(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174235
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】補機駆動デカップラ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/36 20060101AFI20170724BHJP
F16D 41/20 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
F16H55/36 A
F16D41/20 A
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-500321(P2016-500321)
(86)(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公表番号】特表2016-510866(P2016-510866A)
(43)【公表日】2016年4月11日
(86)【国際出願番号】US2014017552
(87)【国際公開番号】WO2014149347
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】13/839,182
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512309299
【氏名又は名称】デイコ アイピー ホールディングス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DAYCO IP HOLDINGS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・イー・ラヌティ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジー・デュティル
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エイチ・ミラー
【審査官】
高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05096035(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/36
F16D 41/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴を有するプーリー本体と、
前記プーリー本体の前記穴内に配置され、回転軸を画定するハブと、
前記プーリー本体の前記穴内に配置され、前記ハブと同心の一方向クラッチであって、
それぞれ摩擦面および片持ち端部を含む複数の片持ち部材であって、各片持ち部材が前記片持ち端部回りに枢動可能であるとともに、隣接する片持ち部材内に部分的に入れ子になって、前記プーリー本体の前記穴または前記ハブに面する各片持ち部材の前記摩擦面を有する環状本体を形成する、複数の片持ち部材、および
前記複数の片持ち部材の少なくとも1つに接触して、前記プーリー本体の前記穴または前記ハブと連続的な摩擦係合状態に前記複数の片持ち部材を付勢する付勢部材、
を備える、一方向クラッチと、
を備えるプーリーアセンブリであって、
各片持ち部材の前記摩擦面が前記プーリー本体の前記穴に面する場合、前記プーリー本体の主方向における回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記主方向における同時共回転のために前記プーリー本体を前記ハブに連結し、各片持ち部材の前記摩擦面が前記ハブに面する場合、前記ハブの主方向における回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記主方向における同時共回転のために前記ハブを前記プーリー本体に連結する、
プーリーアセンブリ。
【請求項2】
複数の付勢部材をさらに備え、片持ち部材につき1つの付勢部材が前記プーリー本体の前記穴または前記ハブとの連続的な摩擦係合状態に前記片持ち部材を付勢する、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項3】
前記ハブまたは前記プーリー本体の前記穴が複数のコネクタを含み、各コネクタが片持ち端部において1つの片持ち部材を前記ハブまたは前記プーリー本体の前記穴に接続する、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のコネクタがピンであり、かつ各片持ち部材の前記片持ち端部が前記ピンの1つを中に収容する雌レセプタクルを含む、請求項3に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項5】
