特許第6174277号(P6174277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174277画像処理システム、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6174277
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】画像処理システム、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20170724BHJP
   G06T 11/80 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   G06T1/00 340A
   G06T11/80 A
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-573140(P2016-573140)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2016076572
【審査請求日】2016年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500521522
【氏名又は名称】株式会社オプティム
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 俊二
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−092588(JP,A)
【文献】 特開2007−257655(JP,A)
【文献】 特開平08−202893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00−5/50
G06T 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔画像を取得する取得部と、
前記取得された顔画像を表示部に表示させる表示制御部と、
指示体により指定された前記顔画像上の位置を検出する検出部と、
前記検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、前記顔画像上に化粧オブジェクトを描画する描画部と、
前記化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げる重なり制御部と、
前記軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点を有する場合に、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を、前記化粧オブジェクトにおいて前記1以上の重なり部分以外の部分の濃度との濃度差が小さくなるように補正する補正部と
を備える画像処理システム。
【請求項2】
前記化粧オブジェクトは、定められた太さを有する線状のオブジェクトである
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記補正部は、前記第1重なり部分の濃度を、前記化粧オブジェクトにおいて前記1以上の重なり部分以外の部分の濃度に下げる
請求項1又は2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記描画部は、所定のパラメータに応じて、前記化粧オブジェクトの濃度を変化させ、
前記補正部は、前記化粧オブジェクト又は前記他の化粧オブジェクトにおいて前記第1重なり部分を挟んで隣り合う2つの領域から第1濃度と第2濃度とをそれぞれ抽出し、前記第1濃度から前記第2濃度へと徐々に変化するように、前記第1重なり部分の濃度を補正する
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記所定のパラメータは、前記軌跡の長さを含み、
前記描画部は、前記軌跡の長さに応じて、前記化粧オブジェクトの濃度を変化させる
請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記補正部は、所定の条件を満たす場合には、前記軌跡が前記点を有するか否かに関わらず、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記第1重なり部分とは異なる第2重なり部分の濃度を補正する
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記所定の条件は、前記第2重なり部分が前記顔画像の所定の領域に位置するという条件、又は前記軌跡が前記所定の領域を通った回数、頻度、若しくは時間間隔に応じた条件である
