(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基台に設けられた複数個のダイスと、前記基台に対して往復動するラムに設けられ前記ダイスと軸線を揃えてワークを打圧することで各工程の圧造成形加工を行う複数個のパンチとを備えた多工程圧造機において、上流工程から下流工程に前記ワークを順次搬送するトランスファー装置であって、
各工程間にそれぞれ設けられ、開閉動作して前記ワークを挟持及び開放する一対のフィンガーと、
一対の前記フィンガーの開閉動作を駆動するフィンガー駆動部と、
前記ワークを挟持した一対の前記フィンガーを前記上流工程から前記下流工程に移動させ、前記ワークを開放した後の一対の前記フィンガーを前記下流工程から前記上流工程に戻すトランスファー駆動部と、
前記下流工程で前記ワークを挟持した一対の前記フィンガーを軸線方向に移動させて前記ワークの少なくとも一部を前記ダイスのダイス孔に挿入する挿入操作、及び前記上流工程で前記ワークを挟持した一対の前記フィンガーを軸線逆方向に戻す戻し操作の少なくとも一操作を駆動する挿入駆動部と、
一対の前記フィンガーが前記軸線方向に移動する挿入タイミング及び前記軸線逆方向に移動する戻りタイミングを独立して可変に調整する挿入タイミング調整部と、を備え、
前記各工程は、前記上流工程である第1工程及び前記下流工程である第2工程のふたつからなり、
前記トランスファー駆動部は、前記基台に揺動軸心で支承されて一対の前記フィンガーを開閉動作可能に保持したトランスファー揺動部を前記第1工程と前記第2工程との間で揺動駆動する振り子型駆動部であり、
前記挿入駆動部は、一対の前記フィンガーを支承した挿入移動部を前記軸線方向および前記軸線逆方向に直線駆動する多工程圧造機のトランスファー装置。
共通の回転中心を有し前記ラムの往復動に連動して回転駆動され、それぞれ独立して回転位相を調整可能であり、非円形の外周面で一対の前記フィンガーの開閉動作を規定する2枚のフィンガー用カムプレートと、
2枚の前記フィンガー用カムプレートの非円形の前記外周面に摺接するフィンガー用カムフォロアと、を含んで構成され、
前記フィンガー駆動部の前記ワークの挟持タイミング及び開放タイミングを独立して可変に調整する挟持タイミング調整部をさらに備えた請求項1または2に記載の多工程圧造機のトランスファー装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための第1実施形態について、
図1〜
図9を参考にして説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の多工程圧造機のトランスファー装置1の正面図であり、揺動軸67については断面が示されている。
図2は、第1実施形態のトランスファー装置1の挿入移動部23及び一対のフィンガー31、32を説明する拡大正面図である。また、
図3は第1実施形態のトランスファー装置1の平面図であり、挿入移動部23及び揺動軸67については断面が示されている。
図4は、第1実施形態のトランスファー装置1の右側から見た側面図である。さらに、
図5は、
図1の矢印A−A方向から見た第1実施形態のトランスファー装置1の側面断面図である。便宜的に、各図に示されるように前側、後側、左側、右側、上側、及び下側を定める。本第1実施形態において、多工程圧造機は、トランスファー駆動部に振り子型駆動部5を採用した二工程圧造機である。
【0017】
まず、二工程圧造機の全体構成の概要について説明する。二工程圧造機は、基台91、基台91に設けられた第1ダイス921及び第2ダイス925、基台91に対して往復動する図略のラム、ラムに設けられた図略の第1パンチ及び第2パンチ、トランスファー装置1、駆動源、及び駆動源の動力を各所に伝達する駆動機構などで構成されている。
【0018】
図1に示されるように、基台91の内部に固設されたダイスブロック92は、左右に並んだ2個のダイス取付孔を有している。左側のダイス取付孔には第1ダイス921が挿入固定され、右側のダイス取付孔には第2ダイス925が挿入固定されている。第1ダイス921及び第2ダイス925はそれぞれ、
