(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174356
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】建具及び建具の組立方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/26 20060101AFI20170724BHJP
E06B 3/32 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
E06B3/26
E06B3/32 Z
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-80321(P2013-80321)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-202000(P2014-202000A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 栄治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 朋世
(72)【発明者】
【氏名】川口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直人
(72)【発明者】
【氏名】神 博文
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−036750(JP,A)
【文献】
特開2000−120348(JP,A)
【文献】
特開平11−081805(JP,A)
【文献】
特開2006−132288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/04 − 3/46,
3/50 − 3/52
E06B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方框材を四周組み合わせることによって構成した外方框と、
矩形状を成す面材の四周に内方框材を設けて構成したユニット障子と、
内枠材を四周組み合わせることによって構成し、内周部に前記ユニット障子を支持するとともに、外周部に前記外方框が連結されるユニット枠と
を備えて障子を構成し、前記外方框を介して前記障子を開口枠に支持した建具において、
前記外方框の外方框材及び前記ユニット枠の内枠材の互いに対向する見込み面のいずれか一方には、係合用開口を形成し、
前記外方框の外方框材と前記外方框材に対応する前記内枠材との間には、前記外方框材及び前記内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドすることにより着脱可能に係合し、互いに離反する方向の移動を阻止する係合手段を構成したことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記外方框の外方框材に前記係合用開口を形成し、
前記係合手段は、
前記外方框材において前記係合用開口の両側縁部に互いに対向する方向に向けて突出した外方係合片と、
前記内枠材において前記外方框材に対向する見込み面に、前記見込み面との間に前記外方係合片を挟持することのできる隙間を確保して設けられ、かつ前記係合用開口よりも大きな幅を有した内方係合片と
を備えて構成したものであり、前記外方框材及び前記内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドさせ、前記内方係合片と前記内枠材の見込み面との間に前記外方框材の外方係合片を配置することにより、互いに離反する方向の移動を阻止することを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記外方框の外方框材に前記係合用開口を形成し、
前記外方框材の内部には、少なくとも前記係合用開口に対向する面が開口した補強材を配設したことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項4】
前記内枠材において前記外方框材の係合用開口に対向する部位には、前記係合用開口を介して前記外方框材の内部に挿入され、前記外方框材との間に収容部を構成する突出ヒレ部を設け、
前記補強材において前記内枠材に向けて突出する縁部を前記収容部に配置したことを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
前記内枠材のそれぞれは前記外方框材の外表面に重なる取付ヒレ部を有し、かつそれぞれの取付ヒレ部と前記外方框との間に一連のシール材を介在させた状態で前記外方框材に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項6】
前記ユニット枠には、各外方框材の内周側に位置する見付け面を覆うようにカバー部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項7】