請求項6に記載の画像処理システム。
【請求項8】
通信回線を介して接続され、画面共有を行う第1端末及び第2端末と、
前記第1端末において、前記表示制御部として機能する第1表示制御部と、
前記第1端末において、前記表示部に表示された画面を示す画面データを前記第2端末に送信する送信部と、
前記第2端末において、前記第1端末から受信した前記画面データに応じた画面を第2表示部に表示させる第2表示制御部とを備える
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記第2表示部の画面サイズに応じて、前記補正部による補正の実行を制御する補正制御部をさらに備える
請求項8に記載の画像処理システム。
【請求項10】
顔画像を取得する取得部と、
前記取得された顔画像を表示部に表示させる表示制御部と、
指示体により指定された前記顔画像上の位置を検出する検出部と、
前記検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、前記顔画像上に化粧オブジェクトを描画する描画部と、
前記化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げる重なり制御部と、
前記軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点を有する場合に、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を、前記化粧オブジェクトにおいて前記1以上の重なり部分以外の部分の濃度との濃度差が小さくなるように補正する補正部と
を備える画像処理装置。
【請求項11】
顔画像を取得するステップと、
前記取得された顔画像を表示部に表示させるステップと、
指示体により指定された前記顔画像上の位置を検出するステップと、
前記検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、前記顔画像上に化粧オブジェクトを描画するステップと、
前記化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げるステップと、
前記軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点を有する場合に、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を、前記化粧オブジェクトにおいて前記1以上の重なり部分以外の部分の濃度との濃度差が小さくなるように補正するステップと
を備える画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
顔画像を取得するステップと、
前記取得された顔画像を表示部に表示させるステップと、
指示体により指定された前記顔画像上の位置を検出するステップと、
前記検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、前記顔画像上に化粧オブジェクトを描画するステップと、
前記化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げるステップと、
前記軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点を有する場合に、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を、前記化粧オブジェクトにおいて前記1以上の重なり部分以外の部分の濃度との濃度差が小さくなるように補正するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
化粧のシミュレーションを行う技術が知られている。例えば特許文献1には、タッチペンの操作に応じて被写体の画像に化粧を施す技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−92588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術のように、タッチペン等の指示体の位置の軌跡に沿って化粧が施される場合、指示体の移動方向が途中で大きく変化すると、指示体の位置の軌跡が誤って特定され、その結果、軌跡において移動方向が変化する部分に化粧の色が重ねて塗られる場合がある。この場合、ユーザの意図に反してこの部分の濃度が高くなるため、意図した化粧のシミュレーションを行うことができない。
本発明は、ユーザの意図に沿った化粧のシミュレーションを行うことを目的とする。
【課題を解決する手段】
【0005】
