(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは必ずしも一致していない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における光学系100を示す模式図である。光学系100は、光源102と、回折光学素子(回折光学素子:Diffractive Optical Element)104と、スクリーン106と、を備えている。光源102は、単一波長の光108を出射する。光源102は、レーザーまたは発光ダイオードでもよい。光108は、可視光または赤外線、紫外線であってもよい。回折光学素子104は、回折格子を備えている(回折光学素子104の回折格子の詳細については後述する。)。光学系100において、光源102から出射された光108は、
図1に示されるように、回折光学素子104に達する。その後光108は、回折光学素子104の回折格子によって回折される。光108が回折光学素子104の回折格子によって回折された箇所は、
図1では、箇所112として示されている。回折光110は、
図1に示されるように、スクリーン106に向かって進行する。
図1では、回折光110として、回折光110a、110bおよび110cが例示的に示されている。回折光110は、箇所112を中心とする球面波状に進行する。
図1では、箇所112を中心とする球面114が示されている。回折光110a、110bおよび110cが同一の形状のパターンを球面114に形成する場合、回折光110は球面波状に進行しているため、球面114におけるこれらのパターンの大きさは同じとなる。回折光110のうち光108の同一直線上に進行している回折光は、0次光となる。0次光は、スクリーン106においてドット状のパターンを形成する。本実施形態における回折光110は、球面114においてパターンを形成することなく、スクリーン106においてパターンを形成する。スクリーン106において回折光のパターンが形成される表面は、平面状に形成されている。スクリーン106の表面が平面状に形成されている場合、スクリーン106に到達した回折光は、0次光から離れれば離れるほど、箇所112からスクリーン106までにおいて、より長い光路長を有する。この場合、スクリーン106において0次光がパターンを形成する位置からずれた位置に形成される回折光のパターンは、そのずれた方向に引き伸ばされた形状を有することとなる。
【0013】
回折光学素子104について詳細に説明する。回折光学素子104は、回折格子を備えている。回折光学素子104の回折格子は、光110が当該回折格子によって回折されて球面114に照射された場合に、光110の像が、球面114で、第1パターンと、第2パターンと、を形成するように設計されている。光110は単一波長の光である。球面114は、箇所112を中心とする球面である。箇所112は、回折光学素子104の回折格子において回折の生じた箇所である。第1パターンは、第1小パターンを含んでいる。第1小パターンは、回折光学素子104の回折格子におけるm次光(ただし、mは0以外の正の整数である。)で形成されている。また第1小パターンは、球面114の所定方向に沿って周期的に配列されている。第2パターンは、第2小パターンを含んでいる。第2小パターンは、回折光学素子104の回折格子における(m+1)次光で形成されている。また第2小パターンは、球面114所定方向に沿って周期的に配列されている。第1パターンと第2パターンとは、周期的な第3パターンが形成されるように球面114の所定方向に沿って配列されている。第3パターンは、第1小パターンと第2小パターンとを含んでいる。
【0014】
本実施形態における回折光学素子104によれば、第1パターンと第2パターンとが一体となって、周期的なパターンを形成する。このような周期的なパターンの照射範囲は、第1パターンおよび第2パターンのいずれか一方のみで形成される周期的なパターンの照射範囲よりも広い。本実施形態によれば、回折格子によって形成される周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。
【0015】
本実施形態においては、第1パターンおよび第2パターンは、球面114だけでなく、平面状のスクリーン106の表面に形成されてもよい。この場合、第1小パターンは、スクリーン106の表面の所定方向に沿って略周期的に配列される。第2小パターンは、スクリーン106の表面の所定方向に沿って略周期的に配列される。第3パターンでは、第1小パターンと第2小パターンとが、略周期的なパターンを形成する。当該略周期的なパターンは、スクリーン106の表面の所定方向に沿って配列されたパターンである。
【0016】
本実施形態では、第1小パターンおよび第2小パターンが球面114において周期的に形成されるように回折光学素子104が設計されている限り、第1小パターンおよび第2小パターンは、上述のように、平面状のスクリーン106の表面において「略周期的」に形成されてもよい。これは、回折光学素子104における回折光が球面波状に進行することに基づく。回折光学素子104が、第1小パターンおよび第2小パターンが球面114において周期的に形成されるように設計されていても、箇所112からスクリーン106までの光路長により、第1小パターンおよび第2小パターンは、平面状のスクリーン106の表面において厳密な意味での周期性を満たさないことがある。第1小パターンおよび第2小パターンが平面状のスクリーン106の表面に形成される場合における「略周期的」とは、このような厳密な意味での周期性が満たされない場合を含む意味である。
【0017】
本実施形態において球面114に形成される第1パターンおよび第2パターンの詳細について、
図2から
図10までを用いて説明する。
図2から10は、球面114に形成される第1パターンおよび第2パターンの具体例を示す図である。
【0018】
図2は、第1パターンおよび第2パターンの第1例を示す模式図である。
