(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動軸が連結された基部、空気の吸込口を形成する環状部、前記基部と前記環状部とに連結されるとともに前記駆動軸の軸周に沿って配列され、前記空気の送風口を形成する複数のブレードからなるファンを備えた遠心送風機であって、
前記駆動軸の軸線に沿った前記遠心送風機の縦断面の軸周における前記ファンの輪郭は、前記基部側から前記環状部に至るまで逆テーパ状に外径を大きくした逆テーパ部と、前記基部から前記逆テーパ部に至るまで外径をテーパ状に小さくし、前記逆テーパ部との境界にくびれ部を形成するテーパ部とからなり、
前記軸線に沿った前記ブレードの高さ:H1、前記軸線に沿った前記テーパ部の高さ:H2、H1に対するH2の高さ比率:H2/H1=RHとしたとき、
RH=0.1〜0.4
が成立し、
前記テーパ部の最大外径:D1、前記逆テーパ部の最大外径:D2、前記逆テーパ部を前記環状部から前記基部に至るまで延設したと仮定したときの前記ファンの前記輪郭の仮想最小外径:D3とし、前記ファンの前記輪郭における前記テーパ部の拡径率:(D1−D3)/(D2−D3)=RWとしたとき、
RW=0.2〜0.7
が成立することを特徴とする遠心送風機。
【背景技術】
【0002】
この種の遠心送風機には、駆動軸が連結された基部、空気の吸込口を形成する環状部、基部と環状部とに連結されるとともに駆動軸の軸周に沿って配列され、空気の送風口を形成する複数のブレードから構成されたファンを備えたものが知られている。
そして、例えば特許文献1には、駆動軸の軸線に沿った遠心送風機の縦断面の軸周におけるファンの輪郭が、基部側から環状部に至るまで逆テーパ状(先太形状)に外径を大きくした逆テーパ部と、基部から逆テーパ部に至るまで外径をテーパ状(先細形状)に小さくしたテーパ部とから構成し、逆テーパ部とテーパ部との境界にくびれ部を形成した多翼ファンが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術の多翼ファンは、前記くびれ部が軸線に沿ったブレードの高さの中間点に形成されるが、遠心送風機の送風量の変更を考慮したときのくびれ部の形成位置、更にはブレード群の輪郭におけるテーパ部の拡径率の最適範囲について格別な配慮がなされておらず、遠心送風機の送風性能の最適化には依然として課題が残されていた。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、送風性能の最適化を実現した遠心送風機及びこれを備えた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するべく、請求項1記載の遠心送風機は、駆動軸が連結された基部、空気の吸込口を形成する環状部、基部と環状部とに連結されるとともに駆動軸の軸周に沿って配列され、空気の送風口を形成する複数のブレードからなるファンを備えた遠心送風機であって、駆動軸の軸線に沿った遠心送風機の縦断面の軸周におけるファンの輪郭は、基部側から環状部に至るまで逆テーパ状に外径を大きくした逆テーパ部と、基部から逆テーパ部に至るまで外径をテーパ状に小さくし、逆テーパ部との境界にくびれ部を形成するテーパ部とからなり、軸線に沿ったブレードの高さ:H1、軸線に沿ったテーパ部の高さ:H2、H1に対するH2の高さ比率:H2/H1=RHとしたとき、RH=0.1〜0.4が成立
し、テーパ部の最大外径:D1、逆テーパ部の最大外径:D2、逆テーパ部を環状部から基部に至るまで延設したと仮定したときのファンの輪郭の仮想最小外径:D3とし、ファンの輪郭におけるテーパ部の拡径率:(D1−D3)/(D2−D3)=RWとしたとき、RW=0.2〜0.7が成立する。
【0006】
請求項2記載
の車両用空調装置は、請求項
1に記載の遠心送風機がHVACユニットに内設されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の遠心送風機によれば、ファンがその輪郭にくびれ部を有することにより、空気の吸込口から離間した基部近傍の領域においてファンの送風圧力を増大させることができ、ファンの全域に亘る偏りの少ない送風を実現することができる。特に、ブレードの高さH2に対するテーパ部の高さH1の高さ比率RHを0.1〜0.4と規定することにより、遠心送風機の送風量を高風量としたときの高風量側送風圧力の低減量を最小に抑制しながら、遠心送風機の送風量を低風量としたときの低風量側送風圧力を効果的に増大することができるため、遠心送風機の送風性能を大幅に向上することができる。
【0008】
請求項2記載
の車両用空調装置によれば、前述した遠心送風機をHVACユニットに内設することにより、車両用空調装置の空調性能を大幅に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明の一実施例に係る車両用空調装置1に備えられたHVACユニット2の縦断面図である。HVACユニット2は、車両の車室内前方側に搭載され、車両のエンジンルームと車室内とを区画するファイヤーウォールの車室内側面に固定されている。
