(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6174284
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】連結ピン挿入ジグ
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
E02F9/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-41346(P2017-41346)
(22)【出願日】2017年3月6日
【審査請求日】2017年4月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517077751
【氏名又は名称】株式会社エス・エス・ケイ
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 滝男
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−088352(JP,A)
【文献】
実開昭60−069817(JP,U)
【文献】
特開平11−241365(JP,A)
【文献】
特開平09−100550(JP,A)
【文献】
特開平09−273538(JP,A)
【文献】
特開2003−040590(JP,A)
【文献】
特開2005−249185(JP,A)
【文献】
特開2005−002683(JP,A)
【文献】
実開昭51−105943(JP,U)
【文献】
実開平05−086479(JP,U)
【文献】
国際公開第2011/003151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/36
E02F 9/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベルのアームに形成されたピン穴の位置と、作業アタッチメントのボスに形成されたピン穴の位置とを一致させ、両者のピン穴に連結ピンを挿入して前記アームと前記作業アタッチメントとを連結する際に用いる連結ピン挿入ジグであって、
前記連結ピンの先端が突き当てられて保持し、一列に並べられた前記アームのピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴の内部に前記アームのピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴の軸方向の一方側から他方側に前記連結ピンを通して誘導する誘導器と、
リング状をなし、前記アームの前記ピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴のうち、前記軸方向の前記他方側に位置するピン穴の内部に配置されて前記誘導器を挿入させて誘導するガイドリングと、
を備え、
前記誘導器は、前記連結ピンの先端が突き当てられて保持されるピン受け部と、該ピン受け部の先端から前方に延びるガイドロッドとを有し、
前記ガイドリングには前記ガイドロッドが挿入されることを特徴とする連結ピン挿入ジグ。
【請求項2】
前記ピン受け部の外周面が前記ガイドロッド側に向かって先細りに形成されている、請求項1に記載の連結ピン挿入ジグ。
【請求項3】
前記ピン受け部の後端には、前記連結ピンの先端が突き当てられて保持される凹部が形成されている、請求項1又は2に記載の連結ピン挿入ジグ。
【請求項4】
前記ピン受け部の外周面には溝が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の連結ピン挿入ジグ。
【請求項5】
前記溝は、前記ピン受け部の軸方向に延びており、前記ピン受け部の周方向に複数形成され、前記ガイドロッド側に向かって幅が徐々に小さく形成されている、請求項4に記載の連結ピン挿入ジグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結ピン挿入ジグに関し、さらに詳しくは、油圧ショベルのアームに作業アタッチメントを連結するための連結ピンを挿入する際に用いる連結ピン挿入ジグに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは機械本体部から延びる作業ユニットを備えている。この作業ユニットは、機械本体から前方に延びるブームと、ブームの先端に連結されたアームと、アームの先端に連結された作業アタッチメントとを備えている。作業アタッチメントとアームとは、作業用アタッチメントのボスに形成されたピン穴の位置とアームのピン穴の位置とを一致させ、ピン穴に連結ピンをはめ込むことによって連結されている。作業アタッチメントとしては、バケットを代表例として挙げることができるが、バケットの他にも作業現場での作業内容に応じた種々のものがアームに連結される。