前記係合手段は、前記外方框の上方及び左右に位置する三方の外方框材と、前記ユニット枠の対応する内枠材との間に設けたことを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の建具を組み立てる方法であって、
前記ユニット枠に前記ユニット障子を支持させることによって内方障子ユニットを構成する工程と、
予め前記外方框材の内部に前記補強材を配設した状態で、前記係合手段を介して前記外方框材を前記ユニット枠の対応する内枠材に係合させることにより前記外方框を構成する工程と
を含むことを特徴とする建具の組立方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか一つに記載の建具を組み立てる方法であって、
前記ユニット枠に前記ユニット障子を支持させることによって内方障子ユニットを構成する工程と、
前記内方障子ユニットの上方に位置する内枠材に対して対応する外方框材を係合させた後、前記内方障子ユニットの左右に位置する内枠材に対してそれぞれ外方框材を係合させ、前記内方障子ユニットの下端から突出する一対の外方框材の間に下方の外方框材を挿入して前記外方框を構成することを特徴とする建具の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具及び建具の組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具の障子には、通風ドアのように、外方框材を四周組み合わせることによって構成した外方框の内部にユニット障子を備えたものがある。ユニット障子は、矩形状を成す面材の四周に内方框材を設けて構成されており、ユニット枠を介して外方框に取り付けられている。この種の建具では、開口枠に対して障子を閉めた状態であっても、ユニット枠に対してユニット障子を移動させることにより、障子に通風機能を追加できるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−81805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように、外方框の内部にユニット枠及びユニット障子を備えた建具の障子にあっては、部品点数がきわめて多くなり、組立作業が煩雑になる。特に、昨今においては、防火性能を向上させる要求があり、外方框材の内部に補強材を配設する場合があるため、組立作業が一層煩雑化する恐れがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、ユニット障子が設けられた障子を容易に組み立てることのできる建具及び建具の組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、外方框材を四周組み合わせることによって構成した外方框と、矩形状を成す面材の四周に内方框材を設けて構成したユニット障子と、内枠材を四周組み合わせることによって構成し、内周部に前記ユニット障子を支持するとともに、外周部に前記外方框が連結されるユニット枠とを備えて障子を構成し、前記外方框を介して前記障子を開口枠に支持した建具において、前記外方框の外方框材及び前記ユニット枠の内枠材の互いに対向する見込み面のいずれか一方には、係合用開口を形成し、前記外方框の外方框材と前記外方框材に対応する前記内枠材との間には、前記外方框材及び前記内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドすることにより着脱可能に係合し、互いに離反する方向の移動を阻止する係合手段を構成したことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、外方框材及び内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドすることで係合手段が係合し、外方框材及び内枠材の互いに離反する方向の移動を阻止することができる。
【0008】
また、本発明は、上述した建具において、前記外方框の外方框材に前記係合用開口を形成し、前記係合手段は、前記外方框材において前記係合用開口の両側縁部に互いに対向する方向に向けて突出した外方係合片と、前記内枠材において前記外方框材に対向する見込み面に、前記見込み面との間に前記外方係合片を挟持することのできる隙間を確保して設けられ、かつ前記係合用開口よりも大きな幅を有した内方係合片とを備えて構成したものであり、前記外方框材及び前記内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドさせ、前記内方係合片と前記内枠材の見込み面との間に前記外方框材の外方係合片を配置することにより、互いに離反する方向の移動を阻止することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、内枠材の見込み面と、これに設けた内方係合片との間に外方框材の外方係合片を配置することによって外方框材及び内枠材の互いに離反する方向の移動が阻止される。