本発明は、顔画像を取得する取得部と、前記取得された顔画像を表示部に表示させる表示制御部と、指示体により指定された前記顔画像上の位置を検出する検出部と、前記検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、前記顔画像上に化粧オブジェクトを描画する描画部と、前記化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げる重なり制御部と、前記軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点を有する場合に、前記1以上の重なり部分に含まれる、前記点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を補正する補正部とを備える画像処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ユーザの意図に沿った化粧のシミュレーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ユーザ端末10の外観の一例を示す図。
図2】ユーザ端末10のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】ユーザ端末10の機能構成の一例を示す図。
図4】変化点を検出する方法を説明する図。
図5】化粧のシミュレーション処理の一例を示すフローチャート。
図6】画面161の一例を示す図。
図7】化粧オブジェクトの一例を示す図。
図8】化粧オブジェクトの別の例を示す図。
図9】変形例に係る補正処理の一例を説明する図。
図10】変形例に係る補正処理の別の例を説明する図。
図11】変形例に係る画像処理システム1の一例を示す図。
【符号の説明】
【0008】
1:画像処理システム、10:ユーザ端末、20:指示体、30:端末、11:プロセッサ、12:メモリ、13:通信インタフェース、14:タッチセンサ、15:操作ボタン、16:ディスプレイ、17:カメラ、18:ストレージ、101:取得部、102:表示制御部、103:特定部、104:描画部、105:重なり制御部、106:補正部、107:送信部、108:第2表示制御部、109:補正制御部、112:第1表示制御部
【発明を実施するための形態】
【0009】
構成
図1は、本実施形態に係るユーザ端末10の外観の一例を示す図である。ユーザ端末10は、タブレット端末、携帯端末、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。ユーザ端末10は、ユーザにより使用される。ユーザ端末10は、タッチパネルを備え、ユーザの指やスタイラスペン等の指示体20を用いた操作を受け付ける。ユーザ端末10は、指示体20を用いた操作に応じて、ユーザの顔画像を用いた化粧のシミュレーションを行う。
【0010】
図2は、ユーザ端末10のハードウェア構成の一例を示す図である。ユーザ端末10は、プロセッサ11と、メモリ12と、通信インタフェース13と、タッチセンサ14と、操作ボタン15と、ディスプレイ16と、カメラ17と、ストレージ18とを備える。
【0011】
プロセッサ11は、メモリ12に記憶されたプログラムに従って各種の処理を実行する。プロセッサ11としては、例えばCPU(Central Processing Unit)が用いられる。メモリ12は、プロセッサ11により実行されるプログラムを記憶する。メモリ12としては、例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。通信インタフェース13は、ネットワークに接続され、ネットワークを介して通信を行う。
【0012】
タッチセンサ14(検出部の一例)は、ディスプレイ16に重ねて設けられる。タッチセンサ14はディスプレイ16に接触した指示体20の位置を検出する。この位置の検出方式は、抵抗膜方式や静電容量方式であってもよいし、その他の方式であってもよい。タッチセンサ14とディスプレイ16とにより、タッチパネルが構成される。
【0013】
操作ボタン15は、ユーザ端末10の操作に用いられる。ディスプレイ16(表示部の一例)は、各種の情報を表示する。ディスプレイ16としては、例えば液晶ディスプレイが用いられる。
【0014】
カメラ17は、画像を撮影する。カメラ17としては、例えばデジタルスチールカメラが用いられる。ストレージ18は、各種のプログラム及びデータを記憶する。ストレージ18としては、例えばフラッシュメモリ又はハードディスクドライブが用いられる。
【0015】
図3は、ユーザ端末10の機能構成の一例を示す図である。ユーザ端末10は、取得部101、表示制御部102、特定部103、描画部104、重なり制御部105、及び補正部106として機能する。これらの機能は、1以上のプロセッサ11がメモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0016】
