(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人の角膜に装用可能なレンズ部材、円状を有して前記レンズ部材のほぼ中央に配置されて、装用者の網膜上にピンホール像を結像するピンホール領域、前記ピンホール領域の外郭側に設けられて光を遮光する遮光領域、前記遮光領域の外郭側に設けられて光を通過させる透明領域、及び前記遮光領域に開口された複数の微細な孔を有するピンホールレンズ部材と、
前記ピンホール領域、前記透明領域及び前記遮光領域の少なくともいずれか1つの領域に配置され、前記ピンホール領域を通過する光に対し、前記透明領域を通過する光及び、前記遮光領域に吸収される光の少なくともいずれか一方を制御情報に基づいて電気的に光学処理して前記ピンホール像に与える電子部材とを備え、
前記電子部材は、
アンテナ素子を有して前記制御情報を送受信する無線通信部と、
液晶表示素子からなり、当該液晶表示素子が少なくとも前記孔の全部又は一部を塞ぐように配置されて前記制御情報に基づく映像を液晶開閉制御により前記ピンホール像の周囲に結像する表示部と、
前記ピンホール領域を透過する光を検知する検知部と、
前記検知部からの検知情報及び前記無線通信部からの前記制御情報の少なくともいずれか一方の情報に基づく前記表示部の液晶開閉制御を行って、前記孔の開口数を増加又は減少する方向で当該孔を選択し、前記ピンホール像の周辺の明るさを制御する制御部とを有する
ピンホールコンタクトレンズ。
前記ピンホールレンズ部材は、ソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズの少なくとも、いずれかの一つから構成される請求項1に記載のピンホールコンタクトレンズ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来例に係るピンホールコンタクトレンズによれば、次のような問題がある。
i.特許文献1に記載されたピンホールコンタクトレンズによれば、リング像の低減及び明るさ確保のための微細な孔が、遮光領域に外郭周縁に固定して形成されている。この孔は、最適となる個数が予め見出され、ここで見出された孔の個数に基づく光が像周辺に導かれる構造を採っている。
【0015】
このため、明るい場所及び暗い場所(環境)を通して、一様の光がピンホール像の周辺に結像されてしまい、ピンホール像の劣化のおそれが懸念されるという問題がある。
【0016】
ii.一方、特許文献2〜7に記載のスマートコンタクトレンズ(システム)によれば、コンタクトレンズに表示部やセンサ等を設け、コンタクトレンズによる実像を網膜に結像しつつ、当該実像に対して、外部情報に基づく虚像を網膜上で合成したり、眼科特有のデータを取り出したりするようになされる。
【0017】
このため、ピンホール機能を有さない極一般的なコンタクトレンズに対して、その付加価値を高めることができても、ピンホール効果を応用したコンタクトレンズについては、何らの工夫無しにその付加価値を高めることができないという問題がある。
【0018】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ピンホール像の質を向上できるようにすると共に、近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応可能で、かつ、高付加機能実装可能なピンホールコンタクトレンズ及びスマートコンタクトシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係るピンホールコンタクトレンズは、請求項1に記載のように、人の角膜に装用可能なレンズ部材、円状を有して前記レンズ部材のほぼ中央に配置されて、装用者の網膜上にピンホール像を結像するピンホール領域、このピンホール領域の外郭側に設けられて光を遮光する遮光領域、この遮光領域の外郭側に設けられて光を通過させる透明領域、及び遮光領域に
開口された複数の微細な孔を有するピンホールレンズ部材と、ピンホール領域、透明領域及び遮光領域の少なくともいずれか1つの領域に配置され、ピンホール領域を通過する光に対し、透明領域を通過する光及び、遮光領域に吸収される光の少なくともいずれか一方を制御情報に基づいて電気的に光学処理してピンホール像に与える電子部材とを備え、電子部材は、アンテナ素子を有して制御情報を送受信する無線通信部と、
液晶表示素子からなり、液晶表示素子が少なくとも孔の全部又は一部を塞ぐように配置されて制御情報に基づく映像を
液晶開閉制御によりピンホール像の周囲に結像する表示部と、ピンホール領域を透過する光を検知する検知部と、検知部からの検知情報及び無線通信部からの制御情報の少なくともいずれか一方の情報に基づ
く表示部の液晶開閉制御を行って、孔の
開口数を
増加又は減少する方向で孔を選択し、ピンホール像の周辺の明るさを制御する制御部とを有するものである。本発明において、「ほぼ中央」とは、レンズ部材の中央部と中央部の周辺を含む。
【0020】
請求項1に記載のピンホールコンタクトレンズによれば、本発明に係るピンホールコンタクトレンズを角膜に装着すると、透明領域では光が通過するのに対して遮光領域では光を遮光するようになる。ピンホール領域には、遮光領域により制限された中心の光が集束して通過する。このとき、電子部材によって、検知部からの検知情報及び無線通信部からの制御情報の少なくともいずれか一方の情報に基づ
く表示部の液晶開閉制御を行って、孔の
開口数を
増加又は減少する方向で孔を選択するため、網膜に結像されるピンホール像の周辺の明るさを動的に補正できるばかりか、ピンホール像そのものに虚像を合わせて結像できるようになる。
【0022】
請求項
2に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、表示部は、ピンホールレンズ部材のピンホール領域の全面又は一部に設けられ、マトリクス状を成した液晶表示素子を有するものである。
【0023】
請求項
3に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
2において、表示部は、装用者の網膜上にピンホール像を結像するための開口部をピンホール領域に形成するものである。
【0024】
請求項
4に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
3において、表示部は、ピンホール領域に位置決めマークを表示するものである。
【0025】
請求項
5に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、表示部は、ピンホールレンズ部材の遮光領域の全面又は一部に設けられ、マトリクス状を成した液晶表示素子を有するものである。
【0026】
請求項6に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、孔がピンホールレンズ部材の遮光領域の外郭周縁に設けられ、ピンホールレンズ部材の制御部が、制御情報と検知情報とを比較した結果に応じて孔の
開口数を
増加又は減少する方向で孔を選択するように表示部の液晶開閉制御を行うものである。
【0028】
請求項
7に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、表示部は、ピンホールレンズ部材の透明領域の全面又は一部に設けられ、マトリクス状を成した液晶表示素子を有するものである。
【0029】
請求項
8に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
2又は
7において、液晶表示素子が赤・青・緑の3色のドットカラーフィルム部材を有するものである。
【0030】
請求項
9に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、無線通信部が、ピンホールレンズ部材の透明領域の外周縁に沿って設けられ、ループ状を成したアンテナ素子を有するものである。