図1の紙面表裏方向に軸線を有する円柱状に形成されており、軸線上にワークWを圧造成形加工するためのダイス孔922、926を有している。
【0019】
ダイスブロック92の前側(
図1の紙面手前側)に、図略のラムが配設されている。ラムは、基台91に移動可能に装備されており、駆動源から駆動機構を介して駆動され、前後方向(
図1の紙面表裏方向)に移動する。ラムのダイスブロック92に対向する面に、図略の第1パンチ及び第2パンチがそれぞれ第1ダイス921及び第2ダイス925と同軸に固設されている。第1パンチ及び第1ダイス921により第1工程が形成され、第2パンチ及び第2ダイス925により第2工程が形成される。ラムの1回の往復動により、第1工程及び第2工程でそれぞれワークWに対して圧造成形加工が施される。
【0020】
本発明の第1実施形態のトランスファー装置1は、第1工程で圧造成形加工が施された後のワークWを第2工程に搬送して、第2ダイス925のダイス孔926に差し込む機能を有する。図には省略されているが、第1工程にワーク原材を搬入するための搬入装置が設けられている。搬入装置は、図示しない駆動部により駆動されるものであり、詳細な説明は省略する。さらに、第1工程及び第2工程で圧造成形加工が施された後のワークWをダイス921、925のダイス孔922、926から排出する図略のキックアウト装置が設けられている。第2工程で排出されたワークWは、図略の排出スロープを滑り落ちて図略の部品箱に収容される。トランスファー装置1、搬入装置、及びキックアウト装置は、駆動源及び駆動機構によりラムの往復動に連動して駆動される。
【0021】
実施形態のトランスファー装置1は、装置ボディ21、トランスファー揺動部22、挿入移動部23、一対のフィンガー31、32、フィンガー駆動部4、振り子型駆動部5、挿入駆動部6、及び挿入タイミング調整部などで構成されている。
図5に示されるように、装置ボディ21は筒状であり、基台91の上面に固設されている。装置ボディ21の前端は、ダイスブロック92の後部の真上に位置している。装置ボディ21の内筒面の前寄り及び後寄りにそれぞれ、一対の軸受け部211、212が設けられている。
【0022】
トランスファー揺動部22は、略筒状の回転部221と、回転部221の前側に連続してフランジ状に拡がった大径部222とからなる。回転部221は、装置ボディ21の内側に配置されて、軸受け部211、212により回転自在に支承されている。大径部222は、装置ボディ21の前端から前方に突出しており、かつ装置ボディ21の外径よりもわずかに大きな外径を有している。回転部221の内周には、後述する前後駆動軸46が前後方向に移動可能に挿通されている(
図5示)。
【0023】
図1〜
図4に示されるように、大径部222の前面の略中間高さの左右両側には、前側に向かって突出した丸棒状の一対の支持ロッド224、225が設けられている。各支持ロッド224、225の前側の先端寄りの外周に留め輪226が固設されている。各支持ロッド224、225の留め輪226よりも後側の位置に、各支持ロッド224、225を周回する螺旋状の付勢ばね227が挿入配置されている。
【0024】
挿入移動部23は、前側から見て略円形の部材である。挿入移動部23の略中間高さの左右両側には、一対の被支持孔231、232が穿設されている。左右の被支持孔231、232は、トランスファー揺動部22の左右の支持ロッド224、225の付勢ばね227よりも後方に嵌合している。これにより、挿入移動部23は、トランスファー揺動部22に支持されて共に揺動する。かつ、挿入移動部23は、支持ロッド224、225上で前後方向に移動可能であり、付勢ばね227により後側に向かって常時付勢されている。挿入移動部23の被支持孔231、232の左右の両外側の後側には、一対の被押動部材233、234が一体的に設けられている。被押動部材233、234は、挿入移動部23が揺動することに備えて、円弧状に縦長に形成されている。
【0025】
