特許第6174383号(P6174383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6174383-活性エネルギー線架橋性樹脂組成物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174383
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線架橋性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20170724BHJP
   C08J 3/28 20060101ALI20170724BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08J3/24 ZCEQ
   C08J3/28
   C08F297/04
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-123311(P2013-123311)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240461(P2014-240461A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大石 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英次
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−122514(JP,A)
【文献】 特開2003−033968(JP,A)
【文献】 特開平11−158241(JP,A)
【文献】 特開2000−026698(JP,A)
【文献】 特開2004−162049(JP,A)
【文献】 特開2007−154119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00− 3/28;99/00
C08F 51/00− 53/02
C08K 3/00− 13/08
C08F 251/00−281/00
C08F 283/00−289/00
C08F 291/00−297/08
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)を満たす、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体からなる活性エネルギー線架橋性樹脂組を成形し、更に活性エネルギー線を照射した成形体
(A)樹脂組成物中の共役ジエンの質量比が21〜29%である樹脂組成物。
(B)樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率が80〜85%である樹脂組成物。
【請求項2】
トルエンに対する不溶物の割合(ゲル分率)が38質量%以上61質量%以下である、請求項に記載の成形体。
【請求項3】
活性エネルギー線が紫外線、電子線のうち少なくとも一方である、請求項またはに記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線照射に適した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂に活性エネルギー線を照射し、分子間架橋を行う技術は広く知られ、例えばポリエチレン架橋が実用的に実施されている。スチレン系樹脂も使用されるが、これらを活性エネルギー線で架橋するには添加剤を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平7−93180号公報
【特許文献2】特願2005−354600号公報
【特許文献3】特願2010−74615号公報
【特許文献4】特願平9−87369号公報
【特許文献5】特願平9−241333号公報
【特許文献6】特願2005−231542号公報
【特許文献7】特願2005−264182号公報
【特許文献8】特願2005−351159号公報
【特許文献9】特願2010−52238号公報
【特許文献10】特願2010−193675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は活性エネルギー線を照射した際、添加剤を使用せず、効率的に架橋させることが可能なスチレン系樹脂で構成された活性エネルギー線架橋性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下を要旨とするものである。
1.下記(A)、(B)を満たす、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体からなる活性エネルギー線架橋性樹脂組成物。
(A)樹脂組成物中の共役ジエンの質量比が21〜29%である樹脂組成物。
(B)樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率が80〜85%である樹脂組成
を成形し、更に活性エネルギー線を照射した成形体。
2.トルエンに対する不溶物の割合(ゲル分率)が38質量%以上61質量%以下である、に記載の成形体。
3.活性エネルギー線が紫外線、電子線のうち少なくとも一方である、またはに記載の成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、活性エネルギー線を照射した際、添加剤を使用せず、効率的に架橋させることができる活性エネルギー線架橋性樹脂組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に記載した耐溶剤性試験に関するものであり、試験片を治具に挿入した状態について、側面から図示した物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の活性エネルギー線架橋性樹脂組成物は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体からなり、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体は単独でも2種類以上の混合物でも良く、効果を妨げない範囲で、添加剤や他の樹脂を併用しても良い。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素のみからなるビニル芳香族炭化水素ブロック、共役ジエンのみからなる共役ジエンブロック、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるテーパードブロックとランダムブロックを任意に組み合わせて作製できる。
【0009】
テーパードブロックとはビニル芳香族炭化水素単量体と共役ジエン単量体を同時に添加し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの反応性比の違いを利用してビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを同時に重合する事で得られる構造である。テーパードブロック部分の組成比率はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの仕込み比率で調整することができる。
【0010】
ランダムブロックとはビニル芳香族炭化水素および共役ジエンを一定流量で添加し、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンをランダムに重合する事で得られる構造である。ランダムブロック部分のランダム化状態はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの分添速度、温度およびランダム化剤の濃度で調整することができる。