【0031】
請求項
10に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、制御部が、ピンホールレンズ部材の遮光領域に設けられ、無線通信部、表示部及び検知部に接続され、制御情報に基づいて当該無線通信部、表示部及び検知部の入出力を制御するマイクロプロセス素子を有するものである。
【0032】
請求項
11に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、ピンホールレンズ部材は、無線通信部、表示部、検知部及び制御部を駆動する電源部を備え、電源部には、無線誘導給電方式、光学変調波給電方式、太陽光給電方式のいずれか1つの方式を有する蓄電素子が備えられるものである。
【0033】
請求項
12に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
11において、無線通信部、表示部、検知部、制御部及び電源部の少なくともいずれか一部の電子部材が、人の眼瞼内に装用可能なC形状の基幹本体に実装されるものである。
【0034】
請求項
13に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、ピンホールレンズ部材に撮像素子が設けられるものである。
【0035】
請求項
14に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、ピンホールレンズ部材に記憶素子が設けられるものである。
【0036】
請求項
15に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項
1において、ピンホールレンズ部材に圧力検知素子を有するものである。
【0037】
請求項
16に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項1の電子部材において、レンズ部材が表面側のレンズ部材及び裏面側のレンズ部材を有し、電子部材が表面側のレンズ部材及び裏面側のレンズ部材によって挟み込まれたサンドイッチ構造を有するものである。
【0038】
請求項
17に記載のピンホールコンタクトレンズは、請求項1のピンホールレンズ部材において、ソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズの少なくとも、いずれかの一つから構成されるものである。
【0039】
請求項
18に記載のスマートコンタクシステムは、請求項1から請求項
17に記載のいずれかのピンホールコンタクトレンズと、このピンホールコンタクトレンズとデータ通信可能な外部機器と、この外部機器とデータ通信可能なスマートフォンとを備えるものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るピンホールコンタクトレンズによれば、網膜に結像されるピンホール像の周辺の明るさを動的に補正できるので、光の回折を原因とした環状のグレイ像(リング像)を緩和できるようになる。
【0041】
また、本発明によれば、遮光領域の外郭周縁に穿設された複数の微細な孔を選択制御できるようになるので、明るい環境及び暗い環境に対応して、ピンホール像周辺の明るさを緻密に制御することができる。しかも、ピンホールによる実像を結像しつつ、当該実像に対して、制御情報に基づく虚像を網膜上で合成するように結像できる。
【0042】
これにより、従来の孔数固定型のピンホールコンタクトレンズの機能を維持しつつ、当該コンタクトレンズ装用者の脳に、制御情報に基づく映像等をリアルタイムに認知させることができる。従って、ピンホール像の質向上を図ることができると共に、本来のピンホールによる焦点深度を利用して、近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応可能かつ高付加機能実装可能なスマートコンタクトレンズを提供できるようになる。
【0043】
本発明に係るスマートコンタクトシステムによれば、本発明に係るいずれかのピンホールコンタクトレンズが備えられるので、ピンホールによる焦点深度が利用され、近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応され、かつ、眼圧・血糖・光検出機能等の高付加機能が実装されたスマートコンタクトレンズを用いた遠隔診療治療総合システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、
図1〜
図20を参照して、発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)について説明する。
【0046】
<第1実施形態>
図1のピンホールコンタクトレンズ1は、スマートコンタクトレンズであり、後述する本発明に係る各実施形態のピンホールコンタクトレンズ100〜700の構成例を示している。以下で、各実施形態に係るピンホールコンタクトレンズ1の構成例を、第1実施形態のピンホールコンタクトレンズ100を用いて説明する。また、第2〜第7実施形態のピンホールコンタクトレンズ200〜700において、第1実施形態のピンホールコンタクトレンズ100と同じ構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。ピンホールコンタクトレンズ100は
図1において、人の角膜に装用可能なピンホールレンズ部材10及び電子部材20を有している。ピンホールレンズ部材10は、レンズ部材11を有する。レンズ部材11のほぼ中央にはピンホール領域12が配置されて、このピンホール領域12を通過するビーム状の光Laにより、装用者の網膜86(
図4参照)上にピンホール像を結像するようになる。なお、「レンズ部材11のほぼ中央」とは、レンズ部材11の中央部と中央部の周辺を含む。
【0047】
ピンホール領域12の外郭側には遮光領域13が設けられて光Lbを遮光するようになる。ピンホール領域12は、ピンホール像を再現性良く結像できるために正円状を成すように構成するとよい。遮光領域13の外郭側には透明領域14が設けられて、透明領域14は、光Lcを通過させる。
【0048】
ピンホール領域12、遮光領域13及び透明領域14のいずれか1つの領域には、アンテナ素子21(
図2参照)を含む電子部材20が配置され、ピンホール領域12を通過する光Laに対し、遮光領域13に吸収される光Lb及び、透明領域14を通過する光Lcの少なくともいずれか一方を制御情報Dc1、Dc2に基づいて電気的に光学処理してピンホール像に与えるように機能する。更に、ピンホール領域12を通過する光Laに対し、制御情報Dc0に基づいて光学的処理(表示制御)するようになる。
【0049】
図2に示すピンホールレンズ部材10は、ソフトコンタクトレンズ及びハードコンタクトレンズの少なくとも、いずれか一つから構成され、径D4のレンズ部材11を有し、当該レンズ部材11に径D1のピンホール領域12、径D2の遮光領域13及び径D3の透明領域14が同心円状に画定されて構成される。
【0050】
レンズ部材11の径D4は、遮光領域13の径D2よりも大きく、かつ、
図3に示すように、少なくとも角膜80のS1径(例えば12mm)よりも大きく選定され、例えば14mm程度に選定される。これは、レンズ部材11の径D4を角膜径未満とした場合、レンズ部材11が角膜80上で大きく動き、角膜80上の中心と遮光領域13の中心C(
図4参照)とが大きくずれて、安定した視力を確保できないからである。また、レンズ部材11の径D4を14mm超とした場合、レンズ部材11を角膜80に装着することが困難となるからである。
【0051】
