特許第6174337号(P6174337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174337
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20170724BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170724BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20170724BHJP
【FI】
   F21S8/12 263
   F21S8/12 268
   F21S8/12 210
   F21W101:10
   F21Y105:10
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-37421(P2013-37421)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-165130(P2014-165130A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】小松 元弘
【審査官】 石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−040528(JP,A)
【文献】 特開2009−149152(JP,A)
【文献】 特開2007−227228(JP,A)
【文献】 特開2008−037240(JP,A)
【文献】 特開2002−019517(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0239746(US,A1)
【文献】 特開2001−266620(JP,A)
【文献】 特表2008−537315(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/162713(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域を照射するピクセルライト光学ユニットと、
前記所定領域の上方を照射するハイビーム光学ユニットと、
前記所定領域の左方、及び右方の領域を照射する側方照射用光学ユニットと、を備え、
前記各光学ユニットの光を合成して、ロービーム領域及びハイビーム領域を照射し、
前記ピクセルライト光学ユニットは主として前記ロービーム領域を照射し、前記各光学ユニットは、必要に応じてそれぞれの担当する領域を個別に照射するように構成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記所定領域は、上端が仮想鉛直スクリーンにおける水平線の上方1°〜5°で、左右端が仮想鉛直スクリーンにおける垂直線から5°〜20°の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記ピクセルライト光学ユニットは、路面描写機能を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
車両前方に左右一対に搭載される車両用前照灯のうち、一方のみに前記ピクセルライト光学ユニット搭載の前記車両用灯具が搭載されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ピクセルライト光学ユニットを用いて所定領域を高分解能で照射する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピクセルライト光学ユニット、即ち高分解能で配光パターンを複数形成できる光学ユニットを用いた車両用灯具の例として、特許文献1では、反射型デジタル光偏向装置(DMD:Digital Mirror Device)を用いて、光源からの光を多数個の極小ミラー素子をデジタル的にON・OFF制御することで、所定の配光パターンを形成する車両用灯具が記載されている。特許文献2では、液晶シャッタ(LCD:Liquid
Crystal Display)を用いて、光源からの光を液晶分子の向きを変えることでON・OFF制御することで、所定の配光パターンを形成する車両用灯具が記載されている。以下、本願において、ピクセルライトとは、高分解能で配光パターンを可変できる光学ユニットで、例えばDMD、LCD等の表示用デバイスを意味するものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−210128号公報