前記複数のコネクタが細長い突出部であり、前記片持ち部材の前記片持ち端部がその上に着座する、請求項3に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のコネクタが、スリーブに配置され、該スリーブは前記ハブの少なくとも一部の周りに収まるか、または前記プーリー本体の前記穴に取り付けられる、請求項5に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項7】
隣接する片持ち部材内に入れ子になった各片持ち部材の一部がステップを有する表面を有し、該ステップ上に前記隣接する片持ち部材の自由端部が着座する、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項8】
前記ハブが前記プーリー本体よりも速い速度で回転する場合、オーバーランニングを提供するために前記一方向クラッチが前記プーリー本体を前記ハブから切り離すか、または前記プーリー本体が前記ハブよりも速い速度で回転する場合、オーバーランニングを提供するために、前記一方向クラッチが前記ハブを前記プーリー本体から切り離す、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項9】
前記一方向クラッチに動作的に連結された第1端部と、前記ハブに動作的に連結された第2端部とを有するねじりバネをさらに備え、前記主方向における前記プーリー本体の回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記ねじりバネを巻きとるか、または展開して、前記主方向における同時共回転のために前記プーリー本体を前記ハブに連結する、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項10】
前記ハブが前記プーリー本体よりも速い速度で回転する場合、オーバーランニングを提供するために前記一方向クラッチが前記プーリー本体を前記ハブから切り離す、請求項9に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項11】
前記一方向クラッチが複数のコネクタを有するスプールをさらに備え、前記スプールは、その周りに前記複数の片持ち部材を受け入れ、前記複数のコネクタのそれぞれが片持ち端部において1つの片持ち部材を前記スプールに接続する、請求項9に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項12】
前記複数のコネクタがピンであり、かつ各片持ち部材の前記片持ち端部が前記ピンの1つを中に収容する雌レセプタクルを含む、請求項11に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項13】
前記複数のコネクタが前記スプールの外表面上の細長い突出部であり、前記複数の片持ち部材の前記片持ち端部がその上に着座する、請求項11に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項14】
前記ねじりバネの前記第1端部が前記スプールの一部に対して着座する、請求項13に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項15】
複数の付勢部材をさらに備え、片持ち部材につき1つの付勢部材が前記プーリー本体の前記穴または前記ハブとの連続的な摩擦係合状態に前記片持ち部材を付勢する、請求項9に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項16】
前記一方向クラッチに動作的に連結された第1端部と、前記プーリー本体の前記穴に動作的に連結された第2端部とを有するねじりバネをさらに備え、前記主方向における前記ハブの回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記ねじりバネを巻き取るか、または展開して、前記主方向における同時共回転のために前記ハブを前記プーリー本体に連結する、請求項1に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項17】
前記プーリー本体が前記ハブよりも速い速度で回転する場合、オーバーランニングを提供するために、前記一方向クラッチが前記ハブを前記プーリー本体から切り離す、請求項16に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項18】
前記一方向クラッチが複数のコネクタを有するスプールをさらに備え、前記スプールはその周りに前記複数の片持ち部材を受け入れ、片持ち端部において1つの片持ち部材それぞれを前記スプールに接続する、請求項16に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項19】
前記ねじりバネの前記第1端部が前記スプールの一部に対して着座する、請求項18に記載のプーリーアセンブリ。
【請求項20】
穴を有するプーリー本体と、
前記プーリー本体の前記穴内に配置され、回転軸を画定するハブと、