レンズ部材11は、角膜80の表面形状に沿うような曲面(曲率)を有した平面視円形状の部材であって、入射光を透過させる光透過材料により構成されている。レンズ部材11の材質としては、含水性ソフトコンタクトレンズに使用される、ハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン(N-VP)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)、グリセロールメタクリレート(GMA)、シリコンハイドロゲル(SH)等が好適に用いられる。また、レンズ部材11の材質として、非含水性ソフトコンタクトレンズや含水性ソフトコンタクトレンズ等に使用される、シリコンラバー、ブチルアクリレート、ジメチルシロキサンレンズも好適に用いられる。なお、光を透過させることが可能であれば、透明でなくても、青や赤等の色付きの材質を利用しても良い。
【0052】
レンズ部材11は、ソフトコンタクトレンズに限られることはなく、ハードコンタクトレンズから構成してもよい。例えば、レンズ部材11の材質としては、酸素を多少透過する、シロキサニルメタクリレート(SMA)系のいわゆる酸素透過性ハードコンタクトレンズや、酸素非透過性のメチルメタクリレート(MMA)のハードコンタクトレンズが使用される。もちろん、レンズ部材11は、ソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズの両方のメリットを複合したシリコーンハイドロゲルレンズであってもよい。
【0053】
レンズ部材11は、交換型や使い捨て型のソフトコンタクトレンズとしても用いられる。近視や遠視、乱視の度数の軽い人の場合には、度数を加えなくても遠方または近方両方の視力を得られると考えられる。それ以外の場合には、ユーザの近視や遠視の状態に応じた度数をレンズ部材11に加えることもできる。遮光領域13の周辺部に位置するレンズ部材11は、
図2に示すように、入射光を角膜80に取り入れることで周辺視野を確保するための透明領域14を有する。透明領域14の外周縁部は、電子部材20を構成するアンテナ素子21の配置領域として機能する。
図2において、アンテナ素子21の巻始め径をD3とすると、配置領域D0の幅は(D4−D3)/2となる。
【0054】
ピンホール領域12は、開口部の一例を構成し、
図2および
図4A、
図4B示すように、遮光領域13(レンズ部材11)の中心Cであって、かつ、角膜80の中心と網膜86の中心窩88とを結んだ光軸(眼軸)Oを含む位置に穿設される。ピンホール領域12の孔形状は、入射光の回折を防止するため、正円もしくは真円状であることが好ましい。また、ピンホール領域12は、角膜80に入射する入射光の光束を一定量に制限して網膜86にピンホール像P1を結像させる機能を有すると共に、ピンホール領域12の径D1の大きさに応じて多焦点レンズの加入度数に相当する効果を奏するものである。
図4Bにおいて、明るさ像P2はピンホール像の周囲の明るさ像である。
【0055】
ピンホール領域12の径D1としては、例えば1.0mm〜1.6mmの範囲に選定される。ピンホール領域12の径D1を1.0mm〜1.6mmの範囲で変化させた際に、その径の大きさの変化によりおおよそ1.00〜3.00Dの加入度数に相当する近方視力が得られることが分かっている。また、ピンホール領域12の径D1を1.0mm未満または1.6mm超に選定した場合には、最適な近方視力を得ることが出来なかった。その理由としては、
図4Aに示すように、無調節のレンズでも光束を変化させることで焦点深度が深くなるためと考えられる。後述の実施形態では径D1のピンホール領域12に電子部材20を実装し、電気的に光学処理するようになされる。
【0056】
遮光領域13は、角膜80(
図4参照)の表面形状に沿うような曲面を有した平面視円形状の部材であって、角膜80に入射する光Lbを遮光する遮光部材13’(
図7参照)からなる。遮光部材13’は黒色を有し、その材質としては、すでに安全が確立され、実際の虹彩付きソフトコンタクトレンズに使用されている材料が好適に用いられ、例えば、アゾ系着色剤(赤系)やフタロシアニン系着色剤(青系)を用いることができる。遮光領域13の厚みは、ピンホール領域12を通過する光Laの直線性を持たせるために、ある程度厚みを持たせた方がよい。反対に、透明領域14は、光線が遮られるのを防ぐため、極力薄くすることが好ましい。なお、遮光部材13’にイカ墨インクを使用してもよい。イカ墨インクは生体系に優しいことによる。
【0057】
遮光領域13の径D2は、年齢に応じて変化する散瞳時(暗所での瞳の大きさ)の瞳孔径を考慮して、例えば4.0mm〜9.0mmの範囲に選定される。遮光領域13の径D2が4.0mm未満の場合、遮光領域13周辺の後述する透明領域14(
図2参照)の面積が大きくなり、周辺視野は広くなるが、夜間等において瞳孔径が遮光領域13より大きくなった場合、遮光領域13以外の周辺光が網膜86の中心部に入る事で、ハロー現象やグレアが生じてしまう場合があるからである。
【0058】
また、遮光領域13の径D2が9.0mm超の場合、レンズ部材11の入射光を透過させる透明領域14の面積が小さくなり、周辺視野を確保することができないからである。つまり、裸眼と同等の視野(視覚)を確保できないからである。本発明に係るピンホールコンタクトレンズ100は、遮光領域13の中央に穿設したピンホール領域12による焦点深度を利用することで、軽い近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応可能としている。
【0059】
透明領域14はレンズ部材11によって構成される。透明領域14の外周縁部にはアンテナ素子21が設けられ、外部機器90との間で制御情報Dc0〜Dc2を送受信するようになされる(
図5〜
図7参照)。
【0060】
ピンホールレンズ部材10に配置される電子部材20は、例えば
図5に示すように、第1プリント配線部201、1チップ動作素子202、第2プリント配線部203、液晶表示素子24、光検知素子29a及び圧力検知素子29bから構成される。これらの配線部や素子はフレキシブル回路(Flexible Printed Circuits:FPC)によって構成するとよい。FPCは柔軟性があり、弱い力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する特性を持っている。
【0061】
第1プリント配線部201の一端にはアンテナ素子21が接続され、その他端には1チップ動作素子202が接続される。1チップ動作素子202の大きさは、例えば、2mm×2mm程度である。1チップ動作素子202は半導体集積回路から成る。アンテナ素子21は
図2に示したように、ループ状を成し、透明領域14の外周縁に沿って設けられている。
【0062】
1チップ動作素子202は、例えば、遮光領域13に設けられ、1チップに集積化された、無線通信部22、IOインターフェース23、制御部25、電源部26、記憶部27及び蓄電部28を有している。1チップ動作素子202には数mW程度で動作可能なものを使用する。もちろん、1チップ動作素子202を透明領域14に設けてもよいが、第2プリント配線部203の配線密度を低減するためには、遮光領域13に設けるのが好ましい。
【0063】
アンテナ素子21は無線通信部22に接続され、この無線通信部22に制御情報Dc0〜Dc2を外部機器90へ送出したり、外部機器90からの制御情報Dc0〜Dc2を受け入れたりする(
図6参照)。無線通信部22は、例えば、近距離無線方式(Blue tooth)(登録商標)により制御情報Dc0〜Dc2を送受信する。外部機器90は、専用端末機器であり、
図6に示すスマートフォン901等のアンテナ素子911を介して通信可能なものである。外部機器90は、少なくとも、動作設定機能、制御情報設定機能、情報書き込み読み出し機能及び電力供給機能を持ったものが使用される。無線通信部22で受信できる受電電力は、アンテナ素子21と、無線通信部22との間のインピーダンス整合を改善し、アンテナ損失を低減し、最良の整流回路を設計することによって、電力損失を低減できるようになる。
【0064】
