特許第6174208号(P6174208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174208
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】シム製作方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4103 20060101AFI20170724BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20170724BHJP
   B64C 1/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G05B19/4103 D
   B23Q15/00 301B
   B64C1/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-153404(P2016-153404)
(22)【出願日】2016年8月4日
(62)【分割の表示】特願2013-28605(P2013-28605)の分割
【原出願日】2012年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-192237(P2016-192237A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】591200715
【氏名又は名称】加賀産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】溝口 治
(72)【発明者】
【氏名】辻川 仁
(72)【発明者】
【氏名】川端 啓司
(72)【発明者】
【氏名】池田 敬樹
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−170333(JP,A)
【文献】 特開2012−84720(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0260482(US,A1)
【文献】 特表2009−519175(JP,A)
【文献】 特表2009−508755(JP,A)
【文献】 特開2004−148700(JP,A)
【文献】 特許第5986011(JP,B2)
【文献】 特開2001−353381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B23Q 15/00 − 15/28
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工機において工具を板状のワークに対して相対移動させることによってそのワークを加工することにより、互いに組み付けられる2部材間に存在する面状の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作するシム製作方法であって、
前記ワークは、表面加工が行われる表面と、前記表面加工が行われない裏面とを有し、
そのワークを、そのワークの裏面に支持層が配置されている状態で、パレットの表面に装着し、
そのパレットを、前記ワークが装着された状態で、前記加工機に装着し、
その加工機において、前記ワークに対して前記表面加工とトリミング加工とを行い、
そのトリミング加工中、前記工具の先端が、前記ワークを厚さ方向に貫通して前記支持層の内部には到達するが、前記パレットの表面には到達しないように、前記工具の、前記ワークの厚さ方向における位置を制御し、それにより、前記ワークの一部として前記シムを製作するシム製作方法。
【請求項2】
前記工具は、前記ワークには、厚さ方向に完全に貫通する無底の溝を形成し、それにより、前記工具が、前記ワークを、前記シムを構成する部分と、余分な部分とに分断する一方、前記支持層には、厚さ方向に部分的にしか貫通しない有底の溝を形成する請求項1に記載のシム製作方法。
【請求項3】
前記シムは、金属製、合成樹脂製または複合材製の単一の層より成るソリッドシムである請求項1または2に記載のシム製作方法。
【請求項4】
前記シムは、金属製、合成樹脂製または複合材製の複数の層が互いに剥離可能に積層されて成るラミネートシムである請求項1または2に記載のシム製作方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに組み付けられた2部材間の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の部材から1つの構造体(例えば、航空機の胴体や翼の部分)を組み立てる組立現場においては、部材の製造ばらつき等が原因で、互いに組み付けられた2部材間に予定外の隙間が発生してしまう場合がある。この場合、その予定外の隙間を放置しておくと、その隙間を隔てた2部材間に予定外の相対変位が発生してしまう。
【0003】
このような事態を防止するために、隙間内にシムを挿入することにより、その隙間を充填する作業が行われる。この作業においては、隙間内へのシムの挿入に先立ち、隙間の厚さを隙間ゲージなどを用いて測定する作業と、その厚さに合致するようにシムの厚さを調整する作業とが行われる。
【0004】
この種のシムとして、例えば、単一の層により成るソリッドシムや、複数の層が互いに剥離可能に積層されて成るラミネートシム(当業界においては、「マルチレイヤシム」とも称される)などが存在する。特許文献1および2には、この種のシムの従来例として、チタン板、アルミニウム板等の薄板から成るシム(上記ソリッドシムの一例)、複合材製の平板から成るシム(上記ソリッドシムの一例)、各層がアルミニウム製であるラミネートシム、各層が複合材製であるラミネートシムなどが開示されている。
【0005】
従来、ソリッドシムを使用する場合には、そのソリッドシムを隙間内に挿入するのに先立ち、作業者が、そのソリッドシムの表面を、サンダ等の工具などを用いて研磨し、それにより、ソリッドシムの厚さを手加工で調整することが行われていた。
【0006】
また、従来、ラミネートシムを使用する場合には、そのラミネートシムを隙間内に挿入するのに先立ち、作業者が、特許文献2に開示されているカッタなどの工具を用いて、そのラミネートシムから、最外層を含む少なくとも1枚の層を完全にまたは部分的に剥離することにより、ラミネートシムの厚さを手加工で調整することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−148700号公報
【特許文献1】特開2001−353381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来は、いずれの種類のシムを使用する場合であっても、作業者の手加工により、シムの厚さを調整する作業が必要であり、そのため、そのシム調整作業の効率を向上させるにも限界があり、よって、その作業コストを削減するにも限界があった。
【0009】
このような事情を背景として、本発明は、互いに組み付けられた2部材間の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを効率よく製作する技術を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その課題を解決するために、本発明の一側面によれば、加工機において工具を板状のワークに対して相対移動させることによってそのワークを加工することにより、互いに組み付けられる2部材間に存在する面状の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作するシム製作方法であって、
前記ワークは、表面加工が行われる表面と、前記表面加工が行われない裏面とを有し、
そのワークを、そのワークの裏面に支持層が配置されている状態で、パレットの表面に装着し、
そのパレットを、前記ワークが装着された状態で、前記加工機に装着し、
その加工機において、前記ワークに対して前記表面加工とトリミング加工とを行い、