図2に示されるように、挿入移動部23の前面下方寄りの左側にはフラット側支承部材24が固設されており、対称な右側にはV溝側支承部材25が固設されている。フラット側支承部材24とV溝側支承部材25との間の空間はフィンガー駆動エリア26になっている。フラット側支承部材24の前面の左下隅に、円柱状のフィンガー支承部241が前向きに突設されている。フィンガー支承部241は、フラットフィンガー31を揺動可能に支承している。V溝側支承部材25の前面の右下隅に、円柱状のフィンガー支承部251が前向きに突設されている。フィンガー支承部251は、V溝フィンガー32を揺動可能に支承している。フラットフィンガー31及びV溝フィンガー32は、前側から見て概ね左右対称な形状となっている。
【0026】
フラットフィンガー31は、第1アーム311、第2アーム312、及び第3アーム313が折れ線状に結合されて形成されている。第1アーム311の一端と第2アームの一端とは筒状の被支承点314で結合されている、被支承点314は、フィンガー支承部241が嵌入することで揺動可能に支承されている。第1アーム311は、被支承点314の後側からフィンガー駆動エリア26に向かって延在しており、その他端には被駆動溝315が形成されている。第2アーム312は、被支承点314の前側から斜め右下方に延在しており、その他端には結合点316が設けられている。第3アーム313の上端は結合点316に結合され、下端は下向き左寄りに延在している。第3アーム313の下端の左側にはフラットな挟持面317が形成されている。
【0027】
V溝フィンガー32は、第4アーム321、第5アーム322、及び第6アーム323が折れ線状に結合されて形成されている。第4アーム321の一端と第5アームの一端とは筒状の被支承点324で結合されている。被支承点324は、フィンガー支承部251が嵌入することで揺動可能に支承されている。第4アーム321は、被支承点324の前側からフィンガー駆動エリア26に延在しており、その他端には被駆動溝325が形成されている。第5アーム322は、被支承点324の後側から斜め左下方に延在しており、その他端には結合点326が設けられている。第6アーム323の上端は結合点326に結合され、下端は斜め右下方に延在している。第6アーム323の下端の右側にはV溝状の挟持面327が形成されている。
【0028】
図2に示される拡大正面図で、フラットフィンガー31とV溝フィンガー32とは、第2アーム312を前側とし第5アーム322を後側として、一旦交差している。そして、第3アーム313のフラットな挟持面317と
第6アーム326のV溝状の挟持面327とが対向接近して、合計で3つの面によりワークWを安定的に挟持する。
【0029】
また、
図2に示されるように、挿入移動部23の前面中央には、昇降駆動軸収容筒27が設けられている。昇降駆動軸収容筒27の内部の構造については、後のフィンガー駆動部4の説明で詳述する。
【0030】
次に、トランスファー揺動部22及び挿入移動部23を一括して揺動駆動する振り子型駆動部5について説明する。
図6は、
図3の矢印B−B方向からみた振り子型駆動部5の正面図である。振り子型駆動部5は、2枚のカムプレート51、52、振り子レバー53、振り子ロッド54、及び結合部材55で構成されている。第1カムプレート51及び第2カムプレート52は、
図6には省略された非円形の外周面をもち、基台91の下部に支承されている。第1カムプレート51及び第2カムプレート52は、駆動源および駆動機構により、ラムの往復動に連動して回転駆動される。
【0031】
振り子レバー53は、第1アーム531、第2アーム532、及び第3アーム533を有する略T字状のレバーである。3つのアームが合一した中心点534は、揺動自在に支承されている。
図6で中心点534から左方に延びる第1アーム531の先端には、小円形の第1カムフォロア535が設けられている。中心点534から下方に延びる第2アーム532の先端には、小円形の第2カムフォロア536が設けられている。第1カムフォロア535は第1カムプレート51に摺接し、第2カムフォロア536は第2カムプレート52に摺接して、確動カムが構成されている。
【0032】