【0003】
アームに作業アタッチメントを取り付ける場合、アームのピン穴の位置と作業アタッチメントに設けられたボスのピン穴の位置とを一致させ、両者のピン穴に連結ピンを挿入することにより行われる。ところが、作業アタッチメントは重いので、アームに作業アタッチメントを取り付ける作業は重労働である。そのため、アームに作業アタッチメントを取り付ける際に、連結ピンを挿入し易くするためのジグが提案されている。
【0004】
特許文献1で提案された連結ピン挿入ジグは、バケットとアームとをピン連結する際の位置合わせを容易に行なうためのものである。この連結ピン挿入ジグは、油圧ショベルのアーム等の第1の部材に設けられる第1の挿通孔と、バケット等の第2の部材に設けられる第2の挿通孔とに連結ピンを通すことによって第1の部材と第2の部材とを連結するときに用いる。連結ピン挿入ジグは、嵌合部とテーパ部と把持部とを備えている。嵌合部は、各挿通孔の内径に対応する外径寸法を有する円柱体状の部位である。テーパ部は、嵌合部から先端部に向かって先細りのテーパ角度でテーパ形状に形成される部位である。把持部は、嵌合部から軸方向に延びている部位である。
【0005】
この連結ピン挿入用のジグは、例えば、バケットのボスがアームの両側に配置され、バケットに設けられたボスの穴と、アームの穴とが一列に並べられたときに、連結ピンを挿入する一方側とは逆側の他方側のバケットのボスの穴から挿入して用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−241365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の連結ピン挿入ジグは、上述のように連結ピンを挿入しようとしている穴が形成されたボスとは逆側のボスに形成された穴に挿入して用いている。そのため、連結ピン挿入ジグを穴に挿入するときに、ハンマーで把持部の後端をたたいて連結ピン挿入ジグを穴に挿入する作業と、ピンを挿入するときにピンの後端をハンマーでたたいてピンを穴に挿入する作業とを別々に行わなければならず、作業者に煩わしさを与えてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業者に煩わしさを与えることなく、連結ピンを容易にピン穴に挿入することができる連結ピン挿入ジグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る連結ピン挿入ジグは、油圧ショベルのアームに形成されたピン穴の位置と、作業アタッチメントのボスに形成されたピン穴の位置とを一致させ、両者のピン穴に連結ピンを挿入して前記アームと前記作業アタッチメントとを連結する際に用いる連結ピン挿入ジグであって、前記連結ピンの先端が突き当てられて保持し、一列に並べられた前記アームのピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴の内部に前記アームのピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴の軸方向の一方側から他方側に前記連結ピンを通して誘導する誘導器と、リング状をなし、前記アームの前記ピン穴及び前記作業アタッチメントのピン穴のうち、前記軸方向の前記他方側に位置するピン穴の内部に配置されて前記誘導器を挿入させて誘導するガイドリングと、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、ピン穴のうち軸方向の他方側に位置するピン穴の内部に配置されたガイドリングに誘導器が誘導されるので、誘導器が連結ピンを先導することができる。その結果、連結ピンをアームのピン穴及び作業アタッチメントのピン穴の内部で円滑に挿入させることができる。
【0011】
本発明に係る連結ピン挿入ジグにおいて、前記誘導器は、前記連結ピンの先端が突き当てられて保持されるピン受け部と、該ピン受け部の先端から前方に延びるガイドロッドとを有し、前記ピン受け部の外周面が前記ガイドロッド側に向かって先細りに形成され、前記ガイドリングは、前記ガイドロッドが挿入される。
【0012】