そのトリミング加工中、前記工具の先端が、前記ワークを厚さ方向に貫通して前記支持層の内部には到達するが、前記パレットの表面には到達しないように、前記工具の、前記ワークの厚さ方向における位置を制御し、それにより、前記ワークの一部として前記シムを製作するシム製作方法が提供される。
【0011】
また、本発明の別の側面によれば、加工機において工具を板状のワークに対して相対移動させることによってそのワークを加工することにより、互いに組み付けられる2部材間に存在する面状の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作するシム製作方法であって、
前記隙間の厚さの2次元的分布に基づき、前記ワークの表面加工およびトリミング加工を行うための工具経路を決定し、
前記ワークは、前記表面加工が行われる表面と、前記表面加工が行われない裏面とを有し、
そのワークを、そのワークの裏面に支持層が配置されている状態で、パレットの表面に装着し、
そのパレットを前記加工機に装着し、
その加工機において、前記ワークに対して前記表面加工と前記トリミング加工とを行い、
そのトリミング加工中、前記工具の先端が、前記ワークを厚さ方向に貫通して前記支持層の内部には到達するが、前記パレットの表面には到達しないように、前記工具の、前記ワークの厚さ方向における位置を制御し、それにより、前記ワークの一部として前記シムを製作するシム製作方法が提供される。
【0012】
いずれのシム製作方法においても、一具体例においては、前記工具は、前記ワークには、厚さ方向に完全に貫通する無底の溝を形成し、それにより、前記工具が、前記ワークを、前記シムを構成する部分と、余分な部分とに分断する一方、前記支持層には、厚さ方向に部分的にしか貫通しない有底の溝を形成することが可能である
【0013】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0014】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0015】
(1) 加工機において工具を板状のワークに対して相対移動させることによってそのワークを加工することにより、互いに組み付けられる2部材間に存在する面状の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作するシム製作方法であって、
前記隙間の厚さの2次元的分布を表す隙間厚さ分布を入力し、
その入力された隙間厚さ分布を反映する複数の厚さ点に対し、複数のパラメータを有する近似関数を適用し、それにより、それらパラメータを前記複数の厚さ点との関係において同定し、それにより、前記複数の厚さ点を近似的に補間する3次元自由曲面を定義し、
その定義された3次元自由曲面に基づき、前記ワークの表面加工およびトリミング加工を行うための工具経路を定義し、
前記ワークを両面接着テープを介してパレットに装着し、
そのパレットを前記加工機に装着し、
その加工機において、前記ワークに対して前記表面加工と前記トリミング加工とを行い、
そのトリミング加工中、前記工具の先端が、前記ワークを厚さ方向に貫通して前記両面接着テープの内部には到達するが、前記パレットの表面には到達しないように、前記工具の、前記ワークの厚さ方向における位置を制御するシム製作方法。
【0016】
(2) さらに、
前記定義された工具経路を構成する複数の加工点のうちの少なくとも1つがワーク外加工点として前記ワークの外側に位置する場合に、そのワーク加工点と、前記複数の加工点のうち、前記ワークの内部に位置するワーク内加工点とに対して二分法を適用することにより、前記ワークの内部に位置する少なくとも1つの、実在しない仮想的な加工点をダミー厚さ点として計算し、そのダミー厚さ点を反映するように前記隙間厚さ分布を補正し、
その補正された隙間厚さ分布に基づいて前記3次元自由曲面を再定義する(1)項に記載のシム製作方法。
【0017】
(3) 加工機において工具を板状のワークに対して相対移動させることによってそのワークを加工することにより、互いに組み付けられる2部材間に存在する面状の隙間を充填するためにその隙間内に挿入されるシムを製作するシム製作方法であって、
前記ワークは、厚さを有する平面部と、その平面部を側方から包囲する側縁部とを有し、
前記シムは、厚さを有する平面部と、その平面部を側方から包囲する側縁部とを有し、
前記加工は、前記シムのうちの平面部に対して第1工具を用いて行われる3次元的な表面加工と、前記シムのうちの側縁部に対して第2工具を用いて行われるトリミング加工とを含み、
当該シム製作方法は、
前記隙間の厚さが、同一平面上にかつ空間離散的に割り当てられた複数の測定点について個別に測定されることによって取得された複数の測定値を各測定点に関連付けて表す隙間厚さ分布であって、前記隙間の厚さの2次元的分布を表すものを入力する隙間厚さ分布入力工程と、
その入力された隙間厚さ分布と、前記複数の測定点のそれぞれの2次元位置座標とに基づき、前記複数の測定点に対応する複数の厚さ点であって、各測定点ごとに、対応する2次元位置座標と、対応する厚さの測定値とにより定義されるものに、予め定められた近似関数であって複数のパラメータを有するものを適用し、それにより、それらパラメータを前記複数の厚さ点との関係において同定し、それにより、前記複数の厚さ点を近似的に補間する3次元自由曲面を定義する曲面定義工程と、
その定義された3次元自由曲面に基づき、前記表面加工を行うために前記第1工具が通過すべき複数の離散的な加工点を計算する加工点計算工程と、
その計算された複数の加工点に基づき、それら加工点によって定義される3次元的な第1工具経路であって前記表面加工を行うために前記第1工具が通過すべきものを表す第1工具経路データを作成する第1工具経路データ作成工程と
前記シムのうちの側縁部の目標形状を表すデータに基づき、前記トリミング加工を行うために前記第2工具が通過すべきものを表す第2工具経路データを作成する第2工具経路データ作成工程と、
両面接着テープのうちの第1接着面を、加工中は分離不能、加工終了後は外力によって分離可能な状態でパレットの表面に接着し、続いて、その接着された両面接着テープのうち前記第1接着面とは反対側の第2接着面に、前記ワークの両面のうち、前記表面加工が行われる加工面とは反対側の面である非加工面を、加工中は分離不能、加工終了後は外力によって分離可能な状態で接着し、それにより、前記パレットを準備するパレット準備工程と、
その準備されたパレットを前記加工機に着脱可能に装着するパレット装着工程と、
前記作成された第1工具経路データに基づき、前記第1工具を前記加工機に対して3次元的に相対的に移動させることにより、前記加工機に装着されたワークの前記加工面を3次元的に加工し、それにより、前記シムのうちの平面部を作成する表面加工工程と、
その表面加工が終了すると、前記作成された第2工具経路データに基づき、前記第2工具を前記加工機に対して相対的に移動させることにより、前記セットされたワークのうちの側縁部をトリミング加工し、それにより、前記ワークを、前記シムを構成する部分と余分な部分とに分断するとともに、前記シムの側縁部をトリミング加工するトリミング加工工程と
を含み、
そのトリミング加工工程においては、前記トリミング加工中、前記第2工具が、前記ワークの厚さ全体を前記加工面から前記非加工面に向かって貫通し、それにより、前記第2工具は、前記非加工面から前記パレットの表面に向かって突出する突出部を有し、
前記トリミング加工工程は、前記第2工具が、前記トリミング加工中、前記パレットの表面に最も接近した最接近位置において、前記突出部の先端が、前記両面接着テープの内部には到達するが、前記パレットの表面には到達しないように、前記第2工具の、前記ワークの厚さ方向における位置を制御するシム製作方法。
【0018】
(4) さらに、
前記シムを定義する3次元空間内において、前記計算された複数の加工点のうちの少なくとも一つが前記ワークの外側に位置する場合に、前記シムに、前記ワークの内部に位置する少なくとも1つの補助的厚さ点を追加し、その追加された補助的厚さ点を反映するように前記隙間厚さ分布を補正する隙間厚さ分布補正工程と、