無線通信部22には、制御部25が接続され、当該制御部25にはIOインターフェース23が接続される。このIOインターフェース23には、表示部の一例となる液晶表示素子24、検知部の一例となる光検知素子29aや圧力検知素子29b等が接続される。IOインターフェース23は、制御部25を補助的に支援し、各種情報の入出力を制御する。液晶表示素子24は透明ディスプレイのように取り扱う場合と、液晶のシャッター機能を利用する場合を想定している。表示部にはレーザーダイオードを敷き詰めた面発光素子(自発光アレイ)が使用される場合がある。液晶表示素子24は遮光領域及び透明領域を跨ぐように配置してもよい。これらの領域の境界円状線を液晶で表現できるようになる。境界円状線とは、ピンホール領域12と遮光領域13や、遮光領域13と透明領域14とを区切る円状の境界線をいう。
【0065】
液晶表示素子24は、後述する実施形態においては、マトリクス状を成して、ピンホール領域12の全面又は一部に設けられる。液晶表示素子24は透過光をオン・オフするための液晶開閉機能を有している。もちろん、上述の機能に加えて、液晶表示素子24は赤・青・緑の3色(以下でRGB色という)のドットカラーフィルム部材を有したものも使用され、RGB色でカラー表示するものである。もちろん、3色の画素の合成によって、特定の波長の光を遮光するサングラス効果が得られる。
【0066】
液晶表示素子24には、単純マトリクス(Simple Matrix:SM)駆動方式や、アクティブ・マトリクス(Active matrix:AM)駆動方式が使用される。SM駆動方式はパッシブ・マトリクス(Passive Matrix)駆動方式(PM型)とも呼ばれ、X電極線とY電極線の交点の画素、またはサブ画素に電圧を印加し液晶を駆動するものである。AM型駆動方式では、薄膜トランジスタ(TFT)が使用され、単純マトリクスのXとYの電極線と蓄積コンデンサに加えてアクティブ素子が画素毎に設けられる。
【0067】
光検知素子29aは例えば、ピンホール領域12に設けられ、このピンホール領域12を透過する光Laを検知して光検知情報Dd1を制御部25に出力する。光検知素子29aはピンホール領域12に限られることはなく、透明領域14に設けてもよい。透明領域14を通過する光を検知できる。圧力検知素子29b(圧電センサ)はピンホールレンズ部材10の遮光領域13に設けられる。圧力検知素子29bは制御部25に接続され、角膜80の圧力(眼圧)を検知して眼圧検知情報Dd2を制御部25に出力する。圧力検知素子29bは遮光領域13に限られることはなく、透明領域14に設けてもよい。透明領域14に加わる圧力を検知できる。
【0068】
撮像素子30は例えば、ピンホールレンズ部材10の遮光領域13に設けられる。撮像素子30はIOインターフェース23に接続され、被写体を撮像して制御部25に撮像情報Dgを出力する。撮像素子30にはレンズ系を含む固体撮像素子アレイが使用され、レンズ系を通過した光が光電変換される。固体撮像素子アレイには、例えば、電荷結合素子(CCD)センサアレイや相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサアレイが使用される。なお、撮像素子30は必須構成要素ではなく、設計要求に応じて実装すればよい。
【0069】
制御部25は電子部材20の一例を構成し、コンピュータ機能を有したマイクロプロセス素子を成している。例えば、マイクロプロセス素子は数mW程度の電力を消費するものが使用できる。当該マイクロプロセス素子を実装した1チップ動作素子202がピンホールレンズ部材10の遮光領域13に設けられ、無線通信部22、IOインターフェース23及び記憶部27に接続される。
【0070】
1チップ動作素子202は、動作設定時、制御情報Dc0〜Dc2に基づいて、当該無線通信部22の入出力、及び、IOインターフェース23の支援を得て、液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30の入出力を制御するようになる。制御情報Dc0は例えば、動作モードを設定するデータであり、制御情報Dc1は第1映像合成モード設定時、第1映像P11を転送するデータであり、制御情報Dc2は第2映像合成モード設定時、第2映像P21を転送するデータである。これらの制御情報Dc0〜Dc2は外部機器90により設定される。
【0071】
制御部25には記憶部27(メモリ)が接続され、記憶部27は制御情報Dc0〜Dc2や検知情報Dd1,Dd2、撮像情報Dg等を一時記憶する。制御情報Dc0〜Dc2や光検知情報Dd1、眼圧検知情報Dd2、撮像情報Dgは制御部25に読み出される。制御部25は外部機器90からの動作設定機能に基づいて、例えば、6つの動作モードを実行する。動作モードは、明るさ補正モード、位置合わせ支援モード、第1映像合成モード、第2映像合成モード、眼圧検知モード及び撮像モードの6つである。
【0072】
明るさ補正モードとは、中心窩88に結像されたピンホール像P1の周辺の明るさ像P2を制御する動作をいう。位置合わせ支援モードとは、当該ピンホールコンタクトレンズ100の装用時、光軸/視軸位置あわせを支援する動作をいう。第1映像合成モードとは、中心窩88に結像されたピンホール像P1の周辺に第1映像P11を結像する動作をいう。第2映像合成モードとは、中心窩88に結像されたピンホール像P1の周辺の第1映像P11よりも外側の網膜周辺に第2の映像P21を結像する動作をいう。眼圧検知モードとは、当該ピンホールコンタクトレンズ100の装用中の眼圧を取得する動作をいう。撮像モードとは、当該ピンホールコンタクトレンズ100の装用中、被写体を撮像する動作をいう。
【0073】
制御部25には電子部材20一例を構成する電源部26が接続され、無線通信部22、IOインターフェース23、液晶表示素子24、制御部25、記憶部27、光検知素子29a及び圧力検知素子29bを駆動するようになされる。電源部26には蓄電部28(バッテリー)が接続され、電波受信(無線誘導給電)方式、光学変調波給電方式、太陽光給電方式のいずれか1つの方式により充電される。蓄電部28は大容量の電解コンデンサから構成される。もちろん、充電可能な二次電池から構成してもよい。
【0074】
電波受信方式とは、非接触充電を含む非接触電力伝送の方式のうち電磁誘導を利用して電力を送る方式をいう。電波受信方式では、送電側で電流を電磁波に変換して受電側に送り、受電側はアンテナ素子21から電磁波を受信、整流回路を通じて直流電流に変換し、電力として利用する仕組みである。IEEE C95標準規格に準拠した周波数帯によれば、人体が電磁波に曝されても安全なレベルであるとする、3kHz〜300GHzが利用できる。
【0075】
電波受信方式の用途の具体的な例として、FeliCa(登録商標)をはじめとするRFID(パッシブRFIDタグ)が挙げられる。伝送距離は数メートルと長いが伝送効率は悪い。光学変調波給電方式とは、光変調波を利用した非接触電力伝送による給電方式をいう。太陽光給電方式とは太陽光を利用した非接触光電変換伝送による給電方式をいう。太陽光給電方式の場合、明るい場所で充電でき、電力を蓄積できる。暗い場所で当該蓄積電力をもって電子部材20の負荷電力を賄うことができる。
【0076】
前述した外部機器90は、
図6に示すスマートコンタクトシステム900を構成し、アンテナ素子91a,91b、無線通信部92,93、無線給電部94、制御部95、電源部96、記憶部97、操作・表示制御部98及びUSB制御部99を備え、一般に情報処理が行えるものである。
図5に示した同じ名称のものの機能については、
図5の説明を参照されたい。無線通信部92は、アンテナ素子91a及びピンホールコンタクトレンズ100のアンテナ素子21を介してデータ通信を行う。無線通信部93は、アンテナ素子91b及びスマートフォン901のアンテナ素子911を介してデータ通信を行う。電源部96は、外部バッテリーに接続可能なものである。記憶部97には外部記憶装置(SDカード等)が接続可能なものである。
【0077】