この発明によれば、ピン受け部の外周面がガイドロッド側に向かって先細りに形成されているので、ピン受け部がピン穴の内部を通る際に、アームのピン穴の位置と作業アタッチメントのボスに形成されたピン穴の位置とを少しずつ移動させて両者の位置を一致させることができる。その結果、ピン受け部に先端が突き当てられて保持された連結ピンを円滑にピン穴に挿入させることができる。
【0013】
本発明に係る連結ピン挿入ジグにおいて、前記ピン受け部の後端には、前記連結ピンの先端が突き当てられて保持される凹部が形成されている。
【0014】
この発明によれば、ピン受け部の後端には連結ピンの先端が突き当てられて保持する凹部が形成されているので、誘導器の軸芯と連結ピンの軸芯とがずれることなく両者を一致させて連結ピンをピン穴に挿入させることができる。
【0015】
本発明に係る連結ピン挿入ジグにおいて、前記ピン受け部の外周面には溝が形成されている。
【0016】
この発明によれば、ピン受け部の外周面には溝が形成されているので、ピン受け部の外周面と、アームのピン穴の内面及び作業アタッチメントのピン穴の内面との接触部分を少なくすることができる。そのため、誘導器とピン穴との間に生じる摩擦を小さくすることができ、溝を有しない誘導器に比べて連結ピンをいっそう円滑に挿入させることができる。
【0017】
本発明に係る連結ピン挿入ジグにおいて、前記溝は、前記ピン受け部の軸方向に延びており、前記ピン受け部の周方向に複数形成され、前記ガイドロッド側に向かって溝幅が徐々に小さく形成されている。
【0018】
この発明によれば、溝がピン受け部の軸方向に延び、ピン受け部の周方向に複数形成され、ガイドロッド側に向かって溝幅が徐々に小さく形成されているので、ピン受け部の面圧が急激に大きくなることを防止しつつ誘導器とピン穴との間に生じる摩擦を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、作業者に煩わしさを与えることなく、連結ピンを容易にピン穴に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る連結ピン挿入ジグが用いられる油圧ショベルの一例を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る1実施形態の連結ピン挿入ジグを構成する誘導器の平面図である。
【
図3】
図2に示した連結ピン挿入ジグをピン受け部とガイドロットに分解して示した平面図である。
【
図4】本発明に係る1実施形態の連結ピン挿入ジグを構成するガイドリングを示す図であり、(A)は、正面図を示し、(B)は側面図を示す。
【
図5】本発明に係る連結ピン挿入ジグの使用形態の一例を説明するための説明図である。
【
図6】連結ピン挿入ジグを用いた連結ピンの挿入手順の準備工程を説明するための図であり、(A)はピン穴の位置合わせを行う工程を示し、(B)は、連結ピン挿入ジグをセットする工程を示す。
【
図7】連結ピン挿入ジグを用いた連結ピンの挿入手順の連結ピンの挿入工程を説明するための図であり、(A)は、連結ピンをピン受け部に突き当てて保持する工程を示し、(B)は、連結ピンの後端をハンマーでたたいて挿入する工程を示す。
【
図8】ピン穴の位置を微調整する工程を説明するための説明図である。
【
図9】連結ピンを挿入し終える最終工程を説明するための説明図である。
【
図10】
図2及び
図3に示す連結ピン挿入ジグの誘導器とは別形態の誘導器の平面図である。
【
図11】アームのボスが作業アタッチメントの両側に配置された形態における連結ピン挿入ジグの使用形態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。
【0022】
[油圧ショベルの概要]
本発明に係る連結ピン挿入ジグ100A,100Bは、例えば、
図1に示す油圧ショベル1のアーム7と作業アタッチメント8とを連結する際に用いられる。油圧ショベル1は、
図1に示すように、機械本体部2と、機械本体部2から前方に延びる作業ユニット5とで構成されている。機械本体部2は、その下部をなし、機械本体部2を走行させる走行体3と、走行体3に対して水平に旋回可能な旋回体4とで構成されている。作業ユニット5は、旋回体4から前方に延びるブーム6と、ブーム6の先端に連結されたアーム7と、アーム7の先端に連結された作業アタッチメント8とで構成されている。
図1に示す作業アタッチメント8はバケットである。
【0023】
[本発明の基本構成]