【0010】
また、本発明は、上述した建具において、前記外方框の外方框材に前記係合用開口を形成し、前記外方框材の内部には、少なくとも前記係合用開口に対向する面が開口した補強材を配設したことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、係合手段による外方框材と内枠材との係合状態に影響を与えることなく外方框材の内部に補強材を配設することができ、防火性能の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明は、上述した建具において、前記内枠材において前記外方框材の係合用開口に対向する部位には、前記係合用開口を介して前記外方框材の内部に挿入され、前記外方框材との間に収容部を構成する突出ヒレ部を設け、前記補強材において前記内枠材に向けて突出する縁部を前記収容部に配置したことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、補強材の縁部の間に内枠材の突出ヒレ部が配置されることになり、補強材に突出ヒレ部が当接することで外方框に対するユニット枠の移動が阻止される。
【0014】
また、本発明は、上述した建具において、前記内枠材のそれぞれは前記外方框材の外表面に重なる取付ヒレ部を有し、かつそれぞれの取付ヒレ部と前記外方框との間に一連のシール材を介在させた状態で前記外方框材に取り付けたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、外方框とユニット枠との間に介在させたシール材によってこれら外方框及びユニット枠の間の水密性や気密性を確保することができる。
【0016】
また、本発明は、上述した建具において、前記ユニット枠には、各外方框材の内周側に位置する見付け面を覆うようにカバー部を設けたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、外方框の内周側に位置する見付け面がカバー部材によって覆われるため、外方框に対する防火性能を向上させることができる。
【0018】
また、本発明は、上述した建具において、前記係合手段は、前記外方框の上方及び左右に位置する三方の外方框材と、前記ユニット枠の対応する内枠材との間に設けたことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、ユニット枠の三方に外方框材を係合させた状態で外方框の下方に位置する外方框材を組み立てることができる。
【0020】
また、本発明は、上述した建具を組み立てる方法であって、前記ユニット枠に前記ユニット障子を支持させることに
よって内方障子ユニットを構成する工程と、予め前記外方框材の内部に前記補強材を配設した状態で、前記係合手段を介して前記外方框材を前記ユニット枠の対応する内枠材に係合させることにより前記外方框を構成する工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、外方框材の組み立てと同時に補強材の組み立てを行うことができる。
【0022】
また、本発明は、上述した建具を組み立てる方法であって、前記ユニット枠に前記ユニット障子を支持させることに
よって内方障子ユニットを構成する工程と、前記内方障子ユニットの上方に位置する内枠材に対して対応する外方框材を係合させた後、前記内方障子ユニットの左右に位置する内枠材に対してそれぞれ外方框材を係合させ、前記内方障子ユニットの下端から突出する一対の外方框材の間に下方の外方框材を挿入して前記外方框を構成することを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、ユニット枠の三方に外方框材を係合させた状態で外方框の下方に位置する外方框材を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、外方框材及び内枠材を互いに長手方向に沿って相対的にスライドすることで係合手段が係合し、外方框材及び内枠材の互いに離反する方向の移動を阻止することができる。このため、外方框材と内枠材との間をネジ部材によって連結させる場合に両者を押えておく必要がない等、組立作業を容易化することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である建具を室外側から見た図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した建具の要部を示す拡大縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した建具の要部を示す拡大横断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した建具の要部を示す拡大縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した建具において左右の外方框材と左右の内枠材との間に設けた係合手段を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した建具の組み立て手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具及び建具の組立方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