中心点534から右方に延びる第3アーム533の先端には、ロッド接合部537が形成されている。ロッド接合部537には、丸棒状の振り子ロッド54の下端が上下動可能に接合されている。振り子ロッド54は、上方に向かって延在しており、基台91のロッド孔93を通り抜けて基台91の上面まで達している。振り子ロッド54の上端は、結合部材55の一端に上下動可能に接合されている。結合部材55は、トランスファー揺動部22の回転部221の後部の外周面に結合されている(
図5示)。
【0033】
ラムが1往復する間に、第1カムプレート51及び第2カムプレート52は
図6の反時計回りに1回転し、振り子ロッド54は1回上下動する。そして、結合部材55が揺動すると、トランスファー揺動部22及び挿入移動部23も一体的に揺動する。これにより、フラットフィンガー31及びV溝フィンガー32は、第1工程と第2工程の間を揺動して1往復する。なお、結合部材55の上面に締め込まれている2本の調整ねじ56は、結合部材55とトランスファー揺動部22との回転位相を調整するものである。調整ねじ56により、第1工程と第2工程との間で揺動するフラットフィンガー31及びV溝フィンガー32の位置を微調整することができる。
【0034】
振り子型駆動部5で揺動駆動する範囲のうち、トランスファー揺動部22は概ね回転対称形状であり、揺動時に重心の移動を伴わない。また、挿入移動部23においても、重心の移動距離は小さい。したがって、トランスファー移動部の全体を平行移動させる一般的な平行型駆動部と比較して、振り子型駆動部5で駆動する負荷は著しく小さく、高速駆動が可能となっている。
【0035】
次に、フラットフィンガー31及びV溝フィンガー32を開閉駆動するフィンガー駆動部4について説明する。
図7は、フィンガー駆動部4の駆動源側から前後駆動軸46までの範囲を示す側面図である。フィンガー駆動部4は、
図7に示される2枚のカムプレート41、42、カムレバー43、昇降ロッド44、揺動レバー45、及び前後駆動軸46、ならびに
図5に示される揺動レバー47及び昇降駆動軸48などで構成されている。第1カムプレート41及び第2カムプレート42は、非円形の外周面をもち、基台91の後部のカム軸99に取り付けられている。カム軸99は、駆動源により回転駆動される駆動機構の一部である。第1カムプレート41及び第2カムプレート42は、ラムの往復動に連動して1回転だけ回転駆動される。
【0036】
カムレバー43は、第1アーム431及び第2アーム432を有する「く」字状のレバーである。2つのアームが合一した中心点434は、揺動自在に支承されている。
図7で、調整機構439は、カムレバー43の中心点434の位置を微調整する機能を有している。中心点434から右下方に延びる第1アーム431の先端には、2枚のカムプレート41、42に摺動する小円形のカムフォロア435が設けられている。中心点434から左方に延びる第2アーム432の先端には、ロッド接合部437が形成されている。ロッド接合部437には、断面矩形の昇降ロッド44の下端が上下動可能に接合されている。昇降ロッド44は上方に向かって延在しており、基台91の後部の上縁に達している。
【0037】
図3及び
図7に示されるように、基台91の後側の上縁には、断面矩形に切欠かれ左右方向に延びる軸収容部94が形成されている。揺動レバー45は、軸収容部94内に回動可能に支承され、左右方向に延在している。揺動レバー45の右側の一端には、平行する2枚の接合板451が後ろ向きに固設されている。2枚の接合板451の間には、昇降ロッド44の上端が上下動可能に接合されている。揺動レバー45の左側の他端は装置ボディ21の後方まで延在しており、揺動レバー45の他端寄りに平行する2枚の係合板452が上向きに固設されている。2枚の係合板452の向かい合う内側にはそれぞれ、締結部材を用いて薄円筒形の押動部材453が固設されている。
【0038】
一方、
図5に示されるように、トランスファー揺動部22の回転部221及び
大径部222の内周には、前後駆動軸46が前後方向に移動可能に挿通されている。前後駆動軸46は、前側が大径で、途中に段差を有し、後側が小径となっている。前後駆動軸46の小径部分と回転部221との隙間には、螺旋状の付勢ばね461が前記の段差を前方に押すように配設されている。付勢ばね461により、前後駆動軸46は常時前側に向かって付勢されている。前後駆動軸46の後端は、回転部221から後方に突出しており、雄ねじが刻設されている。前後駆動軸46は、後端の雄ねじに螺合する締結部材によって固定された環状の被押動板462を有している。被押動板462の前面には、揺動レバー45の他端の2つの押動部材453の外周面が当接している。前後駆動軸46の前端寄りには、上下方向に貫通する駆動溝463が穿設されている。