前記プーリー本体の前記穴内に配置され、前記ハブと同心の一方向クラッチであって、
摩擦面、片持ち端部、および自由端部を有する複数の片持ち部材であって、各片持ち部材が前記片持ち端部回りに枢動可能であり、前記複数の片持ち部材のうちの枢動している部材が前記複数の片持ち部材を枢動させるように、各片持ち部材の自由端部が隣接する片持ち部材の片持ち端部の半径方向外側または内側に位置し、前記複数の片持ち部材は、前記プーリー本体の前記穴または前記ハブに面する各片持ち部材の前記摩擦面を有する環状本体を形成する、複数の片持ち部材、および
前記複数の片持ち部材の少なくとも1つに接触して、前記プーリー本体の前記穴または前記ハブと連続的な摩擦係合状態に前記複数の片持ち部材を付勢する付勢部材、
を備える、一方向クラッチと、
を備えるプーリーアセンブリであって、
各片持ち部材の前記摩擦面が前記プーリー本体の前記穴に面する場合、前記プーリー本体の主方向における回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記主方向における同時共回転のために前記プーリー本体を前記ハブに連結し、各片持ち部材の前記摩擦面が前記ハブに面する場合、前記ハブの主方向における回転が前記複数の片持ち部材を起動して、前記主方向における同時共回転のために前記ハブを前記プーリー本体に連結する、
プーリーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概してプーリー、およびより具体的には自己起動片持ち式部材を含む、隔離された、またはされていないデカップリング機構を含むプーリーアセンブリに関連する。
【背景技術】
【0002】
例えばウォータポンプ、オルタネータ/発電機、冷却剤を冷却するファン、パワーステアリングポンプ、および圧縮機を含む、車両エンジンで用いられる様々な自動車補機アセンブリを駆動することが知られている。特に、自動車のエンジンシャフトによって作動される駆動プーリーは、エンドレス駆動ベルトを駆動し、該ベルトは、被駆動プーリーを介して補機アセンブリを駆動する。
【0003】
例えば燃焼エンジン点火によって開始される周期的なトルクパルスは、被駆動部品の滑らかな動作を中断し得る著しい速度遷移を生じることがある。さらに、始動、停止、ジェイクブレーキ、ギアシフト等に関連した慣性速度および被駆動速度遷移も被駆動部品の動作を中断し得る。これらの遷移は、ベルトの飛び、ベルトの磨耗、軸受の磨耗、騒音等の不所望の効果を生じ得る。
【0004】
ベルトシステムを駆動するエンジン、および被駆動補機は、一次的および追加的な駆動/被駆動速度および周波数からなる。これらは、システムの特性であり、通常ベルト駆動システムによって比較的堅く接続された状態で所望の動作目標を満たす。しかし、いくつかの動作点、および/または条件において、これらの速度および周波数は、不所望の騒音の一因となり、システムまたは部品の完全性を破る、またはベルトシステムまたは個々の部品の耐用寿命の低下の一因となる。現在の解決法は、補機のオーバーランニングに対して提供され、他は、ねじれの隔離に対して提供されるが、性能が優れ、長くもち、かつ製造に対して費用効果がある改善が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善された被駆動プーリーアセンブリが開示され、それは、トルク感応型カップリングおよびデカップリングを利用して、被駆動補機の入力軸およびプーリーアセンブリの外側被駆動シーブの一方向の相対運動を許容する。プーリーアセンブリのシーブが回転の主方向に駆動されている場合、プーリーアセンブリのクラッチ機構は、所望の滑らかな回転のために補機入力軸に係合し、かつ駆動する。例えば被駆動速度遷移の結果として相対的なトルクの反転が起こる場合、提案されるプーリーアセンブリの内部クラッチ機構は、被駆動補機シャフトを外側被駆動シーブから解放し、それにより非駆動軸は、回転の主方向への勢いによって回転し続けることができる。
【0006】
本発明は、自動車車両のエンジン内のベルト被駆動補機を駆動するためのベルト駆動アセンブリ、およびより具体的には、ベルト被駆動補機がベルト駆動アセンブリの速度以外の速度で一時的に作動することを可能にするデカップリング機構に関連する。
【0007】
本明細書におけるプーリーアセンブリの1つの目的は、現在の性能を越え、かつ自動車産業によって要求される実用性水準を維持するオーバーランニングおよびデカップリング能力の両方を提供することである。他の目的は、より軸方向にコンパクトで、かつより小さい直径を有するプーリーアセンブリを提供することである。これは、様々なエンジンのタイプのベルト駆動システムでの使用および配置における多様性を提供する。
【0008】