本発明に係る連結ピン挿入ジグ100Aは、油圧ショベル1のアーム7に形成されたピン穴7aの位置と、作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dの位置とを一致させ、両者のピン穴7a,8c,8dに連結ピン50を挿入してアーム7と作業アタッチメント8とを連結する際に用いるジグである。連結ピン挿入ジグ100Aは、誘導器10とガイドリング30とで構成されている。誘導器10は、連結ピン50の先端が突き当てられて保持され、一列に並べられたアーム7のピン穴7a及び作業アタッチメント8のピン穴8c、8dの内部にアーム7のピン穴7a及び作業アタッチメント8のピン穴8c,8dの軸方向の一方側Pから他方側Qに連結ピン50を通して誘導する構成要素である。ガイドリング30は、リング状をなし、アーム7のピン穴7a及び作業アタッチメント8のピン穴8c,8dのうち、軸方向の他方側Qに位置するピン穴8dの内部に配置されて誘導器10を内周面32の内側に挿入させて誘導するための構成要素である。本発明によれば、作業者に煩わしさを与えることなく、連結ピン50を容易にピン穴7a,8c,8dに挿入することができる。以下、各構成について具体的に説明する。
【0024】
<誘導器>
誘導器10は、
図2に示すように、ピン受け部11とガイドロッド20とで構成されている。ピン受け部11は、連結ピン50の先端が突き当てられて保持される構成要素であり、ガイドロッド20は、連結ピン50をピン穴7a,8c,8dの内部で連結ピン50が進行する方向を設定するための構成要素である。
【0025】
ピン受け部11は、連結ピン50が突き当てられて保持される後端と、後端よりも前側の位置する円柱状をなす円柱部12と、円柱部よりも前側に位置し円錐台状をなす円錐台部13,14とで構成されている。円錐台部13,14は、ピン受け部11における円柱部12よりも前側の外周面がガイドロッド20側に向かって先細りに形成された部位である。円柱部12の外径は、挿入する連結ピン50の外形と同じか略同じである。円柱部12の後端面には、連結ピン50の先端が突き当てられて保持される凹部15が形成されている。この凹部15は、前側に向かうにしたがって、内周面16の内径が徐々に小さくなっている。この形状は、連結ピン50の先端の形状に対応している。凹部15を構成している底面17の中心は、誘導器10の中心に一致している。また、内周面16は、連結ピン50の中心と誘導器10の中心とが一致するようにピンの先端が突き当てられて保持されるように形成されている。そのため、凹部15に連結ピン50が突き当てられて保持された際、連結ピン50の中心と誘導器10の中心はと一致する。すなわち、ピン受け部11の後端の凹部15に連結ピン50の先端が突き当てられて保持されることによって、誘導器10と連結ピン50の軸芯が一致する。
【0026】
円錐台部13,14は、外周面の傾斜角が異なる複数の部位が軸方向に連ねられて構成されている。
図2及び
図3に示した例では、傾斜角が2段階に形成されたものを例に示している。第1円錐台部13は円柱部12の前方に位置しており、外周面の傾斜角が所定の角度θ1に形成されている。第2円錐台部14は第1円錐台部13のさらに前部に位置しており、外周面の傾斜角が第1円錐台部13の傾斜角よりも大きい角度θ2に形成されている。ここでは、傾斜角とは外周面の輪郭と軸方向とがなす角度θnを意味する。ピン受け部11の前面には、径方向の中心にねじ穴18が形成されている。このねじ穴18の内周壁には雌ねじが形成されている。
【0027】
ガイドロッド20は、横断面の形状が円形の細長い棒状の構成要素である。ガイドロッド20は、ピン受け部11の前端か前方に延びる形態でピン受け部11に取り付けられている。ガイドロッド20の後部には、雄ねじ22が形成されている。この雄ねじ22は、ピン受け部11の前面に形成されているねじ穴18にねじ込むことにより、ガイドロッド20をピン受け部11に取り付けるための部位である。ガイドロッド20がピン受け部11に取り付けられた形態では、ガイドロッド20とピン受け部11とが同一軸線上につながれる。一方、ガイドロッド20の先端は、六角柱部21が形成されている。この六角柱部21は、ガイドロッド20をピン受け部11に取り付けるときに、スパナ等の工具でつかむことにより、ガイドロッド20とピン受け部11にねじ込む際に利用される部位である。
【0028】
<ガイドリング>
ガイドリング30は、