図1〜
図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、勝手口用のドアとして用いられるもので、外方框10及び内方障子ユニット20を備えて障子1が構成してある。
【0028】
外方框10は、障子1の最外周に配置されるもので、左右一対の外方框材11,12の上下両端部間にそれぞれ上下一対の外方框材13,14を配置することによって矩形状に構成してある。
図2及び
図3に示すように、外方框材11,12,13,14は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって成形した金属部分11M,12M,13M,14Mと、合成樹脂材によって成形した樹脂部分11P,12P,13P,14Pとを組み合わせて成る複合部材であり、外方框10の室内側に位置する見付け面がそれぞれ樹脂部分11P,12P,13P,14Pによって覆われるように構成してある。
図2及び
図3からも明らかなように、外方框材11,12,13,14の金属部分11M,12M,13M,14Mは、樹脂部分11P,12P,13P,14Pよりも大きな見込み寸法を有するように成形してあり、個々の内部に中空部11a,12a,13a,14aを有している。中空部11a,12a,13a,14aは、外方框材11,12,13,14の両端にのみ開口する空間である。それぞれの中空部11a,12a,13a,14aには、ほぼ全長に渡る部位にメイン補強用プレート31,32,33,34が配設してある。メイン補強用プレート31,32,33,34は、外方框材11,12,13,14の金属部分11M,12M,13M,14Mを構成するアルミニウムやアルミニウム合金よりも融点の高い金属、例えばステンレスや鋼材によって成形したもので、室内側に位置する部分を除く外方框材11,12,13,14の三方の内面を覆うように配設してある。
【0029】
また、外方框材11,12,13,14には、内周側の見込み面に係合用開口11b,12b,13b,14b及び一対の外方係合片11c,12c,13c,14cが設けてある。係合用開口11b,12b,13b,14bは、外方框材11,12,13,14の金属部分11M,12M,13M,14M及び樹脂部分11P,12P,13P,14Pのそれぞれから内周側に向けて係合用ヒレ部11d,12d,13d,14dを突出することによって互いの間に構成される空間である。外方係合片11c,12c,13c,14cは、係合用ヒレ部11d,12d,13d,14dの突出端部から互いに対向する方向に向けて突出した部分である。
【0030】
外方框材11,12,13,14の係合用開口11b,12b,13b,14bには、個々の内部にユニット補強用プレート(補強材)41,42,43,44が配設してある。ユニット補強用プレート41,42,43,44は、メイン補強用プレート31,32,33,34と同様、外方框材11,12,13,14の金属部分11M,12M,13M,14Mを構成するアルミニウムやアルミニウム合金よりも融点の高いステンレスや鋼材によって成形したものである。左右の外方框材11,12及び下方の外方框材14に配設したユニット補強用プレート41,42,44は、係合用開口11b,12b,14bに対向する部分を除く外方框材11,12,14の三方の内面を覆うように配設してある。上方の外方框材13に配設したユニット補強用プレート43は、係合用開口13bに対向する部分及び室外側に位置する部分を除く外方框材13の二方の内面を覆うように配設してある。それぞれのユニット補強用プレート41,42,43,44は、外方框材11,12,13,14を介してメイン補強用プレート31,32,33,34に固定ネジ部材45を螺合することによりメイン補強用プレート31,32,33,34に連結してある。
【0031】
図4〜
図6の拡大図に示すように、ユニット補強用プレート41,42,43,44は、係合用開口11b,12b,13b,14bを塞ぐことがないように、内周側に向けて突出した縁部41a,42a,43a,44aの端面がいずれも外方係合片11c,12c,13c,14cに対向するように設けてある。
図4及び
図5に示すように、左右の外方框材11,12及び下方の外方框材14に配設したユニット補強用プレート41,42,44については、それぞれ両側縁部41a,42a,44aの端面が外方係合片11c,12c,14cに近接するように配設してある。これに対して上方の外方框材13に配設したユニット補強用プレート43については、
図6に示すように、内周側に突出した縁部43aの端面と外方係合片13cとの間に隙間を確保した状態で外方框材13に取り付けてある。また、