1つの態様において、これらの目的は、プーリー本体、プーリー本体の穴内に配置されたハブ、およびハブと同心の一方向クラッチを含むプーリーアセンブリによって達成される。一方向クラッチは、それぞれが摩擦面および片持ち端部を含む複数の片持ち部材と、プーリー本体の穴との連続的な摩擦係合状態に片持ち部材を付勢するよう1つの片持ち部材に接触する付勢部材とを有する。各片持ち部材は、その片持ち端部回りに枢動可能であり、かつ隣接する片持ち部材内に部分的に入れ子になって環状本体を形成する。この構造は、プーリー本体の穴に面する各片持ち部材の摩擦面を配置する。動作中、複数の片持ち部材を起動するプーリー本体が主方向に回転して、同時回転のためにプーリー本体をハブに連結する。そして、プーリー本体の速度が低下する運用条件下において、ハブはそこから解放され、主方向の回転を維持することによってオーバーランすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、プーリーアセンブリは、片持ち部材につき1つの付勢部材となるように分布した複数の付勢部材を有することができ、プーリー本体の穴との連続的な摩擦係合状態にそれぞれの片持ち部材を付勢する。片持ち部材をハブに接続するために、ハブは、片持ち端部において1つの片持ち部材をハブにそれぞれが接続する複数のコネクタを含む。
【0010】
他の実施形態において、プーリーアセンブリは、一方向クラッチに動作的に連結された第1端部と、ハブに動作的に連結された第2端部とを有するねじりバネを含む。ねじれバネは、振動および/またはねじれから部品を保護するためにアセンブリとの隔離を提供する。ねじりバネがある場合、主方向におけるプーリー本体の回転は、複数の片持ち部材を起動し、それによりねじりバネを巻き上げるか、または展開して、主方向における同時共回転のためにプーリー本体をハブに連結する。ここで再度、プーリー本体速度がハブの速度未満である場合の運用条件下においては、ハブは、そこから解放され、主方向における回転を維持することによりオーバーランすることができる。ねじりバネを片持ち部材に接続するために、プーリーアセンブリは、片持ち部材の連結のための複数のコネクタを有するスプールを含むことができる。
【0011】
本発明の利点および特徴は、以下の特定の実施形態の説明、および特許請求の範囲により明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】シャフトに接続可能なプーリーアセンブリの正面図である。
【
図3】
図1に示すシステムなどで使用するためのプーリーアセンブリの一実施形態の分解斜視図である。
【
図4】組み立てられた
図3のプーリーアセンブリの横断面の上面図である。
【
図6】
図1に示すシステムなどで使用するためのプーリーアセンブリの第2実施形態の分解斜視図である。
【
図7】組み立てられた
図6のプーリーアセンブリの横断面の上面図である。
【
図9】ラインE−Eに沿った
図8の拡大部分の正面図である。
【
図10】
図1に示すシステムなどで使用するためのプーリーアセンブリの第3実施形態の分解斜視図である。
【
図11】組み立てられた
図10のプーリーアセンブリの縦断面の正面図である。
【
図12】組み立てられた
図10のプーリーアセンブリの横断面の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明は、本発明の一般的な原理を示し、その例が添付図面において追加的に示されている。図面において、同様の参照符号は、同一の、または機能的に類似した要素を示している。
【0014】
図1を参照すると、例えば自動車の内燃機関の補機駆動システム10は、多数の補機を駆動するために使用されるエンドレスベルト30を含んでいる。様々な補機は、
図1にプーリーアセンブリによって図式的に示されている。ベルト30は、クランクプーリーアセンブリ12、ファン/ウォータポンププーリーアセンブリ14、オルタネータプーリーアセンブリ16、パワーステアリングプーリーアセンブリ18、アイドラープーリーアセンブリ20およびテンショナープーリーアセンブリ22の周囲に連なっている。いくつかの実施形態では、テンショナープーリーアセンブリ22は、ベルト30から離れてテンショナーアームが持ち上がるのを妨げる摩擦ダンパーを有する非対称制動装置などの制動装置を含んでいる。
【0015】
様々な補機は、ベルト30によって回転するプーリーアセンブリ14,16,18,20および22の使用を介して駆動される。説明のために、以下ではオルタネータのプーリーアセンブリ16に焦点を当てる。しかし、1または複数の他の補機の他のプーリーアセンブリもプーリーアセンブリ16と類似した方法で動作することを留意すべきである。さらに、プーリーアセンブリは、本明細書に議論されるようにクランクプーリー12とすることができる。
【0016】
図2を参照すると、プーリーアセンブリ16は、主回転方向において回転する場合入力トルクを
図1のベルト30から補機、例えばオルタネータの入力軸78へ伝え、またプーリーアセンブリ16および入力軸78の間の相対的なトルク反転から保護するために入力軸78を解放する。プーリーアセンブリ16および入力軸78の間のこのような相対的なトルク反転が発生する場合、プーリーアセンブリ16の内部デカップラシステムは、オーバーランニング状態とも呼ばれるトルク反転から入力軸78を解放するよう作用し、それにより補機入力軸78が主運転方向への勢いで回転し続けることができる。