【0011】
次に、本発明のブロック共重合体の製造について説明する。ブロック共重合体は、有機溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤としてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーを重合することにより製造できる。有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいは、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素などが使用できる。ブロック共重合体の溶解性の点で、シクロヘキサンが好ましい。
【0012】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物等が使用できる。
【0013】
本発明で使用されるブロック共重合体の製造に用いられるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。好ましくは、スチレンである。
【0014】
本発明で使用されるブロック共重合体の製造に用いられる共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。好ましくは、1,3−ブタジエンである。
【0015】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素および共役ジエンは、前記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、前記の有機リチウム化合物を重合開始剤とするリビングアニオン重合において、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、ほぼ全量が重合体に転化する。
【0016】
本発明におけるブロック共重合体の分子量は、モノマーの全添加量に対する重合開始剤の添加量により制御できる。
【0017】
ビニル芳香族炭化水素のブロック率は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを重合し、ブロック共重合体を作製する際のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの供給速度やランダム化剤の添加量により制御できる。
【0018】
ランダム化剤は反応中でルイス塩基として作用する化合物であり、アミン類やエーテル類、チオエーテル類、およびホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、その他にカリウムまたはナトリウムのアルコキシドなどが使用可能である。アミン類としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミンや環状第三級アミンなどが挙げられる。エーテル類としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。その他にトリフェニルフォスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウムまたはナトリウム、カリウム、ナトリウム等のブトキシドなどを挙げることができる。好ましくはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0019】
ランダム化剤は1種、または複数の種類を使用することができ、その添加濃度としては、原料とするモノマー100質量部あたり合計0.001〜10質量部とすることが適当である。添加時期は重合反応の開始前でも良いし、共重合鎖の重合前でも良い。また必要に応じ追加添加することもできる。
【0020】
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤を活性末端が不活性化するのに充分な量を添加することで不活性化できる。得られたブロック共重合体の有機溶媒溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0021】
ブロック共重合体は、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。添加剤としては、各種安定剤、加工助剤、耐光性向上剤、軟化剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油、フィラー、顔料、難燃剤、滑剤等が挙げられる。
【0022】
その混合方法は特に規定はないが、例えばヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等でドライブレンドしてもよく、更に押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、各重合体の製造時、重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で、添加してもよい。この際、添加剤も同時に混合しても良い。
【0023】
本発明を構成する活性エネルギー線架橋性樹脂組成物の分子量は40,000〜500,000が好ましく、より好ましくは60,000〜300,000である。40,000未満ではブロック共重合体の熱安定性が低下する場合があり、500,000を超えると成形加工性が低下する場合がある。
【0024】
活性エネルギー線架橋性樹脂組成物中の共役ジエンの質量比は21〜29%である。共役ジエンの質量比が21%未満では活性エネルギー線照射による架橋が進行せず、29%を超えるとシート作製時に欠点・ブツが多くなり、外観不良となる場合がある。
【0025】
本発明の活性エネルギー線架橋性樹脂組成物中のビニル芳香族炭化水素のブロック率は80〜85%である。ブロック率が80%未満および85%を超えると活性エネルギー線照射による架橋が進行しない。
【0026】
なお樹脂組成物のブロック率は次式により求めた。
ブロック率(%)=(W/W0)×100
ここで、Wはブロック状ビニル芳香族炭化水素量、即ちビニル芳香族炭化水素が連続して5個以上結合した状態のビニル芳香族炭化水素量、W0は全ビニル芳香族炭化水素量を示す。W、W0は核磁気共鳴法(NMR法)により測定する。
【0027】
本発明の活性エネルギー線架橋性樹脂組成物を、押出成形、射出成形、真空成形、圧縮成形、ブロー成形、インフレーション成形、発泡成形、熱板成形など、既存の成形方法により成形する事で、ペレット、シート、フィルム、延伸シート、延伸フィルム、ボトル、容器などの各種成形体が得られる。更に、こうした成形体に活性エネルギー線を照射し、耐溶剤性に優れた成形体とする事ができる。また活性エネルギー線を照射した成形体を更に成形し、異なる成形体を得ることも可能である。
【0028】
活性エネルギー線としては、紫外線(UV)、X線、電子線(EB)、粒子線およびこれらの組み合わせが挙げられる。これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができるが、市販の装置として比較的容易に入手し、使用できる紫外線(UV)、電子線(EB)が好ましい。紫外線(UV)の場合、例えば加圧あるいは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯およびLED等が挙げられる。電子線(EB)の場合、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型および共振変圧器型の装置等が挙げられ、加速電圧は100〜5,000kV、照射線量は1〜300kGy(0.1〜30Mrad)の範囲が好ましい。