取得部101は、顔画像を取得する。例えば取得部101は、カメラ17により撮影されたユーザの顔画像を取得する。他の例として、ユーザの顔画像が予めストレージ18に記憶されている場合には、取得部101は、ストレージ18からユーザの顔画像を取得してもよい。
【0017】
表示制御部102は、取得部101により取得された顔画像をディスプレイ16に表示させる。ユーザは、指示体20を用いてディスプレイ16に表示された顔画像上の位置を指定する操作を行う。この操作は、例えばディスプレイ16の表面において顔画像上に指示体20を接触させる操作である。ユーザが指示体20をディスプレイ16の表面に接触させた状態で移動させると、複数の位置が指定される。指示体20により指定された顔画像上の位置は、タッチセンサ14により検出される。
【0018】
特定部103は、タッチセンサ14により検出された位置を順次結ぶことにより、軌跡を特定する。ただし、軌跡の形状によっては、軌跡が正しく特定されない場合がある。
【0019】
描画部104は、特定部103により特定された軌跡に沿って、顔画像上に化粧オブジェクトを描画する。この化粧オブジェクトは、例えば軌跡を中心とする線状の形状を有する。化粧オブジェクトの色は、ユーザの操作により選択された色に定められてもよい。また、化粧オブジェクトの太さは、ユーザの操作により選択された化粧道具に応じて定められてもよい。例えば、太いブラシが選択された場合には、化粧オブジェクトの太さが大きくなってもよい。一方、細いブラシが選択された場合には、化粧オブジェクトの太さが小さくなってもよい。また、選択された化粧道具によって、化粧オブジェクトの端部の形状、濃度、又はぼかし具合が変化してもよい。なお、この端部の形状には、ストローク形状が含まれる。
【0020】
重なり制御部105は、描画部104により描画された化粧オブジェクトと他の化粧オブジェクトとの1以上の重なり部分の濃度を上げる。この重なり部分は、例えば化粧オブジェクトの位置座標と他の化粧オブジェクトの位置座標とに基づいて求められる。重なり制御部105は、例えば化粧オブジェクトの色を示す値と他の化粧オブジェクトの色を示す値とを乗算することにより、重なり部分の濃度を上げてもよい。
【0021】
補正部106は、特定部103により特定された軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点(以下、「変化点」という。)を有する場合に、この変化点に対応する位置にある第1重なり部分の濃度を補正する。この変化点に対応する位置とは、例えば点を取り囲むように定められる領域内の位置である。また、方向の変化量としては、軌跡の方向を示し、軌跡上の或る点で接する2つのベクトルのなす角度が用いられる。
【0022】
図4は、変化点を検出する方法を説明する図である。まず、補正部106は、軌跡31上に所定の間隔で定められる点P1〜P5において、隣り合う点の間の軌跡31の方向を示すベクトルを求める。例えば、点P2及びP3については、点P2と点P3との間の軌跡31の方向を示すベクトルV1が求められる。点P3及びP4については、点P3と点P4の間の軌跡31の方向を示すベクトルV2が求められる。
【0023】
続いて、補正部106は、点P1〜P5の各点で接する2つのベクトルがなす角度を求める。例えば、ベクトルV1及びV2については、ベクトルV1とベクトルV2とのなす角度αが求められる。ここでは、この角度αが閾値T1以上である場合を想定する。この場合、補正部106は、ベクトルV1とベクトルV2の接する点P3を変化点として検出する。
【0024】
ここで、軌跡が変化点を有する場合には、軌跡が正しく特定されないという現象が生じる。つまり、閾値T1としては、このような現象が生じるような方向の変化量の最小値が用いられる。
【0025】
動作
図5は、本実施形態に係る化粧のシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。この処理では、ユーザの顔画像を用いた化粧のシミュレーションが行われる。
【0026】
ステップS11において、ユーザは、カメラ17を用いて自分の顔画像61を撮影する。取得部101は、カメラ17により撮影された顔画像61を取得する。
【0027】
ステップS12において、表示制御部102は、化粧シミュレーションに用いられる画面161をディスプレイ16に表示させる。
【0028】
