する減衰力を発生する。
【0024】
フロントフォーク10は、大径部32,111及び小径部35,114を備えるシリンダ31,110が、隣り合う第1緩衝器20の第1チューブ21及び第2緩衝器100の第3チューブ101に配置されている。同様に、シリンダ31,110に挿入されるロッド40,120が、隣り合う第2チューブ22及び第4チューブ102に配置されている。その結果、第1緩衝器20及び第2緩衝器100の剛性のバランスを図り易くできる。
【0025】
特にフロントフォーク10の正面視において、第1緩衝器20の段部34の高さ位置と、第2緩衝器100の段部113の高さ位置とを同一に設定し、小径部35,114の長さを同一にしている。小径部35,114にそれぞれ配置されるロッドガイド36,116(
図2及び
図4参照)の高さ位置も同一に設定されるので、第1緩衝器20及び第2緩衝器100の剛性のバランスをとり、外部荷重(外乱)が入力されたときにハンドルをヨー方向に振られ難くできる。
【0026】
次に
図2から
図4を参照して第1緩衝器20及び第2緩衝器100について説明する。まず
図2及び
図3を参照して第1緩衝器20について説明する。
図2は第2チューブ22側の第1緩衝器20の断面図であり、
図3は第1チューブ21側の第1緩衝器20の断面図である。
図2及び
図3は第1緩衝器20の軸方向の一部の図示が省略されている。
【0027】
図2に示すように第1緩衝器20は、第1チューブ21の下部の内周に保持される環状のダストシール25及びオイルシール26が、第2チューブ22の外周面に摺接する。第1減衰力発生部30(減衰力発生部)は、シリンダ31(
図1参照)、ロッド40及びピストン50を備えている。シリンダ31の大径部32は、下端の内周に、Oリングを介して環状の連結部材33が取り付けられる。連結部材33は、大径部32と小径部35とを連結する部材である。連結部材33の軸方向の端面により、大径部32の内側に段部34が形成される。小径部35は内部にロッドガイド36が配置される。
【0028】
ロッド40は、ボトムボルト42に下部が固定された筒状の本体41と、本体41の上部に固定されたピストンホルダ43とを備えている。ピストン50はピストンホルダ43に取り付けられており、ピストン50は大径部32の内部を摺動する。ピストン50は大径部32をピストン側油室51とロッド側油室52とに区画する。
【0029】
ピストン50は、伸側減衰バルブ53を備え、伸側減衰バルブ53の開弁時にピストン側油室51とロッド側油室52とを連絡する伸側流路54と、圧側減衰バルブ55(チェック弁)を備え、圧側減衰バルブ55の開弁時にピストン側油室51とロッド側油室52とを連絡する圧側流路56とを備えている。
【0030】
ピストンホルダ43は、ピストン側油室51とロッド側油室52とを連絡するバイパス路44が形成されており、バイパス路44を臨むニードル45がピストンホルダ43に挿入されている。本体41に挿入された調整ロッド46は、ボトムボルト42に設けられたアジャスタ47とニードル45とを連結する。アジャスタ47の回転操作により調整ロッド46及びニードル45は軸方向に進退し、バイパス路44の流路面積を調整する。
【0031】
本実施の形態では、連結部材33の外周に、筒状のばね受60が取り付けられている。ばね受60は、小径部35の径方向外側に軸方向の端部が配置されている。ばね受60の端部と第2チューブ22の底部との間に(ピストン50の可動域の外に)、線形特性を有するコイルばね61が介在する。
【0032】
小径部35の内部のピストンホルダ43とロッドガイド36との間にリバウンドばね62が介在する。リバウンドばね62は、第1チューブ21及び第2チューブ22の最伸長時に反力を生じるばねであり、本実施の形態では金属製のコイルばねで形成されている。小径部35とロッド40との間のスペースの有効活用により、リバウンドばね62の配置スペースを確保できる。リバウンドばね62が配置されるので、第1減衰力発生部30の減衰特性に影響を与えずに、第1チューブ21及び第2チューブ22の最伸長時の衝撃を吸収できる。
【0033】
図3に示すように、第1チューブ21は上端に第2減衰力発生部70(減衰力発生部)が配置されている。第2減衰力発生部70は、フォークボルト24に取り付けられたガイドパイプ71と、ガイドパイプ71に固定されたサブピストン80と、サブピストン80の上方に配置されたフリーピストン81とを備えている。ガイドパイプ71は、外径の小さい縮径部74aが軸方向の中央付近に形成されている。