操作・表示制御部98はこれらの機能の入出力及び表示操作に使用される。また、操作・表示制御部98から入力操作された動作設定に基づいて、後述する各種動作モードが実行される。無線給電部94は電磁誘導コイル94aを有して、ピンホールコンタクトレンズ100へ無線電力を供給するものである。制御部95は制御情報Dc0〜Dc2、表示情報Dp、撮像情報Dg、光検知情報Dd1及び眼圧検知情報Dd2の入出力を制御するものである。USB制御部99は、USB通信規格の外部機器に接続され、データ転送制御が行われる。これらによりスマートコンタクトシステム900の外部機器90を構成する。なお、スマートコンタクトシステム900において、ブルートゥース規格の2.5mm角程度のICチップをピンホールレンズ部材10(スマートコンタクトレンズ)に実装することで、ピンホールコンタクトレンズ100と、スマートフォン901との間で、直接、同規格の近距離無線通信が可能となり、外部機器90を介さずともデータ通信が可能となる。
【0078】
このスマートコンタクトシステム900の外部機器90とデータ通信可能なピンホールレンズ部材10であって、径D4を有するレンズ部材11は、
図7に示すようにレンズ部材11を構成する表面(前面)側のレンズ部材111及び裏面(後面)側のレンズ部材112を有し、電子部材20が表面側のレンズ部材111及び裏面側のレンズ部材112によって挟み込まれたサンドイッチ構造を有する。レンズ部材111及びレンズ部材112は折り曲げても割れない素材が使用される。レンズ部材11は高酸素透過性を有するものが好ましい。
【0079】
レンズ部材111はお椀をひっくり返したような上金型(キャビティ)により半球状に成形し、レンズ部材112を、角膜80の表面形状に沿うような曲面(曲率)を有した下金型(コア)によりドーム状(平面視円形状)に成形する。この例では、1チップ動作素子202、液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30等を、予め遮光部材13’に実装して置くものとする。ピンホール領域12も、遮光部材13’の中央部分に画定されている。もちろん、これに限られることはなく、チップ封止方法を変更してもよい。レンズ部材11の表面又は裏面に電子部材20を貼付する方法が採れる。
【0080】
この例では、前面側と後面側のレンズ部材111,112とにより、第1プリント配線部201を含むアンテナ素子21を実装した透明領域14の前面及び後面、1チップ動作素子202、第2配線領域を含む液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30等を実装した遮光領域13の前面および後面の各々を挟持(被覆)するようにする。もちろん、1チップ動作素子202、第2配線領域を含む液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30等を、遮光領域13に限られることはなく、透明領域14に設けてもよい。また、角膜に直接接触を要する検出素子は、レンズ部材112等に窓部を設けて対処するようにしてもよい。窓部から検出素子の検出片等のみを露出できる。
【0081】
このようにして遮光領域13、透明領域14、アンテナ素子21、1チップ動作素子202、液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30等が一体的に成形される。これにより、アンテナ素子21、1チップ動作素子202、液晶表示素子24、光検知素子29a、圧力検知素子29b及び撮像素子30等を、レンズ部材111,112等により完全封止・密封できるようになる。
【0082】
しかも、本発明に係るピンホールコンタクトレンズ100を角膜に装着すると、透明領域14では光が通過するのに対して遮光領域13では光を遮光するようになる。ピンホール領域12には、遮光領域13により制限された中心の光が集束して通過する。このとき、液晶表示素子24による液晶開閉制御によって、
図4に示した網膜86に結像されるピンホール像の周辺の明るさを動的に補正できるばかりか、光の回折を原因とした環状のグレイ像(リング像)を緩和できるようになる。
【0083】
続いて、
図8から
図20を参照して、第2〜第7の実施形態に係る各種動作モードを実行する制御部25の機能を説明する。
【0084】
<第2実施形態>
この実施形態では制御部25が明るさ補正モードを実行する。このため、
図8に示すピンホールコンタクトレンズ200の遮光領域13に工夫がなされている。遮光領域13は、ピンホール領域12と複数(多数)の孔15とを有している。液晶表示素子24は孔15の全部又は一部を塞ぐように設置される。液晶表示素子24は孔15が選択できれば、遮光部材13’の上面側又は下面側のいずれに配置してもよい。
図8では、孔15の分布を説明するために、便宜上、右側半分に液晶表示素子24を配置しているが、もちろん、左側半分にも液晶表示素子24を配置するものである。孔15と液晶表示素子24との関係においては、1画素で複数の孔15を選択しても、また、複数画素で1つの孔15を選択するようにしてもよい。高精度に孔15を選択できるようになる。
【0085】
図8に示すように、ピンホール領域12の孔周縁と遮光領域13の外周縁との間には複数の孔15がランダムまたは規則的に穿設され、外部からの光を角膜80に入射させることで明るさ(夜間視力)を確保する機能を有している。この例では、遮光領域13の外周縁部に複数の孔15が分布し、ピンホール領域の外周縁部には孔15が配置されないものである。ピンホール像の最大限のコントラストを得る構成である。
【0086】
特に、夜間や暗所でピンホールコンタクトレンズ100を使用する場合に、光量を確保するのに効果的となる。孔15のピッチ(間隔)は、狭くするほど、十分な明かりを確保することができる。一方で、孔15のピッチを広くするほど像のコントラストの向上を図ることができる。孔15は従来の孔数固定式に比べてやや多めに開口数を増加しておく。入射光量範囲を広げるためである。
【0087】
また、孔15の孔形状は、入射光の回折を防止するため、正円であることが好ましい。孔15の深さ方向(貫通方向)は、
図4A及び
図4Bに示したように、網膜86の中心窩88(
図4参照)に向かうようにして(点線に沿って)傾斜され、効果的に入射する光を中心窩88に集光できるように形成されている。孔15は、中心窩88における光量を確保するためであり、更に、中心窩88ではR,G,B色の視信号が生成されるが、中心窩88は錐体視細胞から成り、視信号生成には、ある程度の明るさが必要であることによる。
【0088】
孔15の径D5は、ピンホール領域12の径よりも小さく選定され、例えば0.17mm〜0.18mmの範囲に選定される。これは、孔15の径を0.17mm未満とした場合、孔径が小さ過ぎて入射光を十分に取り入れることができず、夜間視力(明るさ)を確保できないからである。また、孔15の径を0.18mm超とした場合、孔径が大き過ぎて、光の回折によりハローやグレア現象が生じてしまうからである。この例では、従来方式の孔固定タイプのコンタクトレンズに比べて10〜20%増しに孔15を開口しておく。
【0089】
ここで、孔15の最適な径D5は、
図4に示した、角膜80から網膜86の中心窩88までの焦点距離と光の波長との関係により求めることができる。孔15の径をφとし、入射光の波長をλとし、角膜80から網膜86の中心窩88までの距離(眼軸長)を焦点距離fとすると、孔15の径φは下記式(1)により求められる。
【0091】
ここで、焦点距離fは、一般的に23mm〜24mmであるので、例えば23mmの数値を上記式(1)に代入すると、孔15の最適な径φとして0.176mmが得られる。また、焦点距離fとして24mmの数値を上記式(1)に代入すると、孔15の最適な径φとして0.180mmが得られる。
【0092】
ここで、
図9を参照して、制御部25における明るさ補正モードの制御例を説明する。この例では、