図2において、球面114には、第1パターンP1および第2パターンP2が形成されている。第1パターンP1は、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cを含んでいる。第1小パターンP1a、P1bおよびP1cは、回折光学素子104におけるm次光で形成されている。第1小パターンP1a、P1bおよびP1cは、方向DRに沿って周期的に配列されている。第2パターンP2は、第2小パターンP2a、P2bおよびP2cを含んでいる。第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、回折光学素子104における(m+1)次光で形成されている。第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、方向DRに沿って周期的に配列されている。第1パターンP1と第2パターンP2とは、周期的な第3パターンP3が形成されるように配置されている。第3パターンP3は、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cと、第2小パターンP2a、P2bおよびP2cと、を含んでいる。
【0019】
図2に示される第1例では、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、1次元のパターンである。具体的には、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、ドット状に形成されている。この場合、ドットの大きさは、例えば、1μm以上かつ10mm以下としてもよい。またドットの間の間隔は、例えば、1μm以上かつ10mm以下としてもよい。
図2において一点鎖線で「m」および「m+1」で示された箇所は、それぞれ第1パターンP1および第2パターンP2の形成範囲を示す(
図3から
図10においても同様である。)。
【0020】
第1パターンP1において、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cは、周期C
1で配列されている。一方第2パターンP2において、第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、周期C
2で配列されている。第1例では、周期C
1および周期C
2について、C
1=C
2が満たされている。このため、第1小パターンP1aとP1b間の間隔、第1小パターンP1bとP1c間の間隔、第2小パターンP2aとP2b間の間隔および第2小パターンP2bとP2c間の間隔は、互いに等しい。さらに第1例では、これらの間隔と第1小パターンP1cと第2小パターンP2aとの間の間隔が等しい。また第1例では、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、方向DRに沿った同一直線上に形成されている。このため、
図2に示される第1例では、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cが一体となって、周期的なパターンを形成することになる。
【0021】
このように、
図2に示される第1例では、第3パターンP3が周期的なパターンで形成されている。このため、
図2に示される第1例では、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。
【0022】
次に、
図3に示される第2例を説明する。
図3は、第1パターンおよび第2パターンの第2例を示す模式図である。
図3に示される第2例は、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cの形状を除いて、
図2に示される第1例と同様である。
【0023】
図3に示される第2例では、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、1次元のパターンである。具体的には、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、線分状に形成されている。第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cにおける線分の長さは、互いに等しい。
図3に示される線分状の第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、ドット状のパターンを連続的に配列させることで形成されていてもよい。
【0024】
図3に示される第2例では、第3パターンP3は、周期的なパターンで形成されている。このため、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図3に示される第2例では、第3パターンP3における1周期のパターンを線分状のパターンにすることができる。
【0025】
次に、
図4に示される第3例を説明する。
図4は、第1パターンおよび第2パターンの第3例を示す模式図である。
図4に示される第3例は、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cの形状を除いて、
図2に示される第1例と同様である。
【0026】
図4に示される第3例では、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、2次元のパターンである。具体的には、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、四角形状に形成されている。そして
図4に示される第3例では、各2次元のパターンは、ドット状のパターンにより構成されている。本実施形態においては、各2次元のパターンの形状は、四角形に限られず、円、楕円、多角形(例えば、三角形、正六角形)、文字(例えば、A、B)または数字(例えば、2、3)としてもよい。
【0027】
図4に示される第3例では、第3パターンP3は、周期的なパターンで形成されている。このため、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図4に示される第3例では、第3パターンP3における1周期のパターンを、ドット状のパターンにより構成された2次元のパターンにすることができる。
【0028】
次に、
図5に示される第4例を説明する。
図5は、第1パターンおよび第2パターンの第4例を示す模式図である。
図5に示される第4例は、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cが線状のパターンにより構成されている点を除いて、
図4に示される第3例と同様である。第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、ドット状のパターンを連続的に配列させることで形成されていてもよい。
【0029】
図5に示される第4例では、第3パターンP3は、
