【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
以下に示す実施例および比較例において炭素材料の製造に使用した装置および炭素源に含まれる成分の分析に使用した分析方法を以下に示す。
【0029】
〔炭素材料の製造に使用した装置〕
実施例および比較例における炭素材料の製造は、
図1に示す固定層流通式2段反応装置1を使用して行った。
図1は固定層流通式2段反応装置1の概略縦断面図である。固定層流通式2段反応装置1は、反応器2、ヒーター3およびヒーター4から形成されている。
【0030】
反応器2は、筒状の反応器であり、反応器頂部5、反応器本体部6および反応器底部7から形成されている。
反応器頂部5には、反応器本体部6に炭素源発生材料を供給するための炭素源発生材料投入口8、および反応器本体部6に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給口9が設けられている。
【0031】
反応器本体部6は内径2.2cm、高さ130.8cmである。ヒーター3およびヒーター4は、それぞれ反応器本体部6の上部および下部を取り巻くように設置されている。反応器本体部6において、ヒーター3が設置された部分が熱分解部10であり、ヒーター4が設置された部分が触媒部11である。反応器本体部6の熱分解部10および触媒部11にそれぞれガラスウール12およびガラスウール13が充填され、反応器本体部6における触媒部11より下の部分にガラスウール14が充填されている。反応器本体部6の触媒部11においては、ガラスウール13の上に触媒層15が設けられ、ガラスウール12の下に網状の支持板16が設けられている。
反応器底部7には、不活性ガスを排出するための不活性ガス排出口17が設けられている。
【0032】
〔炭素源に含まれる成分の分析に使用した分析方法〕
炭素源に含まれる成分の分析は熱分解ガスクログラフィー分析によった。
熱分解ガスクログラフィー分析の装置および条件は以下の通りである。
装置名:フロンティアラボ株式会社製ダブルショット・パイロライザーPY−2010Dを備えたアジレント・テクノロジー株式会社製ガスクロマトグラフAgilent 7890A GC
カラム:SPB-5(長さ30m、内径250μm、膜厚0.25μm)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
測定条件:
・GC オーブン 50℃〜300℃(昇温速度10℃/min)、300℃にて5min
スプリット比 50:1
ガス流量 0.6ml/min
注入口温度 300℃
・パイロライザー 650℃
inter face 300℃
サンプル量:0.1mg
【0033】
[実施例1]
酸化鉄を含有する鉱石としてリモナイト(インドネシア ソロアコ産)を使用し、これを乳鉢で粉砕して、平均粒径D50が0.75mmである粉末を得た。この粉体0.2gを固定層流通式2段反応装置1の反応器2内の触媒部11に充填し、触媒層15を形成した。不活性ガス供給口9より反応器2内にアルゴンガスをパージした。このときの反応器2内に酸素は検出されなかった。触媒部11をヒーター4により650℃まで昇温し、この温度で保持した。熱分解部10をヒーター3により650℃まで昇温し、この温度で保持した。
【0034】
5ml/minのアルゴン気流下、炭素源発生材料としてポリエチレン(プライムポリマー製、品番HI-ZET)2gを6分間かけて炭素源発生材料投入口8より熱分解部10に供給した。供給されたポリエチレンはガラスウール12上で熱分解され、エチレンおよびプロピレンを合計で14面積%、炭素数6の炭化水素を8面積%、炭素数7の炭化水素を4面積%、炭素数8の炭化水素を3面積%、炭素数9の炭化水素を3面積%、炭素数10の炭化水素を4面積%、炭素数11の炭化水素を4面積%、炭素数12〜31の炭化水素を3面積%含有する炭素源が生成していることを、熱分解ガスクロマトグラフィー分析により確認した。
【0035】
ポリエチレンを供給し終えた時から60分間経過した後、反応器2から触媒層15を取り出した。触媒層15に炭素材料が生成していることが確認された。炭素材料の収率(使用したポリエチレンに対する生成した炭素材料の質量比)は48%であった。得られた炭素材料のX線回折(XRD)スペクトルおよびラマンスペクトルをそれぞれ
図2および
図3に示す。XRDスペクトルより求めたLcは37Å、d002は3.415Åであった。また、ラマンスペクトルより求めた1350cm
-1のDバンドの半値幅は127cm
-1、1580cm
-1のGバンドの半値幅は91cm
-1、Dバンドのピーク高さ/Gバンドのピーク高さ(以下D/Gという)は1.0であった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から繊維状の炭素材料が生成していることが確認された。このSEM像を
図4に示す。また、元素分析(株式会社ジェイサイエンスラボ製 JM10)の結果、炭素材料における水素のモル分率/炭素のモル分率(以下H/Cという)は0.10であった。
【0036】
[実施例2]