その隙間厚さ分布補正工程が実行されると、前記補正された隙間厚さ分布と、前記追加された補助的厚さ点を含む前記複数の測定点のそれぞれの2次元位置座標とに基づき、前記複数の厚さ点を補正し、その補正された複数の厚さ点に前記近似関数を適用し、それにより、前記複数のパラメータを前記補正された複数の厚さ点との関係において同定し、それにより、前記補正された複数の厚さ点を近似的に補間する3次元自由曲面を補正3次元自由曲面として定義する曲面再定義工程と
を含む(3)項に記載のシム製作方法。
【0019】
(5) 当該シム製作方法は、同一の構造体の組立てに使用される複数のシムを製作するために実施され、
それらシムは、対応する複数の隙間厚さ分布がそれぞれ入力される順序と同じ順序で、複数のグループに仕分けられ、
当該シム製作方法は、
さらに、各グループに属する複数のシムを、同じワークからまとめて製作することを可能にするためにネスティングし、それにより、前記加工に先立ち、同じワークに、各グループに属する複数のシムがそれぞれ製作されるべき複数の加工領域を平面的に並ぶように割り当てるネスティング工程を含み、
前記第1および第2工具経路データ作成工程は、前記加工機が、各ワークごとに、各ワークに属する複数のシムを一つの製品とみなして前記表面加工および前記トリミング加工を行うように、前記第1および第2工具経路データを作成する(3)または(4)項に記載のシム製作方法。
【0020】
(6) 前記第1および第2工具経路データ作成工程は、前記複数の加工領域のうちのいずれかの全体についての前記表面加工および前記トリミング加工が終了すると、それに隣接する次の加工領域の全体について前記表面加工および前記トリミング加工が開始されるように前記第1および第2工具経路が定義されるように、前記第1および第2工具経路データを作成し、それにより、前記第1および第2工具が前記複数の加工領域のうち最初のものから最後のものまで1度通過すると、その時点で、前記複数の加工領域についての前記表面加工および前記トリミング加工が終了する連続加工を行う(5)項に記載のシム製作方法。
【0021】
(7) 前記第1および第2工具経路データ作成工程は、前記複数の加工領域のうちのいずれかの一部についての前記表面加工および前記トリミング加工が終了すると、それに隣接する次の加工領域の一部について前記表面加工および前記トリミング加工が開始されるように前記第1および第2工具経路が定義されるように、前記第1および第2工具経路データを作成し、それにより、前記第1および第2工具が前記複数の加工領域のうち最初のものから最後のものまで通過することを複数回繰り返すと、その時点で、前記複数の加工領域についての前記表面加工および前記トリミング加工が終了する時分割加工を行う(5)項に記載のシム製作方法。
【0022】
(8) 前記各シムは、金属製、合成樹脂製または複合材製の単一の層より成るソリッドシムである(1)ないし(7)項のいずれかに記載のシム製作方法。
【0023】
(9) 前記各シムは、金属製、合成樹脂製または複合材製の複数の層が互いに剥離可能に積層されて成るラミネートシムである(1)ないし(7)項のいずれかに記載のシム製作方法。
【0024】
(10) (1)ないし(9)項のいずれかに記載の方法を実施するためにコンピュータによって実行されるプログラム。
【0025】
(11) (10)項に記載のプログラムをコンピュータ読取り可能に記録した記録媒体。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に従うシム製作方法が実行される環境の一例を概念的に表すブロック図である。
図2図2(a)は、前記シム製作方法によって製作されるシムの一例を示す斜視図であり、図2(b)は、そのシムを製作するために加工が行われるワークの一例を部分的に示す斜視図である。
図3図3は、前記シム製作方法を概念的に表すフローチャートである。
図4図4は、図3における工程S1の一具体的を概念的に表すフローチャートである。
図5図5は、図3に示す工程S2ないしS5を含む一連の工程の一具体例を概念的に表すフローチャートである。
図6図6は、図3に示す工程S2ないしS5を含む一連の工程の一具体例を説明するための測定点列と加工点列すなわち厚さ点列との対応関係の一例を示す側面図である。
図7図7(a)は、図3に示す工程S8の一具体例を説明するために、組立現場から製造現場に隙間厚さ分布が報告される様子を説明するための概念図であり、図7(b)は、前記隙間厚さ分布を表すデータの構造の一例および厚さ点の定義を説明するための概念図である。
図8図8(a)は、図2(b)に示すワークを連続加工法で表面加工する際に工具が移動させられる経路の一例を部分的に示す平面図であり、図8(b)は、前記ワークを時分割加工法で表面加工する際に工具が移動させられる経路の一例を部分的に示す平面図である。
図9図9は、図2(b)に示すワークが装着されるパレットであって、図1に示す加工機に装着されるものを示す斜視図である。
図10図10(a)は、図9に示すパレットを、両面接着テープを介してワークが装着された状態で示す断面図であり、図10(b)は、前記両面接着テープのみを拡大して示す断面図である。
図11図11(a)は、図3における工程S11の一具体的が実行されることにより、図10(a)に示すワークが表面加工される様子を示す断面図であり、図11(b)は、図3における工程S12の一具体的が実行されることにより、図10(a)に示すワークがトリミング加工される様子を示す断面図である。
図12図12は、図1に示す加工機による加工に関連する一連の工程の一具体例を概念的に表すフローチャートである。
図13図13は、図5に示す工程S90の一具体例を概念的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の例示的でありかつ具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の一実施形態に従うシム製作方法(以下、単に「本方法」という)は、データ作成装置10と加工機12とが設置された製作現場MSにおいて実施される。
【0029】
データ作成装置10は、組立現場ASから取得した隙間厚さ分布に基づき、加工機12がシムを製作するために必要な加工データを作成する。組立現場ASにおいては、作業者が、複数の部品を互いに組み付けることにより、航空機などの構造体を組み立てる。組立現場ASにおいては、互いに組み付けられるべき2つの部品(部材)間に予定外の隙間が存在する場合に、その隙間内にシム20を挿入することによってその隙間を充填して、それにより、その隙間を隔てた2部品間のみだりな相対変位が阻止される。1つの構造体に、複数のシム20が使用される。
【0030】
そのため、製作現場MSにおいては、充填されるべき隙間の厚さに合わせてシム20が自動的に製作される。すなわち、充填されるべき隙間の厚さに合わせてシム20の厚さが自動的に調整されるのである。製作現場MSにおいては、シム20の製作のために、加工機12において工具30,32をワーク40に対して相対的に移動させる経路を決定し、その経路に沿って工具30,32を移動させることにより、ワーク40に対して表面加工とトリミング加工とを行う。
【0031】
そのシム20の製作に先立ち、組立現場ASにおいては、作業者が、シム20によって充填されるべき隙間の厚さを測定し、その結果を表す隙間厚さ分布(シム20における厚さの2次元分布)を製作現場MSに報告する。製作現場MSにおいて加工機12によって製作されたシム20は、組立現場ASに納入され、その組立現場ASにおいては、作業者が、納入されたシム20を、それに対応する隙間内に挿入する。
【0032】
図7(b)には、その隙間厚さ分布を表すデータの構造の一例が示されている。この例においては、シム20の番号iと、そのシム20に属する測定点の番号jとの組合せに、測定点の2次元位置座標(x,y)と、測定点に対応する厚さzとが関連付けられる。各測定点ごとに、3次元座標で定義される厚さ点(x,y,z)が割り当てられる。同じシム20に属する複数の測定点に割り当てられる複数の厚さ点の集合により、シム20の表面の目標3次元形状、すなわち、ワーク40の両面のうち、加工すべき面である加工面90(図10参照)の目標3次元形状が近似させられる。
【0033】