図4に示される第3例と同様、周期的なパターンで形成されている。このため、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図5に示される第4例では、第3パターンP3における1周期のパターンを、線状のパターンにより構成された2次元のパターンにすることができる。
【0030】
次に、
図6に示される第5例を説明する。
図6は、第1パターンおよび第2パターンの第5例を示す模式図である。
図6に示される第5例は、第1小パターンP1a、P1b、P1cおよびP1dならびに第2小パターンP2a、P2b、P2cおよびP2dを除いて、
図2に示される第1例と同様である。
【0031】
図6に示される第5例では、第1小パターンP1a、P1b、P1cおよびP1dならびに第2小パターンP2a、P2b、P2cおよびP2dは、2次元のパターンである。具体的には、第1小パターンP1bおよびP1cならびに第2小パターンP2bおよびP2cは、四角形状に形成されている。一方第1小パターンP1aおよびP1dならびに第2小パターンP2aおよびP2dは、それぞれ、第1小パターンP1bおよびP1cならびに第2小パターンP2bおよびP2cの一部の形状で形成されている。そして
図6に示される第4例では、各2次元のパターンは、ドット状のパターンにより構成されている。本実施形態においては、各2次元のパターンの形状は、四角形に限られず、円、楕円、多角形(例えば、三角形、正六角形)、文字(例えば、A、B)または数字(例えば、2、3)としてもよい。
【0032】
図6に示される第5例では、第1パターンP1のうち第2パターンP2に隣接する部分(第1小パターンP1d)と第2パターンP2のうち第1パターンP1に隣接する部分(第2小パターンP2a)とが一体となって、パターンP12を形成している。パターンP12は、第3パターンP3における周期的なパターンの1周期のパターンである。パターンP12は、回折光における並進対称性を利用して形成してもよい。回折格子において、m次光により形成されるパターンと、(m+1)次光により形成されるパターンとは、並進対称の関係になる。並進対称の関係においては、
図6に示される第5例において、第1小パターンP1a、P1b、P1cおよびP1dは、それぞれ、第2小パターンP2a、P2b、P2cおよびP2dに対応することになる。この場合、第1小パターンP1aとP1dの形状は、第1小パターンP1aとP1dとを組み合わせると第1小パターンP1bまたはP1cの形状が形成されるように形成されていてもよい。このようにすれば、第1パターンP1と第2パターンP2との配置が適宜決定されている場合、第1小パターンP1dと第2小パターンP2aとでパターンP12が形成される。
【0033】
図6に示される第5例であっても、第3パターンP3は、周期的なパターンで形成することができる。このため、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図6に示される第5例では、第3パターンP3における1周期のパターンを、ドット状のパターンにより構成された2次元のパターンにすることができる。
【0034】
次に、
図7に示される第6例を説明する。
図7は、第1パターンおよび第2パターンの第6例を示す模式図である。
図7に示される第6例は、第1小パターンP1a、P1b、P1cおよびP1dならびに第2小パターンP2a、P2b、P2cおよびP2dが線状のパターンにより構成されている点を除いて、
図6に示される第5例と同様である。第1小パターンP1a、P1b、P1cおよびP1dならびに第2小パターンP2a、P2b、P2cおよびP1dは、ドット状のパターンを連続的に配列させることで形成されていてもよい。
【0035】
図7に示される第6例では、第3パターンP3は、
図6に示される第5例と同様、周期的なパターンで形成されている。このため、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図7に示される第6例では、第3パターンP3における1周期のパターンを、線状のパターンにより構成された2次元のパターンにすることができる。
【0036】
次に、
図8に示される第7例を説明する。
図8は、第1パターンおよび第2パターンの第7例を示す模式図である。
図8に示される第7例は、第1パターンP1および第2パターンP2を除いて、
図2に示される第1例と同様である。
【0037】
図8に示される第7例では、第1パターンP1が格子状に形成されているとともに、第2パターンP2も格子状に形成されている。そして、第3パターンP3も格子状に形成されている。
図8に示される第7例では、第1パターンP1および第2パターンP2を構成する小パターンがドット状のパターンとなっている。
図8に示される第7例では、
図6に示される第5例と同様に、第1パターンP1のうち第2パターンP2に隣接する部分と第2パターンP2のうち第1パターンP1に隣接する部分とが一体となって、パターンP12を形成していてもよい。パターンP12は、第3パターンP3における周期的なパターンの1周期のパターンである。
【0038】
図8に示される第7例では、第3パターンP3は、格子状に形成されているとともに、周期的なパターンで形成されている。このため、
図8に示される第7例では、格子状の周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。
【0039】
次に、
図9に示される第8例を説明する。
図9は、第1パターンおよび第2パターンの第8例を示す模式図である。
図9に示される第8例は、第1パターンP1および第2パターンP2構成する小パターンが線状のパターンにより構成されている点を除いて、
図8に示される第7例と同様である。第1パターンP1および第2パターンP2を構成する線状の小パターンは、ドット状のパターンを連続的に配列させることで形成されていてもよい。
【0040】
図9に示される第8例では、第3パターンP3は、
図8に示される第7例と同様、格子状に形成されているとともに、周期的なパターンで形成されている。このため、
図9に示される第8例では、格子状の周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。そして
図9に示される第8例では、第3パターンP3を線状のパターンにより構成することができる。
【0041】
次に、
図10に示される第9例を説明する。
図10は、第1パターンおよび第2パターンの第9例を示す模式図である。
図10に示される第9例は、第4パターンP4が形成されている点を除いて、