炭素源発生材料としてポリエチレン(プライムポリマー製、品番HI-ZET)を6g用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。熱分解ガスクロマトグラフィー分析により、実施例1と同様の炭素源が生成していることを確認した。前記操作により、触媒層15に炭素材料が生成していることが確認された。炭素材料の収率(使用したポリエチレンに対する生成した炭素材料の質量比)は48%であった。得られた炭素材料のX線回折(XRD)スペクトルおよびラマンスペクトルをそれぞれ
図2および
図3に示す。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から繊維状の炭素材料が生成していることが確認された。このSEM像を
図5に示す。H/Cは0.13であった。
【0037】
[実施例3]
炭素源発生材料としてポリスチレン-ブタジエン共重合体(JSR株式会社製スチレンブタジエンゴム、品番TR2827)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。この操作において、ポリスチレン-ブタジエン共重合体の熱分解によりスチレンを47面積%、ブタジエンを面積30%、ブタジエンダイマーを8面積%含有する炭素源が生成していることを、熱分解ガスクロマトグラフィー分析により確認した。前記操作により、触媒層15に炭素材料が生成していることが確認された。炭素材料の収率(使用したポリスチレン-ブタジエン共重合体に対する生成した炭素材料の質量比)は18%であった。得られた炭素材料のX線回折(XRD)スペクトルおよびラマンスペクトルをそれぞれ
図2および
図3に示す。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から繊維状の炭素材料が生成していることが確認された。このSEM像を
図6に示す。H/Cは0.13であった。
【0038】
[実施例4]
炭素源発生材料として1,2-ポリブタジエン(JSR株式会社製1,2−ポリブタジエン樹脂、品番RB830)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。この操作において、1,2-ポリブタジエンの熱分解により炭素数3の炭化水素を17面積%、ブタジエンを38面積%、炭素数5の炭化水素を13面積%、ベンゼンを4面積%、トルエン以外の炭素数7の炭化水素を4面積%、トルエンを7面積%、ブタジエンダイマーを3面積%、キシレン、スチレンおよび炭素数9の炭化水素を合計で9面積%、ブタジエントライマーを2面積%、ブタジエンテトラマーを3面積%含有する炭素源が生成していることを、熱分解ガスクロマトグラフィー分析により確認した。前記操作により、触媒層15に炭素材料が生成していることが確認された。炭素材料の収率(使用した1,2-ポリブタジエンに対する生成した炭素材料の質量比)は25%であった。得られた炭素材料のX線回折(XRD)スペクトルおよびラマンスペクトルをそれぞれ
図2および
図3に示す。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から繊維状の炭素材料が生成していることが確認された。このSEM像を
図7に示す。XRDスペクトルより求めたLcは53Å、d002は3.385Åであった。また、ラマンスペクトルより求めた1350cm−1のDバンドの半値幅は159cm
-1、1580cm
-1のGバンドの半値幅は75cm
-1、D/Gは0.78であった。H/Cは0.14であった。
このように、炭素化の進行と繊維状の炭素材料が本発明により低温で得られることが分かった。
【0039】
[比較例1]
炭素源発生材料としてポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製 ポリメタクリル酸メチル、品番ARCYPET VH001)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。この操作において、メタクリル酸メチル98面積%、メタクリル酸メチルダイマー1面積%を含有する炭素源が生成しており、炭素数2以上の炭化水素は実質的に生成していないことを、熱分解ガスクロマトグラフィー分析により確認した。前記操作により、触媒層15に炭素が生成していることが確認された。炭素の収率(使用したポリメタクリル酸メチルに対する生成した炭素の質量比)は10%であった。得られた炭素のX線回折(XRD)スペクトルおよびラマンスペクトルをそれぞれ
図2および
図3に示す。XRDスペクトルにおいて黒鉛由来の回折ピークは確認できなかった。また、ラマンスペクトルより求めた1350cm
-1のDバンドの半値幅は260cm
-1、1580cm
-1のGバンドの半値幅は101cm
-1、D/Gは0.28であった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)観察から繊維状の炭素材料は生成していないことが確認された。
【0040】
このように炭素数2以上の炭化水素を含むガスを炭素源として用いないと、炭素化が進行しにくく繊維状の炭素材料も得られないことが分かった。