再び図1を参照するに、データ作成装置10は、図示しないが、プロセサッサとメモリとを有するコンピュータを主体として構成されている。そのメモリに、本方法を実施するために必要なプログラム(例えば、後述の加工データ作成プログラムなど)やデータが格納される。そのデータには、例えば、前記隙間厚さ分布、シム20の表面の目標3次元形状を曲面で近似するための近似関数、その近似関数の特性を定義するための複数のパラメータ、表面加工のための第1工具経路データ、トリミング加工のための第2工具経路データなどがある。組立現場ASから製作現場MSに供給された隙間厚さ分布を表すデータは、データ作成装置10のメモリに保存される。データ作成装置10は、必要な加工データの作成が終了すると、その加工データを、加工機12に対して供給する。
【0034】
その加工機12は、その供給された加工データに基づき、かつ、作業者からの指令に従い、工具30,32(例えば、表面加工のためのボールエンドミル30(「第1の工具」の一例)、トリミング加工のためのフラットエンドミル32(「第2の工具」の一例))を作動させつつ、それら工具30,32を、工具経路に沿って、板状のワーク40に対して相対移動させることにより、そのワーク40を加工してシム20を製作する。
【0035】
ワーク40の種類には、例えば、金属製(例えば、アルミニウム製)、合成樹脂製(例えば、ポリイミド製)または複合材製の単一の層より成る単層板状素材、金属製、合成樹脂製または複合材製の複数の層が互いに剥離可能に積層されて成る多層板状素材などがある。本実施形態においては、例えば、合成樹脂製の複数の層が互いに剥離可能に積層されて成る多層板状素材がワーク40として採用されるが、本発明が適用可能なワーク40の種類はこれに限定されない。
【0036】
前記工具経路の種類には、例えば、断面法による往復経路(例えば、ピック送り間隔でほぼ等間隔に並んだ複数本の直線経路)、等高線に沿った輪郭線の経路、面沿い法による曲線経路などがある。本実施形態においては、断面法による往復経路として工具経路が決定されるが、本発明が適用可能な工具経路の種類はこれに限定されない。
【0037】
シム20の種類には、例えば、金属製、合成樹脂製または複合材製のソリッドシム、各層が金属製、合成樹脂製または複合材製であるラミネートシム(当業界においては、「マルチレイヤシム」とも称される)などがある。本実施形態においては、各層が合成樹脂製であるラミネートシムがシム20として採用されるが、本発明が適用可能なシム20の種類はこれに限定されない。
【0038】
加工機12は、図示しないが、よく知られているように、例えば、工具30,32を保持するヘッドと、ヘッドを移動させる第1駆動部と、工具30,32を回転させる第2駆動部と、ワーク40がセットされるテーブルと、前記第1および第2駆動部を制御する制御部と、加工機12全体を覆うカバーと、そのカバーに設けられ、作業者が、加工機12の外側から、加工エリア内に存在するヘッドおよびテーブルにアクセスすることを可能する開口部と、前記カバーに設けられ、作業者によって操作されることにより、前記開口部を開閉するドアとを含むように構成される。前記制御部においては、プロセッサが、メモリに格納されている後述の加工制御プログラムを実行することにより、加工機12全体を制御し、それにより、シム20を製作する。
【0039】
図2(a)に示すように、シム20は、厚さを有する平面部50と、その平面部50を側方から包囲する側縁部52とを有している。シム20は、対応する隙間内への挿入前は(強制外力が作用しない状態では)、平板状を成しているが、その隙間に挿入されると、自身の可撓性のおかげで、接触している部品表面の形状に追従するように変形する。すなわち、シム20は、3次元シムと称することが可能なのである。その結果、シム20の両面のそれぞれが、隙間を隔てた2部品の、互いに対向するそれぞれの表面に少なくとも部分的に接触する。これにより、該当する隙間が充填され、その隙間を隔てた2部品間の予定外の相対変位が阻止される。
【0040】
これに対し、図2(b)に示すように、ワーク40は、厚さを有する平面部60と、その平面部60を側方から包囲する側縁部62とを有している。本実施形態においては、後に詳述するように、同じワーク40に、複数のシム20がそれぞれ製作されるべき複数の加工領域WAが平面的に並ぶように割り当てられる。すなわち、1つのワーク40への割り当てに際し、複数のシム20に対してネスティングが行われるのである。
【0041】
次に、図3を参照して本方法を概略的に説明するに、本方法は、データ作成装置10が加工データを作成するために、隙間厚さ分布入力工程S1と、曲面定義工程S2と、加工点計算工程S3と、隙間厚さ分布補正工程S4(S4aおよびS4b)と、曲線再定義工程S5と、第1工具経路データ作成工程S6と、第2工具経路データ作成工程S7と、ネスティング工程S8とを有する。それら工程S1ないしS8は、データ作成装置10の前記プロセッサが前記加工データ作成プログラムを実行することにより、実行される。
【0042】
まず、隙間厚さ分布入力工程S1を説明するに、この工程S1においては、データ作成装置10が、前記隙間の厚さが、同一平面上にかつ空間離散的に割り当てられた複数の測定点について個別に測定されることによって取得された複数の測定値を各測定点に関連付けて表す隙間厚さ分布であって、前記隙間の厚さの2次元的分布を表すものを入力する。
【0043】
ここで、図4のフローチャートを参照することにより、この隙間厚さ分布入力工程S1のフローの一具体例を説明する。
【0044】
この例においては、まず、工程S51において、同じ構造体に属する複数のシム20のうち、今回注目するシム20のシム番号iが1にセットされる。次に、工程S52において、今回のシム20に属する複数の測定点の数である測定点数N(i)が前記メモリから読み込まれる。続いて、工程S53において、今回のシム20に属する複数の測定点のうち、今回注目する測定点の測定点番号jが1にセットされる。
【0045】
その後、工程S54において、今回の測定点に対応する2次元位置座標x(j),y(j)が前記メモリから読み込まれる。続いて、工程S55において、今回の測定点に対応する厚さz(j)が前記メモリから読み込まれる。その後、工程S56において、今回の厚さ点を定義する3次元位置座標x(j),y(j),z(j)が、今回のシム20と今回の測定点との組合せに関連付けて、前記メモリに保存される。
【0046】
続いて、工程S57において、測定点番号jの現在値が測定点数N(i)に到達したか否かが判定される。今回は、未だ到達していないと仮定すると、工程S58において、測定点番号jが1だけインクリメントされた後、工程S54に戻り、次の測定点について、同様にして、工程S54ないしS57が実行される。
【0047】
工程S54ないしS58の実行が何回か繰り返された結果、測定点番号jの現在値が測定点数N(i)に到達したと仮定すると、工程S59において、シム番号iの現在値がシム総数Sに到達したか否かが判定される。今回は、未だ到達していないと仮定すると、工程S60において、シム番号iが1だけインクリメントされた後、工程S52に戻り、次のシム20について、同様にして、工程S52ないしS60が実行される。
【0048】
工程S52ないしS60の実行が何回か繰り返された結果、シム番号iの現在値がシム総数Sに到達したと仮定すると、この隙間厚さ分布入力工程S1の今回の実行が終了する。
【0049】
再び図3を参照するに、曲面定義工程S2においては、データ作成装置10が、前述の、各シム20に対応する複数の厚さ点(すなわち、前記入力された隙間厚さ分布と、前記複数の測定点のそれぞれの2次元位置座標とに基づき、前記複数の測定点に対応する複数の厚さ点であって、各測定点ごとに、対応する2次元位置座標と、対応する厚さの測定値とにより定義されるもの)に、予め定められた近似関数(例えば、Bスプライン関数、ベジエ関数など)であって複数のパラメータを有するものを適用し、それにより、それらパラメータを前記複数の厚さ点との関係において同定し、それにより、前記複数の厚さ点を近似的に補間する3次元自由曲面を定義する。
【0050】
このように、本実施形態においては、作業者により、シム20が挿入されるべき隙間の厚さがいくつかの代表点(前記複数の測定点)についてのみ空間離散的に測定され、その後、データ作成装置10により、それら複数の厚さ測定値(前記複数の厚さ点)が自由曲面で補間され、それにより、注目する隙間における厚さの2次元分布が実質的に空間連続的に自動的に推定される。