図4に示すように、円環状をなしており、外周面31、内周面32及び軸方向の両端を構成する端面33,34とで構成されている。端面33と端面34とは所定の寸法だけ離れており、ガイドリング30は所定の厚さを有している。ガイドリング30の外径は、作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されているピン穴8c,8dの内径よりも若干小さく形成されており、ピン穴8c,8dの内部に配置することができるように構成されている。一方、内径は、ガイドロッド20の外径よりも大きく形成されていて、ガイドリング30の内側にガイドロッド20を通すことができるように構成されている。ガイドリング30の厚さは、ピン穴8c,8dが形成されたボス8a,8bの厚さに対応した寸法に形成されている。例えば、アーム7と作業アタッチメント8の連結部分において、中央にアーム7が配置され、アーム7の両側に作業アタッチメント8のボス8a,8bが配置される場合、ガイドリング30の厚さは、作業アタッチメント8のボス8a,8bの厚さに対応する寸法に形成される。その場合、ガイドリング30の厚さは、作業アタッチメント8のボス8a,8bの厚さと全く同じ寸法に形成する形態、作業アタッチメント8のボス8a,8bの厚さよりも小さな寸法に形成する形態、作業アタッチメント8のボス8a,8bの厚さよりも大きな寸法に形成する形態のいずれの形態でもよい。
【0029】
<連結ピン挿入ジグの使用形態>
図5は、連結ピン挿入ジグ100Aの具体的な使用形態を示している。
図5は、中央にアーム7が配置され、その両側に作業アタッチメント8のボス8a,8bが配置された形態を例として示している。アーム7に形成されたピン穴7aと作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dとは、あらかじめ位置合わせされ、ピン穴7a,8c,8dが一列に並んでいる。誘導器10は、一列に並んだピン穴7a,8c,8dの一方側Pから挿入される。すなわち、誘導器10は、作業アタッチメント8に形成された2つのボス8a,8bのうち、一方側Pのボス8aの外側からピン穴7a,8c,8dに挿入される。その際、ガイドロッド20の先端が、一列に並んだピン穴7a,8c,8dの他方側Qに向けられる。
【0030】
図5に示した例は、挿入された誘導器10は、ピン受け部11が作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dと、アーム7に形成されたピン穴7aの両方に通されている状態である。具体的に、円柱部12が作業アタッチメント8の一方側Pのボス8aに形成されたピン穴8cの内部に位置し、第1円錐台部13及び第2円錐台部14がアーム7に形成されたピン穴7aに挿入されている。ただし、ピン受け部11は、第2円錐台部14だけがアーム7に形成されたピン穴7aに挿入され、第1円錐台部13は、作業アタッチメント8のボス8aに形成されたピン穴8cにだけ挿入されるように誘導器10を挿入してもよい。その場合、円柱部12は、作業アタッチメント8のボス8aの外側に突出している。
【0031】
作業アタッチメント8の他方側Qのボス8bに形成されたピン穴8dには、ガイドリング30が配置される。このガイドリング30の内部には、ガイドロッド20が通される。ガイドリング30の内部を通されたガイドロッド20の先端は、作業アタッチメント8のボス8bの外側に突出している。
【0032】
上記のようにセットされた連結ピン挿入ジグ100Aには、連結ピン50が突き当てられて保持される。具体的に、連結ピン50は、その先端を一方側Pのボス8aの外側で他方側Qに向けて先端がピン受け部11の後端面の凹部15に突き当てられて保持される。凹部15に連結ピン50が突き当てられて保持された形態では、上述したように、連結ピン50の中心と誘導器10の中心とが一致する。
【0033】
<連結ピン挿入ジグを用いた連結ピンの挿入手順>
アーム7と作業アタッチメント8とは、以上の構成を有する連結ピン挿入ジグ100Aを利用して以下に説明する手順によって連結ピン50で連結される。
図6から
図9は連結ピン50を挿入する手順を示している。
【0034】
(準備工程)
まず、作業アタッチメント8は、ボス8a,8bが上側に向くようにして平坦な場所に置かれる。次いで、油圧ショベル1のアーム7を操作して、
図6(A)に示すように、アーム7のピン穴7aと作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dとが位置合わせされる。この位置合わせにより、ピン穴7aとピン穴8c,8dとが、各ピン穴7a,8c,8dの軸方向が一致される形態で一列に並べられる。その際、ピン穴7aとピン穴8c,8dとのずれXが約20mm以内になるように位置合わせを行うとよい。
【0035】