【特許文献2】特開2011−249184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ピクセルライトを用いる灯具では、光源性能(輝度)やデバイスサイズの制約上、車両用灯具としての光度、特にハイビームに必要な光度を得ることができない。即ち、特許文献1及び2のような灯具構成では、車両用灯具として照射する必要がある領域全てが効果的に照射されるものではなく、光量不足であって、実機に搭載するのに十分でない。
【0005】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、車両用灯具として十分な性能を確保することができる灯具構成を備えた、ピクセルライト搭載の車両用灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に係る車両用灯具では、所定領域を照射するピクセルライト光学ユニットと、前記所定領域の上方を照射するハイビーム光学ユニットと、前記所定領域の左方、及び右方の領域を照射する側方照射用光学ユニットと、を備え、前記各光学ユニットの光を合成して、ロービーム領域及びハイビーム領域を照射し、前記ピクセルライト光学ユニットは主として前記ロービーム領域を照射し、前記各光学ユニットは、必要に応じてそれぞれの担当する領域を個別に照射するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2では、請求項1に記載の車両用灯具において、前記所定領域は、上端が仮想鉛直スクリーンにおける水平線の上方1°〜5°で、左右端が仮想鉛直スクリーンにおける垂直線から5°〜20°の範囲であることを特徴とする。
【0009】
請求項では、請求項1または2に記載の車両用灯具において、前記ピクセルライト光学ユニットは、路面描写機能を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項では、請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具において、車両前方に左右一対に搭載される車両用前照灯のうち、一方のみに前記ピクセルライト光学ユニット搭載の前記車両用灯具が搭載されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定領域をピクセルライト光学ユニットで照射し、ピクセルライトでは光量不足となりうる他の領域は別の光学ユニットによって照射して、各光学ユニットの光を合成して、ロービーム領域及びハイビーム領域を形成する灯具構成となっているので、光量に問題なく、車両用灯具として十分な性能を備えることができる。
【0012】
特に、ピクセルライトが照射する前記所定領域は、上端が仮想鉛直スクリーンにおける水平線の上方1°〜5°で、左右端が仮想鉛直スクリーンにおける垂直線から5°〜20°の範囲に設定され、前記所定領域の上方は、ハイビーム光学ユニットにて照射される。即ち、ピクセルライトは主として高い光度の必要ないロービーム領域を照射し、係る領域の上方、左方、及び右方は他の光学ユニット、特に、光度を要する前記所定領域の上方はハイビーム光学ユニットにて照射して、各光学ユニットの光を合成して、ロービーム領域及びハイビーム領域を形成する灯具構成となっているので、実機に搭載するに十分な性能を備えることができる。なお、水平線、垂直線とは、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーンにおける配光パターン上の水平線(H−H線)、垂直線(V−V線)を意味する。
【0013】
また、ピクセルライトの備える高い分解能を利用して、撮像装置等から検知した前走車や対向車及び歩行者等にグレアを与えることのない配光パターンを、瞬時かつ多様に形成できる。加えて、ピクセルライト光学ユニットに路面描画機能を備えたことで、カーナビゲーションシステム等からの情報信号を得て、右左折の指示や速度表示等を、路面に鮮明に描画することができる。路面への描画は、フロントガラスに投影する描画手法に比べて、ドライバーの目線の移動がない分、安全走行に寄与できるため好適である。
【0014】
さらに、車両前方に左右一対に搭載される車両用前照灯のうち、一方のみに前記ピクセルライト光学ユニットを搭載すれば、左右の前照灯の配光が合成されたとき、特に前記路面描画のときに、照射像の合成不良によって像がチラつくことがないので、視認不良が生じることがなく、さらに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例に係る車両用灯具の正面図である。