【0034】
第1チューブ21は、フォークボルト24によりガイドパイプ71を吊り下げた状態に保持する。ガイドパイプ71の下端にピストンホルダ72が取り付けられる。ピストンホルダ72は、大径部32aの内側に配置されたサブピストン80を保持する。大径部32aは、フォークボルト24によりOリングを介して第1チューブ21の上端に固定されたシリンダであり、大径部32の上端に連結されている。サブピストン80は、ピストン50によって形成されたピストン側油室51の上方にサブタンク室83を区画する。
【0035】
ピストンホルダ72は、ピストン側油室51とサブタンク室83とを連絡するバイパス路73が形成されている。調整ロッド74の先端に形成されたニードルが、バイパス路73を臨む位置に配置されている。調整ロッド74はガイドパイプ71に挿入されている。調整ロッド74は、フォークボルト24に設けられたアジャスタ75に連結されている。アジャスタ75の回転操作により調整ロッド74は軸方向に進退し、バイパス路73の流路面積を調整する。
【0036】
サブピストン80は、圧側減衰バルブ84を備え、圧側減衰バルブ84の開弁時にピストン側油室51とサブタンク室83とを連絡する圧側流路85と、伸側減衰バルブ86(チェック弁)を備え、伸側減衰バルブ86の開弁時にピストン側油室51とサブタンク室83とを連絡する伸側流路87とを備えている。
【0037】
フリーピストン81は、大径部32aとガイドパイプ71との間の環状の空間に配置される。フリーピストン81は、サブピストン80の上方の空間を、ピストン側油室51に連通するサブタンク室83と気体室82とに区画する。フリーピストン81は、ガイドパイプ71と摺接するパッキン81aを内周に保持する。
【0038】
フリーピストン81とフォークボルト24との間に加圧ばね89が配置される。加圧ばね89は圧縮コイルばねからなり、フリーピストン81をサブピストン80側へ向けて付勢する。気体室82は、大径部32aを貫通する貫通孔88によってリザーバ37の気室と連通する。気体室82及び加圧ばね89は、サブタンク室83を介して第1チューブ21及び第2チューブ22を伸長方向へ付勢する第1ばねの一部である。
【0039】
第1緩衝器20は、ロッド40がストロークする度に、ロッド40の外周面に付着した作動油(リザーバ37(油室)内の作動油)をシリンダ31の内部に持ち込む。これにより、シリンダ31の内部のピストン側油室51、ロッド側油室52及びサブタンク室83の作動油が徐々に増加し、ピストン側油室51、ロッド側油室52及びサブタンク室83の圧力が次第に高まる。サブタンク室83の高圧化によって、フリーピストン81が通常の移動域を超えて縮径部74aの位置までパッキン81aが上昇すると、サブタンク室83の作動油が縮径部74aとパッキン81aとの間を通過して気体室82へ浸入する。気体室82へ浸入した余剰の作動油は、貫通孔88を通ってリザーバ37に排出される。
【0040】
次に
図4を参照して第2緩衝器100について説明する。
図4は第2緩衝器100の断面図である。
図4は第2緩衝器100の軸方向の一部の図示が省略されている。第2緩衝器100は、第3チューブ101の下部の内周に保持される環状のダストシール105及びオイルシール106が、第4チューブ102の外周面に摺接する。
【0041】
シリンダ110の大径部111は、下端の内周に、Oリングを介して環状の連結部材112が取り付けられる。連結部材112は、大径部111と小径部114とを連結する部材である。連結部材112の軸方向の端面により、大径部111の内側に段部113が形成される。小径部114は側面を径方向に貫通する連通孔115が下部に形成されている。小径部114は内部にロッドガイド116が配置される。
【0042】
ロッド120は、ボトムボルト122に下部が固定されると共にロッドガイド116に支持される筒状の本体121と、本体121の上部に固定されたピストンホルダ123とを備えている。ピストン130は、筒状のピストンホルダ123に取り付けられている。ピストン130は、大径部111の内周面に摺接する環状のシール部材131をその外周面に保持する。ピストン130により区画された第1気室132及び第2気室134は、圧縮された気体が封入されている。第2気室134は、連通孔115によって小径部114の内部と連通する。
【0043】