図8に示したように、マトリクス状を成した液晶表示素子24がピンホールレンズ部材10の遮光領域13の全面又は一部に設けられる。この例では、遮光領域13の入射光側に設けられる。更にピンホールレンズ部材10の遮光領域13の外郭周縁に複数の微細な孔15が設けられ、制御部25が、遮光領域13上に配置された液晶表示素子24の液晶開閉制御を行って、孔15を選択するように液晶表示素子24を制御するものである。電源は、電波受信方式の場合について説明をする。この例では、IEEE C95規格に準拠し、実効放射電力(EIRP)が40dBmで、11cmの離隔距離で、周波数1.8GHzの場合、受電電力が6mW/cm程度である。
【0093】
この例では、大容量の蓄電部28が設けられる場合を前提にして、まず、
図9に示すステップST1で制御部25は明るさ補正モードの設定を待機する。外部機器90が当該ピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。外部機器90から電源の供給を受けると共に明るさ補正モードが設定されると、ステップST2で制御部25は液晶表示素子24及び光検知素子29aを通電する。この通電によって、光検知素子29aは、ピンホール領域12を透過する光を検知して光検知情報Dd1を制御部25に出力する。
【0094】
その後、ステップST3で制御部25は光検知素子29aから光検知情報Dd1の転送を受ける。制御部25では、光検知情報Dd1及び無線通信部22からの制御情報Dc0の少なくともいずれか一方の情報に基づいてピンホール像の周辺の明るさを制御するようになる。
【0095】
例えば、ステップST4で制御部25は光検知情報Dd1に基づく光量Dmと制御情報Dc0に基づく閾値Dthとを比較する。閾値Dthは制御情報Dc0に含まれ、外部機器90により設定され、動作モードや検知条件等によって異なるものである。光量Dmが閾値Dthよりも大きい場合(Dm>Dth)は、ステップST5に移行して孔15の開口数を減少する方向で孔15を選択するように液晶表示素子24を制御(液晶開閉制御)する。
【0096】
ステップST7で制御部25は光量Dmと閾値Dthとが一致したか否かの判別を行う。一致していない場合は、ステップST4に戻って、制御部25は光検知情報Dd1に基づく光量Dmと制御情報Dc0に基づく閾値Dthとを再度、比較する。光量Dmが閾値Dthよりも小さい場合(Dm<Dth)は、ステップST6に移行して孔15の開口数を増加する方向に孔15を
選択するように液晶開閉制御を実行する。
【0097】
ステップST7で制御部25は光量Dmと閾値Dthとが一致した場合(Dm=Dth)は、ステップST8で液晶開閉制御を維持する。その後、ステップST9で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST1に戻って制御を継続する。
【0098】
第2の実施形態によれば、遮光領域13の外郭周縁に穿設された複数の微細な孔15を選択制御できるようになるので、明るい環境及び暗い環境に対応して、ピンホール像周辺の明るさを緻密に制御することができる。これにより、ピンホール像周辺の夜間視力(明るさ)を調整できるようになる。
【0099】
<第3実施形態>
第3の実施形態では、制御部25が位置合わせ支援モードを実行する。このため、
図10に示すピンホールコンタクトレンズ300のように、液晶表示素子24がピンホール領域12内に形成される。例えば、装用者の網膜86上にピンホール像を結像するための開口部自体が液晶表示素子24から形成される。液晶表示素子24には例えば、PLCD液晶が使用できる。PLCD液晶は、荷電の有る無しで、光の透過をコントロールするもので、リバースタイプの場合は非荷電で透過するものである。もちろん、液晶表示素子24はPLCD液晶に限られることはない。
【0100】
この例では、まず、
図11に示すステップST11で制御部25は位置合わせ支援モードの設定を待機する。外部機器90が当該ピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。
【0101】
外部機器90から電源の供給を受けると共に位置合わせ支援モードが設定されると、ステップST12で制御部25は液晶表示素子24を通電する。液晶表示素子24がピンホール領域12に位置決めマークを表示する。位置決めマークは十字状に表示される。この十字状の位置決めマークを、以下で十字マークP3という。装用者は視軸(眼軸/光軸)を十字マークP3に一致するようにピンホールコンタクトレンズを操作して合わせ込む。もちろん、十字マークP3だけでなく、文字情報やキャラクターを表示するようにしてもよい。例えば、キャラクターパターン(絵や文字)を印刷したキャラクターをオン/オフ表示する。また、ピンホール領域の径D1を調整して、ピンホールによる光束(ビーム光)の強さを制御するようにしてもよい。
【0102】
その後、ステップST13で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST11に戻って制御を継続する。これにより、ピンホールコンタクトレンズ100を装用者の眼軸(視軸/光軸)に再現性よく装着できるようになる。しかも、液晶電源オフで開口状態とすれば、液晶機能が全部ダウンした場合でも、ピンホール効果を現状維持できるようになる。
【0103】
また、ピンホール領域12の開口部をマトリクス状の高密度の液晶表示素子で構成し、その画素数及び配置位置を適宜選択して、ピンホール領域12の径D1を1.0mm〜1.6mmの範囲で変化させる制御を行ってもよい。これにより、その径D1の大きさの変化によりおおよそ1.00〜3.00Dの加入度数を電子制御することができる。
【0104】
<第4の実施形態>
この実施形態では、制御部25が第1映像合成モードを実行する。このため、
図5に示したピンホールコンタクトレンズ400の
表示部は液晶表示素子24
に代わって、面(自)発光素子241から構成され、無線通信部22で受信した制御情報Dc0〜Dc2に基づく映像を表示し、ピンホール像の周囲に当該映像を結像するようになる。
面発光素子241は制御情報Dc1に付加された表示情報Dpに基づいて各種アプリケーションによる虚像を表示する。
【0105】
この例では、
表示部を構成する、例えば、
図12に示す12個の
面発光素子241がピンホールレンズ部材10の遮光領域13の角膜装用側に設けられる。
面発光素子241は、遮光領域13の周囲に所定の間隔で放射状に設けられる。例えば、30°置きの放射状に設けられる。これにより、マトリクス映像を環状(サークル状)に均一・均等に合成表示できるようになる。
面発光素子241の個々
はその一例を構成する赤色発光素子、青色発光素子及び緑色発光素子を有し、M行×N列のマトリクス状を成したものである。
図12に示すM,NはM=5,N=5である。もちろん、これに限られることは無い。M=1,2,3・・・,N=1,2,3・・・でも良い。
【0106】
この例では、まず、
図13に示すステップST21で制御部25は第1映像合成モードの設定を待機する。外部機器90が当該ピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。
【0107】
外部機器90から電源の供給を受けると共に第1映像合成モードが設定されると、ステップST22で制御部25は遮光領域13の12個の
面発光素子241を通電する。その後、ステップST23で制御部25は無線通信部22から制御情報Dc1を入力する。ステップST24では制御部25が制御情報Dc1に基づいてピンホール像の周辺に第1映像P11を表示する制御を実行する。第1映像P11はカラーの文字情報やキャラクタパターンや、動画像である。第1映像P11は、例えば、
図15Bに示すピンホール像P1の外周縁に沿って環状に表示される。
【0108】
その後、ステップST25で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST21に戻って制御を継続する。この
面発光素子241の表示制御によって、自然色のピンホール実像にカラーの虚像(映像)を合成して網膜に結像できるようになる。