図2】同灯具の縦断面図であって、(a)図1のII(a)−II(a)線に沿う断面図、(b)図1のII(b)−II(b)線に沿う断面図、(c)図1のII(c)−II(c)線に沿う断面図である。
図3】同灯具による照射領域のイメージ図である。
図4】(a)同灯具による配光パターン例、(b)同灯具による路面描画の例、(c)同灯具による路面描画の例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
次に、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る車両用灯具の正面図、図2は同灯具の縦断面図であって、(a)図1のII(a)−II(a)線に沿う断面図、(b)図1のII(b)−II(b)線に沿う断面図、(c)図1のII(c)−II(c)線に沿う断面図、である。
【0017】
車両用灯具1R、1Lは、車両前方に左右一対に搭載される車両用前照灯であり、図1には、車両正面視に右側に配設される灯具1Rが図示されている。なお、図1では、投影レンズ及び図示しないエクステンション(目隠し板)によって灯具正面視には見えない光源等も透視して図示している。また、図1図2にある一点鎖線は、各投影レンズ12の焦点を通る線である。
【0018】
灯具1Rは、ランプボディ2及び透光性の前面カバー4で画成された灯室内に、車両幅方向内側から順に、灯室左端上方に側方ハイビーム用光学ユニットA(R)、その下方に側方ロービーム用光学ユニットB(R)、灯室中央にハイビーム光学ユニットHi(R)、灯室右端にロービーム光学ユニットLo(R)、が収容された構成となっている。
【0019】
側方ハイビーム用光学ユニットA(R)は、主として投影レンズ12と、この投影レンズ12の光軸Ax上に後側焦点よりも後方に配置された光源としての白色LED14と、で構成されている。投影レンズ12は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、その上下周縁部においてレンズホルダ16を介して金属製支持部材13に固定保持されている。投影レンズ12は、その後側焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。LED14は、発光チップの発光面を光軸Axと交差する位置に、その電子基板18を介して支持部材13上に配置されている。
【0020】
側方ロービーム用光学ユニットB(R)は、主として、上述の投影レンズ12と、投影レンズ12の光軸Ax上に後側焦点よりも後方に配置された、紫外線光を発する紫外線発光素子と該紫外光を吸収し青色光に変換する第1の蛍光体及び紫外光を吸収し黄色光に変換する第2の蛍光体とが組み合わされて白色光を実現する、光源としての発光部24と、で構成されている。投影レンズ12は上述と同様レンズホルダ16を介して支持部材13に固定保持され、発光部24も、その電子基板28を介して支持部材13上に配置されている。
【0021】
ハイビーム光学ユニットHi(R)は、主として、投影レンズ12と、投影レンズ12の光軸Ax上に後側焦点よりも後方に配置された、複数個のLEDチップを配列した光源としてのLEDアレイ34と、LEDアレイ34からの光を上下に拡散するためのサブリフレクタ32,32と、で構成されている。投影レンズ12は、上述と同様、レンズホルダ16によって支持部材13に固定され、LEDアレイ34もその電子基板38を介して支持部材13上に配置されている。本実施例では、LEDアレイ34には、一例として5つのLEDチップが二列に配置されたものを用いている。
【0022】
サブリフレクタ32,32は、LEDアレイ34の延在方向と平行に上下に配置されており、LEDアレイ34を略半ドーム状に覆うように、その下端部において支持部材13に固定保持されている。このサブリフレクタ32の反射面は、表面アルミ蒸着処理がなされており、この反射面で反射した光を灯具前方へ拡散させるように形成されている。
【0023】
ロービーム光学ユニットLo(R)は、主として、投影レンズ12と、ピクセルライト44と、ピクセルライト44用の光源例としてのレーザ光源45と、で構成されている。投影レンズ12はその上周縁部においてレンズホルダ16を介して支持部材13に固定保持されている。レーザ光源45は、ピクセルライト44の下方に配置され、支持部材13に固定されている。
【0024】
ピクセルライト44は、一例としてDMD(Digital Mirror Device、特開平8−201708号広報参照 )を用いている。DMDは、主として、駆動基板と、その上に配置される導体と、その上に配置される可動部と、その可動部に傾動可能に支持される多数個の極小ミラー素子と、から構成されている。