ロッド120の本体121は、その軸方向に沿って形成される拡張室124が内部に形成されている。拡張室124は、ピストン130及びピストンホルダ123を軸方向に貫通する孔を通して第1気室132と連通する。従って、拡張室124の分だけ第1気室132の体積を増やすことができる。フォークボルト104には第1気室132に気体を給排するバルブ133が配置されている。
【0044】
第1気室132及び第2気室134は、圧縮された気体が封入されている。第1気室132は圧力が第2気室134の圧力より高く設定される。第2気室134はほぼ常圧である。但し、必要に応じて第2気室134を加圧することは当然可能である。
【0045】
第1気室132及び第2気室134の圧縮された気体は、第3チューブ101及び第4チューブ102の圧縮量に応じた反力を発揮するエアばねとして機能し、このエアばねは、第3チューブ101及び第4チューブ102を常に伸長方向に付勢して車体を弾性支持する懸架ばねとして機能する。第3チューブ101及び第4チューブ102の圧縮量は第2緩衝器100の圧縮量に等しいので、エアばねは、第2緩衝器100の圧縮量に応じた反力を発揮すると共に、第2緩衝器100を伸長方向に付勢するともいえる。
【0046】
第2緩衝器100は拡張室124の分だけ第1気室132の体積を拡大できる。第1気室132の体積が拡大すると、第1気室132が圧縮するときのストローク後半の反力の立ち上がりの変化を抑えられる。
【0047】
連結部材112の外周に、筒状のばね受140が取り付けられている。ばね受140は、小径部114の径方向外側に軸方向の端部が配置されている。ばね受140の端部と第4チューブ102の底部との間に第2ばね141(コイルばね)が介在する。第2ばね141は、第3チューブ101及び第4チューブ102を伸長方向へ付勢する圧縮ばねであり、第2緩衝器100の圧縮量に応じた反力を発揮する。線形特性をもつ第2ばね141(コイルばね)に、第1気室132及び第2気室134によるエアばねを併用するので、エアばねでは不足する領域の反力を補うことができる。
【0048】
大径部111よりも第4チューブ102側に第2ばね141が配置されるので、大径部111は、第2ばね141が配置される径方向のスペースの制約を受け難くできる。その結果、第2ばね141とは無関係に大径部111の外径および内径の大きさを適宜設定できる。同じ反力を得るための第1気室132の圧力は大径部111の断面積に反比例するので、第2ばね141とは無関係に大径部111の内径の大きさを適宜設定できるようにすることで、同じ反力を得るための第1気室132の圧力を低下させることができる。よって、反力を確保しながら、シリンダ110(大径部111)とピストン130(シール部材131)との摺動抵抗を低下させることができる。
【0049】
ピストン130及び連結部材112は、互いに対向する面にばね受142,143が配置されている。ばね受142は、連結部材112に当接した状態で軸方向の位置が規制されている。ばね受142,143はバランスばね144の端末を保持している。バランスばね144は、第3チューブ101及び第4チューブ102を圧縮方向へ付勢するばねであり、第3チューブ101及び第4チューブ102の最伸長からの圧縮時における第1気室132及び第2気室134による反力を相殺する。
【0050】
本実施の形態では、バランスばね144は金属製のコイルばねで形成されている。バランスばね144が配置されていることにより、第1気室132及び第2気室134の圧縮による反力を相殺して、第3チューブ101及び第4チューブ102が伸縮するストロークの初期の荷重を低減できる。
【0051】
ピストン130及び連結部材112の互いに対向する面にばね受142,143が配置されるので、ばね受142,143の固定構造を簡素化できる。ばね受142,143がバランスばね144の端末を保持しており、ばね受142は軸方向の位置が規制されているので、バランスばね144が大径部111の内周面に擦れないようにできる。その結果、バランスばね144によって大径部111の内周面が傷付かないようにできる。
【0052】
大径部111は、段部113の近傍(ピストン130と連結部材112との間の領域)に連通孔117が形成されている。第2気室134に貯留する潤滑油(図示せず)を連通孔117から大径部111に導入できる。連通孔117の位置にバランスばね144が配置されているので、連通孔117から大径部111内に導入された潤滑油によってバランスばね144のフリクションを低減できる。連通孔117から大径部111内に導入された潤滑油はシール部材131を潤滑する。
【0053】