【0109】
このように第4の実施形態によれば、ピンホール領域12による実像を網膜86に結像しつつ、当該実像に対して、制御情報Dc1に基づく虚像(第1映像P11)を網膜86上で合成するように結像できる。実像の周囲に環状に第1映像P11を表示できるようになる。
【0110】
これにより、ピンホール効果を維持しつつ、当該コンタクトレンズ装用者の脳に、制御情報Dc1に基づく第1映像P11をリアルタイムに認知させることができる。従って、ピンホール像の質向上を図ることができると共に、本来のピンホール領域12による焦点深度を利用して、近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応可能かつ高付加機能実装可能なスマートコンタクトレンズを提供することができる。
【0111】
<第5の実施形態>
この実施形態では、制御部25が第2映像合成モードを実行する。このため、
図14に示すピンホールコンタクトレンズ500のように、電子部材20の一例となる、マトリクス状を成した液晶表示素子24がピンホールレンズ部材10の透明領域14の全面又は一部に設けられるものである。例えば、液晶表示素子24を構成する、12組の10×10画素の液晶表示素子242がアンテナ素子21と遮光領域13との間であって、透明領域14の周囲に30°置きの放射状に設けられる。液晶表示素子242は、赤・青・緑の3色のドットカラーフィルム部材を有するものである。
【0112】
図15に示す眼球断面図において、ピンホール領域12および遮光領域13の周辺視野像は、遮光領域13の周辺に設けられた透明領域14を透過して角膜80に入射され、瞳孔を経て眼球内部の硝子体84に入り、硝子体84の裏面側の網膜86上に結像される。そのため、ピンホール領域12により得られた自然色のピンホール実像の周囲視野に、透明領域14による周辺視野像と、カラーの虚像(第2映像P21)とを合成して網膜86に結像できるようになる。
【0113】
この例では、まず、
図16に示すステップST31で制御部25は第2映像合成モードの設定を待機する。外部機器90が当該ピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。
【0114】
外部機器90から電源の供給を受けると共に、第2映像合成モードが設定されると、ステップST32で制御部25は透明領域14の各々の液晶表示素子242を通電する。その後、ステップST33で制御部25は無線通信部22から制御情報Dc2を入力する。ステップST34では制御部25が制御情報Dc2に基づいてピンホール像の周辺に第2映像P21(虚像)を表示する液晶表示制御を実行する。第2映像P21は文字情報やキャラクターを構成する。例えば、液晶表示素子242はキャラクターパターン(絵や文字)を動画化したものや、これらの静止画を表示する。
【0115】
第2映像P21は、例えば、
図15Bに示したピンホール像P1の外周縁に沿って環状に表示された、第1映像P11の外周縁に沿って環状に表示される。中心窩88の周囲の網膜86は杆体視細胞から構成されることから、くっきりとした映像は視認されないかも知れない。しかし、第1及び第2映像合成モードを重畳させた場合に、第1映像合成モードによる第1映像P11に対して、第2映像合成モードによる第2映像P21が明るさを補完する形態で2つの映像を合成表示できるようになる。
【0116】
その後、ステップST35で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST31に戻って制御を継続する。
【0117】
このように第5の実施形態によれば、ピンホール領域12による実像の周囲視野に、透明領域14による周辺視野像と、カラーの虚像(第2映像P21)とを合成して網膜86に結像できるようになる。実像の周囲に環状に第2映像P21を表示できるようになる。
【0118】
これにより、ピンホール効果を維持しつつ、当該コンタクトレンズ装用者の脳に、制御情報Dc2に基づく第2映像P21をリアルタイムに認知させることができる。従って、ピンホール像の質向上を図ることができると共に、本来のピンホール領域12による焦点深度を利用して、近視や遠視、乱視、老眼の何れの矯正にも対応可能かつ高付加機能実装可能なスマートコンタクトレンズを提供することができる。
【0119】
しかも、ピンホールレンズ部材10のピンホール領域12、遮光領域13及び透明領域14の全ての領域を液晶表示素子24で形成することができる。これにより、ピンホールコンタクトレンズ自体をフィルム状のレンズ部材11と液晶表示素子242で構築できるようになる。いわゆる、向こう側(被写体側)が見える透明ディスプレイを構成できる。
【0120】
<第6の実施形態>
この実施形態では、
図17Bに示すように、人の眼瞼内に装用可能なC形状の基幹本体38に、電子部材20や、薬剤収容部33が実装されるものである。電子部材20は、
図5に示したような無線通信部22、液晶表示素子24、検知部(光検知素子29aや圧力検知素子29b等)、制御部25及び電源部26の少なくともいずれか一部である。例えば、電源部26及び無線通信部22が基幹本体38に実装されるものである。
【0121】
図17Aに示すピンホールコンタクトレンズ600の平面図では、説明のために、電子部材20及び薬剤収容部33を省略している。基幹本体38は、装用者の角膜の表面外周縁部の上端と上眼瞼75の裏側の上瞼嚢71aの付け根部との間に当接可能な円弧形状を有している。弧状部42は、角膜の表面外周縁部の下端と下眼瞼76の裏側の下瞼嚢71bの付け根部との間に当接可能な円弧形状を有している。基幹本体38は、一端が開放されたループ形状を成し、下弦状の第1の弧状部41、上弦状の第2の弧状部42及び略U字状の連結部45を有している。弧状部41,42の各々の遊端部は丸み処理が施されており、眼内を傷つけないようになされる。
【0122】
図17Bに示す薬剤収容部33は、基幹本体38に脱着自在に取り付け可能なもの(Drug Delivery System:DDS/眼科薬物伝達システム)であり、眼球及び結膜等を含む部位に薬液を長時間に渡って自動供給するものである。この例では、薬剤の自動供給は、図示する圧電素子39で行われる。圧電素子39は例えば、
図5に示した制御部25によって自動制御される。
【0123】
連結部45は弧状部41と弧状部42とを連結する部分を構成し、
図17Aに示した眼瞼耳側にある小帯77を囲繞する大きさとなされている。小帯77はヒトの結膜において、上瞼嚢71aと下瞼嚢71bの耳側の境界に存在する。連結部45は、弧状部41,42が連続した場合の仮想外周線よりも内側に窪んでいる。連結部45は、図中の白抜き矢印で示すように、弧状部41に対して上向き、弧状部42に対して下向きの相互反発力を付与するように構成されている。
【0124】
基幹本体38は、例えば、金(Au)、ステンレス等の金属、樹脂又はグラスファイバー等である。太さは、0.1mmから2.0mm程度である。異物挿入感を抱かせないために、基幹本体38の太さは、弧状部41,42に対する相互反発力をある程度、確保できれば、なるべく細い方がよい。
【0125】
基幹本体38は、
図17Aの白抜き矢印に示すように、その中央部の折り返し部位に外側に開く軽いテンションをかけながら嚢内に安定させるようになされる。また、基幹本体38は小帯を回避するだけでなく本体が嚢内で回転することを防ぐ役割もかねているため安定した位置に電子部材20を維持できる。
【0126】
基幹本体38に電子部材20の一部を装着する方式を採用したとき、当該電子部材20が眼瞼嚢内深くにおいて安定して収納され、例えば、基幹本体38とピンホールレンズ部材10との間において、電波による近距離給電方式を採ることができる。
【0127】
これにより、十分な容量の電源部26を基幹本体38に設置できるので、バックスキャッター方式に比べて、眼内部で電力授受を行いながら情報処理を行う自立型のスマートコンタクトレンズを構築できるようになる。