【0025】
レーザ光源45は、赤・緑・青のレーザダイオード48r,48g,48bと、これらからの出射光(水平光)をピクセルライト44方向に反射させるダイクロイックミラー47と、ダイクロイックミラー47からの反射光を集光して拡散させる集光レンズ49と、を備えている。
【0026】
なお、ピクセルライト44は、投影レンズ12の後側焦点よりも後方で、その光出射面44aが効率的に集光レンズ49の照射範囲θ内となる位置に、かつその照射光を灯具前方へ効率良く出射可能な所定角度となる位置に、固定ホルダ46を介して支持部材13に固定保持されている。
【0027】
また、以上の構成からなる灯具1Rは、レべリング機構Eを備えており、支持部材13は、灯具正面視右上端、右下端及び左下端において、エイミングスクリュ11や図示しないアクチュエータ等によって、ランプボディ2に対し上下方向及び左右方向に傾動調整可能に支持されており、これにより、光学ユニットA(R),B(R),Lo(R),Hi(R)は、可変配光光学ユニットとして構成されている。
【0028】
また、LEDを光源に用いている光学ユニットA(R),B(R),Hi(R)の位置する支持部材13の後面には、放熱フィン20が一体形成されており、各LEDからの熱を放熱する構成となっている。
【0029】
そして、ピクセルライト44及びレーザ光源45と導通する電子基板44b,45b及びLEDアレイ34と導通する電子基板38は、図示しないカメラ等の撮像装置、カーナビゲーションシステム、ミリ波、レーザレーダ等の車両情報取得手段からの情報信号に基づき制御される制御ユニット50に接続されている。制御ユニット50は、上記車両情報取得手段から、歩行者62、先行車64、対向車66等の存在や車両位置情報等を検知して、LEDアレイ34のLEDチップ及び/又はピクセルライト44のミラー素子の一部を消灯するように制御する。制御ユニット50は、灯室内所定位置にランプボディ2に対して固定配置されている。
【0030】
灯具1Lは、車両正面視に灯具1Rと左右対称に同一の灯具構成となっており、車両幅方向内側から順に、灯室右端上方に側方ハイビーム用光学ユニットA(L)、その下方に側方ロービーム用光学ユニットB(L)、灯室中央にハイビーム光学ユニットHi(L)、灯室左端にロービーム光学ユニットLo(L)、が収容されている。灯具1Rと左右対称に構成同一であることから、灯具1Rの記載によって灯具1Lの説明は割愛する。
【0031】
次に、以上の構成からなる灯具1R,1Lの配光イメージについて説明する。図3は、同灯具による照射領域のイメージ図であり、灯具1R,1Lからの照射光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される各光学ユニットの照射領域を模式的に示したものである。
【0032】
図3のうち、符号PLoは、灯具1Rのロービーム光学ユニットLo(R)の照射範囲PLo(R)及び灯具1Lのロービーム光学ユニットLo(L)の照射範囲PLo(L)が合成されたものであり、主として仮想鉛直スクリーン上の水平線(H−H線)の下方領域かつ垂直線(V−V線)を含む中央領域、即ちロービーム領域に対応する。さらに、照射領域PLoは、本実施例のレベリング機構Eを実現するため、仮想鉛直スクリーン上のH−H線の上方0.5°〜5°も照射範囲としており、また、運転席から視認可能な自車が走行する車線を照射するため、左右端がV−V線から5°〜20°も照射範囲としている。
【0033】
そして、照射領域PLoの上方領域となる符号PHiは、灯具1Rのハイビーム光学ユニットHi(R)の照射範囲PHi(R)及び灯具1Lのハイビーム光学ユニットHi(L)の照射範囲PHi(L)が合成されたものであり、仮想鉛直スクリーン上のH−H線の上方領域かつV−V線を含む中央領域、即ちハイビーム領域に対応する。
【0034】
次に、照射領域PLoの右方領域となる符号PB(R)は、灯具1Rの側方ロービーム用光学ユニットB(R)の照射領域であり、照射領域PHiの右方領域となる符号PA(R)は、灯具1Rの側方ハイビーム用光学ユニットA(R)の照射領域であり、必要に応じて照射領域PLo,PHiの右側方を照射する。これと左右対称(V−V線対称)に、符号PB(L)は、灯具1Lの側方ロービーム用光学ユニットB(L)の照射領域であり、符号PA(R)は、灯具1Lの側方ハイビーム用光学ユニットA(L)の照射領域であり、必要に応じて照射領域PLo,PHiの左側方を照射する。なお、上述における上方、左方、及び右方の領域とは、照射領域PLoと領域がラップしている場合を含むものである。
【0035】