【0039】
また、トランスファー揺動部22の大径部222の前面の中央下部寄りには支承部223が設けられており、支承部223は揺動レバー47を支承している。揺動レバー47は、第1アーム471及び第2アーム472が概ね直交するように設けられた「く」字状のレバーである。
図5で上方に延びる第1アーム471の先端は、前後駆動軸46の駆動溝463に係入している。前方に延びる第2アーム472の先端は、挿入移動部23にまで達しており、後述する昇降駆動軸48の駆動溝483に係入している。
【0040】
挿入移動部23の昇降駆動軸収容筒27の内部には、昇降駆動軸48が上下動可能に支承されている。昇降駆動軸48の上部には付勢孔が設けられており、付勢孔と昇降駆動軸収容筒27の天井面との間に螺旋状の付勢ばね481が配設されている。付勢ばね481により、昇降駆動軸48は常時下方に付勢されている。昇降駆動軸48の中間高さよりも下方寄りには、前後方向に貫通する駆動溝483が形成されている。駆動溝483には、揺動レバー47の第2アーム472が係入している。昇降駆動軸48の下端には、フィンガー駆動エリア26内で前後方向に延在するフィンガー駆動レバー484が設けられている。フィンガー駆動レバー484は、後側でフラットフィンガー31の被駆動溝315に係入し、前側でV溝フィンガー32の被駆動溝325に係入している。
【0041】
ラムが1往復する間に、第1カムプレート41及び第2カムプレート42は
図7の時計回りに1回転する。
図7で、カムレバー43が摺動する2枚のカムプレート41、42の高さが共に低いとき、カムレバー43は矢印P1で示されるように時計回りに揺動し、昇降ロッド44が上昇して、揺動レバー45が反時計回りに揺動する。このとき、
図5で、前後駆動軸46は付勢ばね461に付勢されて前方に保持され、揺動レバー47は反時計回りに揺動された状態となり、昇降駆動軸48は下降する(実線示または破線示)。これにより、2つの被駆動溝315、325が下方に駆動され、フラットフィンガー31の挟持面317とV溝フィンガー32の挟持面327とが対向接近してワークWを挟持する。
【0042】
逆に、2枚のカムプレート41、42の少なくとも一方の高さが高いとき、カムレバー43は矢印P2で示されるように反時計回りに揺動し、昇降ロッド44が下降して、揺動レバー45が時計回りに揺動する。このとき、
図5で、揺動レバー45の押動部材453が前後駆動軸46の被押動板462を後方に押動する。前後駆動軸46は付勢ばね461に抗して後方に駆動され、揺動レバー47が時計回りに揺動し、昇降駆動軸48が付勢ばね481に抗して上昇する(一点鎖線示)。これにより、2つの被駆動溝315、325が上方に駆動され、フラットフィンガー31の挟持面317とV溝フィンガー32の挟持面327とが離隔してワークWを開放する。したがって、ラムが1往復する間に、ワークWの挟持及び開放が1回ずつ行われる。
【0043】
次に、挿入移動部23を一対のフィンガー31、32とともに軸線方向及び軸線逆方向に駆動する挿入駆動部6について説明する。
図8は、挿入駆動部6の駆動源側から前後駆動ロッド66までの範囲を示す側面図である。挿入駆動部6は、
図8に示される2枚のカムプレート61、62、カムレバー63、昇降ロッド64、方向変換板65、及び前後駆動ロッド66、ならびに
図3に示される揺動軸67及び押動部材673などにより構成されている。第1カムプレート61及び第2カムプレート62は非円形の外周面をもち、基台91の後部のカム軸99に取り付けられている。第1カムプレート61及び第2カムプレート62は、ラムの往復動に連動して1回転だけ回転駆動される。
【0044】
カムレバー63は、第1アーム631及び第2アーム632を有する「く」字状のレバーである。2つのアームが合一した中心点634は、揺動自在に支承されている。