図6は、画面161の一例を示す図である。画面161には、ユーザの顔画像61が含まれる。また、画面161には、化粧の色の選択に用いられる複数の色見本62が含まれる。これらの色見本62には、色の種類が異なる色見本62だけでなく、色の濃度や質感が異なる色見本62が含まれていてもよい。この質感は、例えばパールの量、ラメの量、又は透明度によって変化する。なお、色見本62の色は、実際に販売されている商品の色であってもよいし、実際に販売されている商品の色とは無関係の色であってもよい。ユーザは、指示体20を用いて、色見本62の中から所望の化粧の色を表す色見本62を選択する操作を行う。この操作は、例えばタップ操作である。これにより、化粧の色が選択される。
【0029】
さらに、画面161には、化粧道具の選択に用いられる複数のアイコン63が含まれる。各アイコン63には、化粧道具を表す画像が含まれる。なお、この画像は、実際に販売されている商品を表す画像であってもよいし、化粧道具を表すイラストであってもよい。ユーザは、指示体20を用いて、複数のアイコン63の中から、所望の化粧道具を表すアイコン63を選択する操作を行う。この操作は、例えばタップ操作である。これにより、化粧道具が選択される。
【0030】
図5に戻り、ステップS13において、ユーザは、指示体20を用いて、顔画像61に化粧を施す操作を行う。この操作に応じて、顔画像61上に化粧オブジェクトが描画される。ここでは、ユーザが、顔画像61の肌領域にファンデーションの色を塗る操作を行う場合を想定する。
【0031】
図7は、化粧オブジェクトの一例を示す図である。この例では、ユーザは、顔画像61の肌領域内の点P11に指示体20を接触させる。続いて、ユーザは、指示体20をディスプレイ16の表面に接触させたまま、指示体20を点P12へと移動させて軌跡41を描く操作を行う。ユーザは、点12においてディスプレイ16の表面から指示体20を一度離した後、点P13に指示体20を接触させる。続いて、ユーザは、指示体20をディスプレイ16の表面に接触させたまま、指示体20を点P14へと移動させて軌跡42を描く操作を行う。
【0032】
タッチセンサ14は、所定の時間間隔でディスプレイ16の表面に接触した指示体20の位置を検出し、検出した位置を示す位置座標を出力する。特定部103は、タッチセンサ14から出力された位置座標が示す位置を順次結ぶことにより、軌跡41及び42を特定する。
【0033】
描画部104は、特定部により特定された軌跡41及び42に沿って、顔画像61上に化粧オブジェクト43及び44を描画する。化粧オブジェクト43と化粧オブジェクト44とは、重なり部分45を有する。重なり制御部105は、この重なり部分45の濃度を上げる。これにより、重なり部分45の濃度は、化粧オブジェクト43又は44の他の部分の濃度より高くなる。
【0034】
図8は、化粧オブジェクトの別の例を示す図である。この例では、ユーザは、顔画像61の肌領域内の点P1に指示体20を接触させる。続いて、ユーザは、指示体20をディスプレイ16に接触させたまま、指示体20を点P1〜P5へと移動させることにより、図4に示す軌跡31を描く操作を行う。
【0035】
タッチセンサ14は、所定の時間間隔で、ディスプレイ16の表面に接触した指示体20の位置を検出し、検出した位置を示す位置座標を出力する。上述したように、軌跡31は、点P3において閾値T1以上の変化量で方向が変化する。この場合には、軌跡31が正しく特定されない。この例では、特定部103は、タッチセンサ14から出力された位置座標が示す位置を順次結ぶことにより、1つの軌跡31ではなく、2つの別個の軌跡32及び33を特定する。この軌跡32及び33は、軌跡31が点P3において分割されたものである。
【0036】
描画部104は、特定部103により特定された軌跡32及び33に沿って、顔画像61上に化粧オブジェクト34及び35をそれぞれ描画する。化粧オブジェクト34と化粧オブジェクト35とは、重なり部分36(第1重なり部分の一例)を有する。重なり制御部105は、この重なり部分36の濃度を上げる。これにより、重なり部分36の濃度は、化粧オブジェクト34又は化粧オブジェクト35の他の部分の濃度より高くなる。
【0037】
図5に戻り、ステップS14において、補正部106は、指示体20の位置の軌跡が変化点を有するか否かを判断する。図7に示す例では、軌跡41及び42はいずれも方向が変化しないため、軌跡41及び42における方向の変化量はいずれも閾値T1より小さくなる。この場合、軌跡41及び42はいずれも変化点を有さないと判断される。このように、ステップS14の判断がNOである場合、フローは、ステップS15の処理を行わずにステップS16に進む。
【0038】
一方、図8に示す例では、軌跡32及び33は点P3において接続されており、軌跡32の方向と軌跡33の方向の変化量は閾値T1以上となる。この場合、この点P3が変化点となるため、軌跡32及び33は変化点を有すると判断される。このように、ステップS14の判断がYESである場合、フローはステップS15に進む。
【0039】