図2に示される第1例と同様である。
【0042】
図10に示される第9例では、m=1が満たされている。すなわち、第1パターンP1は1次光で形成されているとともに、第2パターンP2は2次光で形成されている。第0パターンP0と第1パターンP1と第2パターンP2とは、周期的な第4パターンP4が形成されるように方向DRに沿って配列されている。第4パターンP4は、第0パターンP0と第1小パターンP1a、P1bおよびP1cと第2小パターンP2a、P2bおよびP2cとを含んでいる。
【0043】
図10に示される第9例では、第0パターンP0と第1小パターンP1a間の間隔は、第1小パターンP1aとP1b間の間隔、第1小パターンP1bとP1c間の間隔、第1小パターンP1cと第2小パターンP2a間の間隔、第2小パターンP2aとP2b間の間隔および第2小パターンP2bとP2c間の間隔に等しい。また第9例では、第0パターンP0、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cは、方向DRに沿った同一直線上に形成されている。このため、
図10に示される第9例では、第0パターンP0、第1小パターンP1a、P1bおよびP1cならびに第2小パターンP2a、P2bおよびP2cが一体となって、周期的なパターンを形成することになる。
【0044】
このように、
図10に示される第9例では、第4パターンP4が周期的なパターンで形成されている。このため、
図10に示される第9例では、周期的なパターンの照射範囲を広くすることができる。
【0045】
図2から
図10までに示される各例は、本実施形態の一例である。第1パターンおよび第2パターンの形状および配置は、
図2から
図10までに示される各例に限定されるものではない。例えば、m≧1における各回折光によって形成されるパターンは並進対称の関係にあることを利用すれば、m次光で形成される第1パターンと、(m+1)次光で形成される第2パターンと、(m+2)次光で形成されるパターンとが一体となって、周期的なパターンを形成してもよい。また0次光で形成される第0パターンから(m+1)次光で形成される第2パターンまでの各回折光によって形成されるパターンが一体となって、周期的なパターンを形成してもよい。あるいは、0次光を利用せず、1次光で形成されるパターンから(m+1)次光で形成される第2パターンまでの各回折光によって形成されるパターンが一体となって、周期的なパターンを形成してもよい。
図2から
図10までに示される各例では、m=1が満たされていてもよい。
【0046】
次に、本実施形態における回折光学素子104の製造方法について説明する。本実施形態における回折光学素子104の製造方法は、以下の設計工程および形成工程を含んでいる。
設計工程:回折格子を設計する工程
形成工程:設計工程における回折格子の設計に基づいて、基板200に回折格子を形成する工程
【0047】
(設計工程)
本実施形態における回折光学素子104の製造方法に含まれる設計工程では、回折格子は、光110が当該回折格子によって回折されて球面114に照射された場合に、当該光110の像が、球面114で第1パターンと、第2パターンと、を形成するように設計される。光110は単一波長の光である。球面114は、箇所112を中心とする球面である。箇所112は、回折光学素子104の回折格子において回折の生じた箇所である。第1パターンは、第1小パターンを含んでいる。第1小パターンは、回折光学素子104の回折格子におけるm次光で形成されている。また第1小パターンは、球面114の所定方向に沿って周期的に配列されている。第2パターンは、第2小パターンを含んでいる。第2小パターンは、回折光学素子104の回折格子における(m+1)次光で形成されている。また第2小パターンは、球面114所定方向に沿って周期的に配列されている。第1パターンと第2パターンとは、周期的な第3パターンが形成されるように球面114の所定方向に沿って配列されている。第3パターンは、第1小パターンと第2小パターンとを含んでいる。
【0048】
本実施形態における回折光学素子104の製造方法に含まれる設計工程の詳細について、
図11から
図13までを用いて説明する。
【0049】
図11は、本実施形態における回折光学素子104の製造方法に含まれる設計工程を示すフローチャートである。まず、本実施形態における設計工程では、第1パターンを形成する回折格子を設計する工程を含んでいる(工程S102)。第1パターンは、回折光学素子104の回折格子のm次光で形成されたパターンである。第1パターンは、回折光学素子104の回折格子によって回折されて球面114に照射された光110の像によって形成される。工程S102において、回折格子は、第1パターンが第1小パターンを含むように設計される。第1小パターンは、回折光学素子104における回折格子のm次光で形成される。また第1小パターンは、球面114の所定方向に沿って配列される。
【0050】
次いで、本実施形態における設計工程では、第2パターンが形成される位置が検証される(工程S104)。第2パターンは、工程S104で設計された回折格子により形成されるパターンである。また第2パターンは、回折光学素子104の(m+1)次光で形成されたパターンである。第2パターンは、回折光学素子104の回折格子によって回折されて球面114に照射された光110の像によって形成される。工程S104において、回折格子は、第2パターンが第2小パターンを含むように設計される。第2小パターンは、回折光学素子104における回折格子の(m+1)次光で形成される。また第2小パターンは、球面114の所定方向に沿って配列されている。
【0051】
次いで、本実施形態における設計工程では、工程S104で設計された回折格子の設計が補正される(工程S106)。工程S106において、回折格子の設計は、第1パターンと第2パターンとが形成される位置が調整されるように補正される。具体的には、回折格子の設計は、第1パターンと第2パターンとが周期的な第3パターンが形成するように補正される。第3パターンは、第1小パターンと第2小パターンとを含む。第1パターンと第2パターンとは、球面114の所定方向に沿って配列される。
【0052】
図11に示される設計工程を実行する設計装置500について、
図12を用いて説明する。