図8で、調整機構639は、カムレバー63の中心点634の位置を微調整する機能を有している。中心点634から右下方に延びる第1アーム631の先端には、2枚のカムプレート61、62に摺動する小円形のカムフォロア635が設けられている。中心点634から右上方に延びる第2アーム632の先端には、ロッド接合部637が形成されている。ロッド接合部637には、断面矩形の昇降ロッド64の下端が上下動可能に接合されている。昇降ロッド64は斜め前側に向かって延在しており、基台91の後部の上縁に達している。
【0045】
図3、
図4、及び
図8に示されるように、基台91の後側の上縁に形成された
軸収容部94の右側の端部寄りに、方向変換支承部95が設けられている。方向変換支承部95は、離隔平行配置された2枚の方向変換板65を揺動可能に支承している。方向変換板65は、丸みを有する正三角形に近い形状の部材である。方向変換板65の正三角形状の第1の頂点寄りには、方向変換支承部95に支承される被支承部651が形成されている。
【0046】
方向変換板65の被支承部651の後方やや上方の第2の頂点寄りに駆動側接合部652が形成されている。2枚の方向変換板65の駆動側接合部652の間には、昇降ロッド64の上端が上下動可能に接合されている。方向変換板65の被支承部651の上方の第3の頂点寄りに従動側接合部653が形成されている。2枚の方向変換板65の従動側接合部653の間には、断面矩形の前後駆動ロッド66の後端が前後動可能に接合されている。前後駆動ロッド66は、前後方向に水平配置されている。
【0047】
図3及び
図4に示されるように、基台91の前側の上縁には、断面矩形に切欠かれ左右方向に延びる軸収容部96が形成されている。揺動軸67は、軸収容部96内に揺動可能に支承され、左右方向に延在している。揺動軸67の右側の一端には、平行する2枚の接合板671が上向きに固設されている。2枚の接合板671の間には、前後駆動ロッド66の前端が前後動可能に接合されている。
【0048】
揺動軸67の左側の他端は、装置ボディ21の下側を通り抜けて延在している。揺動軸67の装置ボディ21を挟んだ左右両側にそれぞれ、駆動板672が上向きに固設されている。2枚の駆動板672の向かい合う内側にはそれぞれ、薄円筒形状の押動部材673が締結部材を用いて固設されている。左右の押動部材673は、挿入移動部23の被押動部材233、234の後面に当接している。
【0049】
ラムが1往復する間に、第1カムプレート61及び第2カムプレート62は
図8の時計回りに1回転する。
図8で、カムレバー63が摺動する2枚のカムプレート61、62の高さが共に低いとき、カムレバー63は矢印Q1で示されるように時計回りに揺動し、昇降ロッド64が下降して、方向変換板65が時計回りに揺動する。このとき、前後駆動ロッド66が後方に駆動され、
図4で揺動軸67が時計回りに揺動する。駆動板672及び押動部材673は後方に駆動され、挿入移動部23は付勢ばね227に押動されて後方に移動する。挿入移動部23が後方へ移動すると、フラットフィンガー31及びV溝フィンガー32は軸線方向へ移動する。これにより、一対のフィンガー31、32は、挟持したワークWを第2ダイス925のダイス孔926に差し込むことができる。
【0050】
逆に、2枚のカムプレート61、62の少なくとも一方の高さが高いとき、カムレバー63は矢印Q2で示されるように反時計回りに揺動し、昇降ロッド64が上昇して、方向変換板65が反時計回りに揺動する。このとき、前後駆動ロッド66が前方に駆動され、
図4で揺動軸67が反時計回りに揺動する。駆動板672及び押動部材673は前方に駆動され、押動部材673が付勢ばね227に抗して挿入移動部23を前方に駆動する。挿入移動部23が前方へ移動すると、ワークWを開放した後のフラットフィンガー31及びV溝フィンガー32は軸線逆方向に戻る。したがって、ラムが1往復する間に、フラットフィンガー31及びV溝フィンガー32の軸線方向の移動によるワークWのダイス孔への差し込み及び軸線逆方向への戻りが連動して行われる。
【0051】