ステップS15において、補正部106は、変化点に対応する位置にある重なり部分の濃度を補正する補正処理を行う。図8に示す例では、点P3に対応する位置にある重なり部分36の濃度が補正される。例えば、化粧オブジェクト34又は35において重なり部分36以外の部分の濃度がD1であり、重なり部分36の濃度がD2である場合を想定する。この場合、重なり部分36の濃度D2が濃度D1に下げられる。これにより、重なり部分36とそれ以外の部分との濃度差がなくなる。
【0040】
図8に示す例のように、ユーザが指示体20をディスプレイ16の表面に接触させた状態で1つの軌跡31を描く操作を行った場合、この軌跡31に対応する化粧オブジェクト34及び35の重なり部分36について、色を重ねて塗る意図はないと考えられる。そのため、重なり部分36については、濃度の補正処理が行われる。
【0041】
一方、図7に示す例のように、ユーザがディスプレイ16の表面から指示体20を一度離して、2つの軌跡41及び42を描く操作を行った場合には、これらの軌跡41及び42に対応する化粧オブジェクト43及び44の重なり部分45については、色が重ねて塗る意図があると考えられる。そのため、重なり部分45については、濃度の補正処理を行わない。
【0042】
図5に戻り、ステップS16においては、シミュレーション処理を終了する操作が行われたか否かが判断される。この操作は、例えば指示体20又は操作ボタン15を用いて行われる。シミュレーション処理を終了する操作が行われない場合、フローは、上述したステップS13に戻る。このようにして、ステップS13〜S16の処理を繰り返すことにより、ファンデーション、アイシャドウ、チーク、口紅等の各種の化粧が顔画像61に施される。そして、ディスプレイ16には、ユーザの操作により化粧が施される度に、化粧が施された後の顔画像61が表示される。一方、シミュレーション処理を終了する操作が行われた場合には、フローが終了する。
【0043】
本実施形態によれば、ユーザの意図に反して濃度が高くなった重なり部分の濃度が補正される。これにより、ユーザの意図に沿った化粧のシミュレーションを行うことができる。
【0044】
変形例
本発明は上述した実施形態に限定されない。実施形態は、以下のように変形してもよい。また、以下の変形例を組み合わせて実施してもよい。
【0045】
変形例1
上述した実施形態において、所定のパラメータに応じて、化粧オブジェクトの濃度が変化してもよい。この所定のパラメータには、例えば軌跡の長さが含まれる。この場合、描画部104は、軌跡が長くなるほど、化粧オブジェクトの濃度を下げてもよい。
【0046】
他の例において、所定のパラメータには、圧力が含まれてもよい。この場合、ユーザ端末10は、ディスプレイ16の表面に加えられた圧力を測定する圧力センサーを備える。描画部104は、圧力センサーにより測定された圧力が大きいほど、化粧オブジェクトの濃度を上げてもよい。
【0047】
他の例において、所定のパラメータには、指示体20の移動速度が含まれてもよい。この場合、ユーザ端末10又は指示体20は、指示体20の移動速度を測定する速度センサーを備える。描画部104は、速度センサーにより測定された移動速度が大きいほど、化粧オブジェクトの濃度を下げてもよい。
【0048】
また、この変形例のように、化粧オブジェクト内において濃度が変化する場合には、重なり部の濃度を単純に化粧オブジェクトにおいて重なり部分以外の或る部分の濃度に下げると、重なり部分に隣り合う領域との間に濃度差が生じ、不自然になる場合がある。これを防ぐために、補正部106は、以下のように補正処理を行ってもよい。
【0049】
図9は、この変形例に係る補正処理の一例を説明する図である。この例では、補正部106は、重なり部分36に隣り合う参照領域37及び38から濃度D3(第1濃度の一例)及びD4(第2濃度の一例)をそれぞれ抽出する。なお、参照領域37又は38が複数の濃度を有する場合には、複数の濃度が抽出されてもよい。補正部106は、重なり部分36の濃度を、濃度D3から濃度D4に徐々に変化するように補正する。これにより、重なり部分36と参照領域37及び38との間の濃度差が小さくなる。
【0050】
変形例2
上述した実施形態において、所定の条件を満たす場合には、補正処理を行わず、又は補正処理の程度を下げてもよい。例えば、化粧オブジェクトの太さが閾値T2以下の場合には、補正処理を行わなくてもよい。一方、化粧オブジェクトの太さが閾値T2より大きい場合には、上述した実施形態と同様に補正処理を行う。これは、化粧オブジェクトの太さが大きい場合には、重なり部分と他の部分との間の濃度差が目立つ一方、化粧オブジェクトの太さが小さい場合には、重なり部分と他の部分との間の濃度差を認識し難いためである。
【0051】
変形例3