図12は、本実施形態における回折光学素子104の設計装置500の構成を示すブロック図である。設計装置500は、機能部として、入力部502と、設計部504と、検証部506と、補正部508と、を備えている。入力部502は、設計部504、検証部506または補正部508に所定の信号(例えば、所定の条件の情報が含まれた信号)を送信する機能を有している。設計部504は、第1パターンを形成する回折格子を設計する機能を有している(工程S102)。検証部506は、設計部504によって設計された回折格子により第2パターンが形成される位置を、検証する機能を有している(工程S104)。補正部508は、設計部504により設計された回折格子の設計を補正する機能を有している(工程S106)。設計装置500は、記憶部として、設計データ記憶部510を備えている。設計データ記憶部510は、設計部504が設計したデータおよび補正部508が補正したデータを記憶する。
【0053】
設計部504は、入力部502から入力される信号にしたがって、第1パターンを形成する回折格子を設計する。第1パターンは、回折光学素子104の回折格子のm次光で形成されるパターンである。第1パターンは、回折光学素子104の回折格子によって回折されて球面114に照射された光110の像によって形成される。設計部504は、第1パターンが第1小パターンを含むように第1パターンを設計する。第1小パターンは、回折光学素子104における回折格子のm次光で形成されている。また第1小パターンは、球面114の所定方向に沿って配列されている。入力部502が設計部504に入力する信号には、例えば、第1パターンにおける第1小パターンの周期、第1パターンの形成箇所、第1パターンの次数(m)、第1パターンの形成領域の面積、箇所112から球面114までの距離が含まれている。設計部504は、入力部502から入力された条件にしたがった第1パターンが球面114に形成される回折格子を設計する。設計部504は、設計部504が設計した回折格子のデータを設計データ記憶部510に出力する。設計データ記憶部510は、設計部504が出力した回折格子のデータを記憶する。設計部504には、例えば、Light Trans 社製 Version of VirtualLab
TM advanced 5.3.3を用いてもよい。
【0054】
検証部506は、第2パターンが形成される位置を検証する。第2パターンは、設計部504によって設計された回折格子により形成されるパターンである。また第2パターンは、回折光学素子104の回折格子の(m+1)次光で形成されるパターンである。第2パターンは、回折光学素子104の回折格子によって回折されて球面114に照射された光110の像によって形成される。第2パターンは第2小パターンを含んでいる。第2小パターンは、回折光学素子104における回折格子の(m+1)次光で形成されている。また第2小パターンは、球面114の所定方向に沿って配列されている。検証部506は、m次光によって形成されるパターンと、(m+1)次光によって形成されるパターンとの並進対称性を利用してもよい。並進対称性が利用される場合、検証部506は、設計データ記憶部510から、設計部504が設計したデータを読み込む。そして検証部506は、設計部504が設計したデータおよびパターンの並進対称性に基づき、第2パターンが形成される位置を検証する。検証部506は、検証結果を含むデータ(第2パターンは形成される位置の情報を含むデータ)を設計データ記憶部510に出力する。設計データ記憶部510は、検証部506が出力したデータを記憶する。
【0055】
補正部508は、設計部504が設計したデータおよび検証部506が検証したデータを、設計データ記憶部510から読み込む。そして補正部508は、設計部504が設計した回折格子の設計を補正する。補正部508は、第1パターンと第2パターンとが周期的な第3パターンが形成するように回折格子の設計を補正する。第3パターンは、第1小パターンと第2小パターンとを含む。第1パターンと第2パターンとは、球面114の所定方向に沿って配列される。
【0056】
補正部508による設計データの補正方法の詳細について、
図13を用いて説明する。
図13は、回折格子の設計の補正方法の一例を説明するための図である。
図13(a)では、補正部508によって補正されていない設計に基づいて作成された回折格子による第1パターンP1と第2パターンP2とが球面114に形成されている。
図13(b)では、補正部508によって補正された設計データに基づいて作成された回折格子による第1パターンP1と第2パターンP2とが球面114に形成されている。
図13(a)および(b)において、第1パターンP1および第2パターンP2は、方向DRに沿って周期的に配列されている。また第1パターンP1および第2パターンP2は、それぞれ周期C
1および周期C
2で配列されている。周期C
1およびC
2について、C
1=C
2が満たされている。
【0057】
第1パターンP1には、
図13(a)に示されるように、第1パターンP1の形成領域A1が設定されている。形成領域A1には、m次光によるパターンが形成される。形成領域A1は、m次光によるパターンを、他の次数の回折光によるパターンから隔離するために設けられるものである。形成領域A1の広さは、
図13(a)に示されるように、実際に第1パターンP1が形成される領域の広さよりも広いことがある。形成領域A1がこのように形成される場合、m次光と(m+1)次光の並進対称性により、第2パターンP2に関する形成領域A2も広いものとなる。結果、第1パターンP1と第2パターンP2との間隔Dが大きいものとなる。このような形成領域A1およびA2は、第1パターンP1のみを際立たせるために設計されることがある。回折格子における回折光の強度は、次数の増加にしたがって減少する傾向がある。このような傾向を利用して、第1パターンP1のみで所望のパターンが形成されることがある。この場合、パターンのノイズとなる第2パターンP2を目立たなくさせるため、間隔Dを大きくすることがある(D>C
1=C
2)。これに対して、本実施形態においては、形成領域A1およびA2は、補正部508によって
図13(b)に示されるように補正される。
図13(b)において、形成領域A1およびA2は、間隔DについてD=C
1=C
2が満たされるように補正されている。結果、第1パターンP1と第2パターンP2とが一体となって、方向DRに沿って周期的なパターンを形成することになる。補正部508は、設計データ記憶部510からの設計データによって形成される回折格子における第1パターンP1および第2パターンP2が