【0128】
この実施形態では、
図17Aに示したピンホールコンタクトレンズ600において、
図5に示した制御部25が眼圧検知モードを実行する。制御部25は眼圧検知情報Dd2を一定時間毎に記憶部27に書き込み制御したり、眼圧検知情報Dd2及び制御情報Dc0に基づいて圧電素子39(他の受動素子)から徐放される目薬等の徐放量を自動制御したりするようになる。
【0129】
この例では、まず、
図18示すステップST41で制御部25は眼圧検知モードの設定を待機する。外部機器90が装用者のピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。このとき、
図17Bに示した基幹本体38に実装された電源部26から、ピンホールレンズ部材10へ電源供給を行ってもよい。
【0130】
外部機器90から電源の供給を受けると共に眼圧検知モードが設定されると、ステップST42で制御部25は遮光領域13の圧力検知素子29bを通電する。この通電を受けて圧力検知素子29bは眼圧検知情報Dd2を制御部25に出力する。圧力検知素子29bは遮光領域13に限られることはなく、
図17Bに示した基幹本体38に設けてもよい。
【0131】
その後、ステップST43で制御部25は無線通信部22から制御情報Dc2及び眼圧検知情報Dd2を入力する。ステップST44では制御部25が制御情報Dc2及び眼圧検知情報Dd2に基づいて、例えば、
図17Bに示した圧電素子39等を制御する。この制御では眼圧検知情報Dd2を記憶部27に一定時間毎に記憶したり、薬剤徐放制御を実行したりする。薬剤徐放制御では、目標値を設定し圧電素子39を駆動制御して、眼圧に見合う最適な徐放量の目薬を薬剤収容部33から徐放するようになされる。
【0132】
その後、ステップST45で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST41に戻って制御を継続する。これにより、ピンホール像を網膜86に結像しつつ、特定の眼疾患や緑内障等の治療をできるようになる。
【0133】
緑内障においては、角膜下の房水の排出制御を行うことができる。検知部は圧力検知素子29bに限られることはなく、涙に含まれる糖の値(血糖値)を検知するものでもよい。例えば、検知部には酵素(グルコースオキシダーゼ)電極フィルムが使用できる。検知対象は心拍数でも良い。血糖値の検知内容によって血糖値を下げる薬液を薬剤収容部33等から徐放できるようになる。また、スマートフォン901を経由して医療機関に血糖値の検知情報を転送するといった用途(遠隔診療治療総合システム)が可能となる。これにより、糖尿病患者の血糖値を非侵襲的に遠隔監視したり、緑内障患者の眼圧を遠隔監視しながら房水を排出制御したりできるようになる。これらの用途に関してスマートコンタクトシステムを構成する場合に、外部機器90をスマートコンタクト専用制御装置により構成し、この専用制御装置から得られる情報を、スマートフォン901を経由して医療機関へ転送してもよい。医療機関からピンホールコンタクトレンズ装用者のスマートフォン901へ処方箋(治療)指示データを転送するようにしてもよい。
【0134】
<第7の実施形態>
この実施形態では、
図19に示すピンホールコンタクトレンズ700において、ピンホールレンズ部材10に撮像素子30(カメラ)が設けられるものである。例えば、撮像素子30は遮光領域13の表面側に配置され、シャッター機構は、上眼瞼及び下眼瞼による瞬きを検知する方式を採ることができる。シャッター機構については、米国特許出願公開第2016/0097940号明細書に記載された瞼閉鎖の検出技術を応用することができる。
【0135】
図20において、
図5に示した制御部25が撮像モードを実行する。まず、ステップST51で、制御部25は撮像モードの設定を待機する。外部機器90が装用者のピンホールコンタクトレンズに接近すると、無線通信部22及び電源部26が動作する。電源部26が電圧Vを発生すると、蓄電部28には電圧Vが充電される。
【0136】
外部機器90から電源の供給を受けると共に撮像モードが設定されると、ステップST52で制御部25は遮光領域13の撮像素子30を通電する。この通電を受けて撮像素子30は動作状態になる。この例では、図示しない検知手段で瞬きを検知して被写体の実像を取り込み、その撮像情報Dgを制御部25経由で記憶部27に書き込むようになされる。撮像情報Dgは無線通信部22を介して外部に読み出すようになされる。
【0137】
その後、ステップST53で終了か否かを検知する。電源オフで制御を終了し、電源オン状態でステップST51に戻って制御を継続する。これにより、撮像モードが設定されると、ピンホール像を網膜に結像しつつ、撮像モードを実行できるようになる。
【0138】
この実施形態では、遮光領域13の表面側に撮像素子30を配置して、被写体を撮像する場合について説明したが、これに限られることはなく、遮光領域13の裏側側に撮像素子30を配置して、眼底を撮像するようにしてもよい。中心窩88を含む周辺網膜画像を取得できるようになる。その際に、
面発光素子241を白色表示して被撮像領域を明るくすることができ、簡易な眼底検査情報を取得できるようになる。眼科診療の支援に寄与できるようになる。
【0139】
このように特定の好ましい実施形態に関して、本発明を開示してきたが、本発明は、特定の開示された実施形態を超えて、他の代替例にまで及び、または、本発明の使用と、明らかな変形例と、本発明と等価なものとにまで及ぶことを当業者は理解されたい。これに加えて、多数の本発明の変形例について詳細に示して説明してきたが、本発明の範囲内に含まれる他の変形例は、本開示に基づいて、当業者によって容易に想到可能なものである。例えば、遮光領域13をグラデーション構成にする。この構成では、遮光領域13と透明領域14との間に、遮光率が遮光領域13よりも高くなる(異なる)遮光周縁領域を設けるものである。ピンホール像周縁の網膜の明るさを確保するためである。
【0140】
また、実施形態の特定の特徴及びその側面を多様に組み合わせること、または、部分的に組み合わせることができ、それらもまた、本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。従って、開示された実施形態の多様な特徴及びその側面を組み合わせたり取り替えたりして、開示された発明の異なる形態が形成されるということを理解されたい。
【0141】
例えば、撮像素子30(カメラ)で外界像(実像)を撮像し、第2の実施形態で説明した第1映像合成モードに基づいて、R,G,B色用の自発光素子により外界像を再生し、又は、第3の実施形態で説明した十字マークに代えて、液晶表示素子24により外界像を表示し、当該外界像を網膜86上へ投射するようにする。これにより、ピンホール像を強調できるばかりか、角膜・水晶体・硝子体がほとんど機能しない視力弱者であっても外界像を視認できるようになる。この結果、眼鏡タイプのQDレーザー光走査型の網膜投影方式に比べて簡易な素子でスマートコンタクトレンズを構成できるようになる。
【0142】
このように、本願で開示される本発明の技術的な範囲は、上述の特定の開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を公平に解釈することのみによって決定されるものである。
【解決手段】人の角膜に装用可能なレンズ部材11、円状を有してレンズ部材のほぼ中央に配置されて、装用者の網膜上にピンホール像を結像するピンホール領域12、ピンホール領域12の外郭側に設けられて光を遮光する遮光領域13、及び、遮光領域13の外郭側に設けられて光を通過させる透明領域14を有するピンホールレンズ部材10と、ピンホール領域12、透明領域14及び遮光領域13のいずれか1つの領域に配置され、ピンホール領域12を通過する光に対し、透明領域14を通過する光及び、遮光領域13に吸収される光のいずれか一方を制御情報に基づいて電気的に光学処理してピンホール像に与える電子部材20とを備える。