【0051】
次に、加工点計算工程S3においては、データ作成装置10が、その定義された曲面と、第1工具30の進行方向送り速度およびピック送り速度とに基づき、前記断面法により、表面加工を行うために第1工具30が通過すべき複数の離散的な加工点を計算する。
【0052】
次に、隙間厚さ分布補正工程S4においては、データ作成装置10が、シム20を定義する3次元空間内において、前記計算された複数の加工点のうちのいずれかでもワーク40の外側(ワーク40が占める空間の外側)に位置する場合(図3において、ステップS4aの判定がYESである場合)に、シム20に、ワーク40の内部に位置する少なくとも1つの補助的厚さ点(それに対応するx座標値、y座標値およびz座標値とによって定義される)を追加し、その追加された補助的厚さ点を反映するように前記隙間厚さ分布(前記複数の厚さ点)を補正する(ステップS4b)。
【0053】
曲面再定義工程S5においては、データ作成装置10が、前記補正された隙間厚さ分布(複数の測定点と厚さとの関係)と、前記追加された補助的厚さ点を含む前記複数の測定点のそれぞれの2次元位置座標とに基づき、前記複数の厚さ点を補正する(最初の複数の厚さ点(xj,yj,zj)に、今回の補助的厚さ点(xk,yk,zk)を追加する)。
【0054】
さらに、データ作成装置10が、その補正された複数の厚さ点に前記近似関数を適用し、それにより、前記複数のパラメータを前記補正された複数の厚さ点との関係において同定し、それにより、前記補正された複数の厚さ点を近似的に補間する3次元自由曲面を補正3次元自由曲面として定義する。
【0055】
ここで、図5のフローチャートを参照することにより、図3に示す工程S2ないしS5を含む一連の工程の一具体例を説明する。
【0056】
この例においては、まず、工程S81において、今回のシム20につき、前記複数の厚さ点を表すデータが前記メモリから入力される。次に、工程S82において、前記近似関数が前記複数の厚さ点に適用されることにより、前記近似関数についての複数のパラメータが同定される。例えば、近似関数によって記述される自由曲面と、前記複数の厚さ点の位置とのずれ、すなわち、近似誤差が最小になるように、前記複数のパラメータが同定される。
【0057】
続いて、工程S83において、厚さ点を補正した補正回数(加工点を補正した回数でもあり、自由曲面を補正した回数でもある)が0にリセットされる。その後、工程84において、前記同定されたパラメータと、前記近似関数とにより、今回のシム20に対応する複数の厚さ点を補間する自由曲面が定義される。この自由曲面は、ワーク40の加工面の目標3次元形状であり、シム20の表面の目標3次元形状でもある。
【0058】
続いて、工程S85において、その定義された自由曲面と、前記ピック送り間隔とを用い、前記断面法のもと、複数本の工具経路を定義する複数の加工点の3次元位置が計算される。本実施形態においては、工具経路が、加工点列によって定義される経路(加工点の移動軌跡)を意味するように定義されているが、工具経路の定義は、これに限定されず、例えば、工具30,32の工具中心点の移動軌跡を意味するように定義することが可能である。工具30,32がボールエンドミルである場合には、工具中心点と、工具半径とを組み合せることにより、加工点の位置が計算される。
【0059】
図6には、一例として、いくつかの工具経路と、各工具経路に対応する加工点Pの点列と、それら加工点Pに対応する測定点Mの点列とが示されている。
【0060】
この例においては、説明の便宜上、測定点Mと加工点Pとが1対1に対応し、かつ、対応する測定点Mと加工点Pとが、同じxy座標値を共有するように図示されているが、実際には、測定点Mと加工点Pとの間に1対1の関係は成立しない。ただし、測定点Mと厚さ点との間には1対1の関係が成立する。
【0061】
加工点Pの点列をつなぐ曲線は、基本的には、厚さ点の点列をつなぐ曲線と一致する。加工点Pの点列は、厚さ点の点列を曲線補間して取得された工具経路上に位置するからである。そうすると、厚さ点の点列がワーク40の内部に位置すれば、加工点Pの点列もワーク40の内部に位置するように思われる。
【0062】
しかし、加工点Pは、必ずしも、座標位置に関して厚さ点と一致しない。また、工具経路のうち、各厚さ点を通過する部分は、それがワーク40の内部に位置するようにすることは厚さ点の位置座標を管理すれば確保可能であるのに対し、工具経路のうち、各厚さ点を通過しない部分は、上記管理を行ったとしても、ワーク40の外側に位置してしまう可能性がある。そのため、加工点Pがワーク40の外側に位置してしまう可能性がある。
【0063】
そこで、図3に示すように、工程S86において、今回のシム20について計算された複数の加工点の中に、ワーク40の外側に存在する加工点が存在するかが判定される。例えば、図6(a)に示す例においては、いずれの加工点P1,P2,P3もワーク40の外側に存在しないが、図6(b)に示す例においては、加工点P1およびP3は、ワーク40の内側に存在するが、加工点P2は、ワーク40の外側に存在する。
【0064】
いずれの加工点もワーク40の内側に存在する場合には、工程S87において、今回の複数の加工点を用いて工具経路データ(表面加工およびトリミング加工用)を作成することが許可される。以上で、このフローの今回の実行が終了する。
【0065】
これに対し、いずれかの加工点でもワーク40の外側に存在する場合には、工程S88において、前記補正回数が上限値Aを超えているか否かが判定される。前記補正回数が上限値Aを超えている場合には、工程S89において、今回のシム20については、作業者に対し、加工機12によって自動的に製作するのでなく、手加工することが望ましいことが指示される。以上で、このフローの今回の実行が終了する。
【0066】
前記補正回数が上限値Aを超えていない場合には、工程S90において、補助的厚み点(すなわち、ダミー厚さ点)が取得される。その取得は、データ作成装置10が、作業者の介入を少なくても部分的に必要として行ってもよいが、作業者の介入なしで完全に自動的に行うことがより望ましい。図6(c)に示す例においては、同図(b)に示す例に対して、補助的厚さ点T2−3が自動的に取得される。
【0067】
図5に示す工程S90において補助的厚み点(すなわち、ダミー厚さ点)を自動的に計算するためのアルゴリズムの一例によれば、概略的には、前記計算された複数の加工点のうちの少なくとも1つがワーク外加工点としてワーク40の外側に位置する場合に、そのワーク加工点と、前記複数の加工点のうち、ワーク40の内部に位置するワーク内加工点とに対して二分法を適用することにより、ワーク40の内部に位置する少なくとも1つの、実在しない仮想的な加工点がダミー厚さ点として計算される。そのダミー厚さ点を反映するように前記隙間厚さ分布が補正される。
【0068】
図13には、工程S90の一具体例がフローチャートで表されている。
【0069】
この例においては、まず、工程S201において、複数の加工点のうち、ワーク40の外側に位置するワーク外加工点が第1限界点とされる。第1限界点は、前記二分法が適用される区間を定義する2つの限界点(区間上限および区間下限)のうちの一方に当たり、他方は、後述の第2限界点である。
【0070】
次に、工程S202において、複数の加工点のうち、ワーク40の内部に位置し、かつ、今回のワーク外加工点に近接しているもの(例えば、最も近接しているもの)が近接加工点として選択される。続いて、工程S203において、その選択された近接加工点が第2限界点とされる。
【0071】
その後、工程S204において、今回の注目区間、すなわち、ワーク外加工点と近接加工点とによって定義される区間が二等分されることにより、その区間の中間点が計算される。続いて、工程S205において、その計算された中間点がワーク40の内部に位置するか否かが判定される。今回は、その中間点はワーク40の外側に位置すると仮定すると、工程S206において、今回の中間点が第1限界点とされる。これにより、第1限界点が、ワーク外加工点から今回の中間点に移動し、その結果、近接加工点に接近することになる。