HVACユニット2は、内部に空気流路4を形成するケーシング6を備え、空気流路4は車室内外の空気を導入するための導入口8と、車室内に空気を吹き出すための図示しないフット用、フェイス用、或いはデフロスタ用等の吹出口との間に形成され、また、ケーシング6には、導入口8からケーシング6内に空気を導入するための遠心送風機10が内設されている。
【0011】
ケーシング6内の空気流路4には、空気の流れ方向から順に、蒸発器12、室内凝縮器14が配置されている。蒸発器12及び室内凝縮器14は、何れも図示しない圧縮機、レシーバ、膨張弁、室外熱交換器等の他の構成機器とともに冷媒回路であるヒートポンプ回路16を構成している。
蒸発器12は、その内部を流れる低温冷媒との熱交換によって空気を冷却する。また、室内凝縮器14は、空気流路4において蒸発器12の下流側に配され、その内部を流れる高温冷媒との熱交換によって蒸発器12を流通した空気を加熱する一方、冷媒を凝縮する。また、空気流路4の蒸発器12と室内凝縮器14との間にはダンパ18が配置されており、空調装置1の操作パネルを乗員が操作することによってダンパ18が開閉される。
【0012】
ダンパ18を開動作することにより、蒸発器12を流通した空気が室内凝縮器14に流通され、一方、ダンパ18を閉動作することにより、蒸発器12を流通した空気が室内凝縮器14をバイパスして流通され、各吹出口から設定された温度の空気の吹き出しが行われる。
詳しくは、ダンパ18は蒸発器12を流通した空気と室内凝縮器14を流通した空気とを混合させて各吹出口に導くエアミックスダンパであって、ダンパ18を開動作させることにより、空気を室内凝縮器14に流通させる流路20が形成される。一方、ダンパ18を閉動作させることにより、室内凝縮器14をバイパスして空気を流すバイパス流路22が形成される。
【0013】
空調装置1の暖房出力最大時(暖房時)には、ダンパ18が流路20を全開とし、バイパス流路22を全閉とする。このとき、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、全て流路20に流れて室内凝縮器14を流通する。
一方、空調装置1の冷暖房出力時(中温時)には、例えば
図1に示すように、ダンパ18が流路20を半開(50%開度)とし、バイパス流路22を半閉(50%開度)とする中間位置に位置付けられる。このとき、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、一部が流路20に流れて室内凝縮器14を流通するとともに一部がバイパス流路22にも流入する。
【0014】
一方、空調装置1の冷房出力最大時(冷房時)には、ダンパ18が流路20を全閉とし、バイパス流路22を全開とする。このとき、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、全てバイパス流路22に流入する。
図2及び
図3に示されるように、遠心送風機10は多翼ファン(シロッコファン)であって、ファン24及びモータ26を備えている。ファン24は、モータ26の駆動軸28が連結された半球コーン形状の基部30、導入口8から導入された空気の吸込口32を形成する環状部34、基部30と環状部34とに連結されるとともに駆動軸28の軸周に沿って配列された多数のブレード36から概略構成されている。
【0015】
ブレード36は、駆動軸28の
図2に矢印で示す回転方向に凹に湾曲した円弧状の前向き羽根であり、隣り合うブレード36間にはそれぞれ空気の送風口38が形成されている。また、多数のブレード36は環状に配列されたブレード群40によりファン24の側面を構成している。そして、遠心送風機10がモータ26により回転駆動されることにより、導入口8を経て吸込口32からブレード群40の内方に吸い込まれた空気は、遠心力により昇圧されながら所定の送風圧力Pで送風口38から吐出され、ブレード群40の外周に沿って流れながらケーシング6の内壁により整流され、空気流路4を経て吹出口側に送風される。
【0016】
ここで、
図4に示すように、ファン24の側面を駆動軸28の軸線、すなわち軸線方向Lに沿った遠心送風機10の縦断面の軸周におけるブレード群40からなるファン24の輪郭Loとして規定する。このとき、輪郭Loは、基部30側から環状部34に至るまで逆テーパ状(先太形状)に外径を大きくした逆テーパ部42と、基部30から逆テーパ部42に至るまで外径をテーパ状(先細形状)に小さくし、逆テーパ部42との境界にくびれ部44を形成するテーパ部46とから構成されている。
【0017】
そして、本実施例の遠心送風機10では、軸線方向Lに沿ったブレード36(ブレード群40)の高さ:H1、軸線方向Lに沿ったテーパ部46の高さ:H2、H1に対するH2の高さ比率:H2/H1=RHと定義したとき、
RH=0.1〜0.4 (1)
の関係式が成立している。なお、H1は40〜70mm程度の値である。
【0018】
