【実施例】
【0038】
実施例1
50/50のPLLA/PDLA、核剤のための0.5重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド
ポリ乳酸ステレオコンプレックス組成物が、PLLA(Purac Biochem B.V.製、Mw=177kg/mol、Mn=116kg/mol、多分散性、DPI=1.53、光学純度>99%、Tm=174℃およびTg=61℃(DSC、10℃/分)、PDLA(Purac Biochem B.V.製、Mw=167kg/mol、Mn=108kg/mol、多分散性、DPI=1.56、光学純度>98%、Tm=174℃及びTg=61℃(DSC、10℃/分)、核剤としてのN, N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド(Shanxi Provincial Institute of Chemical Industry(中国)製、Tm>300℃)を使用して調製された。これらの物質は、処理の前に、減圧下で80℃で24時間乾燥された。
【0039】
溶液混合:等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間溶解され、そして0.5重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)の核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが添加され、次いで約2時間急速に撹拌された。混合物が培養皿にキャストされ、減圧下で80℃で3日間乾燥された。
【0040】
非等温結晶化挙動が、TA機器Q2000上でDSCにより測定された。DSC走査が、250℃から50℃への冷却プロセスおよび250℃への続く第2の加熱プロセスにおいて得られた。サンプルが250℃に加熱されて、存在する結晶性を冷却前に融解した。冷却/加熱速度は、窒素雰囲気下で10℃/分であった。結果を
図1および2ならびに表1に示す。
【0041】
非等温結晶化挙動が、TA機器Q2000上でDSCにより測定された。典型的に、サンプルが最初に250℃に加熱されて存在する結晶性を融解する一方で、融解されたサンプルを250℃から等温結晶化温度まで冷却することによって種々の温度での等温結晶化後に結晶化半減時間(crystallization half−time)が得られた。これらの固定された結晶化温度で結晶性が発現した。サンプルは次いで、10℃/分で250℃に加熱された。結果を
図3および表2に示す。
【0042】
実施例2
50/50のPLLA/PDLA、核剤のための3重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間溶解され、そして3重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)の核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様である。
【0043】
3重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドを含有する組成物が、冷却プロセス中に147℃で結晶化発熱ピークを示し、加熱プロセスにおけるステレオコンプレックス結晶の融解のための単一の融解ピークは210℃付近に見られ得、融解熱は約48.5 J/gである。冷却プロセスおよび加熱プロセスでのDSCの結果は、N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドの核剤が排他的にステレオコンプレックス結晶の核となり得ることを示す。
【0044】
非等温および等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1、2および4ならびに表1および2に示す。
【0045】
実施例3
50/50のPLLA/PDLA、核剤のための0.25重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび0.25重量%のN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミド
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間溶解され、そして0.25重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび0.25重量%のN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミド(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)が添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様である。
【0046】
0.25重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび0.25重量%のN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミドを含有する組成物が、冷却プロセス中に129℃で結晶化発熱ピークを示し、加熱プロセスにおけるステレオコンプレックス結晶の融解のための単一の融解ピークは212℃付近に見られ得、融解熱は約49.4J/gである。冷却プロセスおよび加熱プロセスでのDSCの結果は、N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよびN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミドの核剤化合物が排他的にステレオコンプレックス結晶の核となり得ることを示す。
【0047】
非等温および等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1、2および5ならびに表1および2に示す。
【0048】
実施例4
30/70のPLLA/PDLA、核剤のための3重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド
PLLA及びPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間、30/70の比で溶解され、そして3重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)の核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0049】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図9に示す。
【0050】
実施例5
70/30のPLLA/PDLA、核剤のための3重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド
PLLA及びPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間、70/30の比で溶解され、そして3重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)の核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0051】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図9に示す。
【0052】
実施例6
50/50のPLLA/PDLA、核剤のための1.5重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび1.5重量%のN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミド
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間溶解され、そして1.5重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび1.5重量%のN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミド(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)が添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0053】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図10および表1に示す。
【0054】
実施例7〜17
サンプルを調製するための実施例7〜11の方法は実施例1と同様であり、サンプルを調製するための実施例12〜17の方法は実施例6と同様であった。全ての成分の重量%は以下の通りであった。
【0055】
【0056】
例としてN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド(R1=6およびm=2)を挙げると、調製法は以下の通りであった。N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが、原料としてパラフタロイルクロリドおよびシクロヘキサンを用いて合成された。反応は、不活性溶媒中で特定の温度で撹拌しながら行われた。パラフタロイルクロリドの物質は、原料としてテレフタル酸を用いて塩化スルホキシド法によって得られた。N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドのCAS番号は15088−29−6である。
【0057】
FT−IR、
13CNMRおよび
1HNMRの結果は、上記構造が実際に得られたことを示した。
【0058】
実施例18
成形品を製造するための実施例18の方法は、実施例1または6と同様であった。動的機械的特性が、動的機械的アナライザーDMAを使用して調べられた。ストリップ(10mmx6mmx1.8mm)の形態のサンプルが、引張りモードで1.0Hzの一定周波数で20〜250℃の温度の関数として3℃/分の加熱速度で窒素流下で測定された。結果を
図12に示す。
【0059】
実施例19
成形品を製造するための実施例19の方法は、実施例2と同様であった。動的機械的特性が、動的機械的アナライザーDMAを使用して調べられた。ストリップ(10mmx6mmx1.8mm)の形態のサンプルが、引張りモードで1.0Hzの一定周波数で20〜250℃の温度の関数として3℃/分の加熱速度で窒素流下で測定された。結果を
図12に示す。
【0060】
比較例1
50/50のPLLA/PDLA
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で2時間溶解され、核剤は添加されなかった。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0061】
非等温および等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1、2および6ならびに表1および2に示す。
【0062】
比較例2
50/50のPLLA/PDLA、核剤として0.5重量%のモンモリロナイト
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で2時間溶解され、そして0.5重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)のモンモリロナイトが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0063】
非等温および等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1、2および7ならびに表1および2に示す。
【0064】
比較例3
50/50のPLLA/PDLA、核剤として0.5重量%のタルク
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で2時間溶解され、そして0.5重量%(PLLA及びPDLAの総重量に基づく)の核剤鉱物タルクが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0065】
非等温および等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1、2および8ならびに表1および2に示す。
【0066】
比較例4