次に、フィンガー駆動部4の2枚のカムプレート41、42、ならびに挿入駆動部6の2枚のカムプレート61、62の位相調整方法について説明する。2つの駆動部4、6で位相調整方法は類似しているので、前者のフィンガー駆動部4を例にして説明する。
図9は、2枚のカムプレート41、42とカムレバー43のカムフォロア435との摺動状況を示した斜視図である。
【0052】
図示されるように、2枚のカムプレート41、42は、共通の回転中心を有し、2枚重ねてカム軸99に取り付けられている。カムフォロア435は、2枚のカムプレート41、42のいずれか一方が高ければ高い位置に駆動され、両方が低いときだけ低い位置に駆動される。それぞれのカムプレート41、42の非円形の外周面は、
図7に例示された形状とすることができる。そして、駆動源側のカム軸99に対し、それぞれのカムプレート41、42を任意の回転位相に取り付けることができる。したがって、2枚のカムプレート41、42を併せて考えたときに、高い位置となる開始位相および終了位相を自由に調整できる。これは、フィンガー駆動部4でワークWを挟持するタイミング及び開放するタイミングを独立して可変に調整できることを意味している。つまり、2枚のカムプレート41、42及びカムフォロア435は、本発明の挟持タイミング調整部に相当する。
【0053】
同様に、挿入駆動部6においても、一対のフィンガー31、32が軸線方向に移動する挿入タイミング及び軸線逆方向に移動する戻りタイミングを独立して可変に調整できる。つまり、2枚のカムプレート61、62及びカムフォロア635は、本発明の挿入タイミング調整部に相当する。
【0054】
次に、二工程圧造機による圧造成形加工の動作、及びトランスファー装置1の動作について説明する。初期状態において、トランスファー装置1のトランスファー揺動部22は第1工程側に揺動しており、挿入移動部23は軸線逆方向に戻っており、一対のフィンガー31、32は開放されている。まず、搬入装置が第1工程にワーク原材を搬入する。次に、ラムが往動して、第1パンチは第1ダイスとの間でワーク原材を打圧して圧造成形加工を行う。次に、ラムが復動して第1パンチが軸線逆方向に戻る。続いて、キックアウト装置が動作し、第1工程で圧造成形加工が施された後のワークWが第1ダイス921のダイス孔922から排出される。この瞬間に、トランスファー装置1のフィンガー駆動部4が動作して一対のフィンガー31、32が閉じ、圧造成形加工が施された後のワークWを挟持する。
【0055】
次に、振り子型駆動部5が動作してトランスファー揺動部22が第2工程側に揺動し、ワークWを第2工程に搬送する。次に、挿入駆動部6が動作して挿入移動部23が軸線方向に移動し、ワークWの一部を第2ダイス925のダイス孔926に差し込む。次に、フィンガー駆動部4が逆方向に動作して一対のフィンガー31、32が開き、ワークWを開放する。次に、挿入駆動部6が逆方向に動作して挿入移動部23が軸線逆方向に戻る。次に、振り子型駆動部5が逆方向に動作してトランスファー揺動部22が第1工程側に揺動し、初期状態に戻る。
【0056】
次に、搬入装置が第1工程に新しいワーク原材を搬入する。次に、ラムが往動して、第1パンチは第1ダイス921との間でワーク原材を打圧し、同時に、第2パンチは第2ダイス925との間でワークWを打圧して圧造成形加工を行う。次に、キックアウト装置が動作して、第1工程及び第2工程で圧造成形加工が施された後の2つのワークWをダイス孔922、926から排出する。第2工程では、ワークWが排出スロープを滑り落ちて部品箱に収容される。同時に、第1工程では、トランスファー装置1はワークWを挟時して第2工程に搬送する。
【0057】
以下、同様の動作が繰り返されて、所定形状のワークWが量産される。トランスファー装置1が第1工程でワークWを挟持するタイミング、及び第2工程でワークWを開放するタイミングは、2枚のカムプレート41、42の回転位相を調整することで、独立して可変に調整される。また、第2工程でフィンガー31、32が軸線方向に移動してワークWをダイス孔926に差し込む挿入タイミング、及びフィンガー31、32が軸線逆方向に移動する戻りタイミングも同様であり、2枚のカムプレート61、62の回転位相を調整することで、独立して可変に調整される。