上述した実施形態において、変化点に対応する位置にある重なり部分が大きい場合には、変化点に近い領域については色を重ねて塗る意図はない一方、変化点から遠い領域については色を重ねて塗る意図があるとも考えられる。したがって、この場合には、例えばこの重なり部分において変化点を含む所定の範囲の領域については補正処理を行う一方、それ以外の領域については補正処理を行わず、又は補正処理の程度を下げてもよい。
【0052】
図10は、この変形例に係る補正処理の一例を説明する図である。補正部106は、重なり部分36において点P3を含む所定の範囲の領域39については、上述した実施形態と同様に濃度を補正する。一方、補正部106は、重なり部分36において領域39以外の領域については、濃度の補正を行わない。
【0053】
変形例4
上述した実施形態において、所定の条件を満たす場合には、軌跡が変化点を有するか否かに関わらず、重なり部分の濃度が補正されてもよい。この重なり部分には、変化点に対応する位置にある重なり部分だけでなく、それ以外の重なり部分が含まれてもよい。
【0054】
例えば、重なり部分が顔画像61の輪郭等の所定の領域に位置する場合、補正部106は、この軌跡に対応する化粧オブジェクトが有する全ての重なり部分の濃度を補正してもよい。この所定の領域とは、例えば指示体20を用いて正確に位置を指定するのが難しい領域である。このような領域に化粧を施す操作をする場合、指示体20が意図しない位置に接触することにより、化粧オブジェクトが重なってしまう場合がある。しかし、この場合には、重なり部分について色を重ねて塗る意図はないと考えられる。したがって、所定の領域に位置する重なり部分については、濃度が補正されてもよい。
【0055】
他の例において、指示体20が所定の領域を通過した回数若しくは頻度が閾値T3以上であり、又は指示体20が所定の領域を通過した時間間隔が閾値T4以下である場合、補正部106は、軌跡に対応する化粧オブジェクトが有する全ての重なり部分の濃度を補正してもよい。これは、このような条件を満たす場合にも、重なり部分について色を重ねて塗る意図はないと考えられるからである。
【0056】
変形例5
上述した実施形態において、ユーザとは異なる人が、ユーザ端末10とは異なる端末を用いて、ユーザの顔画像に化粧を施す操作を行ってもよい。ユーザとは異なる人とは、例えばプロのメイクアップアーティスト等のインストラクターである。この場合、ユーザは、インストラクターによって施された化粧を見て、自分に似合う化粧や化粧の仕方を学ぶことができる。
【0057】
図11は、この変形例に係る画像処理システム1の一例を示す図である。画像処理システム1は、ユーザ端末10(第2端末の一例)と他の端末30(第1端末の一例)とを備える。ユーザ端末10及び端末30は、インターネット等のネットワーク2(通信回線の一例)を介して接続される。端末30は、ユーザ端末10と同様に、タブレット端末、携帯端末、パーソナルコンピュータ等のコンピュータである。端末30は、インストラクターにより使用される。端末30は、ユーザ端末10と同様のハードウェア構成を有する。
【0058】
端末30は、実施形態で説明した特定部103、描画部104、及び重なり制御部105に加えて、第1表示制御部112及び送信部107として機能する。これらの機能は、1以上のプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、送信部107は、プロセッサの制御の下、通信インタフェースにより実現される。第1表示制御部112は、実施形態で説明した表示制御部102と同様の機能を有する。送信部107は、端末30のディスプレイ(表示部の一例)に表示された画面を示す画面データをユーザ端末10に送信する。
【0059】
ユーザ端末10は、実施形態で説明した取得部101及び補正部106に加えて、第2表示制御部108及び補正制御部109として機能する。これらの機能は、1以上のプロセッサ11がメモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。第2表示制御部108は、端末30から受信した画面データに応じた画面をディスプレイ16(第2表示部の一例)に表示させる。これにより、端末30とユーザ端末10との間で画面共有が行われる。補正制御部109は、ディスプレイ16の画面サイズに応じて、補正部106による補正処理の実行を制御する。
【0060】
次に、この変形例に係る画像処理システム1の動作について説明する。ユーザ端末10は、通信インタフェース13により、ユーザの顔画像61を示す画像データを端末30に送信する。端末30は、第1表示制御部112により、ユーザ端末10から受信した画像データが示す顔画像61をディスプレイに表示させる。インストラクターは、指示体を用いて顔画像61に化粧を施す操作を行う。この操作に応じて、実施形態と同様に顔画像61に化粧オブジェクトが描画される。端末30は、送信部107により、所定の時間間隔でユーザ端末10にディスプレイの画面を示す画面データを送信する。このとき、変化点に対応する位置にある重なり部分の位置を示す位置座標が画面データとともに送信されてもよい。