【0072】
その後、工程S207において、新たな区間について新たな中間点が計算される。具体的には、今回の注目区間、すなわち、直前の中間点と近接加工点とによって定義される区間が二等分されることにより、その区間の中間点が計算される。続いて、工程S205に戻る。工程S205ないしS207の実行は、ワーク40の内部に存在する中間点が探索されるまで、反復される。ワーク40の内部に存在する中間点が探索されると、工程S208において、その中間点が、求めるべきダミー厚さ点とされる。以上で、このフローの今回の実行が終了する。
【0073】
さらに具体的には、図6(b)に示す例については、まず、ワーク40の外側に位置する加工点P2と、その加工点P2に隣接し、かつ、ワーク40の内側に位置する別の加工点P3とが、2つの注目加工点として抽出される。次に、それら注目加工点の間の中間点、例えば、幾何学的な中点の3次元座標が計算される。例えば、その中点(補助的厚み点T2−3の候補)の3次元座標は、それら2つの注目加工点P2,P3についての、x座標値の平均値と、y座標値の平均値と、z座標値の平均値とを有するように計算される。
【0074】
続いて、今回の中間点が、ワーク40の内側に位置するか否かが判定され、ワーク40の内側に位置する場合には、今回の中間点が、最終的な補助的厚み点T2−3として、前記複数の厚み点に追加される。これに対し、今回の中間点が、ワーク40の外側に位置する場合には、その中間点と、ワーク40の内側に位置する加工点P3が、新たな2つの注目加工点として採用され、それら注目加工点につき、上記と同様にして、新たな中間点が計算される。
【0075】
この一例においては、最初の2つの加工点P2,P3(注目加工点)によって定義される区間が、前記2分法により、順次分割され、その分割は、ワーク40の内側に位置する中間点(補助的厚み点)が探索されるまで反復される。
【0076】
以上のようにして補助的厚み点が取得されると、工程S91において、前記補正回数が1だけインクリメントされ、続いて、工程S92において、今回取得された補助的厚み点が、前記複数の厚み点に追加され、それにより、それら厚み点の集合(すなわち、前記隙間厚さ分布)が補正される。
【0077】
続いて、工程S93において、上述の工程S82と同様にして、前記近似関数が、補正された複数の厚さ点に適用されることにより、前記近似関数についての複数のパラメータが再度、同定される。その後、工程S94において、工程S84と同様にして、前記同定されたパラメータと、前記近似関数とにより、今回のシム20に対応する複数の厚さ点を補間する自由曲面が再度、定義される。続いて、工程S85に戻る。
【0078】
適切な補助的厚み点が適切な数、最新の厚み点の集合に追加された結果、いずれの加工点もワーク40の内側に存在する状態に至ると、工程S87において、今回の複数の加工点を用いて工具経路データを作成することが許可される。以上で、このフローの今回の実行が終了する。
【0079】
再び図3を参照するに、続いて、第1工具経路データ作成工程S6においては、データ作成装置10が、その計算された複数の加工点(いずれの加工点もワーク40の内側に存在する)に基づき、それら加工点によって定義される3次元的な第1工具経路であって表面加工を行うために第1工具30が通過すべきものを表す第1工具経路データを作成する。前記計算された複数の加工点の列により、第1工具経路が定義される。
【0080】
次に、第2工具経路データ作成工程S7においては、データ作成装置10が、シム20の側縁部52の目標形状を表すデータ(輪郭データ)に基づき、トリミング加工を行うために第2工具32が通過すべきものを表す第2工具経路データを作成する。前記輪郭データは、シム20ごとに、前記メモリに予め格納されている。
【0081】
ところで、本実施形態においては、同一の構造体の組立てに使用される複数のシム20を、使用するワーク40のサイズおよび数、ひいては、加工機12による加工回数が最小化するように、製作するために本方法が実施される。本実施形態においては、図7(a)に例示するように、すべてのシム20が複数のグループに分類され、各グループに属する複数のシム20が、同じワーク40からまとめて製作することを可能にするためにネスティング(多数個取り)が行われる。
【0082】
そのために、本実施形態においては、図3に示すように、ネスティング工程S8が実行される。このネスティング工程S8においては、各ワーク40の加工に先立ち、図2(b)に示すように、同じワーク40に、各グループに属する複数のシム20がそれぞれ製作されるべき複数の加工領域WAが平面的に並ぶように割り当てられる。
【0083】
本実施形態においては、各シム20の側縁部52の目標形状(輪郭形状)が、各シム20ごとに予め決まっている。基本的には、シム20の目標輪郭形状は、シム20ごとに異なる。よって、注目しているシム20を特定する情報、例えば、シム番号が分かれば、何ら測定を行うことなく、そのシム20の側縁部52の目標形状が分かる。したがって、前記隙間厚さ分布の測定に関し、組立現場ASにおいて作業者が行うことは、該当する隙間の厚さの2次元分布の測定のみであり、その隙間に挿入すべきシム20の輪郭形状を測定したり指定することは不要である。
【0084】
各シム20の外形が予め決まっているということは、シム20のネスティングを行ううえで好都合である。なぜなら、1つのワーク40に複数のシム用加工領域WAを割り当てる際には、そのワーク40において余分な部分ができる限り少なくなるように(すなわち、ワーク40の歩留まりが向上するように)、適切な複数のシム20を選択するとともにそれら選択されたシム20を互いに詰めてワーク40上に配置することが重要である。よって、データ作成装置10の計算負荷を軽減するためには、複数のシム20が分類されるべき複数のグループにそれぞれ属すべき複数のシム20を予め決めておき、さらに、1つのグループに属する複数のシム20を1つのワーク40上に配置する際のレイアウトも予め決めておくことが重要である。
【0085】
以上説明したアプローチを達成するためには、製作現場MSに隙間厚さ分布を報告する組立現場ASにおける作業者の理解および協力が必要である。いくつかの具体例においては、組立現場ASにおいて、作業者は、製作現場MSが指定した順序に関する規則に従い、複数の隙間についてそれぞれ隙間厚さ分布を測定する。さらに、組立現場ASにおいて、作業者は、製作現場MSが指定したグループ分けに関する規則に従い、複数のシム20を複数のグループに分類し、さらに、各グループごとに、各グループに属する複数の隙間についての厚さ分布を製作現場MSに報告する。
【0086】
具体的には、図7(a)に示す例においては、組立現場ASの作業者は、同一の構造体の組立てに使用される複数のシム20のうち、第1グループに属する複数のシム20につき、それらに対応する隙間厚さ分布をまとめて製作現場MSに報告する。次に、組立現場ASの作業者は、第2グループに属する複数のシム20につき、それらに対応する隙間厚さ分布をまとめて製作現場MSに報告する。続いて、組立現場ASの作業者は、第3グループに属する複数のシム20につき、それらに対応する隙間厚さ分布をまとめて製作現場MSに報告する。
【0087】
その後、製作現場MSにおいて、データ作成装置10は、図7(a)に示すように、第1グループに属する複数のシム20を第1ワーク40に割り当て、第2グループに属する複数のシム20を第2ワーク40に割り当て、そして、第3グループに属する複数のシム20を第3ワーク40に割り当てる。
【0088】
ただし、実際には、あるグループに属する複数のシム20の一部につき、例外的に、前記隙間厚さ分布の測定値が存在しない可能性があり、この場合には、その隙間厚さ分布の測定値を有しないシム20を除く複数のシム20のみをネスティング対象としてもよい。
【0089】
また、同じグループに属する複数のシム20を1つのワーク40の加工面90(図10参照)上に割り付ける場合、それらシム20の全体レイアウト(相対位置)は、シム20の組合せが同じである限り、同一のレイアウトを採用してもよいが、異なるレイアウトを採用してもよい。