図13(b)に示されるように配列されるように、設計部504が設計した回折格子の設計を補正する。この際、形成領域A1およびA2の面積を小さくすることで、回折格子の設計を補正してもよい。補正部508による補正後の回折格子の設計に基づく第1パターンP1とP2とが一体となって周期的なパターンを形成している限り、回折格子の設計の補正の際、形成領域A1およびA2の面積の減少とともに周期C
1およびC
2が減少してもよい。あるいは、設計部504は、補正部508の補正によって周期C
1およびC
2が減少しても第1パターンP1とP2とが一体となって形成する周期的なパターンが所望の周期を有するように、回折格子の設計をしていてもよい。
【0058】
本実施形態における回折光学素子104の回折格子は、以上のようにして設計される。以上の設計工程における設計に基づいて回折光学素子104の回折格子を形成すれば、第1パターンと第2パターンとが一体となって周期的なパターンを形成する回折光学素子104を製造することができる。
【0059】
(形成工程)
次に、本実施形態における回折光学素子104の形成工程について、
図14から
図19を用いて説明する。
図14から
図18は、本実施形態における回折光学素子104の形成方法の第1例を示す工程断面図である。
図19は、本実施形態における回折光学素子104の形成方法の第2例を示す工程断面図である。
【0060】
まず、回折光学素子104における回折格子の形成方法の第1例を説明する。第1例では、4レベル型回折格子が基板200に形成される。まず、基板200を用意する(
図14(a))。基板200は、半導体基板(例えば、シリコン基板)、ガラス基板または石英基板であってもよい。次いで、基板200上にレジスト膜202aを形成する(
図14(b))。レジスト膜202aは、スピンコートにより形成されてもよい。
【0061】
次いで、レジスト膜202aを、フォトマスク204aを介して露光する(
図15(a))。フォトマスク204aおよび後述のフォトマスク204bによって基板200の表面に形成される回折格子の形状が規定される。本実施形態において、回折格子の形状は、上述の設計工程における設計に基づく。そしてこの設計は、フォトマスク204aおよび204bの形状によって反映させることができる。すなわち、上述の設計工程における回折格子の設計は、フォトマスク204aおよび204bを設計することに当たる。露光後、基板200およびレジスト膜202aを現像液に浸漬させる。これにより、レジスト膜202aが
図15(b)に示されるように現像される。
【0062】
次いで、レジスト膜202aをマスクとして、基板200をエッチングする。エッチングには、ドライエッチングを用いてもよい。基板200のエッチング後、レジスト膜202aを剥離する(
図16(a))。なお、
図16(a)に示される工程において、基板200の表面には、ピッチ長dの2レベル型回折格子が形成されている。
図16(a)に示される工程後、基板200にレジスト膜202bを形成する(
図16(b))。
【0063】
次いで、レジスト膜202bを、フォトマスク204bを介して露光する(
図17(a))。露光後、基板200およびレジスト膜202bを現像液に浸漬させる。これにより、レジスト膜202bが
図17(b)に示されるように現像される。
【0064】
次いで、レジスト膜202bをマスクとして、基板200をエッチングする(
図18(a))。エッチングには、ドライエッチングを用いてもよい。基板200のエッチング後、レジスト膜202aを剥離する(
図18(b))。これにより、基板200の表面には、ピッチ長dの4レベル型回折格子が形成される。
【0065】
次に、回折光学素子104における回折格子の形成方法の第2例を示す。第2例では、ブレーズ型回折格子が基板200に形成される。第2例では、まず、
図14(a)および(b)に示される工程が実行される。その後、レジスト膜202aに対してホログラフィック露光を行う。ホログラフィック露光では、レジスト膜202aに対して異なる2方向から平面波の光(例えば、He−Cdレーザー光)が照射される。これらの光により、レジスト膜202a上では、干渉縞が形成される。これにより、レジスト膜202a内には、断面の露光密度が正弦波状である平行線状の潜像が形成される。このような露光がなされたレジスト膜202aを現像すると、断面の形状が正弦半波となるレジスト膜202a´が基板200上に残ることになる(
図19(a))。本実施形態において、回折格子の形状は、上述の設計工程における設計に基づく。そしてこの設計は、レジスト膜202a´の配置によって反映させることができる。すなわち、上述の設計工程における回折格子の設計は、レジスト膜202a´の形状および配置を設計することに当たる。
【0066】
レジスト膜202a´の形成後、基板200の表面の斜め方向からイオンビームエッチング(イオンビームは、
図19(b)において矢印で模式的に示されている。)を行う(
図19(b))。イオンビームエッチングは、レジスト膜202a´が消失するまで実行する。これにより、ピッチ長dのブレーズ型回折格子が、
図19(c)に示されるように、基板200の表面に形成される。
【0067】
本実施形態においては、以上の設計工程および形成工程により回折光学素子104が得られる。本実施形態における回折光学素子104では、第1パターンと第2パターンとが一体となって、周期的なパターンを形成する。これにより、周期的なパターンの照射範囲を広くすることが可能となる。
【0068】
(第2の実施形態)
第1の実施形態における回折光学素子104によれば、周期的なパターンを広範囲に照射することができる。第2の実施形態においては、回折光学素子104を、物体の検出装置に適用する。回折光学素子104を備えた物体の検出装置によれば、広範囲での物体の検出が可能となる。
【0069】
本実施形態における物体の検出装置150について、
図20を用いて説明する。
図20は、物体の検出装置150の構成を示すブロック図である。検出装置150は、照射部152と、回折部154と、投影部156と、撮像部158と、記憶部160と、判定部162と、検出部164と、を備えている。回折部154は、第1の実施形態における回折光学素子104により構成されている。照射部152は、回折部154に単一波長の光166を照射する。投影部156には、光168のパターンが照射される。光168のパターンは、回折部154の回折格子によって回折された光のパターンである。撮像部158は、投影部156に照射された光168のパターンを時間的に連続して撮像する。記憶部160は、撮像部158が撮像した光168のパターンを記憶する。判定部162は、記憶部160に記憶された一の時間における光168のパターンが、記憶部160に記憶された他の時間における光168のパターンと異なるかを判定する。検出部164は、判定部162の判定結果に基づいて、光168が照射された物体の存在、形状または位置を検出する。