【0061】
ユーザ端末10は、通信インタフェース13により、端末30から画面データを受信する。続いてユーザ端末10は、第2表示制御部108により、この画面データに応じた画面をディスプレイ16に表示させる。また、変化点に対応する位置にある重なり部分を有する化粧オブジェクトが画面に含まれる場合、ユーザ端末10は、画面を表示する前に、補正部106によりこの重なり部分の濃度を補正する補正処理を行ってもよい。この重なり部分は、端末30から受信した位置座標により特定される。
【0062】
また、ユーザ端末10は、補正制御部109により、ディスプレイ16の画面の大きさに応じて、補正処理の実行を制御してもよい。例えば、ディスプレイ16の画面サイズが閾値T5より大きい場合には、補正処理の実行が許可されてもよい。一方、ディスプレイ16の画面サイズが閾値T5以下の場合、補正処理の実行が禁止され、又は補正処理の程度が下げられてもよい。これは、ディスプレイ16の画面サイズが小さい場合には、重なり部分と他の部分との間の濃度差が目立たないからである。これにより、画像処理システム1の処理量を減らすことができる。
【0063】
本変形例によれば、インストラクターにより化粧が施された顔画像61が、リアルタイムでユーザ端末10のディスプレイ16に表示される。これにより、ユーザは、インストラクターによって自分の顔画像61に化粧が施される様子を閲覧することができる。
【0064】
他の例において、インストラクターの音声を示す音声データが画面データとともに端末30からユーザ端末10に送信されてもよい。この場合、端末30は、音声を収集して音声データに変換するマイクを備える。また、ユーザ端末10は、音声データに応じた音声を出力するスピーカを備える。これにより、インストラクターの音声がリアルタイムでユーザ端末10のスピーカから出力される。
【0065】
なお、図11に示す例では、ユーザ端末10が補正部106を有していたが、ユーザ端末10に代えて端末30が補正部106を有していてもよい。この場合、端末30側で補正処理が行われる。そして、補正後の化粧オブジェクトを含む画面を示す画面データが端末30からユーザ端末10に送信される。
【0066】
変形例6
上述した実施形態では、指示体20がディスプレイ16の表面に接触することにより、顔画像上の位置が指定されていたが、顔画像上の位置を指定する方法はこれに限定されない。例えば、ユーザ端末10が、ディスプレイ16の表面から法線方向に沿って形成される所定の検出範囲内に位置する指示体20を検出するセンサーを有する場合には、指示体20がディスプレイ16の表面に近接することにより、顔画像上の位置が指定されてもよい。
【0067】
変形例7
軌跡の形状又は変化点の位置は、実施形態で説明した例に限定されない。例えば、軌跡は曲線であってもよい。この場合、軌跡における方向の変化量として、曲率が用いられてもよい。この場合、軌跡において閾値以上の曲率を有する点が変化点となってもよい。
【0068】
変形例8
ユーザ端末10又は画像処理システム1において行われる処理のステップは、上述した実施形態で説明した例に限定されない。この処理のステップは、矛盾のない限り、入れ替えられてもよい。また、本発明は、ユーザ端末10又は画像処理システム1において行われる処理のステップを備える方法として提供されてもよい。
【0069】
変形例9
本発明は、ユーザ端末10又は端末30において実行されるプログラムとして提供されてもよい。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介してダウンロードされてもよい。また、これらのプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録した状態で提供されてもよい。
【要約】
取得部は、顔画像を取得する。表示制御部は、取得部により取得された顔画像を表示部に表示させる。検出部は、指示体20により指定された顔画像上の位置を検出する。描画部は、検出部により検出された位置を順次結ぶことにより特定される軌跡に沿って、顔画像上に化粧オブジェクト34及び35を描画する。重なり制御部は、化粧オブジェクト34と化粧オブジェクト35との重なり部分36の濃度を上げる。補正部は、軌跡が閾値以上の変化量で方向が変化する点P3を有する場合に、点P3に対応する位置にある重なり部分36の濃度を補正する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11