【0017】
プーリーアセンブリ16は、ベルト係合面58を有するプーリー本体56内に収容された、補機の入力軸78と係合可能なハブ40を含む。ハブ40は、良く知られるように、半月キーによって入力軸78と嵌合することができ、ハブ40が入力軸回りに自由に回転することを防ぐ。もちろん例えば、スプライン、ネジ接続、または圧入などのハブ40および入力軸78の間の他の連結も可能である。
【0018】
ここで
図3〜
図5を参照すると、概して116として示されるプーリーアセンブリは、ページの向きで左から右に、第1軸受118、第1ブッシュ120、一方向クラッチ機構122、ハブ124、スリーブ126、第2ブッシュ128、付勢部材130、プーリー本体132、および第2軸受134を含んでいる。組み立てられた場合(
図4)、回転軸136を画定するハブ124は、一方向クラッチ122と共にプーリー本体132の穴138内に配置される。プーリー本体は、その外表面の一部としてベルト係合面139を含む。一方向クラッチ122は、ハブ124と同心であり、かつ複数の片持ち部材140を含み、該片持ち部材は、それぞれ摩擦面142を含むとともに、片持ち端部144および自由端部146を有する。各片持ち部材140は、片持ち端部144回りに枢動可能であり、かつ隣接する片持ち部材150(
図5に示される)内に部分的に入れ子になって、プーリー本体132の穴138に面する各片持ち部材140の摩擦面142を有する環状本体を形成する。一方向クラッチ122はまた、複数の片持ち部材140の少なくとも1つと接触する付勢部材130を含み、複数の片持ち部材140をプーリー本体132の穴138との連続的な摩擦係合状態に付勢する。
【0019】
この実施形態において、各片持ち部材140の片持ち端部144は、ハブ124に枢動可能に接続される。ここで、ハブ124は、ハブ124の外表面125の細長い突出部156である複数のコネクタ154を含み、この上に片持ち端部144が載置される。一実施形態において、複数のコネクタ154は、ハブ124と一体とすることができる。他の実施形態において、
図3〜
図5に示すように、コネクタ154をシャフト124上に適合するスリーブ126の一部として形成することができる。片持ち端部144が細長い突出部156に着座するために、各片持ち端部144は、ハブ124に面する側に半パイプチャネル148を含み、かつ細長い突出部156をそこに受け入れる。半パイプチャネル148および細長い突出部156間の連結は、スナップフィット連結とすることができ、プーリーの寿命を長くするために、片持ち部材が半径方向外向きに回転することができ、摩擦パッドが磨耗する。他の実施形態において、複数のコネクタ154は、
図6〜
図9に関して以下に説明される。
【0020】
ここで
図6〜
図9の実施形態を参照すると、概して216として示されるプーリーアセンブリは、ページの向きで左から右に、第1軸受118、プーリー本体132、ブッシュ120、ハブ224、一方向クラッチ機構222、付勢部材130、および第2軸受234を含んでいる。組み立てられた場合(
図7)、回転軸236を画定するハブ224は、一方向クラッチ222と共にプーリー本体132の穴138内に配置される。プーリー本体132は、外表面の一部としてベルト係合面139を含む。一方向クラッチ222は、ハブ224と同心であり、かつ複数の片持ち部材240を含み、該片持ち部材はそれぞれ摩擦面242を含むとともに、片持ち端部244および自由端部246を有する。各片持ち部材240は、片持ち端部244回りに枢動可能であり、かつ隣接する片持ち部材250(
図8に示される)内に部分的に入れ子になって、プーリー本体132の穴138に面する各片持ち部材240の摩擦面242を有する環状本体を形成する。一方向クラッチ222はまた、複数の片持ち部材240の少なくとも1つと接触する付勢部材130を含み、複数の片持ち部材240をプーリー本体132の穴138との連続的な摩擦係合状態に付勢する。
図7に示す実施形態において、複数の付勢部材130は、片持ち部材240に対して1つの付勢部材130が含まれ、それぞれの片持ち部材240をプーリー本体132の穴138との連続的な摩擦係合状態に付勢する。
【0021】
この実施形態において、各片持ち部材240の片持ち端部244は、ハブ224に枢動可能に接続されている。ハブ224は、第1端部262および第2端部264(
図9に示される)を有し、入力軸78(
図2に示す)に取り付けられた場合、第1端部262は、入力軸78を受け入れる。しかし、他の実施形態においては、片持ち部材240が適切な方向、主回転方向にクラッチするよう配向される限り、第2端部264が入力軸78を受け入れることができる。ここで、ハブ224は、第1端部262の近くにフランジ266を含む。