【0070】
照射部152と、回折部154と、投影部156とには、
図1における光源102と、回折光学素子104と、スクリーン106と、をそれぞれ用いてもよい。この場合、光166および168は、
図1の光108および110に対応することになる。本実施形態において、投影部156(スクリーン106)の表面の形状は、回折部154(回折光学素子104)の回折光のパターンが形成されるものであれば、特定の形状に限定されない。回折部154(回折光学素子104)における回折光の次数について、m=1が満たされていてもよい。照射部152(光源102)が出射する光は、可視光または赤外線、紫外線であってもよい。
【0071】
検出装置150による物体の検出方法を説明する。投影部156に光168のパターンが照射されているときに、物体が光168のパターンの照射を受けながら、投影部156の前を通過し、または、置かれたとする。この場合、光168のパターンは、物体の存在している箇所と物体の存在していない箇所とで異なる形状を有するようになる。これは、光168の光路長に基づくものである。物体から回折部154までの光168の光路長は、投影部156から回折部154までの光168の光路長よりも短い。結果、物体が存在している箇所における光168の像は、投影部156における光168の像よりも小さいものとなる。そして本実施形態においては、光168のパターンは、周期的なパターンである。そのため、物体が存在している箇所においては、光168のパターンの周期性が崩れることになる。光168のパターンの周期性の崩れは、撮像部158で撮像されるとともに、記憶部160に記憶される。そして判定部162は、光168のパターンの周期性の崩れを、撮像部158および記憶部160を介して判定する。すなわち、判定部162は、記憶部160を参照して、物体が投影部156の前に存在していない時間(一の時間)と、物体が投影部156の前に存在している時間(他の時間)とで、光168のパターンが異なるかを判定する。検出部164は、判定部162の判定結果に基づいて、物体の存在、形状または位置を検出する。物体の存在および位置は、光168のパターンの周期性の崩れが発生した箇所を解析することで検出される。一方物体の形状は、光168の像の周期性の崩れが発生した箇所における光168の像の歪みの程度により検出される。
【0072】
本実施形態においては、回折部154に回折光学素子104が用いられている。回折光学素子104では、第1パターンと第2パターンとが一体となって、周期的なパターンを形成する。これにより、周期的なパターンを広範囲に形成することができる。そして周期的なパターンが広範囲に形成されることは、検出装置150が広範囲で物体を検出することができることを意味する。このように、本実施形態における検出装置150は、広範囲で物体を検出することができる。
【0073】
(実施例)
Light Trans 社製 Version of VirtualLab
TM advanced 5.3.3を用いて、回折光学素子104の回折格子を設計する。当該設計に基づいて形成された回折格子によってスクリーンに形成されるパターンを検証する。
図21から
図23は、回折光学素子104の回折格子によってスクリーンに形成されたパターンの写真を示す図である。
【0074】
(参考例)
図21は、参考例のパターンの写真を示す図である。参考例では、式(1)について、N=m=1、d=1.6μm、λ=0.63μmとして回折格子を設計した。参考例において、0次光は、m=0、回折角度θ
0=0で照射される。
図21では、0次光が存在する中心には、撮影の便宜のため、黒丸の光吸収剤が置かれている(強度の高すぎる0次光が存在すると、1次光によるパターンが明瞭に確認されないためである。)。
図21では、破線で囲まれた領域が形成領域A1となる。形成領域A1の外側には、外枠部ORが形成されている。外枠部ORには、1次光のパターンは形成されない。参考例では、1次回折角度θ
1=11度の照射範囲で1次光のパターンが形成された。参考例では、回折光学素子104からスクリーンまでの距離が1mである場合、1辺0.48mの正方形の1次光の照射パターンが形成される。
【0075】
(実施例1)
図22は、実施例1の写真を示す図である。実施例1では、
図21における外枠部ORをなくすように回折格子が設計された。実施例1では、式(1)について、d=1.6μm、λ=0.63μmとして回折格子を設計した。実施例1では、0次光により形成されるパターンと、1次光により形成されるパターンと、2次光により形成されるパターンとが一体となって、周期的な格子状のパターンを形成した(
図22)。格子状のパターンは、複数のドット状のパターンが集まって形成されている。実施例1において、0次光は、m=0、回折角度θ
0=0で照射される。
図22では、0次光から白破線までに1次光によるパターンが形成されている。また白破線から右側に2次光によるパターンが形成されている。実施例1において、回折光学素子104からスクリーンまでの距離が1mである場合、周期的な格子状のパターンは0次光から
図22の白丸印までの距離0.55mにおいて確認された。すなわち、直径1.1mの周期的な格子状のパターンが形成された。参考例と実施例1とでは回折格子のピッチ長dおよび波長λは同じであっても、実施例1では参考例に比べて広い照射範囲で周期的なパターンを形成することができた。
【0076】
(実施例2)
図23は、実施例2の写真を示す図である。実施例2でも、
図21における外枠部ORをなくすように回折格子が設計された。実施例2でも、式(1)について、d=1.6μm、λ=0.63μmとして回折格子を設計した。実施例2では、0次光により形成されるパターンと、1次光により形成されるパターンと、2次光により形成されるパターンと、3次光により形成されるパターンとが一体となって、周期的なパターンを形成した(
図23)。周期的なパターンは、複数のドット状のパターンにより形成されている。実施例2において、0次光は、m=0、回折角度θ
0=0で照射される。
図23では、0次光から左側の白破線までに1次光によるパターンが形成されている。また左側の白破線から右側の白破線までに2次光によるパターンが形成されている。さらに右側の白破線の右側に3次光によるパターンが形成されている。実施例2において、回折光学素子104からスクリーンまでの距離が1mである場合、周期的なパターンは0次光から