小径部114の内部のピストンホルダ123とロッドガイド116との間にリバウンドばね145が介在する。リバウンドばね145は、第3チューブ101及び第4チューブ102の最伸長時に反力を生じるばねであり、本実施の形態では金属製のコイルばねで形成されている。小径部114とロッド120との間のスペースの有効活用により、リバウンドばね145の配置スペースを確保できる。
【0054】
リバウンドばね145が配置されるので、第3チューブ101及び第4チューブ102の圧縮時のばね特性に影響を与えずに、第3チューブ101及び第4チューブ102の最伸長時の衝撃を吸収できる。また、リバウンドばね145は、第1緩衝器20に配置されるリバウンドばね62と同じばねを用いることができるので、部品を共通化できる。
【0055】
リバウンドばね145が収容された小径部114は連通孔115,117によって第2気室134と連通するので、第3チューブ101及び第4チューブ102の最伸長時に小径部114内が高圧になることを防止できる。よって、第3チューブ101及び第4チューブ102の最伸長時にシール部材131(特に小径部114側)の摺動抵抗が高くなることを防止できる。
【0056】
第2気室134に貯留する潤滑油(図示せず)を連通孔115から小径部114に導入できる。連通孔115の位置にリバウンドばね145が配置されているので、連通孔115から小径部114内に導入された潤滑油によってリバウンドばね145のフリクションを低減できる。
【0057】
フロントフォーク10は、第1緩衝器20に配置されたコイルばね61、及び、第2緩衝器100に配置された第2ばね141が、衝撃を吸収するのに必要な反力を分担する。よって、フロントフォーク10の圧縮に伴う反力はコイルばね61及び第2ばね141の合力である。ばねを複数にすることにより、第1緩衝器または第2緩衝器のいずれかに配置されたばねを用いて衝撃を吸収する場合に比べて、コイルばね61及び第2ばね141にばね定数の小さい圧縮コイルばねを採用できる。ばね定数を小さくするにはコイルばね61及び第2ばね141の材料の直径(コイルばねの線径)を小さくすることが有効なので、コイルばね61及び第2ばね141の質量を低減できる。
【0058】
第1緩衝器20及び第2緩衝器100は、シリンダ31,110の大径部32,111を避けて、大径部32,111の軸方向の反対側にコイルばね61及び第2ばね141が配置される。大径部32,111と干渉しないようにするためにコイルばね61及び第2ばね141の長さを短くできるので、その分だけコイルばね61及び第2ばね141を軽量化できる。
【0059】
ここで、線形特性をもつコイルばね(コイルばね61及び第2ばね141)の荷重はたわみに比例するので、コイルばね61及び第2ばね141の長さが短くなることで、コイルばね61及び第2ばね141の最大荷重はそれぞれ小さくなる。しかし、フロントフォーク10は、第1緩衝器20及び第2緩衝器100のエアばねに加え、コイルばね61及び第2ばね141が荷重を分担するので、並列に配置されたコイルばね61及び第2ばね141並びにエアばねの合力によって衝撃力を吸収できる。
【0060】
第1緩衝器20の減衰力発生部(第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70)は、エアばね、コイルばね61及び第2ばね141の振動を減衰する。第1減衰力発生部30は、大径部32よりも第2チューブ22側にコイルばね61が設定されるので、大径部32は、コイルばね61が配置される径方向のスペースの制約を受け難くできる。その結果、大径部32の断面積を大きくできるので、ロッド40のストロークに対する減衰力発生部(第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70)の作動油の流量を多くすることができる。減衰力発生部による減衰力を安定に発生させ易くできるので、減衰力の安定性を向上できる。
【0061】
第2緩衝器100は、シリンダ110の大径部111にピストン130が摺接するので、大径部111を有しないシリンダに比べてピストン130の断面積を大きくできる。そのため、同じ反力(シリンダ力)を得るのであれば、ピストン130により区画される第1気室132の圧力を低下させることができる。その結果、ストローク前半のエアばねの反力を小さくできる。大径部111を設けて第1気室132の圧力を低下させることにより、ストロークに対する荷重の増加率を緩やかにできる。ストローク前半の荷重の立ち上がりを緩やかにできるので、乗り心地を向上できる。