また、テーパ部46の最大外径:D1、逆テーパ部42の最大外径:D2、逆テーパ部42を環状部34から基部30に至るまで仮想線Lvで延設したと仮定したときのファン24の輪郭Loの仮想最小外径:D3とし、ファン24の輪郭Loにおけるテーパ部46の拡径率:(D1−D3)/(D2−D3)=RWと定義したとき、
RW=0.2〜0.7 (2)
の関係式が成立している。なお、D1、D2は110〜160mm程度、D3は100〜145mm程度の値である。
【0019】
図5は、本実施例のくびれ部44を有するファン24(実施例)、くびれ部44を有さず逆テーパ部42のみから構成されたファン(比較例1)、前記式(1)、(2)を満たさない別の形態のくびれ部を有するファン(比較例2)の風量−ファン全圧(静圧)特性(PQ特性)を示す。この
図5には、前述した空調装置1の暖房時、中温時、冷房時の各通風抵抗曲線も示されている。
【0020】
空調装置1の暖房運転時には、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、全て流路20に流れて室内凝縮器14を流通するため、空気流路4における通風抵抗Dが破線で示すように最も大きくなる。
一方、空調装置1の中温運転時には、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、一部が流路20に流れて室内凝縮器14を流通するとともに一部がバイパス流路22にも流入するため、空気流路4における通風抵抗Dが実線で示すように暖房運転時に比して小さくなる。
【0021】
一方、空調装置1の冷房運転時には、遠心送風機10から送風された空気は、空気流路4において蒸発器12を流通した後、全てバイパス流路22に流入するため、空気流路4における通風抵抗Dが一点鎖線で示すように最も小さくなる。
この
図5から明らかなように、遠心送風機10の空気流路4における通風抵抗Dの観点からは、本実施例のファン24と比較例1,2の各ファンとは空調装置1の冷房運転時には大差ないPQ特性を示すものの、空調装置1の中温運転時及び暖房運転時にはPQ特性の改善がみられ、特に暖房運転時にはPQ特性の大幅な改善が見られる。すなわち、前述した式(1)、(2)を満たすファン24を用いることにより送風量を増加させることができる。
【0022】
一方、
図6に示すように遠心送風機10の送風量の観点からは、D1、D2、D3、H1を前述した範囲の特定値に固定し、H1に対するH2の高さ比率RHを変更したとき、高さ比率RHが大きいほど、遠心送風機10が低風量モードのときの低風量側ファン圧力PLが大きくなり、遠心送風機10が高風量モードのときの高風量側ファン圧力PHが小さくなる傾向にある。
【0023】
しかし、ファン24が前述した式(1)を満たすように高さ比率RHを0.1〜0.4の範囲とすることにより、高風量側ファン圧力PHの低減量を最小に抑制しながら、低風量側ファン圧力PLを効果的に増大することができる。なお、
図6から明らかなように、遠心送風機10を低風量モードのみで使用する場合には、高さ比率RHが大きいほど、すなわち、くびれ部44を環状部34に近づけるほど低風量側ファン圧力PLを増大させることが可能である。
【0024】
また、
図7に示すように、D2、D3、H1を前述した範囲の特定値に固定し、D1を変更することによりブレード群40の輪郭Loにおけるテーパ部46の拡径率RWを変更したとき、拡径率RWが0.5前後のときに前述した低風量側ファン圧力PL及び高風量側ファン圧力PHが最大となる傾向にある。従って、ファン24が前述した式(2)を満たすように拡径率RWを0.2〜0.7の範囲とすることにより、低風量側ファン圧力PL及び高風量側ファン圧力PHの双方を効果的に増大することができる。
【0025】
以上のように本実施例では、ファン24がその輪郭Loにくびれ部44を有することにより、
図8に示すように、吸込口32から離間した基部30近傍の領域、すなわちテーパ部46においてファン24のファン圧力(送風圧力)を増大することができ、ファン24の全域に亘る偏りの少ないファン全圧Pを実現することができる。
【0026】
特に、ブレード36の高さH2に対するテーパ部46の高さH1の高さ比率RHを0.1〜0.4と規定することにより、高風量側ファン圧力PHの低減量を最小に抑制しながら、低風量側ファン圧力PLを効果的に増大することができるため、遠心送風機10の送風性能を大幅に向上することができる。
また、ファン24の輪郭Loにおけるテーパ部46の拡径率RWを0.2〜0.7と規定することにより、高風量側及び低風量側送風圧力PH,PLを双方とも効果的に増大することができるため、遠心送風機10の送風性能を更に効果的に向上することができる。
【0027】
本発明は、前述の実施形態に制約されるものではなく種々の変形が可能である。
例えば、前述した実施例では遠心送風機10は車両用空調装置1のHVACユニット2に内設した場合について説明し、遠心送風機10の送風性能の向上により車両用空調装置1の空調性能をも大幅に向上することができる。しかし、これに限らず、遠心送風機10を他の装置に適用しても良い。