図23の白丸印までの距離0.85mにおいて確認された。すなわち、直径1.7mの周期的な格子状のパターンが形成された。参考例と実施例2とでは回折格子のピッチ長dおよび波長λは同じであっても、実施例2では参考例に比べて広い照射範囲で周期的なパターンを形成することができた。
【0077】
以上の実施例1および2の結果から、第1の実施形態における回折光学素子104では、周期的なパターンを広範囲に形成することができることが確認された。第1の実施形態における回折光学素子104では、以上のように、周期的なパターンを広範囲に形成することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.回折格子を備え、
前記回折格子は、単一波長の光が前記回折格子によって回折されて一曲面に照射された場合に当該光の像が、前記一曲面で第1パターンと、第2パターンと、を形成するように設計され、前記一曲面は、前記回折格子で回折の生じた箇所を中心とする球面であり、
前記第1パターンは、前記回折格子におけるm次光(ただし、mは0以外の正の整数である。)で形成された第1小パターンを含み、前記第1小パターンは前記球面の所定方向に沿って周期的に配列され、
前記第2パターンは、前記回折格子における(m+1)次光で形成された第2小パターンを含み、前記第2小パターンは前記球面の前記所定方向に沿って周期的に配列され、
前記第1パターンと前記第2パターンとは、前記第1小パターンと前記第2小パターンとを含む周期的な第3パターンが形成されるように前記球面の前記所定方向に沿って配列されている回折光学素子。
2.1.に記載の回折光学素子であって、
m=1である回折光学素子。
3.1.または2.に記載の回折光学素子であって、
前記第1小パターンおよび前記第2小パターンは、1次元のパターンである回折光学素子。
4.1.または2.に記載の回折光学素子であって、
前記第1小パターンおよび前記第2小パターンは、2次元のパターンである回折光学素子。
5.4.に記載の回折光学素子であって、
前記第1小パターンのうち前記第2小パターンに隣接する部分と前記第2小パターンのうち前記第1小パターンに隣接する部分とが一体となって、前記第3パターンにおける周期的なパターンの1周期のパターンを形成している回折光学素子。
6.1.に記載の回折光学素子であって、
前記第1パターンは、格子状に形成されており、
前記第2パターンは、格子状に形成されており、
前記第3パターンは、格子状に形成されている回折光学素子。
7.2.に記載の回折光学素子であって、
前記回折格子における0次光で形成された第0パターンと前記第1パターンと前記第2パターンとは、前記第0パターンと前記第1小パターンと前記第2小パターンとを含む周期的な第4パターンが形成されるように前記球面の前記所定方向に沿って配列されている回折光学素子。
8.1.から7.までのいずれかに記載の回折光学素子であって、
前記第1パターンおよび前記第2パターンが一平面に照射された場合、
前記第1小パターンは前記一平面の所定方向に沿って略周期的に配列され、
前記第2小パターンは前記一平面の前記所定方向に沿って略周期的に配列され、
前記第3パターンでは、前記第1小パターンと前記第2小パターンとが、前記一平面の前記所定方向に沿って配列された略周期的なパターンを形成している回折光学素子。
9.回折格子を設計する工程と、
回折格子を設計する前記工程における回折格子の設計に基づいて、基板に回折格子を形成する工程と、
を含み、
回折格子を設計する前記工程では、前記回折格子は、単一波長の光が前記回折格子によって回折されて一曲面に照射された場合に当該光の像が、前記一曲面で第1パターンと、第2パターンと、を形成するように設計され、前記一曲面は、前記回折格子で回折の生じた箇所を中心とする球面であり、
前記第1パターンは、前記回折格子におけるm次光(ただし、mは0以外の正の整数である。)で形成された第1小パターンを含み、前記第1小パターンは前記球面の所定方向に沿って周期的に配列され、
前記第2パターンは、前記回折格子における(m+1)次光で形成された第2小パターンを含み、前記第2小パターンは前記球面の前記所定方向に沿って周期的に配列され、
前記第1パターンと前記第2パターンとは、前記第1小パターンと前記第2小パターンとを含む周期的な第3パターンが形成されるように前記球面の前記所定方向に沿って配列されている回折光学素子の製造方法。
10.第1パターンを形成する回折格子を設計する設計部と、
前記設計部によって設計された前記回折格子により第2パターンが形成される位置を、検証する検証部と、
前記第1パターンと前記第2パターンとが形成される位置が調整されるように、前記設計部により設計された前記回折格子の設計を補正する補正部と、
を備え、
前記第1パターンおよび前記第2パターンは、前記回折格子によって回折されて一曲面に照射された単一波長の光の像により形成され、前記一曲面は、前記回折格子で回折の生じた箇所を中心とする球面であり、
前記第1パターンは、前記回折格子におけるm次光で形成された第1小パターンを含み、前記第1小パターンは前記球面の所定方向に沿って周期的に配列され、
前記第2パターンは、前記回折格子における(m+1)次光で形成された第2小パターンを含み、前記第2小パターンは前記球面の前記所定方向に沿って周期的に配列され、
前記補正部は、前記第1小パターンと前記第2小パターンとを含む周期的な第3パターンが形成されるように、前記第1パターンと前記第2パターンとを、前記球面の前記所定方向に沿って配列させて前記回折格子の設計を補正する回折光学素子の設計装置。
11.1.から8.までのいずれかに記載の回折光学素子により構成された回折部と、
前記回折光学素子に単一波長の光を照射する照射部と、
前記回折光学素子の前記回折格子によって回折された光のパターンが照射される投影部と、
前記回折光学素子から前記投影部に照射された光のパターンを時間的に連続して撮像する撮像部と、
前記撮像部が撮像した前記光のパターンを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された一の時間における光のパターンが、前記記憶部に記憶された他の時間における光のパターンと異なるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記回折光学素子の前記回折格子によって回折された光のパターンが照射された物体の存在、形状または位置を検出する検出部と、
を備える物体の検出装置。