【0090】
図3に示すように、このネスティング工程S8においては、さらに、加工機12が、各ワーク40ごとに、各ワーク40に属する複数のシム20を一つの製品とみなして表面加工およびトリミング加工を行うようにするために、第1工具経路データ作成工程S6において作成された複数本の第1工具経路と、第2工具経路データ作成工程S7において作成された複数本の第2工具経路とが、連続した1本の工具経路に一体化させられる。
【0091】
各ワーク40に属する複数のシム20を一つの製品とみなして工具経路を定義する場合には、いくつかのアプローチが存在する。
【0092】
第1のアプローチによれば、図8(a)に工具経路を矢印付き実線で簡略的に示すように、第1および第2工具経路データ作成工程S6,S7において、データ作成装置10が、複数の加工領域WAのうちのいずれか(最初加工領域WA1)の全体についての表面加工およびトリミング加工が終了すると、それに隣接する次の加工領域WAの全体について表面加工およびトリミング加工が開始されるように第1および第2工具経路が定義されるように、第1および第2工具経路データを作成する。それにより、第1および第2工具30,32が複数の加工領域WAのうち最初のものから最後のものまで1度通過すると、その時点で、複数の加工領域WAについての表面加工およびトリミング加工が終了する連続加工が行われる。
【0093】
図8(a)には、説明の便宜上、表面加工のための第1工具経路データによって表される第1工具経路のみが実線で示されている。一例においては、すべてのシム用加工領域WAについての表面加工が終了した後に、使用する工具を、ボールエンドミル30からフラットエンドミル32に交換し、その後、すべてのシム用加工領域WAについてのトリミング加工が、表面加工の場合と同様にして、あるシム20の全体について終了したら、次のシム20の全体について開始されるというように、実行される。
【0094】
第2のアプローチによれば、図8(b)に工具経路を矢印付き実線で簡略的に示すように、第1および第2工具経路データ作成工程S6,S7において、データ作成装置10が、複数の加工領域WAのうちのいずれか(最初加工領域WA1)の一部についての表面加工およびトリミング加工が終了すると、それに隣接する次の加工領域WAの一部について表面加工およびトリミング加工が開始されるように第1および第2工具経路が定義されるように、第1および第2工具経路データを作成する。それにより、第1および第2工具30,32が複数の加工領域WAのうち、一列に並んでいる(例えば、直線的に並んでいる)いくつかの加工領域WAについては、最初のものから最後のものまで通過することを複数回繰り返すと、その時点で、一列に並んでいる(例えば、直線的に並んでいる)いくつかの加工領域WAについての表面加工およびトリミング加工が終了する時分割加工が行われる。
【0095】
図8(b)には、説明の便宜上、第1工具経路データによって表される第1工具経路のみが実線で示されている。一例においては、すべてのシム用加工領域WAについての表面加工が終了した後に、使用する工具を、ボールエンドミル30からフラットエンドミル32に交換し、一列に並んでいる(例えば、直線的に並んでいる)いくつかのシム用加工領域WAについてのトリミング加工が、表面加工の場合と同様にして、あるシム20の一部について終了したら、次のシム20の一部について開始されるというように、実行される。
【0096】
この時分割加工によれば、同じワーク40に同じ工具30,32が連続的に作用する時間が短縮し、よって、例えば、ワーク40が工具30,32との摩擦によって加熱し易い場合に、それにもかかわらず、ワーク40の加熱が抑制される。また、この時分割加工によれば、工具30,32がワーク40上の往復させられる回数が減少し、工具30,32の運動が、それの進行方向に関して逆転させられる回数も減少し、その結果、工具30,32の、それの進行方向における加減速の頻度も減少する。このことは、ワーク40の加工時間を削減し、加工機12の負担を軽減するために、有利である。
【0097】
一例においては、表面加工が、第1工具30を往復モードでワーク40に対して相対移動させることによって行われる。この場合には、工具経路を作成するために、まず、所定のピック送りで等間隔にかつ互いに平行に並んだ複数本の直線経路セグメントが候補直線経路セグメントとして想定される。
【0098】
この例においては、それら候補直線経路セグメントのうち、各候補直線経路セグメントに対応する代表隙間厚さ(例えば、各候補直線経路セグメントに属する複数の測定点に対応する複数の隙間厚さの平均値)が、隣接する候補直線経路セグメントとの間での差が所定閾値以下である場合には、それら互いに隣接する2本の候補直線経路セグメントのうちのいずれかが、最終的な工具経路から排除されるというように、複数本の候補直線経路セグメントのうちの一部が、代表隙間厚さの変動量に着目して間引かれる。
【0099】
この例によれば、シム20の表面形状の精度をそれほど低下させることなく、直線経路セグメントの本数が減少し、ひいては、工具経路の全長が短縮し、さらには、必要な加工時間が短縮される。
【0100】
再び図3を参照するに、本方法は、作業者が加工の準備を行うために、さらに、パレット準備工程S9と、パレット装着工程S10とを有する。
【0101】
パレット準備工程S9においては、作業者が、図9に斜視図で示すパレット70であって加工機12のテーブルに着脱可能に装着されるものにワーク40を装着することにより、パレット70の準備が行われる。パレット70は、概して矩形状を成す板状素材から成る本体部72と、その本体部72の両端部にそれぞれ装着されたハンドル74であって、作業者がパレット70を搬送するために両手で把持するものとを有する。本体部72は、アルミニウムなどの金属によって構成されており、軽量での搬送性を確保しつつ、パレット70の搬送中にも、加工機12による加工中にも、外力によって変形することがないような材料特性、厚さ、形状等を有する。
【0102】
具体的には、パレット準備工程S9においては、作業者が、図10(a)に断面図で示すように、パレット70の上面にワーク40を、平面姿勢で、かつ、両面接着テープ80を介して接着する。両面接着テープ80は、図10(b)に断面図で示すように、支持層82が両側から接着層84,84(剥離可能である点に特に注目する場合には、粘着層と称することも可能である)でサンドイッチされて構成されている。
【0103】
支持層82の一例は、ポリエステル製であり、0.025mmの厚さを有する。また、各接着層84の一例は、アクリル系粘着剤であり、0.002mmの厚さを有する。両面接着テープ80の一例の全体厚さは、0.029mmである。両面接着テープ80の一例は、菊水テープ株式会社から入手可能な商品「キクダブルテープ No.192」である。
【0104】
さらに具体的には、パレット準備工程S9においては、作業者が、図10(a)に示すように、両面接着テープ80のうちの第1接着面86(下側接着面)を、加工中は分離不能、加工終了後は外力によって分離可能な状態でパレット70の表面に接着し、続いて、その接着された両面接着テープ80のうち第1接着面86とは反対側の第2接着面88(上側接着面)に、ワーク40の両面のうち、表面加工が行われる加工面90とは反対側の面である非加工面92を、加工中は分離不能、加工終了後は外力によって分離可能な状態で接着し、それにより、パレット70を準備する。
【0105】
再び図3を参照するに、パレット装着工程S10においては、作業者が、その準備されたパレット70を加工機12のテーブルに着脱可能に装着する。
【0106】
再び図3を参照するに、本方法は、加工機12が加工を行うために、さらに、表面加工工程S11と、トリミング加工工程S12とを有する。
【0107】
表面加工工程S11においては、加工機12が、前記作成された第1工具経路データに基づき、第1工具30を前記加工機12に対して3次元的に相対的に移動させることにより、加工機12に装着されたワーク40の加工面90を3次元的に加工し、それにより、シム20の平面部50の表面を加工する(厚さを調整する)。一例においては、図11(a)に示すように、ボールエンドミル30が、ワーク40の加工面90に対して概して直角となり、かつ、それの先端が両面接着テープ80の厚さ部に一切進入しないように、ワーク40の加工面90に沿って移動させられ、それにより、ワーク40の加工面90が3次元的に表面加工される。