図4に示すように、下方の外方框材14に設けた外方係合片14cは、個々の突出端面の間の距離がユニット補強用プレート44の開口寸法とほぼ同じとなるように形成してある。これに対して、
図5に示すように、左右の外方框材11,12に設けた外方係合片11c,12cは、個々の突出端面がユニット補強用プレート41,42の開口端面よりも内方に位置するように形成してある。
【0032】
内方障子ユニット20は、
図1〜
図3に示すように、外方框10の内部に配置されるもので、ユニット枠210と、ユニット枠210の内部に配設したユニット障子220とを備えている。ユニット障子220は、矩形状を成す面材225の四周に内方框材221,222,223,224を設けて構成したものである。本実施の形態では、ユニット枠210の室外側に上下動可能に配設した外ユニット障子220と、ユニット枠210の室内側に上下動可能に配設した内ユニット障子220とを備えた、いわゆる上げ下げ窓と称される内方障子ユニット20を例示している。また、本実施の形態では、ユニット障子を構成する内方框材221,222,223,224の一部に合成樹脂製の枠カバー226が設けてある。具体的には、内ユニット障子220の上方に位置する内方框材223に対しては、室内側に位置する見付け面と上方側の見込み面にそれぞれ枠カバー226が設けてある。外ユニット障子220の左右に位置する内方框材221,222に対しては、それぞれ室内側に位置する見付け面に枠カバー226が設けてある。
【0033】
外ユニット障子220及び内ユニット障子220を支持するユニット枠210は、左右一対の内枠材211,212及び上下一対の内枠材213,214によって矩形状に構成したもので、個々の内枠材211,212,213,214の外周部を外方框材11,12,13,14の内周部に連結することによって外方框10に取り付けてある。内枠材211,212,213,214は、外方框材11,12,13,14よりも大きな見込み寸法を有しており、外方框材11,12,13,14の室内側に位置する見付け面及び室外側に位置する見付け面からそれぞれ突出した状態で外方框材11,12,13,14に連結してある。本実施の形態で例示する内枠材211,212,213,214は、上述した外方框材11,12,13,14と同様、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属によって成形した金属部分211M,212M,213M,214Mと、合成樹脂材によって成形した樹脂部分211P,212P,213P,214Pとを組み合わせて成る複合部材であり、ユニット枠210の室内側に位置する見付け面がそれぞれ樹脂部分211P,212P,213P,214Pによって覆われるように構成してある。さらに、内枠材211,212,213,214の樹脂部分211P,212P,213P,214Pは、見付け面を超えて外周側及び内周側にそれぞれ突出しており、外方框材11,12,13,14の内周側に位置する室内側の見付け面を覆うとともに、ユニット障子220の室内側に位置する見付け面を覆っている。
【0034】
図5及び
図6に示すように、左右の内枠材211,212及び上方の内枠材213は、外周側に位置する見込み面に一対の内方係合片211a,212a,213aを備えており、内方係合片211a,212a,213aを外方框材11,12,13,14の外方係合片11c,12c,13c,14cに係合させることによって外方框材11,12,13,14に着脱可能に連結してある。内方係合片211a,212a,213aは、内枠材211,212,213,214の外周側に位置する見込み面との間に外方係合片11c,12c,13c,14cを挟持することができる間隙を確保して設けたもので、
図7に示すように、左右の内枠材211,212については係合ブラケット230を取り付けることによって構成してあり、
図6に示すように、上方の内枠材213については内枠材213に一体に構成してある。
【0035】
係合ブラケット230は、
図7に示すように、基準となるベース部231の両側縁部に一対の突条片232を有したもので、突条片232が左右となる姿勢でベース部231を介して内枠材211,212に取り付けてある。一対の突条片232は、外方框材11,12の係合用開口11b,12bに挿通することができる幅を持って突出した後、個々の突出端部が互いに離隔する方向に屈曲しており、これらの屈曲した部分が上述の内方係合片211a,212aを構成している。内方係合片211a,212aの突出端部間距離は、係合用開口11b,12bよりも大きな幅に形成してある。