【0029】
トルエンに対する不溶物の割合(ゲル分率)は38%以上が好ましく、50%以上であればより好ましい。38%未満では耐ヤシ油性が問題となる場合があり、50%未満では耐トルエン性が問題となる場合がある。ゲル分率は高ければ高いほど耐溶剤性が向上するが、ゲル分が62%以上の場合、シート作製時に欠点・ブツが多くなり、外観不良となる場合があるため、61%以下が好ましい。
【0030】
トルエンに対する不溶物の割合(ゲル分率)は、下記に示す式で計算した。
ゲル分率(質量%)=(トルエン不溶分/試験サンプル量)×100
【実施例】
【0031】
以下に実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない
【0032】
<分子量、分散度の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いた。本発明において特に断りが無い場合、分子量はピークトップ分子量Mp、分散度は重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnとする。
装置名:東ソー社製「HLC−8220GPC」
使用カラム:昭和電工社製「ShodexGPCKF−404」を直列に4本接続
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率法
移動相:テトラヒドロフラン
サンプル濃度:2質量%
検量線:VARIAN社製標準ポリスチレン(ピークトップ分子量Mp=2,560,0000、841,700、280,500、143,400、63,350、31,420、9,920、2,930)を用いて検量線を作成した。
【0033】
<樹脂組成物の共役ジエン質量比>
重合例で使用した全モノマー量に対する1,3−ブタジエン量の割合および配合比から、樹脂組成物の共役ジエン質量比をそれぞれ算出した。参考例1、2は分析値を使用した。核磁気共鳴(NMR)を用いてH−NMRを測定し、ポリスチレンの芳香環上の5つのプロトンとして帰属される6.2〜7.6ppmのピーク強度の積分値から重クロロホルムのピーク強度の積分値を除算した値と、ブタジエンの1,2−付加により生じるビニル基上の2つのプロトンとして帰属される4.1〜5.1ppmのピーク強度の積分値およびブタジエンの1,2−付加により生じるビニル基上の1つのプロトンと1,4−付加により生じる二重結合上の2つのプロトンとして帰属される5.1〜5.8ppmのピーク強度の積分値を用い、スチレン、ブタジエンのモル比を求め、スチレン、ブタジエンの分子量から質量比に換算した。求めたブタジエンの質量比を共役ジエン質量比の分析値として使用した。
装置名:ブルカー・バイオスピン製AVANCE−300
測定核種:
共鳴周波数:300MHz(H)
測定溶媒:CDCl
【0034】
<樹脂組成物のブロック率>
核磁気共鳴(NMR)を用いてH−NMRを測定し、ポリスチレンの芳香環上のプロトン5つの内、オルト位の2つのプロトンとして帰属される6.2〜6.8ppmのピーク強度積分値から、プロトン5つに換算した値をブロック状スチレン量(ブロック状ビニル芳香族炭化水素量)Wとした。一方、パラ位とメタ位に付加した3つのプロトンとして帰属される6.8〜7.6ppmのピーク強度の積分値を含む、6.2〜7.6ppmのピーク強度の積分値から重クロロホルムのピーク強度の積分値を除算した値を全スチレン量(全ビニル芳香族炭化水素量)W0とした。求めたW、W0を下記定義式に代入し、ブロック率を算出した。なお、ブロック状スチレン量(ブロック状ビニル芳香族炭化水素量)は、5個以上のモノマー単位からなる連鎖とする。
ブロック率(%)=(W/W0)×100
装置名:ブルカー・バイオスピン製AVANCE−300
測定核種:1H
共鳴周波数:300MHz(1H)
測定溶媒:CDCl3
【0035】
<重合例>
・重合例1
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1520mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン68.0kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は57℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン24.0kgを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は53℃まで上昇した。
(5)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン6.0kgとスチレン102.0kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は105℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、重合例1のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は159,000、Mw/Mnは1.010であった。
【0036】
・重合例2
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液4230mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン44.0kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は45℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン90.0kgとスチレン66.0kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は130℃まで上昇した。
(5)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(6)この重合液を脱揮して、重合例2のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は64,000、Mw/Mnは1.025であった。
【0037】
・重合例3
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2050mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン15.6kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は51℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、1,3−ブタジエン48.0kgとスチレン65.2kgを同時に添加した。内温は104℃まで上昇した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、内温を70℃まで下げ、純水を14.0g加え、一部の重合活性末端を失活させた。
(6)反応系の内温を60℃に下げ、スチレン71.2kgを添加し、重合を完結させた。内温は87℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体2種類を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例3のブロック共重合体樹脂組成物を得た。ピークトップ分子量(Mp)および面積比は180,000/82,000=59.0%/41.0%、Mw/Mnは1.288であった。
【0038】
・重合例4