【0058】
上述したように、第1実施形態の多工程圧造機のトランスファー装置1では、挟持タイミング調整部と挿入タイミング調整部とを組み合わせ、ワークWの形状に応じて第2工程で挿入タイミングを最適に調整することができる。これにより、ワークWを安定して第2ダイス925のダイス孔926に差し込むことができる。
【0059】
さらに、挿入タイミング調整部が2枚のカムプレート61、62及び
カムフォロア635を含むので、簡素な装置構成で挿入タイミング調整部を実現でき、調整作業も簡単であり、カムを新規に作成する必要が生じない。また、二工程圧造機で製造可能な部品形状の範囲が拡がり、加えて、高速でワークWを量産できる。
【0060】
次に、第2実施形態の多工程圧造機のトランスファー装置8について説明する。
図10は、第2実施形態の多工程圧造機のトランスファー装置8を模式的に説明する平面図である。第2実施形態において、多工程圧造機は、長尺の線材を切断してワーク原材を作製する最上流の切断工程部891、及び対向する3組のダイス及びパンチで構成される第1〜第3圧造工程部892〜894を有している。一方、トランスファー装置8は、1個のトランスファー移動部81と、3組のワーク挟持挿入機構とを備えている。3組のワーク挟持挿入機構はそれぞれ、挿入移動部82、フィンガー対83、挿入駆動部84、及び挿入タイミング調整部85を有している。
【0061】
トランスファー移動部81は、3個のパンチが移動する軸線方向と直角な横方向(図中の白抜き矢印Y方向)に往復駆動される。
図10で、トランスファー移動部81は下流工程側に駆動された状態が例示されている。ワーク挟持挿入機構の挿入移動部82は、ダイス間距離と等しい間隔でトランスファー移動部81上に横方向に列設されている。各挿入移動部82は、互いに独立して軸線方向に往復動できるように、トランスファー移動部81に保持されている。
【0062】
各挿入移動部82の前側(
図10では下側)には、フィンガー対83が設けられている。フィンガー対83は、第1実施形態のフラットフィンガー31及びV溝フィンガー32であってもよいし、これと異なる構造であってもよい。当然ながら、フィンガー対83には、図略のフィンガー駆動部が設けられている。
【0063】
各挿入移動部82の後側(
図10では上側)には、挿入駆動部84及び挿入タイミング調整部85が設けられている。挿入駆動部84は、挿入移動部82とともにフィンガー対83を軸線方向(図中の白抜き矢印X方向)に往復駆動する。挿入タイミング調整部85は、挿入移動部82の軸線方向への移動タイミング及び軸線逆方向への戻りタイミングを独立して可変に調整する。挿入タイミング調整部85は、第1実施形態の2枚のカムプレート61、62及びカムフォロア635からなるセットカム機構であってもよいし、これと異なる別の調整機構であってもよい。
【0064】
第2実施形態の多工程圧造機のトランスファー装置8によれば、3組のフィンガー対83を軸線方向(X方向)に移動させる挿入タイミング及び軸線逆方向に移動させる戻りタイミングを、それぞれの挿入タイミング調整部85で独立して可変に調整することができる。これにより、ワークの形状に応じて各工程で挿入タイミングを調整でき、ワークを安定してダイス孔に差し込むことができる。また、特定の挿入駆動部84及び挿入タイミング調整部85を不動作状態に設定し、いずれかの圧造工程部892〜894でワークを横方向に搬送するだけとして、ダイス孔への差し込みが行われないようにすることもできる。
【0065】
なお、第1実施形態において、キックアウト装置が第1工程のダイス孔922の途中までワークWを排出し、その後は一対のフィンガー31、32がワークWを挟持して軸線逆方向に戻すようにしてもよい。この戻し操作は、第2工程でワークWをダイス孔926に差し込む挿入操作と併せて実施できる。この場合、2枚のカムプレート61、62が1回転する間に2回の高低変化が発生するように外周面の形状を設定する。本発明は、第1および第2実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した以外にも様々な応用や変形が可能である。