次いで、
図6(B)に示すように、誘導器10が作業アタッチメント8の一方側Pのボス8aの外側から、一方側Pのピン穴8c、ピン穴7a、及び他方側Qのピン穴8dに挿入される。その際、誘導器10を構成するピン受け部11の第1円錐台部13及び第2円錐台部14には、グリス等の潤滑油をあらかじめ塗布しておくとよい。また、ガイドリング30が作業アタッチメント8の他方側Qのピン穴8dの内部に配置される。ガイドロッド20は、ガイドリング30の内部を通されて、作業アタッチメント8の他方側Qのボス8bの外側まで突出される。その際、ピン受け部11の円柱部12が作業アタッチメント8の一方側Pのピン穴8cの内部に位置し、第1円錐台部13及び第2円錐台部14がアーム7のピン穴7aに挿入される。具体的に、作業アタッチメント8の一方側Pのボス8aの外面とピン受け部11の後端との距離Yが約20mmになるまで誘導器10は挿入される。ただし、ピン受け部11は、第2円錐台部14だけがアーム7に形成されたピン穴7aに挿入され、第1円錐台部13は、作業アタッチメント8のボス8aに形成されたピン穴8cにだけ挿入されるように誘導器10を挿入してもよい。
【0036】
(連結ピンの挿入工程)
次いで、
図7(A)に示すように、連結ピン50がピン受け部11の後端に形成された凹部15にはめ込まれるように突き当てられて保持される。使用される連結ピン50は、連結ピン50の先端が、ピン受け部11の後端に形成された凹部15の形状に対応した形状に面取りされたものが用いられる。例えば、先端が4mm以上面取りされた連結ピン50が用いられる。凹部15にはめ込まれるように突き当てられて保持された形態では、連結ピン50の中心と誘導器10の中心とが上述したように一致する。また、凹部15に連結ピン50の先端をはめ込むことにより、ハンマー60で連結ピン50の後端をたたいたときに両者の軸芯がずれることを抑制している。
【0037】
次いで、
図7(B)に示すように、連結ピン50の後端がハンマー60でたたかれ、連結ピン50が作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dとアーム7のピン穴7aとに挿入される。その際、誘導器10がピン穴8c,8dとピン穴7aとの位置を一致させる作用を奏しながら連結ピン50を先導するので、連結ピン50は円滑にピン穴7a,8c,8dの内部に挿入される。具体的に、ガイドロッド20は、ガイドリング30に支持されているので、ハンマー60で連結ピン50の後端をたたいたとき、ピン受け部11の前部に形成されている第1円錐台部13と第2円錐台部14とが、ボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dの位置とアーム7のピン穴7aの位置とを、両者の位置が一致する方向に少しずつ移動させながら前方に進行する。そのため、ボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dの位置とアーム7のピン穴7aの位置とが一致される。
【0038】
ハンマー60を用いて連結ピン50を挿入する際に、連結ピン50をピン穴7a,8c,8dに挿入させにくい場合、
図8に示すように、油圧ショベル1のオペレータが作業ユニット5を操作して、作業アタッチメント8を地面から若干浮かすとよい。浮かす高さZは、例えば、10mmから20mm程度である。この作業を行うことにより、連結ピン50をピン穴7a,8c,8dに挿入させ易くすることができる。
【0039】
最後に、
図9に示すように、連結ピン50の後端をハンマー60でたたき、連結ピン50をピン穴7a,8c,8dに完全に挿入させる。連結ピン50がその長さの約95%から99%が挿入されると、誘導器10を作業アタッチメント8の他方側Qのボス8bから抜き取ることができる。連結ピン50が完全に挿入されたとき、連結ピン50の後端に形成されたフランジ51が作業アタッチメント8の一方側Pのボス8aに突き当てられるとともに、連結ピン50の先端が作業アタッチメント8の他方側Qのボス8bの外側に突出される。
【0040】
[別形態の連結ピン挿入ジグ]
図10は、
図2及び
図3に示した連結ピン挿入ジグ100Aとは別形態の連結ピン挿入ジグ100Bを示している。なお、
図10に示した連結ピン挿入ジグ100Bの構成は、溝19を有していること以外は、
図2及び
図3に示した連結ピン挿入ジグ100Aと同様なので、同様の構成については、図面に同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。また、ガイドリング30は、