【0108】
トリミング加工工程S12においては、加工機12が、前記作成された第2工具経路データに基づき、第2工具32を加工機12に対して相対的に移動させることにより、前記セットされたワーク40の側縁部62をトリミング加工し、それにより、シム20を構成する部分と余分な部分とに分断するとともに、シム20の側縁部52をトリミング加工する。
【0109】
一例においては、図11(b)に示すように、フラットエンドミル32が、ワーク40の加工面90に対して概して直角となり、かつ、それの先端が両面接着テープ80の厚さ部に部分的に進入し、それにより、ワーク40の非加工面92が、シム20を構成する部分と余分な部分とに分断されるように、ワーク40の加工面90に沿って移動させられ、それにより、シム20の側縁部62がトリミング加工される。
【0110】
そのトリミング加工工程S12においては、トリミング加工中、第2工具32が、ワーク40の厚さ全体を加工面90から非加工面92に向かって貫通し、それにより、第2工具32は、非加工面92からパレット70の表面に向かって突出する突出部94を有する。このトリミング加工工程は、図11(b)に示すように、第2工具32が、トリミング加工中、パレット70の表面に最も接近した最接近位置において、突出部94の先端96が、両面接着テープ80の内部に到達するが、パレット70の表面に接触しないように、第2工具32の、ワーク40の厚さ方向における位置を制御する。
【0111】
その結果、第2工具32は、ワーク40には、厚さ方向に完全に貫通する溝(両面接着テープ80の第1接着面86にも第2接着面88にも開口する無底の溝)を形成し、それにより、第2工具32が、ワーク40を、シム20を構成する部分と、余分な部分とに分断するが、両面接着テープ80には、厚さ方向に部分的にしか貫通しない溝(両面接着テープ80の第2接着面88においてのみ開口する有底の溝)を形成し、それにより、第2工具32が、パレット70の表面に接触してしまうことはもちろん、両面接着テープ80を分断してしまうことも阻止される。
【0112】
換言するに、図11(b)に示すように、突出部94の先端96が、第2工具32が、トリミング加工中、パレット70の表面に最も接近した最接近位置において、両面接着テープ80の内部に到達するが、パレット70の表面に接触しないように、前記最接近位置と両面接着テープ80の厚さとの関係が設定されているのである。
【0113】
以上説明した工程S11およびS12は、加工機12の前記プロセッサが前記加工制御プログラムを実行することにより、実行される。
【0114】
ここで、図12のフローチャートを参照することにより、加工機12による加工に関連する一連の工程の一具体例を説明する。
【0115】
まず、工程S101において、作業者が、作業テーブルの水平上面上に水平姿勢で置かれたパレット70の上面に、両面接着テープ80の第1接着面86を接着する。次に、工程S102において、作業者が、パレット70に接着された両面接着テープ80の第2接着面88にワーク40の下面(非加工面92)を貼り付ける。続いて、工程S103において、作業者が、ワーク40が装着されたパレット70を、加工機12の加工空間内に水平姿勢で配置されているテーブルの上面に着脱可能に装着する。これにより、ワーク40が加工機12内の所定位置に位置決めされる。
【0116】
その後、工程S104において、作業者は、加工機12のドアを閉めてロックし、続いて、工程S105において、作業者が、加工機12の加工開始スイッチを操作することに応答し、加工機12が、ワーク40の加工面90(上面)に対して3次元的な表面加工を行う。その後、工程S106において、加工機12が、ワーク40に対してトリミング加工を行う。すべてのシム20についてのトリミング加工が終了した時点では、ワーク40が、複数のシム20を構成する部分と、余分な部分とに分断され、それら部分の間に、ワーク材料が存在しない溝が形成される。
【0117】
続いて、工程S107において、作業者が、加工機12のドアをアンロックして開き、その後、工程S108において、作業者が、加工機12のテーブルからパレット70をワーク40と共に取り外す。続いて、工程S109において、作業者が、パレット70を作業テーブル上に置き、そのパレット70から複数のシム20を慎重に剥がす。その後、工程S110において、作業者が、各シム20のばり取りを行う。以上で、一連の加工作業が終了する。
【0118】
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、シム20が挿入されるべき隙間の厚さがいくつかの代表点についてのみ空間離散的に測定されれば、データ作成装置10が、それら複数の厚さ測定値を自由曲面で補間し、それにより、注目する隙間における厚さの2次元分布を実質的に空間連続的に自動的に推定することが可能となり、ひいては、シム20の目標3次元表面形状を実質的に空間連続的に自動的に計算することが可能となる。
【0119】
さらに、本実施形態によれば、データ作成装置10が、そのようにして計算されたシム20の目標3次元表面形状を用いることにより、シム20の表面加工およびトリミング加工を加工機12を用いて自動的に行うための工具経路を自動的に計算することが可能となる。
【0120】
さらに、本実施形態によれば、加工機12が、その計算された工具経路を用いることにより、シム20の厚さを自動的に調整することが可能となる。その結果、シム20を手加工しなければならない場合より、作業効率が向上する。
【0121】
さらに、本実施形態によれば、注目する隙間における厚さの2次元分布の推定精度の良否が、前記自動的に計算されたシム20の目標3次元表面形状に基づいて計算された加工点の幾何学的位置を参照することにより、自動的に判定される。
【0122】
さらに、本実施形態によれば、注目する隙間における厚さの2次元分布の推定精度が不良であった場合には、別の仮想的な測定点(実在しない測定点であることから、「ダミー測定点」と称することも可能である)が前記複数の測定点(実在する測定点)に追加されるとともに、その別の仮想的な測定点に対し、作業者による追加の実測なしで、仮想的に厚さが設定される。それら仮想的な情報により、仮想的厚さ点(ダミー厚さ点)が前記補助的厚さ点として定義される。
【0123】
さらに、本実施形態によれば、その仮想的厚さ点を用いることにより、注目する隙間における厚さの2次元分布の推定精度が改善され、ひいては、シム20の目標3次元表面形状の計算精度が向上する。その結果、加工機12によってワーク40を加工した場合に、製作されたシム20の実際形状が目標形状から大きく外れているという加工不良が発生する可能性が軽減される。
【0124】
さらに、本実施形態によれば、トリミング加工中、第2工具32が、両面接着テープ80の厚さ部に部分的に進入することを許容しつつ、ワーク40を、シム20を構成する部分と余分な部分とに分断する一方で、第2工具32が、パレット70の表面に接触してしまうことはもちろん、両面接着テープ80を分断してしまうことも阻止される。
【0125】
その結果、本実施形態によれば、トリミング加工を、第2工具32がワーク40を損傷してしまうことを確実に阻止しつつ、ワーク40が、それの製造ばらつきや組付けばらつきにもかかわらず、シム20を構成する部分と余分な部分とに確実に分断されることが保証される。
【0126】
この確実な分断のおかげで、作業者は、パレット70をワーク40と一緒に加工機12から取り出した後、そのパレット70の上面から、両面接着テープ80はパレット70に残したまま、複数のシム20を1枚ずつ、隣接する他のシム20から切り離す追加の作業を行うことも、隣接する他のシム20を変形させたりすることなく、剥離することが可能となる。これにより、加工品質を維持しつつ、作業効率を向上させることが容易となる。
【0127】
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10
図11
図12
図13