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1120mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量167.6kgのスチレン、および総量24.4kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ83.8kg/h、12.2kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、4.0kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。内温は85℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、重合例4のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は249,000、Mw/Mnは1.118であった。
【0039】
・重合例5
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1750mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量119.0kgのスチレン、および総量11.8kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ100.8kg/h、10.0kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、36.4kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は97℃まで上昇した。
(6)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、28.8kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。内温は83℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例5のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は125,000、Mw/Mnは1.021であった。
【0040】
・重合例6
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1920mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン50.0kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は55℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量45.0kgのスチレン、及び総量5.0kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ90.0kg/h、10.0kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、66.0kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は75℃まで上昇した。
(6)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に下げ、34.0kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。内温は85℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例6のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は150,000、Mw/Mnは1.015であった。
【0041】
・重合例7
(1)反応容器中にシクロヘキサン490.0kg、THF73.5gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1650mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン35.7kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は58℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン8.9kgとスチレン69.3kgを同時に添加した。内温は104℃まで上昇した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、内温を50℃まで下げ、純水を5.5g加えた。
(6)反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン26.8kgとスチレン69.3kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は107℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例7のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)および面積比は199,000/73,000=74.6%/25.4%、Mw/Mnは1.349であった。
【0042】
・重合例8
(1)反応容器中にシクロヘキサン490.0kg、THF73.5gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液950mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン105.0kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は73℃まで上昇した。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、n−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1160mLを加え、40℃に保った。
(5)スチレン23.1kgを加え、スチレンをアニオン重合させた。内温は52℃まで上昇した。
(6)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン33.6kgとスチレン48.3kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は100℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、重合例8のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)および面積比は168,000/65,000=71.3%/28.7%、Mw/Mnは1.227であった。
【0043】
・重合例9
(1)反応容器中にシクロヘキサン518.0kg、THF77.7gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2200mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン18.2kgを加え、内温を65℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、5.5kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。