【0062】
第1気室132の圧力を低下させることにより、ストローク後半のエアばねの反力が不足する可能性がある。不足する反力はコイルばね61及び第2ばね141によって補うことができる。コイルばね61及び第2ばね141のばね定数を小さくできるので、ストロークに対する荷重の増加率を緩やかにできる。よって、ストローク後半の反力を適度に確保できる。
【0063】
さらに、第1気室132の圧力を低下させることができるので、ストローク終期のエアばねの急激な反力の増加を抑制できる。第1緩衝器20及び第2緩衝器100のエアばねに加え、コイルばね61及び第2ばね141が荷重を分担するので、最大荷重は確保できる。よって、最大荷重を確保しつつ、減衰力の安定性と車両の乗り心地とを向上できる。
【0064】
なお、第2緩衝器100は第1気室132の圧力を低下させることができるので、シリンダ110(大径部111)とピストン130(シール部材131)との摺動抵抗を低下させることができる。その結果、乗り心地を良くすることができる。また、摺動抵抗が低下するとピストン130の動き始めをスムーズにできるので、フロントフォーク10が伸縮を始めるときの違和感を軽減できる。
【0065】
第1気室132の圧力を低下させることで、高い気密性をシール部材131に要求しなくて済むので、シール部材131のコストを低減できる。また、第1気室132の圧力を低下させることで、第1気室132に封入された気体がシール部材131から漏れ難くなるので、気体の漏れによる反力(シリンダ力)の経時的な低下を抑制できる。
【0066】
さらに、第2緩衝器100はバランスばね144により、第1気室132及び第2気室134の圧縮による反力を相殺できる。ストロークの初期の荷重を低減できるので、乗り心地を向上できる。
【0067】
図5を参照して、フロントフォーク10のストロークに対する荷重について説明する。
図5はフロントフォーク10の荷重−ストローク線図である。
図5において、破線は特許文献1に開示されるフロントフォーク(以下「従来品」と称す)の荷重−ストローク線図であり、実線は第1実施の形態におけるフロントフォーク(以下「発明品」と称す)の荷重−ストローク線図である。特許文献1に開示されるフロントフォーク(従来品)は、第1緩衝器がコイルばねは内蔵しないで減衰力発生部を内蔵し、第2緩衝器がコイルばね及び減衰力発生部は内蔵しないでエアばねを内蔵する。
【0068】
図5では横軸はストロークであり、縦軸は荷重である。横軸において、0<ストローク≦Aは一般道路を走行するとき等の通常使用域におけるストロークを示し、Bは最圧縮時のストロークを示す。発明品は、エアシリンダ(シリンダ110及びピストン130)、コイルばね61及び第2ばね141が荷重を分担するので、0<ストローク<A(通常使用域)のときに従来品よりも荷重を小さくする(柔らかくする)ことができる。また、発明品はA<ストローク<Bのときに、従来品よりも荷重を大きくする(硬くする)ことにより安定性を高めることができる。発明品は、従来品に比べて荷重−ストローク特性を線形特性に近づけることができるので、乗り心地を向上できる。
【0069】
次に
図6を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第2緩衝器100の第1気室132と第2気室134とが、ピストン130が保持するシール部材131によって気密に保たれる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1気室132と第2気室134とが連通する第2緩衝器200について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図6は第2実施の形態におけるフロントフォークの第2緩衝器200の断面図である。第2緩衝器200は、第1実施の形態で説明したフロントフォーク10の第2緩衝器100に代えて、第1緩衝器20の隣に並んで配置される。
【0070】
図6に示すように第2緩衝器200は、ピストンホルダ123にピストン210が取り付けられている。ピストン210は軸方向に貫通する貫通孔211が形成されており、ピストン210の外周に保持されるブッシュ212が大径部111の内周面に摺接する。貫通孔211は、大径部111に形成された連通孔117を介して第1気室132と第2気室134とを連通するための孔である。
【0071】