図9から分かるように、フランジ266は、その中で着座するピン256である複数のコネクタ254を含む。片持ち部材240はそれぞれ、片持ち端部244に雌レセプタクル258を含み、片持ち部材240をハブ224に枢動可能に接続するようにピン256を受け入れる。一実施形態において、複数のコネクタ254は、ハブ224に一体とすることができる。他の実施形態において、複数のコネクタは、
図3〜
図5に関して上述したようなものとすることができる。
【0022】
なおも
図9を参照すると、ハブ224はまた、着座する第1軸受118を有する第2端部264に隣接した肩部268を含むことができる。肩部268は、ハブ224および片持ち部材240の間に付勢部材130を配置するための開口部を含むことができる。肩部268は、へり269を含むことができるか、またはへり269を形成する、そこに着座する板270を有することができる。へり269は、片持ち部材240にわたって延在し、ピン256と位置合わせされた複数の孔を含み、ピン256を安定させるために一端部を受け入れる。
【0023】
運用中、単一の付勢部材を有する実施形態は、片持ち部材を連続的に活性化させる。プーリー本体が主方向に回転すると、付勢部材によって付勢される片持ち部材は、摩擦面とプーリー本体の穴との摩擦接触を介して枢動し、それにより自由端部をプーリー本体の穴に向かって半径方向に外向きに動かし、それが隣接する片持ち部材を持ち上げて自由端部を半径方向に外向きに枢動させる。入れ子構成の結果として、残りの片持ち部材(存在すれば)のそれぞれに対してこれが順々に繰り返される。一旦すべての片持ち部材が作動されると、プーリーの外殻は、共に回転するためハブに完全にロックされる。複数の付勢部材を有する実施形態においては、各片持ち部材は、プーリー本体の主方向の回転によって同時に作動されることが可能である。両方の実施形態において、片持ち部材の持ち上がり(枢動)は、各片持ち部材の自由端部をプーリー本体の穴に「ロックされた」摩擦係合状態に押し込むくさび作用を生じ、プーリー本体およびハブは、この係合位置で共に回転する。
【0024】
プーリーアセンブリはまた、オーバーランニングを提供するためにハブをプーリー本体から解放することができる。解放方向において、ベルト状態の変化の結果プーリー本体が減速しているか、または停止しているが入力軸が回転することを入力軸の慣性がなおも必要としている場合、片持ち部材は、プーリー本体の穴から自動的に離れ、入力軸およびそこに接続されたハブは、自身のペースで減速することができる。言い換えると、オーバーランニング状態の間、入力軸は、プーリーアセンブリ、特にプーリー本体から離れ、プーリー本体が相対的なトルク反転、または急な減速を受ける場合は第1回転方向(主方向)に勢いで回転し続ける。この状態において、プーリー本体は、第1回転方向に回転し続けることができるが、入力軸を駆動してきた速度よりも小さい角速度である。プーリー本体における角速度の急な減少は、相対的なトルク反転効果を有し、それは、片持ち部材を枢動して、自由端部をプーリー本体の穴から離れて半径方向内向きに移動させ、それにより片持ち部材およびプーリー本体の間の摩擦係合を低減させる。結果として、プーリー本体は、ハブから外れ、これらの間の最小の力による独立した回転で片持ち部材を越えてスライドすることができる。
【0025】
プーリーアセンブリ内で、一方向クラッチの起動は、片持ち部材の摩擦面の摩擦係数、プーリー本体の穴の摩擦係数、各片持ち部材の入れ子部分の枢動角度、および付勢部材のバネ定数の選択によって制御することができる。この選択の一部として、付勢部材は、板バネ、コイルバネ、または圧縮またはねじりバネの任意の他のタイプとすることができる。付勢部材はまた、特にベルト駆動システムの停止中に入力軸を減速させるのに役立つトルクを加える、解放方向の抗力を増加させるように設計されることができる。抵抗なしで入力軸が減速する場合に生じ得る不所望のうなった雑音を低減するため、この抗力は、好都合である。
【0026】
図3〜
図9は、補機プーリー(すなわち被駆動プーリー)として示され、説明され、その主方向は、片持ち部材を起動する時計回りのプーリーの回転である。この同じプーリーアセンブリが、クランクシャフトに取り付けられる場合、駆動プーリーとなり、かつハブの反時計回りの回転が主方向となるようにプーリーアセンブリが取り付けられている限り、ハブおよびプーリーの同時回転のために、やはり片持ち部材をプーリー本体に向けて起動する。
【0027】
補機プーリーまたはクランクシャフトプーリーのどちらかが上述の方向と逆方向の回転を起動することを可能とすることが望まれる場合、片持ち部材を反転させることができる、すなわち取外し、180°回転させてプーリーに戻すことができる。
【0028】
ここで、
図10〜
図12の実施形態を参照すると、316として概して示されるプーリーアセンブリは、ページの向きで左から右に、第1軸受118、プーリー本体132、ブッシュ120、一方向クラッチ機構320、付勢部材130、ねじりバネ370、第2ブッシュ128、およびハブ324を含む。組み立てられた場合(