図4に示したものが用いられる。
【0041】
この連結ピン挿入ジグ100Bは、誘導器10とガイドリング30とで構成されている。誘導器10は、ピン受け部11とガイドロッド20とで構成されている。ピン受け部11は、連結ピン50の先端が突き当てられて保持される構成要素であり、ガイドロッド20は、連結ピン50をピン穴7a,8c,8dの内部で連結ピン50が進行する方向を設定するための構成要素である。このガイドロッド20の構成は、
図2及び
図3に示したガイドロッド20と同様である。
【0042】
誘導器10のピン受け部11の外周面には、溝19が形成されている。この溝19は、ピン受け部11の外周面とアーム7のピン穴7aの内面及び作業アタッチメント8のピン穴8c,8dの内面とが接触する部分を少なくしている。溝19を設け、接触する部分がすくなることにより、溝19を有しない場合に比べて、ピン受け部11の外周面とアーム7のピン穴7aの内面及び作業アタッチメント8のピン穴8c,8dの内面との間に生じる摩擦を低減することができる。その結果、誘導器10を円滑にピン穴7a,8c,8dの内部に挿入させることができる。溝19の形状は、特に限定されないが、
図10に示すように、ピン受け部11の軸方向に延び、ガイドロッド20側に向かって溝19の幅が徐々に小さくなるように形成するとよい。また、溝19は、ピン受け部11の周方向に複数形成するとよい。具体的に、溝19の幅は、円柱部12では一定に形成され、第1円錐台部13ではガイドロッド20側に向かうにしたがって徐々に狭くなるように形成されている。溝19の先端、すなわち、最もガイドロット側の位置では、鋭角にとがった形状をなしている。
【0043】
一方、ガイドリング30は、円環状をなしており、外周面31、内周面32及び軸方向の両端を構成する端面33,34とで構成されている。このガイドリング30は、
図4を参照して説明したガイドリング30の構成と同様である。
【0044】
以上、アーム7の両側に作業アタッチメント8のボス8a,8bが配置された場合を例に説明したが、本発明に係る連結ピン挿入ジグ100A,100Bは、
図11に示すように、アーム7のボス7b,7cが両側に配され、アーム7のボス7b,7cの間に作業アタッチメント8のボス8a,8bが配置される形態のものに適用することもできる。この場合、例えば、連結ピン挿入ジグ100Aの誘導器10は、軸方向の一方側Pに配置されたアーム7のボス7bの外側から挿入される。誘導器10は、ボス7bのピン穴7d、ボス8aのピン穴8c、ボス8bのピン穴8d,ボス7cのピン穴7eの順に挿入される。そして、誘導器10の先端は、他方側Qのボス7cの外側に突出される。また、アームのボス7cのピン穴7eの内部にガイドリング30が配置される。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧ショベル
2 機械本体部
3 走行体
4 旋回体
5 作業ユニット
6 ブーム
7 アーム
7a ピン穴
7b ボス
7c ボス
7d ピン穴
7e ピン穴
8 作業アタッチメント
8a ボス
8b ボス
8c ピン穴
8d ピン穴
10 誘導器
11 ピン受け部
12 円柱部
13 第1円錐台部(円錐台部)
14 第2円錐台部(円錐台部)
15 凹部
16 内周面
17 底面
18 ねじ穴
19 溝
20 ガイドロッド
21 六角柱部
22 雄ねじ
30 ガイドリング
31 外周面
32 内周面
33 端面
34 端面
50 連結ピン
51 フランジ
60 ハンマー
100A 連結ピン挿入ジグ
100B 連結ピン挿入ジグ
【要約】
【課題】作業者に煩わしさを与えることなく、連結ピンを容易にピン穴に挿入することができる連結ピン挿入ジグを提供する
【解決手段】油圧ショベル1のアーム7に形成されたピン穴7aの位置と、作業アタッチメント8のボス8a,8bに形成されたピン穴8c,8dの位置とを一致させ、両者のピン穴7a,8c,8dに連結ピン50を挿入してアーム7と作業アタッチメント8とを連結する際に用いる連結ピン挿入ジグ100Aであって、連結ピン50の先端が突き当てられて保持され、一列に並んだアーム7のピン穴7a,8c,8dにピン穴7a,8c,8dの軸方向の一方側Pから他方側Qに連結ピン50を通して誘導する誘導器10と、リング状をなし、アーム7のピン穴7a及び作業アタッチメント8のピン穴8c,8dのうち、軸方向の他方側Qに位置するピン穴8dの内部に配置されて誘導器10を挿入させて誘導するガイドリング30と、を備える。
【選択図】
図5