(5)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を35℃に下げ、1,3−ブタジエン56.4kgとスチレン101.9kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は120℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、重合例9のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は108,000、Mw/Mnは1.033であった。
【0044】
・重合例10
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1200mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン10.0kgを加え、内温を65℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、4.0kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。
(5)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を40℃に下げ、1,3−ブタジエン32.0kgとスチレン57.8kgを同時に添加した。内温は107℃まで上昇した。
(6)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、スチレン96.2kgを添加し、重合を完結させた。内温は91℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ポリブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例10のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は180,000、Mw/Mnは1.013であった。
【0045】
・重合例11
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1150mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン10.0kgを加え、内温を50℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、1,3−ブタジエン26.5kgとスチレン49.1kgを同時に添加し、重合を完結させた。内温は90℃まで上昇した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、スチレン103.9kgを添加し、重合を完結させた。内温は98℃まで上昇した。
(6)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのテーパードブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(7)この重合液を脱揮して、重合例11のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は202,000、Mw/Mnは1.018であった。
【0046】
・重合例12
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2190mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン8.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量106.4kgのスチレン、および総量12.2kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ106.4kg/h、12.2kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、65.4kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は95℃まで上昇した。
(6)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を85℃に下げ、8.0kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例12のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は120,000、Mw/Mnは1.014であった。
【0047】
・重合例13
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液1260mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン8.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量110.0kgのスチレン、および総量13.4kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ87.8kg/h、10.7kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、18.6kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は91℃まで上昇した。
(6)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を75℃に下げ、50.0kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。内温は97℃まで上昇した。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例13のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は206,000、Mw/Mnは1.021であった。
【0048】
・重合例14
(1)反応容器中にシクロヘキサン500.0kg、THF75.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液2370mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン8.0kgを加え、内温を80℃まで上昇させ、スチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量114.0kgのスチレン、および総量9.4kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ121.3kg/h、10.0kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレンと1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に下げ、60.6kgの1,3−ブタジエンを加え、1,3−ブタジエンをアニオン重合させた。内温は95℃まで上昇した。
(6)1,3−ブタジエンが完全に消費された後、反応系の内温を85℃に下げ、8.0kgのスチレンを一括添加し、重合を完結させた。
(7)最後に全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、ブタジエンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロックを持つ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例14のブロック共重合体を得た。ピークトップ分子量(Mp)は113,000、Mw/Mnは1.014であった。