図11)、回転軸336を画定するハブ324は、一方向クラッチ320とともにプーリー本体132の穴138内に配置されている。プーリー本体132は、外表面の一部としてベルト係合面139を含む。一方向クラッチ320は、ハブ324と同心であり、かつ複数の片持ち部材340を含み、該片持ち部材はそれぞれ、摩擦面342を含むとともに、
図12に示される片持ち端部344および自由端部346を有する。各片持ち部材340は、片持ち端部344回りに枢動可能であり、かつ、隣接する片持ち部材350内に部分的に入れ子になって、プーリー本体132の穴138に面する各片持ち部材340の摩擦面342を有する環状本体を形成する。一方向クラッチ320はまた、複数の片持ち部材340の少なくとも1つに接触する付勢部材130を含み、複数の片持ち部材340をプーリー本体132の穴138との連続的な摩擦係合状態に付勢する。
図12から明らかなように、複数の付勢部材130は、片持ち部材340に対して1つの付勢部材130が含まれ、それぞれの片持ち部材340をプーリー本体132の穴138との連続的な摩擦係合状態に付勢する。しかし、上に説明したように、他の実施形態においては、1つの付勢部材を使用することができる。
【0029】
図10〜
図12の実施形態において、ねじりバネ370が追加された、該ねじりバネは、ハブ324と同心に、かつハブ324および周辺に片持ち部材340を有するスプール380の間に配置されている。ねじりバネ370は、一方向クラッチ320に動作可能に連結された第1端部372と、ハブ324に動作可能に連結された第2端部374とを有する。ハブ324は、ねじりバネ370の第2端部374を受け入れる当接機構326を含んでおり、プーリー本体と共に一方向クラッチ320が回転することによってバネが巻かれる、または展開されることができる。スプール380はまた、ねじりバネ370の第1端部372を受け入れる当接機構(図示せず)を含み、バネが巻かれる、または展開されることを可能にする。ねじりバネ370を加えることにより、上に説明された実施形態にはない隔離を提供する。ここで、ねじりバネ370は、ベルト駆動システムからハブに伝達されるねじれを軽減し、入力軸のより滑らかな駆動動作、すなわちベルトスパン振動、テンショナーアームの移動の低減、および補機ハブ負荷の低減を提供する。隔離効果は、バネを作る材料の選択によるバネ特性およびバネの形状を変更することにより調整することができる。
【0030】
スプール380は、上部環状フランジ付端部382および下部環状フランジ付端部384を有する。上部および下部は、
図11のページの向きに対するものである。複数の片持ち部材340が上部環状フランジ付端部382および下部環状フランジ付端部384の間に収容される。スプール380は、上述したようなピンまたは細長い突出部とすることができる複数のコネクタ356を含み、ともに回転させるために片持ち部材340をスプール380に枢動可能に接続する。複数のコネクタ356は、ピンとして
図12に示されている。ピンは、上部環状フランジ付端部382から下部環状フランジ付端部384へ延在することができ、かつコネクタに安定性を提供するために両方に着座することができる。片持ち部材340それぞれは、片持ち端部344に雌レセプタクル358を含み、該雌レセプタクルは、片持ち部材340をスプール380に枢動可能に接続するためにピン356を受け入れる。
【0031】
動作中、
図10〜
図12の実施形態は、一方向クラッチ320がねじりバネ370を巻くか、展開させるまで、プーリー本体132の回転の移送がハブ324に伝達されないという点以外は基本的に上述したように動作する。
【0032】
図1〜
図12は、片持ち部材を起動させるために主方向が時計回りのプーリー回転であるような、補機プーリー(すなわち被駆動プーリー)として示され、説明されている。一方で、この同じプーリーアセンブリがクランクシャフトに取り付けられる場合は、駆動プーリーとなり、かつハブの反時計回りの回転が主方向となるようにプーリーアセンブリが取り付けられている限りハブおよびプーリーの同時回転のために、やはり片持ち部材をプーリー本体に向けて起動する。補機プーリーまたはクランクシャフトプーリーのどちらかが上述の方向と逆方向の回転を起動することを可能とすることが望まれる場合、片持ち部材を反転させることができる、すなわち取外し、180°回転させてプーリーに戻すことができ、かつ必要であれば、ねじれバネが反対方向に巻かれる、または展開するように変更することができる。
【0033】
本明細書の任意の実施形態は、
図3〜
図5に示し、
図5に最も良く見えるステップ152を含むことができる。ステップ152は、隣接する片持ち部材150に面する、各片持ち部材140の入れ子部分172の表面170に配置される。ステップ152は、隣接する片持ち部材150の自由端部146が着座する位置に配置することができる。
図6〜