第3チューブ101及び第4チューブ102で囲まれた空間(第1気室132及び第2気室134)に封入された気体は、第3チューブ101及び第4チューブ102の圧縮量に応じた反力を発揮するエアばねとして機能する。このエアばねは、第3チューブ101及び第4チューブ102を常に伸長方向に付勢して車体を弾性支持する懸架ばねとして機能する。第3チューブ101及び第4チューブ102の圧縮量は第2緩衝器200の圧縮量に等しいので、エアばねは、第2緩衝器200の圧縮量に応じた反力を発揮すると共に、第2緩衝器200を伸長方向に付勢するともいえる。
【0072】
第2緩衝器200を備えるフロントフォークによれば、第1気室132を気密にするシール部材(パッキン)が省略されているので、第1実施の形態に比べて、ピストン210がシリンダ110を移動するときの抵抗を低下できる。また、シール部材(パッキン)を省略できる分だけ、シール部材に要するコストを削減できる。
【0073】
第2実施の形態では、第2緩衝器200のエアばね(第1気室132及び第2気室134)及び第2ばね141と、第1緩衝器20のエアばね(リザーバ37の気室)及びコイルばね61とによる伸縮振動を制振する減衰力を、第1緩衝器20の減衰力発生部(第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70)が発生する。これにより第1実施の形態と同様に、第1緩衝器20及び第2緩衝器200のそれぞれに設けられたばねが、衝撃を吸収するのに必要な反力を分担するので、乗り心地を向上できる。さらに、シリンダ31の大径部32によって、減衰力発生部による減衰力を安定に発生させ易くできるので、減衰力の安定性を向上できる。
【0074】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
例えば上記各実施の形態では、車体側に第1チューブ21及び第3チューブ101を配置し、車輪側に第2チューブ22及び第4チューブ102を配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。車輪側に第1チューブ21及び第3チューブ101を配置し、車体側に第2チューブ22及び第4チューブ102を配置することは当然可能である。この場合も、シリンダ31,110が配置された第1チューブ21及び第3チューブ101を隣り合う位置に設けることができる。
【0076】
なお、シリンダ31,110が配置された第1チューブ21及び第3チューブ101を隣り合う位置に設けないのであれば、第1チューブ21を車体側に設け、第3チューブ101を車輪側に設ける等、チューブの配置は適宜設定できる。
【0077】
上記各実施の形態で説明した第1緩衝器20が内蔵する減衰力発生部(第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70)は一例である。第1減衰力発生部30及び第2減衰力発生部70に代えて、他の減衰力発生部を採用することは当然可能である。
【0078】
上記各実施の形態では、第1緩衝器20を伸長方向に付勢する第1ばねがコイルばね61を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。コイルばね61を省略することは当然可能である。また、コイルばね61に代えて、第1緩衝器20の内部に(ピストン50の可動域の外に)気室を設け、その気室に封入された気体をエアばね(第1ばねの一部)として機能させることは当然可能である。この場合にはコイルばね61を省略できるので、コイルばねを省略した分だけ第1緩衝器20を軽量化できる。
【0079】
上記各実施の形態では、第2緩衝器100,200の小径部114にリバウンドばね145を配置し、大径部111にバランスばね144を配置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。リバウンドばねとバランスばねとを入れ替えて、小径部114にバランスばねを配置し、大径部111にリバウンドばねを配置することは当然可能である。
【解決手段】フロントフォークは車輪の両側に第1緩衝器および第2緩衝器がそれぞれ配置される。第1緩衝器は車体側および車輪側にそれぞれ配置され互いに摺動する第1チューブ及び第2チューブを備え、第2緩衝器は車体側および車輪側にそれぞれ配置され互いに摺動する第3チューブ及び第4チューブを備えている。第1緩衝器の第1ばね、第2緩衝器のコイルばねからなる第2ばねが荷重を分担して衝撃を吸収する。衝撃の吸収に伴う伸縮振動は、第1緩衝器の減衰力発生部が発生する減衰力により制振する。よって、乗り心地を向上できる。