図7に示すように、左右の外方框材11,12には、外方係合片11c,12cの一部に内方係合片211a,212aを挿通することができる挿通用切欠11e,12eが設けてある。従って、外方框材11,12の挿通用切欠11e,12eを介して、内枠材211,212の係合ブラケット230を挿通させ、その状態のまま互いに長手方向に沿って外方框材11,12及び内枠材211,212を相対的にスライドさせると、係合ブラケット230の内方係合片211a,212aと内枠材211,212の外周側に位置する見込み面との間に外方係合片11c,12cが配置されることになり、外方框材11,12及び内枠材211,212の互いに離反する方向の移動が阻止されることになる。上述したように、左右の外方框材11,12については、外方係合片11c,12cの突出端面がユニット補強用プレート41,42の両側縁部41a,42aよりも内方に位置するように形成してあるため、係合ブラケット230の内方係合片211a,212aがユニット補強用プレート41,42に干渉することはない。
【0036】
一方、上方の内枠材213には、
図6に示すように、外周側に位置する見込み面の全長に渡る部位に一対の突条片213bが一体に設けてある。突条片213bの突出端部は、互いに離反する方向に向けて屈曲しており、上方の内枠材213に内方係合片213aを構成している。一対の突条片213bは、外方框材13の係合用開口13bに挿通することができる幅に形成してある一方、一対の内方係合片213aは、係合用開口13bよりも大きな幅を有するように構成してある。この上方の内枠材213については、その端面に外方框材13の端面を対向させ、一対の突条片213bが係合用開口13bに挿入されるように互いに長手方向にスライドさせると、内枠材213の内方係合片213aと内枠材213の外周側に位置する見込み面との間に外方係合片13cが配置されることになり、外方框材13及び内枠材213の互いに離反する方向の移動が阻止されることになる。上方の外方框材13については、ユニット補強用プレート43の縁部43aと外方係合片13cとの間に隙間が確保してあるため、内方係合片213aがユニット補強用プレート43に干渉することはない。
【0037】
また、ユニット枠210を構成するそれぞれの内枠材211,212,213,214には、取付ヒレ部211c,212c,213c,214cが設けてあり、さらに左右の内枠材211,212及び下方の内枠材214には、それぞれ外周側に位置する見込み面に一対の突出ヒレ部211d,212d,214dが設けてある。取付ヒレ部211c,212c,213c,214cは、外方框材11,12,13,14の内周側に位置する室外側の見付け面に重ね合わされる部分であり、外方框材11,12,13,14の見付け面との間にシール材240を介在させた状態で外方框材11,12,13,14に取り付けてある。図には明示していないが、取付ヒレ部211c,212c,213c,214cと外方框材11,12,13,14との間に介在するシール材240は、外方框10の全周に渡って一連となるように連続したもので、圧縮された状態で配設してある。突出ヒレ部211d,212d,214dは、外方框材11,12,14の係合用開口11b,12b,14bを介して外方框材11,12,14の内部に挿入され、外方框材11,12,14との間にユニット補強用プレート41,42,44の2つの縁部41a,42a,44aを収容するための収容部211e,212e,214eを構成する部分である。
【0038】
尚、図中の符号300は、ユニット枠210を介して内方障子ユニット20に固定された格子枠である。この格子枠300は、内方障子ユニット20の室外側に位置する部分及び外方框材11,12,13,14の内周側に位置する室外側の見付け面を覆うように、内方障子ユニット20よりも大きな外形寸法を有するように構成してある。また、図中の符号400は、膨張黒鉛等の加熱発泡材である。
【0039】
図8は、上述した建具の障子1を組み立てる手順を示した概略図である。
図8の(a)に示すように、まず、内枠材211,212,213,214を四周組み立ててユニット枠210を構成し、
図8の(b)に示すように、ユニット枠210の内部に外ユニット障子220及び内ユニット障子220を支持させる。
【0040】
次いで、
図8の(c)に示すように、上方の内枠材213に対して外方框材13を長手方向にスライドさせることにより、内枠材213の内方係合片213aと内枠材213の外周側に位置する見込み面との間に外方係合片13cを配置させ、上方の内枠材213と上方の外方框材13とを互いに係合させる。
【0041】
この状態から、
図8の(d)に示すように、左右の内枠材211,212に対してそれぞれ外方框材11,12を長手方向にスライドさせることにより、係合ブラケット230の内方係合片211a,212aと内枠材211,212の外周側に位置する見込み面との間に外方係合片11c,12cを配置させ、左右の内枠材211,212と左右の外方框材11,12とを互いに係合させる。
【0042】
上記のようにしてユニット枠210の三方に外方框材11,12,13を係合させた状態においては、それぞれの内枠材211,212,213に対して外方框材11,12,13が離反する方向に移動することがない。従って、その後、