図9に示されるような複数の付勢部材130を有する実施形態においては、ステップ152を省略することができる。
図8によく示されるように、片持ち部材240の入れ子部分272に対して軸方向外向きの摩擦面242を有する、隣接する片持ち部材250の一部を持ち上げるために十分な初期付勢を有するように、付勢部材130を選択することができ、入れ子部分及び隣接する片持ち部材の間に間隙274が存在する。
【0034】
本明細書の各実施形態において、ベルト係合面139は、ベルト30の対応するリブおよび溝に嵌合するV字型リブおよび溝を含んで形成される。歯車の歯、平らな、または丸みを帯びたリブおよび溝などの他の構成が可能である。
【0035】
他の実施形態(図示せず)において、プーリーアセンブリは、クランクプーリーとすることができ、図面に示された主方向における運用を許容するように、クラッチ機構の部品を変更することができる。ここで、一方向クラッチは、プーリー本体の穴の中に配置されるとともに、ハブと同心であるが、複数の片持ち部材は、プーリー本体の穴、およびプーリーではなくハブに面する各片持ち部材の摩擦面に枢動可能に取り付けられる、または接続される。したがって、1または複数の片持ち部材に属する付勢部材は、プーリー本体ではなくハブとの連続的な摩擦係合状態にそれぞれの片持ち部材を付勢する。動作中、主方向のハブの回転は、複数の片持ち部材を起動して、主方向における同時回転のためにハブをプーリー本体に連結する。それ以外は、プーリーの構造および動作は、図に関して上述したものと実質的に類似している。
【0036】
本明細書に開示される実施形態において、プーリーアセンブリはまた、所望の条件下において摩擦接触する、片持ち部材の摩擦面および表面の間の限られたスリップを許容する構造を含むことができる。プーリーアセンブリに限られたスリップを提供するために、各片持ち部材がその周りを回転する枢動点の位置は、自由端部(
図7の符号246)に向かって移動する。同様に、付勢部材もまた、好ましくは同じ量だけ自由端部に向かって移動する。枢動点の移動により、片持ち部材の全長は、減少する。この概念は、破線の円260、および破線のインセット262によって
図7に示される。限られたスリップが望まれる場合、片持ち部材の枢動角度は、自己ロック式のものではなく、代わりに、ドラムブレーキ理論に基づき計算された量の摩擦トルクを提供する。プーリー本体(被駆動)またはハブ(駆動)のいずれかによって一旦この摩擦トルクが越えると、プーリー本体およびハブの間の係合面においてスリップが生じる。
【0037】
様々なパラメータは、本明細書に開示されるプーリーアセンブリの動作、応答性、および性能に作用することができ、それらは、各片持ち部材の入れ子部分の角度、各片持ち部材の摩擦面の摩擦係数、プーリー本体の穴の摩擦係数、付勢部材のバネ定数、および片持ち部材の外形を含む。特定の組み合わせの選択に影響を及ぼす他の要因は、磨耗、主要のクラッチ、耐久性および費用を含む。開示された実施形態において、多くの利点は明らかである。付勢部材によるシャフトまたはスプールへの片持ち部材の接続により、摩擦面が磨耗するため、付勢部材が片持ち部材に対して継続的に圧力を与えることができ、これがプーリーの寿命を長くする。片持ち部材の長細い形状は、より小さい直径を有する軸方向にコンパクトなプーリーを提供する。そのうえ、プーリーアセンブリの部品、特にクラッチ機構の分解を促すプーリー内で軸方向の力が存在しない。
【0038】
図面に示され、上述した本発明の実施形態は、特許請求の範囲内でなされ得る例示的な多数の実施形態である。開示された手法の利点を採るプーリーアセンブリの多数の他の構成を作ることができることが考えられる。つまり、出願人の意図は、ここから由来する特許範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるということである。
【符号の説明】
【0039】
10 補機駆動システム
40 ハブ
56 プーリー本体
58 ベルト係合面
78 入力軸
118 第1軸受
120 第1ブッシュ
122,222,320 一方向クラッチ
124,224,324 ハブ
126 スリーブ
128 第2ブッシュ
130 付勢部材
132 プーリー本体
134,234 第2軸受
136,236,336 回転軸
138 穴
139 ベルト係合面
140,240,340 片持ち部材
142,242,342 摩擦面
144,244,344 片持ち端部
146,246,346 自由端部
148 半パイプチャネル
150,250 隣接する片持ち部材
152 ステップ
154,254 コネクタ
156 細長い突出部
172,272 入れ子部分
256,356 ピン
258,358 雌レセプタクル
262 ハブの第1端部
264 ハブの第2端部
266 フランジ
268 肩部
326 当接機構
370 ねじりバネ
372 バネの第1端部
374 バネの第2端部
380 スプール
382 上部環状フランジ付端部
384 下部環状フランジ付端部