本実施例によれば、所定領域、即ちロービーム照射領域PLoをピクセルライト44を搭載したロービーム光学ユニットLo(R),Lo(L)で照射し、ピクセルライト44では光量不足となりうる他の領域、即ち照射領域PHi,PB(R),PB(L),PA(R),PA(L)は、別の光学ユニットによって照射する。特に、光度を要する照射領域PHi(照射領域PLoの上方)は、ハイビーム用の別の光学ユニットであるハイビーム光学ユニットHi(R),Hi(L)にて照射して、これらの光学ユニットの光を合成して、ロービーム領域及びハイビーム領域を形成する灯具構成となっているので、実機に搭載するに十分な性能を備えている。
【0036】
続いて、灯具1R,1Lで得られる配光パターンについて説明する。図4(a)は同灯具による配光パターンであり、灯具1R,1Lからの照射光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンの一例を示したものである。なお、図4(a)で斜線で示されている領域は光が非照射である状態を示している。
【0037】
図4(a)に示すように、灯具1R,1Lは、ハイビーム領域において、ハイビーム光学ユニットHi(R),Hi(L)のLEDアレイ34の一部のLEDチップを消灯することで、チップ数に対応する分解能にて、車両前方の一部の領域を非照射とする配光パターンP1を形成できる。さらに、ロービーム領域においては、ロービーム光学ユニットLo(R),Lo(L)のピクセルライト44の一部のミラー素子をOFF方向に傾動することで、高分解能で車両前方の一部の領域を非照射とする配光パターンP2を瞬時かつ多様に形成できる。
【0038】
これにより、灯具1R,1Lは、車両情報取得手段で検知した歩行者62、先行車64、対向車66が存在している領域に対応するLEDチップ及び又はミラー素子を消灯することで、歩行者62、先行車64、対向車66に対するグレアを抑制できる。
【0039】
次に、ピクセルライト44を備えるロービーム光学ユニットLo(R),Lo(L)の路面描画機能について説明する。路面描画機能とは、路面に図形、記号、文字等を投影する機能であり、図4(b),図4(c)は、同灯具による路面描画の例である。
【0040】
ロービーム光学ユニットLo(R),Lo(L)は、車両周囲情報取得手段からの情報信号に基づく制御ユニット50からの制御によって、レーザ光源45の任意の色の光源光又はその組み合わせ光からなる照射光を、照射領域PLo内の所定位置に照射して、例えば、図4(b)に示すように、予定進路に対応した右左折の指示や、図4(c)に示すように、車両の規せられる速度等の指示を、路面に描画する。なお、描画形式(表示形式)としてはこれに限られたものではなく、他の種々の形式が適用可能である。
【0041】
これにより、運転中のドライバーに目線の移動をさせることなく、安全走行を助することができる。また、歩行者62、先行車64、対向車66に自車両の進行方向や状況等を確実に認識させることができる。
【実施例2】
【0042】
第2の実施例は、第1の実施例における灯具1R,1Lのうちのいずれか一方の灯具のみに、第1の実施例に係るピクセルライト44を備えたロービーム光学ユニットが搭載されたものである。他方のロービーム光学ユニットには、ピクセルライト光学ユニットに代えて、一例として、プロジェクタ型のLED光学ユニットが考えられる。その構成の一例としては、投影レンズと、投影レンズの光軸上に後側焦点よりも後方に配置された、ロービームに足る所定光量を出射可能なLED光源と、この光源からの光を投影レンズへ向けて反射させる表面アルミ蒸着したリフレクタと、リフレクタからの反射光の一部を遮蔽し、その上端部が光軸近傍に位置するように配置され、ロービーム用配光パターンの上端部にカットオフラインを形成するシェードと、を備えたもの等が考えられる。
【0043】
本実施例によれば、車両前方に左右一対に搭載される車両用前照灯1R,1Lのうち、一方のみに前記ピクセルライト44搭載の光学ユニットを搭載しているので、左右の前照灯の配光が合成されたとき、特に図4(b),図4(c)のような路面描画のときに、照射像の合成不良によって像がチラつくことがないので、視認不良が生じることがなく好適である。
【符号の説明】
【0044】
1R,1L 車両用灯具
44 ピクセルライト
Lo(R),Lo(L) ロービーム光学ユニット
Hi(R),Hi(L) ハイビーム光学ユニット
B(R),B(L) 側方ロービーム用光学ユニット
A(R),A(L) 側方ハイビーム用光学ユニットA
PLo ロービーム照射領域
PHi ハイビーム照射領域
H−H 仮想鉛直スクリーンの左右の水平線
V−V 仮想鉛直スクリーンの上下の垂直線
図1
図2
図3
図4