【0049】
<配合例>
・配合例1〜16
重合例で得られたブロック共重合体を表1に示した配合比率で混ぜ、田端機械工業社製φ40mm単軸押出機HV−40−30を用い、押出温度200℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ストランド状に押し出した樹脂組成物を冷却し、ペレタイザーにてペレットとした。それぞれの配合、共役ジエン質量比、ブロック率を表1に記した。
【0050】
なお配合例15では、市販のSBSであるJSR社製スチレン・ブダジエン熱可塑性エラストマー(商品名「JSR TR2000」、ピークトップ分子量(Mp)104,000、Mw/Mn1.014)を押出せずにそのまま使用した。また配合例16では、市販のGPPSとして、東洋スチレン社製ポリスチレン樹脂(商品名「トーヨースチロールGP HRM10N」、ピークトップ分子量(Mp)172,000、Mw/Mn1.810)を押出せずにそのまま使用した。
【0051】
【表1】

【0052】
<実施例・比較例・参考例>
・シートの作製
先端に幅40cmのTダイを取り付けた田辺プラスチックス社製φ40mm単軸押出機VS40−26を用い、押出温度200℃、Tダイ温度200℃、スクリュー回転数50rpmにて、配合例の樹脂を用いてシート押出を実施し、田辺プラスチックス社製480型シーティング装置を用い、冷却ロール温度50℃でシート厚0.3mmの単層シートを作製した。シートの厚みはダイのリップ開度で調整し、シートの引き取り速度は一定とした。使用した樹脂について表2に記載した。
【0053】
・シートの電子線照射
アイ・エレクトロンビーム社製電子線照射装置「CB250/30/180L」を用い、加速電圧250kV、吸収線量200kGyでシートに電子線を照射した。照射の有無について表2に記載した。
【0054】
・シートの欠点・ブツの評価
電子線未照射のシートについて、次の様に行った。シートの作製を開始してから15分後に、MD方向200mm、TD方向150mmのサンプルを3枚採取し、目視にて外観をチェックし、これらの平均を下記の様に1から4までの4段階で評価した。欠点とは樹脂の未溶融物もしくは劣化物が集中して発生している箇所、ブツは欠点以外の目視で確認可能な異物のことを表す。
4:欠点なし、ブツが4個以下
3:欠点なし、ブツが5個以上9個以下
2:欠点なし、ブツが10個以上14個以下
1:欠点あり、もしくはブツが15個以上
それぞれの評価結果を表2に記載した。
【0055】
・トルエンに対する不溶物の割合(ゲル分率)の測定
電子線照射前あるいは電子線照射後のシートについて、次の様に測定した。シートより任意に切り出した試験片2.0g(試験サンプル量)をトルエン200g中で48時
間撹拌もしくは振とう(シェイキング)し、これをろ過した。ろ過物をトルエンで十分に洗浄した後、ろ過物を60℃、0.02MPa下の真空乾燥機で24時間真空乾燥し、重量を測定することでトルエン不溶分とし、下記に示す式で計算した。
ゲル分率(質量%)=(トルエン不溶分/試験サンプル量)×100
それぞれの評価結果を表2に記載した。
【0056】
・耐溶剤性試験
耐溶剤性試験は次の様に行った。縦横17mm、深さ20mmの直方体形状の空間を有する治具を用意し、シート(0.3mm厚)よりMD方向×TD方向=10mm×50mmに切削した試験片を弓状にたわませて、直方体形状の空間へ挿入した。この際、試験片の両端が治具表面から同じ深さとなる様に位置させると共に、試験片の頂点が治具表面より15mm高い位置となる様に調整した(図1参照)。その頂点にスポイトでヤシ油もしくはトルエンを1滴垂らし、シートが割れるまでの時間を測定した。測定は目視で行い、割れを確認した段階で測定終了とした。測定は2回行い、割れるまでの時間がより早い値を採用した。測定は対象溶剤滴下から1時間後、3時間後、5時間後、10時間後、24時間後、48時間後とした。48時間後でも割れが発生しなかった場合は「>48」と表現した。
それぞれの評価結果を表2に記載した。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例1、実施例2より、請求項1記載の樹脂組成物を使用することで、欠点・ブツが少なく、外観が良好なシートが得られることがわかった。
【0059】
実施例3〜実施例8より、請求項1記載の樹脂組成物を使用し、電子線を照射することで、ゲル分率が38%以上、トルエンによる耐溶剤性試験が24時間以上、ヤシ油による耐溶剤性試験が48時間以上となることがわかった。つまり電子線照射により架橋し、耐溶剤性が向上した。
【0060】
実施例7と実施例8の比較より、請求項1記載の樹脂組成物において、ブロック率が同じであれば、共役ジエン質量比が多いほうが、電子線を照射した際のゲル分率、トルエンによる耐溶剤性試験が良好であった。
【0061】
比較例8より、ブロック率が79%以下であると、電子線を照射しても架橋せず、ゲル分率が0%、つまりトルエンに可溶であり、トルエンによる耐溶剤性試験が5時間、ヤシ油による耐溶剤性試験が1時間となり、耐溶剤性が不良となることがわかった。
【0062】
比較例1、比較例3、比較例4より、ブロック率が86%以上であると、電子線を照射しても架橋せず、ゲル分率が0%、つまりトルエンに可溶であり、トルエンによる耐溶剤性試験が3時間、ヤシ油による耐溶剤性試験が1時間となり、耐溶剤性が不良となることがわかった。
【0063】
比較例2、比較例6より、共役ジエンの質量比が17%以下であると、電子線を照射しても架橋せず、ゲル分率が0%、つまりトルエンに可溶であり、トルエンによる耐溶剤性試験が5時間以下、ヤシ油による耐溶剤性試験が2時間となり、耐溶剤性が不良となることがわかった。
【0064】
比較例5、比較例7より、共役ジエンの質量比が30%以上であると、欠点・ブツが多く、シートの外観に難があった。
【0065】
参考例1、参考例5より、請求範囲外のSBSでは欠点・ブツが多く、シート成形時にネッキングが酷いため、厚み、幅調整が難しく、また金属ロールに対する粘着が酷いため、成形加工性、外観に難があった。
【0066】
参考例1、参考例5より、請求範囲外のSBSに電子線を照射することで、ゲル分率が37%、トルエンによる耐溶剤性試験が10時間、ヤシ油による耐溶剤性試験が24時間となることがわかった。つまり電子線照射により請求範囲外のSBSは架橋し、耐溶剤性が向上するものの、その程度は請求範囲のブロックポリマーには及ばない事が判った。
【0067】
参考例2より、請求範囲外のGPPSでは電子線を照射したが架橋せず、ゲル分率が0%、つまりトルエンに可溶であり、耐溶剤性試験も不良となることがわかった。
【0068】
比較例1、参考例3より、電子線の照射有無でゲル分率、耐溶剤性試験の結果に変化がなかった。つまり請求範囲外のブロックポリマーでは電子線照射により架橋しないことがわかった。
【0069】
参考例2、参考例4より、電子線の照射有無でゲル分率、耐溶剤性試験の結果に変化がなかった。つまりGPPSは電子線照射により架橋しないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の樹脂組成物は加工によりシート、成形品、フィルムとして利用でき、活性エネルギー線照射時には効率的に架橋できる。また活性エネルギー線照射後に二次加工することで、耐溶剤性に優れた食品などの包装容器、トレー、カップ、ブリスターパック、発泡成形品や食品包装フィルム、熱収縮性フィルムなどに用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 治具
2 試験片

図1