図8の(e)に示すように、ユニット枠210の下端から突出する左右の外方框材11,12の間に下方の外方框材14を挿入し、四周の外方框材11,12,13,14をネジ部材Bで連結する際にユニット枠210と外方框材11,12,13,14との間を押えておく必要がなく、組み立てる部品の数は多いものの、組立作業を容易に行うことができる。しかも、外方框材11,12,13,14の内部に予めユニット補強用プレート41,42,43を配設していた状態であっても、外方框材11,12,13と内枠材211,212,213とを相対的にスライドさせる際にユニット補強用プレート41,42,43が邪魔になることがない。このため、外方框材11,12,13,14を組み立てた時点でユニット補強用プレート41,42,43,44及びメイン補強用プレート31,32,33,34を内蔵した外方框10を構成することができ、障子1の組立作業を煩雑化することなく、防火性能に優れた建具を提供することが可能となる。
【0043】
特に、
図4及び
図5に示すように、下方の内枠材214及び左右の内枠材211,212については、ユニット補強用プレート41,42,44の縁部41a,42a,44aの間に内枠材211,212,214の突出ヒレ部211d,212d,214dが配置されることになり、ユニット補強用プレート41,42,44に突出ヒレ部211d,212d,214dが当接することで外方框10に対するユニット枠210の移動が阻止されるため、火災時等において高温に晒されたとしても外方框10から内方障子ユニット20が脱落する事態を防止することが可能となる。さらに、ユニット補強用プレート41,42,43,44を配設した外方框材11,12,13,14の内周側の見付け面がユニット枠210の取付ヒレ部211c,212c,213c,214cや樹脂部分211P,212P,213P,214Pによって覆われた状態となるため、防火性能を向上する上でさらに有利となる。
【0044】
上記のように組み立てられた障子1は、
図1に示すように、外方框10を介して開口枠2に開閉可能に支持され、勝手口のドアを構成する。
【0045】
尚、上述した実施の形態では、勝手口用のドアを例示しているが、その他の建具にももちろん適用することが可能である。また、内方障子ユニットとして上げ下げ窓を備えた建具を例示しているが、内方障子ユニットは必ずしも上げ下げ窓である必要はなく、複数のユニット障子を備えるものである必要もない。さらに、外方框10及びユニット枠210として金属と合成樹脂との複合部材から成るものを例示しているが、必ずしも複合部材から成るものである必要はなく、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属のみから成るものや合成樹脂材のみから成るものにも適用することは可能である。またさらに、左右一対の外方框材11,12の上下両端部間にそれぞれ上下一対の外方框材13,14を配置することによって外方框10が構成されるものを例示しているが、上下一対の外方框材13,14の両端部間にそれぞれ左右一対の外方框材11,12を配置することによって外方框10が構成されるものであっても良いし、外方框材11,12,13,14の端部をそれぞれ45°の傾斜面で接合することによって外方框10を構成するものであっても構わない。
【0046】
また、上述した実施の形態では、外方框10とユニット枠210の三方に係合手段を設けたものを例示しているが、係合手段は少なくとも外方框10とユニット枠210の一つにあれば良い。
【0047】
さらに、上述した実施の形態では、外方框10とユニット枠210との間に介在させたシール材240によってこれら外方框10及びユニット枠210の間の水密性や気密性を確保することができるが、必ずしも外方框10とユニット枠210との間にシール材240を配設する必要はなく、その他の箇所で水密性や気密性を確保するようにしても良い。
【0048】
またさらに、上述した実施の形態では、外方框材11,12,13,14の見込み面に係合用開口11b,12b,13b,14bを形成するとともに、係合用開口11b,12b,13b,14bの内部に補強材であるユニット補強用プレート41,42,43,44を配設するようにしているが、ユニット補強用プレート41,42,43,44は必ずしも設ける必要はなく、係合用開口をユニット枠210の内枠材211,212,213,214に形成しても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 障子、2 開口枠、10 外方框、11,12,13,14 外方框材、11b,12b,13b,14b 係合用開口、11c,12c,13c,14c 外方係合片、20 内方障子ユニット、41,42,43,44 ユニット補強用プレート、41a,42a,43a,44a ユニット補強用プレートの縁部、210 ユニット枠、211,212,213,214 内枠材、211a,212a,213a 内方係合片、211c,212c,213c,214c 取付ヒレ部、211d,212d,214d 突出ヒレ部、211e,212e,214e 収容部、220 ユニット障子、221,222,223,224 内方框材、230 係合ブラケット、240 シール材