100%のPLLA
PLLA樹脂がトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で2時間溶解され、核剤は添加されなかった。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0067】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1および2ならびに表1に示す。
【0068】
比較例5
100%のPLLA、核剤として3重量%のN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミド
PLLA樹脂がトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で2時間溶解され、そして3重量%(PLLAの重量に基づく)の核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドが添加された。サンプルの調製法は、実施例1と同様であった。
【0069】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図1および2ならびに表1に示す。
【0070】
比較例6
50/50のPLLA/PDLA
等モルのPLLAおよびPDLAがトリクロロメタン中で2g/dLのポリマー濃度で30分間溶解され、核剤は添加されなかった。サンプルの調製法は、実施例6と同様であった。
【0071】
非等温結晶化挙動が、実施例1に記載されたようにDSCによって測定された。結果を
図10および表1に示す。
【0072】
比較例7
成形品を製造するための比較例7の方法は、比較例4と同様であった。動的機械的特性が、動的機械的アナライザーDMAを使用して調べられた。ストリップ(10mmx6mmx1.8mm)の形態のサンプルが、引張りモードで1.0Hzの一定周波数で20〜250℃の温度の関数として3℃/分の加熱速度で窒素流下で測定された。結果を
図12に示す。
【0073】
比較例8
成形品を製造するための比較例8の方法は、比較例1または6と同様であった。動的機械的特性が、動的機械的アナライザーDMAを使用して調べられた。ストリップ(10mmx6mmx1.8mm)の形態のサンプルが、引張りモードで1.0Hzの一定の周波数で20〜250℃の温度の関数として3℃/分の加熱速度で窒素流下で測定された。結果を
図12に示す。
【0074】
冷却プロセスおよび第2の加熱プロセス中の非等温結晶化、および等温結晶化のDSC結果を
図1および2ならびに表1および2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
本発明に従うN,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび/またはN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミドを含有する組成物(実施例1、2および3)においてステレオコンプレックス結晶が優先的に形成され、PLLAまたはPDLAホモポリマーのためのホモ結晶(α結晶形)は観察され得ない。上記組成物の選択された2DWAXSパターンが
図11に示され、ステレオコンプレックス結晶形の結晶面(110)、(300)/(030)および(220)が見られ得る。これは、上記サンプルのみが純粋なステレオコンプレックス結晶(sc−結晶)として結晶化したことを確認する。しかし、比較例1、2および3のサンプルにおけるホモ結晶の結晶化および融解に関して、冷却中の約130℃での明らかな発熱ピークおよび第二の加熱プロセス中の約165℃での吸熱ピークがあり、サンプル中にステレオコンプレックス結晶と共存するホモ結晶が冷却および加熱プロセスで現れる。さらに、ホモ結晶に対する核剤の影響を理解するために、PLLAおよびPLLA/N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドブレンド(比較例4および5)の結晶化挙動も調べられた(
図1および2)。250℃から冷却すると、2つのサンプルに関して冷却プロセス中にピークは観察されない。これは、どの核剤が添加されても、PLLAの結晶化力がより弱いことを意味する。DSCの結果は、選択された核剤N,N’−ジシクロヘキシルテレフタルアミドおよび/またはN,N’,N”−トリシクロヘキシルトリメシンアミドが選択的にステレオコンプレックス結晶の核になり得ることを示す。
【0078】
種々の温度での等温結晶化の結果を
図3〜10および表2に示す。これは、本発明の組成物(実施例1〜5)の結晶化半減時間が短いことが観察され、また、PLLAとPDLAの非等モル混合物および溶融混合による成形品(実施例6)の場合ですら、120℃より高い温度での等温結晶化後に、ステレオコンプレックス結晶のための加熱プロセスにおける単一のピークのみが210℃付近に現れたことを示す。しかし、鉱物タルクまたはモンモリロナイトを含有するまたは核剤を含有しない組成物(比較例1、2および3)は、ホモ結晶およびステレオコンプレックス結晶のための加熱プロセスにおいて2つのピークを示し、それぞれ、160℃より低い温度での等温結晶化後に約166℃および215℃で現れる。
【0079】
本発明に従う物質によって、高含量のステレオコンプレックスPLA結晶および高い耐熱性を有する生成物が得られ得る。実施例18(曲線1)および19(曲線2)ならびに比較例7(曲線4)および8(曲線3)の生成物のための温度の関数としてのPLLA、ポリ乳酸ステレオコンプレックス組成物およびその成形品の貯蔵弾性率E’値の曲線を
図12および13に示す。実施例18および19のサンプルは、180℃超で、比較例8のE’の2倍より高い貯蔵弾性率を示す。しかし、純粋なPLLAサンプル(比較例7)はこの温度で融解し、従って、貯蔵弾性率E’はゼロに低下する。
【0080】
本発明は、溶液混合、溶融混合、成形または紡糸のために使用され得るポリ乳酸ステレオコンプレックス組成物を開示する。開示された組成物によって、高い融点、高い耐熱性、高含量の純粋なステレオコンプレックス結晶を有するステレオコンプレックスPLA生成物が得られ得る。本発明に従うポリ乳酸ステレオコンプレックス組成物は、農業および衣服材料、食品包装、建材、医療用布および他の耐熱最終用途のための製造に適用され得る。